以下に、本発明を適用可能な実施の形態が説明される。以下の説明は、本発明の実施形態を説明するものであり、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。説明の明確化のため、以下の記載は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、当業者であれば、以下の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能であろう。尚、各図において同一の符号を付されたものは同様の要素を示しており、適宜、説明が省略される。
まず、本実施の形態にかかるビーム測定方法の原理について簡単に説明する。本実施の形態では、電気光学素子を電子ビームの経路中に配置している。すなわち、電気光学素子が、電子ビームの経路である真空チャンバー内に配置されている。さらに、電子ビームとと同期して、電気光学素子にパルスレーザ光を入射させる。このとき、電子ビームによって生じる電場で電気光学素子の屈折率が変化する。このため、パルスレーザ光の偏光状態は、電子ビームの形状に応じて変化する。また、電子ビームのバンチ(パルス)形状(バンチ長、横方向分布等)によって、電気光学素子に印加される電場が変化する。電気光学素子を通過したパルスレーザ光を測定することで、電子ビームのバンチ形状を測定することができる。すなわち、パルスレーザ光の偏光状態は、電子ビームのバンチ形状に応じて変化する。電気光学素子におけるパルスレーザ光の位相変化を測定することで、バンチによって発生する電場を知ることができる。さらに、ここでは、電気光学素子を通過したパルスレーザ光を分光して、測定している。
本発明の実施の形態にかかる測定装置について図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1にかかるビーム測定装置100の構成を模式的に示す図である。また、図1の説明の途中で、適宜図2乃至図9を参照して説明を行う。
本実施の形態にかかるビーム測定装置は、光源部10、入射光学系20、電気光学素子30、出射光学系40、分光測定器50、及び処理装置55を有している。そして、ビーム測定装置100は、加速器で加速された電子ビーム31の3次元バンチ形状をモニタする。より具体的には、ビーム測定装置100は、電子ビーム31の空間分布、及び時間分布に関する情報を取得する。電子ビーム31の電子は、十分に高いエネルギーが与えられており、真空中の光速近くまで加速されている。すなわち、電子は、相対論的な領域まで加速されている。電子ビーム31は、高周波(RF)を用いて加速されている。このため、所定のバンチ長を有するバンチが繰り返している。ビーム測定装置100は、バンチ長を測定する。さらに、ビーム測定装置100を用いることによって、1つのバンチをスライスした時の空間分布を測定することができる。
まず、光源部10について説明する。光源部10は、レーザ発振器11、広帯域化部材12、チャーピングパルス波形整形器13、及び波長板14、グランレーザ・カールサイト偏光子15を有している。レーザ発振器11は、所定のパルス幅を有するパルスレーザ光を発振する。レーザ発振器11としては、例えば、チタンサファイアレーザを用いることができる。レーザ発振器11からのパルスレーザ光は、平行な光束になっている。なお、以下の説明では、レーザ光の光軸方向をZ方向とし、Z方向に垂直な平面をXY面とする。Z方向がLongitudinal方向(縦方向)となり、X方向、及びY方向がTransverse方向(横方向)となる。レーザ光は、Z軸に沿って伝播する。従って、Z軸は時間軸に対応する。また、XY面内のX方向、及びY方向は、互いに直交する。レーザ発振器11として、例えば、フェムトレーザーズ(FEMTOLASERS)社製 FEMTOSOURCE SYNERGY Pro、又はSYNERGY 20を用いる。これにより、10〜20fsec程度のパルス幅のパルスレーザ光が発振する。
広帯域化部材12は、レーザ発振器11から入射したパルスレーザ光を広帯域化する。。広帯域化部材12としては、例えば、光通信分野で広く利用されているフォトニック結晶(クリスタル)ファイバを用いることができる。フォトニック結晶ファイバは、フォトニック結晶中の線状欠陥をコアとし、その周囲のフォトニック結晶をクラッドとする光ファイバである。従って、入射光は、コアに閉じ込められながら伝播する。フォトニック結晶ファイバとしては、例えば、Newport社製SCG−800を用いることができる。
広帯域化部材12は、パルスレーザ光の波長幅を広くする。すなわち、フォトニック結晶ファイバ内での非線形光学効果によって、パルスレーザ光が広帯域になる。広帯域化部材12から出射される光の最長波長をλLとし、最短波長をλSとする。具体的な一例としては、パルスレーザ光の波長域が、650nm〜1100nmに広げられる。広帯域化部材12からSC(スーパーコンティニウム)光が出射する。広帯域化部材12からの光は、白色レーザ光となっている。このように、広帯域化部材12はスペクトル幅を延ばす。従って、広帯域化部材12から出射したパルスレーザ光は、フーリエパルス限界が2〜4fsecのパルスレーザ光に対応する。
広帯域化部材12から出射されたレーザ光は図2に示すような時間プロファイルを有している。図2は、広帯域化部材12から出射したパルスレーザ光のパルス波形を示す図である。従って、図2は、パルスレーザ光の時間に対する強度分布を示すグラフである。図2において、横軸は時間を示し、縦軸はパルスレーザ光の強度を示している。図2に示すように、パルスレーザ光の強度は、パルスの中央近傍で最大になっている。そして、パルスの端に向かうに連れて強度が低くなっていく。さらに、広帯域化部材12は、パルスレーザ光の波長幅を広げる。
広帯域化部材12で広帯域化されたパルスレーザ光は、チャーピングパルス波形整形器13に入射する。チャーピングパルス波形整形器13は、光変調器13aと、パルスストレッチャー13bと、光増幅器13cとを有している。チャーピングパルス波形整形器13は、パルスレーザ光の時間波形を整形する。具体的には、チャーピングパルス波形整形器13は、パルスレーザ光の波形を矩形状に整形する。光変調器13aとしては、例えば、音響光学(AO:Acousto−Optics)素子や液晶素子を用いることができる。より具体的には、光変調器13aとして、音響光学空間位相制御フィルター(AOPDF:Acoutsto−Optics Programmable Dispersive Filter)や液晶空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)を用いることができる。光変調器13aは、スペクトル位相を変調する。具体的には、時間に応じて波長が変化するように、パルスレーザ光の位相を変調する。これにより、パルスの先頭から後方側に向かうにつれて、波長が徐々に短くなる。例えば、パルス先端の波長が最長波長λLとなり、パルス後端の波長が最短波長λSとなる。レーザパルス内の波長は、後方側に向かうにつれて、λLからλSに単調減少していく。さらに、波長と時間の関係がリニアになっている。よって、時間とともに波長がリニアに減少する。
このように、光変調器13aから出射したレーザパルス光では、時間とともに波長が線形(リニア)に変化している。すなわち、パルスレーザ光の波長は時間に応じて、波長が線形(リニア)に変化する。パルスレーザ光は、最長波長λL〜最短波長λSの間のスペクトルを有する。チャーピングパルス波形整形器13の光変調器13aとしては、例えば、ファーストライト(FASTLITE)社製DAZZLER(登録商標)UWB−650−1100を用いることができる。これにより、650〜1100nmの広帯域スペクトルを有するパルスレーザ光を変調することができる。光変調器13aに入力する変調信号(Acoustic Wave)に応じて、パルスレーザ光のスペクトルが変調される。そして、チャープした音波によって、結晶を通過する白色パルスレーザ光に、波長に応じた光路差を自由に与えることができる。音波のスペクトルと同じ形状にパルスレーザ光のスペクトルが整形される。あるいは、音波のパルス形状と同じ形状にパルスレーザ光のスペクトルを整形してもよい。パルスストレッチャー13bは、時間的なパルス幅を広げる。これにより、レーザ光のパルス幅が、モニタする電子ビーム31のバンチ長よりも十分に長くなる。
光増幅器13cは、入射した光を増幅する。光増幅器13cは、例えば、光の波長を変化させずにパルスレーザ光を増幅する。そして、スペクトル波形(スペクトル分布)を矩形状にする。このとき、時間的なパルス波形も矩形状になる。チャーピングパルス波形整形器13から出射されたレーザ光は図3に示すような時間プロファイルを有している。図3は、チャーピングパルス波形整形器13から出射したパルスレーザ光のパルス波形を示す図である。図3において、横軸は時間を示し、縦軸はパルスレーザ光の強度を示している。図3に示すように、パルスレーザ光はフラットトップなパルス波形に変換されている。すなわち、パルスレーザ光の強度が時間に対して略一定となる。例えば、波長に応じてゲインを調整することによって、図3に示すような波形を得ることができる。図3では、左側がパルスの先頭側であり、右側がパルスの後端側である。このように、パルスレーザ光の時間プロファイルが一定になるように波形整形される。なお、光増幅器13cによって増幅されるパルス波形は、完全な矩形にならなくてもよい。例えば、後述する電気光学素子30に入射する段階でのパルス波形を考慮して、波形整形することができる。
なお。光変調器13aによって、パルスレーザ光の波長は、時間に応じて変化している。従って、図3の横軸を波長として捉えることができる。この場合、図3はスペクトルを示すことになる。光増幅器13cは、それぞれの波長での強度が等しくする。すなわち、最長波長λLから最短波長λSまでの間で一定の強度になっている。波長が変化しても、パルスレーザ光の強度は変化しない。このように、線形にチャーピングされたパルスレーザ光がチャーピングパルス波形整形器13から出射される。波長、及び時間によらず、パルスレーザ光の強度が一定になる。すなわち、時間分布、及びスペクトル分布が均一になる。また、スペクトル分布、及び時間分布は一致している。なお、上記の例では、パルス先端の波長を最長波長λLとし、パルス後端の波長を最短波長λSとしたが、反対にしてもよい。すなわち、パルス後端の波長を最長波長λLとし、パルス先端の波長を最短波長λSとしもよい。線形チャープ矩形スペクトル白色レーザが出射される。なお、チャープパルス増幅(CPA:Chirped Pulse Amplify)を用いて、チャーピングすることも可能である。この場合、パルスストレッチャーで波長毎に光路長差をつける。これにより、時間とともに波長が変化するようになる。
チャーピングされたパルスレーザ光は、波長板14、及びグランレーザ・カールサイト偏光子15に入射する。に入射する。波長板14、及びグランレーザ・カールサイト偏光子15は、波長域650−1100nmの広帯域白色レーザ光をP偏光にする。波長板14は、1/2波長板である。波長板14としては、例えば、アクロマティック0次水晶MgF2波長板を用いることができる。具体的には、波長板14として、Newport社製10RP52−2を用いることができる。波長板14は、互いに直交する方向に振動する成分に対して位相差を与える。ここでは、1/2波長の位相差が与えられる。
光源部10からのパルスレーザ光は、波長板14を介して、グランレーザ・カールサイト偏光子15に入射する。グランレーザ・カールサイト偏光子15は、所定の振動方向の成分のみを取り出す。グランレーザ・カールサイト偏光子15としては、例えば、Newport社製10Gl08Ar.16を用いることができる。なお、これらの光学系については、Newport社 Application Note26"Variable Attenuator for Lasers"、及びNewport社 Application Note28"Supercontinuum Generetion SCG−800 Photonic Crystal Fiber"に詳細に記載されている。
このように、アクロマティックな波長板14、及びグランレーザ・カールサイト偏光子15を用いることで、広帯域の白色パルスレーザ光を完全なP偏光にすることができる。なお、波長板14は、アクロマティック波長板に限られものではない。例えば、アクロマティック波長板と同じ透過光学系であるアポクロマート波長板を波長板14として用いることができる。さらに、反射光学系である金属ミラー等でペリスコープを構成したものを用いてもよい。また、波長板14を回転させることで光量を調整することができる。すなわち、入射するパルスレーザ光の偏光方向に対する光学軸の角度を変えることで、P偏光成分とS偏光成分の割合が変化する。よって、グランレーザ・カールサイト偏光子15を通過するパルスレーザ光の光量を調整することができる。もちろん、波長板14、及びグランレーザ・カールサイト偏光子15以外の光学素子を用いて、直線偏光を取り出してもよい。
光源部10からは、チャーピングされたP偏光のパルスレーザ光が出射する。すなわち、時間とともに波長が変化するパルスレーザ光が生成される。ここでは、リニアにチャーピングしているため、時間に応じて波長がリニアに変化する。例えば、パルスレーザ光の先頭(パルス先端)が最長波長λLになり、後方側(パルス後端)が最短波長λSになる。あるいは、パルスレーザ光の先頭側が最短波長λSになり、後方側が最長波長λLになってもよい。すなわち、パルスレーザ光を、ポジティブにチャープしてもよく、ネガティブにチャープしてもよい。このように光源部10からは、パルス幅、及び波長幅が広げられたパルスレーザ光が出射する。
光源部10によってチャーピングされたパルスレーザ光は、入射光学系20に入射する。入射光学系20は、光源部10からのパルスレーザ光を電気光学素子30に入射させるための光学系である。入射光学系20は、アキシコンレンズ21、アキシコンレンズ22、遅延素子23、偏光変換素子24、及びミラー25を有している。なお、図1において、偏光変換素子24は、アキシコンレンズ21の前に配置されていてもよい。
光源部10からは、チャーピングされたP偏光のパルスレーザ光が出射する。すなわち、時間とともに波長が変化するパルスレーザ光が生成される。ここでは、リニアにチャーピングしているため、時間に応じて波長がリニアに変化する。例えば、パルスレーザ光の先頭(パルス先端)が最長波長λLになり、後方側(パルス後端)が最短波長λSになる。あるいは、パルスレーザ光の先頭側が最短波長λSになり、後方側が最長波長λLになってもよい。すなわち、パルスレーザ光を、ポジティブにチャープしてもよく、ネガティブにチャープしてもよい。このように光源部10からは、パルス幅、及び波長幅が広げられたパルスレーザ光が出射する。
光源部10によってチャーピングされたパルスレーザ光は、入射光学系20に入射する。入射光学系20は、光源部10からのパルスレーザ光を電気光学素子30に入射させるための光学系である。入射光学系20は、アキシコンレンズ21、アキシコンレンズ22、遅延素子23、偏光変換素子24、及びミラー25を有している。なお、図1において、偏光変換素子24は、アキシコンレンズ21の前に配置されていてもよい。
光源部10からのパルスレーザ光は、1対のアキシコンレンズ21、22に入射する。アキシコンレンズ21、22は、円錐形状になっている。アキシコンレンズ21、22は、略同じ形状になっている。パルスレーザ光は、1対のアキシコンレンズ21、22によって屈折され、輪状のビームに変換される。すなわち、アキシコンレンズ22から出射したパルスレーザ光の断面は、中空のリング状になっている。このように、1対のアキシコンレンズ21、22は、パルスレーザ光から円環ビームを生成する。アキシコンレンズ22からは、平行な光束が出射する。
なお、1対のアキシコンレンズ21、22以外の構成で円環ビームを生成してもよい。例えば、1つのアキシコンレンズと1つの球面レンズとによって、円環ビームを生成することができる。このように、1枚以上のアキシコンレンズを用いることで、レーザ光強度の低下を防ぐことができる。あるいは、リング状のスリット(輪帯)を用いてもよい。レーザ発振器11からのレーザ光を円環状の光ビームに変換する円環ビーム変換手段を設けることによって、レーザ光を効率よく利用することができる。また、1対のアキシコンレンズを対称的に配置することによって、色収差を低減することができる。これにより、広帯域のスペクトルに対して、色収差を低減することができる。アキシコンレンズ22からは断面が円環状の平行光束が出射する。また、レンズを用いてスポット形状を円形状から円環状に変換することで、光の利用効率を高くすることができる。
アキシコンレンズ22から出射したパルスレーザ光は、遅延素子23に入射する。遅延素子23は、入射したパルスレーザ光に時間遅延を与える。具体的には、入射位置に応じた時間遅延がパルスレーザ光に与えられる。異なる位置に入射した光には時間的なずれが与えれる。これにより、パルスレーザ光のパルス幅が広くなる。この遅延素子23の構成例について図4を用いて説明する。図4(a)は、遅延素子23の構成を示す平面図であり、図4(b)は、遅延素子23によって遅延されたパルスレーザ光のパルス波形を模式的に示す図である。
遅延素子23は、円板状の透明板によって形成されている。図4(a)に示すように、遅延素子23は、放射状に8分割された分割領域を有している。ここで、8個の分割領域を分割領域23a〜23hとする。すなわち、図4(a)では、分割領域23a〜分割領域23hが周方向に沿って配列されている。それぞれの分割領域23a〜23hの大きさは等しくなっている。分割領域23a〜23hは周方向の全体にわたって設けられている。従って、分割領域23a〜23hのそれぞれは、中心点に対応する内角が45°の扇形となる。遅延素子23の中心点が、光軸上に配置される。また、遅延素子23の透明板は、光軸と直交して配置される。
それぞれの分割領域23a〜23hは、入射したパルスレーザ光を遅延させる。そのため、透明板の厚みが、それぞれの分割領域23a〜23hで異なっている。例えば、分割領域23aが最も薄くなっており、分割領域23hが最も厚くなっている。そして、分割領域23a、分割領域23b、分割領域23c、分割領域23d、分割領域23e、分割領域23f、分割領域23g、分割領域23hの順番で、板厚が厚くなっていく。従って、遅延素子23の透明板が螺旋階段状になるように、透明板の板厚が変化している。さらに、それぞれの分割領域では、隣の分割領域間の板厚差が一定になっている。ここで、透明板が屈折率1.5の結晶で形成されているとする。異なる領域間では、透明板と媒質(空気)の屈折率差に板厚差を乗じた分だけ、パルスレーザ光が遅延される。このように、遅延素子23の板厚は位置に応じて異なっている。よって、パルスレーザ光には入射位置に応じた時間遅延が与えられる。分割領域23b〜23hからのパルス光は、分割領域23aからのパルス光を基準とする時間遅延が、板厚差に応じて与えられる。すなわち、分割領域23b〜23は、分割領域23aよりも遅れる。
パルスレーザ光に与えられる遅延は、図4(b)に示すようになる。図4は、分割領域を通過した後の、パルス光の波形を示している。図4(b)では、上から順に、遅延時間が0のパルス光(分割領域24aを通過したパルス光)、その次に遅延時間が少ないパルス光(分割領域24bを通過したパルス光)、及び最も遅延時間が多いパルス光(分割領域24hを通過したパルス光)が示されている。図4(b)の横軸は時間を示し、縦軸はパルス光強度を示している。なお、図4(b)では、右側がパルスの先頭側になり、左側がパルスの後方側になる。
隣の分割領域を通過したパルス光間の遅延時間を基準遅延時間Δtとする。例えば、分割領域23bを通過したパルス光は、分割領域23aを通過したパルス光よりも基準遅延時間Δtだけ遅延する。基準遅延時間Δtは、上記のように、屈折率差に、隣の分割領域間の板厚差を乗じた値に対応する。また、8つの分割領域が設けられているため、分割領域24hを通過したパルス光は、分割領域23aを通過したパルス光よりも基準遅延時間Δtの7倍だけ遅延する。分割領域23aからのパルス光を基準とすると、分割領域23cを通過したパルス光の遅延時間は2×Δtとなり、分割領域23dを通過したパルス光の遅延時間は3×Δtとなり、分割領域23eを通過したパルス光の遅延時間は4×Δtとなり、分割領域23fを通過したパルス光の遅延時間は5×Δtとなり、分割領域23gを通過したパルス光の遅延時間は6×Δtとなる。よって、分割領域23aからのパルス光が最も先頭側になり、分割領域23hからのパルス光が最も後方側になる。
それぞれの分割領域からのパルス光は、入射した分割領域の板厚に応じて順番に遅れていく。隣の分割領域からのパルス光には、基準遅延時間Δtだけ、時間的なずれが生じている。この基準遅延時間Δtは、パルスレーザ光のパルス幅よりも短くなっている。さらに、基準遅延時間Δtは、モニターする電子ビーム31のバンチ長と同程度になっている。より正確には、基準遅延時間Δtは、バンチ長よりも長くなっている。基準遅延時間Δtは、例えば、バンチ長に、パルスレーザ光と電子ビームのジッターを考慮して設定される。従って、基準遅延時間Δtが、パルスレーザ光と電子ビームのジッター分以上、バンチ長よりも長くなっている。従って、それぞれの分割領域からのパルス光は、バンチ長以上ずれて、伝播していく。XY平面における位置に応じて、各パルス光の先端と後端のタイミングがずれる。
ここで、最も遅延時間が多い分割領域23hを通過したパルス光と、遅延時間が0の分割領域23aを通過したパルス光とは、一部が時間的に重複している。分割領域23hを通過したパルス光と、分割領域23aを通過したパルス光とが重複する期間を重複期間Tとする。ここで、重複期間Tの幅は、電子ビームのバンチ長よりも長くする。重複期間Tは、例えば、バンチ長に、パルスレーザ光と電子ビームのジッターを考慮して設定される。従って、重複期間Tが、パルスレーザ光と電子ビームのジッター分だけ、バンチ長よりも長くなっている。重複期間Tでは、パルスレーザ光が、時間的に前記パルスレーザ光の光軸の外周全体で重複している。このため、遅延素子23による最大の遅延時間をパルスレーザ光のパルス幅よりも短くする。従って、7×Δtはパルス幅よりも短くなっている。
従って、重複期間Tにおけるパルスレーザ光のスライスでは、光軸を中心とする全方位にパルスレーザ光が存在している。すなわち、重複期間T内における任意のタイミングでは、全ての分割領域からパルス光が出射している。換言すると、重複期間Tの外側のタイミングでは、1つ以上の分割領域からパルス光が出射しておらず、パルス光が出射していない分割領域が存在する。この重複期間Tの一部が電子ビームの測定に用いられる。具体的には、重複期間Tに含まれる光が電気光学素子30を通過するタイミングと、バンチが電気光学素子30を通過するタイミングを一致させる。バンチが電気光学素子30を通過するタイミングでは、重複期間T内の光が電気光学素子30を通過している。バンチが電気光学素子30を通過するときには、必ず、重複期間Tに含まれる光を電気光学素子30を通過させることが好ましい。この場合、バンチが電気光学素子30を通過する間は、全分割領域23a〜23hにパルス光が入射している。
さらに、重複期間Tにおけるパルスレーザ光のスライスでは、それぞれの分割領域で波長がずれている。上記のように、光源部10からのパルスレーザ光は、時間に対して波長がリニアに変化する。このため、パルスレーザ光が入射位置に応じて遅延時間を与える遅延素子23を通過すると、同じタイミングでの波長が異なっている。例えば、分割領域23aからのパルスレーザ光と、分割領域23bからのパルスレーザ光では、同じタイミングでの波長が基準遅延時間Δtに応じて異なっている。さらに、重複期間Tにおけるパルスレーザ光のスライスでは、分割領域23a〜23hから出射したパルス光の波長が順番にずれている。同じタイミングにおいて、分割領域23a〜23hから出射したパルス光が異なる波長になっている。重複期間Tにおけるパルスレーザ光のスライスでは、分割領域23a〜23hから異なる波長の光が出射する。そして、その波長は時間に応じて徐々にずれていく。同じタイミングではXY平面において波長の分布が存在する。同じタイミングでは、分割領域毎に波長が変化している。
重複期間T内では、各分割領域23a〜23hから出射する光の波長が時間に応じて変化する。例えば、重複期間T内に各分割領域23a〜23hを通過する光の波長は、時間が経過するにつれて短波長になる。ここで重複期間Tの両端における波長について考える。まず、図4(b)に示すように、重複期間Tの先頭側の端における分割領域23aからの光の波長をλaLとする。同様に、重複期間Tの後方側の端における分割領域23aからの光の波長をλaSとする。従って、重複期間T内では、分割領域23aから通過する光は、時間が経過するにつれて、波長がλaLからλaSにリニアに増加していく。なお、λaSはパルスレーザ光全体の最短波長λSと等しい。同様に、重複期間Tの先頭側の端における分割領域23bからの光の波長をλbLとし、重複期間Tの後方側の端における分割領域23bからの光の波長をλbSとする。さらに、重複期間Tの先頭側の端における分割領域23hからの光の波長をλhLとする。同様に、重複期間Tの後方側の端における分割領域23hからの光の波長をλhSとする。なお、λhLはパルスレーザ光全体の最長波長λLと等しい。また、λaSとλbSとは、基準遅延時間Δtに対応する波長だけずれている。同様に、λaLとλbLとは、基準遅延時間Δtに対応する波長だけずれている。
また、図4(b)には図示していないが、分割領域23c〜23gについても、重複期間Tにおける先頭側の端の波長をそれぞれλcL、λdL、λeL、λfL、λgLとし、後方側の端の波長をそれぞれλcS、λdS、λeS、λfS、λgSとする。ここで、パルスレーザ光全体では、パルス先端が最長波長λLになっており、パルス後端が最短波長λSになっている。そして、時間に対してパルスレーザ光の波長がリニアに変化する。従って、λaL<λbL<λcL<λdL<λeL<λfL<λgL<λhLとなる。また、λaS<λbS<λcS<λdS<λeS<λfS<λgS<λhSとなる。このように、遅延時間が多い分割領域ほど、重複期間T内に出射する光の波長が長波長側になる。すなわち、遅延時間が多い分割領域ほど、重複期間Tに含まれるパルス光はパルスレーザ光の先頭側の波長(長波長)になる。
ここで、例えば、基準遅延時間Δtを重複期間Tよりも長く設定する。すると、λaLがλbsよりも、短くなる。従って、分割領域23aから出射する光の波長範囲λaL〜λaSは分割領域23bから出射する光の波長範囲λbL〜λbSと重複しなくなる。すなわち、波長範囲λaL〜λaSと波長範囲λbL〜λbSとが完全にずれる。このように、重複期間Tにおいて、任意の一つの分割領域から出射する光の波長範囲は、他の7つの分割領域から出射する光の波長範囲と重複しない。重複期間Tにおいて、一つの分割領域から出射する光の波長範囲は、他の7つの分割領域から出射する光の波長範囲から完全にずれる。重複期間T内では、任意の一つの分割領域から出射される光の波長が、他の7つの分割領域からは出射しなくなる。
なお、上記の説明では、重複期間T全体で、波長範囲が重複しないようとして説明したが、これに限られるものではない。すなわち、バンチが電気光学素子30を通過している間において、各分割領域から出射する波長範囲が重複しないようにすればよい。従って、バンチが電気光学素子30を通過している間では、任意の一つの分割領域から出射される光の波長が、他の7つの分割領域からは出射しなくなる。すなわち、バンチが電気光学素子30を通過していない間に、その波長の光が他の7つの分割領域から出射する。このように、バンチが電気光学素子30を通過している間では、各分割領域から出射される光の波長が完全にずれている。なお、光源部10から出射されるパルスレーザ光全体のパルス幅は、分割数、パルス重複期間T、及び基準遅延時間Δtを考慮される。例えば、8分割の分割領域23a〜23hが設けられている場合、パルス幅をバンチ長の10倍以上にしておくことが好ましい。
このように、遅延素子23の板厚は、XY平面における位置に応じて、変化している。すなわち、XY平面における位置に応じて、光路長が変化する。これにより、パルスレーザ光は、XY平面における位置に応じて遅延される。すなわち、各分割領域からのパルス光は、Z方向における位置がずれる。このため、パルスレーザ光のパルス幅が伸長する。ここでは、パルスレーザ光の先端面が螺旋階段状になる。なお、遅延素子23としては、1対の透明基板に液晶が挟持された液晶素子を用いることができる。そして、液晶に印加する電圧を位置に応じて変化させてもよい。また、位相シフトマスクのように、透明基板上に透明な位相シフト膜を形成したものを遅延素子23として用いることができる。さらには、反射型の遅延素子を用いてもよい。この場合、螺旋階段状のミラーを遅延素子23として用いることができる。
遅延素子23からのパルスレーザ光は、偏光変換素子24に入射する。偏光変換素子24は、入射位置に応じて、偏光状態を変換する。偏光変換素子24は、例えば、直線偏光を放射状のラディアル偏光に変換する。偏光変換素子24としては、例えば、ナノフォトン社製Zpolを用いることができる。ここでは、偏光変換素子24として、広帯域のZpolを用いている。偏光変換素子24の構成について、図5を用いて説明する。図5(a)は、偏光変換素子24を通過する前後の偏光状態を説明するための図である。図5(b)は、偏光変換素子24の構成を模式的に示す平面図である。図5(c)は、偏光変換素子24を通過したパルスレーザ光の偏光状態を説明するための平面図である。なお、図5(a)では、+Z方向にパルスレーザ光が伝播している。このため、パルスレーザ光は、偏光変換素子24を右側から左側へ通過する。
まず、図5(b)を用いて偏光変換素子24の構成について説明する。偏光変換素子24は、正八角形状の薄板から形成されている。偏光変換素子24は、例えば、ガラス等からなる透明基板の上に波長板を設けることによって形成される。あるいは、波長板をホルダで保持することで、偏光変換素子24が形成される。偏光変換素子24は、放射状に分割された8つの領域を有している。図5(b)に示すように、この8つの領域を分割領域24a〜分割領域24hとする。すなわち、偏光変換素子24は、8つの分割領域24a〜24hを備えている。ここでは、上側に分割領域24aが配置され、分割領域24b、分割領域24c、分割領域24d、分割領域24e、分割領域24f、分割領域24g、及び分割領域24hが時計回りの順番で配置されている。分割領域24a〜24fは、中心点に対して対称に配置されている。従って、8つの分割領域24a〜24hは、放射状に配置されている。このように、放射状に分割された8つの領域が分割領域24a〜24hとなる。それぞれの分割領域の大きさは等しくなっている。分割領域24a〜24hは周方向の全体にわたって設けられている。従って、分割領域24a〜24hのそれぞれは、中心点に対応する内角が45°の二等辺三角形となる。
ここで、偏光変換素子24に設けられている分割領域24a〜24hは、遅延素子23に設けられている分割領域23a〜23hに対応している。すなわち、XY平面において、遅延素子23の分割領域23aと、偏光変換素子24の分割領域24aとが略一致している。すなわち、符号の後に付したa〜hのアルファベットが同じ場合、分割領域23a〜23hと分割領域24a〜24hとでは、XY平面上の位置が一致している。パルスレーザ光は平行な光速であるため、分割領域23aから出射したパルス光は、分割領域24aに入射する。同様に分割領域23bからのパルス光は、分割領域24bに入射する。もちろん、分割領域23c〜分割領域23hからのパルス光についても、対応する分割領域24c〜分割領域24hにそれぞれ入射する。従って、遅延素子23は、偏光変換素子24に設けられた複数の分割領域24a〜24hに対応するよう、入射位置に応じてパルスレーザ光が段階的に遅延する。そして、遅延素子23によって段階的に与えられる遅延時間をバンチ長よりも長くすることが好ましい。
分割領域24a〜24hには、それぞれ異なる方向の光学軸を有する1/2波長板が設けられている。すなわち、分割領域24a〜24h毎に、光の振動方向が異なっている。図5(b)には、分割領域24a〜24hにおける光学軸が矢印で示されている。ここで、それぞれの分割領域の光学軸は、隣の分割領域の光学軸から22.5°ずれている。すなわち、Y軸の方向を基準とすると、図5(b)に示すように、分割領域24aにおける波長板の光学軸の角度は0°となり、分割領域23bの光学軸は22.5°になり、分割領域24cの光学軸は45°となり、分割領域23dの光学軸は67.5°になり、分割領域24eの光学軸は90°となり、分割領域23fの光学軸は−67.5°になり、分割領域24gの光学軸は−45°となり、分割領域23hの光学軸は−22.5°になっている。分割領域24a、分割領域24b、分割領域24c、分割領域24d、分割領域24e、分割領域24f、分割領域24g、分割領域24hの順番で光学軸が22.5°づつ傾いていく。
従って、中心点に対して互いに対向する分割領域に設けられている1対の波長板は、光学軸が直交する。例えば、分割領域24aの光学軸は0°であり、分割領域24aに対向する分割領域24eの光学軸は90°となっている。同様に、分割領域24cの光学軸と、分割領域24gの光学軸は、互いに直交している。換言すると、互いに対向する分割領域に設けられている一対の波長板において、光学軸の角度の差が90°となっている。このように、分割領域24a〜24hの中心点を挟んで対角に配置された一対の分割領域には、光学軸が90°異なる波長板が設けられる。
1/2波長板は、入射光に1/2波長の位相差を与えて出射する。従って、直線偏光の方位(偏光軸)が1/2波長板における光学軸に対して成す角度をθとすると、1/2波長板を通過した光は、元の直線偏光から2θだけ回転した直線偏光の光となる。例えば、1/2波長板の光学軸と、直線偏光の偏光軸とが45°ずれている場合、1/2波長板は、偏光軸が90°ずれた直線偏光を出射する。なお、直線偏光の偏光軸とは、XY面における電気ベクトルの振動面の方向である。
ここで、光源部10から偏光軸がY方向に沿った直線偏光が入射している。すなわち、分割領域24aの光学軸と、P偏光の入射光の偏光軸が一致している。図5(a)に示すように、偏光変換素子24を光路上に配置する。すると、上側の分割領域24aを透過した光と下側の分割領域24eを透過した光とで位相にずれが生じる。すなわち、上下に対向した配置された分割領域24aと分割領域24eとで光の位相が180°ずれる。光源部10から直線偏光が出力されているとすると、偏光変換素子24を通過する前では、電気ベクトルの直交する成分の位相は一致している。直線偏光が偏光変換素子24を通過した場合、分割領域24aと分割領域24eとでは、電気ベクトルの位相が180°ずれることになる。すなわち、上の分割領域24aと下の分割領域24eとで電気ベクトルの振動方向が反対方向になる。上の分割領域24aと下の分割領域24eとでは、偏光方向が反対方向となる。上の分割領域24aを透過した光と下の分割領域24eを透過した光とは同じ直線(Y軸と平行な直線)上の直線偏光であるが、その振動の向きが反対となる。
ここで、偏光軸がY方向に沿った直線偏光が偏光変換素子24に入射している。すなわち、分割領域24aの光学軸と、入射光の偏光軸が一致している。分割領域24a通過したパルス光は、図5(a)に示すように、偏光面(電気ベクトルの振動面)が光学軸と一致しているため、偏光状態が変化しない。すなわち、Y方向の直線偏光のままとなる。一方、分割領域24eを通過したパルス光は、偏光面が光学軸と直交しているため、偏光状態が変化する。すなわち、分割領域24eからのパルス光は、分割領域24aからのパルス光と振動の向きが反対となる。ここでは、光学軸と偏光軸とが90°ずれているため、偏光軸が180°回転する。一方、直線偏光のパルス光が分割領域24cを通過すると、直線偏光の偏光面が90°変化する。すなわち、45°傾いた光学軸を有する分割領域24cは、偏光軸を90°回転させる。また、直線偏光のパルス光が分割領域24gを通過すると、直線偏光の偏光面が−90°変化して、出射される。すなわち、−45°傾いた光学軸を有する分割領域24cは、偏光軸を−90°回転させる。このように、偏光変換素子24は、入射位置に応じて異なる位相だけ光を遅延する。これにより、XY平面において、偏光面が回転する。
直線偏光のパルスレーザ光が偏光変換素子24を通過すると、偏光状態が図5(c)に示すようになる。すなわち、偏光変換素子24は、直線偏光を偏光軸が放射状になるラディアル偏光に変換する。正確には、偏光変換素子24に直線偏光のレーザ光を入射させることで、ラディアル偏光に近い偏光状態となる。ここで、図5(c)に示すように、パルスレーザ光をXY方向にスライスした断面において、分割領域24aに対応する領域を領域Aとする。また、分割領域24bに対応する領域を領域Bとする。同様に、分割領域24c〜分割領域24hに対応する領域をそれぞれ領域C〜領域Hとする。このように、扇状に8分割された領域A〜Hにおいて、電気ベクトルの振動方向が異なっている。領域A〜Hに8分割された擬似ラディアル偏光になる。
中心点に対して対向する一対の分割領域から出射される直線偏光の偏光軸が平行になっている。そして、対向する一対の分割領域では振動方向が反対になっている。また、隣接する分割領域から出射される光の偏光軸は45°ずれている。例えば、分割領域24a及び分割領域24eから出射する光の偏光面は、0°である。よって、領域A、及び領域Eの光の偏光軸はY方向に平行である。また、分割領域24b及び分割領域24fから出射される光の偏光軸は、45°である。分割領域24c及び分割領域24gから出射される光の偏光軸は、90°である。よって、領域C、及び領域Gの光の偏光面はX方向に平行である。また、分割領域24d及び分割領域24hから出射される光の偏光軸は、−45°である。従って、入射位置に応じて偏光軸の角度が変化して、出射偏光変位が放射状となる。このように、偏光変換素子24は、入射位置に応じて入射光の偏光状態を変化させ、所望の偏光状態になるよう制御する。
上記の偏光変換素子24に直線偏光を入射させることで、ラディアル偏光に近い偏光状態となるよう制御することができる。具体的には、レーザ光の光軸と、偏光変換素子24の中心点を一致させる。また、偏光変換素子24は、光軸と直交して配置される。そして、分割領域24aの光学軸と直線偏光の偏光軸を一致させる。このようにすることで、直線偏光をラディアル偏光に近似する擬似ラディアル偏光にすることができる。また、上記の偏光変換素子24に対して偏光軸がX方向の直線偏光を入射することによって、偏光軸が円形に近い形状となる。すなわち、直線偏光がアジマス偏光に近い擬似アジマス偏光に変化する。なお、上記の説明では、8分割の偏光変換素子24について説明したが、分割数はこれに限られるものではない。例えば、16分割や4分割の偏光変換素子24を用いることもできる。分割数を多くことによって、より詳細な測定を行うことができる。偏光変換素子24からは、XY平面における偏光面の方向が放射状のラディアル偏光状態を生成する。
なお、偏光変換素子24には、遅延素子23によって遅延されたパルスレーザ光が入射している。このため、偏光変換素子24の分割領域24a〜24hに入射するパルス光は、図4(b)に示すように、時間的にずれている。従って、最初のタイミングでは、分割領域24aのみにパルス光が入射する。次のタイミングでは、分割領域24a、24bのみにパルス光が入射する。このように、順番にパルス光が入射する分割領域が増えていく。そして、重複期間Tになると、全ての分割領域24a〜24hにパルス光が入射する。重複期間を過ぎると、分割領域24aにパルス光が入射しなくなる。次のタイミングでは、分割領域24a、24bにパルス光が入射しなくなる。そして、パルス光が入射しなくなる分割領域が徐々に増えていく。換言すると、パルス光が入射する分割領域が時間の経過によって変化する。従って、時間に応じてパルス光が入射する分割領域が変わっていく。
偏光変換素子24から出射したパルスレーザ光は、ミラー25に入射する。ミラー25は、電子ビーム31のビーム経路中に配置されている。ミラー25は、レーザ光の光軸に対して45°傾斜している。従って、ミラー25は、レーザ光を、電気光学素子30の方向に反射する。ミラー25からのレーザ光は、電気光学素子30に入射する。さらに、ミラー25で反射されたパルスレーザ光は、電子ビーム31の進行方向と反対方向に伝播する。すなわち、パルスレーザ光は、電子ビーム31の上流側に向かって進むように、ミラー25で反射される。
ミラー25は、中心部分がくり抜かれた中空形状になっている。また、アキシコンレンズ21、22によって、レーザ光が輪状になっている。このため、中空のミラー25を用いた場合でも、レーザ光のほとんどが電気光学素子30に入射する。換言すると、ミラー25は、輪状のレーザ光に対応する中空部分を有している。よって、輪状のレーザ光は、ミラー25の中空部分には、入射しない。これにより、レーザ光のほとんどが電気光学素子30に入射する。従って、レーザ光の利用効率の低下を防ぐことができ、正確な測定が可能になる。また、電子ビーム31は、ミラー25の中空部分を通過する。これにより、非破壊で電子ビームを測定することができる。
なお、ミラー25は、電子ビーム31の経路中に配置される。したがって、電子ビーム31の経路中に存在するミラー25は、真空中に配置される。すなわち、ミラー25は真空チャンバー内に配設される。従って、偏光変換素子24からのパルスレーザ光は、真空チャンバーに設けられたウィンドウを介して、ミラー25に入射する。このように、遅延素子23、及び偏光変換素子24を大気中に配設している。これにより、入射光学系20の大部分を大気中に設置することができ、光学系の調整等を容易に行うことができる。よって、利便性を向上することができる。
ミラー25で反射されたパルスレーザ光は、電気光学素子30に入射する。すなわち、入射光学系20から出射したパルスレーザ光が電子ビーム31のパス中に配置された電気光学素子30を通過する。このとき、パルスレーザ光が、電気光学素子30を通過するタイミングと、電子ビーム31が電気光学素子30を通過するタイミングを同期させる。すなわち、パルスレーザ光と電子ビーム31のバンチとが、同じタイミングで電気光学素子30を通過する。さらに、パルスレーザ光と電子ビーム31とは、反対方向から電気光学素子30を通過する。すなわち、パルスレーザ光の伝播方向と、電子ビーム31の進行方向は、平行で反対方向になっている。例えば、パルスレーザ光が+Z方向に伝播するとすると、電子ビーム31は−Z方向に進行する。さらに、パルスレーザ光の光軸と、XY平面における電子ビーム31の中心位置は略一致している。
ここで電気光学素子30について図6、及び図7を用いて説明する。図6(a)は、電子ビーム31、及びパルスレーザ光が電気光学素子30を通過する様子を示す斜視図である。図6(b)は、電気光学素子30の構成を示す平面図である。図7は、電子ビーム31のバンチ37、及びパルスレーザ光が電気光学素子30を通過している様子を概念的に示す側面図である。また、電気光学素子30は所定の厚さを有する電気光学結晶によって構成されている。電気光学素子30の厚さは、空間的なバンチ長よりも短くすることが好ましい。ここでは、電気光学素子30の厚さを、例えば、0.01mm〜0.1mmとすることができる。
図6(b)に示すように、電気光学素子30は、リング状に形成されている。すなわち、電気光学素子30の外形が円形となっている。電気光学素子30の中心には円形の中空部33が設けられている。中空部33は、何もない空間になっている。この中空部33を電子ビーム31が通過する。すなわち、中空部33は、電子ビーム31の横方向の形状よりも大きくなっている。従って、想定されるバンチの横方向の形状に応じて、中空部33の大きさを決定する。これにより、電子ビーム31が電気光学素子30の結晶部分に入射しなくなる。よって、電子ビームを破壊せずに、測定することができる。
また、パルスレーザ光は、アキシコンレンズによって円環状になっている。すなわち、XY平面におけるパルスレーザ光の形状がドーナツ状になっている。そして、円環状のパルスレーザ光は、電気光学素子30に入射する。従って、円環状のパルスレーザ光は、中空部33の外側部分であって、電気光学素子30の外形の内側に入射する。すなわち、円環状のパルスレーザ光は、中空部33を通らずに、電気光学素子30の電気光学結晶を通過する。リング状のパルスレーザ光は、電子ビーム31の外周を囲むように、電気光学素子30を通過する。
ここで、電気光学素子30は、図6(b)に示すように、放射状に8分割された分割領域を有している。電気光学素子30に設けられた8個の分割領域を分割領域30a〜30hとする。電気光学素子30は、図6(b)に示すように、8つの分割領域30a〜30hを有している。図6(b)では、分割領域30a〜分割領域30hが周方向に沿って配列されている。分割領域30a〜分割領域30hは放射状に配置されている。それぞれの分割領域30a〜30hの大きさは等しくなっている。分割領域30a〜30hは周方向の全体にわたって設けられている。分割領域30a〜30hは、周方向に一定の間隔で配置される。従って、分割領域30a〜30hのそれぞれは、中心点に対応する内角が45°の扇形となる。なお、扇形の中心側が中空になっている。電気光学素子30の中空部33の中心が、光軸上に配置される。また、電気光学素子30は、光軸と直交して配置される。分割領域30a〜30hには、それぞれ、例えば、ZnTe(テルル化亜鉛)、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)、BBOなどの透明な電気光学結晶が設けられる。また、これらの無機結晶だけでなく、応答性の速い有機ポリマーフィルムを用いてもよい。ここでは、分割領域30a〜30hに用いられる電気光学結晶は、結晶軸以外の方向は同じ構成を有している。
それぞれの分割領域30a〜30hの結晶軸方位は、図6(b)の点線の矢印で示されている。なお、図6(b)では(001)結晶軸方向が点線矢印で示されている。それぞれの分割領域30a〜30hでは、結晶軸の方向が異なっている。具体的には、電気光学素子30の結晶軸は、放射状に配置されている。8つの結晶軸を延長すると、光軸上の一点で交わる。このように、分割領域30a〜30hには、それぞれ電気光学結晶が設けられている。そして、それぞれの分割領域30a〜30hに設けられた電気光学結晶は、異なる方向の結晶軸を有している。
このように、電気光学素子30には、8等分された分割領域30a〜30hが設けられている。このため、それぞれの分割領域30a〜30hは、45°の扇形状になっている。隣り合う分割領域では、電気光学結晶の光学軸が異なる方向になっている。ここでは、8つの電気光学結晶が設けられているため、隣り合う分割領域の結晶軸がなす角度は45°になる。隣の分割領域の結晶軸から45°ずれるように、複数の電気光学結晶を円周方向に沿って配列する。従って、分割領域30aの結晶軸を0°とすると、分割領域30cの結晶軸が90°になる。
電気光学素子30に設けられている分割領域30a〜30hは、領域A〜Hにそれぞれ対応している。従って、XY平面において、分割領域23aと、分割領域24aと、分割領域30aとの位置が略一致する。分割領域24aから出射したパルス光は、ミラー25で反射されて分割領域30aに入射する。さらには、分割領域23aから出射したパルス光は、分割領域24aを介して、分割領域30aに入射する。分割領域30b〜30hについても、同様に、分割領域24b〜24hに対応している。すなわち、分割領域30a〜30hには、同じアルファベットが付された分割領域24a〜24hからのパルス光が入射する。例えば、分割領域30bには、分割領域24bからのパルス光が入射する。
このように、それぞれの領域A〜Hの光は、対応する分割領域30a〜30hに入射する。ここで偏光変換素子24は、直線偏光を放射状のラディアル偏光に変換している。すなわち、偏光変換素子24からは、ラディアル偏光状態のパルスレーザ光が出射している。さらに、電気光学素子30の結晶軸は、放射状に配置されている。従って、電気光学素子30の結晶軸とパルスレーザ光の偏光面が同じ方向になっている。電気光学素子30の全分割領域30a〜30hにおいて、入射するパルス光の電気ベクトルの振動面は、結晶軸方向と一致する。例えば、電気光学素子30の分割領域30aにおける結晶軸は、Y方向になっており、偏光変換素子24の分割領域24aから出射したパルス光の偏光軸は、Y方向になっている。もちろん、その他の分割領域30b〜30hでも、偏光軸が結晶軸と平行になっている。このように、全体としてはラディアル偏光であるが、個々の分割領域30a〜30hでは、結晶軸と平行な直線偏光が入射する。
電気光学結晶は、電場によって屈折率が変化する。例えば、結晶軸に平行な電場が印加されると結晶軸方向の屈折率が変化する。ポッケルス素子では、電場強度に比例して、屈折率が変化する。このとき、XY平面において、結晶軸と垂直な方向では、屈折率が略変化しない。従って、電気光学結晶では、電場強度に比例して屈折率の変化が起こり、複屈折が誘起される。
ラディアル偏光状態のパルスレーザ光は、図6(a)に示すように、このような電気光学素子30に入射する。ここで、例えば、電気光学素子30に放射状の電場が印加されたとする。この場合、等電位線は同心円状になる。なお、放射状の電場の中心は、中空部33の中心と一致している。電気光学素子30には、各結晶軸に平行な電場が印加される。電場によって誘起された複屈折のために位相変化が生じる。複屈折が生じると、偏光状態が変化して楕円偏光となる。すなわち、直線偏光が回転して楕円偏光に変換される。放射状の電場が印加されると、各分割領域30a〜30hから出射されるパルス光は、楕円偏光となる。なお、楕円偏光の傾きは、電場強度に応じて変化する。すなわち、電場強度によって、XY平面における楕円偏光の傾きが変わる。このように、各分割領域30a〜30hからは、電場強度に応じた楕円偏光が出射する。従って、電場が印加されている電気光学素子30を通過したパルスレーザ光は、全体としてラディアル偏光ではなくなる。一方、電場が全く印加されていないときは、複屈折が生じない。このため、パルスレーザ光は、ラディアル偏光状態のままとなる。すなわち、電場が発生していないと、電気光学素子30を通過する前後で、偏光状態が変化しない。
図7に示すように、バンチ37とパルスレーザ光とは、同じタイミングで、電気光学素子30を通過する。なお、図7は、電気光学素子30のYZ面における断面図であり、電気光学素子30を通過するバンチ37とパルス光を模式的に示している。さらに、図7では、分割領域30aを通過するパルス光をパルス光35aとし、分割領域30hを通過するパルス光をパルス光35hとしている。従って、領域Aの光がパルス光35aであり、領域Hの光がパルス光35hである。
図7に示すように、パルスレーザ光は、バンチ37と同期して、電気光学素子30を通過する。具体的には、パルスレーザ光が電気光学素子30の電気光学結晶に入射し、バンチ37が電気光学素子30の中空部33に入射する。パルスレーザ光は、バンチ長よりも十分に長くなっている。さらには、重複期間Tは、バンチ長よりも長くなっている。従って、パルスレーザ光が電気光学素子30を通過する期間には、必ず、バンチ37が電気光学素子30を通過する。ここで、バンチ37が通過する期間を、バンチ通過期間とする。バンチが通過していない期間をバンチ非通過期間とする。バンチ非通過期間は、バンチ通過期間の両側に配置される。なお、図7において、バンチ非通過期間、及びバンチ通過期間は、時間とともに左側に移動し、重複期間Tは、時間とともに右側に移動する。バンチ通過期間と電気光学素子30が重複している間では、電気光学素子30が重複期間Tに含まれることになる。さらに、バンチ非通過期間と電気光学素子30とが重複している間の一部でも、パルスレーザ光が電気光学素子30を通過している。
従って、パルスレーザ光が電気光学素子30を通過する期間では、電子ビーム31のバンチに含まれる電荷(電子)によって、電場が発生している。バンチ内の電荷によって発生する電場が電気光学素子30に印加される。すると、電気光学素子30は、複屈折によって、パルスレーザ光の偏光状態を変化させる。具体的には、電気光学素子30の通過前では、領域A〜領域Hのそれぞれで直線偏光であったが、通過後には、楕円偏光になる。さらに、偏光状態の変化は、電場強度によって変化する。よって、電場強度が強い領域では、直線偏光から偏光状態がより変化する。すなわち、複屈折効果は電場強度に比例して大きくなるので、電場強度が高い領域では、偏光状態の変化が大きくなる。このように、バンチが電気光学素子30を通過するタイミングとパルスレーザ光が電気光学素子30を通過するタイミングとを同期させると、偏光状態がラディアル偏光から変化する。
なお、電気光学素子30には、遅延素子23によって遅延されたパルスレーザ光が入射している。このため、電気光学素子30の分割領域30a〜30hに入射するパルス光では、図4(b)に示すように、時間的にずれている。ここでは、図7に示すように、分割領域30aを通過するパルス光35aが、分割領域30hを通過するパルス光35hよりも先に進んでいる。
さらに、パルスレーザ光が電気光学素子30を通過する最初のタイミングでは、分割領域30aのみに領域Aのパルス光35aが入射する。Δtだけ時間が経過すると、分割領域30a、30bの2つに、領域A、Bのパルス光がそれぞれ入射する。このように、順番にパルス光が入射する分割領域が増えていく。そして、重複期間Tになると、全ての分割領域30a〜30hにパルス光が入射する。すなわち、重複期間Tでは、XY平面においてパルスレーザ光の光軸を中心とする全方位でパルスレーザ光が電気光学素子30に入射する。換言すると、XY平面において、パルスレーザ光は、周方向全体で電気光学素子30に入射している。これにより、XY平面でのスライスにおけるバンチ37の外周全体がパルスレーザ光に囲まれる。ここでは、光軸と垂直なスライス断面で、前記パルスレーザ光の外形が円周状になっている。このようにするためには、遅延素子23による最大の遅延時間をパルスレーザ光のパルス幅よりも短くする。
重複期間Tを過ぎると、分割領域30aにパルス光が入射しなくなる。次のタイミングでは、分割領域30a、30bにパルス光が入射しなくなる。そして、パルス光が入射しなくなる分割領域が徐々に増えていく。換言すると、パルス光が入射する分割領域が時間の経過によって変化する。従って、時間に応じてパルス光が入射する分割領域が順番に変わっていく。また、同じタイミングにおける波長は、領域毎にずれている。よって、バンチ通過期間と電気光学素子30と重複している間において、パルス光は領域A〜H毎に異なる波長を有している。例えば、図7に示す状態において、電気光学素子30の分割領域30aを通過している光の波長をλ1とし、電気光学素子30の分割領域30hを通過している光の波長をλ8とする。この場合、λ1は、λ8よりも短くなる。もちろん、その他の分割領域30b〜30gについても、同じタイミングでは、異なる波長の光が通過している。なお、実際には、電気光学素子30は有限の厚さを有しているため、あるタイミングで電気光学素子30に入射しているパルス光は、所定の波長幅を有している。そして、このタイミングでは、電気光学素子30の厚さに対応する波長幅の光の偏光状態が変化する。
バンチ37内の電子は、相対論的な領域まで加速されている。従って、バンチ内の電子によって発生する電場は、横方向になる。すなわち、電子ビームの進行方向(Z方向)には、電場が発生しない。バンチ内の電子による電場の電気力線は、XY平面に平行になる。隣接するスライス間で電場がカップリングしない。より、正確には、1/γのコーンの中で、電場が生成される。なお、γは、電子のローレンツ因子である。そのため、十分に高エネルギーを電子に与えると、γが大きくなり、Z方向の電場強度は無視できる。例えば、バンチに3.4nCの電荷が含まれ、バンチ幅(FWHM)が80fsec、バンチ長σzが約12μm(RMS)である場合、XY平面における中心からの距離が5mmの位置で、横方向に、最大400MV/mの電場が発生する。
電子が高エネルギーの場合、バンチ通過期間のみ、電気光学素子30に電場が印加される。従って、バンチ通過期間が電気光学素子30と重複している間のみ、パルスレーザ光の偏光状態が変化する。すなわち、バンチ非通過期間が電気光学素子30と重複している間では、パルスレーザ光の偏光状態は略変化しない。バンチ非通過期間では、領域A〜Hの光はそれぞれ直線偏光のまま変化せず、ラディアル偏光状態が保たれる。なお、バンチ非通過期間が電気光学素子30と重複している間では、重複期間Tの外側になることがある。重複期間Tの外側では、分割領域30a〜30hの一部からはパルス光が出射しない。すなわち、領域A〜Hの一部が欠損したラディアル偏光になる。なお、重複期間Tのうち、バンチ非通過期間では、ラディアル偏光のままパルスレーザ光が電気光学素子30を通過する。
そして、電気光学素子30を通過したパルスレーザ光は、出射光学系40に入射する。出射光学系40は、電気光学素子30から出射したパルスレーザ光を分光測定器50まで伝播するための光学系である。出射光学系40は、ミラー41、偏光変換素子42、遅延素子43、アキシコンレンズ44、アキシコンレンズ45、及び偏光子46を有している。
電気光学素子30を通過したパルスレーザ光は、ミラー41に入射する。ミラー41は、ミラー25と同様に、中心部分がくり抜かれた中空形状になっている。これにより、ミラー25と同様に、非破壊での測定が可能になる、さらに、パルスレーザ光を電子ビーム31の経路から効率よく取り出すことができる。ミラー41は、電子ビーム31のビーム経路中に配置されている。ミラー41は、レーザ光の光軸に対して45°傾斜している。従って、ミラー41は、レーザ光を、偏光変換素子42の方向に反射する。ミラー41からのレーザ光は、偏光変換素子42に入射する。
なお、ミラー25は、電子ビーム31の経路中に配置される。したがって、電子ビーム31の経路中に存在するミラー25は、真空中に配置される。ミラー25は真空チャンバー内に配設される。従って、ミラー41で反射したパルスレーザ光は、真空チャンバーに設けられたウィンドウを介して、偏光変換素子42に入射する。これにより、偏光変換素子42、及び遅延素子43等を大気中に配設することができる。出射光学系40の大部分を大気中に設置することができ、光学系の調整等を容易に行うことができる。よって、利便性を向上することができる。
ミラー41で反射したパルスレーザ光は、偏光変換素子42に入射する。偏光変換素子42は、偏光変換素子24と同じ構成を有している。すなわち、図5(b)の構成と同じ構成の偏光変換素子24が用いられる。従って、偏光変換素子42には、ナノフォトン社製Zpolを用いることができる。なお、偏光変換素子24の構成は偏光変換素子24と同様であるため説明を詳細な省略する。また、偏光変換素子42は、偏光変換素子24と同様に配置される。すなわち、偏光変換素子42と偏光変換素子24とは、領域Aに対応する分割領域が同じ方向の光学軸になっている。
偏光変換素子42は、入射位置に応じて偏光状態を変換する。ラディアル偏光状態の光が偏光変換素子42に入射すると、偏光状態が直線偏光に変換される。例えば、図5(a)において、−Z方向にパルスレーザ光が伝播することになる。すなわち、図5(a)の右側から左側にパルスレーザ光が伝播している。ラディアル偏光が偏光変換素子42を通過することで、パルスレーザ光が直線偏光になる。すなわち、偏光変換素子42は、偏光変換素子24で変換した偏光状態を元の偏光状態に戻す。従って、偏光変換素子42は、偏光変換素子24で変換されたラディアル偏光状態を解消する偏光状態解消素子となる。
但し、偏光変換素子42に入射するパルスレーザ光は、上記の通り、偏光状態がラディアル偏光から変化している。すなわち、電気光学結晶の影響によって、偏光状態が変化している。従って、偏光変換素子42を通過しても、パルスレーザ光は、元のラディアル偏光状態には完全に戻らない。すなわち、偏光変換素子42を通過したパルスレーザ光は、偏光状態が電気光学素子30で変化した分だけ、ラディアル偏光状態から変化している。よって、各領域A〜Hからは、バンチ37で発生する電場に応じた楕円偏光のパルス光が出射する。バンチによる電場が発生していない場合、すなわち、バンチとパルスレーザ光が電気光学素子30に入射するタイミングがずれている場合には、偏光変換素子42を通過するパルスレーザ光は、元の直線偏光に戻る。
偏光変換素子42から出射したパルスレーザ光は、遅延素子43に入射する。遅延素子43は、図4(a)に示した遅延素子23と同様の構成を有している。すなわち、遅延素子43は、パルスレーザ光に入射位置に応じた遅延を与える。但し、遅延素子43の配置は、遅延素子23と異なっている。具体的には、遅延素子43で与えられる遅延時間と、遅延素子23で与えられる遅延時間の和が全領域A〜Hで等しくなるように、遅延素子43が配置される。従って、分割領域23hに対応する領域Hの光では、遅延素子23により最も大きい遅延時間(7×Δt)が与えられるが、遅延素子43では遅延時間が0となる。分割領域23aに対応する領域Aの光では、遅延素子23では遅延時間が0であったが、遅延素子43では最も大きい遅延時間(7×Δt)が与えられる。分割領域23bに対応する領域Bの光では、遅延素子23では遅延時間Δtが与えられ、遅延素子43では遅延時間(6×Δt)が与えられる。
このように、全ての領域A〜Hには、遅延素子23、及び遅延素子43によって、等しい遅延時間(7×Δt)が与えられる。従って、遅延素子43を通過すると、パルス幅が短くなり、略元のパルス幅に戻る。すなわち、遅延素子43を通過した後のパルスレーザ光と、遅延素子23を通過する前のパルスレーザ光とでは、パルス幅が略等しくなる。これにより、全領域A〜Hでは、パルス光のタイミングが一致する。このように、遅延素子43は、遅延素子23によって生じた時間遅延を解消する。すなわち、遅延素子23によって与えられた入射位置に応じた時間遅延が解消される。遅延素子43は、遅延素子23によって生じた時間遅延を解消する遅延解消素子となる。このため、Z方向において、全領域A〜Hのパルス光が同じ位置になる。例えば、領域Aのパルス光の先端と、領域Hのパルス光の先端が同じ位置になる。
遅延素子43を通過したパルスレーザ光は、1対のアキシコンレンズ44、45に入射する。アキシコンレンズ44、45は、アキシコンレンズ21、22と同様に、円錐形状になっている。パルスレーザ光は、1対のアキシコンレンズ21、22によって屈折される。これにより、パルスレーザ光の断面が輪状から円形になる。
アキシコンレンズ45で屈折されたパルスレーザ光は、偏光子46に入射する。なお、パルスレーザ光は、アキシコンレンズ45によって、偏光子46に集光している。偏光子46は所定の偏光面の直線偏光を取り出す。例えば、偏光子46は、P偏光を透過して、S偏光を透過しない。すなわち、偏光子46はパルスレーザ光からP偏光のみを取り出す。偏光子46としては、偏光板や偏光プリズムなどを用いることができる。例えば、グラントムソンプリズムやウォラストンプリズムを用いることができる。例えば、光学技研社製のDUVグラントムソンプリズムを用いることができる。DUVグラントムソンプリズムは、5:1000000の高い消光比を有し、180〜2200nmの広帯域に対応している。
なお、グラントムソンプリズムには、S偏光成分を意図的にカットするように作られているものもある。このようなグラントムソンプリズムを偏光子46として用いると、P偏光が通過して、S偏光は通過しなくなる。すなわち、パルスレーザ光からP偏光成分が取り出される。なお、偏光子46の消光比を、100000:1以上とすることが好ましく、1000000:1程度とすることがさらに好ましい。偏光子46は、所定の偏光面の光を取り出す。すなわち、パルスレーザ光のうちの所定の偏光成分が取り出される。ここでは、Y方向の直線偏光成分を取り出す。すなわち、Y方向に振動している偏光成分が偏光子46を通過し、X方向に振動している偏光成分は、偏光子46を通過しない。
偏光子46によって取り出される光について図8を用いて説明する。図8は、偏光子46で取り出される光を説明するための図である。図8(a)は、領域Aにおけるパルス光35aのうちのP偏光成分を示す概念図であり、図8(b)は、領域Aにおけるパルス光35aのうちのS偏光成分を示す概念図である。図8(c)は、領域Hにおけるパルス光35hのうちのP偏光成分を示す概念図であり、図8(d)は、領域Hにおけるパルス光35hのうちのS偏光成分を示す概念図である。なお、図8において、横軸は波長、縦軸はそれぞれの偏光成分の強度を示している。従って、図8は、P偏光成分、及びS偏光成分のスペクトルを示している。また、遅延素子43によって領域間の時間遅延が解消されているため、横軸を時間として捉えることもできる。
上記のように、バンチ通過期間のみ、偏光状態が変化する。また、バンチ通過期間内では、領域A〜Hに応じて光の波長がずれている。従って、電気光学素子30によって偏光状態が変化した光の波長が領域毎に異なっている。例えば、重複期間Tにおける領域Aのパルス光35aの波長範囲は、λaL〜λaSである。電気光学素子30を通過後、波長範囲λaL〜λaSの一部で、偏光状態が変化する。換言すると、パルス光35aでは、波長範囲λaL〜λaSの外側で偏光状態が変化しない。このため、偏光変換素子42を通過後、波長範囲λaL〜λaSの外側では、P偏光成分のみになる。電気光学素子30を通過後、波長範囲λaL〜λaS内では楕円偏光に変化している。このため、偏光変換素子42を通過後、波長範囲λaL〜λaSの外側では、P偏光成分、及びS偏光成分が存在する。
よって、偏光子46に入射する領域Aのパルス光35aでは、P偏光成分が図8(a)に示すようになり、S偏光成分が図8(b)に示すようになる。ここで、S偏光成分が出現する波長は波長範囲λaL〜λaSの中に含まれる。このように、パルス光35aには、一部の波長のみで、S偏光成分が存在する。また、P偏光成分は、波長範囲λaL〜λaSの外側で一定になる。理想的には、P偏光成分とS偏光成分の和は波長によらず一定になる。
同様に、領域Hのパルス光35hについても、一部の波長のみで、S偏光成分が存在する。そして、S偏光成分が存在する波長が、領域Aと異なっている。例えば、重複期間Tにおける領域Hのパルス光35hの波長範囲は、λhL〜λhSである。従って、波長範囲λhL〜λhSの中のみ、S偏光成分が存在する。なお、領域B〜Gについては、図示していないが、領域B〜Gでも、一部の波長にのみ、S偏光成分が存在する。そして、それぞれの領域A〜Hにおいて、S偏光成分が存在する波長が重複していない。すなわち、S偏光成分が存在する波長は、領域A〜H毎に完全に異なっている。
ここで、偏光子46は、P偏光成分のみを通過させる。このため、図8(b)、及び図8(d)に示すS偏光成分が削られる。すなわち、図8(a)、及び図8(c)に示すP偏光成分のみを偏光子46によって取り出す。各領域A〜HのP偏光成分のグラフでは、領域毎に異なる波長で凹みが生じている。この凹みは、S偏光成分に対応している。よって、凹みの大きさは、バンチ37内の電子群によって発生する電場に応じて、変化する。換言すると、XY平面における電子の横方向スライスの空間分布に応じて、P偏光成分の強度が変化する。
偏光子46を通過したパルスレーザ光は、図1に示すように、分光測定器50に入射する。なお、遅延素子43によって時間遅延が解消されているため、全領域のP偏光成分が同じタイミングで分光測定器50に入射する。すなわち、各領域のパルス光に時間的なずれが存在していないので、同時に全領域A〜Hのパルス光が入射する。分光測定器50は、分光部51と検出部52とを有している。
分光部51は、回折格子(グレーティング)やプリズムなどの分光素子を備えた分光器(スペクトロスコープ)である。分光部51は、入射側に設けられているスリット等を介して入射したパルスレーザ光をその波長に応じて空間的に分散させる。反射型回折格子を用いた分光部51の場合、さらに入射スリットからの光を分光素子までに導く凹面ミラーと分光素子によって分光された光を検出部52まで導く凹面ミラーなどの光学系が設けられている。もちろん、上記以外の構成を有する分光部51を用いてもよい。パルスレーザ光は分光部51によって入射スリットの方向と垂直な方向に分散される。すなわち、分光部51は、入射スリットのライン状の開口部と垂直な方向に出射光を波長分散する。分光部51により分光された出射光は検出部52に入射する。
検出部52は受光素子がマトリクス状に配列されたエリアセンサ(カメラ)である。具体的には、検出部52は受光画素がアレイ状に配置された2次元CCDカメラ、CMOSカメラなどの2次元アレイ光検出器である。例えば、検出部52には、ビジョンリサーチ社(Vision Resarch社)製のPhantom V10.0等の超高解像高感度カメラを用いることができる。Phantom V10.0は例えば、4.3Mピクセル有している。さらに、受光量が低い場合は、カメラにイメージインテンシファイアに取り付けることも可能である。尚、イメージインテンシファイアには、残光時間の短いものを用いることが好ましい。これにより、繰り返し測定の制限が緩和され、測定の繰り返し周波数を高くすることができる。例えば、DHT(デルフトハイテック)社のイメージインテンシファイアを用い、蛍光面材料をP46とすることが好ましい。また、例えば、SPECTRAL IMAGING社製 ImSpectorなどを用いて、スペクトルグラフィー(スペクトル撮像)でスペクトルイメージを測定してもよい(H. Tomisawa et.al. "Spectrographic approch for the diagnosis of rf breakdown in accelerating rf structure" Applied Surface Science 235(2004)214−220)。この分光測定器50は、例えば、PGP構造(Prism−Grating−Prisim)を取っている。
分光部51で分光されることによって、異なる波長の光が、異なる受光画素に入射する。すなわち、波長に応じて入射する受光画素がずれる。これにより、パルスレーザ光のスペクトル測定が可能になる。例えば、最長波長λlの光は受光画素列の一端側の受光画素に入射し、最短波長λsの光は他端側の受光画素に入射する。そして、波長に応じて入射する受光画素が異なる。さらに、チャーピングされたパルスレーザ光を用いているため、受光画素列がパルスレーザ光内の時間に対応する。従って、パルス内において異なるタイミングの光は、異なる受光画素に入射する。例えば、パルス先端の光は、受光画素列の一端側の受光画素に入射し、パルス後端の光は、受光画素列の他端の受光画素に入射する。そして、1パルスのスペクトルを検出部52のカメラの1フレームで検出する。すなわち、分光測定器50のカメラの1フレームで、パルスレーザ光の1パルスのスペクトルが取得される。これにより、パルスレーザ光のスペクトル分布を高速に測定することができる。
ここで、分光測定器50に入射したパルスレーザ光について、図9を用いて説明する。図9は、パルスレーザ光のスペクトルを模式的に示すグラフである。なお、図9のグラフでは、横方向が波長を示しており、縦方向がパルスレーザ光の強度を示している。図9でのパルスレーザ光の強度は、P偏光成分の強度である。また、分光部51で分光された後では、横方向を検出部52のカメラ受光面における空間的な位置として捉えることも可能である。さらに、遅延素子43によって領域間の時間遅延が解消されているため、横方向を時間軸として捉えることもできる。図9のスペクトルは、カメラの1フレームで測定される。
それぞれの領域A〜HのP偏光成分が足し合わされて、分光測定器50に入射している。バンチ37と同期して電気光学素子30を通過する光は、領域に応じて、異なる波長範囲に展開されている。電子からの電場が印加されている状態の電気光学素子30を通過するパルス光は、領域毎に異なる波長になっている。このため、S偏光成分に対応する凹みが存在する波長範囲が領域A〜H毎にずれている。従って、分光測定器50に入射するパルスレーザ光のスペクトルは、8つの凹みが生じている。それぞれの凹みは、各領域A〜Hのスペクトルの凹みに対応する。この凹みは、偏光子46で削られたS偏光成分に対応する。例えば、図9に示されているスペクトルの一番右の凹みは、領域Aのパルス光のS偏光成分に対応する。
一番右の凹みは、波長範囲λaL〜λaSの中に含まれる。また、一番左の凹みは、領域Hのパルス光のS偏光成分に対応する。このため、一番左の凹みは、波長範囲λhL〜λhSの中に含まれる。同様に、スペクトルには、領域B〜GのS偏光成分に対応する凹みが生じている。それぞれの凹みは、異なる波長に表れる。そして、全ての凹みが他の凹みと重なっていない。異なる領域の凹みは、基準遅延時間Δtに対応する波長だけずれている。すなわち、それぞれの凹みが時間的に離間する。分光部51で分光すると、それぞれの凹みは、異なる波長に展開されている。8つの凹みに対応する波長の光は、カメラ受光面の異なる位置に入射する。よって、8つの凹みに対応する波長のP偏光成分は、異なる受光画素で検出される。
一つの凹みは一つの分割領域の電場に対応している。すなわち、各分割領域30a〜30hの電場に応じて、凹みの形状が変化する。この凹みの形状は、電気光学素子の時間応答に対応した時間分解能での、各スライスの電場の変化に対応する。例えば、領域Aの電場に応じて、一番右の凹みが変化する。電子数の多い領域ほど、電場強度が高くなる。また、バンチの横方向スライスの空間分布が偏ると、電荷と電気光学素子30が近い領域では、電場強度が高くなる。これにより、電気光学素子30における複屈折効果が大きくなり、偏光状態の変化が大きくなる。偏光状態の変化が大きいと、パルス光のP偏光成分がより減少し、S偏光成分がより増加する。従って、それぞれの凹みの形状は、XY平面における電荷分布に反映される。すなわち、XY平面における電荷分布が非対称になると、8つの凹みの形状に違いが生じる。XY平面におけるバンチ形状に応じて、各波長範囲のスペクトル分布が変化する。各領域のP偏光成分を比較することで、XY平面における電子の分布を測定することが可能になる。これにより、XY平面におけるバンチ形状、及びバンチの位置を測定することができる。
さらに、電気光学素子30に電場が印加されている時間が長くなると、凹みの幅が広くなる。従って、凹みの波長幅がその領域のバンチ長に対応する。さらに、各凹みの形状は、Z方向におけるバンチ形状に対応する。すなわち、Z方向のバンチ形状に応じて、凹みの形状が変化する。具体的には、バンチ内に含まれる電子数が増加すると、凹みが大きくなる。各波長範囲のP偏光成分を切り出して、足し合わせる。こうすることによって、Z方向におけるバンチ形状を計測することができる。すなたち、電子ビーム31の3次元空間分布を簡便に測定することができる。
このように、偏光子46を通過したパルスレーザ光のスペクトルを測定することによって、電気光学素子30の印加されている電場が測定される。すなわち、バンチ37内の電子によって発生している電場の分布が、測定される。これにより、バンチ37の3次元電荷分布を推測することができる。すなわち、バンチ37内の電子の空間分布に応じて、各領域のP偏光成分の強度が変化する。さらに、Z方向のプロファイル、を測定することが可能になる。よって、バンチ長やバンチ幅を求めることができる。バンチの3次元形状をシングルショットで計測することができる。
それぞれの領域のP偏光成分に生じる凹みは、異なる波長範囲に展開されている。すなわち、全領域のP偏光成分の凹みが異なる波長になっている。従って、分光測定器50を用いてスペクトルを測定することによって、領域A〜HのP偏光成分の凹みを別々に測定することができる。これにより、XY平面における空間分布を測定することができる。例えば、電子の数が多い領域や少ない領域が判別される。このため、XY平面におけるバンチ内の電荷分布の偏りが測定される。さらには、XY平面におけるバンチの拡がりが測定される。また、チャーピングされたパルスレーザ光を用いているため、波長が時間に対応している。従って、パルスレーザ光の時間分布を測定することができる。すなわち、スペクトル分布が時間分布に対応する。これにより、バンチ37のZ方向の空間分布、すなわち、バンチ長を計測することができる。具体的には、8つの凹みを足し合わせることで、バンチ形状を計測することができる。
なお、高速の分光測定器50を用いることによって、MHzまでの高繰り返し計測に対応することができる。従って、バンチ形状の経時的な変化を測定することが可能になる。なお、上記の説明では、P偏光成分を検出したが、S偏光成分を検出してもよい。すなわち、偏光子46によって、S偏光成分を取り出して、スペクトル測定してもよい。さらに、P偏光成分、及びS偏光成分の両方を測定してもよい。この場合、偏光ビームスプリッタなどで、パルスレーザ光のS偏光成分、及びP偏光成分を分岐する。そして、それぞれの偏光成分に対してスペクトル測定を行う。この場合、2つの分光測定器で測定を行う。
なお、分光測定器50で測定されたスペクトルデータは、処理装置55に入力される。すなわち、処理装置55には、CPUやメモリ等の記憶領域を備えるコンピュータである。例えば、処理装置55には、演算処理部であるCPU(Central Processing Unit)、記憶領域であるROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、通信用のインターフェースなどを有し、焦点合わせを行うために必要な処理を実行する。例えば、ROMには、演算処理するための演算処理プログラムや、各種の設定データ等が記憶されている。そして、CPUは、このROMに記憶されている演算処理プログラムを読み出し、RAMに展開する。そして、設定データや、各センサ等からの出力に応じてプログラムを実行する。処理装置55は、メモリや外部ストレージなどの記憶装置に、データを記憶する。さらに、処理装置55は、検出結果を表示させるためのモニター等を有している。パルスレーザ光のスペクトルが表示画面に表示される。さらに、スペクトルに基づいて算出されたバンチ形状が表示される。バンチの電荷分布に応じて、スペクトル分布が変化する。よって、分光測定器50でスペクトルを測定することによって、電荷分布をモニタすることができる。
なお、電気光学素子30には、高速非線形応答の有機ポリマーを採用することが好ましい。これにより、時間分解能を例えば、30fsecにすることができる。有機ポリマーとしては、例えば、ポリジアセチレン誘導体を用いることができる。このように、応答速度の高い電気光学素子30を用いることによって、時間分解能を向上することができる。時間分解能がバンチ長よりも十分に短いと、バンチをスライスして測定することができる。すなわち、バンチをXY平面と平行にスライスしたときの電荷分布を測定することができる。具体的には、各凹みの形状の変化が、電場の時間的な変化に対応する。従って、電場の時間的な変化から、電荷分布の時間的な変化を解析することができる。すなわち、バンチをXY断面でスライスしたときの形状を測定することが可能になる。この電荷分布測定の処理例について、図10〜図13を用いて説明する。
まず、あるスライスに、単極子(モノポール)モーメント成分しかない場合について、図10を用いて説明する。この場合、点電荷が電気光学素子30の中心を通過しているとして捉えることができる。なお、図10は、単極子モーメント成分しかない場合について説明するための図である。図10の左側には、電気光学素子30に発生する電場を斜視図が模式的に示され、右側にはその時に測定されるスペクトルが示されている。なお、電荷は、点線矢印の方向に進んでいる。
単極子モーメントでは、電場が点対称になる。なお、電子は、相対論的な領域まで加速されている。この場合、隣接するスライス間で電場がカップリングしない。XY平面における電場の電気力線は太実線矢印に示されるように、放射状になる。従って、電気光学素子30の全分割領域30a〜30hに対して、それぞれの結晶軸と平行に電場が印加される。そして、それぞれの分割領域30a〜30hの電場強度は等しくなる。この場合、全領域A〜Hで偏光状態の変化量が等しくなる。すなわち、分光測定器50に入射するパルスレーザ光のP偏光成分はそれぞれの領域で等しくなる。よって、図10に示すようなスペクトルが測定される。すなわち、8つの凹み(S偏光成分)の形状が等しくなっている。なお、単極子の静電ポテンシャルは、距離に反比例する。
次に、あるスライスに、双極子(ダイポール)モーメント成分しかない場合について、図11を用いて説明する。すなわち、電気双極子が電気光学素子30の中心を通過しているとして捉えることができる。なお、図11は、双極子モーメント成分しかない場合について説明するための図である。図11の左側には、電気光学素子30に発生する電場を斜視図が模式的に示され、右側にはその時に測定されるスペクトルが示されている。なお、電気双極子は、点線矢印の方向に進んでいる。
双極子では、正負の電荷が微小距離だけ離れている。図11の点線に示す等電位線は双極子の各電荷を囲む。また、電気力線は、双極子の2つの電荷を結ぶ。しかしながら、電気力線は上下2方向(双極子方向)に発散する。この2方向に対応する分割領域では、電場強度が高くなる。すなわち、図11の太実線矢印が横切る分割領域では、電場強度が他の分割領域に比べて高くなる。互いに対向する2つの分割領域では、偏光状態が大きく変化して、P偏光成分が小さくなる。この場合、8つの分割領域の2つで凹み(S偏光成分)が大きくなる。ここでは、領域C、Gに対応する凹みが大きくなっている。このように、領域A、B、D、E、F、Hに対応する6つの凹み(S偏光成分)よりも、領域C、Gに対応する2つの凹み(S偏光成分)が深くなる。なお、双極子の静電ポテンシャルは、距離の二乗に反比例する。
さらに、あるスライスに、四重極子(クアドラポール)モーメント成分しかない場合について、図12を用いて説明する。すなわち、電気四重極子が電気光学素子30の中心を通過しているとして捉えることができる。なお、図12は、四重極子モーメント成分しかない場合について説明するための図である。図12の左側には、電気光学素子30に発生する電場の斜視図が模式的に示され、右側にはその時に測定されるスペクトルが示されている。なお、電気四重極子は、点線矢印の方向に進んでいる。
四重極子では、モーメントが等しい双極子が逆向きに並んでいる。図12の点線に示す等電位線は、四重極子の各電荷を囲む。また、電気力線は、四重極子の正負の電荷を結ぶ。従って、四重極子モーメントの電場は上下左右4方向に発散する。この4方向に対応する分割領域では、電場強度が高くなる。すなわち、図12の太実線矢印が横切る分割領域では、電場強度が他の分割領域に比べて高くなる。電場強度が大きくなる4つの分割領域は1つおきに配置される。4つの電場強度では、偏光状態が大きく変化して、P偏光成分が小さくなる。この場合、8つの分割領域の4つで凹み(S偏光成分)が大きくなる。ここでは、領域B,D,F,Hに対応する凹み(S偏光成分)が大きくなっている。このように、領域A、C、E、Gに対応する4つの凹み(S偏光成分)よりも、領域B,D,F,Hに対応する4つの凹み(S偏光成分)が深くなる。
ここで、バンチ内の電荷による静電ポテンシャルを各モーメントの電場で近似する。そして、各モーメントの電場から、単極子、双極子、四重極子の空間分布を求める。これにより、電荷分布が求められる。すなわち、スペクトルデコーディングを行うことで、バンチ形状が計測される。ここで、単極子の静電ポテンシャルは、距離に反比例し、双極子の静電ポテンシャルは距離の二乗に反比例し、四重極子の静電ポテンシャルは距離の三乗に反比例する。従って、バンチ電荷の重心から遠いところの電場は、単極子で近似することができる。すなわち、距離が離れている場合、双極子、及び四重極子の静電ポテンシャルは見えてこない。しかしながら、近づくと双極子の静電ポテンシャルが見え、さらに近づくと四重極子の静電ポテンシャルが見えてくる。従って、バンチ内の電子によって電気光学素子30に印加される電場から、スライス毎の電荷分布を解析することができる。スライス断面における電荷分布に応じて、スペクトル分布が変化する。従って、スペクトル分布を解析することで、スライス毎の電荷分布を解析することができる。
もちろん、四重極子モーメントまでではなく、六重極子モーメントや、八重極子モーメント、あるいはそれ以上のモーメントを用いて近似してもよい。但し、六重極子では距離の4乗、八重極子では距離の5乗に反比例するため、距離が十分遠い場合は、四重極子までのモーメントに比べて、無視することができる。従って、四重極子までで近似させることで、XY平面における静電ポテンシャルを簡便かつ正確に近似することができる。よって、正確な空間分布を簡便に求めることができる。このような近似方法については、例えば、SUWADA "Multiple Analysis of Electromagnetic Field Genarated By Single−Bunch Electron Beams"を参考とすることができる。
例えば、図13に示すようなスペクトルが測定されたとする。図13は、バンチ37をスライスして測定するときの様子を説明するための図である。図13では、領域Fに対応するスペクトルを全体のスペクトルの上に拡大して示している。領域Fに対応するスペクトルは、分割領域30fに印加された電場を示している。さらに、波長範囲λfL〜λfSにおけるP偏光成分の変化が、領域FでのZ方向のバンチ形状を示している。分割領域30fに印加される電場の時間変化は、領域Fに対応する凹みの形状に対応する。すなわち、波長範囲λfL〜λfsの中で、異なる波長は、異なる時間における分割領域30fにかかる電場を示している。
従って、それぞれの凹みの中で任意の波長におけるP偏光成分強度が、バンチ内のあるタイミングでの電場を示している。よって、各スライスでの電荷分布は、凹み中の特定の波長におけるP偏光成分強度から算出される。すなわち、8つの凹み中のP偏光成分強度を波長毎に解析することで、スライス断面における電荷分布を求めることができる。例えば、図13のスライス断面W1における領域Aの波長をλa1とする。同様に、スライス断面W1における領域B〜Hの波長をそれぞれ、λa1、λb1、λc1、λd1、λe1、λf1、λg1、及びλh1(以下、λb1〜λh1とする)とする。λa1、λb1、λc1、λd1、λe1、λf1、λg1、及びλh1は、それぞれΔtに対応する波長だけずれている。λa1〜λh1でのP偏光成分を組み合わせて解析することで、スライス断面W1での電場が求められる。すなわち、λb1〜λh1のP偏光成分を領域の位置に応じて組み合わせる。これにより、電場強度の空間分布が推測される。そして、この電場強度の空間分布を各モーメントの静電ポテンシャルによって近似する。そして、静電ポテンシャルから、電荷分布を求める。これにより、バンチ形状を求めることができる。
スライス断面W1において、各分割領域30a〜30hに印加されている電場の電場強度が求められる。その電場強度に基づいて、電荷分布を求めることができる。すなわち、この8つの波長におけるP偏光成分を用いて、各モーメント成分で電荷分布を近似する。そして、λa1、λb1、λc1、λd1、λe1、λf1、λg1、及びλh1をそれぞれ短波長側にずらすと、次のスライス断面W2での電荷分布を求めることができる。このように、8つの領域A〜Fに対応する波長範囲の中から対応する8波長を抽出する。そして、抽出された8波長でのP偏光成分に基づいて、XY平面における電荷分布を測定することができる。また、電子は相対論的な領域まで加速されているため、隣接するスライス間で電場がカップリングしない。よって、スライス毎に電荷分布を簡便に計測することができる。このように、スペクトルデコーディングを行うことで、スライス毎の電荷分布に関する情報を簡便に取得することができる。
上記の測定方法による時間分解能は、フーリエパルス限界とチャーピングされたパルスレーザ光のパルス幅に応じて制限されてしまう。具体的には、フーリエパルス限界のパルス幅と、チャーピングされたパルスレーザ光のパルス幅の積の平方根に比例する。従って、電気光学素子30に入射するパルスレーザ光のパルス幅をより狭くすることが好ましい。この場合、パルスレーザ光とバンチのジッターを考慮して、パルス幅をバンチ長の10倍程度にしておくことが好ましい。
上記のように、時間分解能は、フーリエパルス限界によって制限される。ここで、測定された電場から、実際の電場を算出することで、より時間分解能を向上することができる。このキャリブレーション処理について、以下に説明する。ここで、電気光学素子30に印加されている実際の実電場をEcoul(τ)とすると、電気光学素子30を通過した光に基づいて測定される測定電場は、Ecoul(τ+t0)×cos(τ2/α−π/4)となる。これについては、例えば、Jamison et al.Opt.Lett.18 1710(2003)に記載されている。ここで、τは時間、t0はフーリエパルス限界、αは電気光学素子30の分散である。従って、測定電場から実電場を逆算することができる。これにより、時間分解能を向上することができる。なお、上記の逆算を電気光学素子30に入射するパルスレーザ光のパルス波形によって補償してもよい。すなわち、パルス波形を矩形から変形させることで、スペクトル分布から直接実電場を求めることができる。具体的には、光変調器13aの変調信号を制御して、電気光学結晶の分散に基づいて波長毎の強度を変化させる。これにより、スペクトル測定から直接換算された電場が実電場となる。よって、電子ビームの空間分布を簡便に測定することができる。
なお、図1では、出射光学系40に偏光変換素子42を設けたが、この構成に限られるものではない。例えば、偏光子46として、吸収軸の傾きが位置に応じて変化する偏光板を用いることで、偏光変換素子42を省略することができる。例えば、吸収軸が放射状に配置された偏光板を用いる。具体的には、8つの分割領域に対応して、扇形状の偏光板を8つ用意する。そして、吸収軸が放射状になるよう8つの偏光板を配置する。すなわち、それぞれの分割領域での吸収軸が、図6の電気光学素子30の結晶軸と平行になるように配置する。この場合、偏光子46でアジマス偏光成分が取り出され、ラディアル偏光成分が吸収される。換言すると、図8のS偏光成分に対応するスペクトルを測定することができる。これにより、偏光変換素子42を用いなくても、それぞれの領域から所定の偏光成分を取り出すことができる。すなわち、バンチ内の電子によって発生する電場強度が強くなると、吸収軸に垂直な成分が増加する。これにより、バンチ内の電子によって発生する電場強度に応じて、分光測定器50で測定されるスペクトル分布が変化する。例えば、図8に示したS偏光成分に対応するスペクトルを測定することができる。
例えば、異なる8枚の偏光板を組み合わせることで、入射位置に応じて異なる吸収軸を有する偏光子46を作成することができる。放射状に8等分された分割領域毎に、吸収軸の方向が異なる偏光板を配置する。これにより、偏光変換素子42を用いなくても、所定の偏光成分を取り出すことができる。よって、部品点数を削減することができ、装置構成を簡素化することができる。もちろん、吸収軸が放射状に配置されたものではなく、8個の偏光板の吸収軸が円周状に配置された偏光子を用いることも可能である。この場合、各分割領域において、図6に示す電気光学素子30の結晶軸と垂直な方向に吸収軸を配置する。これにより、図8に示したP偏光成分に対応するスペクトルを測定することができる。
また、偏光子46を偏光ビームスプリッタとすることで、S偏光成分とP偏光成分の両方を取り出すことができる。この場合、一方を上記のスペクトル測定に用い、他方を他の用途に用いることができる。偏光子46で分岐された一方の分岐光を分光測定器50で測定し、他方の分岐光を後述するテンポラルデコーディングに用いる。P偏光成分を上記のスペクトルデコーディングに用いて、S偏光成分をテンポラルデコーディングに用いることができる。テンポラルデコーティングを行うことによって、バンチの時間分布(縦方向の空間分布)を測定することができる。以下に、図14を用いて、テンポラルデコーティングについて説明する。図14は、バンチの時間分布を行うための構成を示す図である。なお、図14では、図1で示した光学系を適宜省略している。
偏光子46で取り出されたS偏光成分を非線形光学素子62に入射させる。非線形光学素子62は、例えば、BBO結晶であり、和周波を発生する。ここで、偏光子46で取り出されたS偏光成分のパルスレーザ光を測定光68とする。
また、レーザ発振器11からのパルスレーザ光の少なくとも一部を取り出す。すなわち、レーザ発振器11からのパルスレーザ光の一部を、スペクトルデコーディングに使用して、残りをテンポラルデコーディングに使用する。レーザ発振器11からのパルスレーザ光は、可変ディレイ61に入射する。レーザ発振器11からのパルスレーザ光は、上記の広帯域化部材12に入射せずに、可変ディレイ61に入射する。可変ディレイ61は、入射したパルスレーザ光を遅延させる。そして、遅延されたパルスレーザ光は、非線形光学素子63に入射する。ここで、可変ディレイ61から出射されたパルスレーザ光を参照光67とする。
参照光67は、測定光68と同期して、非線形光学素子62に入射する。すなわち、可変ディレイ61のディレイ時間を調整して、測定光68と参照光67を同期させる。これにより、同じタイミングで、測定光68と参照光67が非線形光学素子62に入射している。なお、測定光68と参照光67は斜めに、非線形光学素子62の同じ面(入射面)に入射している。すなわち、測定光68の入射角と、参照光67の入射角が異なっている。そして、非線形光学素子62内で、測定光68と参照光67が交差する。そして、非線形光学素子62内では、非線形光学効果によって、和周波が発生する。すなわち、交差位置で和周波が発生する。なお、参照光67のパルス幅は、測定光68のパルス幅よりも短くなっている。
ここで、非線形光学素子62内で、測定光68と参照光67とが伝播する様子について図15を用いて説明する。図15は、非線形光学素子62を伝播する測定光68と参照光67を模式的に示す上面図である。図15では、上から順に、非線形光学素子62を通過する測定光68と参照光67が示されている。ここでは、4つのタイミングにおける様子が上から順に示されている。図15において、最も早いタイミング(例えば、非線形光学素子62に入射した直後のタイミング)が上から1段目に示され、最も遅いタイミング(例えば、非線形光学素子62から出射する直前のタイミング)が上から4段目に示されている。測定光68は、それぞれのタイミングにおいて、左斜め上の方向に伝播している。参照光67は、それぞれのタイミングにおいて、左斜め上の方向に伝播している。
測定光68と参照光67とが交差すると、非線形光学効果によって和周波が発生する。測定光68と参照光67とは斜めに交差している。和周波光の強度は、測定光68の強度と参照光67の強度によって変化する。従って、和周波が発生する位置が、徐々に変化していく。図15では、時間が経過するにつれて、和周波が発生する位置が右側から左側にずれていく。和周波発生による光をアレイ光検出器63で検出する。アレイ光検出器63には、受光画素がアレイ状に配列されている。非線形光学素子62を通過した和周波光をアレイ光検出器63で検出する。これにより、測定光68のパルスの時間分布を測定することができる。すなわち、アレイ光検出器63の受光面上での位置が、パルスの時間方向の位置に対応する。従って、パルスの時間方向の情報が、アレイ光検出器63の受光面上の位置に展開される。アレイ光検出器63で測定結果には、測定光68の時間分布が反映されている。S偏光成分は、上記のように、バンチ形状を反映している。アレイ光検出器63で和周波を検出することによって、バンチの時間分布を測定することができる。
このように、電気光学素子30を通過したパルスレーザ光のパルス幅を遅延素子43で短くする。そして、非線形光学素子62内において、レーザ発振器11からの参照光67と交差させる。これにより、バンチの時間分布を測定することができる。さらに、テンポラルデコーディングによって測定されたバンチの時間分布を上記のキャリブレーションに用いることができる。すなわち、スペクトルデコーディングによって測定された時間分布をテンポラルデコーディングによって測定された時間分布によって、キャリブレーションする。なお、非線形光学素子62内において、非線形光学効果によって発生した光は、参照光67、及び測定光68から分離して、アレイ光検出器63で測定される。なお、非線形光学素子62における非線形光学効果は、和周波発生に限られるものではない。例えば、差周波発生であってもよい。
さらに、偏光子46で取り出されたS偏光成分を他の用途に用いてもよい。例えば、加速器ベースの光源(放射光源)とレーザとのポンプ・プローブにおいて、パルス光を同期させるためのシグナル光として利用することもできる。ポンプ・プローブでは、例えば、レーザ光をポンプ光とし、パルス放射光をプローブ光とする。このような、ポンプ・プローブでは、エレクトロニクスの問題によって、通常、ピコ秒程度のタイミングジッターが存在する。従って、フェムト秒やアト秒の短パルスレーザをパルス放射光と、同期させることが困難である。従って、S偏光成分を同期させるためのシグナル光として用いる。これにより、正確にパルス光を同期できるため、タイミングジッタの問題を改善することができる。
例えば、S偏光成分をシグナル光とし、Ybファイバーレーザの2倍波等をポンプ光(励起光)として、NOPA(非平行光パラメトリック増幅器、又は非同軸光パラメトリック増幅器:Noncollinear Optical Parametrix Amplifier)増幅を行う。ポンプ・プローブ測光方法において、NOPA増幅されたパルス光をポンプ光として用いる。また、電子ビームから発生したFELなどの放射光をプローブ光として用いる。もちろん、NOPA増幅されたパルス光をプローブ光として用い、量子ビームから放射した光(シンクロトロン放射光、FEL等)をポンプ光として用いてもよい。そして、プローブ光と、ポンプ光を試料に同期して入射させる。このとき、ポンプ光とプローブ光とは数度の角度をなして、BBO結晶に入射させる。光学的にディレイすることができるため、オールオプティクスで構成することができる。このため、ポンプ光と、プローブ光の間にジッターがほとんどない。ポンプ光と、プローブ光とを正確に同期して、試料に照射することができる。このように、フェムト秒電子バンチとフェムト秒で同期した、高強度のフェムト秒レーザ光を利用することができる。超短パルスを用いたポンプ・プローブ測定方法が可能になる。
また、上記の測定装置において、S偏光成分のレーザパルスを、そのまま光ファイバー等で実験ユーザーに光トリガー信号として配布することもできる。これにより、光トリガー信号で動く測定器(光スイッチなど)による計測実験が、可能になる。すなわち、フェムト秒タイミングジッターでの計測実験が可能になる。もちろん、S偏光成分の強度や波長が光トリガー信号として不適切であれば、その機器に合うように、NOPAにより増強、波長変換、あるいは波長選択することもできる。このように、S偏光成分を測定器の光トリガー信号として利用することができる。
さらに、上記の説明では、出射光学系40に遅延素子43を設けたが、遅延素子43を設けなくてもよい。すなわち、分光測定器50の検出部52の1フレームが十分に長い場合は、遅延素子43を用いて、パルス幅を圧縮しなくてもよい。なお、遅延素子43を用いることによって、パルス幅を縮めることができる。この場合、検出部52の撮影速度を高くする必要がある。例えば、上記のPhantom V10.0を用いることによって、153800フレーム/sec(0.15MHz相当)の繰り返し周波数でも、毎バンチの測定が可能になる。この場合、外部ストレージに画像データを直接保存することで、数十分間の測定を行うことができる。遅延素子43と遅延素子23による遅延時間の合計を、領域毎に完全に一致させなくてもよい。すなわち、一部の領域で遅延時間の合計が異なっていてもよい。
電気光学素子30の結晶軸の方向は放射状に限られるものでない。なお、電気光学素子の結晶軸を放射状にすることによって、電子による電場の影響を受けやすくなる。すなわち、複屈折による位相変化が大きくなるため、電気光学素子30による偏光状態の変化が大きくなる。従って、より精度の高い測定を行うことができる。この場合、直線偏光をラディアル偏光に変換する偏光変換素子24を用いることが好ましい。すなわち、偏光変換素子24による電気ベクトルの振動方向と結晶軸の方向を平行にすることが好ましい。これにより、分光測定器50での受光量を高くすることができる。よって、正確に測定することができる。もちろん、電気ベクトルの振動方向と結晶軸の方向とは、完全に平行になっていなくてもよい。
なお、偏光変換素子24と遅延素子23の配置は逆でもよい。この場合、偏光変換素子24から出射したパルスレーザ光が遅延素子23に入射する。従って、ラディアル偏光状態のパルスレーザ光が、段階的に遅延される。よって、領域A〜H毎に段階的に時間遅延が与えられる。また、偏光変換素子42と遅延素子43の配置は逆でもよい。この場合、遅延素子43から出射したパルスレーザ光が偏光変換素子42に入射する。
なお、上記の説明では、電子ビームの測定について説明したが、測定対象が電子に限られるものではない。例えば、陽子やイオンなどの荷電粒子ビームであれば測定することができる。すなわち、荷電粒子加速器等の荷電粒子ビームを測定することができる。なお、相対論的な領域まで加速することで、電場が縦方向にカップリングしなくなる。よって、相対論的な領域まで加速した荷電粒子の測定に好適である。よって、加速器のビーム診断に好適である。また、RF電場で加速された荷電粒子に限らず、DC電場で加速された荷電粒子であってもよい。すなわち、RF加速器だけでなく、静電加速器のビームの3次元分布を測定することができる。この場合、荷電粒子ビームの形状の経時的な変化を測定することができる。時空間上でのビームの分布を測定することができる。
さらに、電子のエネルギー分布を測定することも可能である。例えば、ベンディングマグネットなどで、電子ビームを曲げた後、電気光学素子30を通過させる。ベンディングマグネットで曲げられると、電子のエネルギーに応じて、電子が空間的に分散する。すなわち、電子のエネルギーによって、ベンディングマグネットでの曲率半径が異なる。例えば、ベンディングマグネットによってY方向の磁場を発生させると、電子ビームはX方向に曲げられる。このとき、X方向における位置が、電子のエネルギーに対応する。このように、エネルギーに応じて電子を空間的に分散させる。そして、ベンディングマグネットで曲げられた電子ビームに対して、測定を行う。電子ビームの3次元形状を測定することで、バンチ内の各スライスにおけるエネルギー分布を測定することが可能になる。
さらに、荷電粒子ビームに限らず、レーザビームやFELなどの光ビームの3次元的な空間分布を測定することもできる。光ビームの場合は、光ビームによって発生する電場を測定する。これにより、光ビームの偏光状態などを測定することができる。すなわち、量子ビームの3次元的な測定を行うことができる。ここで、量子ビームには、荷電粒子ビームに限らず、レーザビーム等の光ビームが含まれる。すなわち、電場を生じさせる量子ビームであれば測定することができる。レーザビームを測定する場合、例えば、測定するパルスレーザ光を電気光学素子30に入射させる。なお、この場合、図6に示すような中空形状の電気光学素子30ではなく、中心にも電気光学結晶が配置された電気光学素子30が用いされる。従って、光軸近傍において、レーザビームが電気光学結晶に入射する。そのパルスレーザ光によって発生する電場によって、電気光学結晶に複屈折が生じる。よって、荷電粒子ビームと同様に、レーザビームを測定することができる。このように、量子ビームのパルス(バンチ)形状を3次元的に測定することができる。すなわち、時間分布、及び横方向空間分布の測定を簡便な構成で行うことができる。
例えば、S偏光成分をシグナル光とし、Ybファイバーレーザの2倍波等をポンプ光(励起光)として、NOPA増幅する。NOPA増幅したパルス光を、ポンプ・プローブ測光方法のポンプ光(又はプローブ光)とする。また、レーザビームである量子ビームをポンプ・プローブ測光方法のプローブ光(又はポンプ光)とする。そして、プローブ光と、ポンプ光を試料に同期して入射させる。ポンプ光と、プローブ光の間にジッターがほとんどない。正確に同期した状態のポンプ光と、プローブ光とを試料に照射することができる。このように、偏光子46で分岐した分岐光の一方を、ポンプ・プローブ方法に利用することが好適である。偏光子46で分岐された他方の分岐光をNOPA増幅する。NOPA増幅されたパルス光を、ポンプ・プローブ方法のポンプ光(又はプローブ光)として試料に照射する。さらに、量子ビーム、又は前記量子ビームから放射した光をプローブ光(又はポンプ光)として、試料に照射する。これにより、タイミングジッタの問題を改善することができる。また、3次元的な測定が行われた量子ビームを用いることができるため、効果的にポンプ・プローブ測定方法を行うことができる。
なお、偏光変換素子24をアキシコンレンズ21の光源部10との間に配置してもよい。この場合、偏光変換素子24を小さくすることができるため、偏光変換素子24の部品コストを低減することができる。また、偏光変換素子42をアキシコンレンズ45と偏光子46との間に配置しても、同様の効果を得ることができる。
また、偏光変換素子24と電気光学素子30との間に、リレー光学系を配置してもよい。これにより、偏光状態の分布の変化による影響を低減することができる。すなわち、パルスレーザ光が伝播する際に、回折の効果によって、ビーム断面における偏光状態の分布は変化する。この場合、回折による分布の変化が焦点面での電場分布に影響する可能性がある。従って、リレーレンズを設けて、偏光変換素子24を通過した直後の偏光状態と、電気光学素子30に入射する直前の偏光状態をほぼ同じにする。これにより、回折による偏光状態の分布の変化による影響を低減することができる。