JP5154311B2 - 磁気共鳴イメージング装置および神経伝達物質定量化方法 - Google Patents

磁気共鳴イメージング装置および神経伝達物質定量化方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置および神経伝達物質定量化方法に関する。特に、本発明は、被検体の脳についてスキャン(scan)を実施することによって当該脳から収集される磁気共鳴信号によるスペクトル(spectrum)と、当該脳の神経伝達物質においてN−アセチルアスパレート(NAA:N−acetyl aspartate)とγ−アミノ酪酸(GABA:gamma aminobutyric acid)とグルタミン(Gln:glutamin)とグルタメート(Glu:glutamate)とのそれぞれを含有する複数のファントム(phantom)のそれぞれについてスキャンを実施することによって当該ファントムのそれぞれから収集される磁気共鳴信号による複数の基準スペクトルとに基づいて、その脳に含まれる神経伝達物質を定量化する、磁気共鳴イメージング装置および神経伝達物質定量化方法に関する。
磁気共鳴イメージング装置は、被検体の撮影領域についてスキャンを実施することによって、その撮影領域についてイメージングを実施する。
たとえば、磁気共鳴イメージング装置においては、静磁場が形成される撮像空間において被検体の撮影領域にRFパルスを送信することにより、その撮影領域におけるプロトンのスピンを核磁気共鳴(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)現象によって励起させ、その励起されたスピンにより発生する磁気共鳴(MR)信号を受信する。その後、このスキャンの実施により得られた磁気共鳴信号を、ローデータ(Raw Data)として、その被検体の撮影領域について磁気共鳴画像を生成する。
この磁気共鳴イメージング装置においては、被検体の代謝物質についてスペクトルを測定する磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS:Magnetic Resonance Spectroscopy)が実施されている。
MRSにおいては、たとえば、人体の脳において存在する、N−アセチルアスパレート(NAA)、グルタミン(Gln)、グルタメート(Glu)などの神経伝達物質について、定量的評価を実施している。(例えば、非特許文献1から4参照)。
ここでは、PRESS(Point−Resolved Spectroscopy)法により人体の脳について得られるスペクトルを用いて定量的評価が実施されている(例えば、特許文献1参照)。また、この他に、MEGA PRESS法によりスペクトルを得ることが提案されている(たとえば、非特許文献5,特許文献2参照)。
特開2004−148024号公報(段落0002など) 特開2007−159928号公報(段落0004など) "Homonuclear J−refocused spectral editing technique for quantification of glutamine and glutamate by 1H NMR spectroscopy",Lee HK,Yaman A, Nalcioglu O.Magn Reson Med. 1995 Aug;34(2):p.253−9 "Localized 1H NMR spectra of glutamate in the human brain",Rothman DL, Hanstock CC, Petroff OA, Novotny EJ, Prichard JW, Shulman RG.Magn Reson Med. 1992 May;25(1):p.94−106. "Detection of hidden metabolites by localized proton magnetic resonance spectroscopy in vivo",Weber OM, Trabesinger AH, Duc CO, Meier D, Boesiger P.Technol Health Care. 1997 Dec;5(6):471−91 Simultaneous in vivo spectral editing and water suppression. Mescher M, Merkle H, Kirsch J, Garwood M, Gruetter R. Related Articles.NMR Biomed. 1998 Oct;11(6):p.266−72 "Measurement of Reduced Glutathione(GSH) in Human Brain Using LCModel Analysis of Difference−Edited Spectra",by Melissa Terpstra,Pierre−Gilles Henry, and Rolf Grueter, Magnetic Resonance in Medicine 50, p.19−23
複数の神経伝達物質は磁気共鳴周波数が互いに近接する場合があるため、上記にて得られるスペクトルは、複数の神経伝達物質に対応するスペクトルが互いに重なり合う場合がある。このため、そのスペクトルから各神経伝達物質のスペクトルを分離して抽出することが困難な場合があり、各神経伝達物質について定量的評価を実施することが容易ではない場合がある。
このため、複数の異なるエコー時間(TE)において得られる複数のスペクトルについて差分処理を実施することによって、所望な神経伝達物質について定量化を実施する差分法などのさまざまな方法が提案されている。
しかしながら、上記の差分法においては、異なるエコー時間にてスキャンを実施することで得られるスペクトルは、T2減衰が異なる時点で計測されることになるため、高精度に定量化をすることが困難になる場合がある。また、その他の方法においては、SN比が低く、高精度に定量化をすることが困難になる場合がある。
また、神経伝達物質において、特に、γ−アミノ酪酸(GABA)、グルタミン(Gln)、グルタメート(Glu)については、スペクトルを高精度に得ることが困難であるため、定量的評価を実施することが容易ではない。
このように、従来においては、神経伝達物質について高精度に定量化することが困難な場合がある。特に、γ−アミノ酪酸(GABA)、グルタミン(Gln)、グルタメート(Glu)については、この不具合が顕在化する場合がある。
したがって、本発明は、神経伝達物質について高精度に定量化することが可能な、磁気共鳴イメージング装置および神経伝達物質定量化方法を提供する。
本発明は、被検体の脳についてスキャンを実施することによって当該脳から磁気共鳴信号を収集すると共に、当該脳の神経伝達物質においてN−アセチルアスパレートとγ−アミノ酪酸とグルタミンとグルタメートとのそれぞれを含有する複数のファントムのそれぞれについてスキャンを実施することによって当該ファントムのそれぞれから磁気共鳴信号を収集するスキャン部と、前記スキャン部によって前記脳から収集された磁気共鳴信号によるスペクトルと前記複数のファントムのそれぞれから収集された磁気共鳴信号による複数の基準スペクトルとに基づいて前記脳の神経伝達物質について定量化するようにデータ処理を実施する定量化処理部とを有する磁気共鳴イメージング装置であって、前記スキャン部は、前記脳と前記複数のファントムとのそれぞれから磁気共鳴信号を収集する複数のスキャンを、MEGA PRESS法によって、エコー時間が互いに同じになるように実施する。
好適には、前記スキャン部は、3テスラの静磁場が形成された撮像空間において、前記エコー時間が61msになるように前記複数のスキャンを実施する。
好適には、前記定量化処理部は、前記複数の基準スペクトルについて半値幅と周波数とを算出するようにデータ処理を実施する第1の定量化処理部と、前記脳のスペクトルにおいてN−アセチルアスパレートに対応するスペクトルについて半値幅と周波数とを算出するようにデータ処理を実施する第2の定量化処理部と、前記第2の定量化処理部によって算出されたスペクトルの半値幅と前記第1の定量化処理部によって算出された複数の基準スペクトルの半値幅との差分値に基づいて、前記複数の基準スペクトルについて、指数関数のアポダイゼーションを適応するようにデータ処理を実施する第3の定量化処理部とを有し、前記第3の定量化処理部によってデータ処理が実施された基準スペクトルを用いて、前記脳に含まれる神経伝達物質を定量化するデータ処理を実施する。
好適には、前記第1の定量化処理部は、マーカット・フィッティング処理を前記データ処理として実施し、前記第2の定量化処理部は、マーカット・フィッティング処理を前記データ処理として実施する。
好適には、前記定量化処理部は、前記第3の定量化処理部によってデータ処理が実施された複数の基準スペクトルにおいて、N−アセチルアスパレートを含有するファントムの基準スペクトルと、前記脳のスペクトルにおいてN−アセチルアスパレートに対応するスペクトルとについてフィッティング処理を実施することによって、当該N−アセチルアスパレートを含有するファントムの基準スペクトルについて周波数と強度とを補正するデータ処理を実施する第4の定量化処理部と、前記第3の定量化処理部によってデータ処理が実施された複数の基準スペクトルにおいて、γ−アミノ酪酸を含有するファントムの基準スペクトルと、グルタミンを含有するファントムの基準スペクトルと、グルタメートを含有するファントムの基準スペクトルとのそれぞれについて、周波数を補正するデータ処理を、前記第4の定量化処理部が補正した周波数の補正値に対応するように実施する第5の定量化処理部と、前記脳のスペクトルと、前記第4の定量化処理部によってデータ処理が実施された基準スペクトルとを差分処理することによって、第1の差分スペクトルを算出する第6の定量化処理部と、前記第5の定量化処理部によってデータ処理が実施された複数の基準スペクトルにおいて、γ−アミノ酪酸を含有するファントムの基準スペクトルの強度について補正するデータ処理を、前記第6の定量化処理部によって算出された第1の差分スペクトルと、γ−アミノ酪酸を含有するファントムの基準スペクトルとについてフィッティング処理をすることによって実施する第7の定量化処理部と、前記第6の定量化処理部によって算出された第1の差分スペクトルと、前記第7の定量化処理部によって強度について補正された基準スペクトルとを差分処理することによって、第2の差分スペクトルを算出する第8の定量化処理部と、前記第5の定量化処理部によってデータ処理が実施された複数の基準スペクトルにおいて、グルタミンを含有するファントムの基準スペクトルの強度と、グルタメートを含有するファントムの基準スペクトルの強度とについて補正するデータ処理を、前記第8の定量化処理部によって算出された第2の差分スペクトルと、グルタミンを含有するファントムの基準スペクトルおよびグルタメートを含有するファントムの基準スペクトルとについてフィッティング処理をすることによって実施する第9の定量化処理部とを含み、当該定量化処理部は、前記第4の定量化処理部によってデータ処理が実施された基準スペクトルと、前記第7の定量化処理部によってデータ処理が実施された基準スペクトルと、前記第9の定量化処理部によってデータ処理が実施された基準スペクトルとを用いて、前記脳に含まれる神経伝達物質を定量化する。
本発明は、被検体の脳についてスキャンを実施することによって当該脳から収集される磁気共鳴信号によるスペクトルと、当該脳の神経伝達物質においてN−アセチルアスパレートとγ−アミノ酪酸とグルタミンとグルタメートとのそれぞれを含有する複数のファントムのそれぞれについてスキャンを実施することによって当該ファントムのそれぞれから収集される磁気共鳴信号による複数の基準スペクトルとに基づいて、前記脳の神経伝達物質について定量化する神経伝達物質定量化方法であって、前記脳と前記複数のファントムとのそれぞれから磁気共鳴信号を収集する複数のスキャンは、MEGA PRESS法によって、エコー時間が互いに同じになるように実施される。
好適には、前記複数のスキャンは、3テスラの静磁場が形成された撮像空間において、前記エコー時間が61msになるように実施される。
好適には、前記複数の基準スペクトルについて半値幅と周波数とを算出するようにデータ処理を実施する第1の定量化処理ステップと、前記脳のスペクトルにおいてN−アセチルアスパレートに対応するスペクトルについて半値幅と周波数とを算出するようにデータ処理を実施する第2の定量化処理ステップと、前記第2の定量化処理ステップによって算出されたスペクトルの半値幅と前記第1の定量化処理ステップによって算出された複数の基準スペクトルの半値幅との差分値に基づいて、前記複数の基準スペクトルについて、指数関数のアポダイゼーションを適応するようにデータ処理を実施する第3の定量化処理ステップとを有し、前記第3の定量化処理ステップによってデータ処理が実施された基準スペクトルを用いて、前記脳に含まれる神経伝達物質を定量化するデータ処理を実施する。
好適には、前記第1の定量化処理ステップにおいては、マーカット・フィッティング処理を前記データ処理として実施し、前記第2の定量化処理ステップにおいては、マーカット・フィッティング処理を前記データ処理として実施する。
好適には、前記第3の定量化処理ステップによってデータ処理が実施された複数の基準スペクトルにおいて、N−アセチルアスパレートを含有するファントムの基準スペクトルと、前記脳から収集された磁気共鳴信号によるスペクトルにおいてN−アセチルアスパレートに対応するスペクトルとについてフィッティング処理を実施することによって、当該N−アセチルアスパレートを含有するファントムの基準スペクトルについて周波数と強度とを補正するデータ処理を実施する第4の定量化処理ステップと、前記第3の定量化処理ステップによってデータ処理が実施された複数の基準スペクトルにおいて、γ−アミノ酪酸を含有するファントムの基準スペクトルと、グルタミンを含有するファントムの基準スペクトルと、グルタメートを含有するファントムの基準スペクトルとのそれぞれについて、周波数を補正するデータ処理を、前記第4の定量化処理ステップにて補正した周波数の補正値に対応するように実施する第5の定量化処理ステップと、前記脳から収集された磁気共鳴信号によるスペクトルと、前記第4の定量化処理ステップによってデータ処理が実施された基準スペクトルとを差分処理することによって、第1の差分スペクトルを算出する第6の定量化処理ステップと、前記第5の定量化処理ステップによってデータ処理が実施された複数の基準スペクトルにおいて、γ−アミノ酪酸を含有するファントムの基準スペクトルの強度について補正するデータ処理を、前記第6の定量化処理ステップによって算出された第1の差分スペクトルと、γ−アミノ酪酸を含有するファントムの基準スペクトルとについてフィッティング処理をすることによって実施する第7の定量化処理ステップと、前記第6の定量化処理ステップによって算出された第1の差分スペクトルと、前記第7の定量化処理ステップによって強度について補正された基準スペクトルとを差分処理することによって、第2の差分スペクトルを算出する第8の定量化処理ステップと、前記第5の定量化処理ステップによってデータ処理が実施された複数の基準スペクトルにおいて、グルタミンを含有するファントムの基準スペクトルの強度と、グルタメートを含有するファントムの基準スペクトルの強度とについて補正するデータ処理を、前記第8の定量化処理ステップによって算出された第2の差分スペクトルと、グルタミンを含有するファントムの基準スペクトルおよびグルタメートを含有するファントムの基準スペクトルとについてフィッティング処理をすることによって実施する第9の定量化処理ステップとを含み、前記第4の定量化処理ステップによってデータ処理が実施された基準スペクトルと、前記第7の定量化処理ステップによってデータ処理が実施された基準スペクトルと、前記第9の定量化処理ステップによってデータ処理が実施された基準スペクトルとを用いて、前記脳に含まれる神経伝達物質を定量化する。
本発明によれば、神経伝達物質について高精度に定量化することが可能な、磁気共鳴イメージング装置および神経伝達物質定量化方法を提供することができる。
以下より、本発明にかかる実施形態の一例について図面を参照して説明する。
(装置構成)
図1は、本発明にかかる実施形態において、磁気共鳴イメージング装置1の構成を示す構成図である。
図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置1は、スキャン部2と、操作コンソール部3とを有している。
磁気共鳴イメージング装置1においては、静磁場が形成された撮像空間Bにおいて被検体の撮影領域へRFパルスを送信し、そのRFパルスが送信された撮影領域にて発生する磁気共鳴信号を受信するように、スキャン部2が被検体の撮影領域についてスキャンを実施する。本実施形態においては、人体である被検体SUの脳についてスキャンを実施することによって、その脳から磁気共鳴信号を収集する。
その後、磁気共鳴イメージング装置1においては、そのスキャンの実施によって収集された磁気共鳴信号について、操作コンソール部3がデータ処理を実施し、撮影領域の情報を得る。本実施形態においては、人体である被検体SUの脳から収集された磁気共鳴信号によるスペクトルについてデータ処理を実施し、その脳の神経伝達物質について定量化する。
スキャン部2について説明する。
スキャン部2は、図1に示すように、静磁場マグネット部12と、勾配コイル部13と、RFコイル部14と、被検体移動部15と、RF駆動部22と、勾配駆動部23と、データ収集部24とを有しており、操作コンソール部3から出力される制御信号に基づいて、被検体SUの撮影領域についてスキャンを実施する。
スキャン部2は、たとえば、円筒形状になるように形成されており、その中心部分の円柱状の空間が、被検体SUについて撮像を行う撮像空間Bとして設けられ、その撮像空間Bに被検体SUを収容するように構成されている。そして、スキャン部2は、被検体SUの撮影領域についてスキャンを実施する際には、静磁場マグネット部12によって静磁場が形成された撮像空間B内において、被検体移動部15において載置された被検体SUの撮影領域のスピンを励起するようにRFコイル部14がRFパルスを送信すると共に、そのRFパルスが送信された被検体SUの撮影領域に勾配コイル部13が勾配パルスを送信する。そして、被検体SUの撮影領域において発生する磁気共鳴信号をRFコイル部14が受信する。
詳細については後述するが、本実施形態においては、スキャン部2は、被検体SUの脳についてスキャンを実施することによって、その脳から磁気共鳴信号を収集する。そして、さらに、スキャン部2は、その被検体SUの脳における神経伝達物質において、N−アセチルアスパレート(NAA)とγ−アミノ酪酸(GABA)とグルタミン(Gln)とグルタメート(Glu)とのそれぞれを含有する複数のファントムのそれぞれについて、スキャンを実施することによって、そのファントムのそれぞれから磁気共鳴信号を収集する。
ここでは、スキャン部2は、その脳と、その複数のファントムとのそれぞれから磁気共鳴信号を収集する複数のスキャンを、MEGA PRESS法によって実施する。このとき、スキャン部2は、各スキャンにおけるエコー時間が互いに同じになるように実施する。具体的には、スキャン部2は、3テスラの静磁場が形成された撮像空間において、そのエコー時間が61msになるように、この複数のスキャンのそれぞれを実施する。
スキャン部2の各構成要素について、順次、説明する。
静磁場マグネット部12は、超伝導磁石(図示なし)を含み、被検体SUが収容される撮像空間Bに静磁場を形成するように構成されている。ここでは、静磁場マグネット部12は、被検体移動部15において載置されている被検体SUの体軸方向(z方向)に沿うように静磁場を形成する。すなわち、静磁場マグネット部12は、水平磁場型である。この他に、静磁場マグネット部12は、垂直磁場型であって、たとえば、一対の永久磁石が対面する方向に沿って静磁場を形成するように構成されていてもよい。
なお、本実施形態においては、静磁場マグネット部12は、3テスラの磁場強度の静磁場を撮像空間Bに形成するように構成されている。
勾配コイル部13は、静磁場マグネット部12によって静磁場が形成された撮像空間Bに勾配磁場を形成し、RFコイル部14が受信する磁気共鳴信号に空間位置情報を付加するように構成されている。ここでは、勾配コイル部13は、x方向とy方向とz方向との互いに直交する3軸方向のそれぞれに対応するように、3系統からなる。これらは、撮像条件に応じて、周波数エンコード(encode)方向と位相エンコード方向とスライス(slice)選択方向とのそれぞれに勾配磁場を形成するように、勾配パルスを送信する。具体的には、勾配コイル部13は、被検体SUの撮影領域に対応するように、その被検体SUのスライス選択方向に勾配磁場を印加し、RFコイル部14がRFパルスを送信することによって励起させる被検体SUのスライスを選択する。また、勾配コイル部13は、被検体SUの位相エンコード方向に勾配磁場を印加し、RFパルスにより励起されたスライスにおいて生ずる磁気共鳴信号を位相エンコードする。そして、勾配コイル部13は、被検体SUの周波数エンコード方向に勾配磁場を印加し、RFパルスにより励起されたスライスにおいて生ずる磁気共鳴信号を周波数エンコードする。
RFコイル部14は、静磁場が形成される撮像空間B内において、電磁波であるRFパルスを送信して高周波磁場を形成し、被検体SUの撮影領域におけるプロトンのスピンを励起する。そして、RFコイル部14は、その励起された被検体SUの撮影領域内のプロトンから発生する電磁波を、磁気共鳴信号として受信する。
ここでは、RFコイル部14は、図1に示すように、送信コイル14aと、受信コイル14bとを有する。ここで、送信コイル14aは、たとえば、バードケージ(birdcage)型のボディコイル(body coil)であって、被検体SUの撮影領域を囲むように配置されており、RFパルスを送信する。一方、受信コイル14bは、たとえば、着脱自在な表面コイルであり、被検体SUの撮影領域に対応するように配置され、その撮影領域から磁気共鳴信号を受信する。たとえば、受信コイル14bは、被検体SUの撮影領域を収容する収容空間(図示なし)が形成されており、その収容空間において被検体SUの撮影領域を収容するように配置される。
被検体移動部15は、クレードル15aとクレードル移動部15bとを有しており、制御部30から出力される制御信号に基づいて、撮像空間Bの内部と外部との間において、クレードル15aをクレードル移動部15bが移動させるように構成されている。
ここで、被検体移動部15のクレードル15aは、被検体SUが載置される載置面を備えたテーブルであり、図1に示すように、クレードル移動部15bによって、水平方向xzと上下方向yとのそれぞれの方向に移動され、静磁場が形成される撮像空間Bに搬出入される。そして、図1に示すように、クレードル15aは、その載置面に載置された被検体SUの撮影領域から磁気共鳴信号を受信する受信コイル14bが、その載置面に配置されるように構成されている。
また、被検体移動部15のクレードル移動部15bは、クレードル15aを撮像空間Bの内部と外部との間において移動するように構成されている。つまり、クレードル移動部15bは、クレードル15aを撮像空間Bの外部から内部へ移動させることによって、撮像空間Bの内部へ収容させるように構成されている。クレードル移動部15bは、たとえば、ローラー式駆動機構を備えており、アクチュエータによりローラーを駆動させてクレードル15aを水平方向xzに移動する。また、クレードル移動部15bは、たとえば、アーム式駆動機構を備えており、交差した2本のアーム間の角度を可変することにより、クレードル15aを上下方向yに移動する。
RF駆動部22は、RFコイル部14を駆動させて撮像空間B内にRFパルスを送信させて、撮像空間Bに高周波磁場を形成させるように構成されている。具体的には、RF駆動部22は、操作コンソール部3から出力される制御信号に基づいて、ゲート変調器(図示なし)を用いてRF発振器(図示なし)から出力される信号を所定のタイミングおよび所定の包絡線の信号に変調した後に、そのゲート変調器により変調された信号を、RF電力増幅器(図示なし)によって増幅してRFコイル部14に出力し、RFパルスを送信させる。
勾配駆動部23は、操作コンソール部3から出力される制御信号に基づいて、勾配パルスを勾配コイル部13に印加して駆動させ、静磁場が形成されている撮像空間B内に勾配磁場を発生させるように構成されている。勾配駆動部23は、3系統の勾配コイル部13に対応して3系統の駆動回路(図示なし)を有する。
データ収集部24は、操作コンソール部3から出力される制御信号に基づいて、RFコイル部14が受信する磁気共鳴信号を収集するように構成されている。ここでは、データ収集部24は、RFコイル部14が受信する磁気共鳴信号をRF駆動部22のRF発振器(図示なし)の出力を参照信号として位相検波器(図示なし)が位相検波する。その後、A/D変換器(図示なし)を用いて、このアナログ信号である磁気共鳴信号をデジタル信号に変換して出力する。
操作コンソール部3について説明する。
操作コンソール部3は、図1に示すように、制御部30と、データ処理部31と、操作部32と、表示部33と、記憶部34とを有している。操作コンソール部3は、スキャン部2が被検体SUの撮影領域についてスキャンを実施するように制御する。そして、操作コンソール部3は、そのスキャン部2がスキャンを実施することによって収集した磁気共鳴信号についてデータ処理を実行して、その被検体SUの撮影領域についてスペクトル情報を得るように構成されている。
操作コンソール部3の各構成要素について、順次、説明する。
制御部30は、コンピュータと、コンピュータに所定のデータ処理を実行させるプログラムを記憶するメモリとを有しており、各部を制御する。ここでは、制御部30は、設定されたスキャン条件に対応するように、RF駆動部22と勾配駆動部23とデータ収集部24とのそれぞれに制御信号を出力することによって、スキャンを実行させる。そして、これと共に、データ処理部31と表示部33と記憶部34とへ、制御信号を出力し、制御を行う。
データ処理部31は、コンピュータと、そのコンピュータを用いて所定のデータ処理を実行するプログラムを記憶するメモリとを有しており、制御部30から出力された制御信号に基づいて、コンピュータがプログラムによって機能して、各データ処理を実施するように構成されている。
図2は、本発明にかかる実施形態において、データ処理部31の機能ブロック図である。
図2に示すように、データ処理部31は、スキャン条件設定部31aと、定量化処理部31bとを有する。
ここで、データ処理部31のスキャン条件設定部31aは、操作部32においてオペレータによって入力された指令に基づいて、被検体SUについてスキャンを実施する際のスキャン条件を設定するように構成されている。本実施形態においては、上述したように、スキャン条件設定部31aは、被検体の脳から磁気共鳴信号を収集するために実行するスキャンについて、スキャン条件を設定する。また、スキャン条件設定部31aは、その被検体SUの脳における神経伝達物質において、N−アセチルアスパレート(NAA)とγ−アミノ酪酸(GABA)とグルタミン(Gln)とグルタメート(Glu)とのそれぞれを含有する複数のファントムのそれぞれから磁気共鳴信号を収集するために実行する複数のスキャンについて、スキャン条件を設定する。具体的には、スキャン条件設定部31aは、被検体SUの脳と、複数のファントムとのそれぞれから磁気共鳴信号を収集する複数のスキャンを、MEGA PRESS法によって実施するように、スキャン条件を設定する。また、スキャン条件設定部31aは、複数のスキャンのそれぞれにおけるエコー時間が61msになるように、スキャン条件を設定する。
そして、データ処理部31の定量化処理部31bは、スキャン部2によって被検体SUの脳から収集された磁気共鳴信号によるスペクトルと複数のファントムのそれぞれから収集された磁気共鳴信号による複数の基準スペクトルとに基づいて、その被検体SUの脳の神経伝達物質について定量化するようにデータ処理を実施する。
ここでは、定量化処理部31bは、まず、スキャン部2によって被検体の脳から収集された磁気共鳴信号に基づいて、その脳のスペクトルを生成すると共に、複数のファントムのそれぞれから収集された磁気共鳴信号のそれぞれに基づいて、複数のファントムの基準スペクトルを生成する。具体的には、スキャンの実施によってデータ収集部24が収集した磁気共鳴信号をデジタル信号として取得し、そのデジタル信号に変換された磁気共鳴信号に対して逆フーリエ変換することによって、各スペクトルを生成する。ここでは、N−アセチルアスパレート(NAA)とγ−アミノ酪酸(GABA)とグルタミン(Gln)とグルタメート(Glu)とのそれぞれを含有する複数のファントムのそれぞれから収集された磁気共鳴信号に基づいて、NAA基準スペクトルとGABA基準スペクトルとGln基準スペクトルとGlu基準スペクトルとを生成する。そして、その脳のスペクトルと、その複数のファントムの基準スペクトルとに基づいて、その被検体SUの脳の神経伝達物質について定量化するように構成されている。
図3は、本発明にかかる実施形態において、定量化処理部31bの機能ブロック図である。
図3に示すように、定量化処理部31bは、第1の定量化処理部301と、第2の定量化処理部302と、第3の定量化処理部303と、第4の定量化処理部304と、第5の定量化処理部305と、第6の定量化処理部306と、第7の定量化処理部307と、第8の定量化処理部308と、第9の定量化処理部309とを有する。
定量化処理部31bの第1の定量化処理部301は、複数のファントムの基準スペクトルについて半値幅と周波数とを算出するようにデータ処理を実施する。つまり、NAA基準スペクトルとGABA基準スペクトルとGln基準スペクトルとGlu基準スペクトルとのそれぞれについて、半値幅と周波数とを算出する。ここでは、第1の定量化処理部301は、マーカット・フィッティング(Marquardt Fitting)処理にて、このデータ処理を実施するように構成されている。
定量化処理部31bの第2の定量化処理部302は、被検体SUの脳のスペクトルにおいてN−アセチルアスパレート(NAA)に対応するスペクトルについて、半値幅と周波数とを算出するようにデータ処理を実施する。ここでは、第2の定量化処理部302は、上記と同様に、マーカット・フィッティング処理にて、このデータ処理を実施するように構成されている。
定量化処理部31bの第3の定量化処理部303は、第2の定量化処理部302によって算出された被検体SUの脳のスペクトルの半値幅と、第1の定量化処理部301によって算出された複数のファントムの基準スペクトルの半値幅との差分値に基づいて、その複数の基準スペクトルについて、指数関数のアポダイゼーションを適応するようにデータ処理を実施する。つまり、NAA基準スペクトルとGABA基準スペクトルとGln基準スペクトルとGlu基準スペクトルとのそれぞれについて、上記のようにアポダイゼーションを適応する。
定量化処理部31bの第4の定量化処理部304は、第3の定量化処理部303によってデータ処理が実施された複数のファントムの基準スペクトルにおいて、N−アセチルアスパレート(NAA)を含有するファントムの基準スペクトルと、被検体SUの脳のスペクトルにおいてN−アセチルアスパレート(NAA)に対応するスペクトルとについて、フィッティング処理を実施することによって、そのN−アセチルアスパレート(NAA)を含有するファントムの基準スペクトルについて、周波数と強度とを補正するデータ処理を実施する。つまり、被検体SUの脳のNAAスペクトルにNAA基準スペクトルがフィッティングするように、NAA基準スペクトルの周波数と強度とを補正する。
定量化処理部31bの第5の定量化処理部305は、第3の定量化処理部303によってデータ処理が実施された複数のファントムの基準スペクトルにおいて、γ−アミノ酪酸(GABA)を含有するファントムの基準スペクトルと、グルタミン(Gln)を含有するファントムの基準スペクトルと、グルタメート(Glu)を含有するファントムの基準スペクトルとのそれぞれについて、周波数を補正するデータ処理を、第4の定量化処理部304が補正した周波数の補正値に対応するように実施する。つまり、NAA基準スペクトルについて補正された周波数の補正値に対応するように、GABA基準スペクトルと、Gln基準スペクトルと、Glu基準スペクトルとのそれぞれの周波数について補正する。
第6の定量化処理部306は、被検体SUの脳のスペクトルと、第4の定量化処理部304によってデータ処理が実施された基準スペクトル(N−アセチルアスパレートを含有するファントムの基準スペクトル)とを差分処理することによって、第1の差分スペクトルを算出する。つまり、被検体SUの脳のスペクトルから、周波数と強度とが補正されたNAA基準スペクトルを差分するように、差分処理を実施する。
定量化処理部31bの第7の定量化処理部307は、第5の定量化処理部305によってデータ処理が実施された複数のファントムの基準スペクトルにおいて、γ−アミノ酪酸(GABA)を含有するファントムの基準スペクトルの強度について補正するデータ処理を、第6の定量化処理部306によって算出された第1の差分スペクトルと、γ−アミノ酪酸(GABA)を含有するファントムの基準スペクトルとについてフィッティング処理をすることによって実施する。つまり、被検体SUの脳のスペクトルからNAA基準スペクトルが差分されることによって算出された第1の差分スペクトルに、GABA基準スペクトルがフィッティングするように、GABA基準スペクトルの強度を補正する。
定量化処理部31bの第8の定量化処理部308は、第6の定量化処理部306によって算出された第1の差分スペクトルと、第7の定量化処理部307によって強度について補正された基準スペクトル(γ−アミノ酪酸を含有するファントムの基準スペクトル)とを差分処理することによって、第2の差分スペクトルを算出する。つまり、被検体SUの脳のスペクトルからNAA基準スペクトルが差分されることによって算出された第1の差分スペクトルから、強度が補正されたGABA基準スペクトルを差分する。
定量化処理部31bの第9の定量化処理部309は、第5の定量化処理部305によってデータ処理が実施された複数のファントムの基準スペクトルにおいて、グルタミン(Gln)を含有するファントムの基準スペクトルの強度と、グルタメート(Glu)を含有するファントムの基準スペクトルの強度とについて補正するデータ処理を、第8の定量化処理部308によって算出された第2の差分スペクトルと、グルタミン(Gln)を含有するファントムの基準スペクトルおよびグルタメート(Glu)を含有するファントムの基準スペクトルとについてフィッティング処理をすることによって、実施する。つまり、被検体SUの脳のスペクトルからNAA基準スペクトルとGABA基準スペクトルとが差分されることによって算出された第2の差分スペクトルに、Gln基準スペクトルおよびGlu基準スペクトルのそれぞれがフィッティングするように、Gln基準スペクトルおよびGlu基準スペクトルの強度を補正する。
そして、データ処理部31の定量化処理部31bは、第4の定量化処理部304によってデータ処理が実施された基準スペクトル(N−アセチルアスパレートを含有するファントムの基準スペクトル)と、第7の定量化処理部307によってデータ処理が実施された基準スペクトル(γ−アミノ酪酸を含有するファントムの基準スペクトル)と、第9の定量化処理部309によってデータ処理が実施された基準スペクトル(グルタミン(Gln)を含有するファントムの基準スペクトルと、グルタメート(Glu)を含有するファントムの基準スペクトル)とを用いて、脳に含まれる神経伝達物質を定量化する。つまり、被検体SUの脳のスペクトルに対応するように、周波数と強度とが補正されたNAA基準スペクトルとGABA基準スペクトルとGln基準スペクトルとGlu基準スペクトルとのそれぞれを用いて、その被検体SUの脳に含まれる神経伝達物質を定量化する。
操作部32は、キーボード(keyboard)やポインティングデバイス(pointing device)などの操作デバイスにより構成されている。操作部32は、オペレータによって操作データが入力され、その操作データを制御部30に出力する。
表示部33は、LCD(Liquid Cristal Display)などの表示デバイスにより構成されており、制御部30から出力された制御信号に基づいて、表示画面に画像を表示する。ここでは、表示部33は、オペレータが操作データを入力する入力項目を示す操作画像を、表示画面に表示する。具体的には、被検体SUについてスキャンを実施する際のスキャンパラメータについて入力する入力項目を示すメニュー画像を表示画面に表示する。この他に、本実施形態においては、表示部33は、定量化処理部31bによって神経伝達物質について定量化されたデータの数値を、表示画面に表示する。
記憶部34は、メモリにより構成されており、各種データを記憶している。記憶部34は、その記憶されたデータが必要に応じて制御部30によってアクセスされる。
(動作)
以下より、上記の磁気共鳴イメージング装置1を用いて、被検体SUの脳の神経伝達物質について定量化する方法について説明する。
図4は、本発明にかかる実施形態において、被検体SUの脳に含まれる神経伝達物質について定量化する際の動作を示すフロー図である。
被検体SUの脳に含まれる神経伝達物質について定量化する際には、まず、図4に示すように、ファントムについてスキャンを実施し、基準スペクトルを生成する(S11)。
ここでは、被検体SUの脳における神経伝達物質において、N−アセチルアスパレート(NAA)とγ−アミノ酪酸(GABA)とグルタミン(Gln)とグルタメート(Glu)とのそれぞれを含有する複数のファントムのそれぞれについて、スキャン部2がスキャンを実施することによって、そのファントムのそれぞれから磁気共鳴信号を収集する。つまり、NAAが所定の濃度になるように溶解された溶液を含有するファントムと、GABAが所定の濃度になるように溶解された溶液を含有するファントムと、Glnが所定の濃度になるように溶解された溶液を含有するファントムと、Gluが所定の濃度になるように溶解された溶液を含有するファントムとのそれぞれについて、スキャンを実施する。
図5は、本発明にかかる実施形態において、ファントムについてスキャンを実施する際のパルスシーケンスを示す図である。図5において、RFは、RFパルスを示し、Gx,Gy,Gzは、x方向とy方向とz方向との3軸方向における勾配パルスを示しており、それぞれは、横軸が時間軸tであり、縦軸がパルス強度を示している。
本実施形態においては、図5に示すように、MEGA PRESS法に対応するパルスシーケンスによって、複数のファントムのそれぞれについてスキャンを実施する。
具体的には、図5に示すように、MEGA PRESS法においては、フリップアングルが90°である第1RFパルスRF1と、フリップアングルが180°である第2RFパルスRF2と、フリップアングルが180°である第3RFパルスRF3と、フリップアングルが180°である第4RFパルスRF4と、フリップアングルが180°である第5RFパルスRF5とを、RFパルスとして順次送信する第1パルスシーケンスを実施する(図5中では、第3RFパルスRF3,第5RFパルスRF5の上方に、「On」と表記している)。ここでは、第3RFパルスRF3と第5RFパルスRF5とは、周波数選択反転パルスであり、第3RFパルスRF3と第5RFパルスRF5とを所定の周波数帯域の信号を抑制するように送信する。また、このとき、第1RFパルスRF1と第2RFパルスRF2との間の時間τ1とし、第4RFパルスRF4と、磁気共鳴信号MRを収集するエコー時間TEとの間の時間τ2としたとき、第2RFパルスRF2と第4RFパルスRF4との間の時間が、τ1+τ2になるようにスキャンを実施する。そして、第1のパルスシーケンスの他に、この第1のパルスシーケンスにおいて第3RFパルスRF3と第5RFパルスRF5とを送信しない第2のパルスシーケンスを実施する(図5中では、第3RFパルスRF3,第5RFパルスRF5の上方に、「Off」と表記している)。
そして、パルスシーケンスの実施によって収集した磁気共鳴信号をデジタル信号として取得し、そのデジタル信号に変換された磁気共鳴信号に対して逆フーリエ変換することによって、スペクトルを生成する。その後、第1のパルスシーケンスにて収集される磁気共鳴信号によるスペクトルと、その第2のパルスシーケンスにて収集される磁気共鳴信号によるスペクトルとを差分処理することによって、そのスキャンが実施されたファントムの基準スペクトルを算出する。
図6は、本発明にかかる実施形態において、ファントムの基準スペクトルを示す図である。図6において、横軸は化学シフト(ppm)であり、縦軸は、強度である。
図6に示すように、本実施形態においては、NAAを含有するファントムから収集された磁気共鳴信号に基づいて、NAA基準スペクトルFSNAAを生成し、GABAを含有するファントムから収集された磁気共鳴信号に基づいて、GABA基準スペクトルFSGABAを生成し、Glnを含有するファントムから収集された磁気共鳴信号に基づいて、Gln基準スペクトルFSGlnを生成し、Gluを含有するファントムから収集された磁気共鳴信号に基づいて、Glu基準スペクトルFSGluを生成する。
本実施形態においては、この複数のファントムのそれぞれについて実施する複数のスキャンのそれぞれを、エコー時間が互いに同じになるように実施する。本実施形態においては、3テスラの静磁場が形成された撮像空間Bにおいて、そのエコー時間が61msになるように、この複数のスキャンのそれぞれを実施する。さらに、本実施形態においては、第3RFパルスRF3と第5RFパルスRF5との周波数を1.9ppmの化学シフトに対応するように印加することによって、各スキャンを実施する。そして、上記のようにして、各ファントムの基準スペクトルをそれぞれ算出する。
つぎに、図4に示すように、被検体SUの脳についてスキャンを実施し、脳のスペクトルを生成する(S21)。
ここでは、人体である被検体SUの脳についてスキャン部2がスキャンを実施することによって、その被検体SUの脳から磁気共鳴信号を収集する。
具体的には、上記の複数のファントムについてスキャンを実施した場合と同様に、MEGA PRESS法に対応するパルスシーケンスによって、その被検体SUの脳についてスキャンを実施する。すなわち、複数のファントムにて実施したスキャンとエコー時間が同じ61msになるように、被検体SUの脳についてスキャンを実施する。そして、その被検体SUの脳のスペクトルを生成する。
図7は、本発明にかかる実施形態において、被検体SUの脳の基準スペクトルSbを示す図である。図7において、横軸は化学シフト(ppm)であり、縦軸は、強度である。
上記のファントムの基準スペクトルを生成した場合と同様なデータ処理を実施することによって、図7に示すように、被検体SUの脳の基準スペクトルSを生成する。
つぎに、図4に示すように、複数のファントムの基準スペクトルについて半値幅と周波数とを算出する(S31)。
ここでは、複数のファントムの基準スペクトルについて、半値幅と周波数とを、第1の定量化処理部301が算出する。
具体的には、NAA基準スペクトルFSNAAと、GABA基準スペクトルFSGABAと、Gln基準スペクトルFSGlnと、Glu基準スペクトルFSGluとのそれぞれについて、マーカット・フィッティング処理を実施することによって、それぞれの半値幅と周波数とを算出する。このとき、NAA基準スペクトルFSNAAは、信号強度が負であるため、その0次の位相を180°回した後に、半値幅と周波数とを算出する。
つぎに、図4に示すように、被検体SUの脳のスペクトルにおいてNAAに対応するスペクトルについて半値幅と周波数とを算出する(S41)。
ここでは、被検体SUの脳のスペクトルSにおいてNAAに対応するNAAスペクトルについて、第2の定量化処理部302が半値幅と周波数とを算出する。
具体的には、被検体SUの脳のスペクトルSについて、マーカット・フィッティング処理にて、半値幅と周波数とを算出する。このとき、上記と同様に、被検体SUの脳のスペクトルSの0次の位相を180°回した後に、半値幅と周波数とを算出する。
つぎに、図4に示すように、複数のファントムの基準スペクトルについて、指数関数のアポダイゼーションを適応する(S51)。
ここでは、複数の基準スペクトルについて、第3の定量化処理部303が指数関数のアポダイゼーションを適応する。
具体的には、上記のステップ(S41)にて算出された被検体SUの脳のスペクトルSの半値幅と、上記のステップ(S31)にて算出された複数のファントムの基準スペクトルの半値幅との差分値によって、第3の定量化処理部303が、複数の基準スペクトルに対して、指数関数のアポダイゼーションを適応する。
つまり、NAA基準スペクトルFSNAAと、GABA基準スペクトルFSGABAと、Gln基準スペクトルFSGlnと、Glu基準スペクトルFSGluとのそれぞれについて、上記のアポダイゼーションを適応する。これによって、その複数の基準スペクトルのピーク形状が、被検体SUの脳のスペクトルに対応するように調整される。
図8から図11は、本発明にかかる実施形態において、指数関数のアポダイゼーションを適応する動作を説明するための図である。
図8(a)に示すように、被検体SUの脳のスペクトルSにおいてNAAに対応するNAAスペクトルの半値幅が、7.3242Hzであり、一方で、図8(b)に示すように、NAAファントムについて得られたNAA基準スペクトルFSNAAの半値幅が、4.8828Hzである場合には、そのNAA基準スペクトルFSNAAの半値幅が、被検体SUの脳のスペクトルSにおいてNAAに対応するNAAスペクトルの半値幅と同じになるように、指数関数でアポダイゼーションを行う。つまり、被検体SUの脳のスペクトルSにおいてNAAに対応するNAAスペクトルの半値幅である7.3242Hzから、NAA基準スペクトルFSNAAの半値幅である4.8828Hzを差分した差分値の半分の値が、1.2207Hzであるので、NAA基準スペクトルFSNAAの半値幅を、1.2207Hzずつ、両方向に広げるように処理する。これにより、アポダイゼーションの適応後のNAA基準スペクトルAFSNAAを得る。
そして、図9に示すように、GABAファントムについて得られたGABA基準スペクトルFSGABAに関しては、上記のようにNAA基準スペクトルFSNAAに適用した指数関数を用いてアポダイゼーションを行って、アポダイゼーションの適応後のGABA基準スペクトルAFSGABAを得る。
同様に、図10に示すように、Glnファントムについて得られたGln基準スペクトルFSGluに関しても、上記のようにNAA基準スペクトルFSNAAに適用した指数関数を用いてアポダイゼーションを行って、アポダイゼーションの適応後のGln基準スペクトルAFSGlnを得る。また、図11に示すように、Gluファントムについて得られたGlu基準スペクトルFSGluに関しても、上記のようにNAA基準スペクトルFSNAAに適用した指数関数を用いてアポダイゼーションを行って、アポダイゼーションの適応後のGlu基準スペクトルAFSGluを得る。
つぎに、図4に示すように、NAAを含有するファントムのNAA基準スペクトルについて、周波数と強度とを補正する(S61)。
ここでは、上記のステップ(S51)にてアポダイゼーションが適応された複数のファントムの基準スペクトルにおいて、NAA基準スペクトルAFSNAAについて、周波数と強度とを補正するデータ処理を、第4の定量化処理部304が実施する。
具体的には、アポダイゼーションの適応後のNAA基準スペクトルAFSNAAと、被検体SUの脳のスペクトルSにおいてNAAに対応するNAAスペクトルとについて、フィッティング処理を実施することによって、このNAA基準スペクトルAFSNAAについて、周波数と強度とを補正する。つまり、被検体SUの脳のスペクトルSに、NAA基準スペクトルAFSNAAがフィッティングするように、そのNAA基準スペクトルAFSNAAの周波数と強度とを補正する。
本実施形態においては、およそ1.8〜2.2ppmの化学シフトの範囲において、周波数と強度に自由度を持たせてフィッティングを行って、NAA基準スペクトルAFSNAAの周波数と強度とについて、補正する。
これによって、NAA基準スペクトルAFSNAAは、そのピークの形状と、そのピークの化学シフト位置とのそれぞれが、被検体SUの脳のスペクトルSに対応するように補正される。
図12は、本発明にかかる実施形態において、NAA基準スペクトルについて、周波数と強度とを補正する動作を説明するための図である。
図12に示すように、NAA基準スペクトルAFSNAAのピーク位置と、被検体SUの脳のスペクトルSにおいてNAAに対応するNAAスペクトルのピーク位置との間に差分値ΔFがある場合には、NAA基準スペクトルAFSNAAのピーク位置が、被検体SUの脳のスペクトルSにおいてNAAに対応するNAAスペクトルのピーク位置とに同じ位置になるように、たとえば、NAA基準スペクトルAFSNAAを、その差分値ΔFに対応させて移動させる。また、NAA基準スペクトルAFSNAAのピークにおける積分値と、被検体SUの脳のスペクトルSにおいてNAAに対応するNAAスペクトルのピークの積分値とが同じになるように調整することで、NAA基準スペクトルAFSNAAの強度を補正する。これにより、補正後のNAA基準スペクトルHFSNAAを得る。なお、被検体SUの脳のスペクトルSを、その差分値ΔFに対応させて移動させてもよい。
つぎに、図4に示すように、GABAとGlnとGluとのそれぞれを含有するファントムの基準スペクトルのそれぞれについて、周波数を補正する(S71)。
ここでは、上記のステップ(S51)にてアポダイゼーションが適応された複数のファントムの基準スペクトルにおいて、GABA基準スペクトルAFSGABAと、Gln基準スペクトルAFSGlnと、Glu基準スペクトルAFSGluとのそれぞれについて周波数を補正するデータ処理を、第5の定量化処理部305が実施する。
具体的には、上記のステップ(S61)にてNAA基準スペクトルAFSNAAについて補正された周波数の補正値に対応するように、GABA基準スペクトルAFSGABAと、Gln基準スペクトルAFSGlnと、Glu基準スペクトルAFSGluとのそれぞれの周波数を補正する。
図13から図15は、本発明にかかる実施形態において、GABA基準スペクトルと、Gln基準スペクトルと、Glu基準スペクトルとについて、周波数を補正する動作を説明するための図である。
上記のステップ(S61)にて、NAA基準スペクトルAFSNAAのピーク位置が、被検体SUの脳のスペクトルSにおいてNAAに対応するNAAスペクトルのピーク位置とに同じ位置になるように、NAA基準スペクトルAFSNAAを両者の差分値ΔFに対応させて移動させた場合には、図13に示すように、GABA基準スペクトルAFSGABAを、その差分値ΔFに対応するように移動させる。これにより、補正後のGABA基準スペクトルHFSGABAを得る。
そして、これと同様に、図14に示すように、Gln基準スペクトルAFSGlnを、上記の差分値ΔFに対応するように移動させて、補正後のGln基準スペクトルHFSGlnを得る。また、図15に示すように、Glu基準スペクトルAFSGluを、上記の差分値ΔFに対応させて移動させて、補正後のGlu基準スペクトルHFSGluを得る。
スキャンの実施時において、被検体SUの温度と、各ファントムの温度とが相違する場合には、被検体SUの脳のスペクトルと、各ファントムの基準スペクトルとは、化学シフトが互いに対応しない場合がある。しかし、上記の補正を実施することによって、被検体SUの脳のスペクトルと各ファントムの基準スペクトルとは、化学シフトが互いに対応するように補正される。
つぎに、図4に示すように、被検体SUの脳のスペクトルと、補正されたNAA基準スペクトルとを差分処理し、第1の差分スペクトルを算出する(S81)。
ここでは、被検体SUの脳のスペクトルSと、上記のステップ(S61)にて周波数と強度とが補正がされたNAA基準スペクトルHFSNAAとを、第6の定量化処理部306が差分処理することによって、第1の差分スペクトルS1を算出する。
図16は、本発明にかかる実施形態において、第1の差分スペクトルS1を示す図である。
図16に示すように、第1の差分スペクトルS1は、被検体SUの脳のスペクトルSから、NAA基準スペクトルHFSNAAが差分されたスペクトルとして算出される。
つぎに、図4に示すように、GABA基準スペクトルの強度について補正する(S91)。
ここでは、上記のステップ(S71)にて周波数が補正された複数のファントムの基準スペクトルにおいて、GABA基準スペクトルHFSGABAの強度について補正するデータ処理を、第7の定量化処理部307が実施する。
具体的には、上記のステップ(S81)にて算出された第1の差分スペクトルS1と、上記のステップ(S71)にて周波数を補正されたGABA基準スペクトルFSGABAとについてフィッティング処理をすることによって、そのGABA基準スペクトルHFSGABAの強度について補正する。つまり、被検体SUの脳のスペクトルSからNAA基準スペクトルHFSNAAが差分されることによって算出された第1の差分スペクトルS1に、GABA基準スペクトルHFSGABAがフィッティングするように、GABA基準スペクトルHFSGABAの強度を補正する。
本実施形態においては、およそ2.8〜3.2ppmの化学シフトの範囲において、強度に自由度を持たせてフィッティングを行い、GABA基準スペクトルHFSGABAの強度を補正する。
これによって、GABA基準スペクトルHFSGABAは、そのピークの形状と、そのピークの化学シフト位置とのそれぞれが、被検体SUの脳のスペクトルにSに対応するように補正される。
つぎに、図4に示すように、第1の差分スペクトルと、補正されたGABA基準スペクトルとを差分処理し、第2の差分スペクトルを算出する(S101)。
ここでは、上記のステップ(S81)にて算出された第1の差分スペクトルS1と、上記のステップ(S91)にて強度について補正されたGABA基準スペクトルHFSGABAとを、第8の定量化処理部308が差分処理することによって、第2の差分スペクトルS2を算出する。
つまり、被検体SUの脳のスペクトルSからNAA基準スペクトルHFSNAAが差分されることによって算出された第1の差分スペクトルS1から、強度が補正されたGABA基準スペクトルHFSGABAを差分し、第2の差分スペクトルS2を算出する。
図17は、本発明にかかる実施形態において、第2の差分スペクトルS2を示す図である。
図17に示すように、第2の差分スペクトルS2は、被検体SUの脳のスペクトルSから、NAA基準スペクトルHFSNAAおよびGABA基準スペクトルHFSGABAが差分されたスペクトルとして算出される。
つぎに、図4に示すように、Gln基準スペクトルとGlu基準スペクトルとの強度について補正する(S111)。
ここでは、上記のステップ(S71)にて周波数が補正された複数のファントムの基準スペクトルにおいて、Gln基準スペクトルHFSGlnの強度と、Glu基準スペクトルHFSGluの強度とについて補正するデータ処理を、第9の定量化処理部309が実施する。
具体的には、上記のステップ(S101)によって算出された第2の差分スペクトルS2と、上記のステップ(S71)にて周波数を補正されたGln基準スペクトルHFSGlnおよびGlu基準スペクトルHFSGluのそれぞれについてフィッティング処理をすることによって、そのGln基準スペクトルHFSGlnの強度とGlu基準スペクトルHFSGluの強度とのそれぞれについて補正する。
つまり、被検体SUの脳のスペクトルからNAA基準スペクトルHFSNAAとGABA基準スペクトルHFSGABAとが差分されることによって算出された第2の差分スペクトルS2に、このGln基準スペクトルHFSGlnおよびGlu基準スペクトルHFSGluのそれぞれがフィッティングするように、そのGln基準スペクトルHFSGlnおよびGlu基準スペクトルHFSGluの強度を補正する。
本実施形態においては、およそ3.55〜3.95ppmの化学シフトの範囲と、およそ2.3〜2.6ppmの化学シフトの範囲において、強度に自由度を持たせてフィッティングを行い、Gln基準スペクトルHFSGlnの強度と、Glu基準スペクトルHFSGluの強度とのそれぞれを補正する。
これによって、Gln基準スペクトルHFSGlnと、Glu基準スペクトルHFSGluは、そのピークの形状と、そのピークの化学シフト位置とのそれぞれが、被検体SUの脳のスペクトルにSに対応するように補正される。
つぎに、図4に示すように、被検体SUの脳に含まれる神経伝達物質について定量化する(S121)。
ここでは、被検体SUの脳に含まれる神経伝達物質を定量化するデータ処理を、定量化処理部31bが実施する。
具体的には、上記のステップ(S61)においてデータ処理が実施されたNAA基準スペクトルHFSNAAと、上記のステップ(S91)においてデータ処理が実施されたGABA基準スペクトルHFSGABAと、上記のステップ(S111)においてデータ処理が実施されたGlu基準スペクトルHFSGluおよびGln基準スペクトルHFSGlnとを用いて、その被検体SUの脳に含まれる神経伝達物質を定量化する。
つまり、被検体SUの脳のスペクトルに対応するように、周波数と強度とが補正されたNAA基準スペクトルHFSNAAとGABA基準スペクトルHFSGABAとGln基準スペクトルHFSGlnとGlu基準スペクトルHFSGluとのそれぞれを用いて、その被検体SUの脳に含まれる神経伝達物質を定量化する。
より詳細には、上記にて周波数と強度とが補正された後の基準スペクトルにて規定される面積を、STaとし、周波数と強度とが補正される前の元の基準スペクトルにて規定される面積を、STbとし、その基準スペクトルを得る際に用いたファントムにおける神経伝達物質の濃度を、Cとした場合に、下記の数式(1)によって、各神経伝達物質の定量値Xを算出する。
X=(STa/STb)×C ・・・(1)
すなわち、元の基準スペクトルにて規定される面積STb対して、周波数と強度とが補正された後の基準スペクトルにて規定される面積STaが占める割合(STa/STb)を求めた後に、その求めた割合(STa/STb)に、ファントムにおける神経伝達物質の濃度Cを積算するデータ処理を実施することで、各神経伝達物質の定量値Xを算出する。
以上のように、本実施形態においては、被検体SUの脳と複数のファントムとのそれぞれから磁気共鳴信号を収集する複数のスキャンを、MEGA PRESS法によって、エコー時間TEが互いに同じになるように実施する。すなわち、同じスキャン条件にて被検体SUの脳と複数のファントムとのそれぞれについてスキャンを実施する。そして、これらのスキャンの実施にて得られたスペクトルと基準スペクトルとに基づいて被検体SUの脳の神経伝達物質について定量化する。このように、本実施形態は、MEGA PRESS法によってスペクトロスコピーを実施しているので、スペクトルを高感度に得ることができる。また、MEGA PRESS法によって得られるスペクトルは、ピークが少ないため、フィッティング処理を高精度に実施することができる。さらに、本実施形態においては、同じエコー時間TEにて収集された磁気共鳴信号に基づいて神経伝達物質について定量化を実施しており、異なるエコー時間TEにて収集された磁気共鳴信号に基づいて神経伝達物質について定量化を実施していないので、T2減衰の影響を受けることがない。したがって、本実施形態は、高精度に神経伝達物質を定量化することができる。
また、本実施形態においては、3テスラの静磁場が形成された撮像空間Bにおいて、エコー時間TEが61msになるように、各スキャンを実施している。
図18は、本発明にかかる実施形態において、エコー時間TEが61msである場合と、エコー時間TEが68msである場合とにおいて得られた、Gluファントムのスペクトルを示す図である。図18において、横軸は化学シフト(ppm)であり、縦軸は、強度である。そして、図18において、図18(a)は、エコー時間TEが61msである場合に得られたGluファントムのスペクトルであり、図18(b)は、エコー時間TEが68msである場合に得られたGluファントムのスペクトルである。
図18に示すように、エコー時間TEが61msである場合に得られたスペクトルSb61は、エコー時間TEが68msである場合に得られたスペクトルSb68と比較して、Gluに対応する部分(点線で囲った領域R)のベースラインがフラットになっている。このため、上記のフィッティング処理を高精度に実施することができる。なお、エコー時間TEが60〜68msまでの範囲において、0.5msごとに変更して得られたスペクトルにおいて、エコー時間TEが61msである場合が最適であることが見出された。したがって、本実施形態は、高精度に神経伝達物質を定量化することができる。
なお、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置1は、本発明の磁気共鳴イメージング装置に相当する。また、本実施形態の定量化処理部31bは、本発明の定量化処理部に相当する。また、本実施形態の第1の定量化処理部301は、本発明の第1の定量化処理部に相当する。また、本実施形態の第2の定量化処理部302は、本発明の第2の定量化処理部に相当する。また、本実施形態の第3の定量化処理部303は、本発明の第3の定量化処理部に相当する。また、本実施形態の第4の定量化処理部304は、本発明の第4の定量化処理部に相当する。また、本実施形態の第5の定量化処理部305は、本発明の第5の定量化処理部に相当する。また、本実施形態の第6の定量化処理部306は、本発明の第6の定量化処理部に相当する。また、本実施形態の第7の定量化処理部307は、本発明の第7の定量化処理部に相当する。また、本実施形態の第8の定量化処理部308は、本発明の第8の定量化処理部に相当する。また、本実施形態の第9の定量化処理部309は、本発明の第9の定量化処理部に相当する。
また、本発明の実施に際しては、上記した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形形態を採用することができる。
たとえば、上記の実施形態において、神経伝達物質を定量化する際のデータ処理については、これに限定されない。種々の定量化の方法を適用することができる。
図1は、本発明にかかる実施形態において、磁気共鳴イメージング装置1の構成を示す構成図である。 図2は、本発明にかかる実施形態において、データ処理部31の機能ブロック図である。 図3は、本発明にかかる実施形態において、定量化処理部31bの機能ブロック図である。 図4は、本発明にかかる実施形態において、被検体SUの脳に含まれる神経伝達物質について定量化する際の動作を示すフロー図である。 図5は、本発明にかかる実施形態において、ファントムについてスキャンを実施する際のパルスシーケンスを示す図である。 図6は、本発明にかかる実施形態において、ファントムの基準スペクトルを示す図である。 図7は、本発明にかかる実施形態において、被検体SUの脳の基準スペクトルを示す図である。 図8は、本発明にかかる実施形態において、指数関数のアポダイゼーションを適応する動作を説明するための図である。 図9は、本発明にかかる実施形態において、指数関数のアポダイゼーションを適応する動作を説明するための図である。 図10は、本発明にかかる実施形態において、指数関数のアポダイゼーションを適応する動作を説明するための図である。 図11は、本発明にかかる実施形態において、指数関数のアポダイゼーションを適応する動作を説明するための図である。 図12は、本発明にかかる実施形態において、NAA基準スペクトルについて、周波数と強度とを補正する動作を説明するための図である。 図13は、本発明にかかる実施形態において、GABA基準スペクトルについて、周波数を補正する動作を説明するための図である。 図14は、本発明にかかる実施形態において、Gln基準スペクトルについて、周波数を補正する動作を説明するための図である。 図15は、本発明にかかる実施形態において、Glu基準スペクトルについて、周波数を補正する動作を説明するための図である。 図16は、本発明にかかる実施形態において、第1の差分スペクトルS1を示す図である。 図17は、本発明にかかる実施形態において、第2の差分スペクトルS2を示す図である。 図18は、本発明にかかる実施形態において、エコー時間TEが61msである場合と、エコー時間TEが68msである場合とにおいて得られた、被検体SUの脳のスペクトルを示す図である。
符号の説明
1:磁気共鳴イメージング装置(磁気共鳴イメージング装置)、2:スキャン部(スキャン部)、3:操作コンソール部、12:静磁場マグネット部、13:勾配コイル部、14:RFコイル部、15:被検体移動部、22:RF駆動部、23:勾配駆動部、24:データ収集部、30:制御部、31:データ処理部、31a:スキャン条件設定部、31b:定量化処理部(定量化処理部)、32:操作部、33:表示部、34:記憶部、301:第1の定量化処理部(第1の定量化処理部)、302:第2の定量化処理部(第2の定量化処理部)、303:第3の定量化処理部(第3の定量化処理部)、304:第4の定量化処理部(第4の定量化処理部)、305:第5の定量化処理部(第5の定量化処理部)、306:第6の定量化処理部(第6の定量化処理部)、307:第7の定量化処理部(第7の定量化処理部)、308:第8の定量化処理部(第8の定量化処理部)、309:第9の定量化処理部(第9の定量化処理部)、B:撮像空間

Claims (10)

  1. 被検体の脳についてスキャンを実施することによって当該脳から磁気共鳴信号を収集すると共に、当該脳の神経伝達物質においてN−アセチルアスパレートとγ−アミノ酪酸とグルタミンとグルタメートとのそれぞれを含有する複数のファントムのそれぞれについてスキャンを実施することによって当該ファントムのそれぞれから磁気共鳴信号を収集するスキャン部と、
    前記スキャン部によって前記脳から収集された磁気共鳴信号によるスペクトルと前記複数のファントムのそれぞれから収集された磁気共鳴信号による複数の基準スペクトルとに基づいて前記脳の神経伝達物質について定量化するようにデータ処理を実施する定量化処理部と
    を有する磁気共鳴イメージング装置であって、
    前記スキャン部は、前記脳と前記複数のファントムとのそれぞれから磁気共鳴信号を収集する複数のスキャンを、MEGA PRESS法によって、エコー時間が互いに同じになるように実施する
    磁気共鳴イメージング装置。
  2. 前記スキャン部は、3テスラの静磁場が形成された撮像空間において、前記エコー時間が61msになるように前記複数のスキャンを実施する、
    請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
  3. 前記定量化処理部は、
    前記複数の基準スペクトルについて半値幅と周波数とを算出するようにデータ処理を実施する第1の定量化処理部と、
    前記脳のスペクトルにおいてN−アセチルアスパレートに対応するスペクトルについて半値幅と周波数とを算出するようにデータ処理を実施する第2の定量化処理部と、
    前記第2の定量化処理部によって算出されたスペクトルの半値幅と前記第1の定量化処理部によって算出された複数の基準スペクトルの半値幅との差分値に基づいて、前記複数の基準スペクトルについて、指数関数のアポダイゼーションを適応するようにデータ処理を実施する第3の定量化処理部と
    を有し、
    前記第3の定量化処理部によってデータ処理が実施された基準スペクトルを用いて、前記脳に含まれる神経伝達物質を定量化するデータ処理を実施する、
    請求項1または2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
  4. 前記第1の定量化処理部は、マーカット・フィッティング処理を前記データ処理として実施し、
    前記第2の定量化処理部は、マーカット・フィッティング処理を前記データ処理として実施する、
    請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
  5. 前記定量化処理部は、
    前記第3の定量化処理部によってデータ処理が実施された複数の基準スペクトルにおいて、N−アセチルアスパレートを含有するファントムの基準スペクトルと、前記脳のスペクトルにおいてN−アセチルアスパレートに対応するスペクトルとについてフィッティング処理を実施することによって、当該N−アセチルアスパレートを含有するファントムの基準スペクトルについて周波数と強度とを補正するデータ処理を実施する第4の定量化処理部と、
    前記第3の定量化処理部によってデータ処理が実施された複数の基準スペクトルにおいて、γ−アミノ酪酸を含有するファントムの基準スペクトルと、グルタミンを含有するファントムの基準スペクトルと、グルタメートを含有するファントムの基準スペクトルとのそれぞれについて、周波数を補正するデータ処理を、前記第4の定量化処理部が補正した周波数の補正値に対応するように実施する第5の定量化処理部と、
    前記脳のスペクトルと、前記第4の定量化処理部によってデータ処理が実施された基準スペクトルとを差分処理することによって、第1の差分スペクトルを算出する第6の定量化処理部と、
    前記第5の定量化処理部によってデータ処理が実施された複数の基準スペクトルにおいて、γ−アミノ酪酸を含有するファントムの基準スペクトルの強度について補正するデータ処理を、前記第6の定量化処理部によって算出された第1の差分スペクトルと、γ−アミノ酪酸を含有するファントムの基準スペクトルとについてフィッティング処理をすることによって実施する第7の定量化処理部と、
    前記第6の定量化処理部によって算出された第1の差分スペクトルと、前記第7の定量化処理部によって強度について補正された基準スペクトルとを差分処理することによって、第2の差分スペクトルを算出する第8の定量化処理部と、
    前記第5の定量化処理部によってデータ処理が実施された複数の基準スペクトルにおいて、グルタミンを含有するファントムの基準スペクトルの強度と、グルタメートを含有するファントムの基準スペクトルの強度とについて補正するデータ処理を、前記第8の定量化処理部によって算出された第2の差分スペクトルと、グルタミンを含有するファントムの基準スペクトルおよびグルタメートを含有するファントムの基準スペクトルとについてフィッティング処理をすることによって実施する第9の定量化処理部と
    を含み、
    当該定量化処理部は、前記第4の定量化処理部によってデータ処理が実施された基準スペクトルと、前記第7の定量化処理部によってデータ処理が実施された基準スペクトルと、前記第9の定量化処理部によってデータ処理が実施された基準スペクトルとを用いて、前記脳に含まれる神経伝達物質を定量化する、
    請求項3または4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
  6. 被検体の脳についてスキャンを実施することによって当該脳から収集される磁気共鳴信号によるスペクトルと、当該脳の神経伝達物質においてN−アセチルアスパレートとγ−アミノ酪酸とグルタミンとグルタメートとのそれぞれを含有する複数のファントムのそれぞれについてスキャンを実施することによって当該ファントムのそれぞれから収集される磁気共鳴信号による複数の基準スペクトルとに基づいて、前記脳の神経伝達物質について定量化する神経伝達物質定量化方法であって、
    前記脳と前記複数のファントムとのそれぞれから磁気共鳴信号を収集する複数のスキャンは、MEGA PRESS法によって、エコー時間が互いに同じになるように実施される
    神経伝達物質定量化方法。
  7. 前記複数のスキャンは、3テスラの静磁場が形成された撮像空間において、前記エコー時間が61msになるように実施される、
    請求項6に記載の神経伝達物質定量化方法。
  8. 前記複数の基準スペクトルについて半値幅と周波数とを算出するようにデータ処理を実施する第1の定量化処理ステップと、
    前記脳のスペクトルにおいてN−アセチルアスパレートに対応するスペクトルについて半値幅と周波数とを算出するようにデータ処理を実施する第2の定量化処理ステップと、
    前記第2の定量化処理ステップによって算出されたスペクトルの半値幅と前記第1の定量化処理ステップによって算出された複数の基準スペクトルの半値幅との差分値に基づいて、前記複数の基準スペクトルについて、指数関数のアポダイゼーションを適応するようにデータ処理を実施する第3の定量化処理ステップと
    を有し、
    前記第3の定量化処理ステップによってデータ処理が実施された基準スペクトルを用いて、前記脳に含まれる神経伝達物質を定量化するデータ処理を実施する、
    請求項6または7に記載の神経伝達物質定量化方法。
  9. 前記第1の定量化処理ステップにおいては、マーカット・フィッティング処理を前記データ処理として実施し、
    前記第2の定量化処理ステップにおいては、マーカット・フィッティング処理を前記データ処理として実施する、
    請求項8に記載の神経伝達物質定量化方法。
  10. 前記第3の定量化処理ステップによってデータ処理が実施された複数の基準スペクトルにおいて、N−アセチルアスパレートを含有するファントムの基準スペクトルと、前記脳から収集された磁気共鳴信号によるスペクトルにおいてN−アセチルアスパレートに対応するスペクトルとについてフィッティング処理を実施することによって、当該N−アセチルアスパレートを含有するファントムの基準スペクトルについて周波数と強度とを補正するデータ処理を実施する第4の定量化処理ステップと、
    前記第3の定量化処理ステップによってデータ処理が実施された複数の基準スペクトルにおいて、γ−アミノ酪酸を含有するファントムの基準スペクトルと、グルタミンを含有するファントムの基準スペクトルと、グルタメートを含有するファントムの基準スペクトルとのそれぞれについて、周波数を補正するデータ処理を、前記第4の定量化処理ステップにて補正した周波数の補正値に対応するように実施する第5の定量化処理ステップと、
    前記脳から収集された磁気共鳴信号によるスペクトルと、前記第4の定量化処理ステップによってデータ処理が実施された基準スペクトルとを差分処理することによって、第1の差分スペクトルを算出する第6の定量化処理ステップと、
    前記第5の定量化処理ステップによってデータ処理が実施された複数の基準スペクトルにおいて、γ−アミノ酪酸を含有するファントムの基準スペクトルの強度について補正するデータ処理を、前記第6の定量化処理ステップによって算出された第1の差分スペクトルと、γ−アミノ酪酸を含有するファントムの基準スペクトルとについてフィッティング処理をすることによって実施する第7の定量化処理ステップと、
    前記第6の定量化処理ステップによって算出された第1の差分スペクトルと、前記第7の定量化処理ステップによって強度について補正された基準スペクトルとを差分処理することによって、第2の差分スペクトルを算出する第8の定量化処理ステップと、
    前記第5の定量化処理ステップによってデータ処理が実施された複数の基準スペクトルにおいて、グルタミンを含有するファントムの基準スペクトルの強度と、グルタメートを含有するファントムの基準スペクトルの強度とについて補正するデータ処理を、前記第8の定量化処理ステップによって算出された第2の差分スペクトルと、グルタミンを含有するファントムの基準スペクトルおよびグルタメートを含有するファントムの基準スペクトルとについてフィッティング処理をすることによって実施する第9の定量化処理ステップと
    を含み、
    前記第4の定量化処理ステップによってデータ処理が実施された基準スペクトルと、前記第7の定量化処理ステップによってデータ処理が実施された基準スペクトルと、前記第9の定量化処理ステップによってデータ処理が実施された基準スペクトルとを用いて、前記脳に含まれる神経伝達物質を定量化する、
    請求項8または9に記載の神経伝達物質定量化方法。
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