この種の回線設計の適用分野としては例えば光ファイバ回線を収容する終端装置(OLT:Optical Line Terminal)やパケット通信網におけるルータ装置などが挙げられる。以下においては光ファイバ回線の終端装置における回線収容設計を例に挙げて説明するものとする。
図21に光ファイバ通信システムの概略構成図を示す。図21に示す光ファイバ通信システムはGE−PON(Gigabit Ethernet-Passive Optical Network)と呼ばれるシステムである。図21に示すように、通信局900内の設備は大別すると、配線架910と、中間架920と、終端装置930と、これら各装置を結ぶ所内ケーブル940からなる。配線架910は、所内ケーブル940と所外ケーブル950とを接続する為のアダプタ911とを備えている。配線架910にて接続された所外ケーブル950は、通信局外の電柱960に敷設されている光スプリッタなどの分岐機器961を経由してユーザ宅970にあるONU(Optical Network Unit)971に接続する。中間架920には、配線架910〜中間架920と中間架920〜終端装置930間のケーブル940を中継する為のアダプタ921や、光信号を複数に分岐する光スプリッタなどの分岐機器922が設置されている。また、終端装置930は、光回線を収容してユーザに光サービスを提供する為の複数の回線収容装置931を備えている。各回線収容装置931a〜931dにはそれぞれ1本の所内ケーブル940が接続される。
サービス種別の一つとして、多分岐方式と言うサービスというものがある。該サービスにおいて、始点(お客様ONU971側)から終点(終端装置930側)までの間がn対1の関係となっている。これは終点である終端装置930側から発せられる光信号を途中の分岐機器922まで複数の加入者で共有する形式である。したがって、分岐機器922までは1つの心線・端子であり、分岐機器922以降は、複数の心線・端子にてサービスが提供される。
通信局900内の終端装置930に搭載されている回線収容装置931の配下には、分岐機器922,961を介して複数のユーザに対してサービスを提供する事が可能である。そのため、終端装置930では、図22に示すように、各回線収容装置931の配下のONU971毎にONU番号、サービス提供有無、サービス種別、最低保証帯域、平均使用帯域を管理している。ONU番号とは、回線収容装置931の配下に接続されているONU971を管理するために採番された識別情報である。サービス提供有無とは、回線収容装置931の配下のONU971がサービス提供中(現用)なのかサービス非提供(非現用)なのかを意味する。サービス種別とは、回線収容装置931の配下の現用であるONU971へ提供しているサービスの種別を指す。最低保証帯域とは、回線収容装置931の配下の現用であるONU971へサービスを提供する際に、通信サービスとして保証している帯域を指す。平均使用帯域とは、回線収容装置931の配下の現用であるONU971のサービス使用時の平均的な使用帯域を指す。
なお、回線収容装置931の配下の現用であるONU971の最低保証帯域の合計を、該回線収容装置931の最低保証帯域合計と言うものとする。例えば図22では、回線収容装置931aの最低保証帯域合計は300Mbpsとなる。また、回線収容装置931の配下の現用であるONU971の平均使用帯域の合計を、該回線収容装置931の平均使用帯域合計と言うものとする。例えば図22では、回線収容装置931aの平均使用帯域合計は600Mbpsとなる。さらに、平均使用帯域合計に現用ONU971の数で割った数値を、回線収容装置931の1ONUの平均使用帯域と言う。例えば、平均使用帯域合計が600Mbpsで、現用ONU数が6であれば1ONUの平均使用帯域は100Mbpsとなる。
ところで通信会社にて提供するサービスは、従来、ベストエフォート型のインターネット接続サービスが主流であった。ベストエフォート型サービスでは、最低保証される通信速度など個々のユーザーに提供される通信品質については基本的に何も考慮されていない。したがってパケットは、ネットワークが混んでいれば遅れて届くこともあるし、場合によっては廃棄されてしまうこともある。また、ベストエフォート型サービスでは、ユーザを多数収容するために、1つの回線収容装置で複数のユーザへサービス提供可能とする多分岐方式を採用することが主流であった。さらに近年は多分岐方式という形態のまま、より高速かつ大容量な通信を可能する広帯域化が図られていた。このようにして高速かつ大容量のデータ通信が可能になった結果、該ネットワーク環境を生かすために、従来のインターネットに加えて種々の新たなサービスが開発されることになった。新サービスとしては、例えばインターネット電話、映像通信、P2Pサービス等の帯域保証型のサービスや、大容量でのデータ通信サービスなどが挙げられる。なお、帯域保証型のサービスとは、通信事業者が提供するネットワークで帯域を保証するサービスを意味する。帯域(帯域≒データ流通量÷応答時間)とは、通信サービスの通信速度のことで、これが大きくなるほど単位時間あたりに流せるデータ量も多くなる。
ベストエフォート型のインターネット接続サービスが主流であった時代においては、回線をどの回線収容装置に収容するかを選定する作業は至極単純であり、回線収容装置とユーザ宅にあるONUが接続可能であり、且つ、サービスの定める最低保証帯域が装置媒体の最大帯域内に収まれば当該回線収容装置を収容先として選定可能であった。一方で、回線収容装置の最大帯域は高速かつ大容量通信を可能とする広帯域傾向にあり、サービスが定める最低保証帯域値が回線収容装置の最大帯域内に収まらない事は少なかった。その結果、実際の運用においては、回線収容装置とユーザ宅にあるONUが接続可能であることのみが実質的な選定条件であった。このような選定条件を満足し、通信会社自体の効率性を向上するためには、より少ない回線収容装置でより多くのONUを選定する収容効率の向上こそが、回線収容装置選定の最適化方法であった。よって、従来の回線収容装置の選定方法は、物理的に回線収容装置番号の若番から順に端から詰める選定方法であった。
しかし前述したように通信会社の提供するサービスが、映像通信,P2Pサービス等の帯域保証型のサービスや、大容量でのデータ通信サービスへと変遷してきた結果、従来の選定方法では帯域オーバーや、回線収容装置によって通信レスポンスが遅いなど、サービス品質が極端に低下する問題があった。なお、ここでサービス品質の低下とは、帯域が不足する事でパケット遅延・破棄が起こる可能性が高くなる事を意味する。
以下に、このような問題又は類似する問題を解決するための従来の技術について説明する。
特許文献1には、通信局内の光アクセス装置の選定方法であって、通信装置に関する設備使用状況を管理するデータベース、通信サービスの種別と通信サービスの種別毎に異なる設備収容条件を考慮した装置選定ロジックとの対応関係、装置種別毎に異なる制御対応表を用いて、通信サービスの種別に対応した装置選定ロジックを確定し、光アクセス装置を選定する技術が記載されている。
特許文献2には、通信ネットワークにおけるルート選定方法であって、ネットワークへの負荷が分散されるように各分岐個所の中から最適な分岐個所を選択する技術が記載されている。
特許文献3には、パケット網において異なる品質を要求するトラヒックが混在するパケットネットワークにおけるサービス品質制御方式を選定するための技術が記載されている。
本発明の一実施の形態に係る回線収容設計装置について図面を参照して説明する。本実施の形態では回線収容設計の対象システムとして図21及び図22を参照して前述した光ファイバ通信システムについて説明する。図1は回線収容設計装置の構成図である。
回線収容設計装置100は、図1に示すように、オペレータ1が入出力装置10に入力した設計要求に応じて設計結果を出力する装置であり、具体的には、回線追加要求(需要の発生)に対して該回線の収容先の回線収容装置を選定するものである。前記設計要求には、例えば収容先の通信局やサービス種別などの選定条件情報が含まれる。また選定条件情報には、必要に応じて後述する選定アルゴリズムと他の選定アルゴリズムのどれを優先的に適用するかを示す優先順位が含まれる場合もある。
回線収容設計装置100は、回線収容装置の仕様や回線収容状態などの装置情報を記憶する装置情報データベース110と、入出力装置10とのインタフェイス120と、入力された設計要求を解析する入力解析部130と、入力解析部130の解析結果に基づき装置情報データベース110から選定候補となる回線収容装置に係る装置情報を取得する選定候補データ取得部140と、該選定候補データから後述する選定アルゴリズムにより収容先の回線収容装置を選定する選定処理部150と、選定結果を所定の出力形式で入出力装置10に出力する出力処理部160とを備えている。なお回線収容設計装置100はコンピュータにプログラムをインストールすることにより構成されており、またその実装形態は不問である。例えば、回線収容設計装置100の各部を、1つのコンピュータに実装しても複数のコンピュータに分散実装してもよく、また前記入出力装置10と同一のコンピュータ上に実装してもよい。
まず前記装置情報データベース110に記憶されている装置情報について図2乃至図4を参照して説明する。図2は装置情報の一例を示す図、図3は詳細装置情報の一例を示す図、図4は設計対象モデルを示す図である。
装置情報データベース110に記憶されている装置情報は、図4に示す設計対象の仕様や現状の回線収容状態等をモデル化したものであり、本実施の形態では図2に示す装置情報テーブルと、図3に示す装置情報詳細テーブルとを備えている。装置情報テーブルには、図2に示すように、終端装置が設置されている設置場所、終端装置の識別情報である終端装置名称、各終端装置に設けられた回線収容装置の識別情報である回線収容装置番号、各回線収容装置に収容された現用ONUの数及び最大収容数、各回線収容装置で提供しているサービス種別、最低保証帯域合計、平均使用帯域合計、1ONUの平均使用帯域、回線収容装置に接続された分岐機器情報、などのパラメータが含まれる。すなわち、終端装置名称・回線収容装置番号・ONU数など回線収容装置に関する物理情報や、サービス種別・最低保証帯域合計・平均使用帯域合計・1ONUの平均使用帯域などの論理情報や、回線収容装置の外部機器に関する付加情報とが含まれる。なお、1ONUの平均使用帯域は必要の都度、平均使用帯域合計及び最大ONU数から算出してもよい。なお、分岐機器情報などの付加情報は必須要件ではない点に留意されたい。また詳細装置情報テーブルには、図3に示すように、終端装置名称、回線収容装置番号、各回線収容装置に収容されたONUを識別するONU番号、各ONUの現用有無、各ONUで提供しているサービス種別、最低保証帯域、平均使用帯域、などのパラメータが含まれる。なお、前記平均使用帯域合計・1ONUの使用帯域・平均使用帯域は、実際のサービス開通後にユーザによって使用された値が設定される。
入力解析部130は、入力された設計要求の書式チェック・コマンドチェック等を行うとともに設計要求に含まれる選定条件情報を抽出する。選定候補データ取得部140は、該選定条件情報に基づき装置情報データベース110から選定候補となる回線収容装置に係る装置情報を取得する。例えば、新規回線の収容先のビルとサービス種別が選定条件として指定されている場合、当該条件に合致する装置情報を装置情報データベース110から取得し、該装置情報を選定候補データとして後段の選定処理部150に渡す。出力処理部160は、選定処理部150による選定結果を所定の出力形式で入出力装置10に出力する他、必要に応じて該選定結果を図示しない記憶装置に保存し、実際の回線収容処理において利用可能にしている。
次に選定処理部150について説明する。まず選定処理部150における選定アルゴリズムについて図5を参照して説明する。図5は回線の収容状態を表す概念図である。本発明では、各回線収容装置における回線の収容状態を示すn個のパラメータを用い、該パラメータにより形成されるn次元空間を想定する。そして該空間中の1点を示すベクトル値を回線収容装置における回線収容状態を示す値として用いる。図5の例では、ONU数、平均使用帯域合計、最低保証帯域合計という3つのパラメータによる3次元空間を想定し、収容状態は点(ONU数,平均使用帯域合計,最低保証帯域合計)により示される。現状の収容状態を示す点(現状点)は装置情報データベース110に記憶されている装置状態により特定される。
本発明ではこのような前提のもと、需要の発生により新規回線を追加した場合に推定される収容状態の点(推定点)と、新規回線を追加した場合に理想とされる収容状態の点(理想点)とを各回線収容装置毎に算出する。さらに、推定点と理想点とのユークリッド距離を各回線収容装置毎に算出する。そして、最も小さいユークリッド距離が算出された回線収容装置を新規回線の収容先として選定する。以下、推定点及び理想点の算出方法について説明する。
本実施の形態では、推定点は現状点に対して所定の推定ルールを適用することにより算出する。該推定ルールは、新規回線のサービス種別などの回線情報等により決定される。本実施形態の例では以下のようにして推定点を算出する。なお、ここでは新規回線のサービス種別では1回線あたりONUを1つ用いるものとする。現状点を(x,y,z)、推定点を(xe,ye,ze)、当該回線収容装置における1ONUの平均使用帯域をy’、当該サービス種別の最低保証帯域をz’とすると、推定点(xe,ye,ze)=(x+1,y+y’,z+z’)で算出される。なお推定ルール・回線情報は図示しない記憶手段に予め記憶しておき、設計条件情報に基づき取得すればよい。
また本実施の形態では理想点は前記n次元空間内の「理想線」上の点として算出される。ここで理想線とは、図5に示すように、n次元空間において各パラメータを最小値にした点と各パラメータを最大値にした点とを結ぶ線を意味する。本実施の形態では、各パラメータの最小値は0である。一方、各パラメータの最大値は、ONU数は当該回線収容装置における収容可能な最大ONU数Xmax、平均使用帯域及び最低保証帯域はそれぞれ当該回線収容装置における最大帯域Ymaxである。したがって、現状点を(x,y,z)、理想点を(xt,yt,zt)とすると、理想点(xt,yt,zt)=(x+1,(x+1)・(Ymax/Xmax),(x+1)・(Ymax/Xmax))で算出される。前記最大ONU数Xmax及び最大帯域Ymaxは通常静的な値なので、理想点は回線追加後のONU数に依存する。なお、最大ONU数Xmax及び最大帯域Ymaxは装置情報データベース110から取得すればよい。
次に選定処理部150の構成について図6を参照して説明する。選定処理部150は、図6に示すように、新規回線についての推定ルール・回線情報や装置情報データベース110に記憶された装置情報に基づき新規回線を収容した場合における推定点を各回線収容装置毎に算出する推定点算出部151と、装置情報データベース110に記憶された装置情報に基づき新規回線を収容した場合における理想点を各回線収容装置毎に算出する理想点算出部152と、推定点算出部151で算出された推定点と理想点算出部152で算出された理想点とのユークリッド距離を各回線収容装置毎に算出するユークリッド距離算出部153と、ユークリッド距離算出部153で算出されたユークリッド距離に基づき収容先の回線収容装置を算出する回線収容装置算出部154とを備えている。
推定点算出部151の動作について図7のフローチャートを参照して説明する。推定点算出部151は、まず選定候補データのデータ数Nを取得する(ステップS1)。次に推定点算出部151は、各回線収容装置について現状の最低保証帯域合計(z)及び平均使用帯域合計(y)を装置情報データベース110から取得し(ステップS2,S3)、さらに新規回線の回線情報等に基づき最低保証帯域(z’)を取得する(ステップS4)。次いで推定点算出部151は、各回線収容装置について現状の1ONUの平均使用帯域(y’)を取得する(ステップS5)。ここで1ONUの平均使用帯域(y’)は、さらに新規回線の回線情報等に基づき当該サービス種別で予想される所定の固定値を用いてもよいし、装置情報データベース110を参照して当該回線収容装置又は終端装置或いは通信局内での1ONUの平均使用帯域を取得して用いでもよい。次いで推定点算出部151は、取得した各値及び前述のアルゴリムにより推定点(xe,ye,ze)を算出する(ステップS6)。以上のステップS2〜S6を各選定候補データについて繰り返し処理することにより全ての選定候補についての推定点が算出される(ステップS7)。
次に、理想点算出部152の動作について図8のフローチャートを参照して説明する。理想点算出部152は、まず選定候補データのデータ数Nを取得する(ステップS11)。次に理想点算出部152は、各回線収容装置について最大ONU数(Xmax)及び最大帯域(Ymax)を装置情報データベース110から取得し(ステップS12,S13)し、さらに現状のONU数(x)を取得する(ステップS14)。次に理想点算出部152は、前述の理想線を算出し(ステップS15)、さらに取得した各値及び前述のアルゴリズムにより理想点(xt,yt,zt)を算出する(ステップS16)。以上のステップS12〜S16を各選定候補データについて繰り返し処理することにより全ての選定候補についての理想点が算出される(ステップS17)。
次に、ユークリッド距離算出部153の動作について図9のフローチャートを参照して説明する。ユークリッド距離算出部153は、まず選定候補データのデータ数Nを取得する(ステップS21)。次にユークリッド距離算出部153は、各回線収容装置について推定点(xe,ye,ze)と理想点(xt,yt,zt)をそれぞれ推定点算出部151,理想点算出部152より取得し(ステップS22,S23)、両点のユークリッド距離を次式により算出する(ステップS24)。
以上のステップS22〜S24を各選定候補データについて繰り返し処理することにより全ての選定候補についてのユークリッド距離が算出される(ステップS25)。
次に、回線収容装置選定部154の動作について図10のフローチャートを参照して説明する。回線収容装置選定部154は、まず選定候補データのデータ数Nを取得し(ステップS31)、各選定候補データについてユークリッド距離をユークリッド距離算出部153から取得するとともに付加情報を装置情報データベース110から取得する(ステップS32,S33,S34)。次に回線収容装置選定部154は、選定条件において選定アルゴリズムの優先順位を確認し、ユークリッド距離による選定アルゴリズムの優先順位が高い場合(又は優先順位が設定されていない場合)、最も小さいユークリッド距離が算出された回線収容装置を新規回線の収容先として選定する(ステップS35,S36)。一方、付加情報による選定アルゴリズムの優先順位が高い場合には、装置上データベース110を参照して分岐機器情報などの付加情報を利用して収容先の回線収容装置を決定する(ステップS37)。
なお、前記ステップS36において最も小さいユークリッド距離が算出された回線収容装置が複数ある場合には、さらに種々の選定アルゴリズムにより1つの回線収容装置を選定するようにすればよい。例えば、単純に回線収容装置番号の若い順に選定してもよいし、ランダムに選定するようにしてもよいし、オペレータにより選択するようにしてもよい。また他の方法としては、現状の収容ONU数など装置情報の各パラメータに基づき選定するようにしてもよいし、さらに前記付加情報に基づき選定するようにしてもよい。
このように本実施の形態に係る回線収容設計装置によれば、従来のように空きのある回線収容装置のうち若番のものに新規回線の収容先を選定するのではなく、回線収容装置の収容状態に基づき選定される。より具体的には、現状の収容状態、現状の収容状態に新規回線を収容したときに推定される収容状態、現状の収容状態に新規回線を収容したときの理想的な収容状態を算出し、最も理想的な収容状態に近づくように回線収容装置が選定される。これにより最適な収容効率を得ることができる。すなわち、若番から順に端から詰める選定方法では課題であった帯域オーバーや、回線収容装置によって通信レスポンスが遅い等、サービス品質が極端に低下する課題が解消可能となる。
以上本発明の一実施の形態について詳述したが本発明はこれに限定されるものではない。例えば上記実施の形態では、ONU数・平均使用帯域合計・最低保証帯域合計という3つのパラメータを用いて回線収容装置における収容状態を定義していたが、パラメータの種別や数は不問である。例えば、収容予測情報のような統計的な予測の性質を持った情報でも数値化が可能であれば本発明を適用できる。
また、上記実施の形態では説明の簡単のため、1回線につきONUを1つ用いるサービス種別を選定条件とした場合について説明したが複数のONUを用いるサービス種別であっても本発明を適用できる。
また、上記実施の形態では、現状点から推定点を算出する推定ルールで利用される追加回線のサービス種別に係る平均使用帯域として固定的な値を用いてたが、前述したように、当該回線収容装置又は終端装置或いは通信局内での1ONUの平均使用帯域を用いでもよい。また、追加回線のサービス種別に係る最低保障帯域についても固定的な値を用いたが、選定条件において指定可能にするなど変動的であってもよい。
また、上記実施の形態では設計対象としてGE−PONの終端装置における回線収容設計について説明したが他のシステムにおける収容設計でも本発明を適用できる。例えばパケット通信網におけるルータ装置における回線収容設計などが挙げられる。
本発明の実施例について図面を参照して説明する。ここでは上記実施の形態の回線収容設計装置100を用いて以下の条件のもとに収容設計を行うものとする。終端装置内の回線収容装置は回線収容装置IF1〜IF4の4つであり、各回線収容装置IF1〜IF4にはそれぞれ32個のONUが接続可能であり最大収容帯域は1000Mbpsである。また初期状態として各回線収容装置IF1〜IF4には回線が1つも収容されていないものとする。
また、オペレータが選定するサービス種別をAサービスとし、該Aサービスでは1つのONUにて選定を行い、最低保証帯域は60Mbps、1ONUの平均使用帯域は90Mbpsとする。そして、図11に示すように32個の新規回線の追加要求(需要)について若番から順に各需要が発生したものとし、実際のサービス提供を行うことなくシミュレーションを行う。なお、装置情報データのうち平均使用帯域・平均使用帯域合計・1ONUの平均使用帯域はサービス開通後にユーザが実際に使用しないと不明な値である。そこで、各需要発生後には、図11における「サービス開通後の平均使用帯域」に示した値でユーザが使用を行ったものとして、各需要について回線収容装置の選定を順次行っていくものとする。
以上の条件のもとシミュレーションを行う。図12に需要1〜3に係る設計要求の処理後における収容状態を示すので参照されたい。まず需要1に係る設計要求について回線収容装置の選定処理を行うと、回線収容装置IF1の現状点(x,y,z)=(0,0,0)なので、当該回線収容装置IF1に新規回線を追加した場合には、推定点(xe,ye,ze)=(x+1,y+最低保証帯域,z+1ONUの平均使用帯域)=(1,60,90)となる。一方、理想点(xt,yt,zt)=(x+1,(x+1)・(Ymax/Xmax),(x+1)・(Ymax/Xmax))=(1,31,31)となる。したがって、推定点と理想点間のユークリッド距離は84となる。以上の処理を他の回線収容装置IF2〜4についても行うと、各回線収容装置IF2〜4において同様にユークリッド距離は84となる。したがって、最小のユークリッド距離が算出された回線収容装置は、全ての回線収容装置IF1〜4であるので、ここでは最も若い番号の回線収容装置IF1を選定する。以上の処理により需要1に係る設計要求に対しては回線収容装置IF1が選定された。
ここでシミュレーションとして需要1に係る回線が図11に示す「サービス開通後の平均使用帯域」で使用されているものとし、以降の需要について選定処理を行う。
需要2に係る設計要求について回線収容装置の選定処理では、回線収容装置IF1の現状点(x,y,z)=(1,60,60)なので、当該回線収容装置IF1に新規回線を追加した場合には、推定点(xe,ye,ze)=(x+1,y+最低保証帯域,z+1ONUの平均使用帯域)=(2,120,150)となる。一方、理想点(xt,yt,zt)=(x+1,(x+1)・(Ymax/Xmax),(x+1)・(Ymax/Xmax))=(2,62,62)となる。したがって、推定点と理想点間のユークリッド距離は149となる。次に、回線収容装置IF2の現状点(x,y,z)=(0,0,0)なので、当該回線収容装置IF2に新規回線を追加した場合には、推定点(xe,ye,ze)=(x+1,y+最低保証帯域,z+1ONUの平均使用帯域)=(1,60,90)となる。一方、理想点(xt,yt,zt)=(x+1,(x+1)・(Ymax/Xmax),(x+1)・(Ymax/Xmax))=(1,31,31)となる。したがって、推定点と理想点間のユークリッド距離は84となる。同様の処理により回線収容装置IF3〜4についてもユークリッド距離は84となる。したがって、最小のユークリッド距離が算出された回線収容装置は、回線収容装置IF2〜4であるので、ここでは最も若い番号の回線収容装置IF2を選定する。以上の処理により需要2に係る設計要求に対しては回線収容装置IF2が選定された。
ここでシミュレーションとして需要2に係る回線が図11に示す「サービス開通後の平均使用帯域」で使用されているものとし、以降の需要について選定処理を行う。
需要3に係る設計要求について回線収容装置の選定処理では、回線収容装置IF1の現状点(x,y,z)=(1,60,60)なので、当該回線収容装置IF1に新規回線を追加した場合には、推定点(xe,ye,ze)=(x+1,y+最低保証帯域,z+1ONUの平均使用帯域)=(2,120,150)となる。一方、理想点(xt,yt,zt)=(x+1,(x+1)・(Ymax/Xmax),(x+1)・(Ymax/Xmax))=(2,62,62)となる。したがって、推定点と理想点間のユークリッド距離は149となる。次に、回線収容装置IF2の現状点(x,y,z)=(1,60,150)なので、当該回線収容装置IF2に新規回線を追加した場合には、推定点(xe,ye,ze)=(x+1,y+最低保証帯域,z+1ONUの平均使用帯域)=(2,120,240)となる。一方、理想点(xt,yt,zt)=(x+1,(x+1)・(Ymax/Xmax),(x+1)・(Ymax/Xmax))=(2,62,62)となる。したがって、推定点と理想点間のユークリッド距離は215となる。次に、回線収容装置IF3の現状点(x,y,z)=(0,0,0)なので、当該回線収容装置IF3に新規回線を追加した場合には、推定点(xe,ye,ze)=(x+1,y+最低保証帯域,z+1ONUの平均使用帯域)=(1,60,90)となる。一方、理想点(xt,yt,zt)=(x+1,(x+1)・(Ymax/Xmax),(x+1)・(Ymax/Xmax))=(1,31,31)となる。したがって、推定点と理想点間のユークリッド距離は84となる。同様の処理により回線収容装置IF4についてもユークリッド距離は84となる。したがって、最小のユークリッド距離が算出された回線収容装置は、回線収容装置IF3〜4であるので、ここでは最も若い番号の回線収容装置IF3を選定する。以上の処理により需要3に係る設計要求に対しては回線収容装置IF3が選定された。
以上の処理を継続させて図11に示す全需要について収容先の回線収容装置の選定処理を行った結果を図13に示す。なお図13において、残使用可能帯域値とは、各回線収容装置の最大帯域から平均使用帯域合計を引いた差分である。該残使用可能帯域は、その値が大きければ大きいほど新規ユーザ選定の余裕がある、または既存ユーザの平均使用帯域が増加しても耐力あるサービス提要が可能となることを意味する。また、各回線収容装置における最低保障帯域と平均使用帯域の推移をグラフ化したものを図14〜図17に示す。各グラフから明らかなように、本願技術を使う事で最低保障帯域合計と平均使用帯域合計の空き帯域状況が多い回線収容装置から選定されている事が分かる。このことから、若番から順に端から詰める従来の選定方法では課題であった帯域オーバーや、回線収容装置によって通信レスポンスが遅い等、サービス品質が極端に低下する課題を解消可能であること分かる。
なお、本実施例では説明の簡便性を考えて、幾つかの前提で説明を実施した。例えばサービスは固定であるため最低保障帯域値も固定である、最低保障帯域値は平均使用帯域値より少なくなる事は無い、ONU数は必ず理想点や推定点であっても1ONU増える等である。よって、ONU数や最低保障帯域の選定時の評価軸の支配性は少なく、代わりに変動要素が多分にある平均使用帯域が最も支配性が強くなる。その結果、図14(IF番号=1)で示すとおり、平均使用帯域が1000Mの上限に対して、最低保証帯域が600Mの上限となっている。本来であれば各評価軸の変動要素が多くあった方が、各評価軸同士の平準化が確認できるが、それぞれの評価軸の変動要素が少ない場合であっても、若番から順に端から詰める選定方法では課題であった帯域オーバーや、回線収容装置によって通信レスポンスが遅い等、サービス品質が極端に低下する課題を解消可能であることが確認できた。
本願発明の効果を説明するため、既存の選定方法を始めとする他の選定方法と本願発明との差異を定量的に評価する。ここでは差異を明確にするために前記実施例と同じ条件下において各選定方法による回線収容装置の選定をシミュレートした。該シミュレートの結果を図18に示す。
まず、比較対象として(a)既存の若番から回線収容装置選定する選定方法について説明する。本選定方法では、通信局内の回線収容装置として管理されている各IFの通番から最も若い番号である若番から選定する技術である。当該選定方法では、最低保証帯域や平均使用帯域の充足可否で選定可否を判断していないため、以下のメリット・デメリットが発生する。
メリット:若番の回線収容装置(IF1)にある最大ONUまで選定可能であるため、収容率が高く、選定に要する設備量(IF数=1)が最小である。
デメリット:最低保証帯域や平均使用帯域の充足可否で選定可否を判断していないため、サービス提供不可(例えば最大帯域1000Mに対して1920M)となる場合が発生する。また、平均使用帯域の充足可否で選定可否を判断していないため、全ユーザの残使用可能帯域が低くなり(−2680M)、サービス品質が低下する。
他の比較対象として、(b)最低保証帯域のみ充足確認し、若番から選定する選定方法について説明する。本選定方法では、通信局内の回線収容装置として管理されているIFの最低保証帯域合計が、選定されるサービスの最低保証帯域を加算しても限界帯域を超えないようIFを抽出する。そのIFの通番から最も若い番号である若番から選定する技術である。当該選定方法では、平均使用帯域の充足可否で選定可否を判断していないため、以下のメリット・デメリットが発生する。
メリット:最低保証帯域の充足可否を確認した上で、若番から選定しているため前記(a)の選定方法より収容率は減少するが、選定に要する設備量(IF数=2)に収容された全ユーザのサービスが提供可能。
デメリット:平均使用帯域の充足可否で選定可否を判断していない為、全ユーザの残使用可能帯域が低くなり(それぞれのIFで−840M)、サービスが低下する。
さらに他の比較対象として、(c)最低保証帯域のみ充足確認し、残最低保証帯域順に選定する選定方法について説明する。本選定方法では、通信局内の回線収容装置として管理されているIFの最低保証帯域合計が少ないIFから順に選定する技術である。当該選定方法では、平均使用帯域の充足可否で選定可否を判断していないため、以下のメリット・デメリットが発生する。
メリット:実装されている各IFのうち、最低保証帯域の充足可否を確認した上で最低保証帯域合計が少ないIFから選定しているため、前記(b)の選定方法より収容率は減少するが、選定に要する設備量(IF数=4)の全ユーザがサービス提供可能。
デメリット:実装されている各IFのうち、最低保証帯域合計が少ないIFから選定しているため1つのIFにおける最低保証帯域合計は少なくなるが、平均使用帯域の充足可否で選定可否を判断していないため、全ユーザの残使用可能帯域が低くなり(IF2=−200、IF3=−600)、サービス品質が低下する。
なお、(c)の選定方法の評価軸を、実装されている各IFから平均使用帯域合計が少ないIFから選定する方法もある。その場合、最低保障帯域値は平均使用帯域値より少なくなる事は無い前提で選定しているため、最低保障帯域値と平均使用帯域値が最大帯域を超えないため、全ユーザのサービス提供可能、サービス品質維持となる。しかし、今回の選定の前提は、説明の簡単のために、最低保障帯域値は平均使用帯域値より少なくなる事は無いことを前提とした。そのため、最低保障帯域値が平均使用帯域値より多くなるケースも想定される場合は、サービス品質が低下する結果となる。要は、前記(c)の選定方法自体が1つの評価軸で選定している限り、選定の前提条件次第でメリットやデメリットが変わってくるものである。
次に、前記(a)〜(c)の選定方法と本願発明に係る選定方法との対比結果について図19及び図20を参照して説明する。前記(a)の選定方法では、1つのIFの残使用可能帯域がマイナスであり、1つのIFの最低保証帯域合計値が最大帯域を超えているため、サービス品質の低下、かつサービス提供不可であるため、比較困難であることが分かる。
前記(b)の選定方法では、選定されたIFの最低保証帯域合計は最大帯域の範疇であり、サービス提供は可能であるが、選定された各IFの残使用可能帯域がマイナスであり、サービス品質の低下を起こしていることが分かる。
前記(c)の選定補法では、選定されたIFの最低保証帯域合計は最大帯域の範疇であり、サービス提供は可能であるが、選定されたIFによっては残使用可能帯域がマイナスであり、サービス品質の低下を起こしている。
一方、本願に係る選定方法では、選定されたIFの最低保証帯域合計は最大帯域の範疇であり、サービス提供は可能である。また、選定された各IFの残使用可能帯域に余裕があり、サービス品質維持を満たしている。以上のように本発明の効果が定量的に確認できた。