(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1に示す本実施形態の車両用ナビゲーション装置1(地図更新装置の一例に相当する)は、車両に搭載され、位置検出器11、画像表示装置12、操作部13、スピーカ14、無線通信機15、地図データ取得部16、および制御回路17を有している。
位置検出器11は、いずれも周知の図示しない加速度センサ、地磁気センサ、ジャイロセンサ、車速センサ、およびGPS受信機等のセンサを有しており、これらセンサの各々の性質に基づいた、車両の現在位置、向き、および速度を特定するための情報を制御回路17に出力する。
画像表示装置12は、制御回路17から出力された映像信号に基づいた映像をユーザに表示する。表示映像としては、例えば現在地を中心とする地図等がある。
操作部13は、車両用ナビゲーション装置1に設けられた複数のメカニカルスイッチ、画像表示装置12の表示面に重ねて設けられたタッチパネル等の入力装置から成り、ユーザによるメカニカルスイッチの押下、タッチパネルのタッチに基づいた信号を制御回路17に出力する。
無線通信機15は、車両の外部にある地図配信サーバとの通信を実現するための周知の無線機であり、制御回路17は、この無線通信機15を用いて、当該地図配信サーバからから無線送信された地図データを受信することができる。
地図配信サーバは、通信装置および記憶媒体を備え、逐次作成される最新バージョンの地図データを記憶媒体に記録し、記録されている最新バージョンの地図データの全部または一部を、車両用ナビゲーション装置1等の装置に送信する装置である。
地図データ取得部16は、不揮発性の記憶媒体およびそれら記憶媒体に対してデータの読み出しおよび書き込みを行う装置(例えば、ハードディスクドライブ)から成る。当該記憶媒体は、制御回路17が実行するプログラムを記憶すると共に、地図表示およびルート案内用の地図データを記憶している。
地図データは、道路データおよび地物データを含んでいる。地物データは、複数の地物(公園、店舗等の施設、または、川等の自然造形物)のそれぞれについて、位置、名称、種別等の情報を有している。
道路データは、分岐点、合流点等を示すノードについての情報(以下、ノードデータという)、および、2つのノード間を繋ぐ道路区間を示すリンクについての情報(以下、リンクデータという)を有している。
リンクデータは複数個のリンクレコードを含み、それら複数のリンクレコードは、複数のリンクに1対1に対応している。あるリンクに対応するリンクレコードは、当該リンクの属性情報として、当該リンクのリンクID、当該リンクの両端に接続する2つのノード(始点ノードおよび終点ノード)のノードID、これら2つの両端ノードの間にある1つ以上の形状点の位置情報(緯度、経度)、およびリンクの種別情報(高速道路、一般道路等の種別)を含んでいる。
リンクIDは、リンクを一意に識別するためのコードであり、含んでいる。エリア部は、当該リンクが属する単位エリアのIDを含み、固有部は、当該単位エリア内において当該リンクを一意に識別するためのIDを含んでいる。単位エリアについては後述する。リンクの形状点とは、そのリンクに対応する道路が通る地点を表している。したがって、リンクの形状点は、そのリンクの形状を表す情報である。
ノードデータは複数個のノードレコードを含み、それら複数のノードレコードは、複数のノードに1対1に対応している。あるノードに対応するノードレコードは、当該ノードの属性情報として、ノードID、当該ノードの位置座標(緯度、経度)、当該ノードに接続するリンクのリンクIDを含んでいる。ノードIDは、ノードを一意に識別するためのコードであり、エリア部および固有部を含んでいる。エリア部は、当該ノードが属する単位エリアのIDを含み、固有部は、当該単位エリア内において当該ノードを一意に識別するためのIDを含んでいる。
地物データは複数個の地物レコードを含み、それら複数の地物レコードは、複数の地物(公園、店舗等の施設、または、川等の自然造形物)に1対1に対応している。ある地物に対応する地物レコードは、当該地物の属性情報として、当該地物の地物ID、当該地物の名称情報、当該地物の所在位置情報(緯度、経度)、当該地物の種類情報等を有している。
なお、本実施形態においては、後述するように、地図データのうち一部のみを新しいバージョンのデータに更新するようになっている。より具体的には、地図データのうち、一部の地理範囲(例えば、1つの国、1つの州、1つの県)についてのみ、その地理範囲に属する道路の道路データおよびその地理範囲に属する地物の地物データを更新するようになっている。このような更新方法、すなわち、地図データのうち、一部の地理範囲に属するデータを更新するような更新方法を、エリア更新という。
エリア更新を実現するために、本実施形態の地図データは、単位エリア毎に区分けされている。単位エリアとは、エリア更新の単位となる地理範囲をいう。したがって、リンクデータおよび地物データは、単位エリアの境界(例えば、国境、州境、県境)を跨がず、いずれかの単位エリアにのみ属するようになる。
より具体的には、すべてのリンクレコードにおいて、両端のノードIDが必ず同じ単位エリアに属するようになっている。これについて、図2を用いて説明する。図2においては、単位エリアXに交差点を示すノード61があり、単位エリアXに隣接する単位エリアYに交差点を示すノード62があり、それらノード61、62を直接繋ぐ(すなわち、他の交差点等を介さずに繋ぐ)道路がある。この道路は、単位エリアXと単位エリアYの境界60を横切っている。
従来の地図データの場合、この道路は1つのリンクで表され、当該リンクのリンクレコードは、両端のノードとして、属するエリアが異なるノード61およびノード62のノードIDを含むようになる。
しかし、本実施形態においては、両端のノードIDが必ず同じ単位エリアに属するようにする必要がある。そこで、この道路をエリア境界60において2つのリンク64、66に分割し、一方のリンク64を単位エリアXに属させ、他方のリンク66を単位エリアYに属させる。
具体的には、リンク64のリンクIDのエリア部には、単位エリアXのIDを含め、リンク65のリンクIDのエリア部には、単位エリアYのIDを含める。そして、単位エリアXに属するリンク64の両端のノードとして、ノード61に加え、境界60上に位置する境界ノード63を設ける。また、単位エリアYに属するリンク66の両端のノードとして、ノード62に加え、境界60上に位置する境界ノード65を設ける。
これらの境界ノード63、65は、地理的には同じ位置にあるが、一方の境界ノード63は、単位エリアXに属し、他方の境界ノード65は、単位エリアYに属する。すなわち、境界ノード63のノードIDのエリア部は単位エリアXのIDであり、境界ノード65のノードIDのエリア部は単位エリアYのIDであるが、境界ノード63の位置情報と境界ノード65の位置情報は、同じ緯度、経度を示している。
このように、本実施形態においては、異なる単位エリアに属する交差点のノード61、62を直接繋ぐ道路がある場合、地図データのうち、単位エリアXの地図データは、ノードデータとして、交差点ノード61の情報に加え、境界60上の境界ノード63の情報を含むようになる。また、地図データのうち、単位エリアYの地図データは、ノードデータとして、交差点ノード62の情報に加え、境界60上の境界ノード65の情報を含むようになる。また、単位エリアXの地図データは、リンクデータとしては、交差点ノード61と境界ノード63を両端とするリンク64の情報を含み、単位エリアYの地図データは、リンクデータとしては、交差点ノード62と境界ノード65を両端とするリンク66の情報を含むようになる。
ここで、ノードデータの一部として格納される境界ノード63、65のノードレコードの内容について説明する。境界ノード63、65のノードレコードは、交差点を示すノードと同様、当該ノードの属性として、当該境界ノードのノードID、当該ノードの位置座標(緯度、経度)、当該境界ノードに接続するリンクのリンクIDを含んでいるが、それに加え、当該ノードが境界ノードであることを示す境界フラグをも含んでいる。また、境界ノード63、65のそれぞれのノードIDのエリア部は、上述の通り、当該境界ノードが属する単位エリアのIDである。
また、境界ノード63、65のノードIDの固有部の内容は、互いに同一である。すなわち、1つの道路をエリア境界60で分割することによってできた、ペア(対)を成す2つの境界ノード63、65については、例外的に固有部が互いに同じになっている。このようにすることで、ノードIDの固有部を比較すれば、ペアの相手となる境界ノードを見つけることができる。ペアとなる境界ノードは、後述する推奨ルート算出処理においては、同一のノードであるとして扱われる。これによって、後述する推奨ルート算出処理において、ペアとなる境界ノードを挟むリンク間が接続しているように扱われる。
以上のような地図データの構造により、地図データ中において、道路データおよび地物データがどの単位エリアに属するかを明確に分けることができる。
また、本実施形態の地図データは、エリア更新によって、一部の単位エリアのみが新しいバージョンに更新され、残りの単位エリアが古いバージョンのままとなる。したがって、地図配信サーバにある最新バージョンの地図データに、複数の単位エリアを通る新設道路のデータ(リンクレコード、ノードレコード等)が追加されている場合、車両用ナビゲーション装置1がエリア更新を行うと、この新設道路のうち、一部の区間のデータは車両用ナビゲーション装置1において取得され、他の区間のデータは車両用ナビゲーション装置1において取得されず、その結果、道路不整合が発生する可能性がある。
そのような道路不整合が発生した例を、図3および図4に示す。図3の例では、車両用ナビゲーション装置1において、隣り合う2つの単位エリア21、22のうち、単位エリア22のみが更新され、その結果、新設道路のうち、単位エリア22に属する区間23のデータが存在するにもかかわらず、単位エリア21に属する区間24のデータが存在しない事態となっている。
また、図4の例では、車両用ナビゲーション装置1において、隣り合う2つの単位エリア31、32のうち、単位エリア32のみが更新され、その結果、新設道路のうち、単位エリア32に属する区間33のデータが存在するにもかかわらず、単位エリア31に属する区間34のデータが存在しない事態となっている。
このような状態の地図データのままでは、新設道路がエリア境界で途切れた状態となっているので、この新設道路を通るルートを車両用ナビゲーション装置1が案内する可能性が非常に低い。したがって、ドライバーは新設道路を有効に利用できない。
本実施形態においては、このような事態においても、ドライバーが新設道路を有効に利用できるよう、地図配信サーバに記録するための最新バージョンの地図データを作成する段階で、その地図データに乗り継ぎ点情報を含めるようになっている。
地図データに乗り継ぎ点情報を含めるタイミングとしては、例えば、新設道路のデータを新たに含む最新バージョンの地図データを作成するタイミングがある。このタイミングにおいては、その新設道路のデータのうち、その新設道路と単位エリアの境界との交点に位置するすべての境界ノードのノードレコードに、乗り継ぎ点情報を付加する。
したがって、図3の例においては、このように乗り継ぎ点情報が付加された地図データの一部を、エリア更新によって地図配信サーバから取得することで、図5に示すように、更新された後の単位エリア22の地図データにおいて、新設道路の区間23の両端25a、25bに位置する境界ノードのノードレコードに、乗り継ぎ点情報が付加される。
また、図4の例においては、上記のように乗り継ぎ点情報が付加された地図データの一部を、エリア更新によって地図配信サーバから取得することで、図6に示すように、更新された後の単位エリア32の地図データにおいて、新設道路の区間33の端35aに位置する境界ノードのノードレコードに、乗り継ぎ点情報が付加される。なお以下では、乗り継ぎ点情報が付与された地図上の位置を、情報付与点という。
ここで、1つのノードレコードに付加される(すなわち、1つのノードに関連付けられる)乗り継ぎ点情報の内容について、図7を用いて説明する。乗り継ぎ点情報は、その乗り継ぎ点情報に含まれる乗り継ぎ候補点の数n(nは1または複数)、および、n個の乗り継ぎ候補点の位置座標(緯度、経度)を、含んでいる。
これらn個の乗り継ぎ候補点のそれぞれは、当該ノードレコードが属する単位エリアの外にある。より具体的には、各乗り継ぎ候補点は、当該情報付与点を通っている上記新設道路上のうち、当該情報付与点から当該単位エリア外に延びている側に位置する。より詳しくは、当該新設道路の当該側の区間上の、既存道路と接続する位置に、乗り継ぎ候補点が存在する。つまり、乗り継ぎ点とは、当該新設道路の当該側の区間から既存道路に乗り換えることが可能な点をいう。なお、ここでいう既存道路とは、最新バージョンの地図データにおいて新たに追加されたのではない道路である。
なお、図5、図6の例においては、情報付与点25aが属する単位エリアに隣接する単位エリアに位置する1つの乗り継ぎ候補点のみが例示されているが、情報付与点25aに関連付けられる乗り継ぎ候補点は、属する単位エリアに隣接しない単位エリアに位置していてもよいし、また、1つの情報付与点に複数の乗り継ぎ候補点が関連づけられていてもよい。
制御回路(コンピュータに相当する)17は、CPU、RAM、ROM、I/O等を有するマイコンである。CPUは、ROMまたは地図データ取得部16から読み出した車両用ナビゲーション装置1の動作のためのプログラムを実行し、その実行の際にはRAM、ROM、および地図データ取得部16から情報を読み出し、RAMおよび地図データ取得部16の記憶媒体に対して情報の書き込みを行い、位置検出器11、画像表示装置12、操作部13、スピーカ14、および無線通信機15と信号の授受を行う。
制御回路17がプログラムを実行することによって行う具体的な処理としては、現在位置特定処理、地図表示処理、推奨ルート算出処理、ルート案内処理、地図更新処理等がある。現在位置特定処理は、位置検出器11からの信号に基づいて、周知のマップマッチング等の技術を用いて車両の現在位置や向きを特定する処理である。
地図表示処理は、車両の現在位置の周辺等の特定の領域の地図を、画像表示装置12に表示させる処理である。この際、地図表示のために用いる情報は、地図データから取得する。具体的には、地図表示処理において道路を画像表示装置12に表示させる場合には、制御回路17は、道路データ中のリンクデータおよびノードデータを読み出し、そのリンクデータおよびノードデータに基づいて、リンクの形状点の位置、ノードの位置、リンクとノードの接続関係を特定し、特定した情報に従って、リンクに沿ってノードからノードへ道路を描画する。
推奨ルート算出処理は、操作部13からユーザによる目的地点の入力を受け付け、出発地点から目的地点までの推奨ルートを算出して設定する処理である。出発地点は、現在位置特定処理によって特定した自車両の現在位置を用いてもよいし、操作部13からユーザによる出発地点の入力を受け付けることで取得してもよい。推奨ルート算出処理の詳細については後述する。
ルート案内処理は、推奨ルート算出処理によって設定された推奨ルート上の右左折交差点等の案内ポイントの手前に自車両が到達したときに、右折、左折等を指示する案内音声をスピーカ14に出力させ、当該案内ポイントの拡大図を画像表示装置12に表示させることで、推奨ルートに沿った車両の運転を案内する処理である。なお、推奨ルートに沿って走行したときに、どのように曲がるかについては、ノード間の位置関係に基づいて決定する。
地図更新処理は、車両の外部の地図配信サーバから地図データの一部を受信し、受信した地図データに基づいてエリア更新を行う処理である。具体的には、制御回路17は、操作部13に対して所定の地図更新処理を実行する旨の操作が行われたとき、この地図更新処理を開始し、無線通信機15を用いて地図配信サーバに対して更新用の新バージョンの地図データを要求する。このとき、どの単位エリアの地図データを必要としているかの情報を地図配信サーバに送信してもよい。どの単位エリアの地図データを必要としているかの情報は、操作部13に対するユーザの選択操作に基づいて決定してもよい。
このような地図データの要求を受信した地図配信サーバは、所定の単位エリアの地図データのみ、または、車両用ナビゲーション装置1から要求を受けた所定の単位エリアの地図データのみを、車両用ナビゲーション装置1に送信する。なお、送信対象の単位エリアは、1つであってもよいし、複数であってもよい。
制御回路17は、このようにして送信された単位エリアの地図データを、無線通信機15を介して受信し、現在の当該単位エリアの地図データを、受信した当該単位エリアの地図データに置き換える。例えば、現在の当該単位エリアの地図データを格納するデータ領域に、受信した単位エリアの地図データを上書きする。
ここで、推奨ルート算出処理の詳細について説明する。制御回路17は、推奨ルート算出処理において、出発地点および目的地点が決定すると、図8に示すプログラム100の実行を開始する。
プログラム100の実行において制御回路17は、まずステップ110で、出発地点Sから目的地点Eまでの最適なルートAを、通常の方法で算出する。通常の方法とは、乗り継ぎ点情報を利用しない方法をいう。図9および図10に、出発地点Sおよび目的地点EまでのルートA(一点鎖線で表示)を例示する。図9は、図5に示したようなエリア更新後の地図データに対応する例であり、図10は、図6に示したようなエリア更新後の地図データに対応する例である。
これらの図9、図10に示したように、ステップ110で算出されるルートAは、太線で示された新設道路を通らない。このようになることの大きな要因は、車両用ナビゲーション装置1の地図データ上では、エリア更新の結果、単位エリア21、22の境界、および、単位エリア31、32の境界で新設道路が途切れていることである。
続いてステップ120では、地図データ中のすべての乗り継ぎ点情報を参照し、ルートA上に乗り継ぎ候補点が存在するか否かを判定する。図9、図10の例では、偶々ルートA上に乗り継ぎ点候補27、37が存在する。
なお、乗り継ぎ候補点は、上述の通り、2つの道路の接続する地点として記録されるようになっている。しかし、乗り継ぎ点情報中の乗り継ぎ候補点は、位置座標で特定されるので、リンクやノードの位置と完全に一致するとは限らない。そこで、ルートA上に乗り継ぎ候補点が存在するか否かは、ルートA上のリンクから所定距離以内に乗り継ぎ候補点が位置するか否かで判定する。リンクからの距離としては、当該リンクの形状点を直線で繋いだ折れ線までの最短距離を用いる。この所定距離は、実質的に乗り継ぎ候補点がルートA上にいるとみなしてもよい程度の距離であり、例えば、10メートルである。
ルートA上に乗り継ぎ候補点が存在しない場合、続いてステップ125に進み、ルートAを推奨経路に設定する。ルートA上に乗り継ぎ候補点が存在する場合、続いてステップ130で、出発地点Sから関連情報付与点までの最適なルートpを(例えばダイクストラ法で)算出する。ここで、関連情報付与点は、ステップ120でルートA上に存在すると判定した乗り継ぎ候補点に関連付けられた情報付与点である。
この関連情報付与点は、新設道路上の点であるから、ルートpは更新された地図データ中の新設道路を通ることになる。実際、図9および図10の例においてルートpを算出すると、それぞれ図11および図12に示すように、一点鎖線で示すルートpが、新設道路の区間23、33を通るようになる。
続いてステップ140では、関連情報付与点に関連付けられたすべての乗り継ぎ候補点のそれぞれについて、当該乗り継ぎ候補点から目的地点Eまでの最適なルートqiを(例えばダイクストラ法で)算出する。ここで、添字iは、ルート算出の始点となるルート乗り継ぎ候補点毎に算出されたルートを区別するための添字である。したがって、関連情報付与点に関連付けられたすべての乗り継ぎ候補点の数をmとすると、iは1からmまでの整数である。
図11の例においては、関連情報付与点25aに関連付けられた乗り継ぎ候補点として、単位エリア21中の位置27に加え、単位エリア20中の位置28があるとする。すなわち、関連情報付与点25aのノードレコード中に付加された乗り継ぎ点情報には、乗り継ぎ候補点27、28の位置座標が記録されている。したがって、図11の例においては、乗り継ぎ候補点27から目的地点Eまでの最適なルートq1(一点鎖線で示す)と、乗り継ぎ候補点28から目的地点Eまでの最適なルートq2(一点鎖線で示す)とが算出される。また、図12の例においては、乗り継ぎ候補点37から目的地点Eまでの最適なルートq1(一点鎖線で示す)が算出される。
続いてステップ150では、ステップ140で算出したルートqiの個々に、ステップ130で算出したルートpを合わせた結果のルートを、それぞれルートBiとする。これにより、ルートqiの数だけルートBiが作成される。
続いてステップ160では、ステップ150で作成したルートBiのそれぞれのコストを算出し、それら算出したコストと、ステップ110で算出したルートAのコストとを比較する。
ここで、ルートBiのコストは、ルートpのコストと、ルートqiのコストと、関連情報付与点から乗り継ぎ候補点(より詳しくは、ルートqiの始点となる乗り継ぎ候補点)までのコスト(以下、ギャップコストという)と、の総和とする。
例えば、ルートAの総距離をルートAのコストとする場合、ルートBiのコストは、ルートpの総距離と、ルートqiの総距離と、関連情報付与点から乗り継ぎ候補点までの直線距離と、の総和としてもよい。この例では、関連情報付与点から乗り継ぎ候補点までのギャップコストは、地図データ中の関連情報付与点のノードレコードに基づいて算出可能である。すなわち、当該ノードレコード中のノードの位置情報と、当該ノードレコード中の乗り継ぎ点情報に含まれる当該乗り継ぎ候補点の位置情報に基づいて、算出可能である。
あるいは、関連情報付与点から乗り継ぎ候補点までのギャップコストの情報が、当該乗り継ぎ点情報中の乗り継ぎ候補点の位置情報に関連付けて記録されていれば、そのコスト情報を、関連情報付与点から乗り継ぎ候補点までのギャップコストとして用いてもよい。このように、あらかじめ乗り継ぎ点情報にギャップコストの情報を含めることで、ギャップコストの算出が容易になる。この場合、記録されているギャップコストの値は、新設道路に沿った関連情報付与点から当該乗り継ぎ候補点までの距離とすれば、直線距離を用いる場合に比べてコスト算出の精度が高くなる。
ステップ160の比較の結果、ルートAのコストが最小である場合、すなわち、ルートAのコストがすべてのルートBiのコストよりも小さい場合、続いてステップ125で、ルートAを推奨経路に設定する。また、ルートAのコストが最小でない場合、すなわち、ルートBiのうちいずれかのコストがルートAのコストよりも小さい場合、続いてステップ170を実行する。
ステップ170では、ルートBiのうち、最もコストの低いルートを、推奨ルートとして設定する。ステップ125またはステップ170の後は、プログラム100の実行を終了する。
このようなプログラム100を実行する制御回路17の作動の一例について説明する。制御回路17がエリア更新を行ったとき、図11に例示するように、単位エリア22が新バージョンの地図データに更新され、その単位エリア22に隣接する単位エリア21、およびその他の単位エリア20が更新されずに旧バージョンの地図データのままであったとする。そして、単位エリア21の地図データには、新設道路(例えば国道等の主要道)上の境界ノード(情報付与点)25aに乗り継ぎ点情報が付与されているとする。
このようなエリア更新の後に推奨ルート算出処理を制御回路17が実行すると、出発地点Sから目的地点EまでのルートAを算出し(ステップ110参照)、算出したルートA上に、当該情報付与点25aに関連付けられた乗り継ぎ候補点27がある場合(ステップ120参照)、出発地点Sから当該情報付与点25aまでの最適なルートp(ステップ130参照)と、当該情報付与点25aに関連付けられている複数の乗り継ぎ候補点27、28のそれぞれから目的地点Eまでの最適なルートq1、q2(ステップ140参照)と、を算出する。
そして制御回路17は、ルートpにルートq1を合わせたルートB1およびルートpにルートq2を合わせたルートB2のそれぞれについてコストを算出し、ルートA、B1、B2のうち、最もコストの低いルートを、最適ルートに設定する(ステップ160、125、170参照)。
ここで、ルートpとルートq2とを合わせたルートB2が最適ルートに設定された場合について説明する。この場合、制御回路17は、ルート案内処理において、ルートB2の画像表示装置12への表示、およびルートB2に沿った右左折の案内を行う。この案内に従ってドライバーが車両を運転すると、車両は新設道路の区間23を通って情報付与点25aにさしかかる。このとき、地図データ上では情報付与点25aの先の区間24は存在しないが、現実世界においてはその区間24は存在する。
そこで、制御回路17は、ルートB2の画像表示装置12への表示を継続し、右左折等の案内は行わない。したがって、ドライバーは、ドライバーが実際に見ることのできる新設道路に沿って道なりに区間24を走行することになる。さらに時間が経過すると、車両は、ルートq2の始点となった乗り継ぎ候補点28に近づく。このとき、制御回路17は、道路を左折して新設道路を離脱するよう案内する。これによって、車両は新設道路から既存の道路に乗り継ぐことができる。既存の道路に入ってからは、通常のルート案内を継続することで、車両は目的地点Eに到達する。
また、制御回路17がエリア更新を行ったとき、図12に例示するように、単位エリア32が新バージョンの地図データに更新され、その単位エリア32に隣接する単位エリア31が更新されずに旧バージョンの地図のままであったとする。そして、単位エリア31の地図データには、新設道路(例えば国道等の主要道)上の境界ノード(情報付与点)35に乗り継ぎ点情報が付与されているとする。
このようなエリア更新の後に推奨ルート算出処理を制御回路17が実行すると、出発地点Sから目的地点EまでのルートAを算出し(ステップ110参照)、算出したルートA上に、当該情報付与点35に関連付けられた乗り継ぎ候補点37がある場合(ステップ120参照)、出発地点Sから当該情報付与点37までの最適なルートA(ステップ130参照)と、当該情報付与点35に関連付けられているすべての乗り継ぎ候補点35のそれぞれから目的地点Eまでの最適なルートq1(ステップ140参照)と、を算出する。
そして制御回路17は、ルートpにルートq1を合わせたルートB1についてコストを算出し、ルートA、B1のうち、最もコストの低いルートを、最適ルートに設定する(ステップ160、125、170参照)。
ここで、ルートpとルートq1とを合わせたルートB1が最適ルートに設定された場合について説明する。この場合、制御回路17は、ルート案内処理において、ルートB1の画像表示装置12への表示、およびルートB1に沿った右左折の案内を行う。この案内に従ってドライバーが車両を運転すると、車両は新設道路の区間33を通って情報付与点35にさしかかる。このとき、地図データ上では情報付与点35の先の区間34は存在しないが、現実世界においてはその区間24は存在する。
そこで、制御回路17は、ルートB1の画像表示装置12への表示を継続し、右左折等の案内は行わない。したがって、ドライバーは、ドライバーが実際に見ることのできる新設道路に沿って道なりに区間34を走行することになる。さらに時間が経過すると、車両は、ルートq1の始点となった乗り継ぎ候補点37に近づく。このとき、制御回路17は、新設道路を離脱して既存道路に合流するよう案内する。これによって、車両は新設道路から既存の道路に乗り継ぐことができる。既存の道路に入ってからは、通常のルート案内を継続することで、車両は目的地点Eに到達する。
このように、車両用ナビゲーション装置1がエリア更新を行うことで、地図データ取得部16の地図データにおいて新設道路のデータがエリア境界で途切れてしまう可能性がある。そして、このように途切れた新設道路は、従来の推奨ルート算出方法では推奨ルートとして設定される可能性が非常に低い。
しかし、本実施形態では、推奨ルート算出処理の際に、出発地点Sから目的地点Eまで通常の方法で算出されたルートAが乗り継ぎ候補点を通っているならば、新設道路を通ることが望ましい可能性が高いという法則性を利用する。すなわち、ある情報付与点に対応する乗り継ぎ候補点がルートA上にあれば(ステップ120参照)、新設道路を通ることが望ましい可能性が高いとみなす。そして、その情報付与点に対応するすべての乗り継ぎ候補点のそれぞれについて、当該情報付与点から当該乗り継ぎ候補点までのルートを省略した上で、当該情報付与点および当該乗り継ぎ候補点を通る経路Biを算出し、それら複数のルートBiおよびルートAのうち、最もコストの低いルートを推奨ルートとして設定する。
このようになっていることで、エリア更新によって、途切れた新設道路のデータを取得した結果、その新設道路について、情報付与点から乗り継ぎ候補点までの道路のデータが車両用ナビゲーション装置1になくても、その新設道路にドライバーを案内するような推奨ルートを適宜算出することができる。そして、地図を配信する側では、過去から将来に渡る複雑なバージョン管理やパーマネント番号管理を行うことなく、地図データ整備を行うことができ、車両用ナビゲーション装置1においても、乗り継ぎ点情報を用いることで従来方法から大幅な変更を行うことなく、新設道路を通るような推奨ルートを算出することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。まず、地図データについて説明する。本実施形態の地図データが第1実施形態と異なるのは、本実施形態の地図データが、道路データの詳細度に応じて複数のレベルに区分けされていることである。高いレベルほど、詳細度が低くなる。
より具体的には、地図データのうち、最下位レベルに属する部分には、すべてのリンクのリンクレコード、および、すべてのノードのノードレコードが含まれており、最下位レベル以外のレベルに属する部分には、1つ下位のレベルに含まれるリンクレコードおよびノードレコードのうち、より主要な一部のリンクのリンクレコード、および、より主要な一部のノードのノードレコードが含まれる。
本実施形態においては、後述するように、地図データのうち一部のみを新しいバージョンのデータに更新するようになっている。より具体的には、地図データのうち、一部のレベルに属する道路の道路データを更新するようになっている。このような更新方法、すなわち、地図データのうち、一部のレベルに属するデータを更新するような更新方法を、レベル更新という。
また、このようなレベル更新によって、車両用ナビゲーション装置1において一部のレベルのみが新しいバージョンに更新され、残りのレベルが古いバージョンのままとなる。したがって、地図配信サーバにある最新バージョンの地図データに新設道路のデータ(リンクレコード、ノードレコード等)が追加されている場合、車両用ナビゲーション装置1がレベル更新を行うと、あるレベルにおいては新設道路のデータが取得され、それより下位のレベルにおいては新設道路のデータが取得されない結果、レベル間で道路不整合が発生する。
そのような道路不整合が発生した例を、図13および図14を用いて示す。図13は、ある地理範囲におけるレベル更新前の下位レベル41および上位レベル42の道路データを模式的に示す図である。この例では、地図データは2つのレベルに区分けされているものとする。下位レベル41に属する道路のうち、道路40以外の道路上に位置するリンクおよびノードは、上位レベル42にも属しており、道路40の道路上に位置するリンクおよびノードは、上位レベル42には属していない。
以下、道路40のような、下位レベル41に属すると共に上位レベル42に属さない道路を、下位限定道路という。また、上位レベル42に属する主要道路43および取り付け道路44のような、上位レベルに属する道路を、上位道路という。
車両用ナビゲーション装置1のこのような構成の地図データにおいて、レベル更新によって上位レベル42のデータのみが更新されたとする。そして、図14に示すように、レベル更新によって、既存の主要道路(例えば、高速道路、国道)に対して延長するように新設された主要道路43および当該新設の主要道路43に付随する取り付け道路(例えば、ランプ)44のデータが上位レベル42に追加されたとする。このとき、取り付け道路44の端部のうち主要道路43に接続していない側は、現実世界では下位限定道路40に接続しているとする。
しかし、下位レベル41が更新されていないために、主要道路43および取り付け道路44が下位レベルには属していない状態であり、また、下位限定道路40はそもそも下位レベル41にしか属していない。したがって、主要道路43が取り付け道路44を介して下位限定道路40に接続しているという情報が車両用ナビゲーション装置1の地図データ中に存在しない事態となっている。
このような状態の地図データのままでは、新設の取り付け道路44が途切れた状態となっているので、取り付け道路44を通るルートを車両用ナビゲーション装置1が案内する可能性が非常に低い。したがって、ドライバーは主要道路43に設けられた取り付け道路44を有効に利用できない。例えば、取り付け道路44の近くの地点に向かうために、取り付け道路44以外の退出路を用いて主要道路43を退出するような推奨ルートの案内を受けてしまうか、あるいは、あるいは、主要道路43を全く通らない推奨ルートの案内を受けてしまう。
本実施形態においては、このような事態においても、ドライバーが取り付け道路44を有効に利用できるよう、地図配信サーバに記録するための最新バージョンの地図データを作成する段階で、その地図データの最下位レベルを除く各レベルに乗り継ぎ点情報を含めるようになっている。
地図データに乗り継ぎ点情報を含めるタイミングとしては、例えば、新設道路43、44のデータを新たに含む最新バージョンの地図データを作成するタイミングがある。このタイミングにおいては、新設道路43、44のデータが属する上位レベル42において、その新設道路43、44と既存の下位限定道路41とが接続するすべてのノードのノードレコードに、乗り継ぎ点情報を付加する。
ただし、上位レベル42には、下位限定道路41のデータがないので、新設道路43、44と既存の下位限定道路41とが接続することを示す情報は、最新バージョンの地図データの下位レベルにのみ記録されているに過ぎない。したがって、最新バージョン地図データの下位レベル41のデータが車両用ナビゲーション装置1に送信されなければ、その接続情報は車両用ナビゲーション装置1には存在しない。
このように乗り継ぎ点情報が付加された地図データの上位レベル42を、レベル更新によって地図配信サーバから取得することで、車両用ナビゲーション装置1の地図データにおいては、図15に示すように、更新された上位レベル42のデータにおいて、新設の取り付け道路44と下位限定道路40とが接続するノード46のノードレコードに、乗り継ぎ点情報が付加される。すなわち、ノード46の位置が、情報付与点となる。
なお、1つのノードレコードに付加される(すなわち、1つのノードに関連付けられる)乗り継ぎ点情報の構成は、第1実施形態と同じである。ただし、本実施形態においては、1つの乗り継ぎ点情報に含まれる乗り継ぎ候補点は1つである。そして、ある乗り継ぎ点情報に含まれる乗り継ぎ候補点は、その乗り継ぎ点情報の情報付与点と位置座標が同じである。図15の例においては、情報付与点46は、その情報付与点46に関連付けられた乗り継ぎ候補点47と、位置座標が同じである。
次に、本実施形態において制御回路17が実行する地図更新処理について説明する。本実施形態の地図更新処理は、車両の外部の地図配信サーバから地図データの一部を受信し、受信した地図データに基づいてレベル更新を行う処理である。具体的には、制御回路17は、操作部13に対して所定の地図更新処理を実行する旨の操作が行われたとき、この地図更新処理を開始し、無線通信機15を用いて地図配信サーバに対して更新用の新バージョンの地図データを要求する。このとき、どのレベルの地図データを必要としているかの情報を地図配信サーバに送信してもよい。どのレベルの地図データを必要としているかの情報は、操作部13に対するユーザの選択操作に基づいて決定してもよい。
このような地図データの要求を受信した地図配信サーバは、所定のレベルの地図データのみ、または、車両用ナビゲーション装置1から要求を受けた所定のレベルの地図データのみを、車両用ナビゲーション装置1に送信する。なお、送信対象のレベルは、1つであってもよいし、複数であってもよい。
制御回路17は、このようにして送信されたレベルの地図データを、無線通信機15を介して受信し、現在の当該レベルの地図データを、受信した当該レベルの地図データに置き換える。例えば、現在の当該レベルの地図データを格納するデータ領域に、受信したレベルの地図データを上書きする。
次に、制御回路17が実行する推奨ルート算出処理について説明する。制御回路17は、推奨ルート算出処理において、出発地点および目的地点が決定すると、図8に示したプログラム100に代えて、図16に示すプログラム200の実行を開始する。
プログラム200の実行において制御回路17は、まずステップ210で、出発地点Sから目的地点Eまでの最適なルートAを、第1実施形態と同様に、通常の方法で算出する。
詳細度に応じてレベル分けされた地図データを用いた最適なルートの通常の算出方法は、例えば引用文献3に記載されているように、周知である。すなわち、まず、下位レベル41の道路データを用いて、始点(この場合は出発地点S)を含む所定の広さの地理範囲内において、始点から第1の移行地点までの最適なルートXを算出する。ここで、移行地点とは、上位レベル42にも下位レベル41にも属する交差点のノードである。そして、上位レベル42の道路データを用いて、当該第1の移行地点から終点近傍の第2の移行地点までの最適なルートYを算出する。そして、さらに下位レベル41の地図データを用いて、当該第2の移行地点から終点までの最適なルートZを算出する。そして、ルートX、ルートY、およびルートZを合わせたルートを、始点から終点までの最適なルートとする。
図15に示した例において、通常の算出方法で算出された出発地点Sおよび目的地点EまでのルートAを、図17に例示する。この図に示したように、ステップ210で算出されるルートAは、取り付け道路44を通らない。このようになることの原因は、車両用ナビゲーション装置1の地図データ上では、取り付け道路44の端部で取り付け道路44に接続する道路の情報がないことである。
続いてステップ220では、地図データ中の上位レベル42のデータから、すべての情報付与点を検索する。ただし、検索対象の地理範囲は、ルートAを含む所定の地理範囲である。例えば、検索対象の地理範囲は、ルートAまでの最短距離がルートAの全長の1/5となるような範囲であってもよいし、あらかじめ上位レベル42において区画された複数の地理範囲のうち、ルートAを含む1つ以上の地理範囲のみからなる地理範囲であってもよい。
図17の例では、ノード47の位置が情報付与点である。続いてステップ220では、ステップ220の結果、情報付与点が見つかったか否かを判定し、見つかっていれば続いてステップ230を実行し、見つかっていなければ、続いてステップ225でルートAを推奨ルートに設定する。
続いてステップ230では、出発地点Sから、ステップ215で見つかった情報付与点のそれぞれまでの最適なルートpjを(例えばダイクストラ法で)、通常の方法で算出する。ここで、添字jは、見つかった情報付与点毎に算出されたルートを区別するための添字である。したがって、見つかった情報付与点の数をmとすると、jは1からmまでの整数である。
この情報付与点は、新設道路上の点であるから、ルートpjは新設道路43、44を通る場合がある。実際、図17の例においては、出発地点Sから情報付与点46までのルートを算出すると、図18に示すように、ルートp1が、新設道路43、44を通るようになる。なお、新設道路43が既存の主要道路(上位道路である)に対して新たに延設された道路である場合、ルートp1は、その既存の主要道路と下位限定道路との交点に位置する移行地点48を通って当該既存の主要道路に入り、当該既存の主要道路から新設道路43に入る経路となる。
また、全部が新設された主要道路の一部として新設道路43がある場合、ルートp1は、上位レベル42において当該新設の主要道路と接続する既存の道路から新設の主要道路に入り、更に新設道路43に入る経路となる。
続いてステップ240では、見つかったすべての情報付与点に関連付けられたすべての乗り継ぎ候補点のそれぞれについて、当該乗り継ぎ候補点から目的地点Eまでの最適なルートqjを、下位レベル41に属する道路データを用いて(例えばダイクストラ法で)算出する。ここで、添字jは、見つかった情報付与点毎に算出されたルートを区別するための添字である。
図18の例においては、情報付与点46に関連付けられた乗り継ぎ候補点も、その情報付与点46と同じ位置47にある。したがって、図18の例においては、乗り継ぎ候補点47から目的地点Eまでの最適なルートq1が算出される。
続いてステップ250では、ステップ240で算出したルートqjのそれぞれに、ステップ230で算出したルートpjを合わせたルートを、ルートBjとする。ただし、合わせるルートpjとルートqjの組は、以下のような関係となっている。すなわち、当該ルートpjの終点となる情報付与点は、当該ルートqjの始点となる乗り継ぎ候補点に関連している。これにより、ルートqjの数だけルートBjが作成される。
続いてステップ260では、ステップ250で作成したルートBjのそれぞれのコストを算出し、それら算出したコストと、ステップ210で算出したルートAのコストとを比較する。ここで、ルートBjのコストは、ルートpjのコストと、ルートqjのコストとの総和とする。例えば、ルートAの総距離をルートAのコストとする場合、ルートBiのコストは、ルートpjの総距離と、ルートqjの総距離との総和とする。
ステップ160の比較の結果、ルートAのコストが最小である場合、すなわち、ルートAのコストがすべてのルートBjのコストよりも小さい場合、続いてステップ225で、ルートAを推奨経路に設定する。また、ルートAのコストが最小でない場合、すなわち、ルートBjのうちいずれかのコストがルートAのコストよりも小さい場合、続いてステップ270を実行する。
ステップ270では、ルートBjのうち、最もコストの低いルートを、推奨ルートとして設定する。ステップ225またはステップ270の後は、プログラム200の実行を終了する。
このようなプログラム200を実行する制御回路17の作動の一例について説明する。制御回路17がレベル更新を行ったとき、図17に例示するように、上位レベル42が新バージョンの地図データに更新され、下位レベル41が更新されずに旧バージョンの地図データのままであったとする。そして、上位レベル42のデータには、乗り継ぎ点情報が付与されているとする。そして、乗り継ぎ点情報が付与されるノードは、最新バージョン地図の下位レベルによれば、新設道路43、44から上位レベル42に属さない既存の下位限定道路40に退出できるノード46である。
このようなレベル更新の後に推奨ルート算出処理を制御回路17が実行すると、出発地点Sから目的地点EまでのルートAを算出し(ステップ210参照)、上位レベル42に情報付与点47がある場合(ステップ220参照)、出発地点Sから各情報付与点(情報付与点等)までの最適なルートpj(ステップ230参照)と、当該情報付与点に関連付けられている乗り継ぎ候補点から目的地点Eまでの最適なルートqj(ステップ240参照)と、を算出する。
そして制御回路17は、ルートpjにルートqjを合わせたルートBjのそれぞれについてコストを算出し、ルートA、Bjのうち、最もコストの低いルートを、最適ルートに設定する(ステップ260、225、270参照)。
ここで、図18に例示するように、ルートp1とルートq1とを合わせたルートB1が最適ルートに設定された場合について説明する。この場合、制御回路17は、ルート案内処理において、ルートB1の画像表示装置12への表示、およびルートB1に沿った右左折の案内を行う。この案内に従ってドライバーが車両を運転すると、車両は新設の主要道路43および取り付け道路44を通って情報付与点47にさしかかる。このとき、制御回路17は、新設道路43を離脱して下位限定道路40に入る案内する。これによって、車両は新設道路44から既存の下位限定道路40に乗り継ぐことができる。既存の下位限定道路40に入ってからは、通常のルート案内を継続することで、車両は目的地点Eに到達する。
このように、車両用ナビゲーション装置1がレベル更新を行うことで、地図データ取得部16の地図データにおいて新設道路43、44のデータが上位レベル42にはあって下位レベル41にはないために、新設道路43、44が下位レベルにしかない既存の道路50と現実には接続しているにもかかわらず、その接続を示すデータが車両用ナビゲーション装置1にないというは場合が発生する。このような場合、従来の推奨ルート算出方法ではその取り付け道路44から既存道路50へ退出するルートが算出されることがない。
しかし、本実施形態では、推奨ルート算出処理の際に、情報付与点が上位レベル42に存在すれば(ステップ120参照)、それらすべての情報付与点のそれぞれについて、当該情報付与点(本実施形態においては、当該情報付与点に対応する乗り継ぎ候補点と同一である)を通る経路Bjを算出し、それら複数のルートBjおよびルートAのうち、最もコストの低いルートを推奨ルートとして設定する。
このようになっていることで、レベル更新によって退出先の道路の情報が欠けている新設道路のデータを取得しても、その新設道路にドライバーを案内するような推奨ルートを適宜算出することができる。そして、地図を配信する側では、過去から将来に渡る複雑なバージョン管理やパーマネント番号管理を行うことなく、地図データ整備を行うことができ、車両用ナビゲーション装置1においても、乗り継ぎ点情報を用いることで従来方法から大幅な変更を行うことなく、新設道路を通るような推奨ルートを算出することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。
例えば、上記第1実施形態においては、エリア更新が可能となるよう、複数の単位エリアに区分けされた地図データが用いられ、また、第2実施形態においては、レベル更新が可能となるよう、複数のレベルに区分けされた地図データが用いられている。しかし、両実施形態において、複数のレベルに区分けされ、かつ、各レベルにおいて複数の単位エリアに区分けされた地図データを用いてもよい。
また、第2の実施形態においては、2レベルに階層分けされた地図データを例示したが、上記の実施形態は、3レベル以上に階層分けされた地図データに対しても適用可能である。具体的には、第2実施形態における下位レベル41および上位レベル42は、3レベル以上に階層分けされた地図データから任意に選んだ2つのレベルのうち、それぞれ下位の方のレベルおよび上位の方のレベルであればよい。
また、第2実施形態における取り付け道路44は、退出のみ可能な道路のみならず、進入も退出も可能な道路であってもよい。すなわち、取り付け道路44の端点は、新設道路から上位レベルにない既存の下位限定道路へ乗り換え可能な、新設道路と当該下位限定道路との接続点であれば足りる。
また、第2実施形態では、主要道路43は、取り付け道路44を介して既存の下位限定道路に接続するようになっていたが。主要道路43が直接既存の下位限定道路に接続するようになっていてもよい。この場合、乗り継ぎ点情報は、主要道路43と当該下位限定道路との接続点となるノードに関連付けるようになっていてもよい。すなわち、情報付与点は、主要道路43と当該下位限定道路との接続点であってもよい。さらにこの場合、当該情報付与点に関連付けられる乗り継ぎ候補点の位置座標は、当該接続点の位置座標と同じとなる。
また、第2実施形態においては、図16のステップ230、240において、情報付与点と乗り継ぎ候補点の役割を入れ替えてもよい。
具体的には、ステップ230では、出発地点Sから、ステップ215で見つかった情報付与点のそれぞれに関連付けられた乗り継ぎ候補点までの最適なルートpjを、下位レベル41に属する道路データを用いて(例えばダイクストラ法で)、算出する。ここで、添字jは、見つかった情報付与点に関連付けられた乗り継ぎ候補点毎に算出されたルートを区別するための添字である。したがって、見つかった情報付与点に関連付けられた乗り継ぎ候補点の数をmとすると、jは1からmまでの整数である。
続いてステップ240では、見つかったすべての情報付与点のそれぞれについて、当該情報付与点から目的地点Eまでの最適なルートqjを(例えばダイクストラ法で)、通常の方法で算出する。ここで、添字jは、見つかった情報付与点毎に算出されたルートを区別するための添字である。
このようにすることで、制御回路17は、上位レベルに属する地図データを更新した後
、出発地点から目的地点までのルートAを算出し、更新した後の上位レベルに属するデー
タから、情報付与点を検索し、検索によって見つかった情報付与点に関連付けられた乗り
継ぎ候補点までのルートpjを前記下位レベルに属する地図データを用いて算出すると共
に、情報付与点から目的地までのルートqjを算出し、算出したルートpjにルートqj
を合わせた結果のルートBjを取得し、ルートAおよびルートBjのうち、最もコストの
低いルートを前記推奨ルートとして設定することができる。したがって、上位レベルの新
設の取り付け道路44を通って新設の主要道路43に進入する経路をドライバーに案内す
ることができる。
また、第2実施形態においては、ステップ220に先だって、出発地点Sから、ステップ215で見つかった情報付与点のそれぞれに関連付けられた乗り継ぎ候補点までの最適なルートrjを下位レベル41に属する道路データを用いて(例えばダイクストラ法で)、算出するようになっていてもよい。ここで、添字jは、見つかった情報付与点に関連付けられた乗り継ぎ候補点毎に算出されたルートを区別するための添字である。
そしてステップ230では、ルートsjの端点としての乗り継ぎ候補点から、ステップ215で見つかった情報付与点のそれぞれまでの最適なルートsjを(例えばダイクストラ法で)、通常の方法で算出するようになっていてもよい。そして、対応する乗り継ぎ候補点と情報付与点を端点とするルートrjとsjとを合わせたルートを、ルートpjとするようになっていてもよい。すなわち、新設の主要道路への進入、退出の両方で、乗り継ぎ候補点を利用してもよい。
また、第2実施形態においては、1つの乗り継ぎ点情報が含む乗り継ぎ候補点は1つだけであり、当該乗り継ぎ点情報の情報付与点の位置と乗り継ぎ候補点の位置は同じとなっている。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよい。
例えば、図15の例において、主要道路43の同じ位置から複数の取り付け道路(すべて上位道路である)が分岐しており、それぞれの取り付け道路が別々の既存の既存道路に接続し、しかもそれら複数の既存道路がすべて上位レベル42にはない下位限定道路であった場合には、それら複数の取り付け道路の下位限定道路側の端点を、乗り継ぎ候補点として含むよう、乗り継ぎ点情報を構成してもよい。その場合、この乗り継ぎ点情報は、主要道路43上の、複数の取り付け道路への分岐点のノード、または分岐点の手前のノードに関連付けるようになっていてもよい。このようなっている場合、情報付与点は、取り付け道路と既存の下位限定道路とが接続する点ではなく、主要道路43の、これら取り付け道路に分岐する手前のノードの位置ということになる。
また、最新の地図データにおいて、主要道路43から上位レベル42にはない既存道路に退出するための取り付け道路の構造が、詳細に表されていない場合には、取り付け道路44上の当該既存道路近くのノードに乗り継ぎ点情報を関連付け、さらに、その乗り継ぎ点情報に、当該ノードの近傍の既存道路上の位置を、乗り継ぎ候補点の位置情報として、含めるようになっていてもよい。
このように、情報付与点(乗り継ぎ点情報を関連付ける点)と乗り継ぎ候補点とが離れている場合は、ステップ260で算出するルートBjのコストは、第1実施形態と同様、ルートpjのコストと、ルートqjのコストと、情報付与点(より詳しくは、ルートpjの終点となる情報付与点)から乗り継ぎ候補点(より詳しくは、ルートqjの始点となる乗り継ぎ候補点)までのギャップコストと、の総和としてもよい。あるいは、情報付与点から乗り継ぎ候補点までのギャップコストの情報が、当該乗り継ぎ点情報中の乗り継ぎ候補点の位置情報に関連付けて記録されていれば、そのギャップコストの情報を、情報付与点から乗り継ぎ候補点までのコストとして用いてもよい。このように、あらかじめ乗り継ぎ点情報にギャップコストの情報を含めることで、ギャップコストの算出が容易になる。この場合、記録されているギャップコストの値は、新設道路に沿った当該情報付与点から当該乗り継ぎ候補点までの距離であってもよい。
また、上記の実施形態では、リンクレコードに含まれるリンクID、および、ノードレコードに含まれるノードIDは、エリア部および固有部を含んでおり、このエリア部に、ノードおよびリンクがどの単位エリアに属しているかの情報が記載されている。これによって、リンクレコードおよびノードレコードの単位エリア毎の区分けが実現する。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよい。例えば、リンクIDおよびノードIDは、エリア部を有しておらず、かつ、地図データ全体中で一意になるように定められていてもよい。その場合は、地図データ中において、ある単位エリアに属するリンク、ノード等のデータは、その単位エリアを示すエリアID(例えば、地域番号、メッシュ番号)に1まとめに関連付けられて記録されるようになっていれば、リンクレコードおよびノードレコードの単位エリア毎の区分けが実現する。
また、上記実施形態においては、隣接する単位エリアのエリア境界で1つの道路を分割することによってできた、ペア(対)を成す2つの境界ノード(例えば、境界ノード63、65)のノードIDは、エリア部が互いに異なるため、互いに異なっていた。しかし、ペアを成す2つの境界ノードのノードIDが、同一となっていてもよい。さらに、境界ノードのノードIDは、地図の更新によっても変化しないようになっていてもよい。このようにすることでも、ノードIDの固有部を比較すれば、ペアの相手となる境界ノードを見つけることができる。
また、上記の実施形態において、制御回路17がプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
また、本発明のナビゲーション装置は、必ずしも車載用のものでなくともよい。例えば、ナビゲーション装置は、ユーザが携帯するタイプのものであってもよい。