JP5113794B2 - 適応マイクロホンアレイ残響抑圧装置、適応マイクロホンアレイ残響抑圧方法及びプログラム - Google Patents
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Description
tを時間のインデクスとして、m番目のマイクロホンで観測された音声信号ym(t)はプリホワイトニングフィルタ100に入力される。プリホワイトニングフィルタ100は白色化された信号xm(t)を出力する。xm(t)はフィルタバンク分析器110に入力され、複数の狭帯域信号に分割された後、ダウンサンプリングされる。その結果、狭帯域ごとの信号xj m(n)がフィルタバンク分析器110から出力される。但し、jは周波数帯域のインデクス、nはダウンサンプリング後の時間のインデクスである。
Wj m(n+1)=Wj m(n)+ΔWj m(n) (2)
但し、ΔWj m(n)は適応重み制御機構220から入力されるタップ重み更新量ベクトルである。適応重み制御機構220は出力信号uj(n)の負の正規化尖度が最小になるように、確率的勾配法に基づいてΔWj m(n)を決定する。
本発明の目的は高速な収束特性をもつ適応マイクロホンアレイ残響抑圧装置・方法及びプログラムを提供することにある。
〈実施形態1〉
適応マイクロホンアレイ残響抑圧装置の全体構成は図1と同様とし、実施形態1では適応フィルタ120を図3に示したような構成とする。
適応フィルタへの入力はプリホワイトニング処理された観測音声の狭帯域信号xj m(n)で、出力は残響が抑圧された狭帯域信号uj(n)である。
Gj m(n+1)=Gj m(n)+ΔGj m(n) (4)
但し、ΔGj m(n)は適応重み制御機構330から入力されるタップ重み更新量ベクトルである。
適応重み制御機構330は出力信号uj(n)に関する次式のコスト関数Fの値(コスト関数Fの値はuj(n)に含まれる残響成分の度合いの見積もりを表す)が最小となるように、重み付きRLS法に基づいてΔGj m(n)を決定する。
図4は適応重み制御機構330の構成を示したものであり、図中、白抜き矢印は行列信号を表す。
ΔGj(n)=Qj(n)uj(n)* (7)
なお、図4中、440は複素共役生成部を示し、450は積算部を示す。
ΔGj(n)は次式のように、各mに関するタップ重み更新量ベクトルΔGj m(n)で構成されている。
ΔGj(n)=[ΔGj 1(n)T,ΔGj 2(n)T,…,ΔGj M(n)T]T (8)
誤差共分散計算部420は次式にしたがってΦj(n)を更新する。
λj(n)の計算方法は仮定する音声のモデルに依存して決まる。例えば、音声のモデルとして正規分布を仮定する場合、最適なλj(n)の値は、時刻n、周波数帯域jにおける原音声の狭帯域短時間パワーである。ただし、原音声とは、残響が重畳される前の未知の音声を指す。原音声の狭帯域短時間パワーは未知であるから、その近似値をλj(n)とする。一つの近似方法として、次式のように、λj(n)をxj 1(n)の振幅の二乗としてもよい。
λj(n)=|xj 1(n)|2 (10)
また、これを一般化して、次式のようにλj(n)を設定してもよい。
λj(n)=|xj 1(n)|β (11)
但し、βは正の実数である。
実施形態1の重み計算部430は、重みλj(n)を適応フィルタの入力信号xj 1(n)から直接計算する。xj 1(n)は残響を含むため、求められたλj(n)の値は最適な重みである残響を含まない原音声の狭帯域短時間パワーの粗い近似となっている。適応フィルタの出力信号uj(n)はxj 1(n)と比較して残響が抑圧されていると期待されるから、uj(n)を用いてλj(n)を再計算すれば、より高い残響抑圧性能を得ることができる。実施形態2はこれを実現する装置の構成方法を提供する。
以上の過程により、出力信号uj(n)が計算される。上記説明から明らかなように、フィルタ記憶部570は、直前の出力信号uj(n)の計算過程で用いられたタップ重みベクトルの値を記憶している。一方、フィルタ記憶部580は、現在の出力信号の計算過程で用いるタップ重みベクトルの値を記憶している。
補間素子530はxj 1(n)とXj m(n-D)に対して、次式にしたがって1:Rの補間を行う。
x’j 1[Rn+r]=xj 1(n)
X’j m[Rn+r]=Xj m(n-D) 0<∀r<R-1 (13)
なお、本明細書では、補間後の信号を表すのに、プライム符号と角括弧を用いる。
G’j m[k+1]=G’j m[k]+ΔG’j m[k] (15)
但し、ΔG’j m[k]は適応重み制御機構560から入力されるタップ重み更新量ベクトルである。更新されたタップ重みベクトルの値は、フィルタ記憶部580に書き込まれる。マルチプレクサ550はx’j 1[k]とu’j[k]を受け取り、z’j[k]を適応重み制御機構560に出力する。z’j[k]はマルチプレクサ550の制御信号が1の場合にはx’j 1[k]を、制御信号が0の場合にはu’j[k]をとる。但し、制御信号はkの値がRの倍数のときにだけ1をとり、それ以外のときには0をとるものとする。
ΔG'j[k]=Q'j[k]u'j[k]* (17)
なお、図6中、640は複素共役生成部を示し、650は積算部を示す。
ΔG’j[k]は次式のように、各mに関するタップ重み更新量ベクトルΔG’j m[k]で構成されている。
ΔG’j[k]=[ΔG’j 1[k]T,ΔG’j 2[k]T,…,ΔG’j M[k]T]T (18)
誤差共分散計算部620は制御信号が1のときにだけ、次式にしたがってΦ’j[k]を更新し、そうでなければ、Φ’j[k+1]= Φ’j[k]とする。
λ’j[k]=|z’j[k]|β (20)
但し、βは正の実数である。
この実施形態2では図5において一点鎖線で囲った処理部は、それ以外の処理部に比べてR倍の速度で動作するものとなっている。
本発明の適応マイクロホンアレイ残響抑圧の方法は、処理の手続きをコンピュータが実行可能なプログラムとして記述し、コンピュータにこのプログラムを実行させることによって実現することもできる。以下では実施形態1に対応する実行可能プログラムの処理の手続きを説明する。
Xj m(n-D)=[xj m(n-D),xj m(n-D-1),…,xj m(n-D-Kj)]T (21)
但し、Kjは手順1120で用いる残響予測フィルタの次数である。手順1120ではXj m(n-D)と残響予測フィルタを用いてxj 1(n)に含まれる残響成分を予測し、これをxj 1(n)から減算することでuj(n)を計算する。
Gj m(n+1)=Gj m(n)+ΔGj m(n) (23)
λj(n)=|xj 1(n)|β (24)
但し、βは正の実数である。手順1210ではXj 1(n-D),Xj 2(n-D),…,Xj M(n-D)を単一のベクトルにまとめてXj(n-D)を求める。
Xj(n-D)=[Xj 1(n-D)T,Xj 2(n-D)T,…,Xj M(n-D)T]T (25)
手順1220ではXj(n-D),λj(n)及び誤差共分散行列Φj(n)を用いて、次式にしたがってゲインベクトルQj(n)を計算する。
ΔGj(n)=Qj(n)uj(n)* (28)
ΔGj(n)は次式のように各mに対するタップ重み更新量ベクトルでΔGj m(n)で構成されている。
ΔGj(n)=[ΔGj 1(n)T,ΔGj 2(n)T,…,ΔGj M(n)T]T (29)
実施形態4は、実施形態2が実現する処理の手続きをコンピュータが実行可能なプログラムとして記述し、コンピュータにこのプログラムを実行させることで実現される。実施形態4の残響抑圧方法は、実施形態3の残響抑圧方法において、適応フィルタの出力信号uj(n)を用いて重みλj(n)を再計算するものである。
図7と図8の処理の流れは、実施形態3と実施形態4で共通である。これらの実施形態では、手順1130におけるタップ重み更新量ベクトルの計算方法のみ異なる。
Xj(n-D)=[Xj 1(n-D)T,Xj 2(n-D)T,…,Xj M(n-D)T]T (30)
手順1310では適応フィルタの入力信号かフィルタ処理後の信号のいずれかを表す信号zj(n)を導入し、zj(n)を入力信号xj 1(n)で初期化する。
zj(n)=xj 1(n) (31)
手順1320ではzj(n)を用いて、次式にしたがって重みλj(n)を計算する。
λj(n)=|zj(n)|β (32)
但し、βは正の実数である。手順1330ではXj(n-D),λj(n)、及び誤差共分散行列Φj(n)を用いて、次式にしたがってゲインベクトルQj(n)を計算する。
ΔGj(n)=Qj(n)uj(n)* (34)
ΔGj(n)は次式のように各mに対するタップ重み更新量ベクトルでΔGj m(n)で構成されている。
ΔGj(n)=[ΔGj 1(n)T,ΔGj 2(n)T,…,ΔGj M(n)T]T (35)
手順1350では次式で定義される残響予測フィルタのタップ重みベクトルを計算する。
G'j m(n)=Gj m(n)+ΔGj m(n) (36)
手順1360ではタップ重みベクトルG'j m(n)を用いて残響抑圧処理された信号u'j(n)を計算する。
zj(n)=u'j(n) (38)
手順1380の後、手順1320が再び実行される。手順1390は繰り返し回数がRであった場合に実行され、次式にしたがってΦj(n)を更新する。
本発明の効果を確認する実験を行った。ここでは本発明の実施形態として実施形態3を用いた。この実験では20名分の音声を用いた。各音声の音響信号を、残響時間が500ミリ秒の部屋で計測したインパルス応答に畳み込むことで、残響を含む観測音声を模擬した。用いたマイクロホンは2個、忘却係数αの値は0.99、遅延Dは2とした。また、観測音声信号の標本化周波数は8kHzとし、手順1010のフィルタバンク分析における分割数は256、間引き率は128とした。各帯域における残響予測フィルタの次数Kjは、当該帯域における残響時間におよそ一致するように設定した。
Claims (9)
- マイクロホンアレイの各マイクロホンによって観測された音声信号を狭帯域信号に分割し、同じ周波数帯域のすべてのマイクロホンに関する狭帯域信号を適応フィルタに入力して残響を抑圧し、それら残響が抑圧された信号を広帯域信号に再構成して出力する適応マイクロホンアレイ残響抑圧装置において、
上記適応フィルタは、
上記各狭帯域信号を予め定められた時間だけ遅延させる遅延素子と、
上記遅延素子の出力信号の標本を予め定められた個数だけベクトル化する第1のベクトル化器と、
上記第1のベクトル化器の出力ベクトル信号から1つのマイクロホンに関する上記狭帯域信号に含まれる残響成分を予測する残響予測フィルタと、
上記残響予測フィルタのタップ重みベクトルを重み付きRLS法に従って制御する適応重み制御機構とを備えることを特徴とする適応マイクロホンアレイ残響抑圧装置。 - 請求項1記載の適応マイクロホンアレイ残響抑圧装置において、
上記適応重み制御機構は、
すべてのマイクロホンに関する上記第1のベクトル化器の出力ベクトル信号をまとめて多チャネルのベクトル信号にする第2のベクトル化器と、
重みを計算する重み計算部と、
誤差共分散行列を更新する誤差共分散計算部と、
上記第2のベクトル化器の出力ベクトル信号と上記重みと上記誤差共分散行列からゲインベクトルを計算するゲインベクトル計算部とを備えることを特徴とする適応マイクロホンアレイ残響抑圧装置。 - 請求項2記載の適応マイクロホンアレイ残響抑圧装置において、
上記重み計算部は1つのマイクロホンに関する上記狭帯域信号の絶対値の冪乗を計算して上記重みとすることを特徴とする適応マイクロホンアレイ残響抑圧装置。 - 請求項2記載の適応マイクロホンアレイ残響抑圧装置において、
上記適応重み制御機構は上記適応フィルタの出力信号を用いて上記重みを再計算することを特徴とする適応マイクロホンアレイ残響抑圧装置。 - マイクロホンアレイの各マイクロホンによって観測された音声信号を狭帯域信号に分割するフィルタバンク分析処理と、同じ周波数帯域のすべてのマイクロホンに関する狭帯域信号から残響が抑圧された信号を適応的に計算する適応フィルタ処理と、それら残響が抑圧された信号を広帯域信号に再構成して出力するフィルタバンク合成処理とを含む適応マイクロホンアレイ残響抑圧方法において、
上記適応フィルタ処理は、上記各狭帯域信号を予め定められた時間だけ遅延させる遅延処理と、その遅延された信号の標本を予め定められた個数だけベクトル化する第1のベクトル化処理と、そのベクトル化された信号から1つのマイクロホンに関する上記狭帯域信号に含まれる残響成分を予測する残響予測フィルタ処理と、その残響予測フィルタ処理のタップ重みベクトルを重み付きRLS法によって制御する適応重み制御処理とを含むことを特徴とする適応マイクロホンアレイ残響抑圧方法。 - 請求項5記載の適応マイクロホンアレイ残響抑圧方法において、
上記適応重み制御処理は、すべてのマイクロホンに関する上記第1のベクトル化処理でベクトル化された信号をまとめて多チャネルのベクトル信号にする第2のベクトル化処理と、重みを計算する重み計算処理と、誤差共分散行列を計算する誤差共分散行列計算処理と、上記多チャネルのベクトル信号と上記重みと上記誤差共分散行列からゲインベクトルを計算するゲインベクトル計算処理とを含むことを特徴とする適応マイクロホンアレイ残響抑圧方法。 - 請求項6記載の適応マイクロホンアレイ残響抑圧方法において、
1つのマイクロホンに関する上記狭帯域信号の絶対値の冪乗を上記重みとすることを特徴とする適応マイクロホンアレイ残響抑圧方法。 - 請求項6記載の適応マイクロホンアレイ残響抑圧方法において、
上記適応フィルタ処理の出力信号を用いて上記重みを再計算することを特徴とする適応マイクロホンアレイ残響抑圧方法。 - 請求項5乃至8のいずれかに記載した適応マイクロホンアレイ残響抑圧方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
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