JP5113787B2 - 生体組織プローブ、その製造方法及び使用方法 - Google Patents
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〔原理〕
本形態の生体組織プローブは、生体組織の体温よりも高い温度でオーステナイト相となり、生体組織の体温でマルテンサイト相となる形状記憶合金によって構成された筒状のチューブ部と、生体組織からの組織液の回収及び/又は生体組織への薬液の注入を行う流体機構部とを有し、チューブ部の内部には流体機構部の少なくとも一部が収納される。なお、流体機構部の一例は、半透膜である透析膜を含み、当該透析膜を介して生体組織からの組織液の回収及び/又は生体組織への薬液の注入を行うマイクロダイアリシスプローブである。
(a) 筒状のチューブ部の外周面上、又は、当該チューブ部の外周面を覆う第1絶縁層上に金属層を形成するステップ。
(b) 金属層が形成された面全体に電着フォトレジスト層を形成するステップ。
(c) 所定の形状が描画されたマスクを用い、電着フォトレジスト層を露光し、露光された電着フォトレジスト層を現像し、前記電着フォトレジスト層を電極領域と配線領域とを含む形状に加工するステップ。
(d) ステップ(c)で露光及び現像された電着フォトレジスト層が形成された金属層をエッチングするステップ。
(e) 電着フォトレジスト層を除去するステップ。
(f) ステップ(d)によってエッチングされた金属層側の面全体に感光性絶縁材料からなる第2絶縁層を形成するステップ。
(g) 所定の形状のマスクを第2絶縁層上に配置し、第2絶縁層を露光し、露光された第2絶縁層を現像して、金属層の配線領域を覆いつつ電極領域を外部に露出させる形状に第2絶縁層を加工するステップ。
すなわち、従来、生体組織の電気信号の計測等を行う電極を薄膜形成する場合には、プラズマエッチングやリアクティブイオンエッチング等のドライエッチング工程を用いることが一般的であった。
次に、本発明の実施形態を説明する。
<構成>
図1は、本実施形態の生体組織プローブ1の斜視図である。また、図2は、本実施形態の生体組織プローブ1を構成する流体機構部12をガイド管11から分離した様子を示した斜視図である。また、図3は、図2のIII-III断面図である。また、図4は、ガイド管11が変形した様子を示す斜視図である。
図1から図3に示すように、本形態のガイド管11は、生体組織の体温よりも高い温度でオーステナイト相となり、生体組織の体温でマルテンサイト相となる形状記憶合金によって構成された筒状のチューブ部11cと、チューブ部11cの外周面を覆う第1絶縁層11dと、第1絶縁層11d上に形成された金属層11aと、金属層11aの一部を覆う感光性絶縁材料からなる第2絶縁層11eとを含む。金属層11aは、外部に露出した電極領域11aaと第2絶縁層11eに覆われた配線領域11abとを含む。図1から図3に示すように、本形態では、複数の電極領域11aaが設けられる。これらの電極領域11aaには、生体組織の電気信号の測定及び/又は生体組織への電気刺激を行う電極と、グランド電極と、参照電極とが含まれる。生体組織の電気信号の測定及び/又は生体組織への電気刺激を行う電極である各電極領域11aaは互いに絶縁され、それぞれと導通する互いに絶縁された各配線領域11ab及びケーブル16を通じて、コネクタ15の各ピンと電気的に接続されている。また、グランド電極や参照電極である各電極領域11aaも他の電極領域11aaから絶縁され、それぞれと導通する互いに絶縁された各配線領域11abを通じて、グランド電極17aや参照電極17bに電気的に接続されている。
図3に示すように、本形態の流体機構部12は、生体組織からの組織液の回収及び/又は生体組織への薬液の注入を行う通常のマイクロダイアリシスプローブである。なお、マイクロダイアリシスプローブは、透析膜を介して隔てられた液体が濃度勾配の低い方向へ拡散する性質を利用し、透析膜を介して、生体組織からの組織液の回収や生体組織への薬液の注入を行うものである。その詳細は、例えば、非特許文献1に記載されている。
ガイド管11の開口部11f側の外周側面には、前述のように配線領域11abに接続されたグランド電極17a、参照電極17b及びケーブル16が接続され、ケーブル16の他端にはコネクタ15が接続されている。さらに、ガイド管11は固定部13の環状の中空部分に挿入され、この固定部13の中空部分の内壁面がガイド管11の外周面に固定されている。また、接続管12fは固定部18の環状の中空部分に挿入され、この固定部18の中空部分の内壁面が接続管12fの外周面に固定されている。
図5及び図6は本実施形態の生体組織プローブ1の製造方法を説明するための断面図であり、図7はその製造方法を説明するための流れ図である。なお、図5はネガ型の感光性絶縁材料及び電着フォトレジストを使用する場合の例を示し、図6はポジ型の感光性絶縁材料及び電着フォトレジストを使用する場合の例を示す。また、描画の都合上、図5及び図6では加工対象が平面上に配置されているが、加工対象は曲面上に配置されていてもよいし、凹凸面上に配置されていてもよい。なお、本形態の流体機構部12は通常のマイクロダイアリシスプローブであるため、以下では、流体機構部12の製造工程の説明は省略し、ガイド管11の製造工程のみを説明する。
[S103]ステップS102で金属層11aが形成された面全体に電着フォトレジスト層102を形成する(図5(e)、図6(e))。なお、電着フォトレジスト層102を構成する電着フォトレジストの一例は、株式会社シミズ製の“エレコートEU-XCシリーズ”である。
[S106]電着フォトレジスト層102を除去する(図5(i)、図6(i))。
[S107]ステップS105によってウェットエッチングされた金属層11a側の面全体に感光性絶縁材料からなる第2絶縁層11eを形成する(図5(j)、図6(j))。
次に、本形態の生体組織プローブ1の使用方法を説明する。
チューブ部11cが絶縁体材料で形成されている場合には、前述のステップS101の処理は不要となる。図9は、この場合の製造方法を説明するための流れ図である。この場合には、ステップS101を実行することなく、以下の製造工程によって生体組織プローブが製造される。
[S203]ステップS202で金属層11aが形成された面全体に電着フォトレジスト層102を形成する。
[S104〜S108]その後、S104〜S108の工程を行う。
本実施形態のアンカー底面領域11baは、チューブ部11cの外周面の一部であった。しかし、図10に例示するように、チューブ部11cの外周面を覆う第1絶縁層11d上の一部がアンカー底面領域11baであってもよい。この例の場合、アンカー底面領域11baを底面とし、アンカー底面領域11baの周囲を囲む第2絶縁層11eを内壁面とした凹部がアンカー11bとなる。なお、図10において、本実施形態と同じ部分については、本実施形態と同じ符号を用いている。
図11(a)〜(d)は、ガイド管の変形例を例示した図である。図11(a)に例示したガイド管31は、第1,2実施形態と同様な電極領域11aaを備えるが、アンカー11bの配置が異なる例である。この例のアンカー11bは、ガイド管31の外周を環状に周回するように配置され、そのように配置されたアンカー11bが二段構成されている。また、図11(b)(c)に例示したガイド管41は、その一端がガイド管41の長手方向に対して斜めに切削されている。これにより、ガイド管41の切削された一端が尖り、ガイド管41の生体組織への刺入が容易になる。なお、図11(b)(c)に例示したガイド管41はアンカー11bを具備しないが、このガイド管41がアンカー11bを具備する構成であってもよい。また、図11(d)に例示したガイド管51は、その一端側の外周側面の一部を貫通した穴である窓部51aが構成されたものである。このようなガイド管51が生体組織に刺入された場合、この窓部51aを通じて組織液をガイド管51の内部に取り込んだり、薬液をガイド管51の外部に放出したりできる。この場合、流体機構部の透析膜は窓部51a近傍に配置される。
本形態では、チューブ部11cを含むガイド管11が流体機構部12から分離可能な構成であった。しかし、流体機構部12を構成するチューブ部12d、供給管12b及び返送管12cが、上述の加熱に耐えうる耐熱性を有する柔軟な材質や上述の形状記憶合金で構成されているのであれば、ガイド管11が流体機構部12から分離できない構成であってもよい。すなわち、流体機構部12の少なくとも一部がガイド管11の内部に収納された状態でガイド管11に固定されていてもよいし、ガイド管11のチューブ部11cが流体機構部12のチューブ部12dを兼ねていてもよい。なお、ガイド管11のチューブ部11cが流体機構部12のチューブ部12dを兼ねる場合には、チューブ部12dは不要となる。
まず、ガイド管11を形状回復温度以上に加熱し、そのチューブ部11cをオーステナイト相に変化させる。これにより、ガイド管11は、生体組織への刺入に適した形状(例えば、まっすぐな形状)となる。
Claims (7)
- 生体組織に刺入される生体組織プローブであって、
前記生体組織の体温よりも高い温度でオーステナイト相となり、前記生体組織の体温でマルテンサイト相となる形状記憶合金によって構成された筒状のチューブ部と、
生体組織からの組織液の回収及び/又は前記生体組織への薬液の注入を行う流体機構部と、
前記チューブ部の外周面に形成された薄膜と、を有し、
前記薄膜によって前記チューブ部の外周面側に凹部が形成されており、
前記チューブ部の内部には、前記流体機構部の少なくとも一部が収納される、
ことを特徴とする生体組織プローブ。 - 生体組織に刺入される生体組織プローブであって、
前記生体組織の体温よりも高い温度でオーステナイト相となり、前記生体組織の体温でマルテンサイト相となる形状記憶合金によって構成された筒状のチューブ部と、
生体組織からの組織液の回収及び/又は前記生体組織への薬液の注入を行う流体機構部と、
前記チューブ部の外周面上、又は、当該チューブ部の外周面を覆う第1絶縁層上に形成された金属層と、
前記金属層の一部を覆う感光性絶縁材料からなる第2絶縁層と、を有し、
前記金属層は、外部に露出した電極領域と、前記第2絶縁層に覆われた配線領域と、を含み、
少なくとも前記第2絶縁層と前記金属層とが、それぞれ薄膜であり、
前記チューブ部の外周面又は当該チューブ部の外周面を覆う前記第1絶縁層の表面は、外部に露出した領域であるアンカー底面領域を含み、前記アンカー底面領域の周囲は、前記第1絶縁層及び/又は前記第2絶縁層によって囲まれ、前記アンカー底面領域を底面とし、前記アンカー底面領域の周囲を囲む前記第1絶縁層及び/又は前記第2絶縁層を内壁面とした凹部が形成されており、
前記チューブ部の内部には、前記流体機構部の少なくとも一部が収納される、
ことを特徴とする生体組織プローブ。 - 請求項1または2の生体組織プローブであって、
前記チューブ部は、前記流体機構部から分離可能であり、
前記流体機構部は、前記チューブ部の少なくとも一端から前記チューブ部の内部に挿入可能であり、前記チューブ部の内部に挿入された前記流体機構部は、前記チューブ部の当該一端から取り出し可能である、
ことを特徴とする生体組織プローブ。 - 請求項1から3の何れかの生体組織プローブであって、
前記流体機構部は、半透膜である透析膜を含み、当該透析膜を介して生体組織からの組織液の回収及び/又は前記生体組織への薬液の注入を行うマイクロダイアリシスプローブである、
ことを特徴とする生体組織プローブ。 - (a) 外周面の少なくとも一部が曲面又は凹凸面である筒状のチューブ部の外周面上、又は、当該チューブ部の外周面を覆う第1絶縁層上に金属層を形成するステップと、
(b) 前記金属層が形成された面全体に電着フォトレジスト層を形成するステップと、
(c) 所定の形状が描画されたマスクを用い、前記電着フォトレジスト層を露光し、露光された前記電着フォトレジスト層を現像し、前記電着フォトレジスト層を電極領域と配線領域とを含む形状に加工するステップと、
(d) ステップ(c)で露光及び現像された前記電着フォトレジスト層が形成された前記金属層をエッチングするステップと、
(e) 前記電着フォトレジスト層を除去するステップと、
(f) ステップ(d)によってエッチングされた前記金属層側の面全体に感光性絶縁材料からなる第2絶縁層を形成するステップと、
(g) 所定の形状のマスクを前記第2絶縁層上に配置し、前記第2絶縁層を露光し、露光された前記第2絶縁層を現像して、前記金属層の配線領域を覆いつつ電極領域を外部に露出させる形状に前記第2絶縁層を加工するステップと、を有し、
前記チューブ部は、前記生体組織の体温よりも高い温度でオーステナイト相となり、前記生体組織の体温でマルテンサイト相となる形状記憶合金によって構成されており、
前記ステップ(g)は、前記第2絶縁層の一部を除去することで、前記チューブ部の外周面の一部又は当該チューブ部の外周面を覆う前記第1絶縁層の表面の一部であるアンカー底面領域を外部に露出させ、前記アンカー底面領域を底面とし、前記アンカー底面領域の周囲を囲む前記第1絶縁層及び/又は前記第2絶縁層を内壁面とした凹部を形成するステップを含む、
ことを特徴とする生体組織プローブの製造方法。 - (a) 動物(人間を除く)の生体組織の体温よりも高い温度でオーステナイト相となり、前記生体組織の体温でマルテンサイト相となる形状記憶合金によって構成された筒状のチューブ部を加熱し、前記チューブ部をオーステナイト相に変化させるステップと、
(b) オーステナイト相に変化した前記チューブ部を前記生体組織に刺入するステップと、
(c) 前記生体組織に刺入された前記チューブ部がマルテンサイト相となって軟化した後、生体組織からの組織液の回収及び/又は前記生体組織への薬液の注入を行う流体機構部を、前記生体組織に刺入された前記チューブ部の一端から前記チューブ部内に挿入するステップと、
(d) 前記チューブ部を用い、前記生体組織からの組織液の回収及び/又は前記生体組織への薬液の注入を行うステップと、
を有する生体組織プローブの使用方法。 - (a) 動物(人間を除く)の生体組織の体温よりも高い温度でオーステナイト相となり、前記生体組織の体温でマルテンサイト相となる形状記憶合金によって構成された筒状のチューブ部を加熱し、前記チューブ部をオーステナイト相に変化させるステップと、
(b) 前記チューブ部を前記生体組織に刺入するステップと、
(c) 生体組織からの組織液の回収及び/又は前記生体組織への薬液の注入を行う流体機構部を、前記生体組織に刺入された前記チューブ部の一端から前記チューブ部内に挿入するステップと、
(d) 前記チューブ部を用い、前記生体組織からの組織液の回収及び/又は前記生体組織への薬液の注入を行うステップと、
を有し、
前記チューブ部の外周面側には凹部が形成されており、
前記ステップ(b)は、前記チューブ部の外周面側に形成された凹部が前記生体組織に到達する位置まで、前記チューブ部を前記生体組織に刺入するステップである、
ことを特徴とする生体組織プローブの使用方法。
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