JP5111399B2 - 質量分析のための化学ノイズの低減 - Google Patents

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Description

(関連出願への相互参照)
本願は、同時係属中の2006年2月7日に出願された米国仮特許出願番号第60/765809号の優先権および利益を請求し、その全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
(序論)
バックグラウンドイオン(化学ノイズ)の干渉は、質量分析法の発見以来、問題となっている。これは、低濃度の検体、イオン化効率の低い検体または低濃度でイオン化効率の低い検体について検討する際、最も深刻な問題である。化学ノイズは、たとえば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)源、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)源、大気圧化学イオン化(APCI)源および大気圧光イオン化(APPI)源など、様々な質量分析のイオン源で生じる可能性がある。たとえば、ESIのイオン源は、LCカラムから生じるイオン化サンプルを質量分離器装置に導入する手段として機能し得るものである。ハードウェアによるアプローチまたはソフトウェアによるアプローチを用いて、HPLC−MSの化学ノイズを減らす試みが行われてきている。しかしながら、クラスター分離用の改良されたインターフェースおよび高純度のHPLC溶媒を用いても、化学ノイズは、残る可能性がある。
MALDIスペクトル、特に小分子の分子イオンが存在するスペクトルの低質量領域については、ESIスペクトルよりもはるかに大きく化学ノイズに左右されることが多い。こうした化学ノイズの大部分は、マトリックス分子が原因と考えられる。この問題は、小分子の定性分析の用途でMALDIのイオン源を用いたシステムを使用できなくなるほどの大きな問題になり得る。過去10年にわたり、科学界は、この問題の解決に大変な努力を傾けて、マトリックスレスMALDI表面の開発を試みてきた。しかしながら、マトリックスレスアプローチは、マトリックスを介してレーザーエネルギーを伝達し検体をイオン化する従来のマトリックスシステムと比べて、感度の低下と、その結果としての非再現性とを招く可能性がある。
(発明の要旨)
本教示は、中性化学試薬と1つまたは複数のマスフィルタとを用いて質量分析計のイオン化源から発生する化学的バックグラウンドのイオン信号の干渉を減少させる様々な方法を提供する。種々の実施形態では、中性化学試薬は、ジスルフィド官能基を持つ有機化学種のクラスに属するものである。
種々の態様では、本教示は、LC−MSにおける化学干渉を減少させる新規の質量分析アプローチを示すものであり、これは、化学的バックグラウンドイオンと化学試薬との反応と、イオン移動度、質量電荷比またはその両方に応じたバンドパスフィルタの配置、たとえば、四重極の質量スキャニング/フィルタリング機能を用いた配置とを組み合わせて実現できる。この手法については、標準的な三連四重極LC−MSで行われ、LC−MS専用の器具類で最適化することができる。
本発明者らは、LC/MSにおいて、選定したジメチルジスルフィドおよびエチレンオキシド等の化学試薬が反応するのは、プロトン化検体(たとえば、小分子医薬およびペプチド)ではなく、主要な化学的バックグラウンドイオンに実質的に限られることを発見した。理論に拘泥するわけではないが、これは、大部分の化学的バックグラウンドイオンと通常のプロトン化分子との間の構造上の違いが原因である可能性が高いと考えられる。化学的バックグラウンドイオンは主に、クラスター関連のイオンあるいは(分解された)汚染物質(気中浮遊またはチューブおよび溶媒由来)の安定なイオンのいずれかに分類される。
この反応は、効率がよいもので、イオン源、マスアナライザまたはその両方で受ける圧力に応じて、四重極MSのスキャン速度に適合し得るものである。この特定の圧力に限定される反応と、三連四重極LC−MSのゼロニュートラルロススキャンモードとを組み合わせて、たとえば、化学的バックグラウンドノイズのレベルを選択的に低下させて、有機検体のLC/MSにおける信号対雑音比の向上に応用することができる。本教示は、様々なタイプの検体イオンに関する試験の実施例であって、本教示の技法の一般的かつ実用的な応用例を示す実施例を提示するものである。種々の実施形態では、LC/MSのベースラインノイズを10分の1〜30分の1に低減させ、信号対雑音比を5〜10倍向上させることができる。したがって、こうして得られるノイズの低減は、定量分析と定性分析の両方、小分子のあらゆる種類の分野ならびに大分子のプロテオーム分野で有用であり得る。
本教示の化学ノイズの低減方法については、種々の質量分析システムおよびイオン移動度システムならびに分析技法と一緒に用いることができる。本教示の様々な実施形態を適用できる質量分析システムには、2つの質量分離器を備えていて2つの質量分離器の間にあるイオンの飛行経路に衝突セルが配置されているもの、2つのイオン移動度質量分離器を備えていてこれらの間にあるイオンの飛行経路に衝突セルが配置されているもの、ならびに質量分離器およびイオン移動度分離器を組み合わせてこれらの間にあるイオンの飛行経路に衝突セルが配置されているものがあるが、これに限定されるものではない。種々の実施形態では、1つの質量分離器またはイオン移動度分離器を用いてもよく、この場合、化学試薬との反応物は、分離器の出口部分の方に閉じこめられる。
好適な質量分離器の例として、四重極型、RF多重極型、イオントラップ型、飛行時間型(TOF)およびタイムドイオンセレクタを併用したTOFがあるが、これに限定されるものではない。好適なイオン移動度分離器の例として、以下に限定されるものではないが、高電場非対称波形イオン移動度スペクトロメータ(FAIMS)とも呼ばれているディファレンシャルイオン移動度スペクトロメータアナライザ(DMS)および実質的な対称電場イオン移動度スペクトロメータ(IMS)が挙げられ、これらはすべてタイムドイオンセレクタと併用してイオンのフィルタリング機能などを与えることができる。種々の実施形態では、本教示を用いて様々なイオン源から生じる化学ノイズを低減させることが可能であり、たとえば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)源、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)源、表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI)源、大気圧化学イオン化(APCI)源および大気圧光イオン化(APPI)源があるが、これに限定されるものではない。
本教示の様々な実施形態を適用できる質量分析システムの例として、三連四重極、四重極リニアイオントラップ(4000Q TRAP(登録商標)LC/MS/MS System、Q TRAP(登録商標)LC/MS/MS Systemなど)、LC/MS/MSシステム(API5000(登録商標)、API4000(登録商標)、API3000(登録商標)、API2000(登録商標)等)、四重極TOF(QSTAR(登録商標)LC/MS/MS Systemなど)およびTOF−TOFのうち1つまたは複数を備えたものがあるが、これに限定されるものではない。本教示の様々な実施形態を適用できる質量分析の分析技法の例として、たとえば、選択イオンモニタリング(SIM)法およびマルチプルリアクションモニタリング(MRM)法と呼ばれるものなど、親−娘イオントランジションモニタリング(PDITM)の様々な形態があるが、これに限定されるものではない。
本明細書に記載の教示の種々の実施形態では、中性化学試薬を用いて化学的バックグラウンドのレベルを実質的に選択的に減少させ、質量分析における有機検体の信号対雑音比を向上させることができる。様々な実施形態では、このアプローチについては、化学試薬を衝突セルに加え、ゼロニュートラルロススキャンモードで質量分析計を作動させて三連四重極質量分析計にて実施する。図1に、こうした作業の様々な実施形態を模式的に示す。種々の実施形態では、このノイズ低減方法を、化学試薬を反応域に加えて実施することができるが、この場合、反応域の前にあるローマスフィルタ(選択した質量電荷比の値(m/z)未満のイオンを反応域に入らないようにするフィルタなど)および反応セルの後にあるローアンドハイマスフィルタ(m/z値が選択したm/z値の範囲内にあるイオンを通過させるバンドパスフィルタなど)が配置されている。種々の実施形態では、このアプローチを、イオン移動度ベースのスペクトロメータ、たとえば、間に衝突セルを設けた2つのイオン移動度分離器(たとえば、DMSとIMS、2つのIMS、2つのDMSなど)を備えたスペクトロメータで実施することができる。
このような配置が行われた、たとえば、マスアナライザの前において、反応セルの真空室の光学域の後でバンドパスマスフィルタを用いる、様々な実施形態について、図2A〜図2Cおよび図3A〜図3Cに模式的に示す。種々の実施形態では、こうしたフィルタを、大気イオン源部にある1つまたは複数の高電場非対称波形イオン移動度スペクトロメータ(FAIMS)装置で構成してもよい。たとえば、図3Cを参照されたい。こうした配置を自由にできれば、たとえば、作動させるすべてのスキャンモードで、本教示の化学ノイズの低減方法が効果を発揮する三連四重極機器が可能になる。種々の実施形態では、これ以外のタイプの質量分析計でも本教示の実施が可能になり得、たとえば、TOF、リニアおよび3Dトラップ、フーリエ変換質量分析計(FTMS)、軌道トラップならびに磁場型器具類があるが、これに限定されるものではない。たとえば、種々の実施形態では、化学試薬およびバンドパスマスフィルタをマスアナライザの前に用いれば、イオントラップ型マスアナライザへの空間電荷効果を低減するばかりでなく、これらの器具類の化学ノイズを減少させる手段とすることができる。
種々の実施形態では、本教示により促進される化学ノイズの低減は、定量分析と定性分析の両方、小分子のあらゆる種類の分野ならびに大分子のプロテオーム分野で有用である。
本教示の様々な実施形態により、質量分析法(mass spetrometry)を定量的および定性的どちらに応用しても信号/ノイズの改善が容易になり得る。様々な実施形態(embodimets)では、化学ノイズを低減する他の技法と組み合わせ(combuination)て、本教示を用いてもよい。たとえば、本教示は、検出が行われる前に化学ノイズを低減させることができるため、たとえば、ダイナミックバックランドサブトラクションおよび現在使用されているこれ以外のデータプロセシング方法など、ソフトウェア方法を様々な状況でさらに向上させることができる。種々の実施形態では、たとえば、バックグラウンドスペクトルを導き出すデータに検体フリー領域がないため、バックグラウンドサブトラクション法がうまくいかず、LCをサンプル導入の手段として用いていない状況(nanoESI注入タイプの方法など)で、本教示を用いることができる。
種々の態様では、本教示は、コンピュータが読み取り可能な命令として、コンピュータ読み取り可能媒体に本教示の方法の機能性を埋め込んだ製品を提供するもので、媒体としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、磁気テープ、PROM、EPROM、CD−ROMまたはDVD−ROMがあるが、これに限定されるものではない。
本教示に関する前述およびその他の態様、実施形態および特徴については、以下の記述とともに添付図面によってさらに理解を深めることができる。図面では、種々の図を通して、同様の参照文字は通常、同様の特徴および構成要素を示す。図面は、必ずしも一定の率で縮尺する必要のないものであり、むしろ、本教示の原理の説明に重要点を置いている。
(様々な実施形態の説明)
種々の態様において、本教示は、質量分析機器の化学ノイズを低減するシステムおよび方法を提供する。種々の実施形態では、この方法は:(a)選択した質量電荷比の値(m/z)未満のイオンが実質的に反応域に入ることを排除する一方、m/z値が選択したm/z値を超えるイオンの少なくとも一部を反応域に送ることと;(b)送られたイオンの少なくとも一部と中性化学試薬とを反応域で衝突させることと;(c)m/z値が選択したm/z範囲内のイオンの少なくとも一部を反応域から抽出し、m/z値が選択したm/z範囲外のイオンを実質的に抽出しないようにすることと;を含み、中性化学試薬は、反応域で1種または複数種のイオン種と反応するが、反応域に送られた1種または複数種の目的の検体とは実質的に反応しない、方法である。当然のことながら、本明細書では、中性化学試薬は、反応域に加えられれば、反応ガスともいう。
種々の実施形態では、この方法は、(a)イオン移動度の値が選択した範囲内のイオンが反応域に実質的に入らないようにする一方、イオン移動度の値が選択したイオン移動度の値の範囲外のイオンの少なくとも一部をイオン源から送り出すことと、(b)送られたイオンの少なくとも一部と中性化学試薬とを反応域で衝突させることと、(c)m/z値が選択したm/z範囲内のイオンの少なくとも一部を反応域から抽出し、m/z値が選択したm/z範囲外のイオンを実質的に抽出しないようにすることと、を含み、ここで、中性化学試薬は、反応域で1種または複数種のイオン種と反応するが、反応域に送られた1種または複数種の目的の検体とは実質的に反応しない、方法である。当然のことながら本明細書で使用する場合、イオン移動度という語は、定常状態のイオン移動度およびディファレンシャルイオン移動度の両方を含む。定常状態のイオン移動度については、式v=KEで表すことができ、式中、vは、定常状態のイオンのドリフト速度、Kは、スカラーイオン移動度とも呼ばれる定常状態のイオン移動度、Eは、電界強度である。
本教示では、バックグラウンドイオンの質量電荷比の値を、当初のバックグラウンドイオンの質量の場合に比して上下に変化させるように、反応生成物を、好ましくは中性化学試薬および1種または複数種のバックグラウンドイオン種から生成する。中性化学試薬の分圧については、イオン−分子反応が十分に有効となるように調節することができるため、反応域を質量分析システムのスキャン速度装置に連結しても構わない。種々の実施形態において、本教示では、中性化学試薬を使用することと、ゼロニュートラルロス(ZNL)モードで作動する三連四重極のスキャン特性およびマスフィルタリング特性とを組み合わせて、検体の質量未満、検体の質量を超える、あるいは検体の質量未満および超える化学ノイズイオン(バックグラウンドイオン)を反応域(衝突セルなど)に到達する前に実質的に排除する。したがって、こうした化学ノイズイオンが、反応を起こして目的の検体の質量チャネルに入ることを許さない。中性化学試薬ガスと反応する、検体インタレストと同重体の化学ノイズイオン(バックグラウンドイオン)については、m/z値が高くなるか、低くなった後、質量分析システムの反応域と検出器との間に設けられたマスフィルタ(四重極、イオンセレクタなど)によって排除することができる。種々の実施形態では、このような考え方を、検出器の前にある低分解能バンドパスマスフィルタまたは移動度フィルタと一緒に活用し、フィルタのスキャンを第1の四重極分析計のスキャンに連結することで、このノイズ低減手法を三連四重極のすべてのスキャンモードに適用することができる。種々の実施形態では、たとえば、トラップ内のフィルタにある化学ノイズを除去したイオン集団を収集すれば、この手法をあらゆるマスアナライザシステムに適用することができる。
種々の実施形態では、この方法は、(a)第1に選択したイオン移動度の値の範囲内のイオンが反応域に実質的に入らないようにする一方、イオン移動度の値が第1に選択したイオン移動度の値の範囲外のイオンの少なくとも一部をイオン源から送り出すことと、(b)送られたイオンの少なくとも一部と中性化学試薬とを反応域で衝突させることと、(c)イオン移動度の値が第2に選択したイオン移動度の範囲内のイオンの少なくとも一部を反応域から抽出し、イオン移動度の値が第2に選択したイオン移動度の範囲外のイオンを実質的に抽出しないようにすることと、を含み、ここで、中性化学試薬は、反応域で1種または複数種のイオン種と反応するが、反応域に送られた1種または複数種の目的の検体とは実質的に反応しない、方法である。種々の実施形態では、反応生成物を、中性化学試薬および1種または複数種のバックグラウンドイオン種から生成し、バックグラウンドイオンのイオン移動度は、当初のバックグラウンドイオンのイオン移動度から、イオン移動度の値で高くあるいは低く変化する。
種々の実施形態では、目的の検体は、たとえば、タンパク質、ペプチドおよび小分子医薬などの有機分子である。種々の実施形態では、目的の検体は、ペプチドを含有するシステインを含むものである。
低減または除去対象のバックグラウンドイオンが陽イオンである種々の実施形態では、中性化学試薬は、好ましくは求核試薬である。低減または除去対象のバックグラウンドイオンが陰イオンである種々の実施形態では、中性化学試薬は、好ましくは求電子試薬である。たとえば、好適な求電子試薬として、局在した負電荷をひきつけることができる電子求引基を持つ分子が挙げられる。
種々の実施形態では、絶対圧力約1×10−4トルから約760トルの範囲で、中性化学試薬を反応域に供給する。種々の実施形態では、絶対圧力:(a)約5×10−4トルから約8×10−3トル;(b)約1×10−3トルから約10×10−3トル;および/または(c)約1×10−4トルから約6×10−3トルの範囲で、中性化学試薬を反応域に供給する。
種々の実施形態では、中性化学試薬は、ジスルフィド官能基を持つ有機化学種を含むものである。ジスルフィドの例として、ジメチルジスルフィドおよびジエチルジスルフィドがあるが、これに限定されるものではない。種々の実施形態では、中性化学試薬は、ジセレニド官能基を持つ有機化学種を含むものである。ジセレニドの例として、ジメチルジセレニド、(CHSe−SeCH)があるが、これに限定されるものではなく、この化合物は、毒性が強いと考えられる点に留意されたい。種々の実施形態では、中性化学試薬は、エチレンオキシドを含むものである。
種々の実施形態では、中性化学試薬は、ジメチルジスルフィド(DMDS)(CH−S−S−CH;DMDS;CAS番号:624−92−0;式:C2H6S2)である。本教示の種々の実施形態では、衝突セルに導入すると、DMDSは、クラスターからなることが多いバックグラウンドイオンと反応するが、目的の有機検体の多くとは実質的に反応しないことが明らかになっている。DMDSとバックグラウンドイオンとが反応すると、バックグラウンドイオンの質量は変化して(1)DMDSまたは複数のDMDS分子の質量分だけ増える;(2)DMDSのフラグメントの質量分だけ増える;および/または(3)電荷交換プロセスで引き抜かれたバックグラウンドイオンの部分の分だけ減る可能性があることが観察されている。このため、DMDSとバックグラウンドイオン種とから反応生成物が生成されると、バックグラウンドイオンのm/z値が、最初のイオンの質量よりも高値または低値に変化する。したがって、反応域で中性化学試薬を使用するのと組み合わせて、反応域の前でハイパスマスフィルタを、さらに反応域の後で低分解能のハイアンドローマスフィルタ(バンドパスフィルタ)を使用すれば、バックグラウンドイオンを除去し、それでいて目的の検体イオンの大半は減少させないようにすることができることが判明している。以下でさらに論じるように、DMDSを中性化学試薬として用いた、本明細書に示す実施例で観察された最小のマスシフトは、m/z141〜m/z149であった。こうしたイオンの原因については、図23Aおよびその説明を参照すれば、理解を深めることができる。これを踏まえて、種々の実施形態では、反応後のマスフィルタの幅は、約±8amu以下である。
本教示では、検体イオンと化学的バックグラウンドイオンが気相で中性試薬と反応する場合、検体イオンと化学的バックグラウンドイオンとの化学反応性の相違に基づいて中性化学試薬を選択することが可能である。理論に拘泥するわけではないが、化学的バックグラウンド(ノイズ)イオンの大部分については、クラスター関連のイオン(たとえば、不十分なクラスター分離またはクラスターの再形成などが原因)あるいは(たとえば、気中浮遊またはチューブおよび溶媒などによる)汚染物質の安定なイオンおよびそのフラグメントのいずれかに分類できると考えられる。LC/MCシステムでは、たとえば、クラスター状イオンは、HPLC溶媒/緩衝液関連種であることが多い。
種々の実施形態では、反応域は、衝突セルを含むものである。様々な衝突セルの配置の例として、図2A〜図2Cに示した配置が挙げられるが、これに限定されるものではない。種々の実施形態では、反応域は、少なくとも一部がその機器の質量分離器またはイオン移動度分離器内にある。こうした反応域の配置の例として、図3A〜図3Cに示した配置が挙げられるが、これに限定されるものではない。
種々の実施形態では、サンプルを、アンモニウム、アルカリイオン(たとえば、ナトリウムなど)またはこれら組み合わせのうち1つまたは複数でドープして、バックグラウンド種の付加イオンを与える。化学試薬の種々の実施形態では、付加を受けたバックグラウンドイオン(ナトリウムイオン付加バックグラウンドイオン、アンモニウムが付加されたバックグラウンドイオン等)は、無付加のバックグラウンドイオンよりも、化学試薬としてのDMDSとの反応の程度がかなり大きいことが観察された。種々の実施形態では、アンモニウム、アルカリイオンまたはこれら組み合わせのうち1つまたは複数を、約0.1ミリモルから約10ミリモルの範囲でイオン化前のサンプル溶液にドープする。
本教示の種々の態様では、反応後域のマスフィルタをスキャンして全スペクトルを得るか、あるいは、特定の範囲のマスウィンドウに設定して目的の特定の検体を通過させることができる。この結果、バックグラウンドイオンが除去され、定性解析(全スペクトルの取得など)の確認限界および定量的測定(SIMまたはMRMなど)の検出限界が改善され得るため、信号対雑音比が大きくなる。
本教示の様々な実施形態を用いて、たとえば、SIMまたはMRMなどの親−娘イオントランジションモニタリング(PDITM)を採用する質量分析技法のノイズを低減することができる。種々の実施形態では、PDITMを、第1の質量分離器およびイオンフラグメンタ(衝突セルなど)ならびに第2の質量分離器を備えたマスアナライザで行うことができる。送られた親イオンのPDITMスキャンのm/z範囲(第1の質量分離器により選択される)を、1種または複数種の同重体で標識されたアミン含有化合物のm/z値を含むように選択し、送られた娘イオンのPDITMスキャンのm/z範囲(第2の質量分離器により選択される)を、送られたアミン含有化合物に対応する1種または複数種のレポーターイオンのm/z値を含むように選択する。
種々の実施形態では、本教示は、イオントラップアナライザに入る不要なイオンの量を減少させ、たとえば、空間電荷効果を低減させ、こうしたマスアナライザのダイナミックレンジを広げる手段を提供することができる。イオントラップの前でスキャニング装置を用いると、トラップのデューティサイクルの低下につながる可能性があるが、迅速にスキャニングし、イオン集団の反応後バンドパスフィルタリング後にイオンの保持を行えば、こうした低下を抑える一助となり得る。
種々の実施形態では、本教示を用いて、MALDIイオン源を備えた質量分析システムの化学ノイズを低減させることができる。MALDIスペクトル、特に小分子の分子イオンが存在するスペクトルの低質量領域については、化学ノイズに左右される程度が、ESIスペクトルよりもはるかに大きい場合が多い。こうした化学ノイズの大部分は、マトリックス分子が原因と考えられる。この問題は、小分子の定性分析の用途でMALDIのイオン源を用いるシステムを使用できなくなるほどの大きな問題になり得る。種々の実施形態では、本教示を用いれば、イオン化後ではあるが質量解析前に化学ノイズを低減することができるため、化学ノイズの除去にマトリックスレスアプローチを必要としない。本教示の方法を適用してマトリックス由来の化学ノイズを低減できるMALDIのマトリックス材料の例として、表1に掲げた材料が挙げられるが、これに限定されるものではない。
Figure 0005111399
本教示の態様については、以下の実施例により理解を深めることができる。実施例は、網羅的なものではなく、いかなる意味でも本教示の範囲を限定するものとして解釈してはならない。
すべての実験を、HPLCシステム(大気圧イオン化、ポジティブモード)と連結した市販あるいは特別注文の三連四重極質量分析計で行った。こうした実施例で用いたシステムは、図1に模式的に示すAPI365機器(MDS Sciex,Inc.、カナダオンタリオ州コンコルド(Concord))であった。衝突ガス導入口を改造して、液体中性化学試薬(反応性衝突ガスなど)の蒸気を衝突セルに導入できるようにした。ノイズ低減実験を行うにあたり、質量分析計をゼロニュートラルロス(ZNL)スキャンモードで作動させた。このモードを用いれば、中性化学試薬とのイオン/分子反応後にm/z値が変化したイオンを除外することができる。様々なLC−MS条件および検体のタイプを試験した。こうした実施例で用いた中性化学試薬は、DMDSであった。
図および本文で示した圧力測定値については、図1のQ1、Q2およびQ3を備えた、質量分析計の真空室に接続したBayet Alpertゲージにより得た。通常のQ1スキャンの動作条件(化学試薬無添加)下で、ゲージの表示値は、約6×10−6トルであった。DMDSを導入すると、ゲージの圧力は、約1.3×10−5トルまで上昇した。これらの圧力測定値については、DMDSおよび窒素のゲージに伴うずれの補正を行っていないことに留意されたい。したがって、圧力増加分(この実施例の場合、約0.7×10−5トル)は、DMDSの「分圧」と呼ばれるものである。衝突セル内の圧力については、こうした動作条件および機器から数ミリトルと推計した。理論に拘泥するわけではないが、原理的に、反応が起こるには、中性化学試薬分子とバックグラウンドイオンとの間の衝突は、1回だけで十分である可能性がある。
他に記載がない限り、DMDSを加えたこの実施例のデータには、(上記のような)DMDSの「分圧」に約0.7×10−5トルを用いた。
図4A〜図17は、得られたデータの実施例を示す。本文およびそれに付した記号ならびに前掲の簡単な説明を参照することで、これらの図におけるデータの理解を深めることができる。図18〜図20は、化学試薬と様々な検体および化合物との反応度の概要を表形式で示す。
図4A〜図4Bは、概算比50:50:0.1のACN/HO/TFAをスプレーした化学的バックグラウンドのエレクトロスプレー質量スペクトルを示す。図4Aは、DMDS反応ガスを用いなかった質量スペクトルを示し、図4Bは、DMDSを衝突セルに加えた質量スペクトルを示す。反応は、エレクトロスプレーイオン化で試験したこのLC/MS移動相およびこれ以外ものに由来する全化学的バックグラウンドイオンの95%で起こると推定される。この結果から、質量分析計の真空室に接続されたBayart AlpertゲージのDMDSの分圧表示値、約0.7×10−5トルは、この機器の衝突セルにおける約3×10−3トルに対応しており、化学的バックグラウンドイオンとDMDSとの反応の少なくとも1つの工程を誘導し得ることが示される。
図5は、DMDSを使用した際の全イオン電流(TIC)に対する作用およびZNLスキャニングを示す。図6Aおよび図6Bはそれぞれ、図5の域(a)および域(c)の条件下における質量スペクトルを示す。イオンについては、ACN:イソプロパノール:HCOOHにエレクトロスプレーを行い発生させた。図5の各域は:(a)(上記のような)「分圧」約0.7×10−5トルでDMDSをセルに加える域;(b)バックグラウンド圧力はゲージの圧力0.6×10−5トルでガスをセルに加えない域;および(c)ゲージの圧力約0.7×10−5トルで窒素だけをセルに加える域に対応する。
TICが約10分の1に減少するが、この場合は、DMDSが原因であり、窒素がもたらす新たなクラスター分離が原因ではないと観察される。TICは、図5の条件(b)と(c)でほとんど同じ状態のままであったが、これは、(a)における化学的バックグラウンドの減少が、DMDSに起因していることを示す。同様の作用は、広く使用されている様々な他のLC移動相でも観察されている。
図7A〜図17のデータについては、ゼロニュートラルロス(ZNL)モードで得た。DMDS使用せずと示したデータについては、衝突セル内の窒素により得、DMDS使用と示したデータについては、衝突セル内のDMDSにより得た。示したデータは、DMDSと試験対象の様々な化合物との反応生成物および/または反応の程度を示すものだが、このデータについては、セル中のDMDSを非常に低い衝突エネルギー(2eVなど)で用いて目的の分子イオンの生成イオンスペクトルを得て、親イオンの質量未満および超える質量をスキャンすることで取得した。
プラゼパム
図7A〜図7Bおよび図8は、プロトン親和力が大きい化合物であるプラゼパム(C19H17ClN2O;MW324.1)に関するデータを示し、その構造を図7Aおよび図8の挿入図として模式的に示す。図7Aは、DMDSを用いなかったプラゼパムのZNLのMSスペクトルを示し、図7Bは、化学ノイズの低減を目的にDMDSを中性化学試薬として加えたスペクトルを示す。図8は、DMDSとプラゼパムとの反応([M+H])の程度を確認するために用いる質量スペクトルのデータを示し、データには、衝突セル内のDMDSを用いて約200m/z〜約500m/zのQ3をスキャンするm/z325の生成イオンスキャンを用いた。DMDSとプラゼパムとの反応度は、約1%未満と観察された。
ミダゾラム
図9A〜図9Cは、プロトン親和力が大きい化合物であるミダゾラム(C18H13ClFN3;MW325)に関するデータを示し、その構造を図9Aの挿入図として模式的に示す。図9Aは、DMDSを用いなかったミダゾラムのZNLのMSスペクトルを示し、図9Bは、化学ノイズの低減を目的にDMDSを中性化学試薬として加えたスペクトルを示す。図9Cは、(9Bプロットの挿入図)は、DMDSとミダゾラムの反応([M+H])の程度を確認するために用いる質量スペクトルデータを示し、データには、衝突セル内のDMDSを用いて約200m/z〜約500m/zのQ3をスキャンするm/z325生成イオンスキャンを用いた。反応生成物は、観察されなかった。
フルドロコルチゾン
図10A〜図11Bは、プロトン親和力が小さい化合物フルドロコルチゾン(MW380.2)に関するデータを示し、その構造を図10Aおよび図11Bとして模式的に示す。
図10A〜図10Bは、フルドロコルチゾンの質量スペクトルで、DMDSを用いなかったZNL(図10A)と、DMDSを用いて(図10B)衝突セルに加えた場合とを比較する。バックグラウンドは低減されるが、分子イオンは、実質的に減衰しないままである。m/z=403で、ナトリウムアダクトである[M+Na]が、プロトン化フルドロコルチゾン[M+H]と比較して減少していることが確認される。
図11A〜図11Bは、生成イオンスキャン法によりフルドロコルチゾンとDMDSとの反応を評価する。[M+Na]イオン(m/z約403)の3分の2は、試薬DMDSと反応することが観察された(図11Aの破線で囲んだ約m/z497でピークを形成)(図11Aのデータを参照)。プロトン化フルドロコルチゾンイオン[M+H](m/z約381)の反応度は、5%未満であった(反応生成物は図11Bの破線で囲んだ約m/z475)(図11Bのデータを参照)。
エストロン
図12A〜図12Bは、比較的プロトン親和力が小さい化合物であるエストロン(C18H22O2、MW270.4)のZNLの質量スペクトルを比較し、その構造を図12Bの挿入図として模式的に示す。図12Aは、衝突セルにDMDSを加えなかった場合のデータを示し、図12Bは、衝突セルにDMDSを加えたデータを示す。エストロンのアンモニウムアダクトである[M+NH(m/z約288)は、およそ30%減衰を示す一方、ナトリウムアダクトである[M+Na](m/z約293)は、大幅に減少した。バックグラウンドの減少も、広範囲にわたった。DMDSを加えると、プロトン化エストロンである[M+H](m/z約271)およびこのアンモニウムアダクトは、あまりイオン電流を減少させないが、ナトリウム付加物の方は、かなりのイオン電流を減少させることが確認された。
フルニトラゼパム
図13A〜図13Bは、生成イオンスキャンを用いてプロトン化およびナトリウムイオン付加フルニトラゼパム(C16H12FN3O3、MW313)とDMDSとの反応を評価する。フルニトラゼパムの化学構造を図13Aの挿入図で模式的に示す。
プロトン化フルニトラゼパム[M+H](m/z約314)は実質的に、DMDSと反応して生成物(m/z約408)を形成することがないことが観察された(図13Aのデータを参照)。ナトリウムアダクトである[M+Na](m/z約336)は、フルドロコルチゾンで観察された(図13Bのデータを参照)のと同じ程度まで反応する(図13Bの破線で囲んだ約m/z430の反応生成物)ことが観察された。
エタミバン
図14A〜図14Bは、生成イオンスキャンを用いてDMDSとプロトン化およびナトリウムイオン付加エタミバン(MW223.3)との反応を評価する。エタミバンの化学構造を図14Aの挿入図で模式的に示す。
プロトン化エタミバン[M+H](m/z約224)は実質的に、DMDSと反応して生成物を形成することがないことが観察された(図14Aのデータを参照)。ナトリウムアダクトである[M+Na](m/z約246)は、フルドロコルチゾンおよびフルニトラゼパムで観察された(図14Bのデータを参照)のと同じ程度まで反応する(図14Bの破線で囲んだ約m/z340の反応生成物)ことが観察された。
シクロスポリンA
図15A〜図15Bは、比較的プロトン親和力が小さいペプチド(塩基性残基なし)であるシクロスポリンA(MW1202.6)のZNLの質量スペクトルで、DMDSを用いなかった場合(図15A)とDMDSを用いて衝突セルに加えた場合(図15B)とを比較する。シクロスポリンAの化学構造を図15Bの挿入図で模式的に示す。DMDSの存在下において、2価プロトン化シクロスポリンイオン[M+2H]2+は、約m/z=602で信号を得たと考えられる。この2価イオンのサテライトイオン(1502)は、NaおよびKアダクトである。Naアダクトは、DMDSにより他の分子イオンと比較して大きく減少しているものの、その作用は、先の小分子の実施例の場合ほど大きくはない。
アンギオテンシンII
図16A〜図16Dおよび図17は、アンギオテンシンIIのデータを示す。アンギオテンシンIIの化学構造を図17の挿入図で模式的に示す。
図16A〜図16Dは、様々な条件下でのDMDSによるアンギオテンシンIIバックグラウンドの低減を比較し、アンギオテンシンIIについては、概算比50:50:0.1のメタノール:水:酢酸の移動相からESIでイオン化した。
図16A(a)および図16B(b)は、Q3シングルMSスキャン(衝突セル中でN2を使用)と窒素を用いたゼロニュートラルロスとを比較する。この比較から、1つのRF/DC四重極の代わりに2つのRF/DC四重極を作動させると、予想される透過損失によりイオン電流が約2.5分の1〜3分の1に減少することが示される。バックグラウンドイオンは主に、図16Aの条件から観察された。図16C(c)は、(上記のような)分圧約0.7×10−5トルでのDMDSの作用を示す。2価プロトン化検体[M+2H]では、(16B(b)と比較して)信号の減衰は観察されないが、バックグラウンドの低減が生じることが観察される。フラグメントイオン(y+、a+、a+、b+およびb+など)は、(b)の場合も(c)の場合も確認された。(上記のような)DMDS分圧を約1.0×10−5トルに高めると、測定値では、スペクトルは改善されず、信号が約4分の1に減衰することが観察された。
図17は、衝突セルにおいて衝突エネルギー2eVでDMDSを用いた、アンギオテンシンIIの[M+2H]2+イオンの生成イオンスキャンを示す。アンギオテンシンIIとDMDSとの反応は、観察されなかった。
別データ
図18〜図20はそれぞれ、試験対象以外の分子に関するデータの表を示す。図18〜図20の表に掲げた様々な化合物の化学構造図を図30〜図38に示す。表18〜表20には、化学的性質および官能基が大きく異なる41種の化合物のDMDSに対する反応度をまとめてある。これらの化合物のうち10種の化合物は、プロトン化分子イオンだけでなくフラグメントを生成したため、フラグメントの反応度を含めてある。さらに、ナトリウムアダクトおよびこれ以外の未同定のアダクトの反応度も示す。41化学種のうち過半数(30)は、反応性が5%未満であった。この41のうち38は、反応性が20%未満であった。試験対象化合物41種のうち3種は、かなり「反応した」(反応性20〜25%)。これら3種の化合物のうち付加イオン(adduction)で反応したのは、1種だけであった。他の2種の化合物は、反応はしなかったが、CIDチャネルにより開裂した。ナトリウムイオン付加化学種を生成する化合物の過半数は、その付加に対して高い反応度(>65%)を示した。
表1〜表3(図18〜図20)では、第2列が試験対象の化合物の名称を示し、第3列は、DMDSと反応しやすい反応部位のリストである。第4列は、プロトン化化合物のm/zの概算値および括弧内は、DMDSと反応するプロトン化化合物の概算比を示し、第5列は、ナトリウムイオン付加化合物(ナトリウムアダクト)のm/zの概算値および括弧内は、DMDSと反応するナトリウムイオン付加化合物の概算比を示し、第6列および最終列は、他の様々なイオンの反応を示し、数字はイオンのm/zの概算値および括弧内の数字は、DMDSと反応するそのイオンの概算比である。
下線を引いた数字は、イオンの解離に起因する損失を示すが、DMDSによるアダクトの生成を必ずしも示すものではない。質量の上付文字は、イオンの電荷状態(stat)を示し、たとえば、シクロスポリンAは、2価の状態(602、m=1204およびz=2+)および1価の状態(m/z=1203)が観察された。
実験では、主な化学的バックグラウンドイオンは、中性化学試薬であるジメチルジスルフィド(DMDS、CH3S−SCH3)と反応し、付加イオンおよびそのフラグメントを生成することが観察された。システイン含有ペプチドおよび多価プロトン化した化学種などの試験したペプチド、小分子医薬およびこれ以外の生体分子等の試験したプロトン化検体の過半数は、DMDSがバックグラウンドイオンと反応するのと同じ程度には、DMDSとは著しい反応を示さなかった。これらの実験の試験対象化合物では、ナトリウムイオン付加分子イオン[M+Na]が、プロトン化[M+H]イオンまたは[M+NH4]イオンよりも大きな反応を示すことが観察された。
バックグラウンドイオン
図21A〜図24Bは、これらの実施例の中性化学試薬であるDMDSと、様々なバックグラウンドイオンとの反応から得たデータを示す。データは、標的バックグラウンドイオン種の生成イオンスキャンを用いて、反応ガスをセルに加えてから親バックグラウンドイオンの質量未満および超える質量をスキャンして得たものである。データから、典型的なLC溶媒由来のエレクトロスプレーバックグラウンドイオンの大部分がDMDSと反応することが示される。
図21A〜図21Cは、標的イオンの質量未満および超える生成イオンスキャニングを用いて(上記のような)DMDSの異なる分圧でのバックグラウンドイオンm/z99の反応を評価する。このm/z=99イオンについては、P(OH) であると判定したが、例として、図26に模式的に示す。データは、移動相が概算比の概算比50:50:0.1のメタノール:水:酢酸のLCカラムからの溶出成分をエレクトロスプレーでイオン化したものを対象とする。
図21Aは、上記のようなBayet Alpertゲージによる測定で、DMDS分圧が約0.4×10−5トルのデータを示し、図21Bは、約0.7×10−5トル、図21Cは、約1.0×10−5トルのデータを示す。評価しやすいように、水クラスター[M+nHO]、シングルDMDS付加水クラスター[M+DMDS+nHO]、ダブルDMDS付加水クラスター[M+2DMDS+nHO]、トリプルDMDS付加水クラスター[M+3DMDS+nHO]およびDMDSクラスター(DMDS a clusters)[M+nDMDS]のm/z値を図に示す。
図22A〜図22Dはそれぞれ、図のヘッダに示したような4種のバックグラウンドイオン、m/z=83、m/z=115、m/z=143およびm/z=159の反応を評価する。データは、移動相が概算比の概算比50:50:0.1のメタノール:水:酢酸のLCカラムからの溶出成分をエレクトロスプレーでイオン化したものを対象とし、DMSの分圧は、上記のように約0.7×10−5トルを用いた。
この反応は、[M+nH0]などの水分子を加えるととともに、DMDS中性分子が最大3個のDMDSアダクトである[M+nDMDS]の生成により左右されることが観察された。水は、DMDS中に不純物としておよび/または真空バックグラウンドに存在するものとして生じる可能性がある。こうしたイオンの様々な反応を図25および図26に示す。
図23A〜図23Fは、イオン付加(adduction)は大規模でないものの、電荷移動が進行したさらに6種のバックグラウンドイオン反応を評価する。図23A〜図23Fのスペクトルはそれぞれ、(a)m/z149;(b)m/z60;(c)m/z78;(d)m/z83;(e)m/z99;および(f)m/z205の生成イオンスキャンである。データは、移動相が概算比の概算比50:50:0.1のメタノール:水:酢酸のLCカラムからの溶出成分をエレクトロスプレーでイオン化したものを対象とし、DMSの分圧は、上記のように約0.7×10−5トルを用いた。
DMDSアダクトとバックグラウンドイオンとの電荷交換反応が起こると、m/z141=[DMDS+SCHになることが観察される。これは、複数のDMDS分子がイオンに付加され、次いでDMDS二量体との電荷交換およびDMDS二量体のフラグメンテーションによって生じると考えられる。これは、ファトラート(この実施例の場合、m/z=83、149および205)を除去する重要な機構であり得る。たとえば、m/z=149は、大部分のエレクトロスプレースペクトルでよく見られるフタラートバックグラウンドイオンに対応する。スペクトルの149を141に変換すれば、たとえば、反応後バンドパスマスフィルタのバンド幅を最小に設定することができる。実施例では、質量分析計システムをゼロニュートラルロス(ZNL)モードで用いた場合、バンドパス幅は、反応前域のフィルタも反応後域のフィルタも1amuであった。
図24A〜図24Bは、移動相が概算比の概算比50:50:0.1のメタノール:水:酢酸のLCカラムおよび上記のような約0.7×10−5トルのDMS分圧に由来する、この実施例の典型的なESIスペクトルにおけるバックグラウンドイオンの反応度および考えられる反応チャネルの概要を模式的に示す。
少数種のバックグラウンドイオンは、実質的に反応性を示さなかった(丸で囲んだイオン)。観察された種々のピークの原因となる様々な反応について記載した説明文をスペクトルの下に挿入してあるが、実線は、中性DMDSの添加、点線は、水の添加、頭が菱形の線は、SCHまたはHSCHの添加、円は、実質的にDMDSと反応性を示さなかったイオンを示す。図24Bは、ニュートラルゲインスキャン(セルにはDMDSが存在)で得られたもので、少なくとも1つのDMDSと反応して94の質量を得る化学的バックグラウンドイオンを示す。
また、MS/MSにより、多くのバックグラウンドイオンのアイデンティティが解明されている。図25および図26は、様々なMS/MSスキャンモードを用いて一般的なバックグラウンドイオンを同定するために行った研究を模式的にまとめたもので、イオン集団間の関係が明らかになる。この結果については、API−LC/MSの移動相であるACN/H2O/HCOOHおよびMeOH/H2O/CH3COOHで一般に観察される化学的バックグラウンドイオンのあり得べき「家系図」として示す。
図25および図26の数字は、1価イオンのm/z値を示す。こうした実験で得られた結果から、主な化学的バックグラウンドイオンの過半数は、たとえば、図25に示すようなアジパート、セバカート、フタラート、フェニルホスファート、シリコーンおよびこれらの誘導体(たとえば、気中浮遊、チューブおよび/または移動相由来など)などの汚染物質の安定なイオン(またはそのフラグメント)、あるいは、たとえば、図26に示すようなクラスター関連のイオン(溶媒/緩衝液が関与)であることが示される。クラスター関連のイオンは、汚染物質由来の複数のイオンを核として持っている場合がほとんどである。水、メタノール、アセトニトリルおよび酢酸の中性分子は、クラスター形成に関与していることが判明している。複数のバックグラウンドイオンの強度および/または出現は、LC/MSの実験条件が異なれば、変化する可能性があるとはいえ、これらの実験で観察されたクラスター関連のバックグラウンドイオンの大部分は、比較的安定しており、イオン源および入口光学におけるクラスター分離条件で残存した。
検体の混合物
図27A〜図29Dは、目的の検体のクロマトグラフデータおよび混合物に関するデータを示す。データについては、LC/MSオフTurboIon Spray源を用いて得た。
図27A〜図27Fは、流速200μL/分での、4種類の医薬化合物、ニコチンアミド、エタミバン、フルニトラゼパムおよびテストステロンのTurboIon SprayのLC/MS質量スペクトルであり、DMDSを用いなかった場合(図27A、図27Bおよび図27C)およびDMDSを用いた場合(図27D、図27Eおよび図27F)を示す。図27A〜図27Fでは、バックグラウンド低減を得るためにニュートラルロススキャニングを行い、標準を得るためにQ3シングルMSスキャンを行った。こうした動作条件下、透過率の違いが原因で、信号の損失は、およそ2倍から3倍になると予想されることから、比較できるように、バックグラウンド以外の換算クロマトグラムのTICベースラインを、スペクトルの検体信号と同様に過大に見積もっている。
図27Aは、DMDSを加える前の基準ピーククロマトグラム(Q3スキャン)を示し、図27Dは、DMDSを加えた後のものである。ZNLスキャンでは、DMDSを導入後(図27D)、バックグラウンドおよびベースラインノイズが大きく減少し(たとえば、破線で囲まれた部分を比較)、ニコチンアミドおよびテストステロンが観察されることが確認できる。
図27Bおよび図27Eは、約3〜約8分のTIC域、すなわち、m/z=149のようなフタラートなど、複数の一般的な汚染物質が含まれると予想される域の化学的バックグラウンド質量スペクトルでノイズの低減を比較する。化学的バックグラウンドの減少は明らかである。
図27Cおよび図27Fは、約17.38分(この実験におけるテストステロンのおよその保持時間)でのTIC域のノイズ低減を比較する。DMDSを導入した後は、テストステロン(m/z約289)の信号対雑音比が増大したことが明らかであるばかりでなく、質量スペクトルも変化している。バックグラウンドの換算テストステロンスペクトル図27F(7000cps)の信号レベルは、バックグラウンド以外の換算スペクトル図27C(25,000cps)よりもおよそ3分の1に減少していることが観察された。透過損失(2〜3倍)およびテストステロンとDMDSとの反応度(反応度を約8%と予想、図18など参照)で説明されないものは、バックグラウンドイオンによる同重体干渉の除去が原因と考えられる。
図27A〜図27Fは、LC−MSの化学的バックグラウンドノイズを低減する中性化学試薬DMDSの実際の適用例を示す。図27A〜図27Fについては、本教示の様々な実施形態を用いて、基準ピーククロマトグラムを得ることができる例として使用してもよい。基準ピーククロマトグラムについては、LC−MS解析における微量成分を明らかにし、未知の化学種の特定/同定に用いることが多い。このアプローチを用いて、たとえば、微量でしか存在しない検体の出現を完全に遮る可能性がある化学的バックグラウンドイオンのTICへの著しい関与を抑制または防止することができる。LC−MSによる自動同定またはスクリーニングプロセスでは、タンデムMS/MSスキャンを作動させて構造に関する追加情報を取得することが重要となり得る。こうしたスキャンを作動させて、基準ピークまたは最大強度のピークに関するMS/MS実験を行う場合が多い。しかしながら、微量成分の強度がすでに質量スペクトルの主な(基準ピーク)化学的バックグラウンドイオンの強度よりも低い場合、こうした微量の検体については、その後のMS/MS実験でも同定および捕捉されないであろう。
図27A〜図27Fは、本教示に従ってDMDSにより化学ノイズが低減された後、化学ノイズが低減されていない解析(たとえば、図27Aを参照)とは異なり、2つの微量な成分ニコチンアミド(保持時間約2.23分、すなわち、2分14秒)およびテストステロン(17.47分、すなわち、17分28秒)が検出される(たとえば、図27Dを参照)ことを示す。基準ピーククロマトグラムにおけるピークの信号対雑音比は、約10〜20倍改善している。ノイズ低減前の上下しているベースライン(図27Aの右側の丸で囲んだ部分)は、ノイズ低減の後、比較的平坦な線になっている(図27Dの右側の丸で囲んだ(circle)部分)。DMDSノイズ低減の前後でのテストステロン成分(それぞれ図27Cおよび27F)における質量スペクトルの変化は、バックグラウンドイオンがTICから除去されていることを示す。
図28A〜図28Dは、8種の生体分子:ニコチンアミド(RT=2:12)、[M+H]+=123(2801);ノルフロキサシン(RT=7:14)、[M+H]+=320(2802);エタミバン(RT=10:20).、[M+H]+=224(2803);フルドロコルチゾン(RT=11:24)、[M+H]+=381(2804);レセルピン(RT=12:08)、[M+H]+=609(2805);フルニトラゼパム(RT=13:12)、[M+H]+314(2806);ジアゼパム(RT=13:49)、[M+H]+=285(2807);およびテストステロン(RT=14:12)(2808)の混合物のTurboIon SprayのLC/MS質量スペクトルで、DMDSを用いなかった場合(図28Aおよび28C)およびDMDSを用いた場合(図28Bおよび28D)を示す。
DMDSを加える前のデータは、Q1フルスキャンで取得したものであり、DMDSを加えた後のデータは、ゼロニュートラルロス(ZNL)のスキャンによる。透過効率は、2分の1〜3分の1に低下すると予想され、これは、分子イオンの数の違いで説明できる面もあるが、同重体干渉の除去による可能性もある。
図28Aおよび28Bは、本教示によるノイズ低減の前では、8種の生体分子のうち検出されるのは2種だけであるが(図28A)、ノイズ低減の後(図28B)では、8種すべてが観察されることを示す。図28Cおよび図28Dは、TIC域において約10:20でエタミバンの溶出が観察されたスペクトルを比較する。本教示に従ってDMDSを加えると、プロトン化エタミバンの信号(m/z約224)が増加し、フラグメンテーションの相対的比率(図28Cの約m/z149でのピークおよび図28Dの約m/z151でのピークなど)が低下したことを確認することができる。
図29A〜図29Dは、5種類の生体分子:ニコチンアミド(RT=2:09)、[M+H]+=123;ノルフロキサシン(RT=6:53)、[M+H]+=320;エタミバン(RT=10:15).、[M+H]+=224;フルニトラゼパム、(RT=13:10)、[M+H]+=314;およびテストステロン(RT=14:05)、[M+H]+=289の混合物のTurboIon SprayのLC/MSクロマトグラム(図29A、図29B)および質量スペクトル(図29C、図29D)で、DMDSを用いなかった場合(図29Aおよび図29C)およびDMDSを用いた場合(図29Bおよび図29D)を示す。混合物は、各生体分子を約10ng含むものである。DMDSを加える前のデータは、窒素ガスを用いたQ3シングルMSスキャンであり、DMDSを加えた後のデータは、ゼロニュートラルロス(ZNL)のスキャンによる。当然のことながら、図29Cおよび図29Dでは、ノルフロキサシン信号の損失(9000〜>5000cps)は、スキャンモードの変更に伴う透過損失が主な原因である。
図29Aおよび図29Bは、TICクロマトグラムを比較し、種々の実施形態において、普通ならノイズにより分かりにくくなっている信号を明らかにする本教示の作用を示す。これは、たとえば、1種または複数種の汚染物質と反応するが、1種または複数種の目的の検体とは実質的に反応しない本発明の中性化学試薬によるものである。たとえば、保持時間がそれぞれ2.15および6.90分の2種類の微量成分(ニコチンアミドおよびノルフロキサシン)は、ノイズ低減前(図29A参照)には観察されなかったが、DMDSによる化学ノイズの低減後(図29Bを参照)の基準ピーククロマトグラムでは検出された。
図29C(DMDS未使用)および29D(DMDS使用)は、TIC域において約6.96分でノルフロキサシンの溶出が観察されたスペクトルを比較する。本教示に従ってDMDSを加えると、ノイズに比べてプロトン化ノルフロキサシン信号(m/z約320)が増加したことが確認される。
図30〜図38は、図18〜図20の表に掲げた様々な化合物の化学構造を示す。さらに、図30〜図38には、これらの化合物のプロトン化形態とDMDSとの反応に関するデータの一部をまとめてある。構造の隣に掲げたパーセンテージは、観察されたプロトン化分子の反応性のパーセンテージを示す。下線を引いたパーセンテージは、反応物が解離体であることを示す。場合によっては、水和類似体からの水の損失など、リストにある化合物に由来する類似体の研究も行っており、その反応率も示す。
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本教示については、様々な実施形態および実施例とともに記載しているが、本教示をそうした実施形態または実施例に限定することを意図するものではない。他方で、本教示は、当業者であるならば理解するような種々の代替形態、変更形態および等価物を包含するものである。
説明に役立つ具体的な実施形態を参照しながら、本教示を詳細に示し、記載してきたが、本教示の主旨および範囲を逸脱することなく、形態および詳細について様々な変更が可能であることを理解されたい。したがって、本教示の範囲および主旨に近いすべての実施形態およびその等価物については、権利請求されている。本教示の方法、システムおよびアッセイの説明ならびに図表については、その主旨での記述がない限り、記載の構成要素の順序に限定されるものと解釈してはならない。
図1は、衝突セル(反応セル)に化学試薬ガス(反応ガス)の導入口を備えた三連四重極を模式的に示す。 図2A〜図2Cは、マスアナライザの前にあるバンドパスフィルタの配置の様々な実施形態を模式的に示す。図2Aは、図1の質量分析計のQ0域においてゼロニュートラルロス実験をシミュレートすることが可能なフィルタをベースとした低分解能四重極であって、反応前フィルタリング(ハイパスフィルタ)、反応および反応後フィルタリング(バンドパスフィルタリング)用に別々の高圧セルを備えた低分解能四重極を模式的に示し;図2Bは、図2Aに類似しているが、反応後フィルタと反応セルとが一体化している配置を模式的に示し;図2Cは、Q0が反応前ハイパスフィルタとして機能し、反応セルがミリトルのQ0域にあり、Q1が反応後バンドパスフィルタとして機能する配置を模式的に示す。 図3A〜図3Cは、マスアナライザの前にあるバンドパスフィルタの配置の様々な実施形態を模式的に示す。図3Aは、Q0が反応前ハイパスフィルタとして機能し、反応および反応後フィルタリングが行われるQ1の入口に反応ガス(中性化学試薬)を加える様子を模式的に示し;図3Bは、Q1が反応前および反応後フィルタとして機能し、前にあるハイパスフィルタ域で反応が実質的に生じないように反応ガス(中性化学試薬)を四重極の中間に加える配置を模式的に示し;図3Cは、FAIMSが移動しやすいため、イオン移動度フィルタが大気イオン源部にあり、反応セルの前部が前反応物を濾過し、反応セルの後部が後反応物を濾過するFAIMSセルの中央で化学試薬ガスをドリフトガスに加える配置を模式的に示す。当然のことながら、FAIMSセルには、複数のFAIMS域があり、反応ガスをこうした1つまたは複数の域に加えることができる。FIAMSセルが複数あると、たとえば、1種または複数種の異なったドリフトガス、ドリフト電圧およびこれらの組み合わせを使用しやすくなる。 図4A〜図4Bは、衝突セルにおいて、ゼロニュートラルロス(ZNL)モードでDMDSを用いた場合と、窒素を用いるがDMDSを用いなかった場合とを比べるときに、ESIバックグラウンドが低減する例を示す。図4Aは、DMDSの反応ガスを用いなかった質量スペクトルを示し、図4Bは、DMDSを衝突セルに加えた質量スペクトルを示す。各反応は、このLC/MS移動相およびエレクトロスプレーイオン化で試験したこれ以外の移動相に由来する全化学的バックグラウンドイオンのうち95%で起こると推定される。 図5は、DMDSを用いた場合の全イオン電流(TIC)への作用およびZNLスキャニングを示し、各域は、(a)セルにDMDSを添加した;(b)セルにガスを添加しなかった;(c)セルに窒素だけを添加した域に対応する。 図6Aおよび図6Bはそれぞれ、図5の域(a)および域(c)の条件下での質量スペクトルを示す。 図7A〜図7Bは、プロトン親和力が大きい化合物であるプラゼパムのZNL質量スペクトルで、DMDSを衝突セルに加えた場合(図7B)とDMDSを衝突セルに加えなかった場合(図7A)とを比較する。バックグラウンドは低減されるが、分子イオンは、実質的に減衰しないままである。 図8は、質量スペクトルのデータで、DMDSとプラゼパムとの反応の程度を確認するのに用いる。DMDSとプラゼパムとの反応度は、約1%未満であることが観察された。 図9A〜図9Cは、ミダゾラムに関するデータを示す。図9A〜図9Bは、プロトン親和力が大きい化合物であるミダゾラムのZNLの質量スペクトルで、DMDSを衝突セルに加えた場合(図9B)とDMDSを衝突セルに加えなかった場合(図9A)とを比較する。バックグラウンドは低減されるが、分子イオンは、実質的に減衰しないままである。図9C(図9Bの挿入図)は、ミダゾラムがDMDSと実質的に反応しないことを証明する生成イオンのスペクトルを示す。 図10A〜図10Bは、プロトン親和力が小さい化合物であるフルドロコルチゾンのZNL質量スペクトルで、DMDSを衝突セルに加えた場合(図10B)とDMDSを衝突セルに加えなかった場合(図10A)とを比較する。 図11A〜図11Bは、生成イオンスキャン法によりフルドロコルチゾンとDMDSとの反応を評価する。図11Aは、ナトリウムイオン付加フルドロコルチゾンとDMDSとの反応に関するデータ、図11Bは、プロトン化フルドロコルチゾンとDMDSとの反応に関するデータを示す。 図12A〜図12Bは、比較的プロトン親和力が小さい化合物であるエストロンのZNL質量スペクトルで、DMDSを用いた場合(図12B)とDMDSを用いなかった場合(図12A)とを比較する。 図13A〜図13Bは、生成イオンスキャニングにより、プロトン化およびナトリウムイオン付加フルニトラゼパムとDMDSとの反応を評価する。 図14A〜図14Bは、生成イオンスキャンを用いて、エタミバンとDMDSとの反応を評価する。 図15A〜図15Bは、比較的プロトン親和力が小さいペプチド(塩基性残基なし)であるシクロスポリンAのZNL質量スペクトルで、DMDSを衝突セルに加えた場合(図15B)とDMDSを衝突セルに加えなかった場合(図15A)とを比較する。 図16A〜図16Dは、DMDSによるアンギオテンシンIIバックグラウンドの低減を比較する。図16A(a)および図16B(b)は、Q3シングルMSスキャン(衝突セルにN2がある状態)と、窒素を用いたゼロニュートラルロスとを比較する。この比較から、1つのRF/DC四重極の代わりに2つのRF/DC四重極を作動させると、イオン電流は、透過損失により約2.5分の1〜3分の1に減少することが予想される。図16C(c)および16(d)は、2通りの圧力でDMDSの作用を比較する。 図17は、アンギオテンシンIIの[M+2H]2+の生成イオンスキャンを示し、セル中のDMDSの衝突エネルギーは2eVである。 図18は、実施例におけるDMDSと種々の化合物との反応の程度をまとめた表である。 図19は、実施例におけるDMDSと種々の化合物との反応の程度をまとめた表である。 図20は、実施例におけるDMDSと種々の化合物との反応の程度をまとめた表である。 図21A〜図21Cは、標的イオンの質量未満および超える生成イオンスキャンを用いて、分圧が異なるDMDSでのm/z99のバックグラウンドイオンの反応を評価する。水およびDMDSのクラスターが観察される。このm/z=99イオンについては、P(OH) であると判定したが、例として、図26に模式的に示す。 図22A〜図22Dはそれぞれ、図のヘッダに示したような4種類のバックグラウンドイオン、m/z=83、m/z=115、m/z=143およびm/z=159の反応を評価する。 図23A〜図23Fは、イオン付加(adduction)は大規模でないものの、電荷移動が進行したさらに6種類のバックグラウンドイオンの反応を評価する。図23A〜図23Fのスペクトルはそれぞれ、(a)m/z149;(b)m/z60;(c)m/z78;(d)m/z83;(e)m/z99;および(f)m/z205の生成イオンスキャンである。 図24A〜図24Bは、DMDSを用いた実施例の典型的なESIスペクトルにおける、バックグラウンドイオンの反応度および考えられる反応チャネルの概要を模式的に示す。少数のバックグラウンドイオン(丸で囲んだイオン)は、実質的に反応性を示さなかった。 図25では、様々なMS/MSスキャンモードを用いて一般的なバックグラウンドイオンを同定し、イオン集団間の関係を明らかにするために行った研究を模式的にまとめてある。 図26では、様々なMS/MSスキャンモードを用いて一般的なバックグラウンドイオンを同定し、イオン集団間の関係を明らかにするために行った研究を模式的にまとめてある。 図27A〜図27Fは、4種類の医薬化合物、ニコチンアミド、エタミバン、フルニトラゼパムおよびテストステロンに対して200μL/分で行われたTurboIon Spray LC/MSクロマトグラムおよび質量スペクトルで、DMDSを用いなかった場合(図27A、図27Bおよび図27C)およびDMDSを用いた場合(図27D、図27Eおよび図27F)を示す。 図28A〜図28Dは、8種類の生体分子:ニコチンアミド(RT=2:12)、[M+H]+=123;ノルフロキサシン(RT=7:14)、[M+H]+=320;エタミバン(RT=10:20).、[M+H]+=224.フルドロコルチゾン(RT=11:24)、[M+H]+=381;レセルピン(RT=12:08)、[M+H]+=609;フルニトラゼパム(RT=13:12)、[M+H]+314;ジアゼパム(RT=13:49)、[M+H]+=285;およびテストステロン(RT=14:12)の混合物のTurboIon SprayのLC/MSクロマトグラムおよび質量スペクトルで、DMDSを用いなかった場合(図28Aおよび28C)およびDMDSを用いた場合(図28Bおよび28D)を示す。 図29A〜図29Dは、5種類の生体分子:ニコチンアミド(RT=2:09)、[M+H]+=123;ノルフロキサシン(RT=6:53)、[M+H]+=320;エタミバン(RT=10:15).、[M+H]+=224;フルニトラゼパム、(RT=13:10)、[M+H]+=314;およびテストステロン(RT=14:05)、[M+H]+=289の混合物のTurboIon SprayのLC/MSクロマトグラム(図29A、図29B)および質量スペクトル(図29C、図29D)で、DMDSを用いなかった場合(図28Aおよび図28C)およびDMDSを用いた場合(図28Bおよび図28D)を示す。 図30は、図18〜図20の表に掲げた様々な化合物の化学構造を示す。 図31は、図18〜図20の表に掲げた様々な化合物の化学構造を示す。 図32は、図18〜図20の表に掲げた様々な化合物の化学構造を示す。 図33は、図18〜図20の表に掲げた様々な化合物の化学構造を示す。 図34は、図18〜図20の表に掲げた様々な化合物の化学構造を示す。 図35は、図18〜図20の表に掲げた様々な化合物の化学構造を示す。 図36は、図18〜図20の表に掲げた様々な化合物の化学構造を示す。 図37は、図18〜図20の表に掲げた様々な化合物の化学構造を示す。 図38は、図18〜図20の表に掲げた様々な化合物の化学構造を示す。

Claims (30)

  1. 質量分析機器の化学ノイズを低減するための方法であって:
    1種または複数種のバックグラウンドイオンと1種または複数種の目的の検体とを含む、イオン源でのイオンのうち、該イオン源の選択した質量電荷比の値(m/z)未満のイオンが実質的に反応域に入ることを排除する一方、m/z値が選択したm/z値を超えるイオンの少なくとも一部を該イオン源から該反応域に送る工程;
    該反応域において1種または複数種のバックグラウンドイオンと中性有機化学種とを反応させて、該反応域に送られた該1種または複数種のバックグラウンドイオンのm/z値を変化させる工程;
    m/z値が選択したm/z範囲内の該イオンの少なくとも一部を該反応域からマスアナライザに抽出し、m/z値が該選択したm/z範囲外のイオンを該マスアナライザに実質的に抽出しないようにする工程
    を含
    該中性有機化学種は、(a)ジスルフィド官能基を持つか、または(b)エチレンオキシドを含む、
    方法。
  2. 前記反応域に送られる前記1種または複数種のバックグラウンドイオンは、アジパート、セバカート、フタラート、フェニルホスファート、シリコーンおよびこれらの誘導体の1種または複数種を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記反応域に送られる前記1種または複数種のバックグラウンドイオンは、水、メタノール、アセトニトリルおよび酢酸の1種または複数種を含むクラスターイオンを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記反応域に送られる前記1種または複数種のバックグラウンドイオンは、陽イオンであり、前記中性有機化学種は、求核試薬である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記反応域に送られる前記1種または複数種のバックグラウンドイオンは、陰イオンであり、前記中性有機化学種は、求電子試薬である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記中性有機化学種は、ジメチルジスルフィドおよびジエチルジスルフィドの1種または複数種を含む、請求項に記載の方法。
  7. 前記1種または複数種の目的の検体の1種または複数種は、タンパク質、ペプチドおよび小分子医薬の1種または複数種を含む、請求項1に記載の方法。
  8. 前記ペプチドの1種または複数種は、システイン含有ペプチドである、請求項に記載の方法。
  9. 前記反応域に送られた1種または複数種のバックグラウンドイオンの前記m/z値を変化させる工程の間、該反応域における前記中性有機化学種の圧力は、約0.1ミリトルから約760トルの範囲にある、請求項1に記載の方法。
  10. 前記イオン源は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)イオン源を含む、請求項1に記載の方法。
  11. 前記イオン源は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)イオン源を含む、請求項1に記載の方法。
  12. 前記選択したm/z範囲は、前記バックグラウンドイオンへの前記中性有機化学種の1種または複数種の分子の付加と、該バックグラウンドイオンへの該有機化学種の1種または複数種のフラグメントの付加と、バックグラウンドイオンのフラグメントとの一つ以上を含む、該バックグラウンドイオンと該有機化学種との反応生成物を実質的に排除するように選択される、請求項1に記載の方法。
  13. m/z値が選択したm/z範囲内の前記イオンの少なくとも一部を前記反応域からマスアナライザに抽出し、m/z値が該選択したm/z範囲外のイオンを該マスアナライザに実質的に抽出しないようにする前記工程は、イオントラップに該抽出したイオンの少なくとも一部を収集する工程を含む、請求項1に記載の方法。
  14. 質量分析機器の化学ノイズを低減するための方法であって:
    イオン源と反応域との間に配置される第1のマスフィルタと、該反応域と検出器の間に配置される第2のマスフィルタと、を含む質量分析計を提供する工程であって、該第1のマスフィルタと該第2のマスフィルタとの間に該反応域が配置されている、工程;
    該第1のマスフィルタをハイパスマスフィルタとして作動させる工程;
    1種または複数種の目的の検体よりも1種または複数種のバックグラウンドイオンと優先的に反応する中性有機化学種を該反応域に加える工程;
    該第2のマスフィルタをバンドパスフィルタとして作動させ、1種または複数種の目的の検体を該検出器に送る工程
    を含該中性有機化学種は、ジスルフィド官能基を持つ、方法。
  15. 前記中性有機化学種の圧力は、1種または複数種のバックグラウンドイオンとの前記反応中、前記反応域において約0.1ミリトルから約760トルの範囲にある、請求項1に記載の方法。
  16. 質量分析機器の化学ノイズを低減するための方法であって:
    1種または複数種のバックグラウンドイオンと1種または複数種の目的の検体とを含む、イオン源でのイオンのうち、該イオン源の選択した質量電荷比の値(m/z)未満のイオンが実質的に反応域に入ることを排除する一方、m/z値が選択したm/z値を超える該イオンの少なくとも一部を該イオン源から該反応域に送る工程;
    該反応域において該送られたイオンの少なくとも一部と中性有機化学種とを衝突させる工程;ならびに
    該反応域からm/z値が選択したm/z範囲内のイオンの少なくとも一部を抽出し、m/z値が該選択したm/z範囲外のイオンを実質的に抽出しないようにする工程
    を含み、該中性化学試薬が、該反応域において1種または複数種のバックグラウンドと反応するが、該反応域に送られた1種または複数種の目的の検体とは実質的に反応せず該中性有機化学種は、ジスルフィド官能基を持つ、方法。
  17. 質量分析機器の化学ノイズを低減するための方法であって:
    1種または複数種のバックグラウンドイオンと1種または複数種の目的の検体とを含む、イオン源でのイオンのうち、該イオン源のイオン移動度の値が選択した範囲内のイオンが実質的に反応域に入ることを排除する一方、イオン移動度の値が該選択したイオン移動度の値の範囲外のイオンの少なくとも一部を該イオン源から該反応域に送る工程;
    該反応域において1種または複数種のバックグラウンドイオンと中性有機化学種とを反応させて、該反応域に送られた該1種または複数種のバックグラウンドイオンのm/z値を変化させる工程;
    m/z値が選択したm/z範囲内の該イオンの少なくとも一部を該反応域からマスアナライザに抽出し、m/z値が該選択したm/z範囲外のイオンを該マスアナライザに実質的に抽出しないようにする工程
    を含
    該中性有機化学種は、(a)ジスルフィド官能基を持つか、または(b)エチレンオキシドを含む、
    方法。
  18. 前記反応域に送られる前記1種または複数種のバックグラウンドイオンは、アジパート、セベカート(sebecate)、フタラート、フェニルホスファート、シリコーンおよびこれらの誘導体の1種または複数種を含む、請求項17に記載の方法。
  19. 前記反応域に送られる前記1種または複数種のバックグラウンドイオンは、水、メタノール、アセトニトリルおよび酢酸の1種または複数種を含むクラスターイオンを含む、請求項17に記載の方法。
  20. 前記反応域に送られる前記1種または複数種のバックグラウンドイオンは、陽イオンであり、前記中性有機化学種は、求核試薬である、請求項1に記載の方法。
  21. 前記反応域に送られる前記1種または複数種のバックグラウンドイオンは、陰イオンであり、前記中性有機化学種は、求電子試薬である、請求項17に記載の方法。
  22. 前記中性有機化学種は、ジメチルジスルフィドおよびジエチルジスルフィドの1種または複数種を含む、請求項17に記載の方法。
  23. 前記1種または複数種の目的の検体の1種または複数種は、タンパク質、ペプチドおよび小分子医薬の1種または複数種を含む、請求項17に記載の方法。
  24. 前記ペプチドの1種または複数種は、システイン含有ペプチドである、請求項2に記載の方法。
  25. 前記反応域に送られた1種または複数種のバックグラウンドイオンの前記m/z値を変化させる前記工程の間、該反応域における前記中性有機化学種の圧力は、約0.1ミリトルから約760トルの範囲にある、請求項17に記載の方法。
  26. 前記イオン源は、大気圧イオン化(API)イオン源を含む、請求項17に記載の方法。
  27. 前記イオン源は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)イオン源を含む、請求項17に記載の方法。
  28. 前記選択したm/z範囲は、前記バックグラウンドイオンへの前記中性有機化学種の1種または複数種の分子の付加と、該バックグラウンドイオンへの該有機化学種の1種または複数種のフラグメントの付加と、バックグラウンドイオンのフラグメントとの一つ以上を含む、該バックグラウンドイオンと該有機化学種との反応生成物を実質的に排除するように選択される、請求項17に記載の方法。
  29. m/z値が選択したm/z範囲内の前記イオンの少なくとも一部を前記反応域からマスアナライザに抽出し、m/z値が該選択したm/z範囲外のイオンを該マスアナライザに実質的に抽出しないようにする前記工程は、イオントラップに該抽出したイオンの少なくとも一部を収集する工程を含む、請求項17に記載の方法。
  30. 前記選択したイオン移動度の値の範囲は、ディファレンシャルイオン移動度の値の範囲である、請求項17に記載の方法。
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