JP5110870B2 - キャリア移動度の計算方法 - Google Patents

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Description

本発明は、キャリア移動度を予測する計算方法に関する。特に、有機エレクトロルミネセンス素子に用いる分子膜の正孔移動度および電子移動度を予測する計算方法に関する。
有機エレクトロルミネセンス素子の評価において有機材料のキャリア移動度は素子の特性を左右する重要なパラメータである。有機材料のキャリア移動度は、材料単膜の電流−電圧(I−V)曲線の空間電荷制限電流領域において、移動度のモデル式を用いてフィッティングすることにより見積もることができる。絶縁性である有機材料のキャリア移動度を直接測定するには、一般的な手法であるタイム オブ フライト(time of flight:TOF)法が用いられ、キャリア輸送性について数多くの研究がされている。
しかしながらTOF法による測定は、1〜2μm程度の膜厚が必要であるため、真空蒸着等による成膜時に大量の材料を消費しなければならない。さらに、顕著な過渡光電流波形を検出することができないため、キャリア移動度を定量的に評価することも困難である。特に、2つ以上の物質からなる複合膜においては、なおさらキャリア移動度の定量的な評価が困難となる。
また、有機エレクトロルミネセンス材料の設計の点においても、分子軌道計算による最高被占分子軌道(Highest Occupied Molecular Orbital:HOMO)準位、最低空分子軌道(Lowest Unoccupied Molecular Orbital:LUMO)準位、バンドギャップ等の電子状態の予想のほかに正孔(ホール)移動度や電子移動度が予測できるならば、有機エレクトロルミネセンスの各層について電荷輸送性を考慮にいれた材料の設計に選択肢を与えることができる。
また、ナノスケールデバイスの電気伝導特性の予測に関する計算については、密度汎関数と非平衡グリーン関数理論に基づき、分子が2つの電極間に挟まれた2プローブに対して有限バイアス印加時の電圧−電流特性を計算するソフトウェアTranSIESTA−Cがある。TranSIESTA−Cは、孤立した分子系、あるいは結晶などの周期系にも適用できる(例えば、非特許文献1を参照。)。しかしながら、上記の計算ソフトウェアは、有機エレクトロルミネセンス材料の開発という観点で重要な情報である有機膜の正孔移動度または電子移動度を計算するものではない。
M. Brandbyge, J.−L. Mozos, P. Ordejon, J. Taylor, K. Stokbro, Phys. Rev. B. 65, 165401 (2002)
上記課題に鑑み、本発明の目的は有機エレクトロルミネセンス材料を設計する面から、有機膜の正孔移動度または電子移動度を計算により求めることを可能とする方法を提供することにある。
本発明は前記課題を下記に示す手段を採用して解決したものである。
本発明に係るキャリア移動度の計算方法は、半経験的量子分子動力学計算法により電子密度を計算し、正孔及び電子が前記電子密度の高い領域を通って移動しやすいことを利用して、正孔又は電子が移動する確率をモンテカルロ法によって求め、それを評価指数として正孔移動度又は電子移動度を求めることを特徴とする。
本発明に係る膜のキャリア移動度の計算方法は、半経験的量子分子動力学計算法により膜の電子密度を計算し、正孔及び電子が前記電子密度の高い領域を通って移動しやすいことを利用して、最高被占分子軌道(最高占有分子軌道とも呼ぶ。)から最低空分子軌道(最低非占有分子軌道とも呼ぶ。)に電子が一つ励起された励起状態について、正孔又は電子が移動する確率をモンテカルロ法によって求め、それを評価指数として、最高被占分子軌道より下の軌道に存在するキャリア数から正孔移動度を計算し、又は前記最低空分子軌道より上の軌道に存在するキャリア数から電子移動度を計算することを特徴とする。
上記膜として、有機エレクトロルミネセンス素子の電荷注入層、電荷輸送層及び発光層のいずれか一を構成する分子膜を用いることができる。
前記半経験的量子分子動力学計算法で得られた前記膜の最高被占分子軌道準位、最低空分子軌道準位、及び該最高被占分子軌道と該最低空分子軌道とのバンドギャップが、実測値または第一原理計算法により得られた値についてそれぞれ−0.2eV以上0.2eV以下、−0.2eV以上0.2eV以下、および−0.1eV以上0.1eV以下の誤差範囲に入るように前記半経験的量子分子動力学計算法の初期条件(入力パラメータ)を決定することを特徴とする。
上記第一原理計算法として、非経験的分子軌道法を用いることができる。非経験的分子軌道法として、ハートリー・フォック(Hartree−Fock:HF)法、電子相関を考慮に入れた二次摂動(2nd order Moller−Plesset perturbation:MP2)法、電子相関を考慮に入れた四次摂動(4th order Moller−Plesset perturbation:MP4)法または電子相関及び励起状態を考慮に入れて電子配置間相互作用を求める方法(Quadratic Configuration Interaction:QCISD)法を採用し、基底関数として内殻軌道に6個のガウス関数を用いた短縮関数を、最外殻軌道には3種類のスレーター型軌道を考え、原子核に近いものにはガウス関数を3個、中位のものには1個又は0個、遠いものには1個を使用して、短縮軌道指数と短縮係数を用いた前記短縮関数により計算した結果をもとに前記半経験的量子分子動力学計算法の初期条件を調整することを特徴とする。
上記基底関数には6−31G(d)、6−31G(d,p)、6−311G(d,p)またはLanL2DZのいずれかを用いることができる。
なお、QCISD法とは、電子相関及び励起状態を考慮に入れて電子配置間相互作用を求める方法であり、配置間相互作用を組み込んだ二次の電子相関までを考慮にいれている。また、MP2法及びMP4法は電子相関を考慮に入れた多体電子間の摂動法である。また、基底関数のうち例えば6−311Gとは、内殻軌道には6個のガウス関数を用いた短縮関数を、最外殻軌道には3種類のスレーター型軌道を考え、原子核に近いものにはガウス関数を3個、中位のものには1個、遠いものには1個を使って、短縮軌道指数と短縮係数を用いた短縮関数により異方性を持たせて近似度を上げようとするものである。
また、上記第一原理計算法として密度汎関数法を用いることができる。この場合、電子相関法として前記密度汎関数法を利用し、基底関数として内殻軌道に6個のガウス関数を用いた短縮関数を、最外殻軌道には3種類のスレーター型軌道を考え、原子核に近いものにはガウス関数を3個、中位のものには1個又は0個、遠いものには1個を使って、短縮軌道指数と短縮係数を用いた前記短縮関数により計算した結果をもとに前記半経験的量子分子動力学計算法の初期条件を調整する。
上記密度汎関数法の基底関数として6−31G(d)、6−31G(d,p)、6−311G(d,p)またはLanL2DZのいずれかを用い、キーワードとしてBecke’s Three Parameter Hybrid Method Using the LYP Correlation(B3LYP)またはBecke’s Three Parameter Hybrid Method Using the PW91 Correlation(B3PW91)を用いて計算した結果をもとに前記半経験的量子分子動力学計算法の初期条件を調整することを特徴とする。
本発明に係るキャリア移動度が未知である膜のキャリア移動度の計算方法は、半経験的量子分子動力学計算法によりキャリア移動度が既知の膜及び前記キャリア移動度が未知の膜の電子密度を計算し、正孔及び電子が前記電子密度の高い領域を通って移動しやすいことを利用して、最高被占分子軌道から最低空分子軌道に電子が一つ励起された励起状態について、前記キャリア移動度が既知の膜及び前記キャリア移動度が未知の膜の正孔又は電子が移動する確率をモンテカルロ法によって求め、それらを評価指数として、前記キャリア移動度が既知の膜における実測から求めた正孔移動度又は電子移動度と、前記キャリア移動度が既知の膜の前記評価指数との比からパラメータを算出し、前記パラメータ及び前記キャリア移動度が未知の膜の前記評価指数から前記キャリア移動度が未知の膜の正孔移動度又は電子移動度を求めることを特徴とする。
上記キャリア移動度が既知及び未知の膜として、有機エレクトロルミネセンス素子の電荷注入層、電荷輸送層及び発光層のいずれか一を構成する分子膜を用いることができる。
前記半経験的量子分子動力学計算法で得られた前記キャリア移動度が既知の膜及びキャリア移動度が未知の膜の最高被占分子軌道準位、最低空分子軌道準位、及び該最高被占分子軌道と該最低空分子軌道とのバンドギャップが、実測値または第一原理計算法により得られた値についてそれぞれ−0.2eV以上0.2eV以下、−0.2eV以上0.2eV以下、および−0.1eV以上0.1eV以下の誤差範囲に入るように前記半経験的量子分子動力学計算法の初期条件(入力パラメータ)を決定することを特徴とする。
上記第一原理計算法として、非経験的分子軌道法又は密度汎関数法を用いることができる。
上記非経験的分子軌道法として、ハートリー・フォック(HF)法、電子相関を考慮に入れた二次摂動(MP2)法、電子相関を考慮に入れた四次摂動(MP4)法または電子相関及び励起状態を考慮に入れて電子配置間相互作用を求める方法(QCISD)法を採用し、基底関数として内殻軌道に6個のガウス関数を用いた短縮関数を、最外殻軌道には3種類のスレーター型軌道を考え、原子核に近いものにはガウス関数を3個、中位のものには1個又は0個、遠いものには1個を使用して、短縮軌道指数と短縮係数を用いた前記短縮関数により計算した結果をもとに前記半経験的量子分子動力学計算法の初期条件を調整することを特徴とする。
なお、上記基底関数には6−31G(d)、6−31G(d,p)、6−311G(d,p)またはLanL2DZのいずれかを用いることができる。
また、上記第一原理計算法として密度汎関数法を用いることができる。この場合、電子相関法として前記密度汎関数法を利用し、基底関数として内殻軌道に6個のガウス関数を用いた短縮関数を、最外殻軌道には3種類のスレーター型軌道を考え、原子核に近いものにはガウス関数を3個、中位のものには1個又は0個、遠いものには1個を使って、短縮軌道指数と短縮係数を用いた前記短縮関数により計算した結果をもとに前記半経験的量子分子動力学計算法の初期条件を調整する。
上記密度汎関数法の基底関数として6−31G(d)、6−31G(d,p)、6−311G(d,p)またはLanL2DZのいずれかを用い、電子相関補正のキーワードとしてBecke’s Three Parameter Hybrid Method Using the LYP Correlation(B3LYP)またはBecke’s Three Parameter Hybrid Method Using the PW91 Correlation(B3PW91)を用いて計算した結果をもとに前記半経験的量子分子動力学計算法の初期条件を調整することを特徴とする。こうすることで、精度よく初期条件を導き出すことができる。
前記膜は、有機エレクトロルミネセンス(EL)材料に限定されることなく、有機材料全般、有機金属錯体、無機材料、有機−無機複合体材料、半導体、絶縁体においても正孔移動度又は電子移動度を予測することができる。
測定試料の作製に大量の材料が必要であり、また測定不可能な材料もあるTOF測定と比較して、以上のような計算方法を用いると、どのような有機材料および無機材料の薄膜のキャリア移動度も予測することができる。キャリア移動度の情報は、有機エレクトロルミネセンス素子において素子構造の構築や素子特性の検証に非常に重要である。特に電荷注入材料、電荷輸送材料、発光層のホスト材料およびドーパント材料の材料設計は、これまで最高被占分子軌道準位や最低空分子軌道準位やバンドギャップ、最低励起3重項準位、ガラス転移温度などの分子特性を分子軌道計算や分子動力学計算を用いて予測して行われてきたが、本発明に係る計算方法を用いると、キャリア移動度を定量的に考慮した新規材料の設計も可能になる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
(実施の形態1)
本実施の形態では、例えば「アプライド サーフェイス サイエンス(Applied Surface Science)」、244(2005)p30−33で使用されているTight−Binding量子分子動力学計算ソフトウェアColors−Exciteを用いる。そして、正孔移動度または電子移動度を計算するモデルとしてバルクモデルや表面モデルを対象とする。前記モデルについて半経験的量子分子動力学計算法のTight−Binding量子分子動力学計算ソフトウェアColors−Exciteを用いて構造最適化する際、原子のイオン化ポテンシャルや2原子間相互作用を密度汎関数(Density Functional Theory:DFT)計算の結果に基づいて決定し、Tight−Binding量子分子動力学計算の初期入力パラメータ(初期条件)とする。得られた分子軌道エネルギーが妥当であるかどうかは最高被占分子軌道準位、最低空分子軌道準位、および最高被占分子軌道−最低空分子軌道バンドギャップが実測データと同等かどうかで判断し、その誤差範囲はそれぞれ最高被占分子軌道準位及び最低空分子軌道準位が−0.2eV以上0.2eV以下(好ましくは−0.02eV以上0.02eV以下)、バンドギャップが−0.1eV以上0.1eV以下(好ましくは−0.01eV以上0.01eV以下)の範囲に収まるようにする。誤差範囲をこのように設定することで適当な分子軌道エネルギーを得ることができる。
上記Tight−Binding量子分子動力学計算による最高被占分子軌道準位および最高被占分子軌道−最低空分子軌道バンドギャップが誤差範囲内にない場合は、誤差範囲内に入るように上記Tight−Binding量子分子動力学計算に用いる入力パラメータの修正を行う。未知の材料特性の予測を目的とする場合は、一分子モデルにおいてDFT計算により最高被占分子軌道準位を計算して、つづいてTD−DFT(時間依存密度汎関数)計算により電子が最低励起1重項状態(S1)への励起する励起エネルギーをバンドギャップと定義して計算しておく。その後、上記Tight−Binding量子分子動力学計算により得られた最高被占分子軌道準位、最低空分子軌道準位、および最高被占分子軌道−最低空分子軌道バンドギャップが、DFT計算により得られた一分子モデルの最高被占分子軌道準位およびS1励起エネルギーにそれぞれ合うように上記Tight−Binding量子分子動力学計算に用いる入力パラメータを繰り返し修正する。
なお、密度汎関数計算には、基底関数として6−31G(d)、6−31G(d,p)、6−311G(d,p)またはLanL2DZのいずれかを用い、キーワードにB3LYPまたはB3PW91を用いることができる。これらの手法はあくまでも実測データが存在するものか、またはDFTで計算可能なモデルに限られるものであり、それ以外のモデルに対してはTight−Binding量子分子動力学計算の初期入力パラメータを採用する。
なお、密度汎関数(DFT)法計算の代わりに非経験的分子軌道計算法を用いることもできる。非経験的分子軌道計算法を用いる際には、ハートリー・フォック(HF)法、MP2、MP4法またはQCISD法を採用することができる。また、基底関数としては、6−31G(d)、6−31G(d,p)、6−311G(d,p)またはLanL2DZのいずれかを用いて計算した結果をもとにTight−Binding量子分子動力学計算に用いる入力パラメータを繰り返し修正する。
つぎにColors−Exciteで構造最適化した上記モデルについて、最高被占分子軌道から最低空分子軌道に1電子励起した励起状態の軌道エネルギーを計算する。このとき、正孔及び電子が最高被占分子軌道と最低空分子軌道に一つずつ占有した状態であり、最高被占分子軌道に正孔が存在し、最低空分子軌道に電子が存在している状態を考えている。つまり、最高被占分子軌道から下の準位について正孔移動度を考え、最低空分子軌道から上の準位について電子移動度を考えている。
次に最高被占分子軌道から最低空分子軌道に1電子励起した励起状態において、モンテカルロ法によりキャリアの移動のしやすさを評価する。このとき分子モデルを入れているセルを適当な数の領域に分割して評価区間を指定する。正孔または電子は電子密度の高い領域を通って移動するので、各軌道においてキャリアが移動する確率をモンテカルロ法によって計算する。キャリアが移動する確率とは、試行回数に対する移動回数を指し、これを評価指数Aとする。さらにキャリア数Nはフェルミ分布に従うものとして、各軌道におけるキャリア数Hを算出する。評価指数Aと各軌道におけるキャリア数Hを掛け合わせたものが電気伝導度の評価指数σになる。
なお、電気伝導度は次の式(1)で表される。
ここでσは電気伝導度、Nはキャリア数、μは移動度、Qとqは電荷素量(1.602×10−19C)である。pとnはそれぞれ正孔濃度、電子濃度を示している。また式(1)によると、電気伝導度は正孔移動度μと電子移動度μに関する項の和で表すことができる。そこで、最高被占分子軌道から下の準位におけるσが正孔移動だけを考慮した電気伝導度σ、最低空分子軌道から上の準位におけるσが電子移動だけを考慮した電気伝導度σと定義した場合、σとσは次の式(2)および式(3)で表される。
正孔移動度μを算出する場合、モンテカルロ法から計算した電気伝導度σに対して単位体積当たりの正孔移動度の評価指数σ を用いると、式(2)および(3)は次の式(4)および(5)となる。
正孔濃度p(cm−3)はセル体積の逆数として、単位体積当たりの正孔移動度μ’は式(4)から見積もることができる。単位体積当たりの電子移動度μ’を算出する場合も同様に見積もることができる。単位体積当たりの正孔移動度の評価指数を用いるのはモデルによってセルの大きさやモンテカルロ法で計算する評価区間が異なることがあるからである。さらに、ここでσ もあくまでも指標であるので、実測の移動度データに合った値に換算する必要がある。そこでTOF測定等による既知である材料の例えば正孔移動度のデータと本計算における単位体積当たりの正孔移動度の評価指数σ を換算に用いる。従って、換算値のパラメータaを導入し、式(4)を次の式(6)のように書き換える。
ここでμ(p)が求める正孔移動度である。なお、電子移動度も同様にパラメータbを導入し、式(5)を次の式(7)のように書き換えることができる。
ここでμ(n)が求める電子移動度である。
以上のようにして、正孔移動度及び電子移動度をシミュレーションにより求めることができる。したがって、これまで測定できなかった有機材料からなる膜及び無機材料からなる膜などのキャリア移動度を求めることが可能となる。
有機エレクトロルミネセンス素子の場合、陽極と陰極の間に挟まれる発光材料を含む層、つまり、正孔輸送、正孔注入、電子輸送、電子注入、発光などの各機能を有する層に用いる物質に本発明に係る計算方法を適用して、各物質のキャリア移動度を予測することが可能となる。
正孔注入層は陽極と正孔輸送層の間に設けられる層である。正孔注入層としては有機化合物と金属酸化物の混合層を用いることができる。
金属酸化物としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化マンガン、酸化レニウムを用いることができる。
有機化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス{N−[4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル]−N−フェニルアミノ}ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N,N−ジ(m−トリル)アミノ]ベンゼン(略称:m−MTDAB)、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)等のアリールアミノ基を有する有機材料や、フタロシアニン(略称:HPc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)等を用いることができる。
正孔輸送層は、陽極と発光層との間に設けられる層である。また、正孔注入層が設けられている場合には、正孔注入層と発光層との間に設けられる。
正孔輸送層としては、例えば、NPBやTPD、TDATA、MTDATA、BSPB(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)ベンジジン)などの芳香族アミン(即ち、ベンゼン環−窒素の結合を有する)の化合物からなる層を用いることができる。
発光層は陽極と陰極の間に設けられる層である。また、正孔輸送層や電子輸送層が設けられる場合には、正孔輸送層と電子輸送層との間に設けられる。発光層として機能する層には大きく分けて2つの態様があり、一つは発光中心となる発光材料(ドーパント材料)の有するエネルギーギャップよりも大きいエネルギーギャップを有する材料(ホスト材料)からなる層に発光材料を分散するホスト−ゲスト型の層である。もう一つは発光材料のみで発光層を構成する層である。発光中心となる発光材料としては、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJT)、4−ジシアノメチレン−2−tert−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−イル)エテニル)−4H−ピラン、ペリフランテン、2,5−ジシアノ−1,4−ビス[2−(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル)ベンゼン、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、クマリン6、クマリン545T、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、9,9’−ビアントリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)や9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2,5,8,11−テトラ−(tert−ブチル)ペリレン(略称:TBP)、PtOEP、Ir(ppy)、BtpIr(acac)、FIrpic等が挙げられる。また、上記発光材料を分散してなる層を形成する場合に母体となるホスト材料としては、9,10−ジ(2−ナフチル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)等のアントラセン誘導体、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)等のカルバゾール誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)、ビス[2−(2’−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp)、ビス[2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))などの金属錯体等を用いることができる。また、発光材料のみで発光層を構成することのできる材料としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)などがある。
電子輸送層は発光層と陰極との間に設けられる層である。また、電子注入層が設けられる場合には、発光層と電子注入層との間に設けられる。電子輸送層としては、例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる層を用いることができる。また、この他にもビス[2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−ビフェニリル)(−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。
電子注入層は陰極と電子輸送層との間に設けられる層である。電子注入層としては、例えば、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属の化合物を用いることができる。また、この他、電子輸送性を有する物質にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有させたもの、例えばAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いることができる。
無機エレクトロルミネセンス素子の場合、発光材料を含む層に蛍光体粒子を分散剤として分散したものを用いることができる。
蛍光体として、例えば、ZnSにCu(銅)とともにCl(塩素)、I(ヨウ素)、Alなどのドナー性不純物を添加したものを用いることができる。
分散剤としては、例えば、シアノエチルセルロース系樹脂のように、比較的誘電率の高いポリマーや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ化ビニリデンなどの樹脂を用いることができる。これらの樹脂に、BaTiO(チタン酸バリウム)やSrTiO(チタン酸ストロンチウム)などの高誘電率の微粒子を適度に混合して誘電率を調整したものを用いることもできる。
発光材料を含む層と電極との間には誘電体層を隣接してもよく、誘電体層としては金属酸化物、窒化物から選択され、例えばTiO、BaTiO、SrTiO、PbTiO、KNbO、PbNbO、Ta、BaTa、LiTaO、Y、Al、ZrO、AlON、ZnSなどが用いられる。
以上、上記した物質に本発明に係る計算方法を適用し、各物質のキャリア移動度を予測して求めることができる。もちろん、ここに列挙した物質に限ることなく、キャリア移動度を定量的に考慮した新規物質の設計も可能となる。したがって、本発明に係る計算方法を適用して作製された電荷輸送層、電荷注入層、発光層を有する発光素子は、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。
本実施例では、キャリア移動度が既知である有機エレクトロルミネセンス材料の4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(以下、NPBと呼ぶ。)または4,4’−ビス(N−{4−[N,N−ビス(3−メチルフェニル)アミノフェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(以下、DNTPDと呼ぶ。)を用いて、キャリア移動度が未知であるNPBと酸化モリブデンの複合膜又はDNTPDと酸化モリブデンの複合膜の正孔移動度及び電子移動度を求めるために本発明に係る計算方法を適用した例を述べる。もちろん本実施例に示す上記材料に限定されず他の有機エレクトロルミネセンス材料にも本発明に係る計算方法は適用することができ、さらに、金属、無機半導体、有機半導体、絶縁体などの材料にも適用できる。
正孔輸送材料であるNPBと酸化モリブデンとの共蒸着により成膜された有機−無機複合膜の電流−電圧特性はNPB単膜よりも優れている。両者の電流−電圧曲線を比較すると、NPBと酸化モリブデンの複合膜の方がNPB単膜よりも電荷注入が著しく優れている。その理由を解明するため、キャリア移動度を計算した。
ここでは、NPBと酸化モリブデンとの複合膜およびDNTPDと酸化モリブデンとの複合膜について、Tight−Binding量子分子動力学計算ソフトウェアColors−Exciteとモンテカルロ法を用いて正孔移動度を計算した例について説明する。
まず、NPBの最高被占分子軌道と最低空分子軌道をColors−Exciteにより計算した。図1はNPB2分子を2.136nm×2.146nm×2.500nmのセルに入れたものを分子動力学計算でエネルギーを緩和したモデルである。NPBの長軸方向が互いに平行に配向したモデルである。図2にこのモデルにおける状態密度図を示す。図2では、C原子のs軌道およびp軌道、N原子のs軌道およびp軌道、H原子のs軌道の状態密度(The Density of States:DOS)を示している。密度汎関数計算により最高被占分子軌道準位および最低空分子軌道準位がそれぞれ−5.36eVおよび−2.33eVという値が得られた。
次に、大気中光電子分光(AC−2:理研計器(株)社製)によりNPBの最高被占分子軌道準位を見積もり、UV−visスペクトルの吸収端よりバンドギャップを見積もることができたので、これらの実測データを密度汎関数計算結果が妥当であるかどうかの判断材料とした。最高被占分子軌道準位および最低空分子軌道準位の実測値は−5.38eVおよび−2.32eVであった。計算値は実測値とは±0.2eVの範囲内に収まり極めて良い一致を示している。
図3にNPBと酸化モリブデンの複合膜のモデルを示す。図3の複合膜モデルは、NPBと酸化モリブデンを2.136nm×2.146nm×2.500nmのセルに入れ、MoO(100)面にNPBが吸着した界面モデルであり、分子動力学計算でエネルギーを緩和したものである。図4はこのモデルにおける状態密度(DOS)をO原子のp軌道、Mo原子のs軌道、p軌道およびd軌道、C原子のp軌道、H原子のs軌道について示している。Colors−Excite(Tight−Binding量子分子動力学計算ソフトウェア)計算により、最高被占分子軌道と最低空分子軌道間のバンドギャップはNPBに比較して極めて小さいことがわかった。また、この計算から得られた分子軌道の一部を図5に示す。図5では、最高被占分子軌道準位の一つ下の軌道(以下、HOMO−1と記載)、最高被占分子軌道(HOMO)、最低空分子軌道(LUMO)、最低空分子軌道の一つ上の軌道(以下、LUMO+1と記載)の4つの軌道について示した。
図3に示したNPBと酸化モリブデンの複合膜の界面モデルの最高被占分子軌道から最低空分子軌道に1電子励起した励起状態において、モンテカルロ法によりキャリアの移動する確率を計算した。正孔は電子密度の高い領域を通って移動する。実際にはNPBの電子密度の高い領域のつながりを考え、単位体積を0.05nm×0.05nm×0.025nmに設定し、これを1メッシュとした。さらに評価区間として始点と終点を決定し、その間でキャリアの移動のしやすさを評価した。キャリア移動度の評価指数Aとして試行回数100万回に対する移動回数を軌道ごとに計算した。さらにキャリア数Nはフェルミ分布に従うものとして、各軌道におけるキャリア数Hを算出した。これらの計算結果を表1に示す。
表1にはNPBと酸化モリブデンの複合体の界面モデルの最高被占分子軌道から最低空分子軌道に1電子励起した励起状態における分子軌道の番号、軌道エネルギー準位、占有電子数、移動度の評価指数Aを示している。このとき分子軌道は温度300Kで計算し、移動度を評価する軌道は、エネルギー準位が最高被占分子軌道のエネルギー準位から−0.3eVの範囲と、エネルギー準位が最低空分子軌道のエネルギー準位から+0.3eVの範囲にあるものとした。表1では、分子軌道の番号が最高被占分子軌道−2から最低空分子軌道+2までの軌道について示している。基準エネルギー準位Cを最高被占分子軌道準位にとり、フェルミ準位Dは各軌道エネルギー準位Bと基準エネルギー準位Cの中間とし、各軌道エネルギー準位Bとフェルミ準位Dの差をエネルギー差Eとした。これらの値からフェルミ分布の値Fを算出した。各軌道のキャリア数Hは軌道の最大キャリア数Gに対するフェルミ分布より算出することができた。電気伝導度の評価指数σは移動度の評価指数Aと各軌道のキャリア数Hを掛け合わせた。
最高被占分子軌道から下の軌道について電気伝導度の評価指数σを足し合わせたものを正孔移動だけを考慮した電気伝導度σとして、3.065×10という値を得た。
次に上記のNPBと酸化モリブデンの複合体の界面モデルにおける正孔移動度だけを考慮した電気伝導度σを単位体積当たり正孔移動度の評価指数σ に換算し、(6)式を用いて正孔移動度μ(p)=5.14×10−4(cm/Vs)を求めた。ここで正孔濃度p(cm−3)はセル体積の逆数8.73×1019(cm−3)、電荷素量qは1.602×10−19(C)を用いた。パラメータaはNPBについて同様の計算で得られた単位体積当たりの正孔移動度の評価指数μ と実測の正孔移動度μ(p)の比を用いている。NPBの実測の正孔移動度μ(p)は1.00×10−4(cm/Vs)とした。NPBの電気伝導度計算の結果を表2に示す。
表2には、NPBと酸化モリブデンの複合体の界面モデルの場合と同様に求めたNPBの最高被占分子軌道から最低空分子軌道に1電子励起した励起状態における分子軌道の番号、軌道エネルギー準位、占有電子数、移動度の評価指数Aを示している。
また、上記のNPBと酸化モリブデンの界面モデルの基底状態(励起していない状態)およびNPBの基底状態(励起していない状態)についても同様に計算を行った。その結果をそれぞれ、表3および表4に示す。
また、同様に、NPB3分子とMo15のクラスター2個を1つのセルに入れた複合体モデルについても計算を行った。この複合体モデルについて、分子動力学計算でエネルギーを緩和したものを図6に示す。
図6に示した複合体モデルの状態密度(DOS)をTight−Binding量子分子動力学計算から求め、界面モデルの場合と同様に、300Kにおいて電子が遷移する可能性のある軌道として、エネルギー準位が最高被占分子軌道のエネルギー準位からから−0.2eVの範囲と、エネルギー準位が最低空分子軌道のエネルギー準位から+0.2eVの範囲にある軌道を選択した。また、セルの大きさは2.136nm×2.146nm×2.500nmの大きさのセルを上述した界面モデルと同じ数の領域に分割した評価区間と、正孔移動または電子移動のスタート地点とゴール地点を原子座標で指定した。その上で、モンテカルロ法によりキャリアの移動のしやすさを評価した。その結果を表5に示す。
なお、仮にNPBの実測の正孔移動度が未知である場合には、非経験的分子軌道法計算又は密度汎関数(DFT)法計算の結果を用いて半経験的分子軌道計算(Tight−Binding量子分子動力学計算ソフトウェアColors−Excite)を行い、得られた値を実測値の代わりに用いる。非経験的分子軌道法を用いる場合には、HF法、MP2、MP4法またはQCISD法を採用し、基底関数として6−31G(d)、6−31G(d,p)、6−311G(d,p)またはLanL2DZのいずれかを用いて計算した結果をもとに半経験的量子分子動力学計算法の初期条件を調整する。また、密度汎関数法を用いる場合には、基底関数として6−31G(d)、6−31G(d,p)、6−311G(d,p)またはLanL2DZのいずれかを用い、キーワードにB3LYPまたはB3PW91を用いて計算した結果をもとに半経験的量子分子動力学計算法の初期条件を調整する。
さらにDNTPDと酸化モリブデンの複合体についても同様の計算を行い、正孔移動度μ(p)=4.13×10−4(cm/Vs)という値を得、NPBと酸化モリブデンの複合体の方が正孔移動度が大きいと予測された。これは空間電荷制限電流領域における電圧−電流曲線の傾きから移動度がNPBと酸化モリブデンの複合膜のほうが大きいという実験結果と一致している。
本発明に係るキャリア移動度の計算方法は、有機エレクトロルミネセンス材料に限定されることなく、有機材料全般、有機金属錯体、無機材料、有機と無機の複合材料、半導体、絶縁体においても適用することが可能である。また、膜に限らず、液体においても適用することができる。さらに、本発明に係るキャリア移動度の計算方法は、対象物表面又は界面においても適用することができる。
NPB2分子を2.136nm×2.146nm×2.500nmのセルに入れ、分子動力学計算で緩和したモデル図。 NPB2分子モデルのTight−Binding量子分子動力学計算による状態密度(DOS)を示す図。 NPBと酸化モリブデンの複合体を2.136nm×2.146nm×2.500nmのセルに入れ、分子動力学計算で緩和したモデル図。 NPBと酸化モリブデンとの複合体のTight−Binding量子分子動力学計算による状態密度(DOS)を示す図。 NPBと酸化モリブデンの複合体の分子軌道を示す図。 NPBと酸化モリブデンの複合体を2.136nm×2.146nm×2.500nmのセルに入れ、分子動力学計算で緩和したモデル図。

Claims (6)

  1. 半経験的量子分子動力学計算法により、第1の膜及び第2の膜の電子密度を計算し、
    最高被占分子軌道から最低空分子軌道に電子が一つ励起された励起状態について、前記第1の膜及び第2の膜の正孔又は電子が移動する確率をモンテカルロ法によって求め、
    前記確率を評価指数として、前記第1の膜の正孔移動度及び電子移動度の実測値と、前記第1の膜の評価指数との比からパラメータを算出し、
    前記パラメータと、前記第2の膜の評価指数と、正孔濃度又は電子濃度と、電荷素量とを用いて下記式(1)より前記第2の膜の正孔移動度又は電子移動度を求めることを特徴とするキャリア移動度の計算方法。
  2. 請求項1において、
    前記第1の膜及び前記第2の膜は、有機エレクトロルミネセンス素子の電荷注入層、電荷輸送層、及び発光層のいずれか一を構成する分子膜であることを特徴とするキャリア移動度の計算方法。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    前記半経験的量子分子動力学計算法で得られた前記第1の膜及び前記第2の膜の最高被占分子軌道準位、最低空分子軌道準位、及び該最高被占分子軌道と該最低空分子軌道とのバンドギャップが、実測値又は第一原理計算法により得られた値についてそれぞれ−0.2eV以上0.2eV以下、−0.2eV以上0.2eV以下、−0.1eV以上0.1eV以下の誤差範囲に入るように前記半経験的量子分子動力学計算法の初期条件を決定することを特徴とするキャリア移動度の計算方法。
  4. 請求項3において、
    前記第一原理計算法として、非経験的分子軌道法又は密度汎関数法を用いることを特徴とするキャリア移動度の計算方法。
  5. 請求項4において、
    前記非経験的分子軌道法として、ハートリー・フォック法、電子相関を考慮に入れた二次摂動法(MP2)、電子相関を考慮に入れた四次摂動法(MP4)、又は電子相関及び励起状態を考慮に入れた電子配置間相互作用を求める方法(QCISD法)を採用し、基底関数として6−31G(d)、6−31G(d,p)、6−311G(d,p)、またはLanL2DZのいずれかを用いて、前記半経験的量子分子動力学計算法の初期条件を調整することを特徴とするキャリア移動度の計算方法。
  6. 請求項4において、
    前記密度汎関数法を用いた計算において、基底関数として6−31G(d)、6−31G(d,p)、6−311G(d,p)、またはLanL2DZのいずれかを用いて、前記半経験的量子分子動力学計算法の初期条件を調整することを特徴とするキャリア移動度の計算方法。
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