以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る車両制御装置10は、自車両に搭載されたナビゲーションシステム12及びGPS14と、ドライバが自車両を操作したときの操作状態としてのハンドル操舵角を検出する操舵角センサ16と、車両運動特性の設定を切り替えるための切り替えスイッチ18と、ナビゲーションシステム12からの電子地図データ、GPS14からの出力、操舵角センサ16からの出力、及び切り替えスイッチ18のオンオフに基づいて、自車両の車輪側部材と車体側部材との間に配置されたサスペンション22の減衰特性及びばね力を制御すると共に、自車両の前後輪の各々の操舵角を独立して制御するための操舵アクチュエータ24の各々の作動を制御するコンピュータ20とを備えている。
切り替えスイッチ18は、車両運動の特性としての穏やかさの複数の度合いに対応して、複数のスイッチを備えており、ドライバの意思に応じて、何れかのスイッチがオンされることにより、対応する穏やかさの度合いが、車両運動の特性として入力される。切り替えスイッチ18は、例えば、穏やかさの度合いが低い特性を示す「かっちり」に対応するスイッチ、穏やかさの度合いが高い特性を示す「穏やか」に対応するスイッチ、及び穏やかさの度合いが標準である特性を示す「ノーマル」に対応するスイッチを備えている。なお、切り替えスイッチ18のオンオフ状態は、本発明における操作状態に対応する。
サスペンション22は、自車両の4輪の各々について設けられ、図2に示すように、可変ショックアブソーバ30と、アクティブスタビライザ(図示省略)と、エアスプリング32とを備えている。
可変ショックアブソーバ30は、左右前後の各車輪に連結されたロアアームLAと車体側部材との間にそれぞれ介装されていて、シリンダ34の下端にてロアアームLAに連結されるとともに、シリンダ34に上下動可能に挿入されたピストンロッド36の上端にて車体側部材に固定されている。エアスプリング32は、可変ショックアブソーバ30と並列に設けられている。ロアアームLAは、アッパアーム、ナックル等と共に車体に左右前後の各車輪を連結するためのリンク機構を構成している。
可変ショックアブソーバ30のシリンダ34は、その内周面上を液密的に摺動するピストン38により上下室R1、R2に区画されている。ピストン38には、可変絞り機構40が組み付けられている。可変絞り機構40は、その一部を構成するアクチュエータ42の作動により、絞り量が変更されてシリンダ34の上下室R1、R2間を連通させる連通路の開度を複数段階に切り換える。この切り換え段階に応じて、連通路の開度が大きくなると可変ショックアブソーバ30の減衰力がソフト側に設定され、連通路の開度が小さくなると可変ショックアブソーバ30の減衰力がハード側に設定される。
エアスプリング32は、空気圧制御部44によって送給される圧縮空気によって、内部の空気圧が変化し、エアスプリング32のばね力が変化する。
コンピュータ20は、CPUと、RAMと、後述する車両制御処理ルーチンを実行するためのプログラムを記憶したROMとを備え、機能的には次に示すように構成されている。コンピュータ20は、ナビゲーションシステム12から得られる電子地図データ、及びGPS14から得られる自車両の走行位置に基づいて、走行路状態として、自車両の走行位置における走行路の形状を検出する走行環境検出部50と、操舵角センサ16から入力された操舵角信号に基づいて、操舵周波数を検出する操舵周波数検出部52と、走行環境検出部50によって検出された走行路の形状、操舵周波数検出部52によって検出された操舵周波数、及び切り替えスイッチ18のオンオフ状態に基づいて、目標車両運動の特性として、車両運動の穏やかさの度合いを設定する車両特性設定部54と、設定された目標車両運動の特性に応じて、車両運動のヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の位相差、及び横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差を決定する位相差決定部56とを備えている。
なお、ヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の位相差が、本発明における第1変化差に対応し、横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差が、本発明における第2変化差に対応する。
図3に示すように、車両運動の軸を重心から車両前方方向に向かってx軸、車両左方向に向かってy軸、鉛直上向きに向かってz軸としたときの各軸回りの回転角速度を各々ロール角速度、ピッチ角速度、ヨー角速度と定義する。
車両特性設定部54は、走行環境検出部50によって検出された走行路の形状に基づいて、高速道路のような直線路を走行していると判断される場合には、穏やかさの度合いが高くなるように目標車両運動の特性(ラグジュアリーな車両運動特性)を設定し、山道のような曲線路が連続する走行路を走行していると判断される場合には、穏やかさの度合いが低くなるように目標車両運動の特性(カッチリした車両運動特性又はスポーティな車両運動特性)を設定する。また、車両特性設定部54は、操舵周波数検出部52によって検出された操舵周波数に基づいて、操舵周波数が高く、ハンドル操作が頻繁に行われていると判断される場合には、穏やかさの度合いが低くなるように目標車両運動の特性を設定し、操舵周波数が低く、ハンドル操作が頻繁に行われていないと判断される場合には、穏やかさの度合いが高くなるように目標車両運動の特性を設定する。また、車両特性設定部54は、切り替えスイッチ18のうち「かっちり」に対応するスイッチがオン状態である場合には、穏やかさの度合いが低くなるように目標車両運動の特性を設定し、切り替えスイッチ18のうち「穏やか」に対応するスイッチがオン状態である場合には、穏やかさの度合いが高くなるように目標車両運動の特性を設定し、切り替えスイッチ18のうち「ノーマル」に対応するスイッチがオン状態である場合には、穏やかさの度合いが標準レベルになるように目標車両運動の特性を設定する。
ここで、本実施の形態における原理について説明する。ハンドル操舵時の車両応答において、図4(A)に示すようなヨー角速度(YR)の変化に対する横加速度(LA)の変化の時間差と、図4(B)に示すような横ジャーク(LJ)の変化に対するロール角速度(RR)の変化の時間差との組み合わせに関する適値を、官能評価実験により調べたところ、図5に示すような時間差の組み合わせの範囲に適値があることが分かった。なお、この実験は、0.5Hzの正弦波のハンドル操舵を想定して実施したものである。
上記図5に示す官能評価実験の結果より、サスペンション制御により車体のロール運動を制御する場合、横運動に対してどのような応答特性(横運動の変化に対するロール運動の変化の位相差又は時間差)を実現するかは、ヨー運動の変化に対する横運動の変化の位相差又は時間差との関係を考慮して決めることが必要であり、ヨー運動の変化に対する横運動の変化の位相差又は時間差との関係を考慮することでドライバにとって適切な車両運動を実現することができることがわかった。
また、図5に示す適値となる範囲において、これらの時間差の関係を変化させると、車両運動の特性が変わり、時間差の各々が小さいとかっちりとした車両運動になり、時間差の各々が大きくなるにつれて穏やかな車両運動になることが分かった。
そこで、本実施の形態では、位相差決定部56によって、図6(A)に示すような、目標車両運動の特性としての穏やかさの度合いが高くなるに従って、ヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の位相差が大きくなるように定めた、目標車両運動の特性と横加速度の変化の位相差との関係と、図6(B)に示すような、ヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の位相差が大きくなるに従って、横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差が単調に大きくなるように定めた、これらの位相差の関係とに基づいて、設定された目標車両運動の特性に対応する、ヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の位相差、及び横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差の各々を決定する。
例えば、車両運動の特性を穏やかにしたい場合には、ヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の位相差を大きく、かつ横加速度の変化に対するロール角速度の変化に対する位相差を大きくするように、これらの位相差を決定する。
また、上記図1に示すように、コンピュータ20は、決定されたロール角速度の変化の位相差に基づいて、サスペンション22の減衰特性及びばね力の目標値を設定する目標減衰特性ばね力設定部58と、設定された減衰特性及びばね力の目標値に基づいて、サスペンション22の減衰特性及びばね力を制御する減衰特性ばね力制御部60と、決定された横加速度の変化の位相差に基づいて、スリップ角ゲインの目標値を設定する目標ゲイン設定部62と、設定されたスリップ角ゲインの目標値と操舵角センサ16によって検出されたハンドル操舵角に基づいて、前後輪の各々の目標操舵角を算出する操舵角算出部63と、前後輪の各々の目標操舵角に基づいて、前後輪の各々に対応する操舵アクチュエータ24の作動を制御する操舵角制御部64とを備えている。
次に、サスペンション22の減衰力及びばね力の目標値を算出する原理について説明する。
まず、車体のロールに対する運動方程式は以下の(1)式で表わされる。
ここで、βは車体スリップ角であり、γはヨー角速度であり、φは車体ロール角である。また、Vは車速であり、gは重力加速度であり、msは車両のばね上質量であり、Iφはローリング慣性モーメントである。また、Ixzは慣性乗積であり、hsはばね上重心とロール軸との間の距離であり、Kφは、前後輪のサスペンション(懸架装置)のロール剛性の和であり、Cφは、前後輪の可変ショックアブソーバ30による単位ロール角速度あたりのモーメントの和である。
上記(1)において、慣性乗積は無視しうるほど小さく、車体のロールに対する重力の影響も小さいので無視すると、以下の(2)式が得られる。
ロール運動に対する運動方程式である上記(1)式へ上記(2)式を代入すると、以下の(3)式が得られる。
上記(3)式において、V(dβ/dt+γ)は、車体の横加速度であり、これをgyとし、上記(3)式をラプラス変換すると、以下の(4)式が得られる。
上記(4)式から、横加速度からロール角までの伝達関数が以下の(5)式で表される。
上記(5)式で表される伝達関数を用いることで、横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差を見積もることができる。逆に言えば、Cφ、Kφ、又はCφとKφとの双方を制御することにより、横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差を制御することができる。
本実施の形態では、上記(5)式を予め計算して、図7(A)に示すようなロール角速度の変化の位相差とCφとの関係を表わすマップ、及び図7(B)に示すようなロール角速度の変化の位相差とKφとの関係を表わすマップを用意しておき、決定された横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差を実現するためのKφ及びCφを各々求める。
そして、前後輪に対してどのようにばね力及び減衰特性を配分するかを決めておき、前輪のサスペンション22のばね定数の目標値を以下のように算出する。
例えば、ロール剛性を以下の(6)式で表される割合で前後輪に配分する場合について説明する。
(前輪):(後輪)=k:1−k (0<k<1) ・・・(6)
前輪の受け持つべきロール剛性Kφfは、以下の(7)式で算出される。
図8に示すように、前輪のサスペンション22のエアスプリング32間の距離がトレッドdfと等しく、かつ、左右のエアスプリング32のばね定数が等しいと仮定すれば、以下の(8)式が得られる。
また、φ<<1であるため、以下の(9)式が得られる。
上記(8)式、(9)式より得られる以下の(10)式に従って、前輪のサスペンション22のエアスプリング32のばね定数Ksfが算出される。
また、後輪のサスペンション22のエアスプリング32のばね定数についても、前輪のサスペンション22のエアスプリング32のばね定数と同様に算出される。
また、前輪のサスペンション22の可変ショックアブソーバ30の減衰係数Cafは、以下の(11)式により算出される。
ただし、Cφfは前輪の受け持つべき単位ロール角速度あたりのモーメントであり、
単位ロール角速度あたりのモーメントを以下の(12)式で表される割合で前後輪に配分する場合には、Cφfは以下の(13)式で表わされる。
(前輪):(後輪)=n:1−n (0<n<1) ・・・(12)
また、後輪のサスペンション22の可変ショックアブソーバ30の減衰係数についても、前輪のサスペンション22の可変ショックアブソーバ30の減衰係数と同様に算出される。
上記のように、目標減衰特性ばね力設定部58は、決定された横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差を実現するように、サスペンション22の減衰係数及びばね定数の目標値を算出して、算出した目標値を設定する。
減衰特性ばね力制御部60は、前輪及び後輪の各々の減衰係数の目標値に応じた制御量に従って、前輪及び後輪の各々のサスペンション22のアクチュエータ42を作動させて、前輪及び後輪の各々のサスペンション22の減衰特性を制御する。また、減衰特性ばね力制御部60は、前輪及び後輪の各々のばね定数の目標値に応じた制御量に従って、前輪及び後輪の各々のサスペンション22の空気圧制御部44を作動させて、前輪及び後輪の各々のサスペンション22のばね力を制御する。
次に、スリップ角ゲインの目標値を算出する原理について説明する。
まず、前後輪のアクティブ操舵が可能な車両の運動モデルは、以下の(14)式で表される。
ここで、mは、車両質量であり、Iは、ヨー慣性モーメントであり、lf、lrは、重心から前後車軸の各々までの距離である。Kf、Kfは、前後輪の各々のコーナリングパワーであり、δf、δrは、前後輪の各々の操舵角である。Vは車速であり、rはヨーレートであり、βは車体スリップ角であり、lはホイールベースである。
上記(14)式をラプラス変換し、ハンドル操舵角δに対する車体スリップ角β、ハンドル操舵角δに対するヨーレートr、ハンドル操舵角δに対する前輪操舵角δf、ハンドル操舵角δに対する後輪操舵角δrを用いて表すと、以下の(15)式が得られる。
上記(15)式より、目標となる車両特性β*(s)/δ(s)、r*(s)/δ(s)が与えられたとき、前後輪の各々の操舵角を、以下の(16)式で表わされる操舵則に従って制御すれば、目標となる車両特性が実現される。
上記(16)式のように、前後輪のアクティブ操舵が可能な車両では、実現可能な車両特性の自由度が高い。
ここで、ハンドル操舵角に対する車体スリップ角の目標車両特性、およびハンドル操舵角に対するヨーレートの目標車両特性を、以下の(17)式、(18)式で表される一次遅れ系として記述した場合について考える。
ここで、β0はスリップ角ゲインであり、r0はヨーレートゲインであり、τは定時数である。
このとき、ハンドル操舵角から横加速度までの伝達関数は、以下の(19)式で表される。
上記(18)式、(19)式より、スリップ角ゲインβ0を変えることで、ヨー運動に対する横運動の位相差を変えることができる。
そこで、目標ゲイン設定部62は、決定されたヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の位相差を実現するように、上記(18)式、(19)式に従って、スリップ角ゲインの目標値を算出して、算出した目標値を設定する。
操舵角算出部63は、設定されたスリップ角ゲインの目標値と、操舵角センサ16によって検出されたハンドル操舵角とに基づいて、上記(16)式に従って、前輪及び後輪の各々の目標操舵角を算出する。
操舵角制御部64は、算出した前輪及び後輪の各々の目標操舵角に基づいて、前輪及び後輪の各々の操舵アクチュエータ24を作動させて、前輪及び後輪の各々の操舵角を制御する。
次に、第1の実施の形態に係る車両制御装置10の作用について説明する。車両制御装置10を搭載した車両の走行中に、コンピュータ20において、図9に示す車両制御処理ルーチンが実行される。
まず、ステップ100において、ナビゲーションシステム12から得られる電子地図データとGPS14から得られる自車両の走行位置に基づいて、自車両の走行位置における走行路の状態を検出する。そして、ステップ102において、操舵角センサ16より検出されたハンドル操舵角に基づいて、操舵周波数を検出し、ステップ104において、切り替えスイッチ18のオンオフ状態を検出する。
そして、ステップ106において、上記ステップ100で検出された走行路の状態、上記ステップ102で検出された操舵周波数、及び上記ステップ104で検出された切り替えスイッチ18のオンオフ状態に基づいて、目標車両運動の特性として、穏やかさの度合いを設定する。次のステップ108では、上記図6(A)、(B)に示すような、目標車両運動の特性とヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の位相差と横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差との予め定められた関係に基づいて、上記ステップ106で設定された目標車両運動の特性に対応する、ヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の位相差、及び横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差の各々を決定する。
次のステップ110では、上記ステップ108で決定された横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差を実現するためのサスペンション22の減衰力を前後輪の各々に対して算出し、算出した前後輪の各々に対する減衰力を目標値として設定する。
また、ステップ112において、上記ステップ108で決定された横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差を実現するためのサスペンション22のばね力を、前後輪の各々に対して算出し、算出した前後輪の各々に対するばね力を目標値として設定する。
そして、ステップ114において、上記ステップ110で設定された減衰力の目標値に基づいて、前後輪の各々に対応するサスペンション22のアクチュエータ42を作動させて、サスペンション22の減衰力を制御すると共に、上記ステップ110で設定されたばね力の目標値に基づいて、前後輪の各々に対応するサスペンション22の空気圧制御部44を作動させて、サスペンション22のばね力を制御する。
次のステップ116では、上記ステップ108で決定されたヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の位相差を実現するためのスリップ角ゲインを算出し、算出したスリップ角ゲインを目標値として設定する。
そして、ステップ118において、操舵角センサ16より検出されたハンドル操舵角を取得し、ステップ120において、上記ステップ116で設定されたスリップ角ゲインの目標値と、上記ステップ118で取得したハンドル操舵角とに基づいて、前後輪の各々の目標操舵角を算出する。
次のステップ122において、上記ステップ120で算出された前後輪の各々の目標操舵角に基づいて、前後輪の各々に対応する操舵アクチュエータ24を作動させて、ステップ118へ戻る。
以上説明したように、第1の実施の形態に係る車両制御装置によれば、走行路状態、操舵周波数、又はドライバの意思に基づいて、車両運動の特性として車両運動の穏やかさの度合いを設定し、車両運動の穏やかさの度合いに応じて、ヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の位相差と、横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差とを、一方が大きくなるに従って他方が大きくなるように決定することにより、ドライバにとって快適な車両運動を実現することができる。
また、官能評価実験に基づいて、ヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の位相差と横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差との一方が大きくなるに従って他方が大きくなるように、これらの位相差を実現することにより、運転しやすさや車両の快適性を向上させることができ、ドライバにとって快適な車両運動を実現することができる。
また、ドライバの意思や操作状態、走行路状態にあった、ヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の位相差、及び横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差を設定することで、車両の操安性を向上させることができる。
次に、第2の実施の形態に係る車両制御装置について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
第2の実施の形態では、フィードバック制御を行って、サスペンションの減衰特性及びばね力と、前後輪の操舵角とを制御している点が、第1の実施の形態と主に異なっている。
図10に示すように、第2の実施の形態に係る車両制御装置210は、ナビゲーションシステム12と、GPS14と、操舵角センサ16と、切り替えスイッチ18と、自車両のロール角速度を検出するロール角速度センサ212と、自車両の横加速度を検出する横加速度センサ214と、自車両のヨー角速度を検出するヨー角速度センサ216と、ナビゲーションシステム12からの電子地図データ、GPS14からの出力、各センサからの出力、及び切り替えスイッチ18のオンオフに基づいて、サスペンション22の減衰特性及びばね力を制御すると共に、操舵アクチュエータ24の作動を制御するコンピュータ220とを備えている。
コンピュータ220は、走行環境検出部50と、操舵周波数検出部52と、車両特性設定部54と、位相差決定部56と、目標減衰特性ばね力設定部58と、決定されたロール角速度の変化の位相差及び横加速度センサ214より検出された横加速度に基づいて、ロール角速度の目標値を設定する目標ロール運動設定部250と、設定されたロール角速度の目標値とロール角速度センサ212により検出されたロール角速度との差を算出する減算器252と、減算器252により算出された値に基づいて、フィードバック制御を行うように、サスペンション22の減衰特性及びばね力の各々の目標値の修正値を算出するフィードバック制御部254と、サスペンション22の減衰特性及びばね力の各々の目標値に、各目標値の修正値を加算する加算器256と、減衰特性ばね力制御部60とを備えている。
目標ロール運動設定部250は、決定された横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差、及び検出された横加速度の変化に基づいて、検出された横加速度の変化に対して決定された位相差となるロール角速度を算出し、目標値として設定する。
フィードバック制御部254は、減算器252により算出された、ロール角速度の目標値と検出されたロール角速度との差に基づいて、ロール角速度センサ212からロール角速度の目標値が検出されるように、サスペンション22の減衰特性及びばね力の各々の目標値の修正値を算出する。
例えば、検出されたロール角速度がロール角速度の目標値よりも大きい場合、ロール剛性、あるいはロール減衰が不足していると考えることができるため、ばね力、あるいは減衰力を大きくするように、目標値の修正値を算出する。逆の場合には、ばね力、あるいは減衰力を小さくするように、目標値の修正値を算出する。
最も簡単な方法としては、ロール角速度の検出値とロール角速度の目標値との差に比例して、ばね力、あるいは減衰力を修正するように、目標値の修正値を算出する。
また、フィードバック制御部254は、加算器256によって、算出したサスペンション22の減衰特性及びばね力の各々の目標値の修正値を、設定されたサスペンション22の減衰特性及びばね力の各々の目標値に反映させて、フィードバック制御を行う。
また、上記図10に示すように、コンピュータ220は、目標ゲイン設定部62と、操舵角算出部63と、決定された横加速度の変化の位相差及び横加速度センサ214より検出された横加速度に基づいて、ヨー角速度の目標値を設定する目標ヨー運動設定部258と、設定されたヨー角速度の目標値とヨー角速度センサ216により検出されたヨー角速度との差を算出する減算器260と、減算器260により算出された値に基づいて、フィードバック制御を行うように、前後輪の操舵角の各々の目標値の修正値を算出するフィードバック制御部262と、前後輪の操舵角の各々の目標値に、各目標値の修正値を加算する加算器264と、操舵角制御部64とを備えている。
目標ヨー運動設定部258は、決定されたヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の位相差、及び検出された横加速度の変化に基づいて、検出された横加速度の変化に対して決定された位相差となるヨー角速度を算出し、目標値として設定する。
フィードバック制御部262は、減算器260により算出された、ヨー角速度の目標値と検出されたヨー角速度との差に基づいて、ヨー角速度センサ216からヨー角速度の目標値が検出されるように、前後輪の操舵角の各々の目標値の修正値を算出する。
例えば、検出されたヨー角速度がヨー角速度の目標値よりも小さい場合、前輪の舵角を大きくする、あるいは後輪の蛇角を小さくするように、目標値の修正値を算出する。逆の場合には、前輪の舵角を小さくする、あるいは後輪の蛇角を大きくするように、目標値の修正値を算出する。
最も簡単な方法としては、ヨー角速度の検出値とヨー角速度の目標値との差に比例して、前輪、あるいは後輪の蛇角を修正するように、目標値の修正値を算出する。
また、フィードバック制御部262は、加算器264によって、算出した前後輪の操舵角の各々の目標値の修正値を、算出された前後輪の操舵角の各々の目標値に反映させて、フィードバック制御を行う。
次に、第2の実施の形態に係る車両制御処理ルーチンについて図11を用いて説明する。なお、第1の実施の形態と同様の処理について同一符号を付して詳細な説明を省略する。
まず、ステップ100において、自車両の走行位置における走行路の状態を検出し、ステップ102において、操舵周波数を検出し、ステップ104において、切り替えスイッチ18のオンオフ状態を検出する。
そして、ステップ106において、目標車両運動の特性として、穏やかさの度合いを設定し、次のステップ108では、上記ステップ106で設定された目標車両運動の特性に対応する、ヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の位相差、及び横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差の各々を決定する。
そして、ステップ110では、上記ステップ108で決定された横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差を実現するためのサスペンション22の減衰力を前後輪の各々に対して算出して、目標値として設定する。また、ステップ112において、上記ステップ108で決定された横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差を実現するためのサスペンション22のばね力を、前後輪の各々に対して算出して、目標値として設定する。
そして、ステップ114において、前後輪の各々に対応するサスペンション22のアクチュエータ42を作動させて、サスペンション22の減衰力を制御すると共に、前後輪の各々に対応するサスペンション22の空気圧制御部44を作動させて、サスペンション22のばね力を制御する。
次のステップ116では、上記ステップ108で決定されたヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の位相差を実現するためのスリップ角ゲインを算出して、目標値として設定する。
そして、ステップ270では、ロール角速度センサ212、横加速度センサ214、及びヨー角速度センサ216の各々から出力された信号を取得する。次のステップ272において、上記ステップ108で決定された横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差と、上記ステップ270で取得した横加速度信号が示す横加速度の変化とに基づいて、ロール角速度の目標値を算出して設定する。
次のステップ274では、上記ステップ272で算出されたロール角速度の目標値と上記ステップ270で取得したロール角速度信号が示すロール角速度との差分値を算出する。
そして、ステップ276において、上記ステップ274で算出した差分値に基づいて、ロール角速度の目標値を実現するための、サスペンション22の減衰力及びばね力の各々の目標値の修正値を算出する。
ステップ278では、上記ステップ276で算出された減衰力及びばね力の各々の目標値の修正値を、上記ステップ110、112で算出された減衰力及びばね力の各々の目標値に反映させて、減衰力の目標値を修正した値に基づいて、前後輪の各々に対応するサスペンション22の減衰力を制御すると共に、設定されたばね力の目標値を修正した値に基づいて、前後輪の各々に対応するサスペンション22のばね力を制御する。
次のステップ118において、操舵角センサ16より検出されたハンドル操舵角を取得し、ステップ120において、上記ステップ116で設定されたスリップ角ゲインの目標値と、上記ステップ118で取得したハンドル操舵角とに基づいて、前後輪の各々の目標操舵角を算出する。
そして、ステップ280において、上記ステップ108で決定されたヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の位相差と、上記ステップ270で取得した横加速度信号が示す横加速度の変化とに基づいて、ヨー角速度の目標値を算出して設定する。
次のステップ282では、上記ステップ280で算出されたヨー角速度の目標値と上記ステップ270で取得したヨー角速度信号が示すヨー角速度との差分値を算出する。
そして、ステップ284において、上記ステップ282で算出した差分値に基づいて、ヨー角速度の目標値を実現するための、前後輪の操舵角の各々の目標値の修正値を算出する。
次のステップ286では、上記ステップ284で算出された前後輪の操舵角の各々の目標値の修正値を、上記ステップ120で算出された前後輪の各々の目標操舵角に反映させて、前後輪の各々の目標操舵角を修正した値に基づいて、前後輪の各々に対応する操舵アクチュエータ24を作動させて、ステップ270へ戻る。
以上説明したように、第2の実施の形態に係る車両制御装置によれば、フィードバック制御を行うことにより、決定されたヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の位相差と、決定された横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差とを精度よく実現することができる。
なお、上記の実施の形態では、横加速度をセンサによって検出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、車速や操舵角などの車両状態や操作状態から横加速度を推定するようにしてもよい。
また、上記の第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、ハンドル操舵角から操舵周波数を検出して、車両運動特性を設定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、操作状態として、アクセル操作及びブレーキ操作の切り替え(ペダルの踏み替え)を検出して、車両運動特性を設定するようにしてもよい。この場合には、アクセル操作及びブレーキ操作の切り替えが頻繁に行われていると、山道のようなコーナーが連続する場所を走行していると判断し、穏やかさの度合いが低くなるように車両運動の特性を設定すればよい。また、アクセル操作量やブレーキ操作量を検出して、車両運動の特性を設定するようにしてもよい。
また、自車両の走行状態として、車速センサや加速度センサからの信号を検出して、山道のようなコーナーが連続する場所を走行していると判断される場合に、穏やかさの度合いが低くなるように車両運動の特性を設定するようにしてもよい。
また、外気温や天候などの走行環境状態を検出して、車両運動の特性を設定するようにしてもよい。
また、設定された車両運動の特性に基づいて、ヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の位相差、及び横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差を決定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、ヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の時間差、及び横加速度の変化に対するロール角速度の変化の時間差を決定するようにしてもよい。この場合には、決定されたヨー角速度の変化に対する横加速度の変化の時間差が実現されるように、サスペンションの減衰特性やばね力を制御し、決定された横加速度の変化に対するロール角速度の変化の時間差が実現されるように、前後輪の各々の操舵角を制御すればよい。
また、サスペンションの減衰特性及びばね力を制御する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、決定された横加速度の変化に対するロール角速度の変化の位相差が実現されるように、サスペンションの減衰特性及びばね力の何れか一方のみを制御するようにしてもよい。例えば、サスペンションの減衰特性のみを制御する場合には、サスペンションのスプリングとして、通常のコイルスプリングを用いればよい。
また、ヨー角に関する状態量として、ヨー角速度を用いた場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、ヨー角に関する状態量として、ヨー角やヨー角加速度を用いて、サスペンション制御を行ってもよい。この場合には、ヨー角又はヨー角加速度の変化に対する横加速度の変化の位相差を推定すればよい。
また、車両横方向の運動を表わす物理量として、横加速度を用いた場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、車両横方向の運動を表わす物理量として、横位置や、横速度、横ジャークを用いて、サスペンション制御を行ってもよい。この場合には、ヨー角に関する状態量の変化に対する、横位置、横速度、又は横ジャークの変化の位相差を推定し、横位置、横速度、又は横ジャークの変化に対するロール角速度の変化の位相差を決定すればよい。
また、ロール角に関する状態量として、ロール角速度を用いた場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、ロール角に関する状態量として、ロール角やロール角加速度を用いて、サスペンション制御を行ってもよい。この場合には、横加速度の変化に対するロール角やロール角加速度の変化の位相差を決定すればよい。