JP5104221B2 - 浮き屋根式タンクにおける浮き屋根の過大応力予測方法 - Google Patents

浮き屋根式タンクにおける浮き屋根の過大応力予測方法 Download PDF

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本発明は、石油タンク等の貯蔵液体の上に浮き屋根を設けてなる形式の浮き屋根式タンクにて、タンク内部の貯蔵液体に生じるスロッシングに伴う浮き屋根の振動により該浮き屋根に作用する虞のある過大応力を予測するために用いる浮き屋根式タンクにおける浮き屋根の過大応力予測方法に関するものである。
気化する虞が比較的低い流体である原油や石油を貯蔵する大型のタンクとしては、浮き屋根式の貯蔵タンクが多く用いられている。図11はシングルデッキ形式の浮き屋根式タンクの一般的な構成を示すもので、基礎上に据え付けられた底板12と、該底板12の上側に立設された円筒状の側板13とからなる上部の開放されたタンク本体11を備え、更に、上記タンク本体11の内部に貯蔵された液体14の液面上に浮かべて使用する浮き屋根15を備えた構成としてある。上記浮き屋根15は、中央部のデッキ16の外周に、浮力を与えるためのポンツーン17を設けた構成としてある。18は上記浮き屋根15のデッキ16の上面における径方向所要間隔位置に補強のために設けたスチフナ、19は上記浮き屋根15の外周と上記側板13の内周面との隙間を埋めるためのシール機構、20は雨水の流入を抑えるためのウェザーシールドである。
ところで、地震発生時に、その地震波が上記浮き屋根式タンクのスロッシング周期成分を含む場合、上記浮き屋根式タンク内の貯蔵液体14にスロッシングが励起される。上記浮き屋根式タンク内の貯蔵液体14のスロッシングは、浮き屋根15のピッチング振動を引き起こし、このスロッシングによる浮き屋根15の振動は、地震の長周期成分に共振して大きく成長するため、従来、浮き屋根15の損傷が発生していたのが実状である。そのため、浮き屋根式タンクの浮き屋根15の損傷防止のための応力評価は重要な課題となっている。
上記浮き屋根式タンクの浮き屋根の応力評価を行う手法としては、線形理論に基づいて行う手法が従来提案されてきている。(たとえば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3参照)。
松井徹哉,「浮屋根式円筒液体貯槽の地震時スロッシング応答の解析解」,日本建築学会構造系論文集,2005年8月,第594号,p.167−173 松井徹哉,「シングルデッキ型浮屋根を有する円筒液体貯槽の地震時スロッシング応答」,日本建築学会構造系論文集,2006年9月,第607号,p.101−108 松井徹哉,「シングルデッキ型浮屋根を有する円筒液体貯槽の地震時スロッシング応答」,日本建築学会構造系論文集,2007年2月,第612号,p.87−94
ところが、浮き屋根式タンクの内部共振は、実際には非線形性によって起こるものである。そのために、上記非特許文献1、2、3に示された手法では、いずれも、スロッシングの非線形性を無視した線形理論に基づいて浮き屋根式タンクの浮き屋根の応力評価を行うようにしてあることに起因して、内部共振による過大応力発生を予測することが不可能であり、したがって、応力の過小評価となるため、安全側の設計ができないという問題がある。
そこで、本発明は、浮き屋根式タンクにおける浮き屋根の応力解析に際し、非線形性スロッシングの考えを導入できるようにして、浮き屋根式タンクの内部共振による過大応力の発生を予測することができるようにするための浮き屋根式タンクにおける浮き屋根の過大応力予測方法を提供しようとするものである。
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、
コンピュータにより、浮き屋根式タンクにおける浮き屋根を、軸対称な弾性シェル構造にモデル化して、シェルの変位を、
Figure 0005104221
と表し、浮き屋根とタンク本体の側板との間に設けてあるシール機構により、浮き屋根の外周でのr方向変位に対し、単位面積当たり、
Figure 0005104221
のばね力、及び、減衰力が浮き屋根の半径方向にそれぞれ作用するものとして、液体運動の作用が、
Figure 0005104221
であり、貯蔵液体の液圧が、
Figure 0005104221
であるときの変分計算を、
Figure 0005104221
とし、浮き屋根の運動を、円錐台シェル要素を用いた有限要素解析によって、節点iの変位ベクトルを、
Figure 0005104221
として各周方向波数成分に分解して表し、要素内変位成分を節点変位成分で表して、運動エネルギとポテンシャルエネルギを計算することにより、浮き屋根の作用積分の変分を、
Figure 0005104221
と表し、上記式(3)と式(5)とを加え合わせ、式(2)の液圧を代入した式を、
Figure 0005104221
とし、液体領域内での連続条件に対応するラプラス方程式を、
Figure 0005104221
とし、境界条件を、
Figure 0005104221
として、上記式(6)より、ガレルキン法により、未知の時間関数で一般化座標と呼ばれる展開係数に関する非線形常微分方程式を導くため、速度ポテンシャルを境界条件の式(8)を満たすラプラス方程式(7)の解として、
Figure 0005104221
と表し、浮き屋根の節点変位ベクトルを、各周方向波数成分ごとに、貯蔵液体と非接触時のモードで展開した形として、
Figure 0005104221
と表し、更に、一般化座標を用いて、浮き屋根の任意位置での貯蔵液体との界面での変位を、
Figure 0005104221
と表し、上記式(9)〜式(11)を変分原理の式(6)に代入して被積分関数を一般化座標の代数的非線形関数の形に表すことで、
Figure 0005104221
を導き、上記式(12)で、成り立つ関係式、
Figure 0005104221
を基に、周方向波数2のモードの固有振動数ω 2n の中に、周方向波数1で半径方向1次モードの固有振動数ω 11 の2倍のものがあり、且つ、上記周方向波数1で半径方向1次モードの固有振動数ω 11 の2倍の固有振動数を備えた周方向波数2のモードが、上記浮き屋根のポンツーンでの振動がデッキの振動より大きいという固有振動数解析による結果が得られる場合に、浮き屋根に対する内部共振による過大応力が発生するとして、該過大応力の発生予測を行うようにする方法とする。
更に、上記各構成において、浮き屋根についての非線形微分方程式を解くことにより、応力値を予測するようにする。
本発明の浮き屋根式タンクにおける浮き屋根の過大応力予測方法によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)浮き屋根式タンクにおける浮き屋根について、非線形性によって起こる内部共振によって浮き屋根に過大応力が発生することを予測できるようになる。したがって、従来、線形理論に基づいた浮き屋根式タンクの浮き屋根の応力評価で懸念されるような過小評価が生じる虞を未然に防止することができ、浮き屋根式タンクの浮き屋根について、安全側の設計を行うことができる。
(2)浮き屋根についての非線形微分方程式を解くことにより、応力値を予測するようにすることにより、浮き屋根式タンクにおける浮き屋根に発生する虞のある過大応力の応力値を求めることができるため、浮き屋根式タンクの浮き屋根について、安全側の設計をより確実に行うことが可能になる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
図1(イ)(ロ)乃至図10は本発明の浮き屋根式タンクにおける浮き屋根の過大応力予測方法の実施の一形態を示すものである。
ここで、先ず、本発明の導出に用いる解析モデルについて説明する。すなわち、図1(イ)(ロ)に示す解析モデルは、図11に示したと同様の構成としてある円筒形の浮き屋根式タンクを、該タンクの底板12の中心を原点とするxyz座標空間内に配置して、任意の周方向角φでの断面が示してある。
浮き屋根15は、中央部のデッキ16と、浮力を得るためにその周囲に設置された中空のポンツーン17とからなる構成とし、上記ポンツーン17の内リム17aの内周面における上下方向の所要高さ位置に、上記デッキ16の外周端部を連結するようにしてある。
図1(イ)におけるaは円筒形のタンク本体11の半径、hは静定平衡時の貯蔵液体14の深さである。又、図1(ロ)におけるbは浮き屋根15の半径、bはデッキ16の半径、bはポンツーン17の径方向の幅寸法、Hはポンツーン17の外リム17bの高さ寸法、Hはポンツーン17の内リム17aにおけるデッキ16取付位置から該内リム17aの上端までの上下方向寸法、Hはポンツーン17の内リム17aにおけるデッキ16取付位置から該内リム17aの下端までの上下方向寸法である。上記浮き屋根式タンクの詳細諸元については、後述する数値例題と共に示す。
上記浮き屋根15は、軸対称な弾性シェル構造としてモデル化し、シェルの変位を次のように表す。
Figure 0005104221
又、浮き屋根15とタンク本体11の側板13との間には、シール機構19(図11参照)が設けてあり、浮き屋根15の外周でのr方向変位に対し、単位面積当たり、
Figure 0005104221
のばね力、及び、減衰力が浮き屋根15の半径方向にそれぞれ作用するものとする。貯蔵液体14の液体運動は非圧縮完全流体の渦無し流れとし、タンクの側板13と底板12は剛体とする。
次に、上記構成としてある浮き屋根式タンクについて、以下に示すように、最初に、変分原理から基礎式を導き、次に、モード展開法によって非線形常微分方程式を導出する。
具体的には、液体運動の作用(ラグランジュアンの時間積分)は、単位体積当りのラグランジュアンが液圧に等しいことに基づき、次のように表される。
Figure 0005104221
貯蔵液体14の液圧は、流体力学の渦無し非定常流れに関する圧力方程式に基づき、速
度ポテンシャルを用いて次のように表される。
Figure 0005104221
上記式(2)を式(1)に代入し、浮き屋根15のz方向変位による液体領域の可変性に注意して変分計算を実行すると、下記のようになる。
Figure 0005104221
浮き屋根15の運動は、円錐台シェル要素を用いた有限要素解析によって定式化する。すなわち、先ず、節点iの変位ベクトルを、次のように各周方向波数成分に分解して表す。
Figure 0005104221
次に、要素内変位成分を節点変位成分で表し、運動エネルギとポテンシャルエネルギを計算することにより、浮き屋根15の作用積分の変分を次の形に表す。
Figure 0005104221
その後、基礎方程式の導出を行う場合は、上記式(3)と式(5)とを加え合わせ、式(2)の液圧を代入し、単位法線ベクトルや面積要素を円筒座標で表す。更に、地震加速度による慣性力とシール機構19(図11参照)による減衰力の浮き屋根FEM要素への仮想仕事を考慮すると、次のようになる。
Figure 0005104221
上記式(6)において、速度ポテンシャル、浮き屋根変位、任意時間関数の変分は、任意且つ独立であるから、これらの変分に関する係数がゼロ(0)となる条件が要求される。これらの要求条件が基礎方程式、境界条件を与える。すなわち、上記式(6)の第1項は、液体領域内での連続条件に対応するラプラス方程式
Figure 0005104221
である。
又、式(6)の第2項、第3項は、剛と仮定された貯蔵液体14とタンク本体11との境界面(側板13及び底板12)でその法線方向の流速がゼロになる境界条件
Figure 0005104221
である。
上記式(6)における第2行は、貯蔵液体14と浮き屋根15の境界面での双方の法線方向の振動速度が等しい条件である。第3行〜第6行は、液圧を受ける浮き屋根15の運動方程式、第7行における最後の項は、非圧縮性の仮定に基づく貯蔵液体14の体積一定条件である。なお、貯蔵液体14の体積一定条件は、他の運動学的境界条件より導けるので独立ではなく、これ以外の項を基礎式系を与える変分原理と見て以下の解析を進める。
モード展開法による非線形常微分方程式の導出を行う場合は、変分原理となる上記式(6)を、ガレルキン法により時間に関する常微分方程式に変換する。すなわち、未知量をモード関数で展開した形で表して式(6)に代入することにより、展開係数(未知の時間関数で一般化座標と呼ばれる)に関する非線形常微分方程式を導く。速度ポテンシャルを、境界条件の式(8)を満たすラプラス方程式(7)の解として次のように表す。
Figure 0005104221
なお、非線形性により周方向波数が1以外のモードも励起されるので、これらのモードを考慮した形に解を設定している。
浮き屋根15の節点変位ベクトルを、各周方向波数成分ごとに、貯蔵液体14と非接触時のモードで展開した形として以下のように表す。
Figure 0005104221
更に、上記一般化座標を用いて、浮き屋根15の任意位置での変位を表すことができる。たとえば、貯蔵液体14との界面での変位を次のように表す。
Figure 0005104221
式(9)〜式(11)を変分原理の式(6)に代入する際、液面の非線形境界条件を表す式(6)における第2行及び第4行に現れる速度ポテンシャルの項の界面上での値は、z=hの周りにテイラー展開し、式(11)を代入することによって算定する。このようにして被積分関数を一般化座標の代数的非線形関数(多項式)の形に表す。三角関数の周方向積分によって周方向波数1の一般化座標の変分に関する式に現れる非線形項は、周方向波数1の一般化座標3個の積、周方向波数1及び0の一般化座標の積、周方向波数1及び2の一般化座標の積等であり、周方向波数0,2の一般化座標の変分に関する式に現れる非線形項は、周方向波数1のモード座標2個の積等であることが分かる。このような考察により、第2近似解を得るためには周方向波数0,1,2のモードについて上述した積を考慮して方程式系を導けばよいことが分かり、これらの方程式系は、各周方向波数m=0,1,2について次の形に行列表示できる。
Figure 0005104221
なお、上記式(12)では、係数行列、非線形項の表記は省略してある。非線形項は長い式となり、導出には多大の労苦を要する。
上記式(12)で、クロネッカのデルタ記号δm1は、周方向波数1のモードのみが地震加速度によって直接励起されることを示す。他の周方向波数成分は、非線形項Gによってのみ励起される。すなわち、非線形項Gを考慮しない場合は、各周方向波数m=0,1,2に関する方程式は独立になり、右辺に加振項のある周方向波数1の成分のみが励起される。
更に、次の関係が成り立つ。
Figure 0005104221
すなわち、上記式(13)は、これら2つの固有振動数は、低次モードでは互いに近い値になることを意味する。
今、地震加速度が、ω11に共振し、周方向波数1、半径方向1次の一般化座標がsinω11t状に変動している場合を考えると、固有振動数が、ω0n,ω2nである周方向波数0,2の成分を励起する非線形項G,Gは、前述のように周方向波数1の一般化座標2個の積の形となるので、振動数2ω11の成分を含む。したがって、
ω0n=2ω11,ω2n=2ω11
の関係にあるときに、内部共振が生じることが分かる。内部共振は、このように、系内の状態変数によって表される非線形項の振動が、あるモードの線形固有振動数に共振する現象である。
次いで、上記のような非線形性に起因した内部共振による過大応力発生を、実機の一般形状に近い数値例題を用いてより具体的に検証する。
すなわち、図1(イ)(ロ)に示した如き構成としてある浮き屋根式タンクについて、3万〜4万キロリットルの実機の一般形状を想定して計算諸元を以下の表1のように設定する。
Figure 0005104221
以上の浮き屋根式タンクにおいて、スロッシングの減衰効果は、式(6)の液圧項に、
Figure 0005104221
を付加することにより導入した。
加振加速度は、周方向波数1、半径方向1次のスロッシングモードの共振点近くの3正弦波加振をx方向に作用させる設定とした。
Figure 0005104221
上記条件の下で、ポンツーン17の外リム17bの最下点に生じる鉛直方向変位を図2に示す。この図は、後で示す応力の応答がどの程度の浮き屋根変位に対して生じるかを見るための図である。図2における実線は非線形解析による結果を、又、破線は線形解析による結果をそれぞれ示している。これにより、非線形解析では、+z方向への変位振幅の方が、−z方向への変位振幅よりも大きくなり、その結果、+z方向への最大変位が、線形解析結果よりも大きくなることが確かめられる。
次に、応力の計算結果を示す。図3にFEMシェル要素の局所座標と応力の着目位置を示す如く、
s:シェル要素の子午線方向座標
ζ:厚さ方向座標
をデッキ16とポンツーン17の各部で定義し、面外(曲げ)応力を
次式により算出した
[(ζ=0.5hでの応力値)−(ζ=−0.5hでの応力値)]/2
ここで、
:板厚
である。
図3に示すAの位置での半径方向(子午線方向)の面外応力、及び、周方向の面外応力の時間応答を、図4(イ)及び(ロ)にそれぞれ示す。図4(イ)(ロ)において、実線は非線形解析による結果を、又、破線は線形解析による結果をそれぞれ示している。
図4(イ)(ロ)の結果から明らかなように、半径方向及び周方向のいずれにおいても、面外応力の非線形応答は、線形応答を大きく上回り、線形解析では過小評価となってしまうことが分かる。そこで、このような非線形性による過大応力発生の理由を、上述した内部共振との観点から調べる。
図5は、式(12)の右辺を0とした系の固有値解析によって定まるスロッシングと連成した浮き屋根15の固有振動数ωmn/2π(Hz)の値を、各周方向波数m及び半径方向次数nについて示すもので、
ω02=2ω11,ω22=2ω11
の関係が成り立っており、ω02とω22のモードが内部共振状態にあることが分かる。
そこで、非線形性による過大応力発生がどちらのモードの内部共振に起因するか調べるため、応力が大きくなった時刻での面外応力の周方向分布を調べた。
その結果を図6(イ)(ロ)に示す。図6(イ)及び(ロ)は、半径方向応力の結果及び周方向応力の結果をそれぞれ示している。又、図6(イ)(ロ)において、実線は非線形解析による結果を、破線は線形解析による結果をそれぞれ示している。
図6(イ)(ロ)より、半径方向応力及び周方向応力のいずれにおいても、線形応答では、周方向波数1(cosφ)のモードのみであるのに対し、非線形の場合には、周方向波数2(cos2φ)のモードが大きく励起され、過大応力の原因は、ω02ではなくω22のモードの内部共振であることが分かる。
このように、ω02ではなくω22のモードの内部共振が重要である理由について調べるため、ω02、ω22のモードに寄与する浮き屋根変位の固有モードを図7に示す。図7における実線は無変位時の浮き屋根15の位置であり、ω02のモードに寄与するモードの結果は一点鎖線で、又、ω22のモードに寄与するモードの結果は二点鎖線でそれぞれ示してある。図7より、ω02のモードに寄与するモード(一点鎖線)では、ポンツーン17(r≧18.9m)とその近くはほとんど変形していないことが明らかであるのに対し、ω22のモードに寄与するモード(二点鎖線)では、ポンツーン17が著しく歪むように変形しており、大きな応力を生じさせていることが明らかである。この理由は、ポンツーン17の構成要素のうち、円筒シェルである各リム17a,17bが、周方向波数0のモードでは軸対称変形であるため高い剛性を有するのに対し、周方向波数2のモードではポンツーン17の円環としてのねじれ剛性が低く、ねじれ変形することにあると考えられる。
周方向波数が0でなく2のモードが内部共振するときに過大応力が発生することを一般的に調べるためには、浮き屋根15の貯蔵液体14との界面での鉛直方向変位の固有モードを調べることが有効である。これらの固有モードの算出結果を図8(イ)(ロ)及び図9(イ)(ロ)に示す。pは、式(10)に関して述べたように、貯蔵液体14と非接触時の浮き屋根15の半径方向モード次数である。図8(イ)及び(ロ)は、周方向波数0のモードにおいて上記半径方向モード次数pを1〜3に変化させた場合、及び、半径方向モード次数pを4〜6に変化させた場合の結果をそれぞれ示す。又、図9(イ)及び(ロ)は周方向波数2のモードにおいて上記半径方向モード次数pを1〜3に変化させた場合、及び、半径方向モード次数pを4〜6に変化させた場合の結果をそれぞれ示す。
図8(イ)(ロ)より、周方向波数0のモードでは、p=1の剛体モードを除き、デッキ16(r<18.9m)の振動がポンツーン17(r≧18.9m)の振動より支配的であることが分かる。
これに対し、図9(イ)(ロ)より、周方向波数2のモードでは、ポンツーン17の振動が大きいモードが半径方向2次モードで生じていることが分かる。このモードがω22のモードの内部共振に際して大きく成長して大きな応力が発生すると考えられる。なお、周方向波数2のモードにおける他の半径方向モード次数では、周方向波数0の各モードと同様に、デッキ16の振動がポンツーン17の振動より支配的である。
このように、周方向波数2のモードには、ある半径方向次数でポンツーン17の振動が大きくなるモードが現れ、このモードが内部共振状態にあると過大応力が発生する。すなわち、内部共振状態にあるのが、単に周方向波数2のモードであるのではなく、ポンツーン17の振動が大きいタイプのモードである場合に、線形近似を大きく上回る過大応力が発生する。
なお、非線形性による内部共振について注意すべき点は、図4(イ)(ロ)のように、線形応答より大きな振動が長く持続することである。これは、周方向波数1のモードのみを含む線形応答が3波共振の正弦波加振が終了した後の時間範囲で徐々に減衰しているのと対照的である。この原因は、固有周波数ω22のモードの励起源となっている周方向波数1で半径方向1次のモードの2次非線形項が、3波共振の正弦波加振終了後もスロッシングの微弱減衰を反映して長く持続するため、固有振動数ω22のモードが、振動数
Figure 0005104221
の共振正弦波加振を受け続けている状態に近くなるためである。このように、非線形による内部共振が生じると、応力は、振幅が大きくなるだけでなく、振幅の持続時間が、持続の短い3波正弦波地震入力に対しても非常に長くなる。このため応力的に厳しい状態となる。
以上のことに鑑みて、本発明の浮き屋根式タンクにおける浮き屋根の過大応力予測方法は、浮き屋根15について、非線形性によって励起される周方向波数2のモードを考慮して非線形微分方程式を導き、周方向波数2のモードの固有振動数の中に、周方向波数1の半径方向1次モードの固有振動数の2倍のものがあり、且つ、上記周方向波数1の半径方向1次モードの固有振動数の2倍の固有振動数を備えた周方向波数2のモードが、浮き屋根15のポンツーン17での振動が大きいという性質を有していることを検知することで、内部共振による過大応力の発生を予測するようにする。
更に、上記非線形微分方程式を解くことにより、応力値を予測するようにする方法とする。
これにより、上記過大応力予測方法によれば、浮き屋根式タンクについて、非線形性によって起こる内部共振により浮き屋根15に過大応力が発生することを予測できるようになる。したがって、浮き屋根15に作用する応力の過小評価を未然に防止することができることから、上記浮き屋根15を含む浮き屋根式タンクについて、安全側の設計を行うことが可能となる。
上記過大応力予測方法により浮き屋根15に過大応力が発生することを予測できるという効果は、ω22のモードを除いて非線形解析を行うと、図10に例示するように、図10に実線で示す非線形応答が、破線で示す線形解を大きく上回る傾向が弱まることからも確認される。すなわち、図10では、図4(イ)に比較して、非線形応答が線形解を大きく上回る傾向は非常に弱まっている。このことから、本発明の有効性が明らかとなる。
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、表1に示した計算諸元は、浮き屋根の過大応力予測を所望する浮き屋根式タンクの形状に応じて適宜変更してもよいこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
本発明の浮き屋根式タンクにおける浮き屋根の過大応力予測方法の導出に用いた解析モデルを示すもので、(イ)は浮き屋根式タンクの概略切断側面図、(ロ)は浮き屋根の詳細形状を示す切断側面図である。 3正弦波加振によりポンツーンの外リムの最下点に生じる鉛直方向変位を示す図である。 浮き屋根のFEMシェル要素の局所座標と応力の着目位置を示す図である。 図3のAの位置での面外応力の時間応答を示すもので、(イ)は径方向応力の応答を、(ロ)は周方向応力の応答をそれぞれ示す図である。 周方向波数と半径方向次数を変化させた場合に固有値解析によって定まるスロッシングと連成した浮き屋根の固有振動数を示す図である。 応力が大きくなった時刻での面外応力の周方向分布を示すもので、(イ)は半径方向応力の結果を、(ロ)は周方向応力の結果をそれぞれ示す図である。 周方向波数0、半径方向次数2のモードと、周方向波数2、半径方向次数2のモードに寄与する浮き屋根変位の固有モードを示す図である。 周方向波数0の場合について浮き屋根の貯蔵液体との界面での鉛直方向変位の固有モードの算出結果を示すもので、(イ)は半径方向モード次数1〜3に変化させた場合を、(ロ)は半径方向モード次数4〜6に変化させた場合をそれぞれ示す図である。 周方向波数2の場合について浮き屋根の貯蔵液体との界面での鉛直方向変位の固有モードの算出結果を示すもので、(イ)は半径方向モード次数1〜3に変化させた場合を、(ロ)は半径方向モード次数4〜6に変化させた場合をそれぞれ示す図である。 本発明の有効性を検証するために、周方向波数2、半径方向次数2のモードを除いて非線形解析を行った結果を示す図である。 浮き屋根式タンクの一般的な構成を示す概略側面図である。
符号の説明
15 浮き屋根
17 ポンツーン

Claims (2)

  1. コンピュータにより、浮き屋根式タンクにおける浮き屋根を、軸対称な弾性シェル構造にモデル化して、シェルの変位を、
    Figure 0005104221
    と表し、浮き屋根とタンク本体の側板との間に設けてあるシール機構により、浮き屋根の外周でのr方向変位に対し、単位面積当たり、
    Figure 0005104221
    のばね力、及び、減衰力が浮き屋根の半径方向にそれぞれ作用するものとして、液体運動の作用が、
    Figure 0005104221
    であり、貯蔵液体の液圧が、
    Figure 0005104221
    であるときの変分計算を、
    Figure 0005104221
    とし、浮き屋根の運動を、円錐台シェル要素を用いた有限要素解析によって、節点iの変位ベクトルを、
    Figure 0005104221
    として各周方向波数成分に分解して表し、要素内変位成分を節点変位成分で表して、運動エネルギとポテンシャルエネルギを計算することにより、浮き屋根の作用積分の変分を、
    Figure 0005104221
    と表し、上記式(3)と式(5)とを加え合わせ、式(2)の液圧を代入した式を、
    Figure 0005104221
    とし、液体領域内での連続条件に対応するラプラス方程式を、
    Figure 0005104221
    とし、境界条件を、
    Figure 0005104221
    として、上記式(6)より、ガレルキン法により、未知の時間関数で一般化座標と呼ばれる展開係数に関する非線形常微分方程式を導くため、速度ポテンシャルを境界条件の式(8)を満たすラプラス方程式(7)の解として、
    Figure 0005104221
    と表し、浮き屋根の節点変位ベクトルを、各周方向波数成分ごとに、貯蔵液体と非接触時のモードで展開した形として、
    Figure 0005104221
    と表し、更に、一般化座標を用いて、浮き屋根の任意位置での貯蔵液体との界面での変位を、
    Figure 0005104221
    と表し、上記式(9)〜式(11)を変分原理の式(6)に代入して被積分関数を一般化座標の代数的非線形関数の形に表すことで、
    Figure 0005104221
    を導き、上記式(12)で、成り立つ関係式、
    Figure 0005104221
    を基に、周方向波数2のモードの固有振動数ω 2n の中に、周方向波数1で半径方向1次モードの固有振動数ω 11 の2倍のものがあり、且つ、上記周方向波数1で半径方向1次モードの固有振動数ω 11 の2倍の固有振動数を備えた周方向波数2のモードが、上記浮き屋根のポンツーンでの振動がデッキの振動より大きいという固有振動数解析による結果が得られる場合に、浮き屋根に対する内部共振による過大応力が発生するとして、該過大応力の発生予測を行うようにすることを特徴とする浮き屋根式タンクにおける浮き屋根の過大応力予測方法。
  2. 浮き屋根についての非線形微分方程式を解くことにより、応力値を予測するようにする請求項1記載の浮き屋根式タンクにおける浮き屋根の過大応力予測方法。
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