JP5103187B2 - バソプレッシン結合性のl体核酸 - Google Patents

バソプレッシン結合性のl体核酸 Download PDF

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Description

本発明は核酸に関するものであって、前記核酸の薬剤および診断薬の製造のための使用、核酸とバソプレッシンから形成される複合体、およびバソプレッシンの拮抗薬と作動薬のスクリーニングのための方法に関する。
ヒトのバソプレッシンは、(Arg)−バソプレッシン(AVP)、もしくは抗利尿ホルモン(ADH)としても知られており、そしてオキシトシンと同様に環状で9個のアミノ酸からなるペプチドホルモンである。これらは神経ホルモンであり、視床下部において産生されたのち、前駆タンパクからプロセッシングされる。当該ホルモンが由来する同じ前駆タンパクからプロセッシングされた10kDaの担体タンパクに結合し、細胞内輸送を経て脳下垂体後葉へ移動し、脳下垂体後葉で蓄えられ、そして、適切な刺激の後、血流へ分泌される。AVPは 、アミノ端から開始して、Cys−Tyr−Phe−Gln−Asn−Cys−Pro−Arg−Gly−NH(配列番号1)の配列を持ち、1085Daの分子量を持つ。オキシトシンはAVPと3番目(Ile)および8番目(Lys)でのみ配列が違い、1007Daの分子量を持つ。視床下部と脳下垂体後葉から離れて、AVPおよびオキシトシンは脳の他の部位のニューロンにもまた局在する。その一方で、これらの分子の神経伝達物質としての役割も確認されてきた(非特許文献1および2)。
末梢において、このペプチドホルモンは特異的な受容体に結合することによって生理作用を示し、前記特異的な受容体はすべてG蛋白質共役型7回膜貫通へリックス受容体の大きなファミリーに由来するが、薬理学的特性はならびに前記受容体の細胞内の2次メッセンジャーは異なっている(非特許文献3および4)。
AVPの主な生理学的機能は腎臓での自由水の吸水の調節にあり、それゆえに体液および血液容量のオスモル濃度の維持にある。抗利尿作用の根底にある機序は、AVPが集合管の上皮細胞の基底外側に発現している腎臓のV受容体に結合することが媒介する。受容体にAVPが結合した後、GたんぱくであるGsが細胞内で結合し、このことによってアデニリル・シクラーゼが活性化し、2次メッセンジャーであるcAMPが合成される。これに続いてプロテインキナーゼAが活性化され、これによって蛋白質をリン酸化し、結果的にアクアポリン−2水チャンネル(AQP−2)が上皮細胞の集合管に面した細胞膜に組み込まれることが最初に起こる。次に、AQP−2のmRNAの転写およびこの蛋白質の生合成が誘導される(非特許文献5)。細胞膜のAQP−2は尿から有機的組織体への水の吸収を導く。この結果、尿量が減少し、尿のオスモル濃度が上昇する。吸収機構がなければ水の喪失によって非常に短期間で脱水症状および死を生命体にもたらす。AVPが腎臓のV受容体に結合する際の解離定数は0.4nMである(非特許文献6)。
AVPの別の生理学的機能の大部分はV受容体への結合が媒介する。血管の血管平滑筋細胞の表面に局在する血管V受容体は、血管筋細胞による筋収縮に続いて起こる血管収縮による血圧の調整に必要とされる。ホスホリパーゼC、D、およびAは、受容体の結合と共役するGタンパクの活性化の結果、2次メッセンジャーであるジアシルグリセロールとイノシトール三リン酸.を生じる。同時に様々なプロテインキナーゼが活性化され、結果として細胞内カルシウムの流動化、細胞外カルシウムの流入およびNa−Hチャンネルの活性化を引き起こす(非特許文献6)。
キナーゼの活性化によって細胞の核内の転写因子の活性化が起こり、初期応答遺伝子群の誘導に続いてタンパクの量の上昇および細胞増殖が引き起こされる(非特許文献8)。このAVPによる細胞増殖性の活性は、血管平滑筋細胞以外でも、様々な永久細胞株、メ
サンギウム腎細胞、肝細胞、糸球体細胞、および副腎皮質で見られた。
受容体は、血管への局在以外でも、AVPによる活性化に続いてグリコーゲン分解が起こる肝臓、AVPによる活性化に続いてアルドステロンの分泌が起こる副腎皮質、インシュリンの分泌が起こるすい臓、心房性ナトリウム利尿因子の放出が起こる心臓の心房心筋細胞、血小板凝集が起こる血小板、脾臓、腎臓、脳、子宮、含脂肪細胞、およびさまざまな培養細胞株で見られる(非特許文献8および9)。AVPが血管のV受容体に結合する際の解離定数は1.2nMである(非特許文献10)。この受容体はV受容体がすでに完全に活性化されるようなAVPの濃度になって初めて反応する。
3番目のバソプレッシンの受容体V受容体は脳下垂体前葉に局在する。副腎皮質刺激細胞の中でこの受容体はAVPによる活性化に続いて起こる副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌を媒介する。V受容体は種々のシグナル伝達経路を活性化することができ、その経路には2次メッセンジャーとしてのcAMPの生成を伴うアデニリルシクラーゼを介した経路および細胞内カルシウムの流動を引き起こすホスホリパーゼCを介した経路の両方がある(非特許文献11)。
オキシトシンは主たる作用を、子宮、卵巣、乳腺、および腎臓にあるオキシトシン受容体への結合によって媒介する。オキシトシンは胸部においては乳の分泌を活性化し、また、分娩時には子宮の収縮に積極的に関与している。オキシトシン受容体はAVPのV受容体と同様、リガンドと結合したあと、カルシウムの細胞内の流動化を誘導する。
うっ血性心不全(CHF)は、高血圧や冠状動脈性心臓病(心筋梗塞、狭心症)によって主に引き起こされる多くの異なった病状の最終的な段階として特徴づけられ、心臓の拍出能力の低下、症状の重篤化は激しい活動による無呼吸状態、肺や組織への水の滞留、低ナトリウム血および安静時の呼吸困難などに随伴する。高齢化以外にも、特に影響を受けるものとして、陳旧性心筋梗塞の患者が含まれる。心筋細胞の肥大化のために進行性の心臓結合組織の化生があり、心臓の効率が次第に低下するので、もし、処置をしなければ、その病状は始まりから非常に短い間に死に至る。一度心臓の機能が低下し始めると神経ホルモンの拮抗的調節が導かれ、ここでは交感神経系(SNS)とレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系(RAAS)が活性化され、すぐに血管収縮が導かれる。心臓の拍出量はそれゆえ当初は上昇するが、いくらかの時間が経つと、継続する血管収縮が心臓に負荷を与え、心筋細胞の死と肥大化した細胞の死は、上に記述した通り、心筋の進行性の心臓結合組織の化生を導く。
血漿中のAVPの濃度の有意な上昇はCHFでもまた見られ、レニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系でアンジオテンシンIIがAVPの分泌を促進することおよび交感神経系の活性化により視床下部におけるAVPの生合成を促進することによって主に引き起こされる(非特許文献12および13)。血漿中のAVPの濃度上昇は腎臓における水の激しい逆吸収をもたらし、患者に上記の結果をもたらす。
従って、ペプチドホルモンはこの病状に対する新しい治療の明らかな標的である。なぜなら、AVPの受容体の拮抗薬を用いることで、利尿作用が達成でき、ここで、水負荷を減少させることによって、末梢血管の抵抗もまた減少し、そのことで心臓の緊張を低減できるからである。これはおそらく一部分はうっ血性心不全の原因であるAVPの直接的な血管収縮作用はAVPの拮抗薬によって制御出来る。さらに、AVPが自身の細胞増殖作用によって心筋の結合組織での肥大性の形質転換に直接的な役割を果たしているという証拠がある(非特許文献14)。このようにAVPの拮抗作用はうっ血性心不全の短期間の治療のみならず、AVPを介する肥大を阻害することによって心筋の状態を長期間にかけて改善することもできる。
CHFは一つのもっとも蔓延した病気であり、その頻度は近年増加していて、保健医療制度に莫大な負担をかけていることから、改良された治療の緊急の必要性がある。うっ血性心不全と活性化したRAASとSNSの関連が認識されて以来、当時の標準的な治療法は活性化したRAASを和らげるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤の投与、活性化したSNSを抑えるβ遮断薬の投与、およびチアジド、ループ系利尿薬およびカリウム保持性利尿薬などの利尿薬の投与にあった。併用療法によって生存の可能性は優位に上昇したのであるが、患者は不可避的に再入院しなければならないため治療の改善の必要性が高い。利尿剤の長期の投与は腎臓に損傷を与え、電解質平衡の異常をもたらす可能性がある。
AVPの作用を直接的な標的とするCHFの治療の新たな取り組みは、上述したVおよびV受容体に対する受容体拮抗薬の使用に基づくものである(非特許文献15)。一連のベンザゼピン系の非ペプチド受容体阻害薬が存在し、経口で投与出来、阻害定数Kiが0.5nM〜3nM(非特許文献9)という高い親和性を持って、特異的にVおよびV受容体のどちらか一方あるいは両方に結合する。いくつかの受容体阻害薬は成功裏の動物実験や小規模な臨床研究などを経て更なる発展をしている。
受容体の拮抗薬であるトルバプタン(Tolvaptan)は同時に標準的な治療を施されているCHF患者に対するプラセボ比較二重盲検臨床試験において水滞留の上昇を持つ患者での浮腫や体重減少が顕著に低減することが見られた(非特許文献16)。低ナトリウム血症を持つ患者では血漿中のナトリウム濃度の正常化が見られた(非特許文献17)。
もっとも広範に開発されたV/V受容体の拮抗薬であるコニバプタン(Conivapan)もまたCHFの患者に有効であることが証明された。一度の静脈内投与ののちのいわゆる肺毛細血管楔入圧の減少は心臓の負荷が減少したことを示している。更に、コニパブタンによる処置のあと、尿中オスモル濃度の減少をともない、尿量が増加することも記録された(非特許文献18)。
CHF患者で起こる心臓肥大へのコニバプタンの好ましい効果の可能性は初代心筋細胞の細胞培養実験において、AVPによるV受容体を介したタンパク合成が濃度依存的に阻害されることによって示された(非特許文献19)。
CHF患者のAVP受容体拮抗薬による長期間の治療ののちの安全性、発病率、死亡率に関するデータや研究成果はいまだ得られてなく、このことはこれまでの研究に見られるうっ血性心不全の治療に対する好ましい効果の真の価値が正確に評価されていないことを意味する(非特許文献20)。
Reghunandanan V et al.1998 Indian.J.Exp.Biol.36:635−43 Raggenbass M et al.1998 Prog.Brain.Res.119:263−273 Michell RH et al.1979 Biochem.Soc.Trans.7:861−865 Thibonnier M et al.1998 Advantage.Exp.Med.Biol 449:251−276 Hayashi M et al.1994 J.Clin.Invest.94:1778−1783 Lolait J L et al.1992 Nature 357:336−339 Thibonnier M et al 2000 Am.J.Physiol.279:H2529−2539 Jard S 1998 In:Zingg H Het al eds 449:1−13 Thibonnier M et al.2001 Annu.Rev.Pharmacal.Toxicol.41:175−202 Thibonnier M et al.l994 J.Biol.Chem.269:3304−3310 Thibonnier M 1997 Endocrinology 138:4109−4122 Schrier R W et al 1998 Adv.Exp. Med.Biol.449:415−426 Schrier R W et al l999 N.Engl.J.Med.341:577−585 Nakamura Y et al.2000 Eur.J.Pharmacol.391:39−48 Lee C R 2003 Am.Heart J.146:9−18 Gheorghiade M et al.2000 Circulation 102:592 Gheorgbiade M et al.2002 J.Am.Coll.Cardiol.39:171 Udelson J E et al.2001 Circulation 104:2417−2423 Tahara A et al.1998 Cardiovasc. Res.38:198−205 Russel S D 2003 Am.J.Cardiovasc.Drugs 3:13−20
本発明の目的はそれゆえ、血漿中のAVP濃度の上昇によって引き起こされるもしくは帰する症状を治療する薬剤を提供することである。本発明の別の目的はAVP受容体拮抗薬の代替物として、特にAVP受容体の拮抗薬として利用出来る新しいAVP拮抗薬を提供することである。さらに本発明の別の目的はAVPに対して高い特異性を持った拮抗薬を提供することである。
1番目の態様として、発明の目的はバソプレッシンの拮抗薬によって達成され、ここで前記拮抗薬は核酸である。好ましい実施の態様として、上記核酸はバソプレッシン結合性の核酸、特にL体の核酸である。他の態様として、バソプレッシンは本明細書に記述されるヒトのバソプレッシンである。さらに他の態様として上記核酸は、本発明のさまざまな態様において関連性を持っているここに公開された上記核酸である。更に他の態様として、本発明の1番目の態様に記載の該核酸は本発明のさまざまな態様において関連性を持って記述された特徴を、1以上含んでいる。
2番目の態様として、本発明の目的はバソプレッシン受容体系の拮抗薬によって達成され、ここで前記拮抗薬は核酸で、好ましくはリガンドである(Arg)−バソプレッシンへの結合によって作用を示す。一つの実施態様として該核酸は少なくとも1つのL体のヌクレオチドを含んでいて、好ましくは、核酸はL体の核酸を含んでいる。他の実施態様として、該核酸は本発明のさまざまな態様において関連性を持っているここに公開された前記核酸である。さらに別の実施態様として、本発明の1つ目の態様に記載の該核酸は本発明の様々な態様と関連性を持って記述された特徴を1つもしくはそれ以上含んでいる。好ましい実施態様としてバソプレッシン受容体系はバソプレッシンV受容体(Lolait J L et al.l992 Nature 357:336−339)、バソプレッシンV受容体(Thibonnier M et al.1994 J.Biol.Chem.269:3304−3310)、もしくはバソプレッシンV受容体(Thibonnier M 1997 Endocrinology 138:4109−4122)である。
2番目の態様において、目的はバソプレッシン結合性核酸によって達成され、ここで前記核酸はBox1部分(stretch Box1)とBox2部分(stretch Box2)を含み、
ここで、
前記Box1が配列:GUGGWを含んでなり、そしてWがAもしくはU、好ましくはWがUであり、
Box2が約18〜約24個のヌクレオチド、好ましくは21個のヌクレオチドの配列を含んでなり、基(G)が配列中に4回含まれていてnが2、3もしくは4である上記核酸である。
3番目の態様の実施態様において、5’端から3’端に向かう方向で1番目の基(G)のnが4で5’端から3’端に向かう方向で2番目の基(G)のnが3で、5’端から3’端に向かう方向で3番目の基(G)のnが2で5’端から3’端に向かう方向で4番目の基(G)のnが3であることが想定されている。
3番目の態様の実施態様において、前記Box2が配列:GGGGUAGGGMUUGGAHGGGHAを含んでなり、ここで
Mはそれぞれ独立してAまたはCであり、
かつHはそれぞれ独立してA、C、またはUであることが想定されている。
3番目の態様の好ましい実施態様において、UまたはC、好ましくはUがHの位置に存在することが想定されている。
3番目の態様の実施態様において、前記核酸がHelix1部分とHelix2部分を含んでおり、前記Helix1とHelix2がそれぞれ5〜9個のヌクレオチド、好ましくは6〜7個のヌクレオチド、より好ましくは7個のヌクレオチドを含有し、前記Helix1部分とHelix2部分は互いに相補的で二本鎖ヘリックスを形成しやすいことが想定されている。
3番目の態様の実施態様において、前記二本鎖ヘリックスが末端に形成されることが想定されている。
3番目の態様の実施態様において、前記核酸がWストレッチを含んでおり、前記Wストレッチは0〜10個、好ましくは6〜9個のヌクレオチド、あるいは0〜7個のヌクレオチドを含有することが想定されている。
3番目の態様の実施態様において、前記Wストレッチが(a)1以上のAおよび/もしくはUのみからなる、もしくは(b)1以上のAおよび/もしくはUと1個のGからなることが想定されている。
3番目の態様の実施態様において、前記WストレッチがPEG基を含んでいることが想定されている。
3番目の態様の実施態様において、前記PEG基がWストレッチの5’末端もしくはWストレッチの3’末端、もしくはWストレッチの2つのヌクレオチドの間に存在することが想定されている。
3番目の態様の実施態様において、前記核酸がPEG基を含んでいることが想定されている。
4番目の態様として、式(I)
Figure 0005103187
式中、
Helix1が7個のヌクレオチドを含み、
Helix2が7個のヌクレオチドを含み、
Helix1とHelix2とが互いに相補的で末端に二本鎖ヘリックスを形成し、
Box1がGUGGWでWがAもしくはU、好ましくはUであり、
WストレッチのWWDWDDWWWが6〜9個のヌクレオチドを含み、Dはそれぞれ独立してA、GもしくはUであり、好ましくは、前記Wストレッチは(a)1以上のAおよび/もしくはUのみを、あるいは(b)1以上のAおよび/もしくはUと1個のGを含み、Box2が約18〜約24個のヌクレオチド、好ましくは21個のヌクレオチドの配列であり、そして基(G)がBox2の配列中に4回含まれていてnが2、3もしくは4である、
で表される核酸、好ましくは1番目、2番目もしくは3番目の態様に記載の核酸、によって目的が達成される。
式(I)から見ることができるように、本発明に記載の核酸は1つの態様として共通の構造を持つ。
ここに関連して、共通の構造は2つの相補的な領域を含み、5’端のものがHelix1と名付けられ、3’端のものがHelx2と名付けられ、核酸の一次構造のために、互いに対をなし、共通構造の中に末端の二本鎖ヘリックスを形成する。
より好ましくは、ヘリックスは7対のヌクレオチド長さを持つ。
5’端から3’端に向かう方向で最初の相補的な領域はBox1によって追随され、ここで前記Box1は好ましくは配列:GUGGWの5個のヌクレオチドからなり、ここで前記WはAまたはUを意味し、好ましくはこの位置にはUが存在する。
この配列は6〜9個のヌクレオチド長のA−rich領域またはU−rich領域によって追随され、この領域はWストレッチと名付けられていて、ここにはWが主に存在し、Gはほとんど存在しておらず、Cは全く存在しない。これはこのあと、21個のヌクレオチドの長さのBox2によって追随され、前記Box2は好ましくは以下の配列を持つ。
前記配列はGGGGUAGGGMUUGGAHGGGHAであって、MがAもしくはCを示し、HがAもしくはCもしくはUを示し、ここでHが存在する位置には好ましくはUまたはCを、より好ましくはUが存在する。Box2の独特の特徴は4つの厳密に保存された複数のGで2回から4回連なる。これは5’端から3’端に向かう方向で2番目の相補的領域で、5’端の相補的領域と共に末端に二本鎖ヘリックスを形成するHelix2と名付けられた領域によって追随される。
Figure 0005103187
1番目の態様として、目的は、核酸、好ましくは1番目、2番目、あるいは3番目の態様に記載され、式(II)
Figure 0005103187
ここで、
Figure 0005103187
がポリエチレングリコール基を示し、
tとuがそれぞれお互い独立して0、1、2、3、4もしくは5であり、ここでtとuを足したものが0、1、2、3、4もしくは5で、
ここで、Helix1、Helix2、Box1とBox2が4番目の態様に記載のように定義され、WがAもしくはUである、
で表される核酸によって達成される。
式(II)から見てとれるように、
1つの実施態様において本発明の核酸は式(I)におけるものと共通の構造を持ち、Box1とBox2の間のA−rich部分(stretch)とU−rich部分(stretch)がPEG−(ヘキサエチレングリコール)のスペーサーと組み合わせられる0〜5個のWからなり、A−rich部分とU−rich部分の中のポリエチレングリコールのスペーサーの位置は自由に変化できる点で異なる。式(II)で表される本発明の核酸では、この部分をPEG+Wと呼ぶ。
Figure 0005103187
6番目の態様において、本目的は、核酸、好ましくは1番目、2番目、あるいは3番目の態様に記載され、式(II)
Figure 0005103187
ここで、
Figure 0005103187
がPEG基を示し、
Helix1とHelix2がそれぞれ6個もしくは7個、好ましくは6個の核酸で、
Helix1とHelix2がお互いに相補的で二本鎖ヘリックスを形成し、
Box1とBox2は4番目の態様に関連性を持って定義され、Wストレッチ、WWWWWWWは0〜7個のWからなり、WがAまたはUであり、好ましくは式(III)にはWが全く存在しなくて、そして
PEG基は5’端から3’端へ向かう方向でHelix2とHelix1の間に配置されている、
で表される核酸によって達成される。
式(III)に見て取れるように、本発明の核酸は、1つの実施態様において、式(II)と共通の構造を含んでなるが、以下の点で異なる。
本発明の核酸の5’末端はA−rich部分とU−rich部分にあるために、5’末端の位置は変えられていて、3’末端はBox1の終点に位置する。前記Wストレッチは0〜7個のWからなり、好ましくは0個のWである。
Box1とBox2は式(I)と(II)に具体的に記載される配列を含み、5個と21個の核酸からなる。
Helix1とHelix2の相補的な領域はそれぞれ6個もしくは7個のヌクレオチド、好ましくは6個のヌクレオチドからなり、二本鎖ヘリックスを形成する。PEGのスペーサーは決してA−rich部分とU−rich部分には無いが、しかし5’端から3’端に向かう方向で見て、Helix1の終点とHelix2の起点との間に位置する。Helix1はBox1に追随され、前記Helix1の3’端は既に記載の通り、本発明の核酸の3’末端を形成する。
Figure 0005103187
本発明の核酸は下記の表に列挙する核酸を包含していて、本発明の核酸として本明細書中では識別されている。これに関連して使用されている略語や記号は本明細書中で定義されるものと対応する。
Figure 0005103187
6番目の態様の実施態様において、5’端から3’端に向かう方向で1番目の基(G)のnが4で、5’端から3’端に向かう方向で2番目の基(G)のnが3であり、5’端から3’端に向かう方向で3番目の基(G)のnが2であり、5’端から3’端に
向かう方向で4番目の基(G)のnが3であることが想定されている。
1番目から6番目の態様、好ましくは6番目の態様の実施態様において、ポリエチレングリコール基が約172〜688Da、好ましくは約344Daの分子量を持つことが想定されている。
1番目から6番目の態様の実施態様において、上記配列は配列識別番号2から配列識別番号50を含んでいる配列の群から選択されることが想定されている。
4番目から6番目の態様の実施態様において、上記核酸がバソプレッシンと結合することが想定されている。
好ましい実施態様としては、バソプレッシンがヒトのバソプレッシンであることが想定されている。
1番目から6番目の態様の実施態様において前記バソプレッシンが配列番号1に記載のアミノ酸配列を持つことが想定されている。
1番目から6番目の態様の実施態様において、前記核酸が修飾を含むことが想定されている。
好ましい実施態様として、前記修飾がHES付加とPEG付加を含んでいる群から選択されていることが想定されている。
好ましい実施態様として、前記PEG付加が直鎖あるいは分岐PEGによって行われるもので、前記PEGの分子量が約20〜120kDA、好ましくは約30〜80kDa、より好ましくは約40kDAであることが想定されている。
好ましい実施態様として、前記HES付加がHESによって行われるもので、前記HESの分子量が約10〜130kDa、好ましくは約30〜80kDa、より好ましくは約50kDaであることが想定されている。
1番目から6番目の態様の実施態様において、核酸がすべてL体のヌクレオチドからなることが想定されている。
7番目の態様として、1番目から6番目の態様のいずれかの核酸と任意の追加的な構成要素を含んでいる医薬組成物によって目的は達成され、前記追加的な構成要素が製薬上許容される担体を含んでいる群の中から選択されたものであることが想定されている。
8番目の態様として、1番目か6番目の態様のいずれかの核酸の薬剤の製造のための使用によって目的が達成される。
9番目の態様として、1番目か6番目の態様のいずれかの核酸の診断用薬の製造のための使用によって目的が達成される。
9番目の態様の実施態様として、前記薬剤がうっ血性心不全の治療および/もしくは予防のための、好ましくは短期治療のための薬剤である上記使用法、より好ましくは急性非代償性うっ血性心不全の治療および/もしくは予防のためのものであることが想定されている。
9番目の態様の代替的な実施態様として、前記薬剤が、高血圧症、冠状動脈性心臓病、心筋梗塞症、狭心症を含む群から選択され病態の続発症の疾病の治療および/もしくは予
防のための薬剤であることが想定されている。
9番目の態様の実施態様として、前記患者が高齢者であるか、または陳旧性心筋梗塞に罹患していることが想定されている。
9番目の態様の実施態様として、前記薬剤が高血圧症の予防および/もしくは治療のための薬剤であることが想定されている。
9番目の態様の代替的な実施態様として、前記薬剤が心筋肥大、特に(アルギニン)−バソプレシンを介した心筋肥大、の治療および/もしくは予防のための薬剤であることが想定されている。
9番目の態様の実施態様として、前記薬剤が浮腫の治療および/もしくは予防のための薬剤であることが想定されている。
9番目の態様の実施態様として、前記薬剤が水滞留の上昇を起こした患者の体重の軽減のための薬剤であることが想定されている。
9番目の態様の実施態様として、前記薬剤が低ナトリウム血症の治療もしくは低ナトリウム血症の予防のための薬剤であることが想定されている。
9番目の態様の実施態様として、前記薬剤がADH分泌異常症の治療および/もしくは予防のための薬剤であることが想定されている。
9番目の態様の好ましい実施態様として、前記ADH分泌異常症が、抗利尿、低ナトリウム血症、低浸透圧を含む群から選択される少なくとも1つの別の症状を伴うことが想定されている。
9番目の態様の実施態様として、前記ADH分泌異常症が、腫瘍による異所性のADHの分泌、薬剤誘発性のADHの分泌、肺疾患、および頭蓋−脳外傷の後もしくは髄膜炎の後の中枢性浸透圧受容体の変化を含有する群から選択される少なくとも1つの病因に起因することが想定されている。
9番目の態様の実施態様として、前記薬剤が肝硬変に合併して起こる低ナトリウム血症の予防および/もしくは治療のための薬剤であることが想定されている。
9番目の態様の代替的な実施態様として、前記薬剤が脳水腫、特に頭蓋−脳外傷の後、もしくは脳卒中の後に起こる脳水腫の治療および/もしくは予防のための薬剤であることが想定されている。
9番目の態様の代替的な実施態様として、前記薬剤が頭蓋−脳外傷および/もしくは脳卒中の治療および/もしくは予防のためのものであることが想定されている。
9番目の態様の代替的な実施態様として、前記薬剤が腫瘍の治療および/もしくは予防のための薬剤であることが想定されている。
9番目の態様の好ましい実施態様として、前記腫瘍を形成する細胞のうちの少なくともいくつかが、V受容体、V受容体およびV受容体を含む群の中から選択される受容体のうち少なくとも1つの受容体を発現していることが想定されている。
9番目の態様のより好ましい実施態様として、前記腫瘍がACTH産生性の腫瘍、気管小細胞癌および乳癌を含んでいる群から選択される腫瘍であることが想定されている。
9番目の態様の代替的な実施態様として、前記薬剤が早産を予防するための薬剤であることが想定されている。
9番目の態様の更なる代替的な実施態様として、前記薬剤が1次性月経困難症の予防および/もしくは治療のための薬剤であることが想定されている。
10番目の態様として、1番目から6番目の態様のいずれかの核酸とバソプレッシンを含む複合体によって目的が達成される。
11番目の態様として、1番目から6番目の態様のいずれかの核酸とオキシトシンを含む複合体によって目的が達成される。
12番目の態様として、以下に記述のステップを含むバソプレッシンの拮抗薬もしくはバソプレッシンの作動薬をスクリーニングする方法によって目的が達成される。
− バソプレッシンの拮抗薬の候補および/もしくはバソプレッシンの作動薬の候補の
提供
− 1番目から6番目の態様のいずれかの核酸の提供
− バソプレッシンの拮抗薬および/もしくはバソプレッシンの作動薬の存在時にシグ
ナルの変化を生じる試験系の提供および
− バソプレッシンの拮抗薬の候補がバソプレッシンの拮抗薬であるかどうかおよび/
もしくはバソプレッシンの作動薬の候補がバソプレッシンの作動薬であるかどうか
の判定。
実施態様として前記バソプレッシンがアルギニンバソプレッシンであることが想定されている。
13番目の態様として、以下に記述のステップを含むバソプレッシンの拮抗薬および/
もしくはバソプレッシンの作動薬をスクリーニングする方法によって発明が達成さ
れる。
− バソプレッシンの相での、好ましくは固相での提供
− 1番目から6番目の態様のいずれかの核酸、好ましく1番目から6番目の態様のい
ずれかの標識が付加された核酸の提供
− バソプレッシン作動薬の候補および/もしくはバソプレッシン拮抗薬の候補の添加
および
− バソプレッシンの拮抗薬の候補がバソプレッシンの拮抗薬であるかどうかおよび/
もしくはバソプレッシンの作動薬の候補がバソプレッシンの作動薬であるかどうか
の判定。
実施態様において、上記判定が、核酸がバソプレッシンの作動薬の候補と置き換えられるかどうかを立証することによって行われることが想定されている。
14番目の態様として、バソプレッシンおよび/もしくはオキシトシン、好ましくはアルギニンバソプレッシンの検出用キットであって、1番目から6番目のいずれかの態様に記載の核酸を含有する上記キットによって目的が達成される。
発明者らは(Arg)−バソプレッシンに結合する核酸、特にL体の核酸をスクリーンすることが可能であることを驚くべきことに発見した。本発明の核酸は好ましくはリボ核酸、より好ましくはL体リボ核酸である。本発明に記載の(Arg)−バソプレッシン結合性の核酸分子は従来技術(Williams K.P.et al.1997 P
roc.Natl.Acad.Sci USA 94:11285−11290)に記述のバソプレッシン結合性のDNA分子と比べて驚くべき進歩を含んでいて、前記従来技術に記載のDNA分子はインビトロの測定において0.9μMの解離定数しか持たない。細胞培養系の試験において、この以前の技術のDNA分子はおよそ3μMの50%阻害濃度を持ち、それゆえ、その分子のかんばしくないバソプレッシンへの結合のため、見込みある治療薬の候補としては軽視されていた。最後に、従来技術文献に記載の(Arg)−バソプレッシン結合性のDNA分子はまた、本発明の核酸に比べて有利ではない。なぜなら、そのDNA分子は55個の長さのヌクレオチドを持つので、生産のためのかなりの努力と費用を必要とするからである。この核酸と比べて、本発明の核酸は数桁の単位(等温熱量測定によって測定された解離定数は1.5nMで、cAMPを用いた細胞培養試験におけるIC50が1nM)で優れている改善された親和力を持っていて、最大で17ヌクレオチドも短くて、実施例において更に詳細に記述されるのが見られるように37℃の生体内においても活性を持つ。この点で、本発明者は、(Arg)−バソプレッシン結合性の核酸が治療目的には適さないという従来技術に基づいて一般的に考えられる専門家の意見に対して反証出来た。
更に、本発明者は、これまでAVPの受容体の拮抗薬によって証明されてきた、たとえば電解質平衡を乱さない利尿、心臓負担の軽減、心筋肥大を阻害する可能性のようなすべての好ましい効果が本発明に記述の化合物によってもまた達成されるということを驚くべきことに立証した。
本発明の核酸の更なる利点は、以前の技術に記載のAVP受容体の拮抗薬に比べて長期間の投薬療法において有利であることである。以前の技術に記載のAVP受容体の拮抗薬を用いた投薬療法では血漿中のAVP濃度の上昇にともなって相互拮抗的作用が起こる可能性があり、この相互拮抗性作用は長期間の投薬療法において最終的に拮抗薬の効果を減ずる可能性がある。
仮にもし、本発明の核酸を使用している時にこの反応が起こったとしても、
非生理学的に高い濃度の血漿中のAVPに対応する高い濃度の投薬量それ自体によって中和出来る。
本発明の核酸は、好ましい実施態様においてまた具体的に本明細書中に開示されている配列と十分に相同である核酸を含む。ここで「十分に相同である」という術語は好ましくは、少なくとも75%、好ましくは85%、より好ましくは90%、更に特に好ましくは95、96、97、98もしくは99%以上の相同性があることをここでは意味すると理解されるべきである。
本発明の核酸は好ましくはリボヌクレオチドからなる核酸である。しかしながら、本発明の範囲の中で、個々のヌクレオチドが2’デオキシリボヌクレオチドもしくは、たとえば2’−O−メチルリボヌクレオチドやLNAヌクレオチドなどの他の変異体として分子の中に存在することもまた可能である。しかしながら核酸がすべてリボヌクレオチドからなるなら最も好ましい。
本発明の核酸は等温測定法によって測定された解離定数Kdが10nM未満で、37℃において液体の中でバソプレッシンと好ましくは結合する。本発明の核酸はまた、好ましい実施態様においてオキシトシンと結合する。
本発明の範囲の中での実施態様において、本発明の核酸はまた、より長い核酸の中の一部分を含み、前記のより長い核酸は複数の部分を含んでも良く、少なくとも一部分は本発明の核酸、もしくはその一部である。他の部分もしくは前記より長い核酸の他の部分はD
体の核酸もしくはL体の核酸であって良い。それぞれのおよび任意の組み合わせは本発明と連動してならびに本発明の核酸のために本明細書で開示される目的や使用法のために使用しても良い。前記他の部分や前記より長い核酸の他の部分は結合以外、特に、バソプレッシンあるいは/またはオキシトシンへの結合以外の機能を持っていても良い。可能性のある機能は他の分子との相互作用を許すもので、例えば固相化、架橋、検出、増幅もしくは修飾の目的、または分子量を増す目的の分子である。
更なる態様として、本発明は医薬組成物に関するものであり、前記医薬組成物は少なくとも本発明の核酸の1つからなり、1つまたはそれ以上の他の核酸と組み合あわせられ、前記他の核酸もしくは複数の核酸は好ましくは(Arg)−バソプレッシン以外の標的分子に結合するかまたは本発明の核酸とは異なった機能を発揮する。
1つの実施態様において本発明の核酸は修飾された形で存在する。
特に好ましい修飾の型値はPEG付加もしくはHES付加である。この修飾は本発明の核酸の、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチル澱粉(HES)もしくは他の基の結合による修飾を含んでいて、前記修飾はヨーロッパ特許出願EP 1 306
382の記述のもので、その開示はここに述べられそして含まれている。
好ましくはこの方法で、たとえば、PEG付加によって修飾された本発明の核酸の分子量は約2000〜200000Da、好ましくは40000〜120000Daである。
核酸のHES付加はたとえばドイツ特許出願DE 1 2004 006 249.8に記載されている。好ましくは、この関連して使用されているヒドロキシエチル澱粉(HES)は3〜100000Da、より好ましくは5000〜60000Daの数平均分子量を持つ。
本発明の核酸の、たとえばヒドロキシエチル澱粉(HES)もしくはポリエチレングリコール(PEG)のような生理学的に許容出来る高分子量の重合体による修飾の利点は本発明の核酸の排せつ速度論を変えられる点にある。何らかの理論によって制約を受けることを望まないが、この方法によって修飾された本発明の核酸の挙動は、そのように修飾された本発明の核酸の分子量の増加および、特にこれらの核酸がL体の核酸として存在していた場合の代謝活性の低下の結果として、生命有機体、特にほ乳動物からのこれらの排出は遅くなっているということ実に基づいているように思える。排出は通常は腎臓を通じて行われるので、現在では、この方法で修飾された本発明の記載の核酸に関する腎臓の糸球体ろ過量は、修飾されていない本発明の核酸のそれに比べて有意に低下していると仮定され、結果として、抵抗時間、すなわち、本発明の核酸、特に本発明に記載の修飾されたL体核酸の生物学的半減期の、対応している本発明の修飾されていない核酸の、特に修飾されていないL体の核酸の抵抗時間に比べての増加が見られる。本発明の特に注目に値する点は、好ましい実施例に見られる修飾にも関わらず、この方法で修飾された本発明の核酸はその特異性を目立っては失っていないということ実である。従って、本発明の核酸は、特に修飾された形において、他の薬学的な活性を持つ化合物において認識できることはないような性質をまったく驚くべきことに示す。すなわち、たとえば活性を持つ構成成分を連続的に放出する持続性薬剤の形において、大規模な生薬製剤を除外することが出来、代わりに問題になっている活性を持つ構成成分に、その分子の、特に反応の特異性もしくはそれぞれの標的分子との複合体形成として表わされる生物活性に悪影響を与えること無しに、直接的な修飾を施すことが出来る。
本発明の修飾された核酸が持続性薬剤の形を取ることは本発明の範囲に入る。本発明の核酸がその製造に含まれる費用や困難さを減ずるような修飾されていない、すなわち修飾
を持たない形、で存在することは本発明の範囲に入る。特に急性非代償性うっ血性心不全の治療において、静脈への注射を含む集中的な治療で、本発明の核酸のこの実施態様は、投与量がよく制御されていて、利尿を通じての迅速な排出もしくは血漿中の短い半減期が望まれる場合に使われる限りにおいて特に利点を持つ。
本発明の核酸の高い安定性の結果として、特にそれがL体の核酸として存在する実施態様において、本発明の核酸の、そのような治療を必要としている患者の治療のための直接的な投与が可能である。好ましくは、本発明の核酸は局所性もしくは全身性の適用のための医薬組成物として利用出来る。好ましくはこの医薬組成物は静脈注射の適応のためのものである。しかしながら、そのような医薬組成物は筋肉注射、腹腔内注射、もしくは皮下注射によって投与されることもまた本発明の範囲の中にあることが可能である。本発明の核酸は好ましくは、製薬学的に許容され得る溶媒中に含まれるか溶解される。このような溶媒としては、生理食塩水、PBS、またはグルコース溶液、特に、5%グルコース溶液からなる群より選ばれるものを特に挙げることができる。
本発明の核酸を、医薬を製造するのと同じく診断薬を製造するのに用いてもよい。これに関連して、診断薬としての適用もしくは使用は本発明の核酸とバソプレッシン、特に(Arg)−バソプレッシンおよび/もしくは全体としてもしくは個別に、ここで標的分子として意味するオキシトシンとの間の特異的な相互作用に基づく。本明細書に記述されるさまざまな症状や疾患へのバソプレッシンおよび/もしくはオキシトシンの関与の結果として、本発明の核酸の医薬の製造への使用の態様に関連して、本発明の核酸を用いる確定診断は本発明の範囲の中にあることが可能である。対応する診断の手段に関連して、標的分子の濃度は好ましくは1種類もしくはそれ以上の本発明の核酸との相互作用によって決定される。このような相互作用はたとえば、体液中の(Arg)−バソプレッシンの濃度を決定するための競合的試験分析において、トレーサーである標識されたバソプレッシンの本発明の核酸への結合が体液由来の(Arg)−バソプレッシンと競合ということ実によって検出される。
本発明の核酸が使用できる処置用の症状は、処置すべき器官、特に、哺乳動物、好ましくはヒトにおける正常な生理学的状態に比べて高いバソプレッシンレベルに直接的または非直接的に関連する。好ましくは、高いバソプレッシンレベルは、体液、好ましくは血液である体液中のバソプレッシンの高い力価である。
本発明の核酸を治療に用いることの出来る症状はCHFである。この例では、本発明の核酸のうっ血性心不全の短期治療のための使用が本発明の範囲内にある。本発明の核酸によって治療もしくは予防することの出来る別の型の心臓疾患は急性非代償性うっ血性心不全である。
本発明の核酸の高血圧症、冠状動脈性心臓病、心筋梗塞症および狭心症の治療のための使用もまた本発明の範囲内である。特に好ましい使用形態において、高血圧症、冠状動脈性心臓病、心筋梗塞症および狭心症は最終的にうっ血性心不全を引き起こす症状であり、この点でうっ血性心不全がこれらの症状の最終段階を構成要素となっても良い。好ましい実施態様として、本明細書に記載されている実施態様においてうっ血性心不全は他の記述された症状、特に冠状動脈性心臓病、心筋梗塞症、狭心症および高血圧症と同様、特に高齢の患者や1度もしくはそれ以上、心筋梗塞にかかったことがある患者に起こる症状である。好ましい実施態様として、高齢の患者は特にその身体能力もしくは身体の動作が最高時の身体能力もしくは身体動作に比べて加齢とともに減じている。
本発明の医薬が治療および/もしくは予防に用いられる別の症状は心筋肥大、特に心筋肥大、浮腫、アルギニンバソプレッシンにより媒介される低ナトリウム血症を含む。
本発明の核酸を用いて治療できるもしくは予防できる別の症状はADH分泌異常症である。
ADH分泌異常症症候群(SIADH、シュワルツ・バーター症候群)において、AVPの血漿中濃度は、たとえば腫瘍による異所性のADHの分泌、カルバマゼピン、神経弛緩薬、三環系抗うつ薬もしくは選択的セロトニン再取り込み阻害薬などの向精神薬の投与による薬剤誘発性の抗利尿ホルモンの分泌、たとえば結核もしくは気管支癌などの肺疾患、または、抗利尿ならびに低ナトリウム血症および高浸透圧血症をもたらす頭蓋−脳外傷の後もしくは髄膜炎の後の中枢性浸透圧受容体の変化のような様々な原因に寄って恒久的に上昇している(Baylis P H 2003 Int.J.Biochem.Cell Biol.35:1495−1499)。病気の徴候はもともと血漿中のAVP濃度の上昇と関連しているので本発明の核酸はADH分泌異常症およびADH分泌異常症症候群の治療および/もしくは予防に用いることが出来る。この症状の治療におけるV受容体拮抗薬の有効性は動物実験およびSIADH患者においてみられている(Saito
T et al.1997 J.Clin.Endocrinol.Metab.82:1054−1057)。
別の態様において、本発明は、本発明の核酸の肝硬変および低ナトリウム血症の治療および/もしくは予防のための医薬の製造への使用に関する。
肝硬変において、末梢血管の拡張はAVPの血漿中濃度の有意な上昇をもたらし、続いて起こる水分の排出の減少のために低ナトリウム血症および高浸透圧血症を引き起こす。肝硬変の標準的な治療はさらに低ナトリウム血症の激しさを増す可能性のある利尿薬を用いるので、本発明の核酸は、AVPの作用機序によって、V受容体拮抗薬のように、それらは特異的に水分の排出のみを増強し、刺激的な低ナトリウム血症および高浸透圧血症を沈静化するので有利である。肝硬変の患者において、V受容体拮抗薬の単回投与ののち、尿量の有意な増加および尿中オスモル濃度の減少が検出された。しかしながら、AVPの血漿中濃度の増加は投与量依存的であることが認められていて、このことが、長期間の薬物治療において、受容体拮抗薬の利尿効果を無効にする可能性がある(Inoue T et al.1998 Clin.Pharmacol.Ther.63:561:570)。本発明者らは、最近、肝硬変における低ナトリウム血症の治療に用いられる本発明の核酸はAVP血漿濃度の上昇をまったく作り出さず、それゆえV受容体拮抗薬に比べて大いなる利点を提供するという見解を有している。
別の態様において、本発明の核酸は脳浮腫の治療および/もしくは予防に用いることが出来る。この場合、本発明の範囲内で、本発明の記載の核酸はまた、頭蓋−脳外傷の治療もしくは脳卒中の治療に用いることが出来る。本発明の範囲内において、本発明の核酸を、特に頭蓋−脳外傷の治療もしくは脳卒中の結果起こる脳浮腫の治療および/もしくは予防に用いることが出来る。
頭蓋−脳外傷の治療もしくは脳卒中の結果起こる脳浮腫の治療において、従来技術文献では補助的な治療としてフロセミド(furosemide)のようなループ利尿薬が用いられている。
これらの薬剤はしかし、そのNa,KおよびClの損失が増えることを含む作用機序のため、体液の電解質平衡を乱し、それゆえに低ナトリウム血症および/もしくは低カリウム血症を引き起こす可能性がある。本発明の核酸を用いた場合、同様に利尿効果を持ち、電解質平衡との干渉もなく、腎臓の集合管における水分の再吸収を阻害するために
、イオンの損失も無く、水分の排出を増加させるのみである。頭蓋−脳外傷のあとの脳浮腫の動物モデルにおいて、脳浮腫の形成がV受容体拮抗薬によって濃度依存的に止めることが出来た(Lazlo F F 1999 Eur.J.Pharmacol.364:115−122)。
別の態様において、本発明は、本発明の核酸の腫瘍の治療および/もしくは予防のための使用に関する。この腫瘍は特に、V受容体、V受容体およびV受容体を含む群の中から選択される受容体のうち1つもしくはそれ以上の受容体を発現している型である。
ACTHを分泌している脳下垂体の腫瘍において、あるいはまたは異所性ACTH症候群においてV3受容体は過剰発現している(De Keyser Y 1996 J.Clin.Invest.97:1311−1318)。AVPの細胞増殖活性はV受容体を介してであるが、あらゆる種類の細胞におよぶことが知られている(上述参照)ので、ACTHを分泌する腫瘍の腫瘍形成においてAVPはV受容体を介した刺激に含まれている。本発明の核酸の作用機序と同様のこの作用機序のため、前記核酸は腫瘍形成の抑制に用いても良い。
気管支癌の部分群であり、西欧諸国において男性の癌での死亡の主な原因であり、女性の死亡の2番目に多い原因である気管支小細胞癌において、3種類の既知のAVP受容体とAVP自身が発現している。女性の最も多い悪性疾患の1つである乳癌にも同様のことがあてはまる(North W G 1000 Exp.Physiol.85:27−40)。AVPおよび3種類全部のAVP受容体の上記記載の腫瘍における存在は本発明の命題の根拠をなしており、これはすなわち、これらの腫瘍の生理学においてAVPが重要な役割をしているという命題である。結果的に本発明の核酸はまた腫瘍、特に上記記載の腫瘍を抑制するのに使用することができる。
別の態様において、本発明は、本発明の核酸の早産の予防のための使用に関する。
AVPおよびオキシトシンは子宮のそれら固有の受容体を介して子宮収縮を刺激し、そして分娩過程の開始に決定機である。両方のホルモンは同じように早産に関与していて、早産は一方では早産の新生児に健康上の危険を与え、一方では公共の健康医療制度に莫大な負担をかける。しかしながら、早産は、V1受容体と同様にオキシトシンの受容体を阻害出来るオキシトシン類似体であるアトシバンによって効果的に防ぐことが出来る(Akerlund M 2002 Prog.Brain.Res.139:359−365)。このことは本発明の核酸が早産の予防に用いることができることの根拠を形成する。
別の態様において、本発明は、本発明の核酸の1次性月経困難症の予防および/もしくは治療のための利用に関する。
1次性月経困難症は生理の最中、およびある程度はすでに生理の前から、子宮の強力な収縮によって引き起こされる疝痛様の下腹部の痛みを伴う。この症状に悩まされる女性はAVP濃度が上昇した状態にある。治療的に好ましい効果は、いずれもV1受容体およびオキシトシン受容体を同じように阻害する、合成されたオキシトシンの類似体であるアトシバンおよび非ペプチド性受容体拮抗薬SR 49059を使用することで達成される(Akerlund M 2002 Prog.Brain.Res.139:359−365)。このことは本発明の核酸の1次性月経困難症の治療および/もしくは予防のための使用の根拠を成す。
本発明の核酸はまた、治療的に活性のある物質の設計(ドラッグデザイン)の出発物質として使用しても良い。原則として、これには2種類の取り組み方の可能性がある。
1つの取り組み方は化合物のライブラリーのスクリーニングにありこのような化合物のライブラリーは好ましくは低分子化合物(低分子もしくは小分子)のライブラリーである。このようなライブラリーは当業者に周知である。他の取り組み方として、本発明に従って、核酸は、活性のある物質の合理的設計(rational design)のために用いても良い。
活性のある物質の合理的設計は、本発明の核酸もしくは複数の核酸の構造と類似の核酸の構造、またはバソプレッシンおよびオキシトシンとの結合を媒介する本発明の核酸もしくは複数の核酸の構造の一部分と同一な核酸の構造、特に三次元構造を含む本発明の核酸のいずれを出発物質としても良い。いずれの場合にも、このような構造はまた本発明の核酸もしくは複数の核酸と同一のもしくは少なくとも類似の結合様式を示す。更なる段階もしくは代替の段階として、活性のある物質の合理的設計において、好ましくは、バソプレッシンもしくはオキシトシンと結合する核酸の一部分の三次元構造は、好ましくは核酸もしくは複数の核酸と異なる化学基によって模造される。模倣とも呼ばれるこの模造を用いて、活性のある物質の合理的設計の出発物質として用いられた核酸もしくは複数の核酸から異なった化合物が構築されても良い。このような化合物もしくは活性のある物質は好ましくは小分子もしくはペプチドである。
当業者に周知の競合的試験を用いて化合物ライブラリーをスクリーニングする場合、適切なバソプレッシン類似体、バソプレッシン作動薬、バソプレッシン拮抗薬、オキシトシン類似体、オキシトシン作動薬もしくはオキシトシン拮抗薬が発見されても良い。このような競合的な試験は以下のように組み立てられても良い。本発明の核酸、好ましくは鏡像異性体、すなわち、表的分子と結合するL体核酸は、好ましくは固相に結合している。バソプレッシンの類似体を同定するために、標識とともに供給されたバソプレッシンは試験系に加えられる。代替的に、バソプレッシンは固相に結合されて、本発明の核酸が標識を付加されても良い。類似体候補もしくは作動薬候補または拮抗薬は、鏡像異性体と結合したバソプレッシン分子と競合し、このことは対応する標識から得られるシグナルの減衰を引き起こす。作動薬もしくは拮抗薬のスクリーニングは当該分野に周知の細胞培養試験系の使用を含んでも良い。原則として、オキシトシンを用いる際にも同じ取り組み方はまた使用されても良い。
別の態様として、本発明の核酸は、バソプレッシンもしくはオキシトシンへの特徴的な結合様式の結果、標的の評価に用いられても良い。本発明の核酸はバソプレッシンおよびオキシトシンの機能を研究するための生体外器官モデルにおいて用いられても良い。原則として、バソプレッシンの作動薬もしくは拮抗薬を試験することの出来る生体外モデルは存在し、たとえば器官槽の中の分離され還流された腎臓もしくは分離された大動脈である。
本発明に記載のキットは少なくとも1つもしくはそれ以上の本発明の核酸を含んでいても良い。さらに、前記キットは少なくとも1つあるいはそれ以上の陽性コントロールもしくは陰性コントロールを含んでいて良い。陽性コントロールとして、たとえばバソプレッシンもしくはオキシトシンを用いても良く、それに対して本発明の核酸がスクリーニングされるかまたは、それに対して本発明の核酸が望ましくは溶液で結合する。陰性コントロールとして、とりわけ、生物物理的性質の点においてバソプレッシンおよびオキシトシンと同様の様式でふるまうが、本発明の核酸、またはバソプレッシンおよびオキシトシンと同じアミノ酸組成を持ちながら配列の異なったペプチドによって認識されないペプチドを用いても良い。
更に、キットは1つもしくはそれ以上の緩衝液を含んでいても良い。キット中の様々な
構成要素は、乾燥したもしくは凍結乾燥した状態で、または液体に溶解されて存在しても良い。キットは、それは次に1つまたはそれ以上のキットの構成要素を含んでも良いような1つまたはそれ以上の容器を含んでいて良い。好ましくは、前記容器は、1つまたはそれ以上のキットの構成要素を用いる実験の一回の実行に必要な一回分の反応剤を含んでいても良い。
本発明の核酸のバソプレッシンもしくはオキシトシンのような標的分子を検出のための使用は本発明の範囲内にあることが可能である。この目的のために、しかしまた一般的にも、本発明の核酸は直接的にもしくは間接的に標識を付加されても良い。好ましくは標識の付加は、放射性トレーサー、蛍光標識、もしくは、たとえばユウロピウムのような磁性レジン分光法にふさわしい標識を含む群から選択される。
本発明は、あとに続く図と例による補助と共に、より細かく下文に記述され、前記、図と例から更なる特徴、実施態様、利点が得られても良い。
図1は自動化されたRNAの選別の概略図である。
図2は試験管内の選別ロボットの作業空間の概略図である。
図3は自動化された試験管内の選別に続いて生じたAVP結合性のクローンの配列を示す。
図4は試験管内の選別に続いて生じたAVP結合性のクローンの配列および共通配列を示す。
図5は配列CHF−15−B4およびCHF−134−A9の結合様式の比較を示していて、核酸の濃度に応じたAVPへの結合がパーセントで表わされている。
図6は、内部のPEGのスペーサー部分を用いた部位特異的な修飾および切り捨てのあとの配列の変異系と、ここから生じたコンセンサス共通配列を示していて、ここで変異体は不変の5’端および3’端を持つ。
図7は、内部のPEGのスペーサー部分を用いた部位特異的な修飾および切り捨てのあとの配列の変異系と、ここから生じた共通配列を示していて、ここで変異体は不変の5’端および3’端を持つ
図8はAVP結合性の鏡像異性体、CHF−F−037の2次構造モデルの描写である。図9は3’端をアミノ基で修飾した鏡像異性体、CHF−F−037−3’NHの、IEX−HPLCの方法によって取得されたクロマトグラムである。
図10は3’端をアミノ基で修飾した鏡像異性体、CHF−F−037−3’NHの、MALDI−TOFによって得られた質量スペクトルである。
図11は3’端をアミノ基で修飾した鏡像異性体の、(CGE)キャピラリーゲル電気泳動によって得られた電気記録図である。
図12は40kDaのPEGによって修飾された鏡像異性体、CHF−F−037−3’PEGの、RP−HPLCによって得られたクロマトグラムである。
図13は、鏡像異性体、CHF−F−037およびCHF−F−037−3’PEGによるAVPとV受容体の相互作用の阻害を示していて、鏡像異性体の濃度に応じたcAMPの生合成の減少が1nMのAVPの刺激に際のウェル当たりのcAMPの量で表わされている。
図14AはCHF−F−037によるAVPとV受容体の相互作用の阻害を示していて、鏡像異性体の濃度に応じた、5nMAVPの刺激による放出を100%としたパーセントでの、カルシウムの放出のパーセンテージの減少が示されている。
図14BはCHF−F−037−3’PEGによるAVPとV受容体の相互作用の阻害を示していて、鏡像異性体の濃度に応じた、5nMAVPの刺激による放出を100%としたパーセントでの、カルシウムの放出のパーセンテージの減少が示されている。
図15は薬剤の投与の後のいろいろな期間の後の様々なラットの群の尿量を示した図表である。
図16は薬剤の投与の後のいろいろな期間の後の様々なラットの群の水消費を示した図表である。
図17は薬剤の投与の後のいろいろな期間の後の様々なラットの群の尿中のオスモル濃度を示した図表である。
図18は薬剤の投与の後のいろいろな期間の後の様々なラットの群の尿中ナトリウム量を示した図表である。
D−AVPの自動化された選別
A. 材料
精密化学製品および酵素
NTPとdNTPはベルリンのLalova社から得た。T7 RNAポリメラーゼ(50U/μl)はハイデルベルクのStratagene社から得た。DNアーゼIはタウフキルヒェンのSigma−Aldlich社から得た。Vent(exo)DNAポリメラーゼ(2U/μl)はNew England Biolabs社から得た。スーパースクリプトII逆転写酵素(200U/μl)はRNase OUTTM(RNアーゼ阻害剤)と同様にInvitrogen社から得た。自動選択に関連してRT−PCRに必要な試薬はヒルデンのQiagen社より得た。
標的分子であるヒトのD−AVP[D−(Arg)−バソプレッシン]
9個のアミノ酸からなるペプチド、D体のAVP(アミノ酸配列:Cys−Tyr−Phe−Gln−Ans−Cys−Pro−Arg−Gly)はハイデルベルクのBACHEM社によって合成された。この分子はカルボキシ末端のGlyに、付加的に挿入されたリシンを介してビオチン基を持っているため、たとえばニュートラアビジンアガロースもしくはストレプトアビジン−ウルトラリンク(Pierce社)などの親和性クロマトグラフィーの材料とのビオチン−ストレプトアビジン相互作用の方法によって結合した核酸を結合していない核酸から分離することが出来る。
核酸ライブラリーとオリゴヌクレオチドプライマー
用いられた出発プールDE5−7.34はNOXXON Pharma AG社によって合成され、RT−PCRに用いられたオリゴヌクレオチドプライマーDE5.T7とDE5.6はゲッチンゲンのIBA GmbH社によって標準的なホスホアミダイト化学反応によって合成された:
ライブラリーDE5−7.34;合成されたリバース鎖
5’−GTGGAACCGACTCACCTGAGCG−N34−CGCTGCTGTTGTCTAAGCTCC−3’
フォワードプライマー DE5.T7
5’−TCTAATACGACTCACTATAGGAGCTTAGACAACAGCAG−3’
リバースプライマーDE5.R
5’−GTGGAACCGACTCACCTGAG−3’
濃縮されたプールのクローニングと配列はベルリンのAGOWA社に外注することによって実行された。
出発プールの産生
1回目の選別ラウンドのための出発プールの産生のために、約2X1015分子の複雑さに相当する4ナノモルの合成された1本鎖DNA(ssDNA;DE5−7.34開始プール、リバース鎖)は、20X100μlのTaqポリメラーゼバッファー、3倍量のDE5.T7プライマーと共に、二本鎖DNA(dsDNA)を作るために400ユニットのTaqポリメラーゼ(5U/μl)と2時間、63℃でインキュベートすることによ
って作成された。結果的に生じた2本差のT7−RNAポリメラーゼのプロモーターから開始して、2mlの反応容量のT7転写バッファー(80mM ヘペス pH7.5;22mM MgCl;1mMスペルミジン;10mM ジチオスレイトール;各4mMのGTP、ATP、CTPおよびUTP;120μg/ml BSA)に入った4ナノモルのdsDNAから対応するRNA開始プールが転写された。転写反応(より詳しくはセクションC−酵素反応を参照)が終了してから鋳型DNAはDNアーゼIによって消化され、RNAは8%の変性ポリアクリルアミドゲルを用いて精製され、アルコールによって沈殿され、乾燥された。
B. 選別段階
RNAの変性とフォールディング
選別の非酵素段階のすべては、標的分子であるD−AVPの接触前のRNAの変性を除いて、選別バッファー(20mM Tris−HCl、pH7.4、150mM NaCl、5mM KCl、1mM MgCl、1mM CaCl、0.1%[w/vol]Tween−20)に中で行われた。変性は、CaCl2とMgCl2を除いた選別バッファーの中で95℃、5分行われた。変性ののち、RNAは氷上で冷やされ、CaClとMgClが加えられ、混合物はさらに5〜15分間37℃でインキュベートされた。最初に、手動のラウンドで、4〜8ナノモルのRNAプールが用いられ、のちの自動化されたラウンドで0.2nmol用いられた。
マトリックスに結合したRNA種の結合と分離
フォールヂングに続いて、一番初めにRNAは37℃で15分間ペプチド無しで、基質(Pierce社から得たストレプトアビジン−ウルトラリンクもしくはニュートラアビジンアガロース)と共にインキュベートされた。このいわゆること前選択はマトリックスと結合する可能性のあるものを除くためにある。このインキュベート段階の後、結合しなかったRNAはマトリックスから遠心によって分離され、上清は取り除かれ、マトリックスは2カラム体積の遠別バッファーによって洗浄された。上清と洗浄画分は合わせられ、更なる選別に用いられた。自動化過程にいて、マトリックスは単に沈殿させることによって取り除かれ、上清のみが更に用いられた。
D−AVP結合性のリボヌクレオチド核酸の選別
D−AVPとの結合反応のため、様々な濃度のビオチン付加されたD−AVPは残った核酸種へと加えられ、1〜3時間、37℃でインキュベートされた。次に10〜80μlのビオチン結合性のマトリックスが結合バッチへと加えられ、さらに10〜15分間、37℃において撹拌しながらインキュベートされた。マトリックスはそののち、非結合のRNA種を結合した種から取り除くために選別バッファーによって洗浄された。この目的のために用いられた洗浄容量は最初の3回の手動のラウンドではマトリックスの容量の2倍で、引き続いて行われたラウンドでは固相容量の135倍になった。
溶出
最初の3回の手動によって行われた選別のラウンドでは結合したRNAは、結合したRNAとマトリックス粒子を150μlの4Mグアニジンチオシアネート(Roche社)で2回、15分、37℃の変性条件でインキュベートすることによって溶出された。この手順は、上清を取り除いたあと、65℃で再び繰り返された。集められた上清の中の溶出したRNAは、水飽和したフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1)によって1度溶出され、2度、クロロホルム/イソアミルアルコール(24:1)によって溶出され、等量の−20℃のイソプロパノールによって沈殿され、70%のエタノールで洗浄され、乾燥された。更に自動化したラウンドの過程では、溶出はマトリックス粒子をRT−PCRバッファー(Qiagen社)の中で95℃10分間熱することによって達成された。
C. 酵素反応
転写−選別で用いるRNAの産生
転写は100UのT7 RNAポリメラーゼと25〜40UのRNase Out RNase阻害剤の入ったT7反応バッファー(80mMのHepes pH7.5、22mM MgCl2、1mMスペルミジン、10mM ジチオスレイトール、各4mMのGTP、ATP、CTPとUTP、120μg/mlのウシ血清アルブミン、0.8Mベタイン)で100μlの容量で行われた。100μlの反応液中、50〜100ピコモルのRT−PCRの産物(手動選別ラウンド)および2本鎖のDNAが中で作られた10〜30μlのRT−PC産物(自動選別ラウンド)が転写の鋳型として用いられた。
反応混合液は3〜12時間37℃でインキュベートされ、DNアーゼIが鋳型DNAを分解するために加えられた。形成されたRNAは手動では8Mの尿素入りの8%ポリアクリルアミドゲルを用いた変性条件によって、自動化した方法ではNTPが含まれない限外ろ過ユニットを用いて限外ろ過を用いて分離された。限外ろ過によって精製されたRNAはフィルターから現れ、ゲルによって精製されたRNAはゲルの切り出した断片から溶出され、エタノールで沈殿され、乾燥され、水に溶解された。
逆転写−手動ラウンド1〜3
沈殿されたRNAは逆転写の手段によって1本鎖DNAに転写された。40μlの反応混合液中の多くても8ピコモルのRNAは1μMのDE5.Rのプライマーと共に変性され、プライマーは冷却することによってRNAとハイブリッド形成をされた。8μlの5XRTバッファー(1st strand buffer、Invitrogen社)、10mMジチオスレイトール、0.5mM dNTP、0.8Mベタインが加えられ、48℃において2分間、インキュベートされた。逆転写は5UのSuperscript II逆転写酵素と共に開始され、48℃で30分、50℃で20分、55℃で10分、70℃で15分、サーマルサイクラーでインキュベートされた。
逆転写−自動化ラウンド4〜16
標的分子とRNA種がそこに結合した洗浄されたマトリックス粒子は120μlのQiagen社のOneStep RT−PCRバッファー(それぞれ1μMのプライマー濃度)に再けん濁され、95℃10分インキュベートされた。反応混合液を最初は63℃に最終的に50℃にゆっくりと冷やしてから、4μlの酵素混合液(Qiagen社のOneStep RT−PCRキットの構成物)が加えられた。逆転写の温度の概要は以下の通りである:50℃で20分、53.3℃で2分、56.6℃で2分、60℃で10分。
PCR−手動ラウンド1〜3
10μlのRT反応液がそれぞれの場合でそれぞれ100μlの容量(10μl 10XVentバッファー(New England Bolabs社)、1μl 50mM
MgSO、2μl 10mM dTP−mix、3μl 100μl DE5.T7プライマー、3μl 100μlDE5.Rプライマー、16μl 5Mベタイン、2.5μl Vent exo DNAポリメラーゼ)の3回のPCRの鋳型に用いられた。増幅はサーマルサイクラーの後述の概要によって行われた:95℃で1分間、63℃で1分間、72℃で1分、合計で6〜10サイクル。増幅の進展は反応後の反応液をネイティブポリアクリルアミドで検定した。PCR反応液はそののち、アルコールで沈殿され、ペレットは70%のエタノールで洗浄されて乾燥された。DNAは水で溶解され、50〜100pmolのRNAは次の選別ラウンドのための転写鋳型として用いられた。
PCR−自動ラウンド4〜16
PCRはOneStep RT−PCRバッチを95℃で15分間インキュベートする
ことによって開始された。これは7〜16回のサーモサイクル(95℃で30秒、63℃で30秒、72℃で30秒)によって追随される。自動化されたラウンドではPCRのcourseはPCR反応液の1部分の蛍光測定によって観測され、PCRは必要分の閾値を超えたら終了された(Dセクションの自動化された選別におけるPCRの進捗の観測を参照)。
D. 自動化された選別におけるPCRの進捗の観測
PCRにおける2本鎖DNAの増加は半定量的に追跡された。これはPCRのサイクル数を可能な限り少なく保つ目的のために役立った。この方法においてT7反応に十分な鋳型を得るために必要なだけ数のPCRサイクルが実施された。PCRの間、一定の回数のサイクルのあと、PCRの一部分はPCR反応液から取り除かれ、90μlのPocoGreen溶液(1:400の比率でTE[10mM Tris−HCl、pH8;1mM
EDTA]に希釈された)の中へ入れられた。PicoGreenは蛍光の色素で溶液中に自由にいるときはほとんど蛍光でないが、2本鎖DNAと結合した時に強く蛍光する(励起:485nm;発光:520nm)。熱耐性ポリメラーゼを入れてなくてサイクルを経ていないコントロールと比較した蛍光の測定によってPCRの進行状況の正確な推定が得られる。閾値に到達したら(サイクルを経た蛍光/サイクルを経ていない蛍光>2)、RT−PCR反応の一部分は試験管内転写の鋳型として役目を果たすことが出来る。
E. 自動化された操作
3回目のラウンドから、全ての操作は不正確に行われたゲル抽出の段階から離れ、ピペット・ロボットでの完全に自動化された方法で行われた。この目的に用いられたロボットの作業空間上の個々のモジュールの配置は図2に見られる。以下のモジュールが用いられた:
・PCRの間の増幅過程を確認するための蛍光読み取り機。DNAがすでに十分量産生さ
れた試料は自動化された方法によって一時的に貯蔵され、それ以上のサーモサイクルを
実行しない
・2つの真空チェンバーがあり、チェンバーAは基質に結合したRNA種と結合しなかっ
たRNA種の分離のためで、チェンバーBは個別の次のラウンドの開始の前の転写反応
の精製のためである
・ピペット用チップの容器
・種々のインキュベートの段階とPCRプログラムの実行のためのサーマルサイクラー
・結合バッファーや反応バッファー内でのマトリックスのけん濁のための震盪機
・50℃の作業空間、この温度で酵素反応を開始する(ホットスタート)ことと蛍光コン
トロールを採取する間に、PCR反応が冷えるのが早くなりすぎないようにすることを
可能にするため
・PCRおよび転写反応の一時的な貯蔵のための4℃の作業空間
・酵素もしくは調整された反応混合液などの熱に敏感な試薬を貯蔵するための4℃の試薬
立て
・洗浄バッファーを貯蔵するための室温/37℃試薬立て
・多くの操作を実行するための室温/37℃作業空間
・蛍光測定のための試料を調整するための蛍光プレート作業空間
・現在処理されていないプレートを貯蔵するためのホテル(Hotel)
・使用済みのピペット用チップを廃棄する所
この実施例の文中に記述された選別過程の個々のモジュールの関与はそれらの仕様の順番と同様に図1に見られる。
F 結果
選別過程
それぞれの選別過程において、4回目のラウンドから始まる3回の異なる厳しいバッチ
はD−AVPを含まない空のカラムと同様に標的分子のように操作された。ストリンジェンシーは用いられた洗浄の量の変化や低いD−AVPの濃度によっても上昇した。
(必然的に高い)濃度のD−AVPの結合に必要な最初のラウンドの大量の基質は、自動化されたピペット装置によって信頼出来る様に処理出来なかったので、ラウンド1〜3は手動で実行された。4ラウンドから、選別手順は完全に自動化された。
一般的に、最高のストリンジェンシーをもつ鎖の選別されたRNA、すなわち、増幅においてなおゼロコントロールよりも上の有意のシグナルを発する最低のペプチド濃度と最大の洗浄容量によって選ばれたRNAが次のラウンドに用いられた。閾値に到達するのに必要なサイクル数が、シグナルの計測のために用いられた(PCRの進捗の観測を参照)。結局、16の選別ラウンドが実施された。
14ラウンド(D−AVP濃度:30nM)からおよび16ラウンド(D−AVP濃度:10nM)からのdsDNAの母集団がクローニングされ、合計48個のクローンが得られ、配列決定され、配列のアラインメントのあと、いくつかの群に分類された。最も結合能の高い分子群は図3に示されている。この群の全てのクローンは図3の配列のアラインメントの下部に示されている一般的な共通配列を持っていて、以下のような要素を持つ。最初に5’末端と3’末端の2つの相補的な領域(Helix1およびHelix2)があり、7個の対の長さの2本鎖へリックス。2番目に、GuGGWの配列の5個の長さの部分(Box2)。3番目に、7〜9個のヌクレオチドの長さのA−richおよびU−richストレッチで、Cは決して現れなく、多くても1つのストレッチ辺り1つのGは現れる。4番目にGGGGUAGGGMUUGGAWGGGWAの配列の21個の長さの部分(Box2)。Box2の主な特性は4つの厳密に保存された連続したGで、2〜4回起こる。すべての具体的に記載された分子はAVPへ結合し、最もよく結合するのは分子CHF−134−A9である。図3に図解されるAVP結合性分子に加えて、まったく異なった配列を持つ更なる分子は自動化された選別の間に濃縮された(示されていない)これらの分子は有意に悪い結合能を持つ。
自動化された選別に続くD−AVP結合性のアプタマーの、手動で、変異導入的である高いストリンジェンシーの選別によるスクリーニング
A. 材料
精密化学製品および酵素
実施例1を参照のこと
標的分子であるヒトのD−AVP[D−(Arg)−バソプレッシン]
9アミノ酸のペプチドD−AVP(アミノ酸配列:Cys−Tyr−Phe−Gln−Asn−Cys−Pro−Arg−Gly、配列番号1)はハイデルベルクのBACHEM社によって2つのバリアントで作られた。どちらのバリアントも、Pierce社のニュートラアビジンアガロース(NAag)もしくはストレプトアビジン−ウルトラリンク+(SAul+)を用いて、ビオチン−アビジン、もしくはストレプトアビジンとの相互作用を利用して、ペプチドに結合した核酸を結合しなかった核酸から分離することができるようにするため、カルボキシ末端にビオチン基を持っている。ビオチンは追加的に挿入されたリシンを介してカルボキシ末端のGlyに結合していて、二つのバリアントは異なったリンカーがペプチド部分に結合している。アミノ−エトキシ−エトキシ−アセチルアミノ−エトキシ−エトキシ−アセチル(AEEA−AEEAリンカー)からなる親水性のポリエチレングリコールのブリッジはビオチン付加したD−AVP(C−Lys)を生じ
た。より疎水性のε−アミノヘキシル−εブリッジはビオチン付加したD−AVP(C−LC−LC)を生じた。
異なった標的分子のバリアントを選んだ理由は、AVPのような小ペプチドの物理化学的性質はたとえばビオチンのような化学的な部分の修飾によって、大きな分子の時よりも比較的大きく変化するということがあるからである。
自然の標的分子からの逸脱は、選別の過程にて、高い親和性のためにリンカーを必要とする様な望ましくないアプタマーを導く可能性がある。結果的に高いストリンジェンシーの選別のために、手順は2つの異なったAVPの派生物を常に変化させて、上に書かれた2つのアビジンマトリックスの構成物も変化させて実施されたが、これはペプチドに結合するのにリンカー領域を必要として、純粋にペプチドに対してのみ高い親和性によって結合するような望ましい分子を濃縮するのを妨げるような分子の濃縮を避けるためである。
核酸ライブラリーとオリゴヌクレオチドプライマー
実施例1を参照のこと
開始プール
手動で、変異導入する高いストリンジェンシーの選別は、自動化された選別の16ラウンドから回収した2本鎖のプールされたDNAをもって開始された。この目的のために10pmolの16ラウンドからのプールされたDNAがVent exo〜熱耐性DNAポリメラーゼを用いた変異導入PCRによって増幅され、T7 RNAポリメラーゼによって試験管内で転写された。RNAは変性条件下で8M尿素入り8%ポリアクリルアミドゲルから精製され、抽出されアルコールによって沈殿され、選別のために水に入れられた(詳しくは酵素反応を参照のこと)。
B. 選別段階
RNAの変性およびフォールディング;使用されたRNAの量
実施例1を参照のこと。変異導入の増幅による選別の開始時に、500pmolの変異導入されたプールされたRNAは17ラウンドに用いられた。選別のうちに、ストリンジェンシーが上昇するに従って使用されるRNAが少なくなった(29ラウンドで5pmol)。
マトリックスに結合するRNA種の結合および分離
実施例1を参照のこと
D−AVP結合性リボ核酸の選別
D−AVPへの結合反応のために、選別の間にだんだんと少なくなっていく様々な濃度のビオチン付加したD−AVPが残ったRNA種へと加えられ、30分間37℃においてインキュベートされた。これに続いて、ペプチド量と用いられたマトリックスに応じて、3〜20μlの基質が結合バッチへ加えられ、10〜15分間、37℃で震盪しなら一度以上インキュベートされた。マトリックスはそののち、結合していないRNA種を結合したものから取り除くために選別バッファーによって洗浄された。この目的のために用いられた洗浄容量は基質容量の50〜200倍の間である。
溶出
実施例1参照のこと。溶出は、自動化した選別ラウンドの最初の3回の手動で行われたラウンドと同様に実施された。
C. 酵素反応
転写−選別に用いられるRNAの産生
実施例1を参照のこと。生成されたRNAはゲル電気泳動によって変性条件下にて手動で専ら調製された。
逆転写
実施例1;逆転写−手動ラウンド1〜3を参照のこと
PCR−非変異導入的
逆転写されたRNAはまず、非変異導入的条件で系統的に増幅され(実施例1;PCR−手動ラウンド1〜3を参照のこと)、これは、試験管内において直接的に転写されるため、もしくはあらかじめ変異導入的PCR条件において増幅されるためである。
PCR−変異導入的
DNAは、熱耐性DNA ポリメラーゼが高い失敗率を持つような反応条件での2段階PCRプロトコールを用いて増幅され、DNAは変異導入された((Fromant et al.1995 Anal.Biochem.224:347−353)。標準的な条件で増幅された1pmolのDNAは100μlの容量(10mM Tris,pH8.7;50mM KCl;5μg/ml BSA;4.82mM MgCl;0.8M
ベタイン;0.5mM MnCl;3.85mM dNTP;0.55mM dGTP;0.12mM dATP;0.1mM dCTP;2μM DE5.Rプライマー;2μM DE5.T7プライマー)において8UのTaq DNAポリメラーゼで飽和に達するまで以下の温度プロファイルで増幅された:95℃1分、63℃1分、72℃3分、全部で10〜16サイクル。反応後の増幅の進捗は8%のネイティブ・ポリアクリルアミドゲルにて確認された。変異導入の条件で増幅された1pmolのDNAは上記の条件で再増幅された。2回目の変異導入PCRでの増幅のあと、DNAはアルコールで沈殿され試験管内で転写された。
D. 選別の手段
変異導入的PCRによる手動の高いストリンジェンシーの選別は13ラウンド行われた(17〜29ラウンドは自動化された選別の中)。この時の条件は表1に示される。
Figure 0005103187
これに関連して、選別の過程で、ペプチドの濃度はパラメーターのストリンジェンシーが上昇するに従い0.4pMまで減少した。結合するものの中での競合によって最適の分子のみを選ぶためにRNAは過剰に用いられた。それぞれのラウンドにおいて、選別条件を選択することおよび洗浄過程(マトリックスは、ペプチド−RNAの複合体を固定後、固定されたベッド容量の50〜200倍で洗浄された)によって10000以上の減少率は達成された。
高いストリンジェンシーの選別の目的は、16ラウンドの自動化された選別のあとに存在するD−AVP結合性のRNAプールから変異導入と選別によってより最適化された結合物を生成するためである。一般的に、それぞれのラウンドにおいて結合反応は異なったペプチドの濃度によって実行され(シグナル)、それと比較して、1回の反応はペプチドをまったく無しで行われた(コントロール)。最も低いペプチド濃度でも1以上のシグナル/コントロール比率を示している反応があとに続く選別のラウンドに採用された。表はこれら結合反応の条件のみを示している。
最初の4回の選別ラウンドのそれぞれにおいて、結合プールに可能な限り多くの多様性を生成するために、DNAは変異導入された。あとに続くラウンドにおいてDNAは、更なる変異導入の前に、それぞれの場合で改良された結合物を濃縮するために、非変異導入的と変異導入的の交互に増幅された。最後の3ラウンドは更なる変異導入無しに実施された。29ラウンドのあと、DNAはクローニングされ24クローンの配列は決定された。
配列
機能的に結合に必須でない両方のプライマー部分の一定の領域以外の配列解析の結果はアラインメントして図4に示されている。24クローン中、隣接した領域を除外した長さは46〜49塩基の間であり、3クローンは完全に同一であった。残りのものは非常に高い配列相同性を持っていて、それらは自動化した選別のあとの最適の結合物の群の構成物を含んでいる。自動化した選別のあとにもまだ存在していた残りの群は、変異導入の高いストリンジェンシーの選別の選別条件において消失した。すべての選別した分子はすでに図3で図示された典型的な共通配列を持っていて、それは4つの要素で、5’末端および3’末端のHelix1およびHelix2、Box1、A−richおよびU−richwストレッチ、ならびにBox2である。高いストリンジェンシーの選別条件で4つの要素は以下のように変化した。Helix1とHelix2は変化して、異なるがしかしいまだ相補的な配列を含んでいる。Box1の5番目の位置は以前のWの代わりにUのみである(それゆえ決してAではない。)。A−richならびにU−rich Wストレッチにおいて多くても1ストレッチあたり1個あるGの発生は減少した。自動化した選別のあと、15クローンのうち9クローン、すなわち60%はいまだ1ストレッチ辺り1個のGを持っていたが、高いストリンジェンシーの選別ののち、24クローン中6クローン、すなわち25%のみが1ストレッチ辺り1個のGを持っていた。Box2において、自動化された選別ののち、1つのWが2つの位置に現れたが、高いストリンジェンシーの選別ののち、この部分においていずれの分子でも1つのAももはや存在しなくなった。しかし代わりに、いくつかの分子のこの部分に、Uに加えてCが存在する。全体を通じてこの部分には決してGが現れなかったので共通配列の中にHが両方のこの一に存在する。このように、図4に見られたL−(Arg)バソプレッシン結合性のL−RNAのための共通配列は、手動の高いストリンジェンシーの選別のあと29ラウンドからおよび自動化された選別の16番目のラウンドのクローンの配列解析から得られた。
順位付け
クローンはAVPへの結合に関して試験された。すべてのクローンはペプチドへの結合性を示した。クローンCHF−157−B4は比較上最適の結合を示した。競合試験にお
いてCHF−157−B4は自動化した選別のあとの16番目のラウンドからの最適のクローン(CHF−A9)と比較されて測定された。図5にあるようにこの試験において、CHF−157−B4のビオチン付加AVPへの結合の解離定数は9.5nMであり、CHF−134−A9のそれは120nMであった。変異導入の高いストリンジェンシーの選別によって結合の品質はおおまかに見積もって12倍進歩した。
内部PEGスペーサー部分の結合によるAVP結合性アプタマーの開発と切断
方法論
2段階の選別の過程(自動化した選別と手動で変異導入的な高いストリンジェンシーの選別)のあと、最適の結合物を基にして、ヌクレオシドの位置はPEGのスペーサー部分もしくはPEG基(ヘキサエチレングリコール)の結合によって内部的に交換され、変異物は特異的に構築され化学的に合成された。この方法によって分子は短縮されその結合能はさらに最適化された。アプタマーCHF−157−B4(さらなる開発のためにCHF−F−000と呼ばれる)はすべての選別された分子の中で最適の結合物であると証明された。この47塩基の長さのアプタマーから開始して、競合的順位付け試験によって、合成された変異物はお互いにおよび開始分子と比較され、最適の短縮した分子は鏡像異性体すなわちL体核酸として合成された。
PEGスペーサー変異物の合成
構築され試験された変異物はNOXXON Pharma AG社によってヘキサエチレングリコールホスホアミダイトを用いて標準的なホスホアミダイト化学反応で合成され、脱保護ののち、調整された変性ゲル電気泳動(12% PAA、8M尿素、Tris−borate−EDTAバッファー)によって精製され、電気溶出された。
競合的順位付け試験
この試験は放射活性物質で標識したアプタマーと非標識のアプタマーのAVP結合の競合に基づいている。ここで、標識されたアプタマーのそれ自身(非標識)に対する競合の強さを基準にし、それに対して変異物の品質が測定された。比較上、最も強く、基準よりも良く競合した分子は、さらなる変異物を分析する際の新しい基準として用いた。
基準のアプタマーはT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Invitrogen社)によって5’端を[γ32−P](400ATP Ci/mmol;ブランスウィックのHrtmann Analytic社)で標識され、60,000〜120000cpm/pmolの特異的な放射活性である。0.2nMのアプタマーはそののち、ビオチン付加したD−AVP(0.5nM)と過剰量の非標識のアプタマーと共に、もしくはコントロールとして非標識のアプタマー無しで選別バッファー内において1時間インキュベートされた。1μlのSAul+基質上への固定ののち、上清を捨て、50〜100μlの選別バッファーでマトリックスを洗浄し、結合反応はシンチレーションカウンター(米国のBeckman社)によって測定された。
AVP結合性アプタマーCHF−F−000のPEGスペーサーバリアント
自動化した選別のあとの16ラウンドおよびあとに続く高いストリンジェンシーの選別のあとの29ラウンドからのすべてのクローンの配列解析に基づいてBox1とBox2の間にあるアデノシン/ウリジン−richのWストレッチは結局、分子をその機能に影響を与えること無しに短縮するために、ヌクレオシドを内部のPEGスペーサーによって置き換えるのにもっとも好ましい領域であることがわかった。図6は試験されたバリアントを示していて、そこでは5’末端および3’真端は不変のままである。バリアントCHF−F−008およびCHF−F−009は他の全ての試験されたバリアントとコントロール的に、結合を完全に示さない。なぜなら、PEGスペーサーが明らかに分子にとって重要であるBox2に位置しているからである。44ヌクレオチドの長さのバリアントCHF−F−009は、内部で3つのヌクレオシドによって短縮され、47ヌクレオチドの長さの開始分子CHF−F−000がAVPと結合するのと同様の結合でしかないが、最適の分子であると証明された。
分子の末端が不変のバリアントから離れて、図7に描かれたような、5’末端と3’末端がアデニン/ウラジンの豊富なWストレッチの中に置かれ、PEGスペーサーがヘリックスの塩基と取って代わられたようないくつかのバリアントもまた試験された。今やアデニン/ウラジンの豊富なWストレッチは連続的に短縮され、これと平行してhelixもまた最外部の塩基対で短縮された。AVPと結合する試験された分子のうちで、CHF−F−033(40ヌクレオチド)およびCHF−F−037(38ヌクレオチド)が最適と証明された。それらはコントロール分子であるCHF−F−003およびCHF−F−000とちょうど同じだけ結合した。Box1の3’末端のUが除かれた4つのバリアントは有意に悪く、このことはBox1の重要性を明確に示し、完全な機能のためにはこの部分はGUGGUからなるべきであることを示している。これに反して、A−richおよびU−richストレッチの3’末端のU(CHF−F−033およびCHF−F−037を参照のこと)は機能に影響を与えること無しに取り除くことが出来る。図8に2次構造モデルが示されているCHF−F−037は38ヌクレオチドで、結合の質にまったく損失がないテストされた中で最短の分子であるので、鏡像異性体として産生され、生物物理学的に分析され、そして細胞培養試験において最終的に動物試験の効果を証明するために分析された。
3’末端にPEG付加した鏡像異性体CHF−F−037−3’PEGの化学合成と調製
鏡像異性体は、動物実験での適用ののち、鏡像異性体の腎臓における排出を遅くするために、3’末端において共有結合で40kDaの大きなポリエチレン(PEG)へと結合された。これによって大きくなった鏡像異性体によって有意により長い抵抗時間が達成され、そのことで血漿中の大きくなった鏡像異性体の長くなった効果が達成された。
試薬の固相合成
鏡像異性体はAmersham Biosciences社(General Electric Healthcare社、フライブルク)のAktaPilot100 シンセサイザー(synthesiser)によって2’TBDMS RNAホスホアミダイト化学反応(M.J.Damha,K.K.Ogilvie,Methods in Molecular Biology,Vol.20 Protocols for oligonucleotides and analogues,ed.S.Agrawal,p.81−114,Humana Press Inc.1993)を介して固相合成された。L−rA(N−Bz)−,L−rC(Ac),−L−rG(N−ibu)−,L−rUおよびヘキサエチレングリコールホスホアミダイトはマサチューセッツ州ウィルミントンのChemGenes Corp.社から得られた。前記合成はマサチューセッツ州ウィルミントンのChemGenes Corp.社の1000Åの孔径を持つ3’−amino−modified C6 CPGで行われた。アセトニトリル中0.3Mのアビンドン(Abingdon)(UK)のCMS−Chemicals社のベンジルチオテトラゾール、3.5当量のアセトニトリル中0.1Mアミダイト溶液に相当する溶液が15分のカップリング時間でのカップリングに用いられた。酸化キャッピングサイクルが用いられた。オリゴヌクレオチド合成に用いられた他の標準的な溶媒や試薬はBiosolve社(オランダ、バルケンスワード)より得られた。鏡像異性体は合成され(DMT−ON)、脱保護ののち、Amersham Biosciences社製のSouce15RPC Mediumを用いた分取RP−HPLCによって精製された(Wi
ncott F et al 1995 Nucleic Acids Res.23:2677)。5’端のDMT基は80%酢酸(30分間、室温)で取り除かれた。2Mの水性酢酸ナトリウム溶液を加えた後、鏡像異性体はマサチューセッツ州ベッドフォード‘USA)のMillipore Corp.社の5K再生セルロース膜を用いたタンジェンシャルフローろ過(tangential flow filtration)によって脱塩された。精製された3’−端がアミノ基で修飾された鏡像異性体の収量は65〜75OD/μmolの範囲内であった。精製された鏡像異性体のIEX−HPLC、MALDI−TOFおよびCGE分析は図9、10および11に表わされる。
PEG付加
PEG付加(たとえばヨーロッパ特許出願EP 1 306 382を参照)のために、精製された3’端がアミノで修飾された鏡像異性体(18μmol)は水(2.5ml)、DMF(5ml)および5mlのバッファーAの混合液で溶解された。バッファーAの調製:水をクエン酸一水和物(7.00g)、ホウ酸(3.54g)、リン酸(2.26ml)および1M水酸化ナトリウム(343ml)の混合液に加え、1リットルのストック溶液を作製した。このストック溶液は1M塩酸を加えることでpH8.4に調製された。
鏡像異性体のpH値は1Mの水酸化ナトリウムを加えることで8.5に調製された。40kDaのPEG−NHSエステル(アラバマ州(USA)ハンツビルのNektar Herapeutics社)は37℃、0.6当量/30分で加えられ、2.4当量75%〜85%の最大の転換が達成されるまで続けられた。PEG−NHSエステルが加えられる間、反応混合液のpHは1M水酸化ナトリウムを加えることで8〜8.5の値で維持された。
PEG付加された鏡像異性体はAmersham Biosciences社製のSource15RPC媒体を用いて0.1M酢酸トリエチルアンモニウム中の水(バッファーB)およびアセトニトリル(バッファーC)の間のグラディエントでRP−HPLC法で精製された。HPLCカラムへのインジェクションの前に8M尿素’(4ml)、バッファーA(4ml)およびバッファーB(4ml)が反応混合液へ加えられ、95℃15分間熱せられた。過剰量のPEGは5%のバッファーで溶出された。PEG付加された鏡像異性体は10〜15%のバッファーCで溶出された。HPLCの精製度が95%を越える産物を含んだ分画は合わせられ2Mの酢酸ナトリウム(40ml)が加えられた。マサチューセッツ州ベッドフォード‘USA)のMillipore Corp.社の5K再生セルロース膜を用いたタンジェンシャルフローろ過(tangential flow
filtration)によって脱塩されたのち、精製されたPEG付加された鏡像異性体は35〜50%の収量で得られた。240mgの3’端がアミノ修飾された鏡像異性体から始めて、390mgのPEG付加された鏡像異性体が得られた。精製された40kDaのPEG付加された鏡像異性体CHF−F−037−3’PEGのIEX−HPLC分析は図12に示される。
鏡像異性体CHF−F−037の等温熱量計測による生物物理学的性質
方法論
解離定数を決定するための熱量測定はVP−ITCマイクロ熱量計(マサチューセッツ州ノーサンプトンのMicroCal社)を用いて実施された。測定すべき鏡像異性体およびリガンド溶液は測定バッファー(20mM Tris−HCl,pH7.4;150mM Nacl;5mM KCl;1mM MgCl;1mM CaCl)中で、37℃、真空下で脱気された。前記鏡像異性体は装置の測定セル(セル容量:1.43ml
)に2〜6μMの量で加えられ、25μMのリガンド溶液は3μlのイニシャルインジェクションのあと、測定セルへ6秒ごとに7.5μlずつインジェクションされた。測定温度は37℃で2回の連続したインジェクションの間の時間はそれぞれ5分間であった。
結果
非PEG付加の鏡像異性体CHF−F−037およびPEG付加の鏡像異性体CHF−F−037−3’PEGのLAVPに対する、ならびにCHF−F−037−3’PEGのオキシトシンに対する測定の結果は表2にまとめられる。
Figure 0005103187
鏡像異性体の解離定数は、PEG付加および非PEG付加のどちらのフォームでも、1.5nMである。結果として、鏡像異性体はAVPと非常に高い親和性をもって結合する。このことはそれがAVPが関与している病状での治療に使用出来ることを意味する。類似の基質であるオキシトシンもおおまかに10倍低い親和性で結合した。しかしながらこの親和性もまた鏡像異性体を用いてオキシトシンが関与する病状において満足出来る結果を得るのに十分である。AVP結合性鏡像異性体の1.5nMの解離定数は、以前の技術において既に知られているDNA鏡像異性体の解離定数に比べて、約600倍良い(Williams KP et al.1997 Proc.Natl.Acad.Sci USA 94:11285−11290)。
鏡像異性体CHF−F−037の細胞培養による生物学的性質
A. 方法論
(Arg)−バソプレッシンのV受容体への結合の、(Arg)−バソプレッシン結合性鏡像異性体による阻害の分析
この方法の基礎となるのはAVP−V2受容体の相互作用および結果として起こるcAMPの形成の阻害である。腎臓のV受容体を発現しているブタの腎臓上皮細胞細胞株LLC−PK1(ATCC−CL−101)の細胞は96穴マイクロタイタープレートへ1ウェル辺り6X10個播種され、そして37℃でかつ5%CO存在下で、追加的に熱非働化ウシ胎児血清(FCS),4mM L-alanyl−glutamin(GLUTAMAX))、50units/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシンを含んでいるmedium 199(Invitrogen社、カールスルーエ)で培養された。
鏡像異性体は1mMのL−AVP(Calbiochem社)とともにハンクス平衡塩溶液(HBSS)+1mg/ml BSAの中で室温もしくは37℃で0.2ml low profile 96−tubeプレート内でインキュベートされた。2μlの50mM 3−isobutyl−1−methlxanthine(Calbiochem社から得たIBMX溶液)は結合バッチを細胞へ加える直前に加えられた。細胞はAVP
/鏡像異性体バッチを加える20分前に1mM IBMXで前処理された。
刺激を与えるため培地は細胞から吸引され予めインキュベートされた結合バッチが加えられた。37℃30分インキュベーションののち、細胞上清は吸引され、細胞は50μl/wellの溶解バッファーで37℃30分間溶解された。溶解バッファーは”cAMP−ScreenTM System”キット(Applied biosystems社、ダルムシュタット)の構成物であり、これを用いて抽出物のcAMPの含有量が測定された。10μlの抽出物がそれぞれの場合の試験で用いられた。試験は製造者の使用説明書に従って実施された:
アッセイプレート(抗ウサギIgGヤギ抗体がコートされている)内で、10μl/wellのライセートが、50μlの溶解バッファーへ加えられ、製造者の使用説明書に従って希釈された30μl/wellのcAMP−alkaline phosphatase conugateと混合された。震盪しながら室温で1時間インキュベーションが行われた。これに続いて、溶液はウェルから取り除かれ、供給された洗浄バッファーで6回洗浄された。検出のため、100μl/wellのCSPD/Sapphire−II
RTU基質が加えられ、30分間室温でインキュベートされ、そして発光はPOLARstar Galaxy マルチプレートリーダー(BMG LABTECH社、オッフェンブルグ)によって測定された。
(Arg)−バソプレッシンのV受容体への結合の(Arg)−バソプレッシン結合性鏡像異性体による阻害の分析
この方法の基礎と鳴るのはALV−V受容体の相互作用およびそれに続くカルシウムの細胞内の放出の阻害である。血管のV受容体を発現している細胞株A7r5(ラット大動脈の平滑筋細胞由来、ATCC−CRL−144)の細胞は、透明の底を持つ黒色の96穴のマイクロタイタープレート(Greiner Bio−One社、フリッケンハウゼン)へ1ウェル当たり4x10個播種され、そして、37℃および5%CO存在下で、追加的に10%ウシ胎児血清、4mM L−alanyl−L−glutamine(GLUTAMAX)、50units/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシンを含んでいるDMEMで培養された。
鏡像異性体は、5nMのL−AVP(Calbiochem社、シュヴァルバッハ)と共に、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)中で0.2ml low profile 96−tubeプレート内で15〜60分間室温もしくは37℃で、インキュベートされた。HBSSは1μg/mlのBSA、5mMプロベニシドおよび20mM HEPESが補充されていた(HBSS+)。
カルシウム指示薬、Fluo−4が加えられる前に、細胞はそれぞれ200μlのHBSS+によって1度洗浄された。50μlの指示薬バッファー溶液(HBSS+中、10μM Fluo−4(Molecular Probes社,ユージーン,オレゴン州),0.08% Pluronic 127(Molecular Probes社))が加えられ、そして60分間37℃でインキュベートされた。こののち、細胞は3回、それぞれ180μlのHBSS+で洗浄された。
蛍光シグナルの測定は、POLARstar Galaxy マルチプレートリーダー(BMG LABTECH社)で、485nmの励起波長および520nm発光波長において実施された。
複数のサンプルの並列測定のため、96穴プレートの(垂直の)列のウェルはそれぞれの場合で一緒に測定された。このために、ベースラインを設定するための3回の測定の値
ははじめに4秒のインターバルで計測された。測定はそののち中断され、プレートリーダーからプレートは取り除かれ、プレインキュベーションがすでに行われたlow−profile 96−tubeプレートから10μlの刺激溶液がマルチチャネルピペットを用いて計測すべき列のウェルに加えられた。プレートはそののち、プレートリーダーに再び挿入され測定が継続された(4秒インターバルで合計20回の測定)。
得られた測定カーブから、それぞれのウェルの最大蛍光シグナルと刺激前の蛍光シグナルの差が決定され、そして鏡像異性体の濃度に対してプロットされた。
B. 結果
AVP−V受容体の相互作用の阻害
LLC−PK1細胞でのPEG付加および非PEG付加の鏡像異性体CHF−F−037によるAVPとV受容体の相互作用の阻害は図13に示されている。生成されたcAMP量は鏡像異性体の濃度に対してプロットされている。図式評価はコントロールのcAMPの量の50%のみが生成される鏡像異性体の濃度、すなわちIC50が両方のケースで1nMであると示す。同様のテストで約3μMのIC50が見出されている既存の技術Williams K P et al.1997 Proc.Natl.Acad.Sci USA 94:11285−11290)ですでに知られているAVP結合性のDNA鏡像異性体の効率に比べて約3000倍の進歩が、このように得られた。
AVP−V受容体の相互作用の阻害
A7r5細胞におけるAVPとV1受容体の相互作用のPEG付加および非PEG付加の鏡像異性体CHF−F−037による阻害は図14に示されている。A7r5細胞は5nMもしくは異なった濃度の鏡像異性体とともに37℃でプレインキュベートされたAVPによって刺激され、そしてそれによって誘導された細胞内カルシウム放出が測定された。図は、鏡像異性体の濃度上昇の機能による、シグナルの減少のパーセンテージを示す。シグナルは、鏡像異性体が存在しない時に測定した値を100%とした(コントロールの%)。非PEG付加の鏡像異性体は、AVPによって誘導される細胞内カルシウム放出を約6nMの半有効濃度(IC50)で阻害する。PEG付加鏡像異性体は約7nMのIC50値で阻害する。
鏡像異性体CHF−F−037を投与後のラットの利尿の研究
A. 実験手順
鏡像異性体CHF−F−037およびその変異物で40kDaのPEG残基とともに供給されたCHF−F−037−3’PEGの生体内での効果をテストするために、利尿研究が239〜290gの体重のオスのSprage−Dawleyラット(Elevage janvier社、LE GENEST ST ISLE)を用いてaurigon
GmbH社(トゥッイング)にて行われた。
実験手順は、表3に図示されるように、静脈内、もしくは腹腔内に異なった濃度のPEG付加および非PEG付加の鏡像異性体ならびに不活性のコントロール鏡像異性体およびコントロールとして精製されたバッファー溶液(ビークル)を受けた、それぞれが5匹の動物を含む7つの異なったグループを含む。
Figure 0005103187
実際の実験の前に、合計35匹の動物は−5日(研究の開始前)に研究室の環境に慣らされ、そして−2日にそれぞれ、22±3℃、30〜70%の待機湿度の代謝ケージに入れられた。動物は自由で制限無しでいつでも滅菌した水とドライフード(R/M standard diet,autoclaved;Ssniff Spezialdiaeten GmbH社、ゾエスト)にアクセス出来た。−1日に0〜6時間および6〜24時間の水消費ならびに0〜2時間、2〜4時間、4〜6時間および6〜24時間の尿量がそれぞれのグループの1匹の動物で測定された。
0日に薬物がグループA〜Eの動物に尾静脈へ静脈注射(i.v.)で2ml/kg体重の容量でボーラス投与として投与された。薬物がグループaおよびbの動物に2ml/kg体重の容量で腹腔内投与(i.p.)された。すべての動物はインジェクションの直前に体重が量られ、そして対応する投与量は計算された。テスト薬物の投与(0日)後、すべての動物の0〜6時間および6〜24時間の水消費ならびに0〜2時間、2〜4時間、4〜6時間および6〜24時間の尿量が測定された。集められた尿は2〜8℃で貯蔵され、そのオスモル濃度とナトリウム含有量は同様に0〜2時間、2〜4時間、4〜6時間および6〜24時間の器官で測定された。この実験計画はローカルな監査機関(Registration No.209.1/211−2531.2−14/02)によってチェックされ許可を得た。
B. 結果
利用と水消費
図15に示されるように、静脈を介して投与されたCHF−F−037−3’PEGはグループA(ビークルのみ)およびグループB(2000nm/kgの量の不活性の鏡像異性体)に比べてグループC、DおよびEにおいて、尿量の濃度依存的な上昇を示した。この効果は投与後0〜2時間の期間続き、高い投与量のグループ(400および2000nmol/kg)もまたさらに続く期間(2〜4時間および4〜6時間)続いた。非PEG付加鏡像異性体CHF−F−037の腹腔内投与(group b、2000nmol/kg)で同様に最初の2つの期間において尿量の上昇を実現した。0〜6時間の期間の動物の水消費は利尿効果に大部分、連関している;言い換えると、図16に示されるようにラットがより多くの水を飲んだ期間では、より多くの尿量が測定される。尿量と水消費
のパラメーターに関して、後に続く6〜24時間の期間においてはそれぞれのグループ間で有意なさはもはやなかった。
尿のオスモル濃度とナトリウム含有量
図18および19に示されるように、尿のオスモル濃度並びにナトリウム含有量は、静脈注射で活性のあるPEG付加鏡像異性体および活性のある腹腔内注射で非PEG付加鏡像異性体を投与された動物においてコントロールグループの動物と比較して、濃度依存的に有意に低い。ここに、コントロール動物と比較された差違は、PEG付加鏡像異性体の場合の最高用量での静脈内投与、並びに非PEG付加鏡像異性体の場合の腹腔内投与後の6〜24時間において未だ見ることができる。オスモル濃度およびナトリウム含有量の減少は鏡像異性体の特異的な作用の証拠である。AVP−V受容体の相互作用の阻害は腎臓の集合管における水の再吸収の減少を導く。この結果、より多い水は排出される。しかしながら電解質はもはや排出されないので、活性のある鏡像異性体の投与のあと、濃度依存的に尿は有意により希釈される。AVP結合性鏡像異性体はこのように、V2受容体拮抗薬とまったく同じように、利尿薬ではなく、水利尿として働く。
先行する著述ならびに請求項および図面に開示される本発明の特徴は、個別にならびにさまざまな態様における発明の遂行を自由に組み合わせにおいて、本質であることが出来る。
図1は自動化されたRNAの選別の概略図である。 図2は試験管内の選別ロボットの作業空間の概略図である。 図3は自動化された試験管内の選別に続いて生じたAVP結合性のクローンの配列を示す。 図4は試験管内の選別に続いて生じたAVP結合性のクローンの配列および共通配列を示す。 図5は配列CHF−15−B4およびCHF−134−A9の結合様式の比較を示していて、核酸の濃度に応じたAVPへの結合がパーセントで表わされている。 図6は、内部のPEGのスペーサー部分を用いた部位特異的な修飾および切り捨てのあとの配列の変異系と、ここから生じたコンセンサス共通配列を示していて、ここで変異体は不変の5’端および3’端を持つ。 図7は、内部のPEGのスペーサー部分を用いた部位特異的な修飾および切り捨てのあとの配列の変異系と、ここから生じた共通配列を示していて、ここで変異体は不変の5’端および3’端を持つ 図8はAVP結合性の鏡像異性体、CHF−F−037の2次構造モデルの描写である。 図9は3’端をアミノ基で修飾した鏡像異性体、CHF−F−037−3’NHの、IEX−HPLCの方法によって取得されたクロマトグラムである。 図10は3’端をアミノ基で修飾した鏡像異性体、CHF−F−037−3’NHの、MALDI−TOFによって得られた質量スペクトルである。 図11は3’端をアミノ基で修飾した鏡像異性体の、(CGE)キャピラリーゲル電気泳動によって得られた電気記録図である。 図12は40kDaのPEGによって修飾された鏡像異性体、CHF−F−037−3’PEGの、RP−HPLCによって得られたクロマトグラムである。 図13は、鏡像異性体、CHF−F−037およびCHF−F−037−3’PEGによるAVPとV受容体の相互作用の阻害を示していて、鏡像異性体の濃度に応じたcAMPの生合成の減少が1nMのAVPの刺激に際のウェル当たりのcAMPの量で表わされている。 図14AはCHF−F−037によるAVPとV受容体の相互作用の阻害を示していて、鏡像異性体の濃度に応じた、5nMAVPの刺激による放出を100%としたパーセントでの、カルシウムの放出のパーセンテージの減少が示されている。 図14BはCHF−F−037−3’PEGによるAVPとV受容体の相互作用の阻害を示していて、鏡像異性体の濃度に応じた、5nMAVPの刺激による放出を100%としたパーセントでの、カルシウムの放出のパーセンテージの減少が示されている。 図15は薬剤の投与の後のいろいろな期間の後の様々なラットの群の尿量を示した図表である。 図16は薬剤の投与の後のいろいろな期間の後の様々なラットの群の水消費を示した図表である。 図17は薬剤の投与の後のいろいろな期間の後の様々なラットの群の尿中のオスモル濃度を示した図表である。 図18は薬剤の投与の後のいろいろな期間の後の様々なラットの群の尿中ナトリウム量を示した図表である。

Claims (17)

  1. 下記式で表される核酸。
    5' GGGGUAGGGCUUGGAUGGGUAGUACAC - PEG group- GUGUGCGUGGU 3'
    式中
    各ヌクレオチドはL−ヌクレオチドであり、かつ、
    PEG groupは分子量172〜688ダルトンのポリエチレングリコール基である。
  2. 請求項1に記載の核酸であって、前記核酸がバソプレッシンに結合することを特徴とする上記核酸。
  3. ポリエチレングリコール基が分子量344ダルトンであることを特徴とする請求項1または2に記載の核酸。
  4. 請求項2または3に記載の核酸であって、前記バソプレッシンがヒトのバソプレッシンであることを特徴とする上記核酸。
  5. 請求項2〜4のいずれかに記載の核酸であって、前記バソプレッシンが配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むことを特徴とする上記核酸。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の核酸であって、前記核酸が修飾を含み、かつ、修飾がヒドロキシエチル澱粉付加(HESylation(登録商標))およびポリエチレングリコール付加(Pegylation)を含んでなる群から選択されることを特徴とする上記核酸。
  7. 請求項6に記載の核酸であって、前記ポリエチレングリコール付加が直鎖または分岐ポリエチレングリコールによって行われ、かつ、前記ポリエチレングリコールの分子量が20〜120キロダルトンであることを特徴とする上記核酸。
  8. 請求項7に記載の核酸であって、前記ポリエチレングリコールの分子量が30〜80キロダルトンである、上記核酸。
  9. 請求項7に記載の核酸であって、前記ポリエチレングリコールの分子量が40キロダルトンである、上記核酸。
  10. 請求項6に記載の核酸であって、前記ドロキシエチル澱粉付加がヒドロキシエチル澱粉によって行われ、かつ、前記ヒドロキシエチル澱粉の分子量が10〜80キロダルトンであることを特徴とする上記核酸。
  11. 請求項10に記載の核酸であって、前記ヒドロキシエチル澱粉の分子量が30〜80キロダルトンである、上記核酸。
  12. 請求項10に記載の核酸であって、前記ヒドロキシエチル澱粉の分子量が50キロダルトンである、上記核酸。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の核酸および追加的な構成要素を含んでなり、前記追加的構成要素が製薬上許容される担体を含んでなる群のなかから選択されることを特徴とする製薬学的組成物。
  14. バソプレッシンと、請求項1〜12のいずれかに記載の核酸とを含む複合体。
  15. オキシトシンと、請求項1〜12のいずれかに記載の核酸とを含む複合体。
  16. 請求項1〜12のいずれかに記載の核酸を含んでなるバソプレッシンおよび/もしくはオキシトシンの検出のためのキット。
  17. バソプレッシンがアルギニンバソプレッシンである請求項16に記載のキット。
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