JP5102013B2 - 合金型温度ヒューズ - Google Patents
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Description
ヒューズエレメント上にフラックスを塗布し、このフラックス塗布合金片を絶縁体で包囲した構成である。
この合金型温度ヒューズの動作機構は次の通りである。通常、保護しようとする電気機器や電子部品に合金型温度ヒューズが接触して配設されており、電気機器や電子部品が何らかの異常により発熱すると、その発生熱によりヒューズエレメントが液状化され、その溶融金属が既に溶融したフラックスとの共存下、被接合物への濡れと合金の表面張力により分断球状化されて機器への通電が遮断され、この通電遮断で異常部が降温することにより分断溶融合金が凝固されて非復帰のカットオフが終結されるという機構である。
低融点可溶合金片の溶断過程を単純化して考察すると、被保護機器の昇温で低融点可溶合金片が溶融され、その溶融合金がリード導体先端部または電極への濡れ拡がりで引っ張られて細線化され、細線切断されてその切断端部が球状化し、その切断間にアークが発生し、球状化が進んで分断間距離がアーク消滅距離に達するとアークが消滅すると説明できるが、低融点可溶合金片の比抵抗値が高いと分断直前の細線化状態での通電発熱量が高くなってそれだけ溶断動作速度が速くなるので、アークが発生し易くなる。
而るに、近来、環境保全の観点から、合金型温度ヒューズの低融点可溶合金片にもCdやPb等の生体に有害な重金属を含有しないSn−Bi系、Sn−In系、Bi−In系、Sn−Bi−In系、Sn−Bi−Sb系合金が使用されており、Biの比抵抗値(156×10-8Ωm:100℃)がInの比抵抗値(12.1×10-8Ωm:100℃)やSnの比抵抗値(15.8×10-8Ωm:100℃)に較べて1桁高く、これらのBiを含有する低融点可溶合金片の比抵抗値が相当に高くなるために、アークが発生し易く、上記の危険性が更に高くなる。
オーバーロード特性とは、温度ヒューズに規定の電流、電圧を印加している状態で周囲温度が上昇して動作する時にヒューズが損傷したり、アーク、炎等を発生して危険な状態にならないといった外形的安定性のことであり、耐圧特性とは、動作した温度ヒューズが規定の高電圧が掛かっても絶縁破壊を起こすことなく維持できるといった絶縁安定性のことである。
このオーバーロード特性及び耐圧特性の評価方法として代表的なIEC規格60691には、定格電圧×1.1、定格電流×1.5を印加しながら2±1K/minの速度で上昇させて動作した際、アーク、炎等を発生して危険な状態にならないこと、及び動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード線間について定格電圧×2+1000V、両リード線間について定格電圧×2Vを1分間印加して放電したり、絶縁破壊したりしないことと規定されている。
しかしながら、従来の合金型温度ヒューズでは、交流定格250V、7Aを越えると、前記の規格を満たすことは至難である。
低融点可溶合金片に共晶合金を使用する場合やBiを含有する比抵抗値の高い合金を使用する場合、前記の規格を満たすことは一層に困難である。
新版電気工学ハンドブック、電気学会、昭和63年2月28日初版発行の818頁
所定の温度でペレット3‘が溶融されて図10の(ロ)に示すように、圧縮バネ22’が圧縮から解放されると共に引外しバネ21’が圧縮からの解放により伸び、円板コンタクト2’がターミナル11’の先端から隔離されて導通が遮断される。
金属ケース内径3.9mmφ、図10の(ロ)における隔離距離Δg0.8mmのものでは、交流定格250V、15Aを満たし得、高定格に適している。
しかしながら、構造が複雑で故障し易く、経済的に高価である。
そのアークは溶融・気化した低融点可溶合金片の金属ガスに電圧がかかることにより発生し、アーク柱の温度は一般に3000〜6000Kであり、その温度で金属ガスが熱電離してアークが成長するから、アークを冷却することがアーク熱の抑制・消弧に有効であり、電流ヒューズでは硼酸やアルミナなどの消弧剤の熱分解でアークを冷却してアーク熱を抑制することが知られている。
しかしながら、合金型温度ヒューズでは、低融点可溶合金片のフラックスの活性効果、すなわち、温度ヒューズ動作時に低融点可溶合金片の酸化物を除去し、溶融合金の表面張力を下げて濡れを促進するという効果を保証する必要があり、前記消弧剤の使用ではこのフラックスの活性効果を担保し難い。
本発明の更なる目的は、低融点可溶合金片に共晶合金を使用する場合やBiを含有する比抵抗値の高い合金を使用する場合でも、前記の目的を良好に達成できる合金型温度ヒューズを提供することにある。
請求項2に係る合金型温度ヒューズは、樹脂成分にワックス類及び活性剤を添加したフラックスを塗布した低融点可溶合金片のフラックス塗布層上に、加熱脱水反応により無水物になる有機酸を含有し有機酸を含めた全体の融点が低融点可溶合金片の融点以下の被覆層が設けられていることを特徴とする。
請求項3に係る合金型温度ヒューズは、樹脂成分にワックス類及び活性剤を添加したフラックスを塗布した低融点可溶合金片及び通電発熱により低融点可溶合金片を溶断させる抵抗体を基板上に有し、フラックス塗布低融点可溶合金片のフラックス塗布層上に、加熱脱水反応により無水物となり、かつ融点が低融点可溶合金片の融点以下である有機酸の被覆層が設けられていることを特徴とする。
請求項4に係る合金型温度ヒューズは、樹脂成分にワックス類及び活性剤を添加したフラックスを塗布した低融点可溶合金片及び通電発熱により低融点可溶合金片を溶断させる抵抗体を有し、フラックス塗布低融点可溶合金片のフラックス塗布層上に、加熱脱水反応により無水物になる有機酸を含有し有機酸を含めた全体の融点が低融点可溶合金片の融点以下の被覆層が設けられていることを特徴とする。
請求項5に係る合金型温度ヒューズは、樹脂成分にワックス類及び活性剤を添加したフラックスを塗布した低融点可溶合金片がケース内に納められ、ケース内面の少なくとも一部に、加熱脱水反応により無水物になる有機酸の被覆層が設けられていることを特徴とする。
請求項6に係る合金型温度ヒューズは、樹脂成分にワックス類及び活性剤を添加したフラックスを塗布した低融点可溶合金片がケース内に納められ、ケース内面の少なくとも一部に、加熱脱水反応により無水物になる有機酸を含有する被覆層が設けられていることを特徴とする。
請求項7に係る合金型温度ヒューズは、請求項1〜6何れかの合金型温度ヒューズにおいて、有機酸が、低融点可溶合金片の溶断動作時でのアークで脱水反応して無水物になるカルボン酸であることを特徴とする。
請求項8に係る合金型温度ヒューズは、請求項7の合金型温度ヒューズにおいて、カルボン酸が、マレイン酸、イタコン酸、グルタコン酸、グルタル酸、プロピオン酸、フタル酸、桂皮酸、マロン酸、ジグリコール酸の一種または二種以上であることを特徴とする。
請求項9に係る合金型温度ヒューズは、請求項1〜8何れかの合金型温度ヒューズにおいて、低融点可溶合金片がSn−Bi系、Sn−In系、Bi−In系、Sn−Bi−In系、Sn−Bi−Sb系合金の何れかであることを特徴とする。
請求項10に係る合金型温度ヒューズは、請求項1〜9何れかの合金型温度ヒューズにおいて、低融点可溶合金片が共晶合金であることを特徴とする。
(2)低融点可溶合金片が溶融し、溶融合金のリード導体先端または電極側に濡れ拡がり細線化して切断される際、低融点可溶合金片が共晶合金や固液共存巾の狭い合金の場合、または比抵抗値が高く細線化された際の通電発熱量が頗る大きい低融点可溶合金片の場合、切断が特に迅速に行われてアークが発生し易いが、このアーク熱をよく減退乃至は消弧できるので、エージング後においても、動作温度のバラツキの少ない高定格合金型温度ヒューズ、特に環境適合高定格合金型温度ヒューズを提供できる。
図1−1は本発明に係る合金型温度ヒューズの実施例を示す縦断面図である。
図1において、1,1はリード導体、2はリード導体間に溶接等により接合した低融点可溶合金片、3は低融点可溶合金片上に塗布されたフラックスである。フラックスの組成は、ロジンや油変成アルキッド等の樹脂をベースとし、これにワックス類等の軟化点調整剤、ジエチルアミン等アミン類の塩酸塩や臭化水素酸塩またはアジピン酸等の有機酸等を添加したものであり、例えば、樹脂成分90〜10重量部、ワックス類1〜40重量部、活性剤0〜3重量部を使用できる。この場合、樹脂成分には、天然ロジン、変性ロジン(例えば、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン)または油変成アルキッド樹脂などの合成樹脂を使用でき、ワックス類にはステアリン酸やパラフィンなどを使用でき、活性剤には、エチルアミン等アミン類の塩酸塩や臭化水素酸塩、アジピン酸等の有機酸を使用できる。
フラックスの塗布は加熱軟化したものを塗布し、冷却凝固させることにより行うか、イソプロピルアルコールや酢酸ブチル等の有機溶剤で液状化したものを塗布することにより行うことができる。
フラックス量は少な過ぎると、耐エージング性、特に熱による酸化や湿度による反応に対する保護機能が弱く、温度ヒューズの動作速度が悪くなり作動性を保証できず、多くするとアーク熱による炭化量が多くなって動作後の耐圧特性・絶縁特性が悪くなる。従って、フラックス量は、低融点可溶合金片の体積量に対し5〜30%とすることが好ましい。
30はフラックス層3上に付着させた加熱脱水反応により無水物となり、かつ融点が低融点可溶合金片の融点以下である有機酸の被覆層であり、付着量を多くするほどアークの消滅乃至は抑制の効果を大きくできるが、多くし過ぎると、毛細管現象などによる吸着効果が非常に大となって、必要なフラックス量を可溶合金上に存在させることが困難になり、作動性を保証し難くなる。従って、加熱脱水反応により無水物となり、かつ融点が低融点可溶合金片の融点以下である有機酸の体積量は、フラックスの体積量に対し100〜500%とすることが好ましい。加熱脱水反応により無水物となり、かつ融点が低融点可溶合金片の融点以下である有機酸としては、例えばイタコン酸、グルタコン酸、グルタル酸、桂皮酸、プロピオン酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、ジグリコール酸などを挙げることができる。
図1−1において、4は耐熱、熱伝導性に優れた筒状絶縁ケース、例えばセラミック筒である。5は筒状絶縁ケース4の各端と各リード導体1との間を閉鎖した封止材例えば常温硬化型エポキシ樹脂等である。
前記の実施例では、加熱脱水反応により無水物となり、かつ融点が低融点可溶合金片の融点以下である有機酸単体をフラックス層に付着させているが、加熱脱水反応により無水物になる有機酸を含有し有機酸を含めた全体の融点が低融点可溶合金片の融点以下の混合物の被覆層、例えばイタコン酸、グルタコン酸、グルタル酸、桂皮酸、プロピオン酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、ジグリコール酸の少なくとも一種とトリエタノールアミンとの混合物の被覆層をフラックス層上に設けてもよい。
このケースタイプ型の合金型温度ヒューズにおいても、加熱脱水反応により無水物となり、かつ融点が低融点可溶合金片の融点以下である有機酸単体または加熱脱水反応により無水物になる有機酸を含有した混合物を筒状絶縁ケースの内面の少なくとも一部に付着させる態様とすることができる。
そのフラックス層上に加熱脱水反応により無水物となり、かつ融点が低融点可溶合金片の融点以下である有機酸単体または加熱脱水反応によ無水物になる有機酸を含有し有機酸を含めた全体の融点が低融点可溶合金片の融点以下の混合物30を固着若しくは塗布し、このフラックス等塗布ヒューズエレメントを封止材5例えば常温硬化型エポキシ樹脂等をディッピングすることで封止している。
そのフラックス層上に加熱脱水反応により無水物となり、かつ融点が低融点可溶合金片の融点以下である有機酸単体または加熱脱水反応によ無水物になる有機酸を含有し有機酸を含めた全体の融点が低融点可溶合金片の融点以下の混合物30を固着若しくは塗布し、このフラックス等塗布ヒューズエレメントを封止材5例えば常温硬化型エポキシ樹脂等にて被覆している。この導電ペーストには少なくとも導電金属粒体とバインダーを含有し、金属粒体に例えばAg、Ag-Pd、Ag-Pt、Au、Ni、Cu等を用い、バインダーに例えばガラスフリット、熱硬化性樹脂等を用いたものを使用できる。
この発熱体付き温度ヒューズでは機器等の異常発熱の原因となる前兆を検出し、その検出信号で膜抵抗を通電して発熱させ、この発熱でヒューズエレメントを溶断させることができる。
上記発熱体を絶縁基板の上面に設け、この上に例えばカ゛ラス焼き付け膜のような耐熱、良熱伝導性の絶縁膜を形成し、更に一対の電極を設け、各電極に偏平リード導体を接続し、ヒューズエレメントから前記リード導体の先端部に渡ってフラックスを被覆し、絶縁カバーを前記の絶縁基板上に付設し、該絶縁カバー周囲を絶縁基板に接着剤等で封着することができる。
上記抵抗体用電極10,10と膜抵抗6を絶縁基板の裏面に設け、この膜抵抗と絶縁基板面表面のヒューズエレメントとを直列に接続するように抵抗体用電極と絶縁基板面表面のヒューズエレメント用電極とをスルーホールで導通してもよい。
かかる合金としては、 例えば、[A](1)43%≦Sn≦70%,0.5%≦In≦10%,残Bi、(2)25%≦Sn≦40%,50%≦In≦55%,残Bi、(3)25%≦Sn≦44%,55%≦In≦74%,1%≦Bi≦20%、(4)46%≦Sn≦70%,18%≦In≦48%,1%≦Bi≦12%、(5)5%≦Sn≦28%,15%≦In≦37%,残Bi、(6)10%≦Sn≦18%,37%≦In≦43%,残Bi、(7)25%≦Sn≦60%,20%≦In≦50%,12%≦Bi≦33%、(8)(1)〜(7)の何れか100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sb、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、(9)33%≦Sn≦43%,0.5%≦In≦10%,残Bi、(10)47%≦Sn≦49%,51%≦In≦53%の100重量部にBiを3〜5重量部を添加、(11)40%≦Sn≦46%,7%≦Bi≦12%,残In、(12)0.3%≦Sn≦1.5%,51%≦In≦54%,残Bi、(13)2.5%≦Sn≦10%,25%≦Bi≦35%,残In、(14)(9)〜(13)の何れか100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sb、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、(15)10%≦Sn≦25%,48%≦In≦60%,残Biを100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sb、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、等のIn−Sn−Bi系合金の組成
[B](16)30%≦Sn≦70%,0.3%≦Sb≦20%,残Bi、(17)(16)の100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、等のBi−Sn−Sb系合金の組成
[C](18)45%≦Bi≦55%,残In、(19)(18)の組成の100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sb、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、等のIn−Bi系合金の組成
[D](20)50%≦Bi≦56%,残Sn、(21)(20)の100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、等のBi−Sn系合金の組成
等から温度ヒューズの動作温度に適合した融点の組成を選定することができる。
上記合金型温度ヒューズにおいて、被接合体であるリード導体の金属材、薄膜材または膜電極中の粒体金属材が接合後、経時的に固相拡散によりヒューズエレメント中に移行するが、予めヒューズエレメント中に被接合材料と同一元素を添加しておくことによって、その移行量を抑制でき、特性に実質的な影響を来すような被接合物に対してでも、ヒューズエレメントとしての機能を損なうことなく温度ヒューズとして正常な動作を保証することができる。
上記温度ヒューズエレメント用可溶合金に関しては、各原料地金の製造上及びこれら原料の溶融撹拌上生じ、特性に実質的な影響を及ぼさない量の不可避的不純物の含有が許容される。更に、上記合金型温度ヒューズにおいては、リード導体又は膜電極等の被接合材が接合後の固相拡散によりヒューズエレメントに不可避的に移行しても特性に実質的な影響を及ぼさない場合は不可避不純物として許容される。
そこで、かかる不具合を防止するために、図9の(イ)に示すように各リード導体1,1の端をディスク状dに形成し、ヒューズエレメント2の各端を各ディスクdの前面に溶接等によって接合し、ディスク外周がケース内面へ干渉することで、ヒューズエレメント2を筒型ケース4に対し実質的に同心に配置させることが有効である。(同図において3はヒューズエレメント2に塗布したフラックス、30はフラックス層上に固着若しくは塗布した加熱脱水反応により無水物となり、かつ融点が低融点可溶合金片の融点以下である有機酸単体または加熱脱水反応によ無水物になる有機酸を含有し有機酸を含めた全体の融点が低融点可溶合金片の融点以下の混合物の被覆層、5はエポキシ樹脂等の封止材である) 動作後、図9の(ロ)に示すように、ディスクd前面に溶融合金やフラックスを凝集させることにより、フラックス炭化物を含むフラックスや飛散した合金のケース4内面への付着を抑制することができ、更なる絶縁特性、耐圧特性の向上が期待できる。
また、環境保全の目的からCd、Pbなど生体に有害な重金属を含まない元素で構成されており、動作温度設定との関連から多用されている電気抵抗の高いBiを主成分とする可溶合金であれば更なる自己発熱量の増大によって、より一層熱量の大きいアークが発生し易くなり、ユーザ要求よりほど遠く低い定格が限界である。
これに対し、可溶合金外周部に樹脂、活性剤並びに軟化点調整材等の添加剤を含む混合材から成るフラックス被覆層を設け、その外周部に脱水反応にて無水物を形成することができる有機酸、若しくはそれを含む混合材から成る被覆層を設けた熱的動作機構を用いることで、アークが発生する条件下では約3000〜6000Kとも予想されるアークの熱によって熱分解して水蒸気をヒューズ内の密閉雰囲気中に放出させ、アークを冷却することで動作直後のアーク熱が極めて抑制され、フラックスの炭化が極めて軽減されるために、高定格のオーバーロード試験でも炭化フラックス間の再導通に起因する物理的破壊は発生せず、動作後の絶縁抵抗が高く、耐圧特性に優れる合金型温度ヒューズが得られる。
温度ヒューズとしての初期動作温度は試料数を50とし、0.1Aの検知電流を通電しつつ昇温速度1℃/minに設定したオイルハ゛ス中に浸漬し、ヒューズエレメント溶断による通電遮断時のオイル温度を動作温度とした。また経時的動作安定性評価として動作温度-15℃(=125℃)の高温雰囲気中で3000時間エージング経過後の動作性も同様に評価した。
定格を従来品の交流定格3A×250Vに対し、定格電流値か5倍となる交流定格250V、15Aに設定し、オーバーロード特性並びに温度ヒューズ動作後の絶縁安定性をIEC60691に規定されたオーバーロード試験法並びに耐圧試験法に準じた試験に基づき、評価を行った(尚、オーバーロード試験前の加湿試験はここでは省略した)。
即ち、試料に定格電圧×1.1(=275V)、定格電流×1.5(=22.5A)を印加しながら周囲温度を2±1K/minの速度で上昇させて動作した際の破壊等、物理的損傷の有無を確認した。損傷を生じなかった試料のうち、リード導体間が定格電圧×2(=500V)に1分間耐え、且つ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード導体間が定格電圧×2+1000V(=1500V)に1分間耐えたものが耐圧特性に対し合格とし、また直流電圧値が定格電圧×2(=500V)印加時のリード導体間の絶縁抵抗値が0.2MΩ以上で、且つ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード導体間の絶縁抵抗値が2MΩ以上のものが絶縁特性に対し合格とし、耐圧特性及び絶縁特性共に合格したものを絶縁安全性合格とした。尚、試料数は50とし、その全てが絶縁安定性合格となった場合にのみ〇、一つでも不合格となった場合には×と評価した。
フラックス被覆層の外周部にマレイン酸を密に付着させて熱的動作機構を付設した温度ヒューズを使用した。
当該仕様の温度ヒューズに関し、初期動作温度並びにエージング後の動作温度は何れも140℃±1℃であって、経時的動作安定性に優れていると言え、前述した条件でオーバーロード試験を行っても、動作後、破壊等の物理的損傷が全く発生することなく、動作後の耐圧試験についても、リード導体間が定格電圧×2 (500V)に1分間耐え、且つ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード導体間が定格電圧×2+1000V(1500V)に1分間耐え、絶縁特性についても直流電圧値が定格電圧×2(500V)印加時のリード導体間の絶縁抵抗値が0.2MΩ以上で、且つ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード導体間の絶縁抵抗値が2MΩ以上あって、全ての評価項目に対し合格であることから、交流定格250V、15Aを満足する温度ヒューズを得ることができたと言える。
これは、大きいアークが発生し易いAC275V、22.5Aという厳しい試験条件下、マレイン酸がアーク熱によって熱分解し、水蒸気をヒューズ内の密閉雰囲気中に放出させ、アークを消孤することで動作直後のアーク熱が極めて抑制され、フラックスの炭化が極めて軽減されたために炭化フラックス間の再導通に起因する物理的破壊は発生せず、動作後の絶縁抵抗が高く、耐圧特性に優れると言った作用が働いた結果と言える。
実施例1に対し、熱的動作機構のうち、フラックス被覆層の外周部に付着させる有機酸を表1に示すように変えた以外、実施例1と同様とした。
何れの実施例においても、初期動作温度並びにエージング後の動作温度は何れも140℃±1℃であって、経時的動作安定性に優れていると言え、前述した条件でオーバーロード試験を行っても、動作後、破壊等の物理的損傷が全く発生することなく、動作後の耐圧試験についても、リード導体間が定格電圧×2 (500V)に1分間耐え、且つ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード導体間が定格電圧×2+1000V(1500V)に1分間耐え、絶縁特性についても直流電圧値が定格電圧×2(500V)印加時のリード導体間の絶縁抵抗値が0.2MΩ以上で、且つ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード導体間の絶縁抵抗値が2MΩ以上あって、全ての評価項目に対し合格であることから、交流定格250V、15Aを満足する温度ヒューズを得ることが出来たと言える。
これらの何れも、実施例1と同様の理由により良好な経時的動作安定性、動作後のオーバーロード特性及び絶縁安定性が得られたと推定できる。
実施例1に対し、熱的動作機構のうち、フラックス被覆層の外周部に付着させる有機酸に替え、トリエタノールアミン(TEA)にマレイン酸を溶解限界まで加熱溶解させた溶液を塗布した構成とした以外、実施例1と同様とした。
初期動作温度並びにエージング後の動作温度は何れも140℃±1℃であって、経時的動作安定性に優れていると言え、前述した条件でオーバーロード試験を行っても、動作後、破壊等の物理的損傷が全く発生することなく、動作後の耐圧試験についても、リード導体間が定格電圧×2 (500V)に1分間耐え、且つ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード導体間が定格電圧×2+1000V(1500V)に1分間耐え、絶縁特性についても直流電圧値が定格電圧×2(500V)印加時のリード導体間の絶縁抵抗値が0.2MΩ以上で、且つ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード導体間の絶縁抵抗値が2MΩ以上あって、全ての評価項目に対し合格であることから、交流定格250V、15Aを満足する温度ヒューズを得ることが出来たと言える。
これも、実施例1と同様の理由により良好な経時的動作安定性、動作後のオーバーロード特性及び絶縁安定性が得られたと推定できる。
実施例7に対し、トリエタノールアミンに溶解限界まで加熱溶解させる有機酸を表2に示すように変えた以外、実施例7と同様とした。
何れの実施例においても、初期動作温度並びにエージング後の動作温度は何れも140℃±1℃であって、経時的動作安定性に優れていると言える。前述した条件でのオーバーロード試験においても破壊等の物理的損傷が全く発生することなく動作したことから合格であり、動作後の耐圧試験についても、リード導体間が定格電圧×2 (500V)に1分間耐え、且つ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード導体間が定格電圧×2+1000V(1500V)に1分間耐えたことから合格であり、絶縁特性についても直流電圧値が定格電圧×2(500V)印加時のリード導体間の絶縁抵抗値が0.2MΩ以上で、且つ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード導体間の絶縁抵抗値が2MΩ以上あって共に合格であることから、絶縁安定性の評価は〇であった。
これらの何れも、実施例1と同様の理由により良好な経時的動作安定性、動作後のオーバーロード特性及び絶縁安定性が得られたと推定できる。
熱的動作機構のうち、フラックス被覆層の外周部に何も設けなかった以外、実施例1と同じとした。
初期動作特性及びエージング後動作特性に関しては、140℃±2℃と問題無い結果であったが、オーバーロード試験において本体破壊や封止破壊などの物理的損傷が全数発生し、不合格であった。そもそも交流定格250V、3Aしか定格が取れない仕様であり、交流275V、22.5A(定格250V、15A)という厳しい試験条件下では通電昇温中に固体から液体へ急速に変化することで動作直後に大きなアークが発生し、局所的且つ急激な昇温の影響でフラックスの炭化が生じ、これが再導通して破壊へと至った結果であると言える。
実施例1に対し、 熱的動作機構のうち、フラックス被覆層の外周部に付着させる物質を硼酸とした以外、実施例1と同じとした。
初期動作温度が146℃±7℃とバラツキが大きく、エージング後動作特性に関しては試験温度を200℃まで上昇させても動作しないものがあり、温度ヒューズとして最低限の品質をも満たせず実用出来るものではない。
硼酸は電流ヒューズの消弧剤として使用されており、正硼酸(2B2O3・6H2O)がほぼ100℃でメタ硼酸(2B2O3・2H2O)になって脱水し、140℃でテトラ硼酸(2B2O3・H2O)になって更に脱水し、300℃で更に脱水して無水硼酸(B2O3)になる。
この比較例で低融点可溶合金片の融点約139℃を遥かに超える200℃でも動作しないことがある理由は、硼酸は低融点可溶合金片の融点約139℃でも固形を保持し、溶融合金の流動を阻止し、溶融合金の球状化分断を遅らせた結果であると認められる。
実施例1に対し、第二被覆層成分をドデカン二酸とした以外、実施例1と同じとした。
初期動作特性及びエージング後動作特性に関しては、140℃±1℃と問題ない結果であったが、オーバーロード試験において本体破壊や封止破壊などの物理的損傷が全数発生し、不合格であった。これはドデカン二酸が交流275V、22.5A(定格250V、15A)という厳しい試験条件下、通電昇温中に固体から液体へ急速に変化することで動作直後に発生する大きなアーク熱をもってしても水分子を放出せず、消孤作用が無い為に、局所的且つ急激な昇温の影響で起こるフラックスの炭化を抑制出来ず、これが再導通して破壊へと至った結果である。
実施例1では、フラックス層にマレイン酸を付着させたが、本比較例では、実質的に実施例1と同重量のマレイン酸を実質的に実施例1と同重量のフラックスに加熱混合したものとした。
オーバーロード試験において、本体破壊や封止破壊などの物理的損傷が極めて多く発生し、不合格であった。その理由は、フラックスに混合されたマレイン酸の大部分が温度ヒューズ動作時に活性剤として作用し、COOH基が反応してその反応マレイン酸がアーク熱で加熱されても、水分子を放出しなくなった結果であると認められる。
2 低融点可溶合金片
3 フラックス
30 加熱脱水反応により無水物となる有機酸単体または混合物の被覆層
4 ケース
5 封止材
Claims (10)
- 樹脂成分にワックス類及び活性剤を添加したフラックスを塗布した低融点可溶合金片のフラックス塗布層上に、加熱脱水反応により無水物となり、かつ融点が低融点可溶合金片の融点以下である有機酸の被覆層が設けられていることを特徴とする合金型温度ヒューズ。
- 樹脂成分にワックス類及び活性剤を添加したフラックスを塗布した低融点可溶合金片のフラックス塗布層上に、加熱脱水反応により無水物になる有機酸を含有し有機酸を含めた全体の融点が低融点可溶合金片の融点以下の被覆層が設けられていることを特徴とする合金型温度ヒューズ。
- 樹脂成分にワックス類及び活性剤を添加したフラックスを塗布した低融点可溶合金片及び通電発熱により低融点可溶合金片を溶断させる抵抗体を基板上に有し、フラックス塗布低融点可溶合金片のフラックス塗布層上に、加熱脱水反応により無水物となり、かつ融点が低融点可溶合金片の融点以下である有機酸の被覆層が設けられていることを特徴とする合金型温度ヒューズ。
- 樹脂成分にワックス類及び活性剤を添加したフラックスを塗布した低融点可溶合金片及び通電発熱により低融点可溶合金片を溶断させる抵抗体を基板上に有し、フラックス塗布低融点可溶合金片のフラックス塗布層上に、加熱脱水反応により無水物になる有機酸を含有し有機酸を含めた全体の融点が低融点可溶合金片の融点以下の被覆層が設けられていることを特徴とする合金型温度ヒューズ。
- 樹脂成分にワックス類及び活性剤を添加したフラックスを塗布した低融点可溶合金片がケース内に納められ、ケース内面の少なくとも一部に、加熱脱水反応により無水物になる有機酸の被覆層が設けられていることを特徴とする合金型温度ヒューズ。
- 樹脂成分にワックス類及び活性剤を添加したフラックスを塗布した低融点可溶合金片がケース内に納められ、ケース内面の少なくとも一部に、加熱脱水反応により無水物になる有機酸を含有する被覆層が設けられていることを特徴とする合金型温度ヒューズ。
- 有機酸が、低融点可溶合金片の溶断動作時でのアークで脱水反応して無水物になるカルボン酸であることを特徴とする請求項1〜6何れか記載の合金型温度ヒューズ。
- カルボン酸が、マレイン酸、イタコン酸、グルタコン酸、グルタル酸、プロピオン酸、フタル酸、桂皮酸、マロン酸、ジグリコール酸の一種または二種以上であることを特徴とする請求項7記載の合金型温度ヒューズ。
- 低融点可溶合金片がSn−Bi系、Sn−In系、Bi−In系、Sn−Bi−In系、Sn−Bi−Sb系合金の何れかであることを特徴とする請求項1〜8何れか記載の合金型温度ヒューズ。
- 低融点可溶合金片が共晶合金であることを特徴とする請求項1〜9何れか記載の合金型温度ヒューズ。
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