JP5101557B2 - 消臭剤 - Google Patents
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Description
(A)塩化第二鉄
(B)ヒドロキシ基を2つ有し、エーテル結合を有していてもよい炭素数4〜9の脂肪族化合物
本発明の消臭剤は、不飽和脂肪族アルデヒドのニオイ、更にはこれらを原因物質とする種々の臭気、例えば加熱調理油臭や皮脂臭に対する消臭性能に優れる。
成分(A)の塩化第二鉄は、塩化鉄(III)又は第二塩化鉄とも呼ばれ、主として、2,4-デカジエナール等の不飽和脂肪族アルデヒドを酸化分解し、低級の飽和脂肪族アルデヒド、飽和脂肪酸にすることで加熱調理油臭や皮脂臭の原因物質である不飽和脂肪族アルデヒドを減少させ、これらのニオイを低減させるものである。
成分(B)のヒドロキシ基を2つ有し、窒素原子を含まず、エーテル結合を有していてもよい炭素数4〜9の脂肪族化合物(以下、「ジオール化合物」と略称する)は、成分(A)の塩化第二鉄を溶解して成分(A)による効果を持続させると共に、成分(A)により酸化分解され生成した低級の飽和脂肪族アルデヒド、脂肪酸等を吸収することで消臭するものである。成分(A)の塩化第二鉄は、結晶状のもの、あるいは粉末状のものが好ましく、水和物を含んでいても良いが、成分(B)に溶解して液状になるものが好ましい。成分(B)としては、常温(25℃)で液体であるものが好ましく、中でも炭素数4〜8のジオール化合物が好ましい。成分(B)のうち常温で固体であるジオール化合物を用いる場合には、常温で液体であるジオール化合物と混合し、成分(B)の全体として液体となるように配合することが好ましい。
成分(A)の塩化第二鉄の含有量は、成分(B)中への成分(A)の溶解性の観点から、成分(B)のジオール化合物の100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、更には0.1〜10質量部が好ましく、更に特に0.5〜7質量部が好ましい。
本発明の消臭剤において、成分(A)の塩化第二鉄と水が共存すると、加水分解により不均化を起こす原因となる。従って、消臭剤における水の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、水を実質的に含有しないことがより好ましい。但し、ここで規定する水には、塩化第二鉄が水和物の場合の結合水は含まれないものとする。
本発明の消臭剤は、不飽和脂肪族アルデヒド以外のニオイをも消臭する観点から、1種類以上の消臭助剤を組み合わせて用いることが好ましい。
(c2)分子中に1つ以上の陽イオン性基と1つ以上の炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物
(c3)ポリフェノール類
本発明の消臭剤、及びこれと組み合わせて用いる成分(C)を含有する消臭助剤には、成分(A)、(B)、(C)の消臭効果を損なわない範囲で他の消臭成分を含有させることもでき、また、他の消臭成分を、別途消臭助剤として成分(A)及び(B)を含有する消臭剤と分離した状態で組み合わせて用いることもでき、又は第2の消臭助剤として成分(A)及び(B)を含有する消臭剤、成分(C)を含有する消臭助剤と分離した状態で組み合わせて用いることもできる。すなわち、他の消臭成分は、消臭剤及び/又は消臭助剤に混合してもよいし、消臭剤、消臭助剤とは別の容器に収容してもよいし、基材に保持させてもよい。
本発明の消臭剤が液状である場合には、これを基材に含浸させて保持することができる。含浸させて保持する基材は、有機物、無機物のいずれであってもよく、粉状、粒状、繊維を含む固体、ゲル状物等の様々な剤形を採用することができるが、固体の場合は表面に凹凸があるもの又は多孔質のものが好ましい。
本発明の消臭剤を基材に含浸させて保持する方法は、特に限定されないが、成分(A)が成分(B)に溶解された状態の組成物を、保持させる基材に浸漬し、又は基材にスプレー等によって当該組成物を塗布し、室温又はそれ以下の温度で放置することで、概ね均一に担持又は含有させることができる。また、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、あるいはそれらの混合物などの融点の低い基材の場合、融点以上に基材を加熱することにより溶かし、溶融状態の基材に対し、成分(A)が成分(B)に溶解された状態の組成物を配合し、練り混ぜることにより均一に分散させ、粒状あるいはシート状などの形にして融点以下に戻すことにより含有させることができる。成分(A)が溶解された状態の消臭剤を基材に保持させた保持体は、水が含まれていないか、又は、含まれていても5質量%以下であることが好ましく、実質的に水が含まれていないことが好ましい。但し、ここで規定する水には、塩化第二鉄が水和物の場合の結合水は含まれないものとする。
消臭助剤を保持(含有又は担持)させる固体の材質は、有機物、無機物のいずれであっても良い。有機物の具体例として、木炭、竹炭、わら炭、デキストリン、セルロース、発泡セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ゲル、カラギーナンゲル、ジェランガムゲル、寒天ゲル、ゼラチンゲル、ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン樹脂、ポリアクリル酸系の吸水性ポリマーなどがあり、特に発泡セルロース、ポリビニルアルコール、カラギーナンゲル、ジェランガムゲル、ポリアクリル酸系の吸水ポリマーなどが好ましい。無機物の具体例としては、活性炭、シリカ、シリカゲル、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、ハイシリカゼオライト(疎水性ゼオライト)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化銅、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、セピオライト、水和酸化ジルコニウム、カンクリナイト、雲母等があり、中でも消臭効果を期待できる、活性炭、シリカ、シリカゲル、ケイ酸カルシウム、ハイシリカゼオライト(疎水性ゼオライト)、セピオライト、カンクリナイト、ゼオライト、水和酸化ジルコニウムなどが好ましい。
消臭助剤を基材に含浸させて保持する方法も、前述の方法と同様である。
本発明の消臭剤は、成分(A)と成分(B)とを保持させた保持体とし、必要により成分(C)又は他の消臭成分等を消臭助剤として保持させた別の保持体と組合せ、これらが容器内に接触しないように、好ましくは、通気性の良い容器に配置し、置き型タイプ消臭剤として用いることができる。この場合、消臭剤を保持させる基材としては、エチレン酢酸ビニルコポリマーやポリプロピレン樹脂、ポリエチル樹脂あるいはそれらの混合体が好ましい。
本発明の消臭剤をシートに担持(保持)させることによって消臭フィルターとして用いることもできる。例えば、成分(A)が成分(B)に溶解された状態の消臭剤を、フィルターを構成する活性炭等の多孔質部材に付着させることによりフィルター表面に担持させることができる。また、成分(A)が成分(B)に溶解された状態の消臭剤を担持可能な固体(粒状、粉状)に保持させた後に、不織布に交絡若しくは付着(接着、溶着)させる、又はメッシュ状部材に付着させることによって担持させ、消臭フィルターとすることもできる。
本発明の消臭剤及び消臭助剤には、消臭機能を損なわない範囲で、抗菌剤、効カビ剤、抗ウイルス剤、昆虫忌避剤、界面活性剤、色素、香料等を混合することもできるし、又は分離した状態で、第2、第3の消臭助剤としてこれらの成分を組み合わせて用いることができる。
以下に示す各溶液を、塩化第二鉄が5質量%になるように溶剤(各種ジオール、エタノール、イオン交換水)に溶解して調製した。
(実施例1)塩化第二鉄5質量% 1,3-ブタンジオール溶液
(実施例2)塩化第二鉄5質量% 2,3-ブタンジオール溶液
(実施例3)塩化第二鉄5質量% 1,5-ペンタンジオール溶液
(実施例4)塩化第二鉄5質量% 3-メチル-1,3-ブタンジオール溶液
(実施例5)塩化第二鉄5質量% 3-メチル-1,5-ペンタンジオール溶液
(実施例6)塩化第二鉄5質量% 2-メチル-2,4-ペンタンジオール溶液
(実施例7)塩化第二鉄5質量% 2-エチル-1,3-ヘキサンジオール溶液
(比較例1)塩化第二鉄5質量%水溶液
(比較例2)塩化第二鉄5質量%エタノール溶液
悪臭成分として、2,4-デカジエナール(加熱油臭)2μLをヘッドスペースガスクロマトグラフ(HS-GC)用20mLバイヤル瓶に入れる。更に、実施例若しくは比較例の溶液、又はそれぞれの溶剤のみを20μL添加し、1日後にHS-GCを行った。なお、悪臭のみのサンプルをブランクとした。
この試験結果を表1に示す。
HS-オートサンプラー;PERKIN ELMER製 HS40XL
バイヤル保温時間;35℃30分保温後、加圧2分、注入0.3分
GC;HEWLETT PACKARD5890
カラム液相;(5%フェニル)メチルポリシロキサン 無極性
カラム長さ;30m、内径;0.32mm、膜厚;0.25μm
昇温条件;40℃(8℃/分)−60℃(4℃/分)−200℃
溶剤のみによる悪臭の減少率(%)は下記〔数2〕により求めた。
Y:溶剤のみ+悪臭成分のときの悪臭のピークアバンダンス
Z:ブランクの悪臭成分のピークアバンダンス(=40000)
一方、成分(A)の塩化第二鉄を成分(B)に該当するジオール化合物(常温で液体)の溶剤に溶解させた実施例は、比較例に比べて高いデカジエナールの減少率が確認された。これは、成分(A)と成分(B)を混合してから1日後であっても(A)塩化第二鉄が安定に存在し、強い酸化力を維持できるためと考えられる。更に、成分(B)が、ヒドロキシ基を1,3-位や2,4-位といった、n位とn+2位に有する溶剤である場合には、より高いデカジエナールの消臭効果が認められた。特に、実施例7の2-エチル-1,3-ヘキサンジオールに塩化第二鉄を溶解させた消臭剤には極めて高い消臭効果が認められた。
以下のようにして、ポリマー含浸タイプの消臭剤を調製した。
塩化第二鉄を5質量%含有する2-エチル-1,3-ヘキサンジオール溶液を粒状のエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)1gに対して0.05g添加し、全体を均一にかき混ぜた後、室温で一晩静置した。
塩化第二鉄を含有しない、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール溶液のみを粒状のEVA1gに対して0.05g添加し、全体を均一にかき混ぜた後、室温で一晩静置した。
EVAのみを室温で一晩静置した。
1Lビーカーのそれぞれの中に、上記のEVAタイプ消臭剤又はEVAそのものを1g入れた直径40mmシャーレを置いた。更に消臭助剤として、実施例8、比較例3及び比較例4については、10質量% 2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール水溶液0.2mLを含浸させた直径50mmのろ紙を用い、実施例9については、イオン交換水0.2mLを含浸させた直径50mmのろ紙を用い、各々のろ紙を各々の1Lビーカーの壁面に約1cm2のセロハンテープで固定し、1Lビーカーを食品用ラップフィルムで覆い密封した。
そこへ、ガラス製100mL注射器を用いて2,4-デカジエナールのガスを100mL注入し、そのまま静置し、1日後に官能評価を行った。なお、2,4-デカジエナールのガスは、5Lテドラーバッグに2,4-デカジエナール(試薬)50μLを直径40mmシャーレに入れたものを入れて、封をして90℃15分間保温して調製した。
官能評価は3名の被験者によって行い、2,4-デカジエナールによる酸化油臭の強度を、下記の6段階臭気強度に従って、0.5刻みで評価した。評価結果は、3名の被験者の評価のうち2名以上が共通する評価を採用した。なお、悪臭のみのサンプルをブランクとした。この評価結果を表2に示す。
5:強烈なニオイ
4:強いニオイ
3:楽に感知できるニオイ
2:何の匂いかわかる弱いニオイ(認知閾値)
1:やっと感知できるニオイ(検知閾値)
0:無臭
皮脂臭(加齢臭)の原因物質であるノネナールとオクテナールに対する消臭試験を行った。具体的には、悪臭成分としてのノネナール又はオクテナール1μLを、ヘッドスペースガスクロマトグラフ(HS-GC)用20mLバイヤル瓶に入れ、更に、前述した実施例7又は比較例1の溶液を20μL添加した後、HS-GCを行った。なお、消臭剤なしの悪臭のみのサンプルをブランクとした。
この試験結果を表3に示す。
なお、HS-GCの測定条件は前述の実施例1から7のデカジエナールに対する消臭試験と同様である。また、以下の値についても同様に計算した。塩化第二鉄+溶剤による悪臭成分の減少率(%)は前記〔数1〕により求めた。
以下のようにして、置き型タイプの消臭剤を調製した。
仕切りで隔離された二つの収容部を備える容器(縦9cm、横12cm、奥行き3.5cm)を消臭用容器として用いた。消臭用容器は、底面の周縁から立ち上がる周壁部を有し、収容部の天面又は側面に開口した挿入部から消臭剤及び消臭助剤を挿入できる。収容部の天面又は側面には、通気性を確保するためのスリットが設けられている。
実施例10と同じ消臭用容器を用い、消臭剤を保持する基材として、EVAに代えてEVAとポリプロピレン(PP)の混合樹脂(EVA53%、PP47%)を用いた以外は、実施例10と同様とした。
実施例10と同じ消臭用容器を用い、消臭剤を保持する基材として、EVAに代えてEVAとPPの混合物樹脂(EVA53%、PP47%)を用い、更に、消臭助剤として用いた2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールの2質量%水溶液25gに代えてイオン交換水25gを用いた以外は、実施例10と同様とした。
実施例10と同じ消臭用容器を用い、消臭剤を保持する基材として、EVAに代えてEVAとPPの混合樹脂(EVA53%、PP47%)を用い、更に、消臭助剤として用いた2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールの2質量%水溶液25gに代えてラウロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミンオキシドの5質量%水溶液25gを用いた以外は、実施例10と同様とした。
実施例10と同じ消臭用容器を用い、消臭剤を保持する基材として、EVAに代えてEVAとPPの混合樹脂(EVA53%、PP47%)を用い、更に、消臭助剤として用いた2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールの2質量%水溶液25gを緑茶乾留エキス5質量%水溶液25gを用いた以外は、実施例10と同様とした。
実施例10と同じ消臭用容器を用い、消臭剤を保持する基材として、EVAに代えてEVAとPPの混合樹脂(EVA53%、PP47%)を用い、更に、消臭助剤を保持する基材としてポリアクリル酸系の吸水性ポリマー0.5gに代えてシリカ5gを用いた以外は、実施例10と同様とした。
20Lのステンレス容器の各々に、実施例10〜15の置き型消臭剤を入れ、ステンレス容器中に小型のファンと、悪臭サンプルとして変性なたね油(200℃8時間保存を3回繰り返したもの)0.2gを加え、食品用ラップフィルムで密閉した。
加熱調理油臭に対する消臭試験で用いた変性なたね油0.2gに代えて、皮脂臭として枕カバー抽出液(古い枕カバーからジクロロメタンを用いて抽出したもの)0.1gを用い、加熱調理油臭に対する消臭試験と同様に評価を行った。なお、枕カバー抽出液は、3名の被験者が、2-オクテナール、2-ノネナールの悪臭を強く感知した。
加熱調理油臭と皮脂臭に対する消臭効果の評価結果を表4に併せて示す。
なお、実施例10と、実施例11又は実施例15とを比較すると、消臭剤を含浸させる基材(担持材)としては、EVAとPPの混合樹脂、シリカに高い消臭効果が認められた。また、成分(C)としては、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールを用いた実施例10、11、15に高い消臭効果が認められた。
Claims (6)
- 次の成分(A)及び(B)を含有する消臭剤。
(A)塩化第二鉄
(B)ヒドロキシ基を2つ有し、窒素原子を含有せず、エーテル結合を有していてもよい炭素数4〜9の脂肪族化合物 - 成分(A)の含有量が、成分(B)の100質量部に対して0.1〜20質量部である請求項1記載の消臭剤。
- 水の含有量が、5質量%以下である請求項1又は2記載の消臭剤。
- 次の成分(C)を含有する消臭助剤と組み合わせて使用される請求項1〜3のいずれかに記載の消臭剤。
(C)(c1)ヒドロキシアミン化合物、(c2)分子中に1つ以上の陽イオン性基と1つ以上の炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物、及び(c3)ポリフェノール類から選ばれる化合物 - 請求項1〜4のいずれかに記載の消臭剤を用いる加熱調理油臭又は皮脂臭の消臭方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の消臭剤を用いる不飽和脂肪族アルデヒドを原因物質とする悪臭の消臭方法。
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