JP5089533B2 - ロボットの干渉回避方法及びロボットシステム - Google Patents
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ロボットの経路探索とは、初期位置と目標位置との間の経路において、ロボットとワーク等との干渉があった場合に、干渉回避位置・姿勢を探索し、干渉しない経路を作成する方法である。
たとえば、特開平5−250023号(特許文献1)は、コンフィギュレーション空間法を用いて、ロボットのジョイント座標空間上で障害物と干渉しないで移動できる自由空間を求めてから、その空間で移動コストが小さくなる滑らかな経路を探索することを開示する。
ロボットを障害物から大きく離した位置に初期位置や目標位置を設定する場合は、各位置で干渉が発生する可能性は少ない。しかしながら、溶接ロボットなど実作業を行うロボットでは、初期位置及び目標位置を、障害物などの周囲環境を考慮せずに単純に動作パターンを付加することで作成することがよくあり、その場合、初期位置及び目標位置で干渉が発生し、上述した経路探索法では経路を作成できないことがある。
本発明のロボットの干渉回避方法は、所定のポジションに位置するロボットと障害物との干渉を回避する干渉回避方法であって、前記ロボットが存在すべき領域である存在領域を設定する領域設定ステップと、前記ロボット上に複数の対象点を設定し、前記存在領域内に位置する対象点に対しては、存在領域の境界から離れる方向で且つ存在領域の境界からの距離偏差が小さいほど大きなスカラー量を有する移動ベクトルを設定し、前記存在領域外に位置する対象点に対しては、存在領域外の部分を存在領域内に入れるべく存在領域内に向かう方向で且つ前記対象点が存在領域内にある時よりもさらに大きなスカラー量を有する移動ベクトルを設定するベクトル設定ステップと、設定された移動ベクトルを基に、前記ロボットの干渉状態を回避する干渉回避ステップと、を含むことを特徴とする。
好ましくは、前記存在領域を、ロボットの先端に備えられたツールが存在すべき領域とした際に、前記領域設定ステップでは、前記ツールの先端点に対向する障害物の面を境界として備える空間を前記存在領域として設定し、前記ベクトル設定ステップでは、前記ツール上に対象点を設定するとよい。
好ましくは、前記干渉回避ステップは、前記移動ベクトルの合成ベクトルを基に前記ロボットの干渉状態を回避するとよい。
さらに好ましくは、上述したロボットの干渉回避方法が備える各ステップを順次繰り返し実行することで、干渉のないロボットの位置・姿勢を求めるとよい。
本発明のロボットシステムは、ロボットと該ロボットを制御する制御装置とを備えるロボットシステムであって、前記制御装置は、所定のポジションに位置するロボットと障害物との干渉を回避する干渉回避装置を備えていて、前記干渉回避装置は、前記ロボットが存在すべき領域である存在領域を設定する領域設定部と、前記ロボット上に複数の対象点を設定し、前記存在領域内に位置する対象点に対しては、存在領域の境界から離れる方向で且つ存在領域の境界からの距離偏差が小さいほど大きなスカラー量を有する移動ベクトルを設定し、前記存在領域外に位置する対象点に対しては、存在領域外の部分を存在領域内に入れるべく存在領域内に向かう方向で且つ前記対象点が存在領域内にある時よりもさらに大きなスカラー量を有する移動ベクトルを設定するベクトル設定部と、設定された移動ベクトルを基に、前記ロボットの干渉状態を回避する干渉回避部と、を有していることを特徴とする。
また、本発明に係るロボットシステムによると、所定のポジションに位置するロボットと障害物との干渉を確実に回避しつつ、所定の作業を確実に行うことができる。
なお、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。さらに、以下においては、垂直多関節型の6軸ロボットについて説明するが、本発明は、このような型式又は軸数のロボットに限定して適用されるものではない。
図1及び図2を参照して、本実施形態に係るロボットシステムの全体構成について説明する。図1は、このロボットシステム1の斜視図、図2は、ロボット2のスケルトン図である。
図1及び図2に示すように、このロボット2は、据付ベースに近い第1軸212から順に、第2軸210、第3軸208、第4軸206、第5軸204及び第6軸202までの回転軸を備える。据付ベースに近い第1軸212をロボット原点と呼ぶこともある。また、このロボット2は、据付ベースに近い第1リンク211から順に、第2リンク209、第3リンク207、第4リンク205、第5リンク203及び第6リンク201まで備える。各リンクは剛性部材からなる。
このロボットシステム1には、ロボット2を制御する制御部が接続されていると共に、ロボット2のオフライン教示データを作成する作成装置が備えられている。本実施形態の場合、この作成装置内に、ロボット2の干渉状態を回避する教示データを作成する干渉回避装置400が備えられている。この干渉回避装置400は、所定のポジションに位置するロボット2と障害物との干渉を回避する機能を有し、ロボット2すなわちツール214の初期位置、目標位置又は溶接動作中にロボット2とワーク300とが干渉すると、この干渉を確実に回避するオフライン教示データを作成する。
図3に示すように、干渉回避装置400は、ロボット2が存在すべき領域である存在領域を設定する領域設定部410を有している。さらに、ロボット2と障害物(ワーク300)とが干渉する時に、ロボット2の各部位(対象点)に対して、存在領域に位置する部位には、存在領域の境界から離れる方向で且つ存在領域の境界に近いほど大きなスカラー量を有する移動ベクトルを設定し、存在領域外に位置する部位には、存在領域内に向かう方向で且つロボット2の部位が存在領域内にある時よりもさらに大きなスカラー量を有する移動ベクトルを設定するベクトル設定部420を有している。加えて、移動ベクトルの合成ベクトルを基に、ロボット2の干渉状態を回避する教示データを作成する干渉回避部430と、を有している。
図4には、干渉回避装置で実行される処理のフローチャートが示されている。ロボットと障害物(ここではワーク300)が干渉している場合には、以下のように処理される。
まず、ステップ1(以下、ステップをSと記載する)において、与えられた任意の位置でのロボット2の位置・姿勢、この場合、ロボット2の初期位置・姿勢(開始位置・姿勢)を設定する。
S3では、ロボット2の存在領域を決定する。この処理は、領域設定部410で行われる。
S4では、ロボット2の各部が存在領域内にあるかをチェックする。
S5では、存在領域の内側にある部分は、存在領域の境界から離れかつ境界に近いほど大きい移動ベクトル(回避方向に向かうベクトル)を与え、外側にある部分は、存在領域内に向かい且つ存在領域内にある時よりも大きい移動ベクトルをそれぞれ与える。S4の処理及びS5の処理は、ベクトル設定部420で行われる。
S7では、S6で求めた位置を開始位置・姿勢として、S2へ戻る。S6の処理は、干渉回避部430で行われる。
すなわち、任意の位置が与えられた時、まずS1を行い、S2で位置・姿勢生成の終了判定を行い、終了しない場合はS3〜S7を行った後、S2に戻り再び終了判定を行い、以後、終了判定で終了とみなされるまでS2〜S7を繰り返す。
まず、S1においては、与えられた任意のロボット2の位置・姿勢を、この干渉回避処理を開始する開始位置・姿勢に設定する。本実施形態においては、図5に示すようなロボット2の位置・姿勢を与え、開始位置・姿勢として設定する。なお、図5(A)及び図5(B)に示すように、このロボット2の第5リンク203、第6リンク201がワーク300に干渉しているとする。
次に、S2においては、S1で設定された開始位置・姿勢で、ロボット2がワーク300に干渉していないか否かをチェックする。このS2において干渉があると判定された場合、処理はS3に移る。本実施形態においては、図5に示す位置において、上述したように、第5リンク203及び第6リンク201とワーク300(障害物)とが干渉しているので、処理はS3へ移される。
存在領域の設定方法のひとつとして、たとえば、図6(A)に示すようなロボット2の位置・姿勢であるときに、図6(B)に示すように、先端点から全方位的(3次元空間に広がるように)に探査ベクトルを生成し、各方向にて先端点からその方向沿いに探査してゆき、この探査ベクトルが最初に当たる面(ワーク300の内面)を境界とする領域(紙面の上下面、右側面、紙面の表裏面の5面で囲まれる空間)を、ロボット2の存在領域とする。
さらに、図6に示すようなワーク300が一面だけが開口された中空四角柱ではなく、障害物であるワーク310が図7に示すような両底面が開口されている場合、以下のようにして、ロボット2が存在すべき領域が設定される。
上述したのはツール214が障害物であるワーク300に包囲されている場合であったが、以下において、ツール214が障害物であるワーク300に包囲されていない場合における存在領域の規定方法について説明する。
この場合であっても、基本的には、存在領域はオペレータが適宜設定できるものであって、作業の効率や次の作業への移行のしやすさなどを鑑み、任意に設定できる。しかしながら、本実施の形態では、以下の方法で存在領域を設定している。
次に、S4においては、ロボット2の各部位に設定された対象点が、S3で設定した存在領域の内外のいずれにあるかを判定する。
ここで、この対象点の選び方について説明する。
本実施形態においては、図9に示すように、第5リンク203及び第6リンク201がワーク300に干渉している。そのため、第5リンク203の干渉している部位には対象点508、第6リンク201の干渉部位に対象点505が設定される。加えて、ツール214には尖った先端点があり、ここに対象点501が設定される。また、第6リンク201の下部の尖った部位に対象点506が設定される。これら対象点501,505,506,508を補間するように、対象点502,503,504,507が設定され、全部で8個の対象点が設けられている。なお、対象点の設定方法は、上述したものに限定されるものではなく、たとえばオペレータにより適宜設定されるものであっても構わない。
S5においては、複数の対象点について、存在領域内にある場合は、存在領域の境界から離れる方向を備えると共にその境界に近いほど大きくなるスカラー量を備えた移動ベクトルを与え、存在領域外にある場合には、存在領域内側に向かう方向を備え、かつ存在領域内にある場合よりも大きくなるようなスカラー量を備えた移動ベクトルを与える。このように、干渉を回避する方向のベクトルであって、上述したスカラー量を与えることにより、存在領域外の部分を存在領域内に入れることを優先し、かつ、障害物に近づいている部分を障害物から離すことが可能となる。
図10には、S5の処理にて移動ベクトルが設定された様子が示されている。
次に、S6において、S5の対象点の移動ベクトルを合成した合成ベクトルを生成して、この合成ベクトルを用いて、ロボット2自体の回避位置・姿勢の変化量を求める。このとき、存在領域内にある対象点が存在領域外に出ないように変化量を調整することも好ましい。この変化量から求めた、位置・姿勢を回避位置・姿勢とする。この回避位置・姿勢を用いて、ロボット2の座標逆変換を行い、各軸の回転角度を算出する。
以上の説明では、ロボット2の初期位置・姿勢に関して説明を行ったが、目標位置・姿勢であっても同様な処理を行えばよい。
図11には、以上述べた干渉回避処理を行った結果が示されている。
図11(A)には、図10に示す干渉状況を回避するための合成ベクトル(詳しくは、合成ベクトルによる平行移動方向と回転方向)が示されている。この合成ベクトルに基づいて、ロボット2の先端部を移動させた結果が、図11(B)に示されていて、これが回避位置・姿勢である。
上述した実施形態において、開始位置を固定して開始姿勢だけを変えて、または、開始姿勢を固定して開始位置だけ変えて、回避位置や回避姿勢を生成するなど、目的に応じて、S6の変化量を変更することも可能である。このようにすると、所望の干渉回避位置や干渉回避姿勢を実現することも可能である。つまり、ロボットのコンフィギュレーション空間で干渉しない位置・姿勢を探索するよりも、実空間への変化量を直接操作して、所望の姿勢(位置)を直接的に得ることができる。
また、上述したロボットの干渉回避方法を、オンラインで用いることで干渉のないロボット制御をリアルタイムで行うこともできる。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
2 ロボット
3 スライダ
212 第1軸
210 第2軸
208 第3軸
206 第4軸
204 第5軸
202 第6軸
211 第1リンク
209 第2リンク
207 第3リンク
205 第4リンク
203 第5リンク
201 第6リンク
300 ワーク
400 干渉回避装置
410 領域設定部
420 ベクトル設定部
430 干渉回避部
Claims (5)
- 所定のポジションに位置するロボットと障害物との干渉を回避する干渉回避方法であって、
前記ロボットが存在すべき領域である存在領域を設定する領域設定ステップと、
前記ロボット上に複数の対象点を設定し、前記存在領域内に位置する対象点に対しては、存在領域の境界から離れる方向で且つ存在領域の境界からの距離偏差が小さいほど大きなスカラー量を有する移動ベクトルを設定し、前記存在領域外に位置する対象点に対しては、存在領域外の部分を存在領域内に入れるべく存在領域内に向かう方向で且つ前記対象点が存在領域内にある時よりもさらに大きなスカラー量を有する移動ベクトルを設定するベクトル設定ステップと、
設定された移動ベクトルを基に、前記ロボットの干渉状態を回避する干渉回避ステップと、
を含むことを特徴とするロボットの干渉回避方法。 - 前記存在領域を、ロボットの先端に備えられたツールが存在すべき領域とした際に、
前記領域設定ステップでは、前記ツールの先端点に対向する障害物の面を境界として備える空間を前記存在領域として設定し、
前記ベクトル設定ステップでは、前記ツール上に対象点を設定することを特徴とする請求項1に記載のロボットの干渉回避方法。 - 前記干渉回避ステップは、前記移動ベクトルの合成ベクトルを基に前記ロボットの干渉状態を回避することを特徴とする請求項1又は2に記載のロボットの干渉回避方法。
- 請求項1〜請求項3のいずれかに記載されたロボットの干渉回避方法が備える各ステップを順次繰り返し実行することで、干渉のないロボットの位置・姿勢を求めることを特徴とするロボットの干渉回避方法。
- ロボットと該ロボットを制御する制御装置とを備えるロボットシステムであって、
前記制御装置は、所定のポジションに位置するロボットと障害物との干渉を回避する干渉回避装置を備えていて、
前記干渉回避装置は、前記ロボットが存在すべき領域である存在領域を設定する領域設定部と、前記ロボット上に複数の対象点を設定し、前記存在領域内に位置する対象点に対しては、存在領域の境界から離れる方向で且つ存在領域の境界からの距離偏差が小さいほど大きなスカラー量を有する移動ベクトルを設定し、前記存在領域外に位置する対象点に対しては、存在領域外の部分を存在領域内に入れるべく存在領域内に向かう方向で且つ前記対象点が存在領域内にある時よりもさらに大きなスカラー量を有する移動ベクトルを設定するベクトル設定部と、設定された移動ベクトルを基に、前記ロボットの干渉状態を回避する干渉回避部と、を有していることを特徴とするロボットシステム。
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