JP5088619B2 - 部分改良地盤の変形量の簡易算定法 - Google Patents
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Description
この工法は目的に応じて任意の改良形状で地盤を改良することが可能であるが、改良対象範囲に対して柱状(ないし杭状)の改良体を所定間隔で多数造成するか、あるいは平面格子状の改良体を造成することが一般的である。
いずれにしても、改良対象範囲全体に対する地盤改良率は、地盤改良の目的や原地盤の状況に応じて設定され、それに基づいて改良体の形状や造成間隔、改良範囲が適正に決定されるものである。
そのため、そのような部分改良地盤全体の変形量を事前に予測算定する場合には3次元有限要素法による高度の解析を行うしかなく、そのためには厳密なモデル化が必要であり、したがって解析モデルの作成や実行に多大な手間と労力を要し、必然的にかなりのコストと時間を要することが不可避であって、事前の予備検討として簡易に行うようなことは現実的ではない。
そして、そのために、本発明においては、部分改良地盤の等価剛性と改良率との関係を、単位周期構造体の縦横比と改良体の剛性と原地盤の剛性とをパラメータとして予め求めて簡易チャート化しておき、その簡易チャートを用いて部分改良地盤の等価剛性を簡易に求めることを主眼とする。
(a)は直径lRの柱状の改良体をx方向(幅方向)の間隔lx、y方向(長さ方向)の間隔lyをもって配列して造成した場合であって、この場合の単位周期構造体は2辺がlx,lyの矩形(lx=lyの場合には正方形)の中心に直径lRの柱状の改良体が配置されたものである。この場合の改良率R、すなわち単位周期構造体の面積に対する改良体の面積の比、つまりは部分改良地盤全体の面積に対する改良体全体の面積の比は
そして、本実施形態においては、上式で求められる各方向の等価剛性と改良率Rとの関係を、単位周期構造体のパターンをパラメータとして予め簡易チャート化しておくことにより、その簡易チャートを用いて部分改良地盤の各方向の等価剛性(軸剛性およびせん断剛性)を簡易に求めるものである。
図2(a)〜(d)に示す簡易チャートは柱状の改良体の場合において、lx/ly=1(つまり正方形配列)の場合のものであり、図3(a)〜(f)に示す簡易チャートは格子状の改良体の場合において、lx/ly=1,2,3とした場合のものあり、いずれもパラメータES/ERあるいはGS/GRを0、0.2、0.4、0.6、0.8としたものである。
図4はその全体作業手順の概要を示すフローチャートである。
まず、(1)地盤調査を行った結果から液状化層の深度(液状化層厚)を決定し、それに基づき、(2)液状化後に部分改良地盤に作用する外力を決定する。
一方、(3)改良体の形状(柱状あるいは格子状)とその剛性、単位周期構造体の縦横比(lx/ly)を決定する。また、改良率を仮決定し、その改良率に対応する液状化後の等価剛性を簡易チャートにより求める。
そして、(4)等価剛性と外力とにより変形量を算定し、設計条件を満足しなければ改良率を修正して条件を満足するまで以上の手順を繰り返す。なお、その際に必要であれば改良率の修正に併せて、あるいはそれに代えて、他の条件(単位周期構造体のパターンや改良体の剛性等)の見直しを行っても良い。
以上を設計条件を満足するまで繰り返し、条件を満足すれば改良率を確定させることにより、(5)側方流動対策の決定とする。
(1)液状化層厚の決定
図5において層厚H4で示す砂層が液状化対策が必要な層であり、その範囲を地盤改良するとする。図示例の場合には格子状の改良体の造成による部分地盤改良とし、単位周期構造体のlx=15m、ly=5mとし、したがってlx/ly=3とする。
改良体の前面および背面の液状化層が全て液状化するとして、液状化後に地盤改良体にかかる外力を算定する。
護岸前面側(水面を原点とする座標Z1として示す)においては、Z1=0〜H1までは河川あるいは海の水圧がかかり、Z1=H1〜HI+H2までは水圧+土圧がかかる。すなわち、地盤の単位体積重量γt、水の単位体積重量γWとすると、
P1=γwZ1 at Z1=0〜H1
P1=γwZ1+γt(Z1−H1) at Z1=H1〜H1+H2
護岸背面側(地下水位を原点とする座標Z2として示す)においては、Z2=0において土被り圧がかかり、Z2=0〜H4は土被り圧+地下水圧がかかる。すなわち
P2=γtH3 at Z2=0
P2=γtH3+γtZ2 at Z2=0〜H4
上記の外力により地盤改良体にはその横断面に沿う鉛直面(z−x面)に沿ってせん断変形が生じるので、ここでは部分改良地盤のその方向の等価せん断剛性GzxHを図3(d)に示した簡易チャートにより求める。この場合、改良体のせん断剛性GRをセメント系地盤改良を想定してGR=38.5MN/m2とし、原地盤のせん断剛性GSは液状化によりGS=0.1MN/m2になると想定して、簡易チャートにおけるパラメータGS/GR=0とする。
そして、改良率Rの仮決定をR=50%とすれば、単位周期構造体の縦横比lx/ly=3であるから、図6に示すように簡易チャートの縦軸GzxH/GR=0.43、ゆえに、等価剛性GzxH=38.5×0.43=16.5MN/m2として求められる。
上記の外力を負荷した際の部分改良地盤の変形量を算定する。その算定は2次元弾性有限要素法によるか、あるいは、より簡易な手法として、部分改良地盤全体をせん断棒にモデル化することにより行うことができ、いずれの場合も以下に示すようにほぼ同様の結果が得られる。
(4−1)2次元弾性有限要素法による場合
図5に示している各諸元、H1=3m、H2=7m、H3=2m、H4=10m、lx=15m、ly=5m、γt=17kN/m3、γw=10kN/m3を用いて、2次元弾性有限要素法により変形量を算定する。その結果、図7に示すように最大変形量が3cmと算定された。
(4−2)せん断棒による場合
図8に示すように、部分改良地盤全体をその等価剛性と同等の剛性を有するせん断棒にモデル化し、そのせん断棒に上記の外力を作用させた際に生じる変形量を算定する。この場合
改良体背面側の外力 P2=(34+204)×10/2=1190kN/m
改良体前面側の外力 P1=30×3/2+(30+149)×7/2=671.5kN/m
外力の合力 P=P2-P1=1190-671.5=518.5kN/m
等価せん断剛性 GzxH=16.5MN/m2=16.5×103kN/m2
等価せん断バネ k=GzxHW/l=16.5×103×15/10=24.8×103kN/m2
水平方向変形量 x=P/k=518.5/24.8×103=0.02m=2cm
この場合の算定結果は、2次元弾性有限要素法による場合の算定結果に比べて若干の誤差があるものの、この種の解析においては両者の結果は実質的に同等であるといえるし、少なくとも評価結果に影響しない範囲内の誤差であるといえる。
以上で算定された変形量が設計条件を満足すれば、改良率の仮決定(上記の場合はR=50%)が妥当であったのでその改良率を最終決定として対策決定とする。変形量の算定結果が設計条件を満足しなければ改良率を変更して以上の手順を繰り返す。すなわち、変形量が過大であれば改良不足であるので改良率を大きくするように変更し、変形量が過小であれば改良過剰であるので改良率を小さくするように変更し、満足すべき結果が得られるまで以上の手順を繰り返せば良い。勿論、その際に必要であれば、すなわち改良率の修正のみでは条件を満足できない場合には、単位周期構造体のパターンや改良体の剛性も併せて見直せば良い。
たとえば、上記実施形態では、液状化が想定される護岸の側方流動防止対策としての部分地盤地盤を対象として、その液状化後の変形量を算定する場合の適用例を具体例として挙げたが、本発明はそのような場合のみならず、地盤改良の目的やその用途、規模を問わず、柱状ないし格子状の改良体による単位周期構造体の集合体としての部分改良地盤の設計、施工に際して、その変形量を事前に算定する必要のある場合全般に広く適用できることは当然である。
たとえば、上記実施形態では柱状の改良体の場合の簡易チャートとして、単位周期構造体のパターンが縦横比Lx/Ly=1(正方形配列)のもののみを例示したが、他の縦横比(つまり非正方形配列に対応するもの)をパラメータとする簡易チャートも予め作成しておくと良い。
同様に、格子状の改良体の場合の簡易チャートとしても、x方向とy方向の改良体の幅lRが異なるものや、縦横比がLx/Ly=1,2,3以外のもの等、他のパターンに対応する簡易チャートを作成しておくと、様々な単位周期構造体のパターンに幅広く対応することが可能であって適用範囲をより拡大することが可能である。
Claims (5)
- 原地盤に柱状ないし格子状の改良体を造成することによって改良対象範囲に所定の改良率の部分改良地盤を築造するに際し、築造後の部分改良地盤の変形量を事前に簡易に予測算定するための方法であって、
部分改良地盤の全体を、所定領域の改良体とその周囲の原地盤からなる単位周期構造体の集合体として築造することとして、該部分改良地盤の等価剛性と改良率との関係を、前記単位周期構造体の縦横比と改良体の剛性と原地盤の剛性とをパラメータとして予め求めておき、
前記関係に基づいて改良率を決定するとともにその改良率に対応する部分改良地盤の等価剛性を求めて、その等価剛性と部分改良地盤全体に作用する外力に基づいて部分改良地盤の変形量を算定することを特徴とする部分改良地盤の変形量の簡易算定法。 - 請求項1記載の部分改良地盤の変形量の簡易算定法であって、
単位周期構造体の集合体として築造される部分改良地盤の等価剛性と改良率との関係を、改良率を横軸とするとともに、改良体の剛性に対する部分改良地盤の等価剛性の比を縦軸とし、改良体の剛性に対する原地盤の剛性の比、および前記単位周期構造体の縦横比をパラメータとする簡易チャートとして作成しておくことを特徴とする部分改良地盤の変形量の簡易算定法。 - 請求項2記載の部分改良地盤の変形量の簡易算定法であって、
部分改良地盤を構成する単位周期構造体を剛性の異なる2つの弾性体の複合体と見なすとともに、該複合体を該複合体と等価な剛性を有する単一の弾性体からなる均質体と見なして該均質体の剛性を数学的均質化理論に基づいて求め、その均質体の剛性を前記部分改良地盤の等価剛性として簡易チャートを作成しておくことを特徴とする部分改良地盤の変形量の簡易算定法。 - 請求項1,2または3記載の部分改良地盤の変形量の簡易算定法であって、
部分改良地盤の変形量の算定を2次元弾性有限要素法により行うことを特徴とする部分改良地盤の変形量の簡易算定法。 - 請求項1,2または3記載の部分改良地盤の変形量の簡易算定法であって、
部分改良地盤の変形量の算定を、該部分改良地盤全体をその等価剛性と同等の剛性を有するせん断棒にモデル化することにより行うことを特徴とする部分改良地盤の変形量の簡易算定法。
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