JP5077031B2 - 洗浄剤の回収方法 - Google Patents

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本発明は、自動車、機械、精密機器、電気、電子等の各種工業分野における部品等の洗浄などに使用される水溶性の洗浄剤において、部品等の洗浄に伴い水が溶解した洗浄剤から水を効率よく分離する洗浄剤の回収方法に関する。
自動車、機械、精密機器、電気、電子等の各種工業分野において扱われる部品等は、その加工の際に、加工油、ワックス、グリース、フラックス等が使用されるが、これらの中には、水溶性加工油などの水を含むものも多く存在し、加工後に、それらの水を含む汚れを除去するため、水系洗浄剤による洗浄、炭化水素系洗浄剤やハロゲン系洗浄剤による水切り洗浄、アルコール系やグリコールエーテル系などの水溶性を有する溶剤による洗浄が行われている。
水溶性を有する洗浄剤(以下、洗浄剤と言う。)は、水を溶解して除去でき、部品等の錆などの問題も少なく、蒸留等により再生し、再使用できるなどの特徴があり、水を含む汚れの除去だけでなく、水系洗浄剤で洗浄し、純水でリンスした後に付着する純水の除去等にも使用されているが、洗浄を続けるうちに水分濃度が次第に増加して、洗浄性や乾燥性が悪化するため、それらの性能を保つために洗浄剤を単蒸留やフラッシュにより脱水し、繰り返し使用することが実施されている(例えば、特許文献1、2参照)。
しかし、従来の単蒸留やフラッシュによる脱水方法では、水分とともに洗浄剤も多く蒸発し、廃棄されるため、洗浄剤の性能を維持できる水分濃度に保つためには、その回収率が低くなる問題がある。
洗浄剤の回収率を高めるためには、多段蒸留や膜分離による洗浄剤の脱水方法が有効であるが、これらは設備費用が高価となり、運転操作も極めて煩雑となる問題がある。
特開平7−308501号公報(請求項1) 特開2006−22167公報(請求項3)
本発明は、特に複雑な装置を必要とすることなく、水が溶解した洗浄剤から高い回収率で水分を分離することが可能な脱水方法を提供するものである。
かかる事情をふまえ、本発明者らは前述の問題点を解決すべく種々の検討を重ねた結果、目的の脱水方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、水を含む洗浄剤を蒸留して脱水する方法において、前記洗浄剤に沸点が30℃以上100℃以下であるハロゲン系溶剤を混合した後に、蒸留して洗浄剤を分離することを特徴とする洗浄剤の回収方法に関する。
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
本発明の回収方法は、水溶性加工油などの水を含む汚れの除去や、水系洗浄後に付着する水の除去などに使用される水溶性のグリコールエーテル類、エステル類、アルコール類などを主剤とした沸点が概ね130℃以上の洗浄剤に対して好ましく適用することができる。
洗浄剤としては、例えば、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールt−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、乳酸エチル、乳酸ブチル、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ブタンジオール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどを主剤としたものが例示できる。水を溶解して除去する性能を維持できる範囲であれば、他の成分が混合されたものであっても適用することができる。
本発明で使用するハロゲン系溶剤としては、具体的には、塩化メチレン、トリクロロエチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエチレンなどの塩素系溶剤や、ブロモプロパンなどの臭素系溶剤、ヘプタフルオロシクロペンタン、テトラフルオロブタン、ペンタフルオロブタン、ヘキサフルオロブタン、ヘプタフルオロブタン、オクタフルオロブタン、ヘキサフルオロペンタン、ヘプタフルオロペンタン、オクタフルオロペンタン、ノナフルオロペンタン、デカフルオロペンタン、ヘプタフルオロヘキサン、オクタフルオロヘキサン、ノナフルオロヘキサン、デカフルオロヘキサン等のハイドロフルオロカーボン類、HFC−365mfc、HFC−43−10mee、HFE−347pc−f、HFE−347mcf、HFE−458mecf、HFE−449mec−f、HFE−55−10mec−fc、HFE−54−11mec−f、HFE−449mccc等のハイドロフルオロエーテル類等を例示することができる。
特に、安全性や環境保護の観点から、引火点がなく、オゾン層破壊係数がなく、地球温暖化係数の低いヘプタフルオロシクロペンタン、HFC−365mfc、HFC−43−10mee、HFE−347pc−f、HFE−449mcccなどを好適に使用することができる。
これらのハロゲン系溶剤は、1種または2種以上を組み合わせて使用することもでき、これらの効能を保持する範囲で、他の成分を混合して使用することもできる。また、洗浄剤の沸点に応じて、それより70℃以上低い沸点のものを選択して使用することがより好ましい。
本発明で使用するハロゲン系溶剤は、沸点が30℃以上100℃以下のものを好適に使用できる。沸点が30℃未満のハロゲン系溶剤を使用した場合は、洗浄剤とハロゲン系溶剤を分離する蒸留工程において、ハロゲン系溶剤を液化し回収することが容易ではなく、また、沸点が100℃を超えるハロゲン系溶剤を使用した場合は、前記蒸留工程において100℃を超える加熱が必要となり、洗浄剤の熱劣化等が起こり易く、好ましくない。
本発明の回収方法においては、洗浄剤100容量%に対して、ハロゲン系溶剤10容量%以上を混合することが好ましい。より好ましくは15容量%以上500容量%以下である。10容量%未満の場合、洗浄剤の脱水効果が得られ難く、ハロゲン系溶剤の混合量が多い程、洗浄剤の脱水効果は高くなるが、500容量%を越えて混合しても、その脱水効果は変わらない。
本発明で使用するハロゲン系溶剤は、洗浄剤との相溶性が高く、単に撹拌するだけで速やかに混合することができるものである。洗浄剤とハロゲン系溶剤を混合する手段としては、混合槽を設けて洗浄剤及びハロゲン系溶剤を投入し、各液の流動によって混合する方法、混合槽に撹拌機を設けて撹拌混合する方法、それらの液をラインミキサーなどに通して混合する方法など、従来の混合方法を使用することができる。
また、本発明で使用するハロゲン系溶剤は水の溶解度が低いため、洗浄剤との混合比率や洗浄剤の水分濃度によっては、それらの混合液を、水を主とする水相と洗浄剤及びハロゲン系溶剤の混合物である溶剤相に2相分離させることができる。さらに、本発明で使用するハロゲン系溶剤の比重が1を超えているため、水相と溶剤相の比重差を大きくすることができ、静置するだけでも短時間で水相を上部に、溶剤相を下部に分離でき、水相を簡単に取り除くことができる。
混合液を2相分離させた場合に、水相を分離除去する手段としては、上部に液の抜き出しラインを配置した静定槽を設け、混合液を上相と下相に分離させ、上相を抜き出しラインより抜き出す方法、或いは静定槽の底部に液の抜き出しラインを設けて、下相を抜き出す方法などを採用することができる。静定槽にコアレッサーを設けて、混合液をコアレッサーに通すよう配置すれば、上下相への分離をさらに速めることができる。また、吸水フィルターを設けて混合液を接触させ、水分を吸収除去することも可能である。なお、静定槽は、前記混合槽と兼ねることが好ましい。
ハロゲン系溶剤を混合し、2相分離させて水相を除去した洗浄剤は、次いで蒸留を行い、洗浄剤からハロゲン系溶剤及び水を蒸留分離する。本発明で使用するハロゲン系溶剤は、その沸点が洗浄剤の沸点より大幅に低いため、単に洗浄剤を蒸留して脱水するよりも低温度で蒸留を行うことができ、熱劣化などの洗浄剤への悪影響が少なく、高効率で洗浄剤と分離することができる。
蒸留には、処理液を貯留し加熱する蒸留釜と、蒸留釜に連通接続され処理液の蒸気を凝縮液化させる冷却器を必須の手段として構成されたもので、被処理液に含まれる洗浄剤とハロゲン系溶剤を蒸留分離できる従来の装置を使用することができる。
蒸留をより効率的、安全に行うため、前記蒸留釜内或いは蒸留釜と冷却器の間に、例えば、ワイヤーメッシュ、デミスター、邪魔板などを設けて洗浄剤飛沫が蒸気に同伴するのを防止したり、蒸留釜の下部に開閉装置を介して貯留タンクを設け、さらに貯留タンクに、例えば、冷却コイルなどの冷却手段を設けて、蒸留後の洗浄剤を蒸留釜から貯液タンクに抜き出し、冷却した後に取り出すことが好ましい。
蒸留釜の加熱手段は、各種ヒーターを蒸留釜に設け、直接加熱することも可能であるが、ヒーター、スチーム、熱媒油などの加熱手段を蒸留釜の外に設けて、蒸留釜を通して間接的に処理液を加熱したり、スチームや熱媒油の循環ラインを蒸留釜内に設け、処理液を間接的に加熱する方式が、安全性が高く望ましい。
冷却器は、例えば、コイル式、シェル&チューブ構造のものや二重管式、プレート式熱交換器など従来の熱交換器を使用することができる。
これらにより構成された蒸留器に真空ポンプ、エゼクターなどの真空発生手段を設け、減圧蒸留を行うことも可能である。
冷却器の凝縮液排出口と混合手段を接続し、冷却器で液化されたハロゲン系溶剤を混合手段に送り、再利用することができる。この場合、冷却器で凝縮する液はハロゲン系溶剤の溶解度以上の水を含んでいるので、冷却器と混合手段の間に水分離器を設けて、水を分離したハロゲン系溶剤を再使用することが望ましい。
本発明の回収方法は、特に複雑な装置を必要とすることなく、高い回収率で洗浄剤を脱水し、洗浄剤を繰り返し使用可能とすることができる。
実施例1〜14
分液ロートに、所定量の純水を加えて溶解した下記の洗浄剤を量り取り、さらに所定量の下記のハロゲン系溶剤を量り取り、撹拌して混合した。この際、水が2相分離する場合は、分液ロートを静置し、10分後に分離した下相を抜き出した。この混合物(2相分離した場合は、下相の液)を丸底フラスコに移し、温度調整したオイルバスで加熱して、洗浄剤中のハロゲン系溶剤濃度が5wt%以下になるまでハロゲン系溶剤を蒸発させた。丸底フラスコに残った洗浄剤を回収液として、重量、水分濃度、洗浄剤濃度を測定し、洗浄剤の回収率を式(1)により算出し、下記評価基準により評価した。
水分濃度:カールフィッシャー水分測定装置(三菱化学製)を用いて測定した。
洗浄剤濃度:ガスクロマトグラフGC−14A(島津製作所製)を用いて測定した。
式(1)
回収率(wt%)=[回収液の重量(g)×回収液の洗浄剤濃度(wt%)
×(100−回収液の水分濃度(wt%))÷洗浄剤の処理量(g)]×100
回収率の評価基準
◎:95wt%以上、○:90wt%以上95wt%未満、
△:80wt%以上90wt%未満、×:80wt%未満
洗浄剤及び溶剤の種類:
HC−AD50(東ソー株式会社製)
3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール(MMB)
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)
プロピレングリコール−n−プロピルエーテル(PNP)
ハロゲン系溶剤の種類:
HFE−347pc−f
HFC−365mfc
HFE−449mccc
比較例1〜3
丸底フラスコに、所定量の水を加えて溶解した洗浄剤を量り取り、温度調整したオイルバスで加熱して、洗浄剤が所定の水分濃度になるまで洗浄剤と水分を蒸発させた。丸底フラスコに残った洗浄剤を回収液として重量及び水分濃度を測定し、洗浄剤の回収率を式(2)により算出し、上記評価基準により評価した。
式(2)
回収率(wt%)=[回収液の重量(g)×(100−回収液の水分濃度(wt%))
÷洗浄剤の処理量(g)]×100
これらの結果を表1に示す。
Figure 0005077031
本発明による回収方法によれば、単に洗浄剤を蒸留する方法に対して、より低温で、高い回収率で洗浄剤を脱水することが可能である。また、水溶性洗浄剤に対するハロゲン系溶剤の混合比率を調整することによって、高い回収率を保ったまま、洗浄剤中の水分を任意の水分濃度に減少させることができる。

Claims (3)

  1. 水及び、グリコールエーテル類、エステル類、アルコール類から選ばれる1種以上を含む洗浄剤を蒸留して脱水する方法において、前記洗浄剤に沸点が30℃以上100℃以下であるハイドロフルオロカーボン類またはハイドロフルオロエーテル類から選ばれる1種以上の溶剤を混合した後に、蒸留して洗浄剤を分離することを特徴とする洗浄剤の回収方法。
  2. 水及び、グリコールエーテル類、エステル類、アルコール類から選ばれる1種以上を含む洗浄剤を蒸留して脱水する方法において、前記洗浄剤に沸点が30℃以上100℃以下であるハイドロフルオロカーボン類またはハイドロフルオロエーテル類から選ばれる1種以上の溶剤を混合した後に、2相分離した水相を除去し、溶剤相を蒸留して洗浄剤を分離することを特徴とする洗浄剤の回収方法。
  3. 前記溶剤が、炭素数3〜6のハイドロフルオロカーボン類またはハイドロフルオロエーテル類から選ばれる1種以上を主成分とする溶剤であり、前記洗浄剤100容量%に対して10容量%以上を混合することを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄剤の回収方法。
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