JP5072053B2 - 飛来物探査装置および映像取得手段の設置方法 - Google Patents
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Description
このような高さは、当該風力発電装置が設置された場所の近隣に生息する鳥類(猛禽類など)の飛行高さ、渡り鳥の巡航飛行の高さに達する場合もある。そして、飛行する鳥類は高速で回転するブレードを視認しにくいためか、ブレードに衝突して絶命する事故(バードストライク)が発生している。
V = (1−f2/f1)×音速
という式が成り立ち、f2の戻り時間から飛来物までの距離Xが測定できる。
飛来物が接近してきたと判断した場合に、前記ブレード角度制御手段がブレードを回転停止ポジションに変更するのである。
また、前記の飛来物探査装置は、風上前方における飛来物を捉えることとしているが、前方のみでは十分ではない場合がありうる。飛来物を捉える領域として広域をカバーするには多数のカメラモジュール(C−MOSセンサなど)が必要となってしまう。その場合には、制御に係るシステムの大型化、メンテナンスの複雑化などが伴うこととなってしまう。
更に、ウィンドファームのように、風力発電装置が多数設置されていると、探査しなければならない領域が広がり、ますます多くのカメラモジュールが必要となってしまう。
また、請求項6から請求項7に記載の発明の目的は、飛来物によるブレードの破損やバードストライクを合理的に減らすことに寄与する映像取得手段の設置方法を提供することにある。
請求項1記載の発明は、地上に立設させたタワー、そのタワーに固定されたナセル、およびそのナセルに対してハブを介して回転自在に固定された複数のブレードを備えた風力発電装置の周囲の飛来物を検知する飛来物探査装置に係る。
すなわち、ドームミラーと、そのドームミラーが反射する映像データを撮影する撮影手段とを備えた映像取得手段を、風力発電装置の周囲三カ所に備え、 前記の撮影手段が撮影した映像データを連続的に取得するとともに、複数の映像取得手段による映像データに基づいて飛来物の接近を連続的に探査する解析手段を備え、 前記の各映像取得手段の映像取得可能領域がすべて重なる部位に風力発電装置が位置するように各映像取得手段を設置したことを特徴とする。
「飛来物」とは、鳥類などの生き物の他、風に飛ばされてくる物体を含む。
「ドームミラー」とは、半球状の曲面を鏡面とした鏡である。頂点の延長上では、360度の視覚を得ることができる。
「映像取得可能領域」とは、撮影手段(一般的にはカメラ)の解像度、飛来物の大きさ、ドームミラーの反射率などの条件によって決定される。
「解析手段」とは、複数の画像を比較し、風力発電装置に向かって接近するように動くモノがあるか否かを解析する。
飛来物の動きを三次元で解析するには、複数のドームミラーに写った画像が必要である。また、風力発電装置の周囲の全方位からの飛来物の発見および解析には、最低三つの映像取得手段が望ましい。
本請求項に記載の発明では、三つの映像取得手段の映像取得可能領域がすべて重なる部位に風力発電装置が位置するように各映像取得手段を設置するので、どの方向からの飛来物の動きであっても三次元で解析することができる位置に、風力発電装置が位置することとなる。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の飛来物探査装置を限定したものである。
すなわち、風力発電装置が複数存在する場合における隣り合う風力発電装置では、少なくともひとつの映像取得手段が隣り合う各風力発電装置の飛来物の接近に対する探査を兼ねることとしている。
複数の風力発電装置が存在する場合には、前記の映像取得手段の配置が合理的でないと、多数の映像取得手段が必要となってしまう。たとえば、風力発電装置毎に最低三つの映像取得手段が必要なので、風力発電装置の三倍の数が必要となってしまう。
そこで、隣り合う風力発電装置では、少なくともひとつの映像取得手段が隣り合う各風力発電装置の飛来物の接近に対する探査を兼ねることとし、映像取得手段を合理的に配置した。それによって、風力発電装置の三倍よりは少ない数の映像取得手段で足りることとなる。
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の飛来物探査装置を限定したものである。
すなわち、 前記の解析手段が飛来物を検知した場合には、前記の風力発電装置に備えられたブレード角度制御手段がブレードを回転停止ポジションに変更する制御信号を出力する制御信号出力手段を備えたことを特徴とする。
「回転停止ポジション」とは、ブレードが風を受けても回転しないポジションをいい、代表的には、フェザリングポジションまたは回転速度の十分な減速であるが、ブレード回転を停止させるためのブレーキを補助的に用いる場合、ブレーキをメインとしてブレードの回転を停止させる場合も含む。回転の減速制御手段としては、ブレード全体のピッチ角を変更するピッチ制御機と、揚力を失うようなブレード形状とピッチ角とを選択させるとともに停止時にはブレード先端が90度向きを変えてブレーキとするストール制御機とがある。
なお、風力発電装置はフェザリングポジション以外にも、強風に応じて回転効率を落とすようなポジションを選択可能に形成されていることが多い。回転を完全に停止してしまうと運転再開に時間が掛かるが、十分な減速の場合には運転再開が容易であるので発電ロスを減らすことができるからである。
解析手段の解析によって飛来物を探知した場合には、ブレード角度制御手段がブレードを回転停止ポジションに変更するように制御する。その結果、ブレードの回転は停止または十分な減速をする。
停止または十分な減速をしているブレードであれば、飛来する鳥が視認しやすいため、自ら回避する可能性が高まる。また、ブレードはハブから放射状に3枚程度固定された細身の形状をなすものが多いので、飛来物が鳥以外の単なる物体である場合でも、ブレードに衝突する確率を低めることができる。
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の飛来物探査装置を限定したものであり、
前記の撮影手段には、モノクロのC−MOSセンサを用いることとしたことを特徴とする。
「C−MOSセンサ」を採用したのは、CCD素子よりも露光時間の制御が容易であり、飛行速度の速い鳥類の画像を捉えるのに適しているからである。また、レーザ光の照射などの設備が不要となる。
また、曇天などで自然光が不足している場合にも、CCD素子よりも適している。
「モノクロ」という限定をしたのは、カラーのC−MOSセンサよりも約3倍の感度を引き出せるからである。例えば、ローノイズでダイナミックレンジを採用した高感度、500fpsの高速度での静止画撮影が可能なモノクロのC−MOSセンサであれば、曇天時における30fps程度のシャッター速度での撮影が可能となる。
モノクロのC−MOSセンサによる撮像にて、飛来物探査装置を機能させるので、飛行速度の速い鳥類の画像を捉えるのに適している。また、曇天時や夕暮れ時など、自然光が弱い場合での撮影も可能となる。
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の飛来物衝突回避システムを限定したものである。
すなわち、飛来物探査装置が検知した飛来物の予想到達時間を算出する到達時間算出手段を備え、ブレード角度制御手段は、その予想到達時間に達する前にブレードの角度を回転停止ポジションに変更するように制御することを特徴とする。
「到達時間算出手段」とは、飛来物探査装置が飛来物を連続的に探査し、飛来物の速度と距離とから飛来物が到達する時間を予測するものである。
換言すれば、飛来物の接近を検知して回転停止と判断した場合に、ブレード角度制御手段がブレード角度を変更してブレードの回転を停止するために必要な時間(たとえば3秒前後)を確保できるだけの遠方の飛来物を探査する必要がある。
到達時間算出手段は、障害物探査装置が検知した飛来物の予想到達時間を算出する。そして、ブレード角度制御手段がその予想到達時間に達する前にブレードの角度を回転停止ポジションに変更するように制御する。その結果、飛来物によるブレードの破損、バードストライクを未然に防ぐ確率を高めることができる。
請求項6に記載の発明は、 地上に立設させたタワー、そのタワーに固定されたナセル、およびそのナセルに対してハブを介して回転自在に固定された複数のブレードを備えた風力発電装置の周囲の飛来物を検知する映像取得手段の設置方法に係る。
すなわち、前記の映像取得手段は、ドームミラーと、そのドームミラーが反射する映像データを撮影する撮影手段とを備えた三組であり、 前記の各映像取得手段の映像取得可能領域を確認する領域確認手順と、 その領域確認手順によって三つの映像取得可能領域がすべて重なる部位に風力発電装置が位置するように各映像取得手段を設置するように位置決めする位置決め手順とからなる映像取得手段の設置方法である。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載した映像取得手段の設置方法を限定したものである。
すなわち、風力発電装置が複数存在する場合においては、前記位置決め手順は、少なくともひとつの映像取得手段が隣り合う各風力発電装置の飛来物の接近に対する探査を兼ねるようにしたことを特徴とする。
この場合、地図上に風力発電装置の設置位置をインプットする風力発電装置の設置位置データの入力ステップ、映像取得手段の映像取得可能領域(たとえば半径)の入力ステップを含むこととなる。
また、請求項6から請求項7に記載の発明によれば、飛来物によるブレードの破損やバードストライクを合理的に減らすことに寄与する映像取得手段の設置方法を提供することができた。
ここで使用する図面は、図1から図8である。図1は本願発明に係る概念を示すための説明図であり、図2は第一の実施形態を示す概念図であり、図3は、第二の実施形態を示す概念図である。図4は、第一または第二の実施形態のハードウェアを示す概念図であり、図5は、ハードウェア構成図である。図6は、主要部のバリエーションを示す概念図である。図7は、制御プロセスを示すフローチャートである。図8は、風速と発電量とを示すグラフである。
図1の本願発明に係る概念の説明図では、ドームミラー11,12が並んで配置された場合を示している。それぞれのドームミラー11,12には、撮影可能領域α1,α2が存在する。撮影可能領域とは、図4、図5に示すドームミラー(図4中では11,12)と、そのドームミラー11,12が反射する映像データを撮影する撮影手段とを備えた映像取得手段(図4中ではカメラ21,22)において、撮影が可能なエリアのことである。
撮影可能領域α1,α2が重なる場合、その重なった領域は、それぞれのドームミラー11,12に飛来物が写る。
ドームミラーの場合、複数のドームミラーに映像が映らないと飛来物の三次元の位置が把握できないが、前記の重なった領域、すなわち、三次元の測定が可能な領域α3が存在することとなる。
図2には、撮影可能領域αの大きさが同じである3つのドームミラー10を、正三角形が形成されるように、更に3つの撮影可能領域がすべて重なる位置が存在するように近づけて配置する。
すると、3つの撮影可能領域がすべて重なる位置こそ、任意の2つの映像取得手段による三次元の測定が可能な領域βとなるのである。
なお、図2では、3つのドームミラー10を二組、図示している。任意の2つの映像取得手段による三次元の測定が可能な領域βは二つ存在するが、どのドームミラーでも測定できない「狭間の領域」も存在することとなる。
図3には、4機の風力発電装置を設置する場合を示している。ドームミラー10の設置場所が正三角形を描き、且つ撮影可能領域αがすべて重なる位置が、風力発電装置を設置する場所γ1,2,3,4となるのである。隣り合う正三角形はその一辺を共通としている。すなわち、撮影可能領域αを形成する映像取得手段が、隣り合う風力発電装置と共用されることとなる。そのため、ハードウェアを効率的に用いることとなる。風力発電装置が多数設置されるウィンドファームにおいては、合理的である。
なお、撮影可能領域は、撮影手段たるカメラの解像度、想定される飛来物の大きさ、ドームミラーの性能などによって異なるが、この実施形態においては、同一の撮影可能領域を備えた映像取得手段を設置することとして説明した。
以上のような作業は、撮影可能領域αの大きさが決定した後にドームミラーの位置をシミュレーションするソフトウェアによって検討するのが合理的である。
図4では、風力発電装置A,B,C,Dが設置されているとともに、二つの映像取得手段が設置されている状態を概念的に示している。
ここで、映像取得手段は、上向きに設置されたドームミラー11,12と、カメラ支持体30により支持されてドームミラー11,12を上から撮影するカメラ21,22とで形成されている。ドームミラーは、半球状の曲面を鏡面とした鏡であり、頂点の延長上では、360度の視覚を得ることができる。ふたつのドームミラー11,12にひとつの飛来物が映り、それがカメラ21,22にて同時に撮影されれば、三次元の位置を特定できる。たとえば、データ補間などによって距離算出などの処理を実行する。
図5では、ドームミラーが飛来物(鳥)を捉え、それをカメラ(モノクロC−MOS)にて撮影し、その後行う処理を概念的に示している。モノクロのC−MOSを採用したのは、CCDよりも曇天などで自然光が不足している場合の撮影に適しており、カラーのC−MOSセンサよりも約3倍の感度を引き出せるからである。例えば、ローノイズでダイナミックレンジを採用した高感度、500fpsの高速度での静止画撮影が可能なモノクロのC−MOSセンサであれば、曇天時における30fps程度のシャッター速度での撮影が可能となる。
解析手段は、飛来物を検知した場合には、前記ブレード角度制御手段によるブレードの回転停止ポジションへの変更制御を、担当する風力発電装置の全てに出力する。前述のブレード角度制御手段は、その予想到達時間に達する前にブレードの角度を回転停止ポジションに変更するように制御することとしている。飛来物の接近を検知して回転停止と判断した場合に、ブレード角度制御手段がブレード角度を変更してブレードの回転を停止するために必要な時間(たとえば3秒前後)を確保する。
図6は、ドームミラーを下向きとして用いる実施形態について示している。ドームミラーは、支持部材によって地上からかなりの高さを確保し、そのドームミラーに映る画像を捉えるカメラは、上向きに設置している。
図7に示すのは、制御の一例を示すフローチャートである。
風力発電装置が、風を受けてブレードが回転することによって発電する。ここで、飛来物探査装置が風上に飛来物を検知しなければ、運転を継続する。
ここで、飛来物を検知したとする。すると、飛来物を連続的に探査することにより、飛来物に関するデータを所定時間記憶したり、直前のデータと比較演算したりする。そして、飛来物が接近してきた場合には、飛行速度Vやその距離Xから飛来物の到達予測時間を算出し、ブレード角度制御手段がブレードを回転停止ポジション(フェザリング)に変更するように制御する。そして、飛来物の到達予測時間前にブレードの回転を停止させる。
飛来物の飛行速度Vやその距離X,飛行の方向から,飛来物の風力発電装置への衝突確率を算出し,その衝突確率が閾値を超えるか否かを判断して,ブレード角度制御手段を制御することにしてもよい。
なお、以上のような制御プログラムは、ブレードの制御装置に組み込まれてもよい。
熱感知装置を採用すると、鳥類などの生き物のように、周囲よりも温度が高い飛来物しか検知できないが、夜間や吹雪などの悪天候時には、音波や電磁波を発信する飛来物探査装置よりも飛来物の検知が正確に行えるという利点がある。
図8は、風速と発電量との関係を示したものである。定格風速にて運転できるようにブレードを調整し、所定以上の風速(カットアウト風速)になったら、フェザリングによって発電を停止する。本実施形態では、飛来物が接近してきた場合にもフェザリングへの変更を実行するのである。
また、本実施形態に用いた飛来物探査装置は、ドームミラーを用いて,かつ,その配置を工夫しているので、飛来物を捉える領域を広域化して合理的にカバーし,効率的に飛来物を探査可能としている。
更に、風力発電装置が多数設置されているが、飛来物探査装置は、各々の風力発電装置に備える必要がない。
21,22 カメラ
30 カメラ支持体
A,B,C,D 風力発電装置
α,α1,α2 撮影可能領域
β 三次元の測定が可能な領域
γ1,γ2,γ3,γ4 風力発電装置を設置する場所
Claims (7)
- 地上に立設させたタワー、そのタワーに固定されたナセル、およびそのナセルに対してハブを介して回転自在に固定された複数のブレードを備えた風力発電装置の周囲の飛来物を検知する飛来物探査装置であって、
ドームミラーと、そのドームミラーが反射する映像データを撮影する撮影手段とを備えた映像取得手段を、風力発電装置の周囲三カ所に備え、
前記の撮影手段が撮影した映像データを連続的に取得するとともに、複数の映像取得手段による映像データに基づいて飛来物の接近を連続的に探査する解析手段を備え、
前記の各映像取得手段の映像取得可能領域がすべて重なる部位に風力発電装置が位置するように各映像取得手段を設置したことを特徴とする飛来物探査装置。 - 風力発電装置が複数存在する場合における隣り合う風力発電装置では、少なくともひとつの映像取得手段が隣り合う各風力発電装置の飛来物の接近に対する探査を兼ねることとした請求項1に記載の飛来物探査装置。
- 前記の解析手段が飛来物を検知した場合には、前記の風力発電装置に備えられたブレード角度制御手段がブレードを回転停止ポジションに変更する制御信号を出力する制御信号出力手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の飛来物探査装置。
- 前記の撮影手段には、モノクロのC−MOSセンサを用いることとした請求項1から請求項3のいずれかに記載の飛来物探査装置。
- 前記の解析手段には、検知した飛来物の予想到達時間を算出する到達時間算出手段を備え、
前記のブレード角度制御手段は、その予想到達時間に達する前にブレードの角度を回転停止ポジションに変更するように制御することとした請求項1から請求項4のいずれかに記載の飛来物探査装置。 - 地上に立設させたタワー、そのタワーに固定されたナセル、およびそのナセルに対してハブを介して回転自在に固定された複数のブレードを備えた風力発電装置の周囲の飛来物を検知する映像取得手段の設置方法であって、
前記の映像取得手段は、ドームミラーと、そのドームミラーが反射する映像データを撮影する撮影手段とを備えた三組であって、
前記の各映像取得手段の映像取得可能領域を確認する領域確認手順と、
その領域確認手順によって三つの映像取得可能領域がすべて重なる部位に風力発電装置が位置するように各映像取得手段を設置するように位置決めする位置決め手順とからなる映像取得手段の設置方法。 - 風力発電装置が複数存在する場合においては、前記位置決め手順は、少なくともひとつの映像取得手段が隣り合う各風力発電装置の飛来物の接近に対する探査を兼ねるようにしたことを特徴とする請求項6に記載の映像取得手段の設置方法。
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