JP5060741B2 - アピオスの酢酸・酵素処理物製造方法、アピオス由来ペプチドおよびその製造方法 - Google Patents

アピオスの酢酸・酵素処理物製造方法、アピオス由来ペプチドおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明はアピオスの酢酸・酵素処理物製造方法、アピオス由来ペプチドおよびその製造方法に係る。すなわち、マメ科多年草アピオスの根塊から、生活習慣病の一つである高血圧予防のための降圧ペプチドを簡易かつ高収率に、しかも溶液状もしくは粉末状にて得ることができる技術、さらにはこれらを用いた降圧剤、高血圧予防効果を有する機能性食品・飲料等の製造方法に関するものである。
北米原産のアピオス(Apios americana)はマメ科の多年草であり、根が数センチ間隔で膨らんで根塊を形成し、これを食することができる。この根塊はジャガイモに比較すると栄養価が高く、全国的な認知度はまだ低いが、青森県を中心に栽培・流通が広がりつつある。
アピオスの栽培方法はほぼ確立されており、現在、青森県五戸町倉石地域および青森県七戸町天間林地域を中心に栽培が行われている。これらの地域で毎年11月頃に収穫されたアピオス根塊は、生のままで、あるいはボイル加工後に冷凍された状態で市販されている。アピオスは一部の消費者から根強い人気を得ているが、その背景には、栗とジャガイモをあわせたような特徴のある食味もさることながら、便秘解消、疲労回復あるいは肥満予防などに対する効果のほどが、相当程度豊富に経験的に主張されていることもあげられる。しかしながら、これらの効果に関する科学的根拠は、これまでは示されていない現状である。
一方、原因となる成分は特定されていないものの、アピオスは過食により下痢を誘因することが知られている。アピオスはマメ科植物でありながら、炭水化物、特に食物繊維が約10%と豊富であり、これが下痢の要因になっていると予想される。したがって、いかに健康的な効果がいわれているといえども、1日に食せるアピオスは従来、せいぜい3〜4個(1個10g前後)にとどまっている。
また、生産状況に着目すると、収穫された根塊は大きさが不揃いであり、かつ、それらの根塊は数珠状につながっているために、そこから大きさの整った根塊、通常は長さ3〜4cm、重さ10g前後のものを選別することには多大な労力を要する。さらにアピオスは多年草であるため、2年目および3年目の根塊は大きく肥大するが固くもなる。したがって、生食またはボイル加工に使用できる根塊と、使用できない規格外根塊が存在し、上記倉石地域では年間収穫量の30〜40%に相当する3t前後が規格外根塊となっている。この規格外根塊を利用するためには、味、形、大きさすべての点において何らかの加工処理を施さざるを得ないため、従来は粉末化およびペースト化処理が用いられている。しかし、製菓、製麺等を目的とした加工原材料用粉末としてはコストが高くなるため、利用頻度は低い。
一方、日本人の平均寿命は世界最長にはなったが、同時に進行している食生活の乱れや欧米化は、生活習慣病の増加を引き起こす要因ともなっている。このため、日本の優れた食生活に関する科学的研究の成果を新しい食品として具体化し、それを利用することで、生活習慣病の増加が抑えられると考えられている。
かかる生活習慣病の中で、高血圧は血圧の高い状態が続く疾病であるが、その成因は未だ定かではない。また、高血圧自体は致死的ではないものの、動脈硬化をはじめとする脳血管、心疾患など重篤な疾患の要因ともなることから、早期改善が強く望まれている。現在の大多数の高血圧治療法では薬物治療が必要であり、高血圧改善薬としては、その作用機序の違いにより、アンジオテンシンI変換酵素阻害薬、Ca拮抗薬、利尿薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、αまたはβ遮断薬などが開発され、その効果が実証されている(後掲非特許文献1)。一方、軽症高血圧症あるいは正常高値血圧症をはじめとする、高血圧予備軍に対しての第一の治療法は、生活習慣の是正である。このことは、食生活を含めた生活習慣が高血圧の進展に大きくかかわっており、境界域高血圧症の場合にはその是正によってある程度の血圧改善が可能なことを示唆している(後掲非特許文献2)。
かかる状況下、食に関する科学的研究の中でも高血圧の予防・改善に関する研究が進められ、血圧降下作用を有する食品が上市されるようになってきた。降圧作用を有する食品素材が開発される背景は、Cheungら(後掲非特許文献3)による生理活性ペプチドの報告が契機となり、各種天然タンパク質からのアンジオテンシン変換酵素(以下、「ACE」とも略記する)阻害ペプチドの調製と単離・同定がなされてきた。さらに、松井ら(後掲非特許文献4)はイワシに含まれるACE阻害ペプチドがペプシンによる酵素処理では苦みを有するのに対し、別のプロテアーゼ処理では、無味無臭で降圧作用が向上することを報告した。
そこで、これらの点に着目した本願発明者の一人である岩井は、アピオス根塊の健康的有益性を明らかにすべく研究に取り組み、自然発症高血圧ラット(以下、「SHR」とも略記する)にアピオス根塊粉末を摂取させたところ、穏やかな血圧降下作用を見出した(後掲非特許文献5)。これによって、アピオスの健康的付加価値の一つが認められた。
なお、アピオスをキーワードとして、IPDLの特・実公報テキスト検索される例には後掲特許文献1の技術があるが、これは、アピオス花茶の製造法に関するものである。
特開平07−030545「アピオス茶およびその製造方法」 松井、バイオサイエンスとインダストリー: Vol.60, pp.665−670, 2002. 実地医家のための高血圧治療ガイドライン: 2000. H.S.Cheung, F.L.Wang, M.A.Ondetti, E.F.Sabo, D.W.Cushman: J. Biol. Chem.: Vol.225, pp.401−407, 1991. T.Matsui、他、Recent Research Developments in Agricultural and Food Chemistry: pp.9−16, 1997. 岩井、日本未病システム学会雑誌: Vol. 11, pp.188−193, 2005.
さて、一般にタンパク質は高分子であるため、実際に生体内へ吸収されているのはペプチドなどの低分子であり、したがって低分子ペプチドがより高い付加価値を生むに至っている。アピオスの水分含量は55%であり、これを利用しやすい形態にするためには、各種の素材と自由な組み合わせができ、しかも各種食品に使用されやすい粉末や溶液の形態にすることが望ましい。
さらに、それらの素材は高血圧予防効果の指標であるACE阻害活性などの生理活性を有し、なおかつ製造工程でその活性を維持することが望ましい。また、アピオス由来ペプチドは、食品学的および栄養学的にも、胃液分泌能力が活溌でない、または消化能力が衰えてきた高齢者、さらには胃摘出者などにおいても吸収し易いペプチド素材であることが望ましい。
また、それらの素材は、アピオスの過食により誘発される下痢の要因となる、食物繊維を含む炭水化物が少ないことが望ましい。
上述したように、アピオスの規格外根塊の利用程度は低いものにとどまっている。結局そのことは、生産および流通関係者にとって大きな悩みの種となっており、アピオス由来ペプチドを実用的に製造できる技術が開発されれば、関係者にとっては年来の問題を解決できる一助となる上、逆に高付加価値製品化できることはまちがいない。のみならず、かかる技術開発は、生理機能が低下する高齢者や、高血圧等の生活習慣病を抱えた多くの人々にとっても大いに有益であり、アピオス規格外根塊の有効利用技術の開発は多くの人々から強く望まれている。
また、アピオスの過食による下痢誘発は、アピオス愛好者およびアピオスの健康的効果を期待する人々にとっては、摂食数量に制限をもたらしていることから、この副作用的な影響を除去あるいは減少させる技術も多くの人々から望まれている。
しかしながら上述のように、アピオス根塊を利用するための溶液化技術は未だ存在せず、また粉末化技術は既に存在してはいるものの、コスト的に問題があり、産業上利用の観点から幅広い用途を得るには至っていない。
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点を除き、有用な生理機能を有するアピオスから、生活習慣病の一つである高血圧予防のための降圧ペプチドを簡易かつ高収率に取り出し、それらを用いた降圧剤や高血圧予防剤、機能性食品等を実現することのできる、アピオスの酢酸・酵素処理物製造方法、アピオス由来ペプチドおよびその製造方法を提供することである。
本願発明者は上記課題について検討し、各種試験を重ねた結果、経口摂取可能な有機酸、つまり古今東西を問わず食されてきた酢酸を用い、アピオス本体、アピオス粉末またはアピオスペースト、あるいはこれらの残渣を加温、消化酵素(ペプシンが特に好適)で消化することにより、それを可溶化したり粉末化できるペプチド断片に分解できることを見出した。さらに、このペプチド溶液や粉末に血圧降下作用の指標であるアンジオテンシン変換酵素阻害活性があることを明らかにし、上記課題の解決が可能であることを見出し、本願に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
〔1〕 アピオスApios americanaに酢酸を添加し、消化酵素ペプシンで消化することによって、アピオス由来の下記(A)のアミノ酸配列を有するペプチドを成分に含有したほぼ均一な溶液を得ることを特徴とする、アピオスの酢酸・酵素処理物製造方法。
(A)Tyr−Arg−Leu−Pro−Asn−Leu
〕 前記ほぼ均一な溶液を得た後、これを減圧乾固してその処理物を得るか、または水に溶かし、凍結乾燥し、粉末化してその処理物を得ることを特徴とする、〔〕に記載のアピオスの酢酸・酵素処理物製造方法。
〕 前記アピオスは生のもの、ボイルしたもの、ペースト化したもの、粉末化したもの、もしくはこれらを凍結後に解凍したもの、またはこれらの残渣のいずれかを用いることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載のアピオスの酢酸・酵素処理物製造方法。
〕 前記酢酸の添加量は、原料アピオスに対して重量で10倍以上の量とし、該酢酸添加処理では加温することとし、また前記消化酵素による処理時間は24時間以上とすることを特徴とする、〔1〕ないし〔〕のいずれかに記載のアピオスの酢酸・酵素処理物製造方法。
〕 アピオスApios americanaに酢酸を添加し、加温し、ペプシン処理することによって、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性を有するアピオス由来の下記(A)のアミノ酸配列を有するペプチドを得ることを特徴とする、アピオス由来ペプチド製造方法。
(A)Tyr−Arg−Leu−Pro−Asn−Leu
〕 酢酸を用いた加温およびペプシン処理によりアピオスApios americanaを処理して得られ、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性を有し、下記(A)のアミノ酸配列を有することを特徴とする、アピオス由来ペプチド。
(A)Tyr−Arg−Leu−Pro−Asn−Leu
〕 〔1〕ないし〔〕のいずれかに記載の方法により得られるアピオスの酢酸・酵素処理物、または〔〕に記載のアピオス由来ペプチドを用いて製造されることを特徴とする、下記(P)のいずれかの製品。
(P)降圧剤、高血圧予防食品、高血圧予防サプリメント、高血圧予防飲料、高血圧予防薬剤
つまり本発明は、アピオスまたはアピオスの残渣を、米、リンゴ、ブドウなどの糖質原料から醗酵させて製造され、しかも経口摂取可能な酸である酢酸を用いて加熱し、消化酵素で処理することによって、これを可溶化、粉末化可能なペプチド断片に分解できる新規な技術に関するものである。また、このようにして得られるペプチド溶液や粉末は各種食品素材に自由な割合で混合して利用することが可能である。さらに、この溶液や粉末および混合物は、高血圧予防効果の指標であるACE阻害活性を有するという特長がある。
本発明は、販売が困難となっている規格外アピオス根塊を適用対象とした研究から生まれたものであるが、適用対象は規格外アピオス根塊に限定されず、広くアピオス全体(生、粉末、ペーストなど)に対して用いることができるものである。
アピオス根塊は、生、ボイル物、ペースト、粉末、あるいはこれらを凍結保存後に解凍したもののいずれも、出発原料とすることができる。また、使用するアピオス根塊は1年ものかつ規格内のものに限定されず、規格外のものでも、あるいはまた2年もの以上のものでもかまわない。また、添加する酢酸の量は原料の約10倍量程度とすることで、特に良好な結果を得ることができる。また、酢酸添加時の加温は、30〜40℃にて10分〜30分程度が適当である。また、添加する酢酸は、化学的に合成した酢酸でも、あるいは醸造醗酵した米酢、リンゴ酢、バルサミコ酢等のいわゆる食酢でもよい。消化酵素としてはペプシンを好適に用いることができるが、ペプシン処理は具体的には、ペプシンを1%程度添加し、37℃で概ね24時間以上行うことで、特に良好な結果を得ることができる。
得られる酢酸ペプシン処理物の形態には、アピオス由来のペプシン分解ペプチドを主成分にしたほぼ均一な溶液としたもの、その後減圧乾固したもの、あるいは水に溶かして凍結乾燥し粉末としたものがあるが、これらを溶液のまま、粉末のまま、もしくは粉末を再溶解した形で、各種加工素材として自由な割合で混合して用いることができ、食品、サプリメントあるいは薬剤等の製造に供することができる。
本発明のアピオスの酢酸・酵素処理物製造方法、アピオス由来ペプチドおよびその製造方法は上述のように構成されるため、アピオス根塊を効率的かつ簡易な方法により、可溶化、粉末化可能なペプチド断片に分解することができる。また本発明によれば、販売不可である規格外アピオス根塊から、ACE阻害活性を有する降圧ペプチドを簡易かつ高収率に取り出し、高血圧予防効果等の生理機能を有する素材として、これを医薬・食品に用いることができる。さらに、これは炭水化物含量が少ないために下痢誘因の可能性も低下する。つまり、これまで用途がなく、処分されていた規格外アピオス根塊について、その有効な処理対策とすることができ、さらには高度利用を図ることができるとともに、これを高い産業的利用価値を備えた生物資源とすることができる。
以下、本発明について、実施例も用いてより詳細に説明するが、本発明は以下の説明に示された技術に限定されるものではない。
下記実施例では、2004年11月に五戸町倉石地域で収穫されたアピオス根塊の粉末を用いた。原料としてはその他、生根塊あるいはこれを適当な大きさに切断したもの、ボイルしたもの、ペースト、粉末化したもの、またその後それらを冷凍したものなど、各種前処理したアピオスを使用することが可能である。通常、保存のために凍結されたアピオス根塊やペーストは、流水中で解凍後に出発原料として使用可能である。以下、本願で述べるアピオスとは、アピオス根塊そのもの、および凍結物についてはその凍結を解除したものを含めていう。また、上記アピオスの水処理により得たアピオス残渣から同様のペプチド試料を調製するために、この原料(アピオス残渣)をも試験に供した。
添加する酢酸としては基本的には3%酢酸溶液、もしくは3%程度の酢酸溶液を使用することが望ましいが、これは食酢または合成酢どちらでもかまわない。また、アピオスは、他の野菜やイモ類に比較して水分が少なく、不溶性の高いものが大部分である。このため、これまでに溶液化は実現されていない。また、粉末はボイル後にすり潰してから乾燥させて得るため、アピオス自体の性質による技術面、コスト面の双方において問題があったが、本願発明者は、各種酢酸を用いて溶液化とその後の処理による粉末化を試みたものである。
その結果、醸造酢、合成酢、またはリンゴ酢などの各種食酢中で加温し、ペプシン処理させることにより、容易に溶液化することが可能となり、しかも、その後の凍結乾燥などの処理によって、容易に粉末化することも可能となった。また、処理量が多い場合にはこの製造工程を大型化することによって、効率的に、無駄なく、精度良く、しかも安定的にアピオスの溶液や粉末の製造が可能になった。
出発原料としてアピオス粉末を使用する場合は、たとえば次のような方法によって本発明のアピオス酢酸・酵素処理物が得られる。すなわち、アピオス粉末5gを0.5M酢酸50mLに加え、37℃で5分間加温し、ついで消化酵素としてペプシンを、全体重量の1%になるように加え、37℃で24時間反応させる。その後、10000rpmで30分間の遠心分離を行い、得られる上清に10分間の煮沸処理を施す。このようにして得られる酢酸溶液を減圧乾固し、さらに水に溶解後、凍結乾燥することにより、白色のアピオス酢酸ペプシン処理粉末を得ることができる。
製造したアピオス酢酸ペプシン処理物の有用性を確認するため、添加ペプシン量を変えて上記方法により処理物の製造を行い、得られた4種類の処理粉末について、血圧降下作用の指標であるACE阻害活性試験を行った。添加ペプシン量は、0.1%、1%、10%、および0%(水抽出)とした。表1には、各種処理方法による収率、糖含量(中性糖、酸性糖)、タンパク質含量、アミノ酸含量、およびACE阻害活性(IC50値)を示す。
その結果、最も阻害活性の強い1%ペプシン添加の処理物では、IC50値(元の酵素活性を50%阻害するために必要な濃度で、数値が小さいほど阻害活性が強いことを表す)は1.3mg/mLであり、高い活性が得られた。これは、他の消化酵素(例.トリプシン、キモトリプシン、サーモライシンなど)を用いた処理粉末とほぼ同等の結果を示した。しかし消化酵素としての取扱い・処理操作が簡易であることから、本発明の酢酸ペプシン処理による製造法の有用性が明らかとなった。
また、得られた本発明処理物の降圧効果を確認するために、自然発症高血圧ラット(SHR)にアピオスの1%ペプシン処理物を体重1kgあたり200mg経口投与し、その後の血圧の変化を経時的に測定した。
図1は、本発明に係るアピオスの酢酸ペプシン処理物(アピオス・ペプシン処理)を、SHRに対して経口投与した時の収縮期血圧の変化を、投与前血圧に対する変化率にて示したグラフである。本測定では比較例として、水、陽性対照薬であるリジノプリル、アピオスの水抽出残渣(アピオス残渣)を用いた。
その結果、水を投与したSHRの血圧は2時間の間に変動が見られず、リジノプリル(50mg/kg)を投与したSHRでは、投与0.5時間後に血圧が約20%低下し、2時間後まで低い状態が維持された。一方、アピオスを用いた場合であっても、200mg/kgのアピオス残渣を単純に投与したSHRでは、水投与と同様に血圧の変動は見られなかった。しかし、本発明のアピオス酢酸ペプシン処理物を投与したSHRでは、投与後0.5〜1時間の間に血圧が約20%低下し、2時間後には約10%の低下を示した。すなわち、残渣自体の単純使用では血圧降下作用が全く認められないアピオスに対して、酢酸添加処理およびペプシン処理を施すという本発明を適用することによって、降圧効果を有する処理物(ペプチド)が得られることが明らかとなった。
次に、この酢酸ペプシン処理粉末に降圧成分が物質として含まれていることを確認するために、Sep−Pak C18による粗分画を行い、水−アセトニトリル(CHCN)の溶媒を用い、CHCNを0%、20%、40%と段階的に増加させて溶出を行い、これらを減圧乾固して、凍結乾燥処理した。得られた各白色粉末について、血圧降下作用の指標であるACE阻害活性測定試験を行った。表2には、Sep−Pak C18粗分画画分の収量、糖含量(中性糖、酸性糖)、アミノ酸含量、タンパク質含量およびACE阻害活性(IC50値)を示す。
その結果、阻害活性は40%CHCN画分が最も強かった。また、20%CHCN画分も、40%CHCN画分程ではないものの強い阻害活性を示し、さらに収率も高かった。これらの画分は、最もアミノ酸およびタンパク質含有量が多く、反対に糖含量は元の1%ペプシン処理物の半分以下に減少した。このことからこれらの画分が、ACE阻害ペプチドを含むペプチド画分であることが示された。
ACE阻害活性の強いSep−Pak C18 20%CHCN溶出画分を、逆相HPLC(ODS120T、4.6×250mm、東ソー社)を用いて分離・精製した。
図2は、このACE阻害活性の強い溶出画分についての逆相HPLCクロマトグラム(A)、および阻害率(B)を示すグラフである。である。図中(A)に示されるように、220nmに吸収を示すピークが、溶出時間20分〜50分の間に得られた。分析開始時から1分毎に分取し、粉末として得られた計60画分のACE阻害活性を調べたところ、ピーク29、33、37、41の4画分には50〜70%のACE阻害活性が、またピーク50の画分には90%のACE阻害活性があった。
そこで、ピーク50をさらに分離・精製した結果、Fr.1およびFr.2のACE阻害画分を得た。このFr.1およびFr.2に含まれているペプチドについて、Protein Sequencer(PPSQ−10、島津製作所、気相エドマン分解法)を用いてアミノ酸配列の決定を行った。その結果、Fr.1には、Tyr−Arg−Leu−Pro−Asn−Leuというアミノ酸配列が確認され、またFr.2には、Tyr−Gln−Leu−Proという配列が確認されたが、この他にも幾つかのアミノ酸配列を持つものが含まれていた。
本発明により得られるアピオスの酢酸ペプシン処理物は、上述したアミノ酸配列からなるペプチドを含み、これらのペプチドは、血圧降下作用を有しており生活習慣病の一つである高血圧を予防するなどの有用性を備えたものであった。また、アピオス自体をそのまま使用する場合と比較して糖含量が少なく、下痢を誘発する可能性も低いものであった。しかも安全であり、かつ液状および粉末など食品にも利用しやすい形態の素材提供が可能となった。
<実施例1>
アピオス粉末を使用して、上述の方法によりアピオス酢酸ペプシン処理粉末を得た。すなわち、粉末5gを0.5M酢酸50mLに加え、37℃で5分間加温し、ペプシンを1%になるように加え、37℃で24時間反応させた。その後、10000rpmで30分間の遠心分離後、上清に10分間の煮沸処理を行い、酢酸溶液を減圧乾固し、水に溶解後、凍結乾燥により白色のアピオス酢酸ペプシン処理粉末を得た。
<実施例2>
実施例1で得たアピオス酢酸ペプシン処理粉末を、小麦粉、そば粉、うるち米粉とそれぞれ練り合わせて各種菓子原料とし、焼き菓子を得た。その結果、和洋を問わない各種焼き菓子の原料として使用可能であることが実証された。アピオス酢酸ペプシン処理粉末はこれらの原料とあらゆる割合で混合可能である。
<実施例3>
実施例1で得たアピオス酢酸ペプシン処理粉末を、そば、うどん、パスタやラーメンの麺原料にそれぞれ添加し、各種麺を製造した。その結果、本アピオス酢酸ペプシン処理粉末は、これらの麺類にも使用可能であることが実証された。この場合も、アピオス酢酸ペプシン処理粉末は使用する原料とあらゆる割合で混合可能であり、調整が可能である。
<実施例4>
実施例1で得たアピオス酢酸ペプシン処理粉末を水、リンゴ酢や果実酢などで溶解した。その結果、血圧降下ペプチドを豊富に含有するとともにアミノ酸スコアの高い飲料を、簡単に製造可能であることが実証された。本飲料は健康に良く、しかも保存性の高い調味飲料である。また本飲料は、ペプチドが主成分であるため、消化吸収力が低下した高齢者や病弱の消費者にも有益な食品素材である。
<実施例5>
アピオス酢酸ペプシン処理粉末をサプリメントに加工した。アピオス酢酸ペプシン処理粉末をポットミル等で微粉末化し、これに糖類などの添加剤(賦形剤)を適度に加え、均一に充分混合した。これを打錠機に供し、打錠・成型することによってアピオス酢酸ペプシン処理粉末を主成分とする錠剤を製造することができた。錠剤は、糖衣コーティングなどにより、甘みや光沢を加えることができた。
アピオス酢酸ペプシン処理粉末の混合物に適度に水分を加えて混合し、押し出し造粒機でペレットに造粒し、さらに、マルメライザーなどで球状に整形することによって、アピオス酢酸ペプシン処理顆粒を製造することができた。また、アピオス酢酸ペプシン処理粉末単独あるいは添加剤と均一かつ充分に混合したものを、乾燥状態でカプセル充填することにより、アピオスカプセルを製造することができた。
これらサプリメントは、大きさを変えることができるとともに、添加剤の種類や量を変えることによってアピオス酢酸ペプシン処理粉末の含有量やサプリメントの味、摂取時の食感などを調節することができる。これらのアピオス酢酸ペプシン処理粉末サプリメントは、アピオス由来の降圧ペプチドおよびアミノ酸等を後からでも補充可能な製品とすることができることが特徴である。
本発明のアピオスの酢酸・酵素処理物製造方法、アピオス由来ペプチドおよびその製造方法によれば、アピオスを効率的かつ簡易な方法により、可溶化、粉末化可能なペプチド断片に分解することができ、処理方法に問題があった規格外アピオス根塊からもACE阻害活性を有する降圧ペプチドを簡易かつ高収率に取り出すことができ、高血圧予防効果等の生理機能を有する素材として医薬・食品に利用することができる。このように、未だ利用度の低いアピオスを高い産業的利用価値を備えた生物資源に変貌させることができるため、関連する各産業において利用価値が高い発明である。
本発明製造方法実施例により得られたアピオス酢酸ペプシン処理物および比較例について、自然発症高血圧ラットに経口投与した時のラット血圧(収縮期)の投与前血圧に対する変化率を示すグラフである。 本発明製造方法実施例により得られたアピオス酢酸ペプシン処理物の、ACE阻害活性の強い溶出画分についての逆相HPLCクロマトグラム(A)、および阻害率(B)を示すグラフである。

Claims (7)

  1. アピオスApios americanaに酢酸を添加し、消化酵素ペプシンで消化することによって、アピオス由来の下記(A)のアミノ酸配列を有するペプチドを成分に含有したほぼ均一な溶液を得ることを特徴とする、アピオスの酢酸・酵素処理物製造方法。
    (A)Tyr−Arg−Leu−Pro−Asn−Leu
  2. 前記ほぼ均一な溶液を得た後、これを減圧乾固してその処理物を得るか、または水に溶かし、凍結乾燥し、粉末化してその処理物を得ることを特徴とする、請求項に記載のアピオスの酢酸・酵素処理物製造方法。
  3. 前記アピオスは生のもの、ボイルしたもの、ペースト化したもの、粉末化したもの、もしくはこれらを凍結後に解凍したもの、またはこれらの残渣のいずれかを用いることを特徴とする、請求項1または2に記載のアピオスの酢酸・酵素処理物製造方法。
  4. 前記酢酸の添加量は、原料アピオスに対して重量で10倍以上の量とし、該酢酸添加処理では加温することとし、また前記消化酵素による処理時間は24時間以上とすることを特徴とする、請求項1ないしのいずれかに記載のアピオスの酢酸・酵素処理物製造方法。
  5. アピオスApios americanaに酢酸を添加し、加温し、ペプシン処理することによって、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性を有するアピオス由来の下記(A)のアミノ酸配列を有するペプチドを得ることを特徴とする、アピオス由来ペプチド製造方法。
    (A)Tyr−Arg−Leu−Pro−Asn−Leu
  6. 酢酸を用いた加温およびペプシン処理によりアピオスApios americanaを処理して得られ、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性を有し、下記(A)のアミノ酸配列を有することを特徴とする、アピオス由来ペプチド。
    (A)Tyr−Arg−Leu−Pro−Asn−Leu
  7. 請求項1ないしのいずれかに記載の方法により得られるアピオスの酢酸・酵素処理物、または請求項に記載のアピオス由来ペプチドを用いて製造されることを特徴とする、下記(P)のいずれかの製品。
    (P)降圧剤、高血圧予防食品、高血圧予防サプリメント、高血圧予防飲料、高血圧予防薬剤
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