本発明に係る無線通信受信機は、障害相関(impairment correlation)の計算において、異なる送信電力割当て及び異なる送信アンテナ電力分配を考慮することにより、MIMO/MISOシステムにおける信号障害相関評価を改善する。限定ではないが、その受信機は、連続干渉除去法、結合検波法、または最小平均二乗誤差法を採用したRAKE受信機を含む様々な構成により実装することができる。どの受信機の構成を採用するかに関わらず、改善された障害相関は、MIMOまたはMISO送信機を介したHSDPAチャネルの送信を行う広帯域CDMA(W−CDMA)において運用される受信機による、(RAKE)信号の合成加重の改善された計算、及び/または報告のためのチャネル品質の改善された評価に用いることができる。
しかしながら、いわゆる当業者は、本発明が前述の特徴及び利点に限定されるものではないことを理解するべきである。実際、いわゆる当業者は、本発明の選択された実施形態についての以降の詳細な説明を読み、対応する図面を参照することにより、本発明の追加的な特徴及び利点を認識するであろう。
図1には無線通信ネットワーク10が部分的に描かれており、そこには包括的に“送信アンテナ14”と呼ばれる複数の送信アンテナ14−1〜14−Mを介して転送リンク信号を送信するよう適合される、複数アンテナ送信機12が含まれる。例えば携帯型の無線電話や他の種類の無線通信装置である無線通信受信機16は、包括して“受信アンテナ18”と呼ばれる受信アンテナ18−1〜18−R上で、送信機12から送信された1つ以上の転送リンク信号を受信する。図1は、複数の送信アンテナ及び受信アンテナを伴うシステム、即ち複数入力複数出力(MIMO)型のアンテナシステムを描いている。
現在、WCDMA標準の高速ダウンリンクパケット接続(HSDPA)の提供におけるデータ転送速度を向上させるために、MIMOアンテナシステムに対する強い関心が集まっている。これら高速のチャネル共有は、高速ダウンリンク共有チャネル(HS−DSCHs:High Speed Downlink Shared Channels)としても知られ、cdma2000標準にて定義されている転送パケットデータチャネル(F−PDCH:Forward Packet Data Channel)はある程度類似する機能を提供する。いずれの場合にも、大きく注目を集めている2つの技術とは、例えば垂直型(V−BLAST)システムの変化型であるCR−BLAST(Code Reuse Bell labs Layered Architecture Space−Time)などの空間多重化、及びアンテナ別速度制御(PARC:Per Antenna Rate Control)である。
これらの、及び他のMIMO方式は、一般的に、受信機16におけるアンテナ別のチャネル評価を容易にするためのアンテナ別パイロット信号の送信と、送信アンテナ14の全てまたは選択された1つからのデータ信号サブストリームの送信と、1つ以上の送信アンテナ14からの他の(追加的な)信号の送信を含む。“他の”信号の例には、オーバヘッドチャネル、ブロードキャスト及び制御チャネル、並びに様々な専用チャネル(例えば音声及び専用パケットデータ)などが含まれる。ここで用いられる“データ信号”という用語は、特に断りの無い限り、一般的に、例えばHS−DSCHなどの高速共有データチャネルのことを指す。
図2及び図3には、データ信号、パイロット信号、及び他の信号に関する送信電力割当て及び送信アンテナ電力分配の様子が示されている。具体的には、図2において、送信機12にて送信される様々な種類の信号に割当て得る送信電力量は有限であり、よってデータ、パイロット、及び他の信号に対し全ての送信電力が所定の割合で割当てられる様子が示されている。さらに、送信機12は、所与の種類の信号に割当てられた電力を、利用可能な複数の送信アンテナ14の間で分割しなければならない。即ち、ある量だけ割当てられたパイロット信号の電力は各アンテナ14に分配され、ある量だけ割当てられたデータ信号及び他の信号の電力もまたアンテナ14間で分配される。
例えば、ある量のパイロット信号の電力は、一般的には各アンテナ14から送信され、受信機16におけるアンテナ別チャネル評価に用いられる。一方、他の信号は全て、送信アンテナ14の中の1つまたは固定されたアンテナのサブセットから送信することができ、よって他の信号の電力割当ては典型的には全てのアンテナ14には分割されない。同様に、データ信号が全ての送信アンテナ14から送信される一方で、アンテナ14のサブセットからデータ信号を送信する場合には、特に受信機16からのフィードバックに応じてサブセットを動的に選択することで、性能を改善することができる。
正確な障害相関評価を提供することは、前述の意味において、受信機16にとっての大きな課題である。正確な障害相関評価は、合成/等化フィルタ加重生成またはチャネル品質評価などの他の受信信号処理操作についての前提事項となるため、受信機16はそうした課題を十分に解決しなければならない。これを受けて、受信機16は、送信アンテナ14または送信機12からパイロット信号と併せて送信される1つ以上のデータ信号についての障害相関評価を生成するよう構成された1つ以上の処理回路20を含むこととする。
より詳細には、少なくとも1つの実施形態において、データ信号とパイロット信号間の送信電力比、及びデータ信号とパイロット信号の送信アンテナ電力分配の判定に基づいて障害相関を計算するように1つ以上の処理回路は構成され、障害相関の計算は前記データ―パイロット送信電力比及び前記データ信号とパイロット信号の送信アンテナ電力分配の関数として行われる。さらに、1つ以上の実施形態において、こうした計算では現在のMIMOモードが考慮され、それにより例えばデータ信号に対する送信アンテナ電力分配に影響がある。即ち、他のパラメータまたは値の中で、データ信号に対する送信アンテナ電力分配は、現在のMIMO構成に基づいて判定することができる。
1つの実施形態として、少なくとも1つのデータ―パイロット信号送信電力比、及びデータ信号とパイロット信号の送信アンテナ電力分配には、受信機16にて受信された信号値が含まれる。より一般的には、ここで開示されているのは、複数の送信アンテナを有し1つ以上のデータ及びパイロット信号を送信する送信機を含むMIMOまたはMISO通信システムを動作させる無線通信受信機による障害相関評価を支援する方法である。1つの実施形態として、その方法には、データ―パイロット信号送信電力比、及び無線通信送信機により送信されるデータ信号とパイロット信号の送信アンテナ電力分配のうち少なくとも1つをシグナリング(signaling)することが含まれる。さらに、そうしたシグナリングを、現在のMIMOモードの関数として動的に更新してもよい。この方法により、電力比及びまたは送信アンテナ電力分配の変更を、障害相関の計算に用いるために受信機へシグナリングすることができる。
他の実施形態として、データ―パイロット信号送信電力比、及びデータ信号とパイロット信号の送信アンテナ電力分配には、受信機16に保存される名目値が含まれる。さらに、別の実施形態としては、音声信号を含む他の信号が、他信号―パイロット信号送信電力比、及び他信号送信アンテナ電力分配に応じて送信アンテナ14から送信される。この場合、1つ以上の処理回路20は、さらに、他信号―パイロット信号送信電力比及び他信号送信アンテナ電力分配を判定し、前記他信号―パイロット信号送信電力比及び前記他信号送信アンテナ電力分配の関数として障害相関を計算するよう構成される。より詳細には、1つ以上の処理回路を、1つ以上のデータ信号の送信によって発生しデータ―パイロット信号送信電力比によって計測される第1の障害相関項目と、他信号の送信によって発生し他信号―パイロット信号送信電力比によって計測される第2の障害相関項目と、雑音及び他セル干渉から生じる第3の障害相関項目との合計として障害相関を表現するよう構成することができる。
この方法において、他信号―パイロット信号送信電力比の判定は、受信した1つ以上のデータ信号の逆拡散に先立ってチップサンプル共分散行列を判定することに基づいて行うことができ、チップサンプル共分散行列は、既知のデータ―パイロット信号送信電力比と、既知のパイロット及び他信号についての送信アンテナ電力分配と、雑音及び他セル干渉を表す既知の雑音評価と、1つ以上のデータ信号の送信のために現在選択されている未知または既知の送信アンテナのサブセットと、未知の他信号―パイロット信号送信電力比との関数として数式化される。この方法では続けて、最大尤度の公式に従って、未知の他信号―パイロット信号送信電力比、及び未知であれば1つ以上のデータ信号の送信のために現在選択されている送信アンテナのサブセットの式を解くことを行う。
他の同様の実施形態では、現在選択されている送信アンテナのサブセットは既知であり、よって前記数式には、既知のデータ―パイロット信号送信電力比と、既知のパイロット信号と他信号送信アンテナ電力分配と、雑音及び他セル干渉を表す未知の雑音評価と、1つ以上のデータ信号の送信のために現在選択されている既知の送信アンテナのサブセットと、未知の他信号―パイロット信号送信電力比との関数が含まれる。本実施形態において、この方法では、最大尤度の公式に従って、未知の他信号―パイロット信号送信電力比、及び未知の雑音評価の式を解くことを行う。一般的には、その式は様々な数の未知の要素を有し、最大尤度の公式はそれに応じて適合され得ることが理解されるべきである。当然ながら、未知の要素が増えるにつれ、解探索空間は増大する。
他の実施形態において、1つ以上の処理回路20を、他セル干渉を白色雑音としてモデル化し、チップサンプル共分散行列を雑音及び他セル干渉とアンテナ別トラヒック―パイロット信号送信電力比との関数として表現することで雑音及び他セル干渉を解くよう適合することができる。このとき、アンテナ別トラヒック―パイロット信号送信電力比は、αT/P(m)として表され、m番目の送信アンテナ14上のデータ信号、他信号、パイロット信号の総電力のm番目の送信アンテナ14上のパイロット信号の電力に対する比として定義される。この手法では、1つ以上の処理回路20は、最小二乗法の公式に従って、対応する雑音及び他セル干渉の数式体系を解く。
方法としての他の実施形態において、障害相関は、受信機16から報告されるチャネル品質評価の生成のために用いられる。この方法のために、1つ以上の処理回路20は、他信号―パイロット信号送信電力比によって較正(scale)される他信号の障害相関項目を計算することにより、追加的に他信号―パイロット信号送信電力比及び他信号送信アンテナ電力分配の関数として障害相関を計算するよう構成される。この場合、1つ以上の処理回路20は、他信号により生じる障害相関を受信信号サンプルから得られるチップサンプル行列の関数として数式化するが、その受信信号サンプルからは、データ信号の送信に用いるために現在選択している送信アンテナのセットの影響が除かれる。この方法ではその後、チップ障害共分散行列上のそうした選択の影響を考慮して、受信機16へのデータ信号の送信に用いる1つ以上の所望の送信アンテナ選択についての障害相関を判定する。この方法において、受信機16を、所望の送信アンテナ選択について改善されたチャネル品質評価を提供するよう構成してもよい。一般的には、受信機16は、障害相関、データ―パイロット信号送信電力比及びデータ信号とパイロット信号の送信アンテナ電力分配の関数として、選択された1つ以上の送信アンテナについての1つ以上のチャネル品質評価を生成するよう構成することができる。
さらに、受信機16を、1つ以上の処理回路20が障害相関から信号合成加重を生成するよう構成される形のレイク受信機として構成してもよい。受信機16のレイク型の1つの実施形態は、最小平均二乗誤差法(MMSE:Minimum Mean Square Error)による検知を行うよう構成される。1つ以上のデータ信号には符号シンボルがそれぞれ付随し、受信機16は、同一のシンボル時間中に送信される符号シンボルを個別に検知する一方、他の全ての符号シンボルを(有色の)雑音として扱うよう構成される。他のレイク型の実施形態では、受信機16は結合検知(joint detection)を行うよう構成され、その場合には、同一のシンボル時間中に送信される同一符号の符号シンボルは結合的に検知される一方、他の全ての符号シンボルは雑音として扱われる。
全てのこうした実施形態は、広帯域CDMA(W−CDMA)の運用として有利に用いられ得る。特に、ここで開示する障害相関判定(及びその結果を受けての合成加重生成及び/またはチャネル品質評価)のための方法及び装置は、送信機12が1つ以上の高速ダウンリンクパケット接続(HSDPA)チャネル信号を複数のアンテナ14から送信する状況において有効である。
前述の観点に留意しながら、まず実施形態についてのより詳細な検討を、アンテナ別チャネル評価から純応答ベクトルを計算するよう構成される純応答計算部20−1、障害相関を計算するよう構成される障害相関計算部20−2、及び純応答ベクトルと障害相関との関数としてチャネル品質評価を生成するよう構成される任意的なチャネル品質評価生成部20−3を含む処理回路20について行う。いわゆる当業者であれば、処理回路20は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらのいかなる組合せとして実装することもできることを理解するであろう。少なくとも1つの実施形態では、1つ以上の処理回路20には、ベースバンドデジタル信号プロセッサ、または受信機16に含まれる類似のものが含まれる。
図4には、1つ以上の処理回路20に実装し得る処理ロジックの1つの実施形態が描かれており、まず処理回路20は純応答ベクトルを所与の受信機のフィンガ位置のセットごとに計算する(ステップ100)。即ち、受信機16には送信機12から送信される信号の所与のマルチパス成分に割当てられた1つ以上の相関器バンクが含まれ、さらに汎用レイク(G−RAKE)の応用において行われているように経路外(off−path)に追加的な相関“フィンガ”が配置される。例えば、h% mがm番目の送信アンテナに対応する純応答ベクトルであって、ここでh% mの%の表記は、(純応答が依存する)チャネルのタップ利得がシンボルごとのパイロットエネルギーを基準として較正される事実を強調している。(これは、較正を暗黙的に含む逆拡散パイロットシンボルから得られるチャネル評価をパラメータとして用いて少なくとも純応答が形成される実施形態においてのものである。)
純応答ベクトルh% mのq番目の成分は、次式で与えられる:
ここでqは、l番目の受信アンテナ18上の特定のフィンガを指す。このフィンガの位置は、遅延τ
qによって特定される。Pはチャネルタップ数であり、τ
lmp及びg
% lmpは、m番目の送信アンテナとl番目の受信アンテナとの間のチャネルの、それぞれp番目のタップ遅延及び(パイロット)較正チャネル利得である。x(τ)は、チップパルス波形の自己相関である。直前に触れたように、チャネルタップ利得はパイロットエネルギーによる較正を含み、次式で表される:
ここでE
Pは全ての送信アンテナ上の全てのパイロットに割当てられるチップ別総エネルギー、N
Pはパイロットチャネルに用いられる拡散因子であって例えばWCDMA標準ではN
P=256、α
PS(m)はm番目のアンテナのパイロット信号送信電力分配、そしてg
lmpはg
% lmpに対応する(未較正の)チャネル利得である。ルート記号の内部の量は、m番目の送信アンテナ上のシンボルごとの正確なパイロットエネルギーである。
処理は、障害相関の計算を、純応答の関数、さらにデータ―パイロット信号送信電力比、送信アンテナ間のデータ信号電力分配、及び送信アンテナ14間のパイロット信号電力分配の関数として続行する(ステップ102)。障害計算はさらに、他信号―パイロット信号送信電力比及び送信アンテナ14間の他信号電力分配を考慮に入れてもよいことに留意すべきである(ステップ102A)。よって、障害相関(の総計)は、データ信号障害相関、他信号障害相関、他セル障害相関、及び、任意でパイロット信号障害相関の合計として表現することができる(ステップ102B)。
障害相関が計算されたことにより、処理回路20は、1つ以上の選択された送信アンテナ14について1つ以上のチャネル品質評価を、障害相関、データ―パイロット信号送信電力比、及びデータ信号とパイロット信号の送信アンテナ電力分配の関数として生成する(図2及び図3参照)(ステップ104)。例として、受信機16はチャネル品質評価を、任意に選択した送信アンテナについての符号ごとのチップ別SINR(Signal−to−Interference−Ratio:信号対干渉比)として計算することができ、次式で表現される:
ここでβ
ds/psはデータ―パイロット信号送信電力比(総送信電力割当て比)、Kはデータ信号に割当てられた(アクティブアンテナ間で再使用される)マルチ符号の数、そしてα
ds(m)はm番目のアンテナのデータ信号送信電力分配である。さらに、h
% mはm番目の送信アンテナに対応する純応答ベクトル(h
%+ mは純応答ベクトルのエルミート転置)、R
%はステップ102にて実行された障害相関判定に基づく障害共分散行列である。
ステップ102にて述べた通り、障害相関の総計には、様々な障害の起源を表す複数の項目が含まれる。よって、1つの実施形態として、障害相関R%は次式で表される:
ここでR
% dsはデータチャネル信号を原因とする障害を示すデータ信号障害相関項目、R
% osは他チャネル信号(例えば、音声、ブロードキャスト、オーバヘッド等)を原因とする障害を示す他信号障害相関項目、そしてR
% ocは他セル干渉と雑音との組合せを示す他セル干渉及び雑音障害相関項目である。他セル干渉を白色雑音に近似できる場合には、R
% ocは、N
oを他セル干渉及び雑音のスペクトル密度、R
pulseをパルス波形の自己相関とすると、R
% oc=N
oR
pulseで表される(式(1)に示した純応答ベクトルについて議論した際に述べたように、
%の表記は較正を意味していることに注意)。
障害共分散行列は、データ及び音声チャネルが異なるフェーディングチャネルにまたがる(traverse)という事実を反映し、複数の項目に分割される。さらに、等式(4)における式は、暗黙的にパイロット信号の減算が受信機16にて実行されることを前提としており、よってパイロット信号を原因とする干渉成分が存在しないことに注意して欲しい。受信機16がパイロット信号の減算を実行しない場合は、式中のR%にはパイロット信号障害項目R% psが含まれることになる。
前記手法は特に、様々な送信機及び受信機の構成に応じて実装することができる。例えば、図5には、M個の送信アンテナ14からのN個のデータ信号サブストリームの送信(N<M)を示す、送信機12のS−PARC送信構造が描かれている。図示された送信機12のS−PARC型の実施形態には、1対Nデマルチプレクサ22、複数の符号化/変調/拡散器24、アンテナ選択部26、第1の合計器28、送信アンテナ14−1から14−Mに対応する追加的合計器30−1から30−Mが含まれる。
動作上、デマルチプレクサ22は、例えばHS−DSCHビットストリームなどの情報ストリームをN個のサブストリームに分割し、サブストリームはそれぞれ符号化/変調/拡散器24に入力される。アンテナ選択部26は、符号化/変調/拡散器24から処理結果として出力されるサブストリームの送信のために、アンテナ14のサブセットを選択する。合計器28は、サブストリームの最初の1つを、アンテナ14の第1のアンテナからの送信のために他の信号(音声、オーバヘッド、制御信号等)と合成する。また、合計器30−1〜30−Mは、M個の各パイロット信号をM個の送信アンテナ14のそれぞれに付加する。
S−PARCにおいて、デマルチプレクサ22、符号化/変調/拡散器24、アンテナ選択部26は全て、受信機16からのチャネル品質フィードバック(例えばチャネル品質通知(CQI:Channel Quality Indicator)フィードバック)を受けて動作する。即ち送信機12は、一般的には、サブストリーム数の選択、符号化レート及び変調方式、並びに所定の送信アンテナサブセットを受信機によるチャネル品質フィードバックの関数として選択することで、処理量(または他のいくつかのサービス測定基準)を最大化することを試みる。
S−PARCにおいて(及び他のMIMOシステムにおいて)、受信機でのチャネル品質評価の動作は、データ信号、パイロット信号及び他信号が全て異なるフェーディングチャネルにまたがるという事実によって複雑化している。例えば、図5には、選択されたアンテナ14のサブセットから送信されるデータ信号、アンテナ14の第1のアンテナのみから送信される他信号、及び全てのアンテナ14から送信されるパイロット信号が示されている。全てのアンテナからのパイロット信号の送信は、受信機16の全てのチャネルでの評価を可能にするために必要となる。
CQI評価は、HSDPA用の複数の拡散符号が、様々な送信アンテナ上で符号数の限界の問題を回避するために再利用されるという事実によってさらに複雑化している。結果として、各パイロットチャネル上で受信機16によって測定される(符号の再利用が採用されていない場合の)SINRは、スケジューリングされた送信データ信号を受信していた場合のデータチャネルによって経験され得るSINRとは単純には関連しない。さらに、いくつかの受信機の構造は、パイロットに基づくチャネル品質評価に自動的には反映されない干渉除去をデータ信号に適用する。そしてさらに重大な問題は、受信機16が一般的には現在選択された送信アンテナのサブセットとは典型的に異なる1以上の送信アンテナの選択について、一般的にCQIを報告しなければならないことである。この状況は、共有データ信号上でサービスを受けている全ての受信機が、それらがスケジューリングされておらず、現在のアンテナ選択がスケジューリングされた受信機についてのみ有効である場合でさえも、CQIの報告を要求され得るために発生する。
MIMOシステム(及び複数入力単一出力(MISO)システム)向けに本明細書にて開示する手法であって、チャネル品質評価を改善する第1の詳細な手法は、受信機16が自身のチャネル品質評価において考慮すべき障害相関を表す障害共分散行列を形成するために、全ての自己セル干渉(データ、音声、パイロット)及び他セル干渉についてパラメータ形式を用いるという、完全パラメータ法(full−parametric approach)として検討される。
障害共分散行列はゼロから形成されるため、現在選択されている送信アンテナ14のサブセットの影響を除去する必要はない。その代わりに、前記行列は、受信機16がCQIの報告を望む可能性のある全ての送信アンテナのサブセットについて直接形成され得る。この手法の利点は、本明細書において後述する部分パラメータ法(partially parametric approach)において要求されるバイアス相関方法が必要とならないことである。一方、そのトレードオフは、他セル干渉の色(color)を捕捉できないことである。ネットワーク10の他の周囲の無線セルについて伝播チャネルの評価が利用できないため、障害相関を表現するために用いる障害共分散行列を構築する際には、他セル干渉を白色雑音としてモデル化することが実用的である。(“障害相関”という用語は、実際上は“障害共分散行列”という用語と交換可能であると考えてもよいが、本明細書で開示する方法は、共分散行列の利用に限定されるものではないことは理解されるべきであることに注意して欲しい。)
障害共分散行列の構築において、一般的に様々な成分(データ、パイロット、音声、及び他セル干渉)を適切に測定することが必要である。前述したようにデータ、パイロット、及び他の信号は全て様々なフェーディングチャネルをまたがるため、MIMO及びMISOシステムについては分離した形での測定が必要である。このプロセスは、図5に示されているS−PARC送信機の構成に合わせた、図6に示した連続干渉除去(SIC:Successive Interference Cancellation)G−RAKE受信機の構造に関連して説明される。
図6は、受信機16内に実装することができ、受信機16の1つ以上のアンテナ18を経由して受信される合成信号に含まれるマルチ符号化された受信データ信号について連続干渉除去を提供する、SIC G−RAKE受信機回路38を、具体的に描いている。図示された受信機回路38の実施形態には、複数の干渉除去段階40−1〜40−4(要求または要望に応じて異なる数の干渉除去部を実装してもよい)が含まれ、そのうち最終段階を除いて全ての段階(stage)に逆拡散回路42、信号検知回路44、信号再生成回路46、及び合計回路48が含まれ、最終段階40−4では要素46及び48が省略される。
1つ以上の実施形態において、受信機回路38の第n段階40は、受信した合成信号に由来する当該段階の入力信号を受信する。前段階40−(n−1)から受け取る除去信号では、前段階によって検知された信号によって引き起こされた干渉が除去されており、当該段階への干渉が低減された入力信号の逆拡散値上で処理が行われる。
本明細書において開示されるチャネル品質評価との関係において、連続干渉除去の効果を反映するために、異なる段階40において異なるチャネル品質評価が生成される。例えば、段階40−n内に含まれる信号検知回路44は、段階40−nに供給された入力信号の逆拡散値間の障害相関を計算する。これら障害相関は、総チャネル評価(net channel estimates)、即ち純応答ベクトルによって合成加重を形成するために用いられ、合成加重はさらに、当該段階への入力信号の逆拡散値の様々なストリームを合成するRAKEによる合成信号の形成に用いられる。別々のストリームは、別々に割当てられたRAKE逆拡散器のフィンガによって(即ち、受信合成信号に関連して別々の時間に割当てられた相関器の数だけ)生成される。
合成逆拡散値、即ちRAKE合成信号は、対象信号内で検知されるビットの評価に対応する軟判定値(soft values)を得るために復調される。対象信号には、符号化ビットを含んでもよく、その場合には復号化ビットを得るために軟判定値を復号化してもよい。段階40−nは、軟判定復調を行った値について直接硬判定をして硬判定ビットを取得し、または軟判定値から取得した復号化ビットを再度符号化することにより、軟判定値からビットを生成する。各段階には、RAKE合成信号の変調から得られる軟判定値から復号化ビットを取得するための復号化回路を含んでもよく、または集中復号化器を用いてもよい。復号化ビットを再符号化して符号化ビットを得ることは、信号の再生成及び除去処理のために必要とされ、追加的な処理を伴うものの、再符号化されたビットは、軟判定値の復号化中になされる誤り訂正の恩恵を受ける。それ自体、次の段階に向けて除去信号を生成するためにビットの再符号化を用いることは、軟判定値に対して直接硬判定ロジックを適用して得られる符号化ビットに由来する場合よりも頑強(robust)な除去信号を生じ得る結果となる。
図7に示された干渉除去段階40の所与の1つについての詳細な例は、前述の装置及び方法のよりよい理解の助けとなる。(図示された内容は一般に全ての段階40について同様となるが、一連の段階のうち最終段階については信号再生成回路46等を除いて構成され得ることが理解されるべきである。)図示されているように、例示された信号検知回路44は、合成回路50、合成加重生成器52、障害相関評価器54、チャネル評価器56、復調器58、及び復号化器60を含む。障害相関評価器54及びチャネル評価器56は、チャネル品質評価をここに開示した方法に従って行うために、段階40間に分配され、または各段階40の全て若しくは一部に冗長的に配置され得る前述の処理回路の部分を含んでもよい。
さらに干渉除去段階を詳細に検討すると、信号再生成回路46は、SIC G−RAKE回路38の次の段階40に向けて除去信号を供給するために、硬判定処理器62及び信号再生成器64を含む。硬判定処理器62の代わりとして、回路の検知部が復号化器を含む場合には、信号再生成回路46が再符号化器66を含んでもよい。当然ながら、図示された機能配置を必要に応じて変更することができることは理解されるべきである。例えば、復号化器60は、再生成回路46の中に位置してもよく、検知された信号に対応する復号化ビットを再符号化器66への(及び必要と要望に応じてより上位の処理回路への)入力のために出力してもよい。
いずれにしろ、合成回路50は、当該段階の入力信号を含む(またはそれに由来する)逆拡散値の様々なストリームを受信し、合成加重生成器52によって生成される合成加重ベクトルに従って逆拡散値を合成することにより、RAKE合成信号を形成する。これら合成加重は、少なくとも部分的には当該段階への入力信号の逆拡散値間の障害相関と、対象信号に関連付けられた総チャネル応答とから計算され、総チャネル応答とは即ち、送信機/受信機のフィルタパルス波形及び伝播効果を含む終端間チャネルに相当する。
ここで示されているように段階ごとに実装し、または受信機16内の他の場所に実装してもよいチャネル評価器56が、必要となるチャネル評価を提供する一方、障害相関評価器54は、必要となる障害相関評価を生成する。より具体的には、障害相関評価器54は、図4に概略を示した広義の方法に従って対応する段階40−nについて障害相関を計算し得る。換言すれば、各段階で計算される障害相関及び合成加重、並びにチャネル品質評価は各段階に特有のものであって、一連の段階40において連続的に減算されていく干渉レベルを反映している。
当然ながら、障害相関評価器54の機能を、受信機16がスケジューリングされていない間の障害相関評価を支援するために実装してもよい。そうした時間の間、受信機16は一般的に復調/復号化を実行せず、チャネル品質の報告を行う。即ち、スケジューリングされていない間、受信機16は、一般的にはSICに基づく復調/復号化処理を実行しているのではなく、CQIの報告目的のために障害相関評価を引き続き行っているのである。
図6及び図7のSIC G−RAKEの詳細に戻ると、チャネル品質評価に内在している信号対干渉比(SINR)の定式化は、データ―パイロット信号送信電力比βds/psを、送信機12においてデータチャネル信号に割当てられた送信電力の総量と送信機12において全てのパイロット信号に割当てられた送信電力の総量との比として定義することから始まる。同様に、他信号―パイロット信号送信電力比βos/psは、送信機12において他の全ての信号(音声、制御、オーバーヘッド等)に割当てられた送信電力の総量と全てのパイロットに割当てられた送信電力の総量との比である。
次に、チャネル品質評価において考慮されるべき様々な送信電力分配を定義する。まず、データ信号、他信号、及びパイロット信号の送信アンテナ14にわたる分配を、長さMのベクトルads,aos及びapsによって表し、m番目の要素をそれぞれads(m),aos(m)及びaps(m)とする。例えば、送信アンテナ14がM=4個あり、データ信号が送信機12のアンテナ2及び4から送信されるとする。さらに、全ての他信号はアンテナ1から送信され、またアンテナ1と2について5%ずつ、アンテナ3と4について2.5%ずつの合計15%の送信電力がパイロット信号に割当てられるとする。この場合、ads=[0 1/2 0 1/2]であり、ここで1/2の因子は、データ信号の電力が現在選択されている2つの送信アンテナ14に均等に分割されるという事実を意味している。さらに、aos=[1 0 0 0]、aps=[1/3 1/3 1/6 1/6]となる。定義により、各電力分配ベクトルの要素の合計は1となる。
ここで、SIC G−RAKE受信機回路38の第n段階に関するρ(n)として表されるSINRを記述することができる。この値は、チャネル品質フィードバックの支援を受けて受信機16が評価を試行する真のSINRを表す。第n段階は、送信アンテナ14のうちmnというインデックスを持つ特定の1つに関連付けられる。例えば、送信アンテナ2及び4がデータ送信用に選択されたとすると、SIC G−RAKE受信機回路38には2つの段階が存在する。順序としてアンテナ2のデータストリームが最初に、アンテナ4のデータストリーム2番目に復号化されるとすると、第1段階のアンテナインデックスはm1=2、第2段階はm2=4となる。この表現により、送信機12における任意のアンテナ選択についての符号別、チップ別SINRは、
で与えられる。ここで、式(3)と同様にKは(アクティブアンテナ間で再使用される)データチャネルに割当てられたマルチ符号の数、N
pはパイロットチャネルに用いられる拡散要素であって、例えばWCDMA標準ではN
p=256である。一方、h
% mnはSIC G−RAKE受信機回路38の第n段階についてのm番目の送信アンテナに対応する純応答ベクトル、R
〜(n)(注:原文ではRの上に記号〜)は第n段階に対応する障害共分散行列である。h
% mnとR
〜(n)のチルダの表現は、(純応答と障害共分散とが依存する)チャネルのタップ利得がシンボル単位のパイロットエネルギーによって較正される事実を強調するために用いられる。本実施形態において、この較正を暗黙的に含む逆拡散パイロットシンボルから得られるチャネル評価をパラメータとして用いて純応答及び障害共分散が形成されるため、純応答及び障害共分散は前記のように表現される。
より詳細には、第n段階の障害共分散行列は、次式で与えられる:
ここで、R
% ds(n)はデータチャネルによる干渉を表し、R
% osは他信号による干渉を表し、及びR
% ocは他セル干渉と雑音の合成を表している。他セル干渉が白色雑音に近似できる場合は、前述したとおり、R
% ocはR
% oc=N
oR
pulseによって与えられる対角行列となる。
障害共分散行列は、データ信号及び他信号が送信機12と受信機16との間の様々なフェーディングチャネルにまたがり、SICがデータ信号のみに適用されてR% ds(n)がある段階のインデックスの関数となるという事実を反映して、複数の項に分割される。式(6)内の表現は、暗黙的にSIC G−RAKE受信機回路38においてパイロット信号の減算が行われることを前提としており、よってパイロット信号による干渉の項が存在していない。パイロット障害共分散行列の形式でのパイロット相関R% psを必要に応じて含めることもできる。
障害共分散行列の他信号部分は、次式で与えられる:
ここで、後述する式(9)にて定義されるR
% mは、シンボル間干渉(ISI:Inter−Symbol Interference)及びm番目の送信アンテナからの多元接続干渉(MAI:Multiple Access Interference)による干渉を表している。SICにおいて考慮される障害共分散行列のデータ信号部分は、次式で与えられる:
ここでA(n)はデータ干渉が既に除去された第n段階における有効な送信アンテナのサブセットを表している。この式における1つ目の項は、未だ除去されていない符号の再利用による干渉を表し、データチャネルに使用される拡散因子、即ちHSDPAについてはN
s=16によって較正される。2つ目の項は、未だ除去されていないISI/送信アンテナからのMAIによるものである。ISI/MAIの行列R
% mの要素は、次式で与えられる:
目指すところは、受信機16により、SIC G−RAKE受信機回路38の1つ以上の段階40ごとに、また1つ以上の異なる送信アンテナ選択ごとに、即ち1つ以上の所望の送信アンテナ14のサブセットごとに、SINR ρ(n)の量子化版をまず評価し、そして報告することである。よって、この評価の重要な部分は、受信機16がSINRを、自身がチャネル品質評価を報告する送信アンテナ14の各サブセットからサービスを受けていたかのように評価することである。報告されたチャネル品質評価は、送信機12によって利用者(即ち、受信機16、及び送信機12から送信されるHSDPA信号上でサービスを受ける他の受信機)のスケジューリングに使用される。よって、受信機16からのSINRの評価は、必要以上に現時点の送信機12におけるアンテナ選択の影響を受けるべきではない。つまり、受信機16のための最適な送信アンテナ選択は、恐らくは他の利用者へのサービスに用いられている現時点の送信アンテナ選択ではない。
この点を念頭におき、データ信号送信アンテナ電力分配adsがアンテナ選択の関数であったことを思い起こして欲しい。受信機16が1つ以上の所望のアンテナ選択についてのSINRを報告することから、adsに関する知識は存在し、送信機12におけるデータ信号への所与の合計電力割当て量について選択された送信アンテナをまたがって均一に電力が分配されるように構成され得る。即ち、データ信号を送信するための送信電力の合計としてどのような送信電力が用いられるとしても、考慮の対象となる送信アンテナ40のどういったサブセット間でもそうした電力の分割は均等に行われる。
この手法により、受信機16は、現時点の送信アンテナ選択の影響を回避し、障害共分散行列R〜(n)及び純応答ベクトルh% mをパラメータ化して形成し、SINR ρ(n)を式(5)によって直接計算する。このチャネル品質評価は、受信機16がSINRを報告しようとする1つ以上の送信アンテナ選択adsについて行われる。例えば、受信機16は、様々なアンテナ選択についてSINRを計算し、その中の最良のものについて報告することを選択してもよい。“最良”とは、SINR自体、または例えばデータ転送速度などのSINRの関数を最大化させるアンテナ選択を意味し得る。当然ながら、SINRの報告と並行して、受信機16は、一般的にはSINRに対応するアンテナ選択をフィードバックし、次回スケジューリングされたときに受信機16にデータ信号を送信するための適切な送信アンテナ14のサブセットを送信機12が選択できるようにしなければならない。
チャネル品質評価の第1のステップは、受信機16がチャネルタップ遅延τlmpを評価することであり、これを従来の経路探索技術によって行ってもよい。次のステップは、較正されたチャネルタップ利得g% lmpを、各送信アンテナからのパイロットチャネルを逆拡散し、パイロットシンボルパターンの知識を用いることで評価することである。逆拡散パイロット値は常にパイロットシンボルエネルギーによって較正されるため、評価されたチャネルタップ利得は暗黙のうちに較正され、式(1)及び式(6)における純応答及び障害共分散行列についてのパラメータ形式での計算が補完される。
こうして計算されたタップ利得及び遅延の評価により、式(1)における純応答ベクトルhmを(τqの)フィンガ位置の所与の組合せについて直接的に計算することができる。障害共分散行列のISI/MAIの部分、即ち式(9)におけるR% mもまた、選択されたフィンガ位置について直接的に計算することができる。
受信機16においてチャネル品質評価を計算するために、即ちρ(n)の値を計算するために必要な残るパラメータは、次の通りである:
− データ―パイロット信号送信電力比βds/ps及びマルチ符号数K;
− 他信号―パイロット信号送信電力比βos/ps及び他信号電力分配aos;
− パイロット信号送信アンテナ電力分配aps;
− 他セル干渉障害相関ROC;
上記一覧の第1項目に関し、少なくとも1つの実施形態において、受信機16はβds/ps及びKについて事前に合意した、または名目上の値を使用する。SINR ρ(n)はこれら両方のパラメータと共に線形的に変化するため、送信機12は、受信機16から報告されたSINRを、そこで用いられている実際の値によりスケジューリングの時点で較正してもよい。
他の実施形態において、送信機は転送リンク内の実データ―パイロット信号送信電力比βds/psについての信号をシグナリングし、受信機16はそうした信号情報を受信するように構成される。データ―パイロット信号送信電力比が選択された信号遅延を超えて大きく変化しない限り、即ちシグナリングにより更新される値の範囲において、この手法は良好な精度を生み出す。当然ながら、符号数Kもまたシグナリングされる値であってもよい。
WCDMA標準には、既にデータ―パイロット信号送信電力比のシグナリングの提供が含まれているが、通常それは頻繁にはシグナリングされない。より高い頻度でデータ―パイロット信号送信電力比をシグナリングする1つの理由は、後述するように、受信機16における他信号―パイロット信号送信電力比βos/psの評価を単純化することである。送信機から受信機へのシグナリングの提供を前提とすると、受信機12は以下の計算においてβds/psの実際の値の知識を有することを想定し得る。
上記一覧の第2項目に関し、送信機12は受信機16へ転送リンク信号を送信し、その転送リンク信号には他信号―パイロット信号送信電力比βos/psが含まれ、さらに受信機16はそうした値を送信機からのシグナリングを介して受信するよう構成されるということを想定できる。そうしたシグナリングは、送信機12からの転送リンク信号の増加という犠牲のもとで受信機16におけるチャネル品質評価を単純化する。
別の実施形態において、送信機12は他信号―パイロット信号送信電力比βos/psをシグナリングせず、受信機16は、当該比率を評価するよう構成される。そうした評価の支援を受けて、送信機12が受信機16へ他信号送信アンテナ電力分配aosをシグナリングするよう構成することができる。分配は通常、頻繁には、あるいは全く変更されないため、低い頻度で、または例えば通信設定時などの1度だけ分配をシグナリングしてもよい。例えば、送信機12は、全ての他信号の電力を常に送信アンテナ14のアンテナ1から送信するように構成され、その場合には、m=1についてはaos(m)=1、それ以外はゼロとなる。よって、以下の計算は、受信機16が、他信号送信アンテナ電力分配を、既定値を仮定し、または送信機12からのシグナリングを介して受信することで知っていることを前提とする。
上記一覧の第3項目に関しては、パイロット信号送信アンテナ電力分配apsもまた受信機16にとって既知であることを前提としている。この値は典型的には時間によって変化せず、通信設定時に送信機12から受信機16へ分配を一度だけシグナリングしてもよい。その代わりに、apsを既定値として仮定し、または極めて長い時間の平均をとって評価することもできる。
上記一覧の第4項目に関しては、現在議論している受信機の実施形態は、他セル干渉が白色雑音に近似されることを前提として構成されている。よって、他セル障害相関は、Roc=NoRpulseとして表され、ここでNoは雑音及び他セル干渉のパワースペクトル密度である。Noは、一般的には未知であり、受信機16は、障害相関計算及びチャネル品質評価の支援を受けてそれを評価するように構成される。受信機16には雑音評価方法をいくつ実装してもよいが、本明細書では、2つの有利な方法として、最大尤度(ML:Maximum Likelihood)の手法に基づくもの、及び最大固有ベクトルの手法に基づくものについて後述する。
前述の評価、既定値の仮定、及び/またはシグナリングを念頭に置くと、少なくとも1つの実施形態において、受信機16は、No及びβos/psを除きチャネル品質評価について必要となる全てを有することとなる。
受信機16は、第1のステップとして、逆拡散の前に受信した(合成)信号のチップサンプルに基づいて共分散行列を評価することにより、βos/psを評価するよう構成し得る。この共分散行列はRrとして表すことができる。チップサンプル共分散行列は、障害共分散行列R%(n)と同じ次元を持つ。さらに、Rrの計算において用いられる受信信号の遅延は、R%(n)の評価に用いられるものと同一である。評価は、例えばW−CDMAの1つの伝送時間間隔(TTI:Transport Time Interval)といった所与の時間窓の中で多くの位置に関する遅延したチップサンプルのベクトルr(i)の外積を平均することで簡単に得られ、即ち、
となる。1つのTTIの中には多数のチップサンプルが存在するため、R
rについて極めて良好な評価を得ることができる。受信機16の他の実施形態として、例えば移動窓(sliding window)、指数加重平均(exponential weighted average)などの平均を得る他の手法を用いてもよい。
いずれにしろ、チップサンプル共分散行列の真の値は次式で与えられる:
ここでα
T/P(m)はトラヒック―パイロット信号比と呼ばれ、m番目のアンテナ上のパイロット信号電力に対するm番目のアンテナ上のデータ信号、他信号、及びパイロット信号電力の合計の比として定義される。行列R
% mは、式(9)内で定義されたR
mと同じ形式を有する。唯一の違いは、式(9)内の内積において、k=0の項が実行されないことである。この違いは、逆拡散の前に符号の直交性という概念が存在しないためである。
受信機16は、式(11)内のチップサンプル共分散行列を等価形式の次式で表すことに基づいて、他信号―パイロット信号送信電力比βos/psを評価するよう構成し得る:
上記定式化において、Rrは評価されるべき他信号―パイロット信号送信電力比βos/psの関数である。受信機16がチップサンプル共分散行列を評価する際、その結果はa‐ ds(注:原文ではaの上に記号−)で表される現時点のデータ信号送信アンテナ電力分配の関数となり、それは必ずしも受信機16がSINRの報告を望む送信アンテナ選択に対応するものと等しくはない。結果として、βos/psの評価の目的のためには、a‐ dsは未知として扱われ、よって評価される。
評価のために、他セル干渉を白色雑音、即ちRoc=NoRpulseとしてモデル化して受信機16を構成することができる。厳密には雑音レベルNoも一般的に未知であるが、受信機16は、雑音レベルを既知として扱うことで、過度に大きい探索空間を回避することができる。雑音レベルの初期評価は、後続の2つの節にて説明される2つの独立した手法のいずれかを用いて取得することができる。精緻化された雑音レベルの評価値は、Noの初期評価を用いてβos/ps及びa‐ dsのML評価を最初に形成するやり方を繰返すことによって取得することができる。その際には、これら2つのパラメータを既知の値として扱い、このときNoを未知として扱うことを除き、前記ML評価が繰り返される。この繰返し処理は、受信機16によってβos/ps及びa‐ dsの両方の評価値が望むとおりに精緻化される回数だけ繰り返され得る。
ML法を用いて他信号―パイロット信号送信電力比を評価するために、受信機16は、(最大化される)対数尤度比を次のように定義し得る:
はTTI内の異なる位置の遅延したチップサンプルのN個のベクトルの連結である。前記処理は、r(i)が共分散行列R
rに伴うゼロ平均複素ガウス確率ベクトルであることを前提としている。さらなる前提として、r(i)の値は、次式を満たすように十分に間隔を空けられる。
これら前提の下、前記対数尤度比は次式で与えられる:
ここで、tr[A]は行列のトレースである。log(A)は行列の対数であり、Aの要素の対数ではない。この数式において、R
% mについてパラメータ形式でのチャネル評価を用いて、R
rは式(5)により計算される。サンプル共分散行列R
^rは、式(10)によって評価される。
対数尤度比を最大化するために、
の仮定(hypothesis)の取り得るすべての値について計算されなければならない。電力分配ベクトルa
‐ dsは離散値であり、正確には2
M個の有限個の値のみをとる。他の仮定β
os/psは連続数であり、そのため有限個の値に限定するために量子化され得る。より細かい量子化は大きな探索空間を要求し、複雑さと精度の間のトレードオフを示すことになる。望まれる最大化の結果は最もβ
os/psに近い値だが、前記処理においては現在のアンテナ選択a
‐ dsもまた取得される。既に述べたように、これはチャネル品質の報告(例えばSINRの報告)には必須のものではなく、その理由は、受信機16は一般的に自身が選択したアンテナ選択a
dsに基づいて障害共分散行列を形成するためである。
転送リンク信号からデータ―パイロット信号送信電力比βds/psを知ることは、βos/psのML評価の複雑さを低減させる。それは、データ―パイロット信号送信電力比が未知であれば仮定がより高い次元を持つことになり、探索空間がより大きくなるためである。概念的にはこれは問題ではなく、受信機16はそれを既知でない値として、前述の定式を用いてβds/psを評価することができる。
以上より、受信機の課題として残ったのは、雑音レベルNoの有効な評価の作成である。多くの手法を用いることができるが、ここで開示される方法には、要求される雑音評価について有利な2つの手法を含む。いずれの手法も評価されたチップサンプル共分散行列R^rに基づいている。第1の手法は、式(11)内のチップサンプル共分散行列の形式を用いた最小二乗(LS:Least Square)解決法である。この手法において、受信機16は、左辺のRrをその評価値R^rに置き換え、他セル干渉をR% oc=NoRpulseのように白色雑音にモデル化する。さらに、右辺のR% mは、式(9)内のこの行列のパラメータ形式でのチャネル評価を用いて計算される。
結果は、M+1個、即ちM個のトラヒック―パイロット信号比αT/P(m)と雑音レベルNoのみが未知である多数の等式の系となる。この系はAx=Bとして表現することができ、ここで
が未知のベクトルとなる。ベクトルbのn番目の要素は、行列R
^rの(p,q)番目の要素として与えられ、行列Aのn番目の行は次式で与えられる:
ここでR
% m(p,q)はR
% mの(p,q)番目の要素であり、δ(・)はデルタ関数である。この等式系のLS解は、
A及びBを形成するための行列の要素の選択においては、大幅な自由度がある。要素の最少の数は、等式系に解が存在することを保証するM+1個である。しかしながら、大幅に増加された数を用いることで、より良好に雑音が平均化される。一例としては、各R% mの最初の数個の対角成分に対応する要素を選択することができる。R% mはエルミート行列であるため、主対角成分及び上方の対角成分のみが、有効な等式を提供する。
LS法を用いた雑音レベルの評価では評価にバイアスがかかる傾向があり、そのバイアスは特に高いSNR(Signal−to−Noise Ratio)において明白となる。その場合、雑音レベルのトラヒック―パイロット信号比に対する関連は小さくなり、Noの評価においてR% mを計算するために用いられる不完全なチャネル評価により比較的多くの量の雑音が吸収される。結果は、SNRの増加関数である正のバイアス(雑音レベルを過大評価している)となる。バイアス関数は、チャネル評価エラーの分散、及びチャネル自体の形態に依存する。所与の環境についてバイアスの統計が既知であれば、受信機16は、バイアスを低減する訂正因子を評価に適用することで、雑音レベル評価を改善することができる。例えば、訂正因子を確率バイアスの何らかの百分率とすることができる。CQI報告の観点からは、百分率を雑音レベルがそれでもわずかに過大評価されるような値とし、受信機16によって報告される最終的なSINR評価がわずかに過小評価されるようにすることがより適切である。このようにすると、送信機12におけるリンク適合処理が最終的に過度に積極的にならず、送信機12から受信機16への再送過多が回避される。
受信機16の中に実装し得る第2の手法では、雑音評価をチップサンプル共分散行列Rrの評価の固有値の計算に基づいて行う。Rrの次元がMよりも相当に大きい限りにおいては、最大の固有値は信号成分に対応し、最小の固有値は雑音成分に対応する。その結果、雑音レベルの評価は単純に、評価されたチップサンプル雑音共分散行列R^ rの最大の固有値となる。その代わりに、評価は、いくつかの場合において、多くの最小の固有値を平均化することで改善され得る。
チャネル品質評価の部分パラメータ法においては、ここまで説明してきた、自己セル及び他セル干渉についてパラメータ形式が障害相関の形成に用いられる完全パラメータ法とは反対に、データ信号干渉から起こる障害相関の一部のみがパラメータ形式で表現される。同じセル内の他信号及び他セル信号のこれらの部分は、障害相関評価の中で測定値が用いられるという意味において、パラメータではない。
この部分パラメータ法において、逆拡散の前にまず受信したチップサンプルの共分散行列が評価される。その代わりに、逆拡散パイロットシンボルを用いて障害共分散行列を評価してもよい。しかしながら、前者の方が雑音の影響は少なく、それは評価の形成に用いるパイロットシンボルよりも1つのTTI内のチップサンプルの数の方が多いためである。どちらの場合も、データチャネルによる共分散行列の一部は現在選択している送信アンテナのサブセットによる影響を受けるため、その部分は、他信号、パイロット信号、及び他セル干渉のみによる障害を残して除去される。受信機16においてパイロット信号の減算が用いられる場合には、パイロット信号による障害もまた除去され得る。結果としての障害共分散行列は、受信機16が報告を望む対象となり得る送信アンテナの各サブセットによる部分を再度組み入れることにより、増補(augment)される。
データチャネルのために受信機16によりSICが用いられると仮定すると、増補はSIC G−RAKE受信機回路38の各段階40で異なる取り扱いをされる。チャネル係数及び遅延評価を用いて計算することのできる障害共分散行列のパラメータ形式の利用は、そうした増補を可能にする。一度増補された障害共分散行列が形成されると、SIC G−RAKE受信機回路38の各段階40についてSINRが計算される。
この手法の1つの利点は、それにより他セル干渉の色(color)が暗黙のうちに捕捉されることである。これは、SIC G−RAKE受信機回路38がその色を利用して他セル干渉を部分的に抑制することができるため、干渉除去の観点から望ましい。さらに、現時点の送信アンテナ選択による障害相関成分の除去が、過度の減算を回避するように意図的にバイアスをかけられるべきであって、それによりいくつかの場合に負値定符号の障害共分散行列を導き得ることにも着目すべきである。
より詳細には、受信機16は、チップサンプル共分散行列Rrの評価から、現時点でスケジューリングされている受信機用に有効化されている送信アンテナ40の影響を除去する。そして、受信機16は、自身がSINRの報告を望む送信アンテナ選択による成分を再度組み入れることで、結果を増補する。
この手法をよりよく理解するには、等式(12)に含まれるRrの形式の検討から始めることができる。この等式は行列R% mの関数であることに注目して欲しい。対照的に、R% mの観点でSINRを計算するために必要であった等式6における障害共分散行列は、直交拡散符号(等式9参照)の利用による“k=0”の項を含んでいない。一方、等式12は、R% mの観点から、“k=0”の項を抽出することで次式で再度書き表すことができる:
現在のアンテナ選択(及びパイロット)の影響を除去するために、受信機16は次の減算を実行するよう構成することができる:
ここで式(20)において考慮すべき音声及び“他”信号がない場合には、β
os/psの項は存在せず、前記等式はR
OCの項のみに縮減されることに注意すべきである。
実際上、全てのパラメータが既知であるため、等式(19)を用いて受信機16によってROS,OCを評価することができる。特にデータ―パイロット信号送信電力比ROS,OCは、転送リンク信号を通して知ることができ;現在のアンテナ選択a‐ dsは前述のML法を用いて評価でき;そしてトラヒック―パイロット比αT/P(m)は前述のLS法を用いて評価できる。
等式(20)内の理想的なROS,OCの表現を等式(6)と比較すると、要求される障害共分散行列を形成―及びSINRをそれにより評価―するためには、受信機16は等式(8)に定義されたR% dsを等式(19)を通して得られたROS,OCの評価に加算することのみが必要であることが理解される。この手法は、R% s(n)についてのパラメータ形式、及び等式(19)内の減算された項が障害共分散行列の構築に用いられるという意味において部分的にパラメータ化されているが、他信号及び他セル干渉成分ROS,OCについて非パラメータ形式が用いられる。完全パラメータ法において他セル干渉が白色雑音としてモデル化されたのとは対照的に、この技術の1つの利点は、ROS,OCの非パラメータ形式により、他セル干渉におけるどういった潜在的な色も捕捉できることである。雑音の色を捕捉することは、受信機16が雑音の色の知識を利用して部分的に他セル干渉を抑制するよう構成できることから、干渉除去の観点から望ましい。例えば、SIC G−RAKE回路38は、自身の干渉抑制において雑音の配色の知識をRAKE合成加重の生成に組み込むことにより雑音の配色を利用するという受信機の構造の1つの形態である。
この部分パラメータ法について述べるべき1つの点は、トラヒック―パイロット比αT/P(m)における評価エラーが等式(19)内のh% mh%+ mの項の過剰な減算を導き得る点であり、これにより、特にこの項を1未満の値によって較正することで、ROS,OCの評価をいくつかの場合において負値定符号とさせることができる。よって、前記値は、ROS,OCが正値定符号となるように十分小さく、しかしSINRの評価において過剰なエラーが生じないように小さ過ぎないことが求められる。
少なくともこれらのうちいくつか及び他の詳細がSIC G−RAKE構造との関連で提起されている一方、いわゆる当業者であれば、ここで開示されたチャネル品質評価を様々な受信機の構造に適用できることを理解するであろう。例えば、図8は、受信機16内に実装し得るG−RAKEに基づく受信機回路70を描いている。より具体的には、図示された回路70は、異なる種類の受信機を支援するよう構成され得る。例えば、MMSEに基づくRAKE処理、または結合検知RAKE処理が支援され得る。MMSEについては、前述したように、受信機16は、同一のシンボル時間の間に送信された符号シンボルを個別の基準で検知し、一方他の全ての符号シンボルを(有色)雑音として扱うよう構成される。また、結合検知については、受信機16は、同一のシンボル時間の間に送信された同一符号の符号シンボルを結合検知基準で検知し、一方他の全ての符号シンボルを雑音として扱うよう構成される。
図示された実施形態において、回路70は、1つ以上の合成受信信号r1(t)〜rL(t)(Lは受信アンテナ数)から逆拡散値を生成するための多数の相関器バンク(correlator bank)72−1〜72−nと、相関器バンク72からの逆拡散値をRAKE合成し、ここで開示したようなチャネル品質評価を可能にする1つ以上の処理回路20を含み又はそれらに関連付けられたG−RAKE合成器74と、G−RAKE合成器74から出力されるRAKE合成値から軟判定値を生成する軟判定値生成器76と、軟判定値生成器76から出力される軟判定値から硬判定値を生み出す復号化器78とを備える。
全てのアンテナ14から送信されるデータ信号を想定すると、相関器バンク72から出力される逆拡散ベクトルは次式のように表すことができる:
ここで、ベクトルc
k(i)=[c
1k(i),c
2k(i),...,c
Mk(i)]
Tは、送信機12から送信されているデータチャネル信号上で用いられている同一のマルチ符号を共有するi番目のシンボル期間中のM個のシンボルを含む。Q行M列の利得行列H=[h
1,h
2,...,h
M]はMIMO(またはMISO)チャネルを完全に表し、ここで各利得ベクトルh
mは、m番目の送信アンテナと(マルチアンテナの可能性のある)受信機16との間のチャネルを表す。ベクトルx
k(i)は、ISI、MAI、及び雑音からなる障害処理を表している。実際上、MAIもまた他信号チャネル(音声、制御等)、及びパイロットを含んでいる。RAKEフィンガをまたがって障害相関を捕捉する障害共分散行列は、次式で表される:
G−RAKE合成器74から出力されるM次元の決定統計量zk(i)は、次式のように逆拡散ベクトルを加重して生成される:
結合検知(JD:Joint Detection)の実装のために、G−RAKE重み行列は、次式で与えられる:
次の行列は、MLSE型の受信機内のsパラメータに類似している:
MMSEの実装のために、重み行列は次式で表現される:
ここで、後者の等号において、障害共分散行列を次のように再定義してもよい:
シンボルcmk(i)のMMSE評価に対応する重みベクトルはWMMSE,mと表され、これは単純にWMMSEのm番目の列である。このシンボルが関係している限りにおいて、同一の符号を共有する信号による追加的な項をRX,m内に伴う共分散行列RX,mによって障害は“理解”される。回路70のJD G−RAKEの実装と対照的に、回路70のMMSE G−RAKEの実装は、3つの信号を、結合的に検知するのではなく、寧ろ抑制されるべき干渉として扱う。
JDとMMSEの両方の実装において、障害共分散行列Rxは、送信電力比、送信電力分配、及び異なるフェーディング経路を考慮して計算し得る。そのようにして、受信機16のJD及びMMSEの実装において用いられる障害共分散行列は、ここで開示したチャネル品質評価のための有利な基盤を提供する。
さらなる変化例として、受信機16を、送信アンテナ選択を用いない送信システムとの関連において運用してもよい。そうした場合には、未来の時点でスケジューリングされる送信アンテナ選択は報告の時点と同一となるため、SINRの評価の際に現時点の送信アンテナ選択の影響を除去することは必要ではない。この事実は、本明細書にて詳細に説明した、完全にパラメータ化された手法、及び部分的にパラメータ化されたCQI評価手法の両方をより単純化する。具体的には、他信号―パイロット信号送信電力比のML評価は、現在のアンテナ選択a‐ dsが既知であることで単純化され、よって探索空間の大きさは著しく低減される。この点について、動的送信アンテナ選択を行うシステム10のために、少なくとも1つの送信機12の実施形態は、受信機16へ現時点の送信アンテナ選択を提供する転送リンク信号を使用し、それにより受信機16における他信号―パイロット信号送信電力比のML評価を単純化する。
受信機16におけるCQI評価を単純化するさらに別の方法は、連続する複数のサービス間隔(例えばTTI)について各時間に同一の送信アンテナ選択を用いて同一の受信機をスケジューリングするように、送信機12を構成することである。この場合、スケジューリングされていない受信機は、最初のTTIの間に現時点の送信アンテナ選択a‐ dsを評価する必要があるが、スケジューリングされた受信機が変化するまでは再度それを評価する必要はない。
部分パラメータ法において、逆拡散の前に受信したチップサンプルから評価されるデータ共分散行列の代わりに、逆拡散パイロット値から評価される障害共分散行列を用いることが可能である。この代替法は、等式(19)におけるROS,OCの評価を単純化し、トラヒック―パイロット信号比αT/P(m)が要求されなくなる。これは、異なる送信アンテナ40上のパイロット符号が直交し、h% mh%+ mの項がパイロットの逆拡散の後に現れなくなるためである。トレードオフは、チップサンプルよりも平均化すべきパイロットシンボルが相当に少ないため、逆拡散後の障害共分散行列において、逆拡散前のデータ共分散行列よりも雑音が多くなることである。
前述の手法と同様、障害共分散行列は、送信機12に使用されていない符号の逆拡散を通して評価することもできる。ここでも、トラヒック―パイロット信号比の評価は必要とされない。未使用符号が小さな拡散因子のものである場合には、得られる共分散行列は、パイロット符号を逆拡散して得られるよりも少ない雑音を持ち得る。よって、複数の未使用符号が存在する場合、評価された障害共分散行列は、雑音をさらに低減するために、それら符号について平均化することができる。
他セル干渉の電力レベルが現時点の無線セル内において受信機16の移動によって大きくは変わらないことから、雑音レベルNoを明示的に評価する代替法は、いくつかの合意された名目上の値を使用することである。また別の手法は、雑音レベルの便乗評価(opportunistic estimate)、即ちSINRの評価が非常に低い場合には雑音レベルの評価はきわめて良好だとすることである。これは低SNRにおいて評価におけるバイアスが低減されることを理由とする。受信機16を時間を追って評価されるSINRを追跡するように構成した場合、雑音レベルの評価を便乗的に行うことができる。いくつかの場合には、レベルは多くの送信機(例えば移動通信ネットワーク内の無線基地局)からの平均であるため、他セル干渉のレベルは極めて安定し、よって本手法は適度な正確性を提供することができる。
また、完全パラメータ法において他セル干渉を白色雑音としてモデル化するのではなく、ある修正モデルを非対角のROCについて用いることができる。この修正モデルは、例えば、チャネルに対して独立とし、それによりチップパルス波形による“平均色(average color)”を捕捉するものとすることができる。
よって、以上の点を念頭に置くと、MIMOなどの複雑な送信及び受信環境に関連する様々なフェーディング経路、信号の形態、及び送信電力割当てを考慮に入れた上で、受信信号についての障害相関を判定するように受信機16は構成されることが理解されるであろう。より具体的には、以上の検討では、障害相関行列R%の様々な成分の判定について完全にパラメータ化された実施形態と部分的にパラメータ化された実施形態が提示された。完全及び部分パラメータ法の両方とも、その目標は、式(6)で与えられた受信機16のn番目の段階についての障害共分散行列を形成することであり―nは1と等しくてもよい―ここに再度記載する:
ここでR
% ds(n)は式(8)で与えられる。完全な手法の両方において、式(8)内の全ての量は、システム設定により、転送リンク信号を通して、または名目上の値を用いて既知であると想定される。よって、障害共分散行列のこの部分は、式(1)の既知の純応答ベクトルh
% mと式(9)内に与えられた既知のISI/MAI行列R
% mとを用いて直接的に計算してもよい。h
% mとR
% mの両方はチャネル評価に基づいて計算される。2つの手法の違いは、R
% OSとR
% OCをどのように計算するかである。
完全パラメータ法では、受信機16はR% OSとR% OCをそららの定式から直接形成するように構成され、そのため“完全パラメータ”と呼ばれる。R% OSを左右する等式は式(7)であって、即ち:
この手法において、他セル干渉は白色雑音としてモデル化され、よってR
% OCは次式で与えられる:
これら3つの等式は、他信号―パイロット信号電力比βOS/PS及び他セル干渉電力NOを除いて既知であることを前提としている。これらが一度評価された場合は、障害共分散行列のこれら部分を直接計算してもよい。
部分パラメータ法を再検討すると、受信機16は、障害相関評価における他信号及び他セルの項を1つに合成された項とする評価の基準として扱うように構成される。換言すると、受信機16は、次式を評価するように構成される:
この手法は、受信機16がR
% ds(n)をパラメータ的に形成し、R
% OS,OCを非パラメータ的に形成するため、“部分パラメータ”と呼ばれる。
当然ながら、本明細書において既に説明したように、完全及び部分パラメータ法は共に、複数の評価技術を用いる。例えば、本開示における重要な部分は、必要となる量の評価のための3つの技術であって、即ち完全パラメータ法についてのβOS/PS及びNO、並びに部分パラメータ法についてのR% OS,OCである。これら評価技術には、最小二乗(LS)法、最大尤度(ML)法、及び最小固有値(MinEv)法が含まれる。
最小二乗法は、他セル干渉電力NOの評価と、式(11)の関係で定義されたいわゆるトラヒック―パイロット信号比αT/P(m)とを算出する。さらにMLの処理は、他信号―パイロット信号電力比βOS/PSの評価と、本明細書にて既に定義した現時点のデータ信号送信アンテナ電力分配ベクトルa‐ dsとを算出する。前述の詳細から理解されるように、完全及び部分パラメータ法は、3つの評価技術の様々な組合せを用いる。
例えば、完全パラメータ法は、βOS/PSとNOの評価に依存する。受信機16は、NOの最初の評価を取得するためにLSまたはMinEv法のいずれかを使用し、ML法は次にβOS/PSを取得するために用いられる。現在のアンテナ選択a‐ dsは、MLの評価において結合的に取得され、他セル干渉電力の精緻化された評価を望むかどうかに依存して後で使用してもしなくてもよい。精緻化された他セル干渉電力NOは、再度MLを用いて取得することができ、その場合にはβOS/PSとa‐ dsとを既知の値(直前に得られた評価を用いる)、NOを未知の値として扱うことが異なる。
部分パラメータ法について、受信機16はR% OS,OCを評価するが、このときトラヒック―パイロット信号比αT/P(m)と現在のアンテナ選択a‐ dsの知識が求められる。トラヒック―パイロット信号比αT/P(m)はLS法を通して得られる。他セル干渉電力NOもまたその処理の一部として得られるが、必要とはされない。現在のアンテナ選択a‐ dsはML法を通して得られ、それによりさらに本手法では必要とされない他信号―パイロット信号電力比βOS/PSも算出される。
図9は、完全パラメータ法における障害相関処理を実行するための、受信機16の1つ以上の処理回路20内に実装され得る処理ロジックの1つの実施形態を描いている。こうした処理は、受信機16内でハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組合せによって実行することができ、“データサンプル障害相関”としても言及されるチップサンプル共分散行列の評価R^ rを式(10)のように形成するところから開始される(ステップ110)。処理は、“k=0”の項を省略することを除いて式(9)に従ったISI/MAI障害相関R% mの計算に続く(ステップ112)。そして、本明細書にて既に説明したMinEvまたはLS法のいずれかが、他セル干渉電力NOの粗い評価を得るために用いられる(ステップ114)。(トラヒック―パイロット信号比αT/P(m)はLS法の副産物だが、これらは破棄または無視してもよい。)
処理は継続し、ML処理においてNOの評価を用いて他信号―パイロット信号電力比βOS/PS、即ち送信アンテナ14について他信号―パイロット信号送信電力比が取得される(ステップ116)。前述したとおり、現在のアンテナ選択a‐ dsはこの技術の副産物だが、これは他セル干渉電力の精緻化された評価を望むかどうかに依存して後で使用してもよい。ここで、ステップ116の処理を、精緻化された他セル干渉電力の評価値、及び精緻化され得るβOS/PSの評価値を取得するために繰り返してもよいことに注意して欲しい。処理は継続し、他信号成分ROS及び他セル成分ROCについてのパラメータ形式であるβOS/PS及びNOの最終的な評価を用いて障害共分散行列R%(n)が計算される(ステップ118)。
図10は、同様の、しかし障害相関R%の部分パラメータ判定に関連して設定された処理を表している。ここでも、受信機16の1つ以上の処理回路20は、図示された処理を実行するために、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組合せを備え得る。
このことを念頭に置き、処理は、チップサンプル共分散行列の評価R^ rを式(10)のように形成するところから開始される(ステップ120)。処理は継続し、“k=0”の項を省略することを除き式(9)に従ってISI/MAI障害相関R% mが計算される(ステップ122)。そして、受信機は、既に説明したLS法を用いてトラヒック―パイロット信号比αT/P(m)の評価を取得する(ステップ124)。前述のとおり、他セル干渉電力NOはLS法の副産物であって本手法ではこれを無視することができる。処理は継続し、受信機16がMLの定式化を用いて現在のアンテナ選択の評価a‐ dsを取得する(ステップ126)。前述のとおり、他信号―パイロット信号電力比βOS/PSは本手法の副産物であってこれもまた無視することができる。処理は継続し、受信機16がαT/P(m)及びa‐ dsを用いて障害共分散行列の合成された他信号及び他セル部分、即ち式(19)を用いてR% OS,OC(前記等式(27)参照)を評価する(ステップ128)。これらによって、式(24)内の障害共分散行列R%(n)の全ての項が障害相関全体の評価のために利用可能となる(ステップ130)。
以上より、受信機16はMIMO及び他の潜在的に複雑な受信環境下における障害相関を判定するよう構成され、障害相関評価は本明細書で開示したように送信アンテナ14の組合せのうち異なるものから送信される様々な形態の信号の効果を考慮していることが理解されるべきである。この点を念頭に置き、本発明はここまでの説明によって限定されず、また添付した図面によっても限定されない。その代わりに、本発明は添付の特許請求の範囲、及びそれらの法上の均等物によってのみ限定される。