従来、垂直状態に配置された円筒形ロータを使用し、該ロータに被分離粒子が混入している液体試料を連続的に注入、通過させながら回転させることによって、分離された微小粒子をロータ内に留め、残りの上澄液を連続的にロータ外に排出するための連続遠心分離機が知られている。例えば、下記特許文献1には、液体媒体中のウイルスを分離するための連続遠心分離機が開示され、また下記特許文献2には、円筒形ロータについて改良された構造が開示されている。
このような連続遠心分離機は、ウイルスや培養菌体等を大量に分離してワクチンや医薬品に使用する原料を精製することから、大規模なロータおよびロータ駆動装置を必要とし、機器の操作性または取扱い性の向上や、機器の衛生管理の容易性が求められている。
図7は、本件出願人が、特許文献2に開示したような円筒形ロータを使用した遠心分離技術を採用して製品化した連続遠心分離機100の全体外観斜視図を示す。円筒形ロータ200は、モータを含む駆動装置部300の出力回転軸302に接続され、吊り下げ状態に保持される。円筒形ロータ200の下端部には、下側回転軸303が嵌合され、かつネジで締結されている。円筒形ロータ200は、駆動装置部300とともに、リフト装置部500によって垂直方向において上下動され、運転時にはロータ回転装置部101の中空形状体から成るチャンバ401内に収納され、ロータ200の下側回転軸303はベース402に取り付けられた下部軸受部403に支承される。収納された後、アッパープレート405は、チャンバ401の上蓋として作用してチャンバ401内を気密に封じる。
リフト装置部500は、垂直上下方向の移動用リフト機構部501と水平前後方向の移動用リフト機構部502とを有する。運転準備の段階または運転後において、縦長の円筒形ロータ200を駆動装置部300の回転出力軸302に着脱するために、リフト装置部500は、円筒形ロータ200を吊り下げる駆動装置部300が搭載されたアッパープレート405を垂直上昇、水平前進、垂直下降させるように構成されている。このリフト装置部500の上昇、前進、下降の移動により、円筒形ロータ200は、駆動装置部300に対して着脱が可能となる。
制御装置部600は、駆動装置部300を含むロータ回転装置部101を運転するための制御装置で、運転に必要な電源や電気信号を制御するためのコントローラを内蔵している。また、遠心分離機の運転条件である回転速度、回転時間、温度等を設定し、運転状態を表示し、運転のスタートまたはストップを指示するスイッチを有するコントロールパネル601を有している。制御装置部600から駆動装置部300へ駆動電源および制御回路の配線701が設けられ、さらに、駆動装置部300や下部軸受部403を冷却するための冷却水、リフト装置部500の作動油、円筒形ロータ200を冷却するためにチャンバ401内に設けられた冷却コイルへの冷媒等の配管702が設けられている。
このような大規模な連続遠心分離機100では、ロータ200の運転準備中または運転終了後の段階において、駆動装置部300は、リフト装置部500により垂直上方向へ移動されるので、駆動装置部300を運転するために必要な駆動電源および制御回路等の配線701、ならびに冷却水および潤滑油の配管702は、制御装置部600から、チャンバ401の上端部に固定されたコネクタ装置(配線コネクタおよび配管コネクタを含む)703へ接続する必要がある。これによって、制御装置部600からの配線701および配管702は、ロータ200の運転時には、コネクタ装置703を介して駆動装置部300の接続配管704および接続配線705に接続可能とし、ロータ200の運転準備の段階または運転終了後の段階では、リフト装置部500によって駆動装置部300を垂直上方向へ移動できるように、駆動装置部300の接続配管704および接続配線705を一時的にコネクタ装置703から切り離すことを可能にするものである。
このような連続遠心分離機100では、液体試料が、図示されていないポンプ等の送液手段によって駆動装置部300を含むロータ回転装置部101の試料流通用コネクタ部304または404の一方から供給され、管状出力回転軸302および管状下側回転軸303を介して円筒形ロータ200に導入される。その液体試料は円筒形ロータ200内で強大な遠心力を受けて遠心分離され、その上澄液は回転軸302または303の一方の回転軸を介して試料流通用コネクタ部304または404の一方を経て排出される。
また、連続遠心分離機100で取り扱われる分離試料は、例えば、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、百日咳ウイルス、エイズウイルス、肝炎ウイルス等であり、それらの出発原料は培養液や動物から採取された細胞や体液等の液体に浮遊させたものであり、連続遠心分離機を用いることによって、大量に分離、精製して、ワクチンまたは医薬品の原料として用いられる。試料を大量に扱うためにロータ200の大きさは、例えば、外径が約160mm、長さが約800mmで、チタン合金から製造され、質量が約30kgを越える大型ロータとなる。これを毎分40,000回転程度の高速回転まで上昇させるため、モータやタービン等の大出力の回転用駆動源が搭載された駆動装置部300を有している。
実公昭48−28863号公報
特開2004−322054号公報
連続遠心分離機100では、円筒形ロータ200の着脱時にリフト装置部500による垂直および水平移動のリフト動作を必要とするが、リフト動作によって移動される駆動装置部300の潤滑油および冷却水等の配管704、ならびに駆動電源および制御回路等の配線705を、固定側のロータ回転装置部101に設けられた配管・配線コネクタ装置703から一旦取り外し、駆動装置部300と一緒に移動できるようにしなければならない。
従来、駆動装置部300の接続配管704および接続配線705には、一時的に格納するための特別な格納手段が設けられていなかった。そのため、遠心分離機の操作者は、リフト装置部500によるリフト操作を行う場合、接続配管704および接続配線705を駆動装置部300本体の外周部に巻き付けたり、あるいは引掛けたりして適宜な整理作業に委ねられていた。
また、駆動装置部300が高速回転するため、その構成部品であるボールベアリング、すべり軸受部等での摩擦回転部が発熱を生じ、さらに、駆動源として電気モータ301を使用する場合、モータ301自身で発熱を生じる。このため、制御装置部600から供給される冷却水によって駆動装置部300を冷却するが、この冷却水によって駆動装置部300の外表面の温度も低下するため、駆動装置部300の外表面の外気が結露し、結露水となって駆動装置部300全体の外周部に溜まり、不衛生の原因となっていた。
さらに、遠心分離機で取り扱われる分離試料がウイルスや細菌他の医薬品原料である場合、その原料が遠心分離機を介して他の試料によって汚染されないよう、あるいは、逆に試料自体によって遠心分離機の外表面が汚染されないように衛生上の清潔さが高度に要求され、従って、これらの試料を扱う遠心分離機も、衛生上の細心の注意が必要となる。
さらにまた、従来の遠心分離機では、大出力の回転駆動源を有する駆動装置部300に防音手段を講ずることなく、剥き出し状態で運転部屋内に設置されていたので、駆動装置部の最高回転時の騒音は、遠心分離機の前面から1m離間された場所において、駆動装置部にモータを使用する場合、例えば68dBA、エアタービンを使用する場合、例えば、70dBAを越える大きな騒音となっていた。また、最近ではこのような遠心分離機の設置は、取り扱う分離試料がウイルスや細菌である理由から、一般室から隔離されたクリーンルームのような隔離室とされることが多くなり、十分に広い設置環境を確保することが困難な場合が多い。その結果、超高速の連続遠心分離機から発生する大きな騒音は、使用者の作業環境を悪化させて作業効率を低下させる原因となり、さらに室内での作業者間の会話に不自由を来すこともあった。
このように、従来の連続遠心分離機では、円筒形ロータの着脱時における駆動装置部の接続配管および接続配線の格納手段が装着されておらず、操作者の作業上の判断に依存していた。また、遠心分離機の運転時には駆動装置部の外表面に外気の結露を生じ、衛生的または清潔の面からの作業としては問題があった。さらに、駆動装置部の高速回転時には、回転騒音が非常に高くなるという欠点があった。
従って、本発明の一つの目的は、上記した従来技術の欠点を解消し、操作性に優れた連続遠心分離機を提供することにある。
本発明の他の目的は、衛生管理を維持し得るように常に清潔に保つことが可能で、かつ運転中に発生する騒音を低減させた駆動装置部を有する連続遠心分離機を提供することにある。
上記課題を解決するために、本願において開示される発明のうち、代表的なものの特徴を説明すれば、次のとおりである。
本発明の一つの特徴によれば、被分離粒子が混入している液体試料を連続的に通過させるために垂直状態に配置される円筒形ロータと、前記円筒形ロータの上端部に配設され、前記円筒形ロータに回転出力軸を介して回転力を与えるための駆動装置部と、垂直配置されるチャンバを有し、前記円筒形ロータを運転するときに前記チャンバの上端部から垂直方向に前記円筒形ロータを挿入して密閉したロータ室を形成するロータ回転装置部と、前記駆動装置部を運転するために前記ロータ回転装置部と前記駆動装置部間に設けられた冷却水または潤滑油の配管のための接続配管部、または電気配線のための接続配線部と、前記接続配管部または前記接続配線部を中継するために前記チャンバに設けられた配管または配線のコネクタ部と、を具備する連続遠心分離機において、前記駆動装置部の外周を覆うように設けられたカバーと、前記接続配管部または前記接続配線部を係止するために前記カバーの外表面に設けられたホルダーと、をさらに具備し、前記接続配管部または前記接続配線部は、前記駆動装置部に接続された一端側から、前記コネクタへ接続された他端側へ延在し、前記接続配管部または前記接続配線部の前記他端部は、前記円筒形ロータが前記駆動装置部とともに前記チャンバの前記上端部から垂直方向に引上げられる場合、前記コネクタ部から取り外されて前記ホルダーへ係止できるように構成する。
本発明の他の特徴によれば、前記接続配管部または前記接続配線部は、前記カバーに設けられた貫通穴を介して前記駆動装置部に接続された前記一端側から、前記コネクタへ接続された前記他端側へ延在し、前記貫通穴と前記接続配管部または前記接続配線部の貫通部には、該貫通部を封じるためのシール部材が配設されている。
本発明のさらに他の特徴によれば、前記カバーは、前記駆動装置部のハウジングが突出する開口部を有し、前記ハウジングの外周部と前記開口部の嵌合部には、該嵌合部を封じるためのシール部材が配設されている。
本発明のさらに他の特徴によれば、前記カバーは、ステンレス鋼板またはプラスチック材料のカバー部材で製作され、その内面には防音材料のシート部材が配設されている。
本発明のさらに他の特徴によれば、前記接続配管部または前記接続配線部が貫通する前記貫通穴は、前記カバーに列状に形成されている。
本発明の更に他の特徴によれば、前記カバーの外表面において、前記ホルダーが形成される位置は、前記貫通穴が形成される位置より高い。
上記本発明によれば、連続遠心分離機の駆動装置部において、カバーが駆動装置部の周囲を覆うように設けられ、駆動装置部の冷却水や潤滑油の接続配管、および駆動電源などの接続配線は、カバーの貫通穴を通してカバーの外部に引き出され、そのコネクタ部側の端部をカバーの外表面に配設された配管・配置ホルダーに係止できるようにしたので、ロータの着脱時の接続配管または接続配線の収納箇所が明確となり、作業者は整然と作業することができる。
また、カバーの貫通穴を封じるためのシール部材が設けられているので、カバーの清掃を容易にすることができ、駆動装置部の汚染を防止することができる。さらに、駆動装置部の本体における冷却された外表面が外気に直接触れることがなくなるので、駆動装置部の本体の外表面の結露による汚れを防止できる。さらにまた、駆動装置部はカバーによって取り囲まれるので、駆動装置部の回転騒音を大幅に低減することができ、これによって、作業者の作業効率を改善できる。
さらにまた、カバーは駆動装置部の本体を封じ、または駆動装置部のハウジング部を密封するので、駆動装置部周囲の清掃を容易にすることができるとともに、遠心分離した試料やその液体材料等の汚染物質がカバーの外気側からカバー内へ侵入し、汚染することを防止できる。このため、遠心分離機の衛生上の清潔さを高度に保持することができる。特に、カバーの外表面をステンレス鋼またはプラスチック材料で製作し、内面に防音シート部材を取り付けることにより、外表面の衛生性または清掃性の向上と共に、防音効果をより向上させることができる。
本発明の上記および他の目的、ならびに上記および他の特徴および効果は、以下の本明細書の記述および添付図面からさらに明らかにされるであろう。
以下、本発明の実施形態に係る連続遠心分離機について図面を参照して説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する場合がある。また、図7に示した従来の連続遠心分離機と同一機能を有する部材については、従来と同一の符号を使用している。
図1は本発明の実施形態に係る連続遠心分離機の外観斜視図、図2は図1に示した連続遠心分離機の正面図、図3は図1に示した連続遠心分離機の上面図、図4は図1に示した連続遠心分離機のロータ回転装置部の部分断面図、図5は本発明の実施形態に係る駆動装置部のカバーの側面図(断面図)、図6は図5に示した本発明の実施形態に係る駆動装置部のカバーの拡大正面図(断面図)をそれぞれ示す。
[連続遠心分離機110の全体構成について]
最初に、連続遠心分離機の全体構成について説明する。図1に示すように、連続遠心分離機110は、本発明に係る駆動装置部のカバーを除く全体構成については、図7に示したものと同様な機能部材を具備する。
図1に示すように、ロータ回転装置部111は、円筒形ロータ200と、駆動装置部300と、チャンバ401と、チャンバ401を支持するベース402と、垂直上下方向の移動用リフト機構部501および水平前後方向の移動用リフト機構部502を有するリフト装置部500と、を具備する。このロータ回転装置部111は、ボルト412によって、設置床に固定されている。
円筒形ロータ200は、モータを含む駆動装置部300の管状の出力回転軸(上側回転軸)302に接続され、吊り下げ状態に保持される。円筒形ロータ200の下端部には、管状の下側回転軸303が嵌合され、ネジで締結されている。円筒形ロータ200は、駆動装置部300とともに、リフト装置部500によって垂直方向において上下動され、円筒形ロータ200の運転前の準備段階または運転終了後には、図1に示すように、吊り下げ状態となる。また、ロータ200の運転時には、ロータ回転装置部111の中空形状体から成るチャンバ401内に収納され、ロータ200の下側回転軸303がベース402に取り付けられた下部軸受部403に挿入され支承される。ロータ200がチャンバ401に収納された後、アッパープレート405が、チャンバ401の上端部に嵌合され、上蓋部として作用してチャンバ401内を気密に封じる。
図4は、ロータ200がチャンバ401内に収納された時のロータ回転装置部111の断面図を示す。ロータ回転装置部111を構成する円筒形ロータ200は、チタン合金等の金属材料で形成された円筒形体201から成り、円筒形体201は、上側カバー203と、下側カバー208と、円周方向に複数の扇形状の中空部204を分割するように羽根状の隔壁部207が突設するコア部202とを有し、垂直方向の試料の通路を形成する。このような円筒形ロータ200は、上端部および下端部にそれぞれ中空状(管状)の出力回転軸302および下側回転軸303が接続され、それら回転軸302、303の中空部に連続する上側流路205および下側流路206を介して、円筒形体201の中空部204内へ液体試料が供給される。通過する液体試料から連続的に遠心分離された粒子は、中空部204に沈殿され、残り上澄液はロータ200の外部へ排出される。
駆動装置部300は、図4に示されるように、ロータの回転駆動源となる電気モータ301を具備する。回転駆動源としては電気モータの他にタービンを使用してもよい。モータ301の出力回転軸302は、上記ロータ200の上端部に嵌合され、かつネジで締結されている。これによって、モータ301の回転は円筒形ロータ200へ伝達される。モータ301は、図示されていないが、出力回転軸302の回転振動を減衰するためのダンパーをすべり軸受の外周に内蔵すると共に、高速回転するためのボールベアリングを具備する。また、高速回転するすべり軸受およびボールベアリングへ潤滑油を注入する注入機構および潤滑油を供給するためのオイル用配管704c、704d、およびそれら回転部を冷却水で冷却するための冷却機構および冷却水を供給するための冷却水用配管704b、704eを有している。メカニカルシール305は、出力回転軸302に取り付けられた回転軸部材(図示なし)と、該回転側部材の端部に接触してシールする固定シール部材と、固定シール部材を回転軸部材に当接させるスプリング等から構成される。出力回転軸302の中心軸は、上述したように中空状態に形成され、遠心分離される試料の注入または遠心分離された上澄み液をロータの外へ排出するための流通路として機能する。
カバー306は、本発明に従って、駆動装置部300の本体を覆うように装着される。このカバー306については後述する。
円筒形ロータ200の下側カバー208には、中心軸が液体試料の流通路として機能する貫通穴を有する下側回転軸303が、上記出力回転軸302と同様に、嵌合、ねじ締結されている。この下側回転軸303は、円筒形ロータ200の下端部を芯出し、かつ回転振動を減衰させるために、すべり軸受を有する下部軸受部403で回転可能に支持されている。
下部軸受部403も上記駆動装置部300と同様に、メカニカルシール408を具備する。また、高速回転するすべり軸受およびボールベアリングへ潤滑油を注入する注入機構および潤滑油を供給するためのオイル用配管710、およびそれら回転部を冷却水で冷却するための冷却機構、および冷却水を供給するための冷却水用配管709を有している。出力回転軸302および下側回転軸303には、メカニカルシール305および408がそれぞれ一体的に設けられており、円筒形ロータ200および回転軸302、303が高速回転している間も、上部試料流通用コネクタ部304および下部試料流通用コネクタ部404を通じて円筒形ロータ200内への液体試料の流通が行えるように構成されている。例えば、分離する液体試料は下部試料流通用コネクタ部404へ注入され、上部試料流通用コネクタ部304から排出される。この注入、排出は逆に接続してもよい。
メカニカルシール305および408の周囲には冷却機構が設けられ、冷却のために冷却水が流されている。円筒形ロータ200の周囲には、円筒形ロータ200を冷却するために冷媒を循環するための冷却パイプ(コイル)406が仕切部材407と共に配設され、その外側に円筒形ロータ200の万一の破壊事故に備え、円筒状の防護壁411を備えて、安全性を期している。
チャンバ401は、円筒状防護壁411を取り囲んで設けられ、下部のベース402と、上記駆動装置部300の支持部材として機能するアッパープレート(蓋部)405と共に、外気から密封されたロータ室(チャンバ室)410を構成する。ロータ室410は、チャンバ401の胴部に設けられた接続配管(減圧パイプ接続管)409(図1参照)から図示されない真空ポンプによって減圧されるように構成され、円筒形ロータ200が回転される場合、風損による温度上昇を防止するようにロータ室410が減圧された状態で運転される。
リフト装置部500は、図1および図3に示されるように、垂直上下方向の垂直移動用リフト機構部501と水平前後方向の水平移動用リフト機構部502とを有する。垂直移動用リフト機構部501は、チャンバ401の背後に配設されたシリンダ(図示なし)から往復動する油圧ピストン503を具備し、また、水平移動用リフト機構部502は、図3に示されるように、油圧シリンダ505内を水平方向に往復動する油圧ピストンを具備する。図1に示されるように、水平移動用リフト機構部502の油圧シリンダ505に油圧を供給するための油圧配管504が蛇行状に設けられる。
運転準備の段階または運転終了後において、縦長の円筒形ロータ200を駆動装置部300の回転出力軸302から着脱するために、リフト装置部500は、図1に示されるように、円筒形ロータ200を吊り下げる駆動装置部300を、アッパープレート405とともに、垂直上昇、水平前進、垂直下降させるように構成されている。このリフト装置部500の上昇、前進、下降の移動により、円筒形ロータ200は、図示されないロータ台車に乗せられ、駆動装置部300に対して着脱が可能となる。
制御装置部600は、ロータ回転装置部111に近接して設置され、筐体602の上部にデータ入力機能およびデータの表示機能を有するコントロールパネル601を有する。コントロールパネル601は、図示されていないが、遠心分離機の運転条件である回転速度(回転数)、回転時間、温度等を設定する機能を有する入力スイッチと、遠心分離機の運転のスタートおよびストップを指示するための指示スイッチとを有し、また、設定状態および運転状態を表示する液晶からなる表示パネルを有する。さらに、遠心分離機の運転のスタートおよびストップを指示するための指示スイッチを有する。
制御装置部600の筐体602内には、駆動装置部300におけるモータ301(図4参照)に駆動電源を供給するための駆動電源回路(インバータ回路)と、駆動装置部300および下部軸受部403の冷却機構へ冷却水を供給するための冷却水タンクおよびポンプと、ロータ室410の冷却パイプ406(図4参照)へ冷媒を供給するための冷凍機と、ロータ200への液体試料の注入部および排出部としてそれぞれ機能するメカニカルシール408および305を冷却するための冷却水をコントロールするためのバルブ機構と、ロータ室410(図4参照)を減圧するための真空ポンプと、を備えている。また、制御装置部600に隣接して冷却水の貯蔵タンク712(図2参照)が設けられ、駆動装置部300および下部軸受部403を構成するメカニカルシール305および408(図4参照)へ必要な冷却水を供給する。さらに、筐体602には、リフト装置部500の垂直移動用リフト機構501および水平移動用リフト機構502を動作させるために必要な高圧の油を供給、制御する油圧制御ユニットを具備している。また、上記インバータ回路、真空ポンプ等の各種の機器を運転するために必要な制御信号を形成するための、マイクロコンピュータを含むコントローラを内蔵している。
制御装置部600とロータ回転装置部111間には、接続用配管・配線700(図1および図2参照)が設けられ、両者は機械的および電気的に接続されている。接続用配管・配線700は、上述した制御装置部600によってロータ回転装置部111を運転、制御するための各種の電気的配線701と、冷却水、冷媒、減圧等を供給、制御する接続配管702とを具備する。例えば、図2に示されるように、接続配線701の配線aは、制御系回路の電気配線を構成し、配線bは、モータ301(図4参照)のインバータ電源回路の配線を構成する。また、接続配管702の配管a、bは、メカニカルシール305、408の冷却水の配管を構成し、接続配管cは、リフト装置部500に供給する油圧配管を構成する。
[カバー306の構成について]
図5に示されるように、駆動装置部300には、本発明に従ってカバー306がモータ301を含む駆動装置部300本体を機密に包囲し、外気より密閉する。カバー306は、ステンレス鋼板またはプラステチック材料から成るカバー部材311と、該カバー部材311の内面に積層された防音シート材から成る防音シート部材312とから成り、図3に示されるように、チャンバ401のアッパープレート405上面から見た平面形状が、例えば4角形をなす。この形状は、特に限定されないが、駆動装置部300の加工性、または作業性、清掃性等の取扱い上の容易性を考慮した他の形状(例えば、円形)であってもよい。カバー306の取付け部308(図3参照)は、チャンバ401の蓋部として機能するアッパープレート405の上面にネジによって固定される。
図2および図3に示されるように、カバー306の前面から、モータ301(図5参照)およびメカニカルシール305(図5参照)に接続された接続配管704および接続配線705が延出部711(図5参照)介してカバー306の外部へ導出されている。接続配管704において、配列される順序は特に限定されないが、配管aはメカニカルシール305へ供給する冷却水配管、配管bはモータ301のステータおよびボールベアリングへ供給する冷却水配管、配管cはメカニカルシール305へ供給する冷却水配管、配管dはモータ301のボールベアリングへ供給する潤滑油配管をそれぞれ示す。また、接続配線705において、配線aおよび配線bはモータ301へ電気的接続される配線を示す。
図5に示されるように、カバー306の筐体前面には配管・配線ホルダー307が形成されている。配管・配線ホルダー307の受止部(引っ掛け部)307aは、図3の上面図に示されるように、各配管・配線のコネクタ接続部(係止部)707が前面から差込み可能な切欠け部を有する穴形状となっている。配管・配線ホルダー307の取付け位置は特に限定されないが、カバー306を衛生的または清潔に保つ面から、接続配管704および接続配線705の延出部711の位置より高い位置に取付けて、特に、接続配管704のコネクタ接続部707からの液体試料の残留分の滴りを防止することが好ましい。
カバー306から導出された接続配管704および接続配線705の端部に形成されたコネクタ接続部707は、ロータ200がチャンバ401から引上げられるとき、チャンバ401の上端部に設けられた配管・配線コネクタ装置703(図1参照)より取り外され、配管・配線ホルダー307に係止される。
逆に、ロータ運転時において、図3に示されるように、カバー306から導出された接続配管704および接続配線705のコネクタ接続部707は、配管・配線ホルダー307から取り外されて配管・配線コネクタ装置703へ接続され、機械的または電気的に接続される。配管・配線コネクタ装置703の他方の固定側接続部には、制御装置部600から接続用配管・配線700を介して延在する接続用配管・配線の端部706が接続されている。
図1および図5に示されるように、接続配管704および接続配線705は、駆動装置部300から、各延出部(クランプ部)711を介してカバー306の外部へ導出されるが、延出部711は、クランプによってカバー306に形成された貫通穴313と接続配管704(または接続配線705)の隙間を埋めるように、カバー306の表面および裏面からクランプ部材(711)が締付けられる。すなわち、貫通穴313は、クランプ部材によって外気から密閉される構造となる。
また、カバー306は、図5に示されるように、駆動装置部300の最上部に配設された上部試料流通用コネクタ部304およびメカニカルシール305のハウジング305aを露出するための開口部(貫通穴)314を有する。カバー306の開口部314とハウジング305a間に形成される隙間は、上部シール部材309によって機密に封じられる。すなわち、上部シール部材309は、図6の拡大正図面に示されるように、上板309aと、下板309bと、ハウジング305aに当接するOリング(ガスケット部材)309cと、カバー306の上面に当接するOリング309dと、上部シール部材309本体をカバー306に固定する4つのネジ309eとから構成され、ハウジング305aと嵌合させた形態となる。これによってカバー306は、駆動装置部300を外気から機密に封じることができる。また、外気側からカバー306内へ液体試料や分離材料である液体等の汚染物質が侵入することを防止できる。
かかるカバー306を有する大規模連続遠心分離機110において、円筒形ロータ200を運転する場合、図2に示されるように、リフト装置部500を下降させてロータ200をチャンバ401内へ収納する。また、接続配管704および接続配線705のコネクタ接続部707を配管・配線コネクタ装置703へ接続し、駆動装置部300へ冷却水および潤滑油の供給と、駆動電源および制御回路の配線とを行う。これによって、下部試料流通用コネクタ部404および上部試料流通用コネクタ部304を介して円筒形ロータ200へ分離試料を注入しながら連続的に遠心分離を行う。
他方、大規模連続遠心分離機110による円筒形ロータ200の運転終了後または運転準備の段階において、図1に示されるように、駆動装置部300の接続配管704および接続配線705を一時的に配管・配線コネクタ装置703から切り離し、配管・配線ホルダー307に列状に引っ掛けて整理する。これによって、リフト装置部500は、円筒形ロータ200をチャンバ401から上方へ抜き出し、水平方向の前方へ移動し、さらに垂直方向へ下降させて、ロータ200の着脱を可能にする。つまり、接続配管704および接続配線705は、配管・配線コネクタ装置703から取り外し、配管・配線ホルダー307へ係止させた状態で、リフト装置部500を動作させることができる。
[カバー306の機能について]
以上説明したようなカバー306を有するロータ回転装置部111によれば、カバー306の外表面には配管・配線ホルダー307が設けられているので、遠心分離機110の運転時に接続配管・配線704、705の接続部707をチャンバ401の上部に設置された配管・配線コネクタ装置703へ接続し、遠心分離機110の運転前または運転終了時において、ロータ200を着脱する際、接続配管・配線704、705の接続部707をチャンバ401の配管・配線コネクタ装置703から取り外して配管・配線ホルダー307へ容易に引っ掛けることができる。このように配管・配線ホルダー307をカバー306に設けることにより、ロータ200の着脱の際、駆動装置部300の本体に必要な多数の接続配管・配線704、705を容易に着脱、整理することができ、操作性を向上することができ、その結果的、リフト装置部500を効率よく作動させることができる。
また、各種接続配管704および各種接続配線705は、カバー306に設けられた配管・配線延出部711を介して外部へ引き出されるが、配管・配線延出部711は、カバー306に設けられた貫通穴313とその穴部に取り付けられた配管クランプ(711)によって配管704または配線705と貫通穴313の間に隙間が形成されない状態でカバー306の外側に引き出されるので、カバー306の内部と外部とが自由に通気ができない構造となる。また、駆動装置部300のハウジング305aとの嵌合部にもシール部材309が形成されているので、カバー306の内部と外部とが自由に通気ができない構造となる。これにより、駆動装置部300の本体が冷却水によって冷却された際に、駆動装置部300の本体の外表面はカバー306によって包囲され、直接外気に触れることがないので、駆動装置部300の本体における結露による水滴の発生を防止することができる。
さらに、接続配管・配線704、705の貫通部にはクランプ部材711が設けられ、かつ駆動装置部本体のハウジング部305aの嵌合部にはシール部材309が設けられているので、カバー306の清掃性を向上することができる。特に、カバー306の外表面は凹凸の無い面で形成できるので、清掃または消毒等の処置がし易い面形状とすることができる。また、カバー306の外気側からカバー306内の駆動装置部本体に遠心分離材料である液体などの汚染物質が侵入することを防止でき、機器の衛生管理または清潔管理が容易となる。特に、配管・配線ホルダー307をカバー306の配管・配線演出部711(図5参照)より高い位置に設置することにより、運転終了後にホルダー307に係止した接続配管・配線704、705の接続部707から垂れ落ちようとする残留試料の滴りを防止することができ、作業中における液体試料によるロータ回転装置部111の汚れを防止することができる。
さらにまた、カバー306は、騒音発生源であるモータ301の周囲を覆っているので、モータ301からカバー306の外部へ発する騒音を低減することができ、使用者の作業環境を改善することができる。特に、カバー306の内面には防音シート部材312を設ければ、騒音をより一層低減することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施態様のカバー306では、従来使用されていた駆動装置部300の本体を兼用できるように、上部試料流通用コネクタ部304やメカニカルシールのハウジング305aの一部を、上部シール部材309を介してカバー306より露出させたが、カバーは駆動装置部300の本体全体を取囲むように形成してもよい。また、カバー306の外表面の材質としてステンレス鋼鈑またはプラスチック材料を用いたが、衛生上または清掃上から好ましい他の材料を使用してもよい。さらに、上記実施態様では、カバー306の内面に防音シート部材を取り付けた例を示したが、カバー306を構成するステンレス鋼鈑等の部材を厚く形成することにより、防音効果をより向上させることができる。