JP5049589B2 - ストロンチウム塩含有の放出制御組成物 - Google Patents
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Description
この発明はストロンチウム塩からなる放出制御医薬組成物に関する。この発明は、また、軟骨および/または骨の代謝および/または構造一体性(structural integrity)に影響を及ぼす疾患および症状に罹患している男性の治療へのストロンチウム塩の使用に関する。また、この発明は、ストロンチウム含有化合物の、対象者の軟骨および/または骨症状の予防、および二次骨粗鬆症の治療および/または予防への使用に関する。
骨粗鬆症は、ヒトにおける代謝性骨疾患の最もよくある形態である。この症状は、全世界の非常に多数の人々を襲う症状で、高年令の人々の数が殆どの国々で次の10年間で劇的に上昇するので、骨粗鬆症の罹患率と影響も増加するであろう。この疾患は、病理学的に、骨塊量と骨の構造的品質の絶対的減少と、臨床的には骨折し易さの増大で特徴付けられる。事実、骨粗鬆症は、後期中年と老人の婦人で、骨格の骨折について最も有意な根本的な原因である。
この発明の第1の観点は、ストロンチウム(Sr)塩からなる経口用の放出制御医薬組成物に関する。組成物は、一日一回投与を意図される。この発明の特別の観点では、ストロンチウム塩は、室温で最大約200g/lの水溶性を有することで特徴付けられ、かつ特別の観点で、ストロンチウム塩は、生理学的条件下で比較的低い水溶性(すなわち、40℃で1g/l未満の溶解性)を有する。
組成物は、またSr含有化合物の放出を支配する制御放出コーチング被覆されてもよい。
既知のストロンチウム塩のいくつか(例えば塩化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム)は、非常に高い水溶性(すなわち、室温20〜25℃で水中で200g/lを超える)を有する。それらの水溶性に無関係に、このようなストロンチウム塩は、一日一回投与の制御放出組成物に組み入れることができる。しかし、この発明の特定の具体例では、ストロンチウム塩の水溶性は、室温(20〜25℃)で例えば多くて約150g/l、多くて約100g/l、多くて約75g/l、多くて約50g/l、多くて約25g/l、多くて約10g/l、多くて約5g/l、多くて約2.5g/l、または多くて約1g/lのような多くて約200g/lである。
その上、この発明は、Sr塩の量が、組成物が一日一回または二回の投与に適するように調節される組成物に関する。
各種のストロンチウム化合物が、正常細胞の生理学に要求されるものより高いレベルで存在するとき骨粗鬆症での骨損失を調節することが以前の研究で示されている。その効果は、前骨芽細胞複製へのストロンチウムの刺激効果と、ストロンチウムによる破骨細胞の直接またはマトリックス媒介阻害によるものと思われる(Reginster, JY, Curr pharm Des 2002:8(21):1907〜16)。換言すると、ストロンチウムは、抗吸収と同化剤として共に作用する。ストロンチウムの各種塩類が従来技術で知られ、例えば、EP-B0415850に記載のストロンチウムラネレート(2-[N,N-ジ(カルボキシメチル)アミノ]-3-シアノ-4-カルボキシメチルチオフェン-5-カルボン酸のジストロンチウム塩)がある。ラネル酸から誘導されたストロンチウム化合物のラネレート部分は、軟骨または骨症状に対し何らの治療効果を本質的に有するとはみられない。
次の有機または無機酸のストロンチウム塩は、上記の組成物中にあってもよい。塩は、水和物、無水物、溶媒化物、多形、無晶形、結晶形、微結晶形またはポリマー形であってもよい。この発明の1つの具体例では、Srの非放射性アイソトープのみが使用される。
なくとも約0.050g、少なくとも約0.075g、少なくとも約0.1g、少なくとも約0.2g、少なくとも約0.3g、少なくとも約0.4gまたは少なくとも約0.5g、または約0.01g〜約2g、例えば約0.1g〜約2g、約0.1g〜約1g、約0.15g〜約0.5g、約0.3g〜約2gまたは約0.3g〜約1gである。
カルボン酸アニオンの有機ストロンチウム塩は、いくつかの異なる経路で合成できる。このような有機ストロンチウム塩の製造の常法は、有機酸と水酸化ストロンチウムの水性溶液中の反応を利用することである。例えばフマル酸と水酸化ストロンチウム塩との中和反応は、次式による。
Sr2+(aq)+2OH-(aq)+HOOCCHCHCOOH(aq)→Sr(OOCCHCHCOO)(aq)+2H2O(l)
Sr2+(aq)+2Cl-(aq)+2Na+(aq)+C4H2O4 2-(aq)→Sr(OOCCHCHCOO)(aq)+Cl-(aq)+Na+(aq)
またはL形の何れか)のストロンチウム塩の合成は、通常の反応経路に従うと非常に困難
であり、得られた結晶形について収率と純度が一般に低いことを見出した。この発明による医薬使用を行うのに、ジカルボン酸系アミノ酸の純粋なストロンチウム塩を大規模で製造するため、発明者らは、これらの特定のストロンチウム塩について各種の合成経路を研究した。かくして、よく規定された純粋な6水和物形のストロンチウムグルタメートの合成
が、グルタメートの遊離酸の形と水酸化ストロンチウムで最も簡便に行われ、80℃を超える温度、より好ましくは100℃または120℃、また最も好ましくは130℃より高い(実施例7参照、ここで高温での有機ストロンチウム塩の合成のための新規な製造法が記載される)のような高められた温度を要することを意外にも見出した。
この発明は、また、上記のように、少なくとも1つのストロンチウム化合物からなる医薬組成物に関する。この発明による医薬組成物は、さらに、1以上の生理学的に受容な賦形剤、すなわち治療上不活性な物質または担体からなる。
担体は、所望の服用形態と投与経路により広い多様な形態をとりうる。
この発明による化合物からなる医薬組成物は、固体、半固体または液状組成物の形態でありうる。組成物は、胃腸管で活性物質を放出すべく設計され、すなわち好ましい観点では、経口粘膜への適用または経口粘膜を介する吸収を意図しない。
近部、例えば十二指腸および/または近位空腸中、錠剤中に含まれた塩の全量の少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%または少なくとも90重量%のような塩の少なくとも一部を放出できるコーチングで被覆できる。
組成物の半固形状は、ペースト、ゲルまたはハイドロゲルであることができる。
組成物の液状形状は、溶液、ナノエマルジョンを含むエマルジョン、懸濁液、分散液、リポソーム組成物、噴霧剤、混合物、シロップまたはエリキシルである。
医薬組成物は、医薬製剤の当業者に周知の方法の何れかで製造できる。
上で挙げたように、この発明は、経口使用の放出制御医薬組成物に関する。組成物は、錠剤、カプセル剤、多粒子(multiparticulate)形態、またはサシェットのような単位投与小包でありうる。
用語“カプセル剤”は、カプセル剤の外殻がその内容物を放出すべく消化後に崩壊する硬と軟カプセル剤を含むことを意図する。
用語“多粒子”とは、全体が、意図した治療上有用な服用量を示す複数の粒子および/または顆粒からなる服用形態を含むことを意図する。粒子は一般に、約50ミクロンから約0.3cmの直径で、好ましい範囲は100μmから1mmでのものである。多粒子は、服用形態に放出を一定の割合でさせる使用のための適切な具体例で、これは個々の対象者(例えばヒトのような哺乳動物)の体重の影響を受けやすいからである。
押出物は、典型的には片に破断され、回転プレート上で球体、長球または球形化したロッドにまるめられる。
さらなる具体例で、マトリックス錠は、不浸透性コーチングで被覆してもよく、かつ錠の内容物が放出される開口(例えば円形穴または方形開口)が備えられる。
服用形態は、活性物質の放出を調節するコーチングで被覆してもよい。「不浸透性材」とは、活性物質についての有意な移行が、意図した薬剤放出の時間の尺度中(例えば、数時間から約1日)、その材を介して行われないような活性物質に対し、十分な厚みと不浸透性を有する材を意味する。このようなコーチングは、活性物質に対し十分に低い拡散係数を有するコーチング材を選択し、それを十分に厚く適用することにより得ることができる。
普通に信じられていることに反して、骨粗鬆症は婦人の疾患だけではない。男性は、かつて考えられたほど骨粗鬆症に耐性ではない。婦人にみられる骨折の古典的な加齢増加は、男性にも明確である。骨粗鬆症が、婦人ほど男性に普通ではない主な理由の1つは、男性の大きな骨格である。他の因子は、短命の予測、男での骨損失の遅い開始とゆるやかな進行、月経閉止で内因性エストロゲンの産生の停止の結果として女性に影響する急速な骨損失が無いことである。
Sr塩は経口的に投与でき、上で定義したごとく医薬組成物に含めることができる。
骨および/または軟骨の代謝および/または構造一体性に影響する疾患または症状の治療に今日用いられる医薬のいくつかは症状の治療効果を有しうるが、同時に、多くの医薬は重篤な副作用を伴っている。重篤な副作用を有する医薬物質のグループの例は、ビスホスホネート類で、例えば、経口投与を介しての骨形成および吸収の阻害ならびに貧弱な吸収の可能性のような致命的副作用を有するとみられる。その上、ビスホスホネート類は、G.I.刺激の原因となり、骨での非常に長い半減期を有することが知られている。そのため、治療の必要な対象者は、このような化合物への最少の暴露にすべきかも知れない。従って、このような医薬は、予防処理に適さない。
T-スコアーは、最も臨床的に関連した値と考えられ、若い正常の成人女性または男性のそれぞれの平均BMDに対する対象者のBMDを示し、その差を標準偏差(SD)の値として表す。女性の場合、対象者のT-スコアーが若い正常成人女性の平均より1SD未満低いと、BMDは正常と考えられる。若い正常成人女性の平均骨マスより1SD低いごとに、骨折の危険がほぼ1.5〜3倍に増加し、2SD低いと指数的に増加する。
その上、この発明は、対象者が、同年令の成人男性平均より低いBMDを有する男性である方法に関する。男性が、平均男性が高い骨折危険を有しうる年令グループに属すると、男性が同年令の男性の男性平均値の値またはそれより高いBMDを有しても予防処置が考えられる。
骨と軟骨の状態を評価する他の方法は、軟骨または骨の何れかのターンオーバー(turnover)を反映する動的バイオケミカルマーカーで与えられる。骨および/または軟骨の最近の状態の目安を与えるBMDまたは他の類似静的測定と比較して、特異のバイオマーカーは、マーカーが由来する組織の最近のターンオーバーの目安を与えることができる。これは治療効果の動的モニタリングを与え、また骨および/または軟骨のターンオーバーに影響する疾患または症状の進行の予測を可能とする。例として、いくつかの研究で、骨吸収の特異マーカー、C-テロペプチド由来コラーゲンタイプIフラグメント、CTXが、BMD測定単独と類似の効力で、二次骨折危険のBMDに無関係な予測を与えることが例証された。その上、CTX測定で得られた骨折危険の目安は、BMD測定で得られた目安の追加であり、よって低いBMDとCTXの上昇した値で示される高い骨ターンオーバーの両方を有する個体は、上昇BMDまたは減少CTXのみを有する個体より骨格骨折をうける危険が大きい。同様のデータが、軟骨由来コラーゲンタイプIIフラグメント、CTX-IIの特異マーカーで得られる。従って、骨および/または軟骨の病理学的崩壊を来す危険の対象者は、骨または軟骨代謝の何れかの特異バイオマーカーの測定により定義できる。BMD測定と同様に、バイオマーカー測定は、関連の参照母集団に関連したT-スコアーまたはZ-スコアーとして表すことができるか、または値は、予め規定したカットオフレベルに対して簡単に表しうる。
この発明は、対象者が、同年令の女性の成人女性平均を超える骨吸収の特異バイオマーカーのレベルを有する女性である上記の予防法に関する。
この発明は、また、対象者が、成人男性の平均より1SDより多く高いCTXまたはNTXのような骨吸収マーカーのバイオマーカーレベルを有する男性である上記した予防法に関する。
その上、この発明は、対象者が、同年令の男性の成人男性平均より高いCTXまたはNTXのような骨吸収マーカーを有する男性である方法にも関する。男性が、平均男性が骨折の高い危険を有しうる年令グループに属すれば、男性が同年令の男性の所定マーカーの平均レベルの下のCTXまたはNTXのような骨吸収マーカーを有しても、予防処置を考えることができる。
その上、この発明は、BMD測定と骨および/または軟骨ターンオーバーに影響する疾患または症状の発達の危険の個々の定義と/または予測用の1以上のバイオマーカーとの組合せ使用に関する。
さらに、この発明は、閉経の開始から約6ヶ月以上の女性が対象者である方法に関する。
全骨粗鬆症の90%は、特発の一次骨粗鬆症であるが、特定可能な疾患過程または剤の結果である二次骨粗鬆症を予防および/または治療する必要もある。従って、この発明はSr塩の有効量を対象者に投与することを含む対象者の二次骨粗鬆症の治療および/または予防法に関する。
二次骨粗鬆症は、また、栄養状態、例えば吸収不良、栄養失調、慢性肝疾患、ビタミンD欠乏症、カルシウム欠乏症、胃腸管の部位の切除(例えば胃切除)、喫煙とアルコール乱用によっても誘因されうる。
例えば、骨髄腫、サラセミアと白血病のような骨髄疾患も二次骨粗鬆症の原因でありうる。また、例えば全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎やリウマチ性関節炎のようなリウマチ性/炎症性疾患も二次骨粗鬆症の原因になりうる。
上記のように、ある医薬は二次骨粗鬆症の原因となりうる。対象者での薬剤誘因二次骨粗鬆症の発生を防止するため、医薬物質の投与と同じ処置計画の一部として、予防量のSrを投与することは有益でありうる。
投与は、骨粗鬆症を誘因する医薬物質の投与と実質的に同時に行うことができ、かつSr塩と骨粗鬆症を誘因する医薬物質は、同じ医薬組成物に含めうる。
Sr塩と医薬物質は、また、別々の共同投与組成物で同時に投与することができる。2つの別々の製剤が共同投与されるとき、各製剤、特に経口ルートで使用のものは、対象者または医者により錯誤をさけるために、着色するかさもなくば同定可能にラベル化してもよい。
この発明は、1以上の医薬組成物と投与指示書とからなるキットにも関する。
発明のいくつかの具体例で、発明者は、少しでも存在するとすればラネレートがストロンチウムの全量の5w/w%未満の量で存在することが好ましいことを見出した。
ば近位大腿骨のような大腿骨の骨折、例えば頸部骨折、転節骨折または転子下骨折。
発明の他の具体例は、添付のクレームにみられる。この発明による化合物および組成物に関して上記した詳細は、発明の他の観点に必要な変更を加えて適用する。
この発明は、必要とする対象者に、カルシウムのある量をさらに投与することを含む上記の方法に関する。
上記のカルシウムの一日投与量は、少なくとも約0.01 g、例えば少なくとも約0.025 g、少なくとも約0.050 g、少なくとも約0.075 g、少なくとも約0.1 g、少なくとも約0.2 g、少なくとも約0.3 g、少なくとも約0.4 gもしくは少なくとも約0.5 g、または約0.01〜約2 g、例えば約0.1〜約2 g、約0.5〜約2 g、約0.5 g〜約1 g、もしくは約1〜約1.5 gである。
この発明のある形態において、上記のカルシウムは、ストロンチウム成分の投与の少なくとも0.5時間、例えば少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間または少なくとも12時間後に投与される。
別の形態において、上記のカルシウムは、ストロンチウム成分の投与の少なくとも0.5時間、例えば少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間または少なくとも12時間前に投与される。
この発明は、必要とする対象者にある量のビタミンDをさらに投与することを含む上記の方法に関する。
この発明のある形態において、上記のビタミンはビタミンD 3 であり、1日投与量は少なくとも約1μg、例えば少なくとも約1.25μg、少なくとも約1.50μg、少なくとも約2μg、少なくとも約3μg、少なくとも約4μg、少なくとも約5μg、少なくとも約10μg、少なくとも約15μg、少なくとも約20μg、少なくとも約25μg、少なくとも約30μg、少なくとも約40μgまたは少なくとも約50μg、または約1μg〜約50μg、例えば、約1.50μg〜約40μg、約2μg〜約30μg、約3μg〜約30μg、約4μg〜約30μg、約5μg〜約30μg、約10μg〜約30μg、約10μg〜約20μg、または約15μg〜約25μgである。
上記のビタミンD 3 の1日投与量は、約5μg〜約30μg、例えば約10μg〜約20μgである。
別の形態において、上記のビタミンDはビタミンD 2 であり、ビタミンD 2 の1日投与量は、少なくとも1μg、例えば、少なくとも約1.50μg、少なくとも約2μg、少なくとも約3μg、少なくとも約4μg、少なくとも約5μg、少なくとも約10μg、少なくとも約15μg、少なくとも約20μg、少なくとも約25μg、少なくとも約30μg、少なくとも約40μg、少なくとも約50μg、少なくとも約60μg、少なくとも約70μg、少なくとも約80μg、少なくとも約90μg、少なくとも約100μg、少なくとも約110μg、少なくとも約120μgまたは少なくとも約125μg、または約1μg〜約125μg、例えば約1.50μg〜120μg、約2μg〜約110μg、約3μg〜約100μg、約4μg〜約90μg、約5μg〜約80μg、約5μg〜約125μg、約10μg〜約70μg、約10μg〜約60μg、約10μg〜約50μg、約10μg〜約40μg、約10μg〜約30μg、約10μg〜約20μg、または約15μg〜約25μgである。
上記のビタミンD 2 の1日投与量は、約5μg〜約125μg、例えば約10μg〜約20μgである。
この発明のある形態において、ストロンチウムおよびビタミンDの成分は同時に投与される。
図1は、実施例7に記載の方法で作ったストロンチウムグルタメート6水和物結晶のX線回折図である。
図2は、実施例7に記載の方法で作ったストロンチウムマロネート結晶のX線回折図である。ストロンチウムのマロネート塩は以前に特徴付けられておらず新しい結晶学的構造からなる。しかし、安定なベースラインとよく区画された回折ピークの間隔から、マロネート塩の結晶形は、均一で純粋であることが明らかである。
さらに発明を実施例で例証するが、発明を何れかに限定する意図ではない。
実施例1
溶解した塩化ストロンチウムと溶解した適当なカルボン酸アニオンのナトリウム塩とからの沈殿によるストロンチウムの結晶性塩の製造のための一般方法。
100ml容量のガラス製ビーカー中で、5gのカルボン酸のナトリウム塩を、少容量の水に、30〜50℃より高くない温度に僅かに加熱して溶解した。最終容量は、25〜50mlであった。他のビーカー中で、10gのSrCl2(シグマ−アルドリッチ43,966-5、SrCl26水和物)を100mlの水で溶解した。後者の溶液を、溶解したナトリウム塩の第1溶液にゆっくり傾斜した。最初のくもりが観察されるまで、移注を続け、全容量が50〜100mlになった。溶液を有機ストロンチウム塩の結晶化沈殿の有意な量が現れるまで、数日間室温(22〜24℃)で放置した。
と(b))で例示する。
NaOOCCHCHCOONa(s)+H2O(l)→-OOCCHCHCOOH(aq)+2Na+(aq)+OH-(aq) (a)
-OOCCHCHCOOH(aq)+Sr2+(aq)→Sr(OOCCHCHCOO)(aq)+H+(aq) (b)
ストロンチウムのラクテートとL-グルタメート塩は、過剰の塩化ストロンチウムを有する溶液から沈殿し、ラクテート塩の大きな結晶が溶媒をゆっくり蒸発させて得られた。
カルボン酸を水酸化ストロンチウムで中和して結晶性塩を製造する一般方法
適当な有機酸の少量(0.75〜3g、下の表参照)を、30℃〜50℃の温度に加熱して水に溶解した。次いで水酸化ストロンチウム(シグマアルドリッチ、Sr(OH)2 *8H2O、分子量265.71、CAS番号1311-10-0、約10g/L)を徐々に添加した。次いで磁気撹拌棒を加え、懸濁液の撹拌と緩和な加熱(すなわち、30〜50℃)を始めた。しばらくして、溶液は澄明化し、全ての固形物が溶解する。加熱を維持し、加熱の3時間後に、溶液をブフナーロートで温時濾過する。ごく少量の不純物が濾紙に残った。
*)回収率は、Sr(OH)2 *8H2Oのストロンチウム含量の%で算出。
1)フマル酸は水に不溶性で、エタノールを完全な溶解が達せられるまで懸濁液に加える。合成は、この材料で継続する。
2)ストロンチウム-AKG塩は、僅かに茶色かかった外観を有する。
3)水酸化ストロンチウムとL-アスコルベートの指示量に加えて、水に溶解させたSrCl2 *6H2Oの追加量4.087gを反応混合物に加える。
有機ストロンチウム塩の溶解性の測定
ストロンチウム塩の合成
大多数のストロンチウム塩は、実施例Aに記載の一般合成法に従い、有機酸のナトリウム塩と塩化ストロンチウムを反応させて得ることができた。しかし、溶解性検討のためストロンチウムシトレート、ストロンチウムタルタレート、ストロンチウムスクシネートとストロンチウムα−ケトグルタレートは、実施例2に記載のようにカルボン酸の遊離酸型と水酸化ストロンチウムから合成して得た。ストロンチウムグルタメートは、実施例4に記載のように、ストロンチウムグルタメートの純粋で均質な6水和物を得る合成のため、100℃の加熱温度を使用して得た。溶解性の詳細な検討は、次の表3に挙げたストロンチウム塩で行った。
2つの方法を溶液中のストロンチウムの定量に使用した。すなわちフレーム原子吸光分
光分析法(F-AAS)とより鋭敏な高周波誘導プラズママス分光分析法(ICP-MS)である。
大抵の研究にはF-AASが十分な感度を有した。
表2に挙げた大部分の有機ストロンチウム塩に対し、20〜40℃の間隔における温度変化は溶解性に殆ど影響がなかった(表5)。しかし、ストロンチウムL-グルタメートには、溶解性について温度の有意な影響が20℃〜40℃の間の範囲で観察された。この塩の溶解性は殆どの他の塩と対照的に、研究した間隔で3倍以上増加した。生理学的条件(37℃)下の溶解性は、物質が医薬用途に適することが注目され、よってストロンチウムグルタメート溶解性がより高い温度で驚くほど増加することは、大きな潜在的治療との掛り合いを有しうる。
室温と40℃での有機ストロンチウム塩の水溶性を表5に示す。L-アスパルテートとラクテートのストロンチウム塩は、使用した実験法で溶解性の正確な測定を妨げる50g/lを越える溶解性を有する。
この結果は、シトレート、フマレートとタルタレートが実施例1と2に記載の製法で合成したとき直ちに沈殿した合成実験中の観察に相当する。これは、22℃と40℃の両方での他の有機ストロンチウム塩と比較して、これらの塩のより低い溶解性で明白なように、これらのストロンチウム塩の乏しい溶解性を示すものである。
100℃での合成によるストロンチウムグルタメート6水和物の製造
最初に、グルタミン酸の懸濁液(白色)を250mlのビーカー中で、100mlのミリポア水を14.703g(0.1モル)の固形L-グルタミン酸(シグマアルドリッチ、C5N9NO4、分子量187.14g/モル、CAS番号142-47-2、ロット番号426560/1、ファイリングコード4300336)に加えて作る。この懸濁液に、26.571g(0.1モル)の水酸化ストロンチウム(シグマアルドリッチ、Sr(OH)2 *8H2O、分子量265.71、CAS番号1311-10-0)を加えた。次に、磁気撹拌棒を加え、撹拌と加熱を懸濁液の沸点まで行う。最終懸濁液も白色で、撹拌は撹拌装置の中程度の回転速度を維持して行う。炭酸ガスが溶液に入るのを防ぐため、ビーカーをカバーグラスで覆った。
100℃で合成によるストロンチウムアスパルテート・3水和物の製造
始めに、アスパラギン酸の懸濁液(白色)を、250mlのビーカー中13.311g(0.1モル)の固形L-アスパラギン酸(フルカ、C5H9NO4、分子量133.11g/モル、CAS番号56-84-8、ロット番号432866/1、ファイリングコード52603495)に100mlのミリポア水を加えて作る。この懸濁液に、26.571g(0.1モル)の固形水酸化ストロンチウム(シグマアルドリッチ、Sr(OH)2*8H2O、分子量265.71、CAS番号1311-10-0)を添加した。次いで磁気撹拌棒を加え、撹拌と加熱を懸濁液の沸騰点まで行った。また最終懸濁液は白色に着色し、撹拌は、撹拌装置の中程度の回転速度を維持して持続した。炭酸ガスが溶液に入るのを防ぐため、ビーカーをカバーガラスで覆った。
100℃での合成によるストロンチウムマロネート1水和物の製造
始めに、マロン酸の懸濁液(白色)を、250mlのビーカー中、100mlのミリポア水を10.406g(0.1モル)の固形マロン酸(フルカ、分子量104.06g/モル、CAS番号141-82-2、ロット番号、449503/1、ファイリングコード44903076)に添加して作った。この溶液に、26.571g (0.1モル)の固形水酸化ストロンチウム(シグマアルドリッチ、Sr(OH)2 *8H2O、分子量265.71、CAS番号1311-10-0)を加えた。次いで、磁気撹拌棒を加え、撹拌と加熱を懸濁液の沸騰点まで行った。最終懸濁液も白色に着色し、撹拌を撹拌装置の中程度の回転速度を維持して継続した。炭酸ガスの液への侵入を防止するため、ビーカーをカバーガラスで覆った。
合成のさらなる改良には、水と全ての水性溶液を窒素またはアルゴンで脱気することが含まれ、炭酸ストロンチウムの不純物の生成となりうる炭酸ガスとの接触を防ぐ。当業者は、不活性ガス雰囲気中で進行する手法を容易に採用できるであろう。
100℃を超える温度を用いるジカルボン酸の水溶性ストロンチウム塩の製法
前に開発し、実施例2〜6に記載した方法に従い、有機ジカルボン酸のストロンチウム塩かつ特にアミノ酸のストロンチウム塩の合成は、低収率と所望の反応生成物を不純物から分離することが困難なため大規模(すなわち1kgを超える)で作ることが困難である。炭酸のストロンチウム塩が、反応を通常の値の炭酸ガスを含有する大気中で行うと不純物を形成するので特別の関心がある。
溶液の製造:グルタミン酸の懸濁液(白色に着色)を250mlのビーカー中で100mlのミリポア水を14.703g(0.1モル)の固形L-グルタミン酸(シグマアルドリッチ、C5N9NO4、分子量187.14g/モル、CAS番号142-47-2、ロット番号426560/1、ファイリングコード43003336)に加えて作った。この懸濁液に固形の水酸化ストロンチウム(シグマアルドリッチ、Sr(OH)2*8H2O、分子量268.71、CAS番号1311-10-0)の22.257g、26.571gまたは31.885g(0.08モル、0.1モルまたは0.12モル)を添加した。
塩の製造後に、9つの最適化実験を表6の設定に従って行った。
1.酸の計算量を秤量し、ブルーキャップのオートクレーブのびんに移し、ミリポア水(Millipore water)を添加した。びんを封止し、微細に粒状化した懸濁液を得るため振
盪した。
2.水酸化ストロンチウム8水和物の計算量を秤量し、(1)の酸溶液に添加し、びんを全ての粗い材料の塊が微粒粉末になるまで激しく震盪した。
3.びんをオートクレーブに入れ、温度を設定した。オートクレーブ中ではさらなる撹拌は行わなかった。
4.T=100℃でオートクレーブのバルブを閉じ、計時を開始した。
5.オートクレーブ中、実際の温度と圧力をモニターした。
6.オートクレーブ時間の終わりに、安全に注意して、できるだけ蒸気を排出した。
7.ほぼ110℃で、オートクレーブを開き、溶液を回収した。再び、びんを高程度の混
合が得られるよう震盪した。
8.溶液をオートクレーブ後にブフナーロートで直ちに温時濾過し、濾紙上にごく少量の炭酸塩が残った。溶液を室温に冷却中に生成物は沈殿した。
9.沈殿後に、生成物を濾過し、オーブン中110℃で1/2時間乾燥した。次いで、デシケーター中シリカゲルオレンジ上で乾燥した。最後に、生成物を乳鉢中微粉末に粉砕した。
10.生成物は、粉砕後に秤量し、全収率を計算した。
ストロンチウムL-グルタメート以外の他のストロンチウム塩に開示の高温合成の応用性を確認するために、ストロンチウムマロネートを作った。ストロンチウムL-グルタメートの製造で見出した反応条件が基本的に使用された。
マロン酸の懸濁液(白色)を、250mlのビーカー中、ミリポア水の100mlを10.41g(0.1モル)の固形マロン酸(フルカ63295、分子量104.1)に加えて作る。この懸濁液に、固形水酸化ストロンチウム(シグマアルドリッチ、Sr(OH)2*8H2O、分子量265.71、CAS番号、1311-10-0)の22.257g、26.571gまたは31.885g(0.08モル、0.1モルまたは0.12モル)を加えた。上記の反応手法に従い、温度はマロン酸の分解を避けるため130℃未満に保ち、一方、反応時間は15分に維持した。
0.2gのサンプルを、ミリポア水中で作った0.1M HNO3の100mlに溶解した。この溶液はさらに1%KClの溶液で500倍に希釈し、ストロンチウムの含量は、FAASで測定した。測定はバックグランドシグナルを補正のため水素ランプを備えたパーキンエルマー2100を用いて行った。ストロンチウムは0.2nmのスリットで測定し、波長は58エネルギーで8mAの電流で操作する460.8nmであった。
純度の第2のチェックは、フーバーG670回折メーターを使用し、粉末X線結晶構造解析で行った。ストロンチウムグルタメートの特徴的回折図は図1に示される。この発明で開示の高温合成法によって得られたストロンチウムマロネートのX線回折図は、図2に示される。最大強度のピークの低アングル側の二重ピークは、装置の人為現象である。
表4でいくつかの合成条件は、反応生成物のストロンチウムのモル%から明らかなよう
に、比較的低い収率と低純度のストロンチウムグルタメートとなったことが観察される。実験番号8の生成物は、比較的低い収率で、X線分析でも確認してストロンチウムの予期値25.7%を含有しなかった。このアウトライアーにかかわらず、一般に最適化実験の結果は、予期生成物に近い。不完全な反応は、低すぎるストロンチウム含量の生成物を与え、一方、合成中の炭酸ストロンチウムの生成が、高すぎる値のストロンチウム含量を与える。実験1と5に使用した条件は、予期値と最もよく一致するストロンチウム含量を与えた。また、注目すべきは、実験番号6の生成物は低収率ではあるが、予期値に相当するストロンチウムの量を含有したことも明白でもあった。
さらなる合成の改良は、炭酸ストロンチウムの生成を少なくすべく全ての溶液に窒素ガスまたはアルゴンガスの何れかで脱気することと同様に不活性雰囲気を合成環境に導入することである。
最適化実験は、温度を100℃より高い値に上げかつオートクレーブ中短時間(15分)を使用してストロンチウムグルタメートを高収率で合成できることを示している。また、20%過剰の水酸化ストロンチウムが合成されたストロンチウム塩の純度に妥協することなく全収率も改良する。シリカゲルオレンジよりもより強い乾燥を、完全な乾燥品を得るために乾燥法に適用すべきである。より強い乾燥剤の例は、濃硫酸または酸化カルシウムであるが、通常の凍結乾燥または他の機械的処理もこの方法に適用しうる。
低溶解性の有機ストロンチウム塩の薬物動態性質
この実験の目的は、低溶解性の有機ストロンチウム塩(ストロンチウムシトレート)のバイオアベイラビリティーを塩化ストロンチウムとストロンチウムラネレートと比較して評価することであった。バイオアベイラビリティーは、24時間期間の一定の間隔で血清ストロンチウム濃度を測定しAUCを算出することで評価した。
処置日(第1日)に、血液サンプルを全動物から採取した。血液サンプルは、1群当たり3匹から、次の時点:処置前、処置後30分、1、1.5、2、4、8と24時間に採取し、各群から3匹は、0、1.5と6時間で、他の3匹は0.5、2と8時間で、群の残りの3匹は1.4と24時間で採取した。
ほぼ0.5〜0.6mlの血液を、各時間で眼窩静脈叢から血清用のプレーンチューブに採取した。血液は、30〜60分間と遠心分離(10分、1270G、+20℃)まで室温に保った。血清はヌンクの凍結チューブ(デンマーク、Nunc)に移し、−18℃で凍結し、次いでグラファイト炉原子吸収分光分析(GF-AAS)でストロンチウム含量の分析に付した。
濃HClを血清サンプルに加え、0.2%HClの最終濃度とした。次いでサンプルを、バックグランドシグナル補正用の水素ランプを備えたパーキンエルマー2100を用いる分析に付した。ストロンチウムは、0.2nmのスリットで測定し、波長は58のエネルギーで8mAの電流で操作する460.8nmであった。
図4に、ストロンチウム塩で処置した3つの群で測定した血清濃度が化合物の投与後の時間の関数としてプロットされている。ストロンチウム塩の投与が、血清ストロンチウム濃度の速くて非常に有意な増加となることが明らかである。異なる塩の薬物動態性質と比較すると比較的に悪い溶解性のストロンチウムラネレート(実施例3参照)と同様に高い溶解性の塩化ストロンチウムが共に急速に吸収され、ほぼ2時間後に最大血清濃度に達することが明らかである。これに対して、最低の溶解性のストロンチウムシトレートは、よりゆっくりした動力学的速度で最大の血清濃度に達し、約6〜8時間後に最大濃度に到達する。その上、ストロンチウムシトレートの投与後0〜8時間間隔での血清ストロンチウム濃度は、より安定なようである。
Claims (10)
- ストロンチウムシトレート、ストロンチウムスクシネートおよびこれらの混合物から選択されるストロンチウム(Sr)塩を含む骨粗鬆症の治療用医薬組成物。
- ストロンチウム塩の水溶性が、室温(20〜25℃)で多くて200g/l、もしくは多くて150g/l、多くて100g/l、多くて75g/l、多くて50g/l、多くて25g/l、多くて10g/l、多くて5g/l、多くて2.5g/l、または多くて1g/lである請求項1に記載の組成物。
- ストロンチウム塩の水溶性が、室温(20〜25℃)で少なくとも0.1 g/l、または0.1 g/l〜10 g/l、0.2 g/l〜5 g/lの範囲である請求項1または2に記載の組成物。
- ストロンチウム塩の水溶性が、室温(20〜25℃)で少なくとも1g/l、もしくは少なくとも5g/l、少なくとも10g/l、少なくとも20g/l、少なくとも30g/l、少なくとも40g/l、少なくとも50g/l、少なくとも60g/l、少なくとも70g/l、少なくとも80g/l、少なくとも90g/lまたは少なくとも100g/lである請求項1に記載の組成物。
- 一日一回、就寝時の投与のための請求項1〜4のいずれか1つに記載の組成物。
- 少なくとも0.01g、または少なくとも0.025g、少なくとも0.050g、少なくとも0.075g、少なくとも0.1g、少なくとも0.2g、少なくとも0.3g、少なくとも0.4gまたは少なくとも0.5g、または0.01g〜2g、0.1g〜2g、0.1g〜1g、0.15g〜0.5g、0.3g〜2gまたは0.3g〜1gのストロンチウム(イオン性ストロンチウムとして計算)を含む請求項1〜5のいずれか1つに記載の組成物。
- 少なくとも0.5g、もしくは少なくとも0.6g、少なくとも0.7g、少なくとも0.8g、少なくとも0.9g、少なくとも1.0g、少なくとも1.1g、少なくとも1.2g、少なくとも1.3g、少なくとも1.4g、少なくとも1.5g、少なくとも1.6g、少なくとも1.7g、少なくとも1.8g、少なくとも1.9gまたは少なくとも2.0gのストロンチウム(イオン性ストロンチウムとして計算)
を含む請求項1〜5のいずれか1つに記載の組成物。 - Sr塩が、経口投与用錠剤に含まれる請求項1〜7のいずれか1つに記載の組成物。
- 組成物が、Sr塩の放出を支配する制御放出コーチングで被覆されている請求項1〜8のいずれか1つに記載の組成物。
- 塩が、水和物、無水物、溶媒化物、多形、無晶形、結晶形または微結晶形である請求項1〜9のいずれか1つに記載の組成物。
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