(実施の形態1)
本実施の形態に係るスライド式端末装置1について、図1〜図9を用いて説明する。なお、説明の便宜のため、スライド式端末装置1の長手方向(図1の左右方向)をX軸、X軸に垂直な方向(図1の上下方向)をY軸、X軸とY軸とに垂直な方向(図1の紙面に対して垂直な方向)をZ軸として説明する。また、以降の説明において、上側、下側という場合、上側は図1における紙面の上側(後述する液晶表示部の側)を、下側はその反対側を表すものとする。
図1は、スライド式端末装置1(スライド開閉装置)の上面図であり、スライド(後述の可動筐体3・4)を開けた状態の上面図である。図2は、スライド式端末装置1の上面図であり、スライドを当接させた状態の上面図である。図3は、スライドを当接させた状態における、Y軸方向から見たスライド式端末装置1の側面図である。
スライド式端末装置1は、上面に液晶画面を備える液晶表示部2(被収容部)と、液晶表示部2に対してX軸方向に可動に係合された可動筐体3・4(可動収容部)とを含む。図1に示すように、可動筐体3・4が互いに離間した状態では、液晶表示部2が露出して、上方から液晶画面の全体が視認される。図2に示すように、可動筐体3・4が互いに当接した状態では、上方から液晶表示部2は視認されない。また、図3に示すように、液晶表示部2は、可動筐体3・4が互いに当接した状態では、可動筐体3・4の内部空間に収容されている。以上、液晶表示部2と可動筐体3・4との関係を概略説明したが、次に、液晶表示部2、及び可動筐体3・4の各々の詳細を説明する。
まず、液晶表示部2について図4〜図6により説明する。図4は、液晶表示部2の上面図である。なお、ここでは、図4により示される液晶表示部2の上面を第一主面、その反対側の主面を第二主面とする。図5は、液晶表示部2の下面図である。図6は、Y軸方向から見た液晶表示部2の側面図である。
図4に示すように、液晶表示部2は、液晶表示部2の第一主面の中央部に液晶画面5と、その液晶画面5を埋め込んだ基板6と、基板6の周囲を囲う枠体7とを備える。図6に示すように、液晶画面5は、液晶画面5および基板6の上面が平坦(フラット)になるように基板6に埋め込まれている。枠体7は、基板6を保護するためにその周囲を囲っているが、液晶画面5の上方には設けられていない。枠体7は、後述の理由により、第一主面側の角部8を45度の角度で切り欠いている。また、枠体7は、長手方向(X軸方向)に延びる2つの端面の中央部に刻設された溝9を有する。後述するが、溝9は、可動筐体3・4のレールを嵌入するためのものであり、そのレールを溝9に嵌入することにより、可動筐体3・4はX軸方向に可動に液晶表示部2に係合される。なお、図6に示すように、液晶画面5および基板6の上面と枠体7の上面との高さ(Z軸方向)は、枠体7の上面が僅かに高く形成されている。しかしながら、例えば液晶画面5および基板6の主面に透明パネル、あるいはガラスパネル等を設けるなど、Z軸方向の高さを揃え、液晶画面5および基板6の上面と枠体7の上面とを完全フラット化にすることも可能である。
次に、液晶表示部2の底面10の構造について説明する。なお、底面10は、液晶表示部2の第二主面の側を表す。図5に示すように、液晶表示部2の底面、より具体的には枠体7の底面10には、可動筐体3・4を互いに当接または離間するように連動させる連動連結部11が設けられている。連動連結部11は、一方の端部が可動筐体3のバー20aに設けられた支持点12aに連結されたリンクアーム13aと、一方の端部が可動筐体4のバー20bに設けられた支持点12bに連結されたリンクアーム13bと、リンクアーム13aのもう一方の端部および13bのもう一方の端部にそれぞれ連結する連結レバー14(回転部材)と、連結レバー14を回転可能に支持する、底面10の中心部に設けられた連結軸15とを備える。
また、底面10には、可動筐体3のバー20aに設けられた支持点16bと底面10に設けられた支持点16aとに連結するスプリング17aと、可動筐体4のバー20bに設けられた支持点16dと底面10に設けられた支持点16cとに連結するスプリング17bとが設けられている。なお、図5に示すように、スプリング17a及びスプリング17bはそれぞれ“く”の字に成形されている。従って、支持点16aと支持点16bとの位置関係は、Y軸方向において、支持点16aが支持点16bよりもスライド式端末装置1の中心寄りである。同様に、支持点16cと支持点16dとの位置関係は、Y軸方向において、支持点16cが支持点16dよりもスライド式端末装置1の中心寄りである。なお、スプリング17a及びスプリング17bは、それぞれ“く”の字に成形されているのであれば、Y軸方向における支持点16aと支持点16bとの関係、およびY軸方向における支持点16cと支持点16dとの関係は、上記説明したのとは逆であってもよい。また、後述する方向に弾性力が作用するのであれば、スプリング17a及びスプリング17bの形状は“く”の字に限定されるものではない。
連結軸15は、図5に示すように、矩形に形成された連結レバー14の中心位置に嵌入されて、連結レバー14と底面10とを係合している。なお、連結レバー14の形状は矩形に限られず、楕円等であってもよく、特に限定されるものではない。また、連結軸15はネジ、ボルト等であってよい。そして、リンクアーム13a・13bは、図5では板状体で記載されているが、針金等であってもよく、その形状、材質は特に限定されるものではない。さらに、リンクアーム13a・13bは、それぞれ支持点12a・12b、及び連結レバー14に連結されているが、その連結方法は、確実に固定するものであれば特に限定されるものではない。
上述したように、可動筐体3のバー20aには支持点12a、16bが設けられており、各支持点に対してリンクアーム13aおよびスプリング17aが連結されている。また、可動筐体4のバー20bには支持点12b、16dが設けられており、各支持点に対してリンクアーム13bおよびスプリング17bが連結されている。この支持点12a、16bの位置は、バー20aのY軸方向において、互いに離れていることが好ましい。同様に、支持点12b、16dの位置は、バー20bのY軸方向において、互いに離れていることが好ましい。上記の指示点が互いにある程度の距離を保っていることにより、リンクアーム13aとスプリング17aとの、及びリンクアーム13bとスプリング17bとが接触することを回避できるためである。但し、回転する連結レバー14に接触しないように、連結レバー14と底面10との間にリンクアーム13aおよびスプリング17aを設けることも可能である。
また、図5に示すように、連結軸15を通るY軸方向の軸線を中心を挟み、支持点12aと支持点16dとが、及び支持点12bと支持点16bとが向き合う位置に設けられている。このように各支持点を配置することにより、後述の動作によって、リンクアーム13a・13b、及び連結レバー14による回転運動を介して可動筐体3・4がX軸方向に開閉自在に連動してスライドする。
次に、可動筐体3・4の詳細を図3、及び図5により説明する。
図3は、スライドを当接させた状態における、Y軸方向から見たスライド式端末装置1の側面図である。図3に示すように、可動筐体3・4が当接した状態において、可動筐体3・4は、その内部空間に液晶表示部2を収容している。つまり、可動筐体3・4は、液晶表示部2を収容できるように、その筐体内部に空間を有している。また、可動筐体3・4のX軸方向の長さは、液晶表示部2を内部に収容した時の装置全体のサイズをできる限り小さくするために、それぞれ、枠体7を含む液晶表示部2のX軸方向の長さの半分より僅かに長く形成されている。なお、可動筐体3・4の上面のX軸方向の端部22・23は、枠体7の角部8と平行になるように、共に45度の切り欠きがなされている。ここで、切り欠きの角度は、端部22・23、および角部8ともに45度として説明しているが、45度に限定されるものではなく、角度が略同一であれば、例えば50度、60度であってもよい。なお、図3に示すように、端部23は可動筐体3・4が当接する側の端部であり、端部22は、可動筐体3・4の上面におけるX軸方向のもう一方の端部である。
図5に示すように、可動筐体3・4は、板状のバー20a・20bを有する。バー20a・20bは、可動筐体3・4の内部に液晶表示部2を収容した時に、枠体7の底面10に対向する位置にとなるように、可動筐体3・4に取り付けられている。また、図5に示すように、バー20a・20bはY軸方向に取り付けられている。そして、バー20aに設けられた支持点12aにはリンクアーム13aが、支持点16bにはスプリング17aがそれぞれ連結されている。また、バー20bに設けられた支持点12bにはリンクアーム13bが、支持点16dにはスプリング17bがそれぞれ連結されている。なお、可動筐体3・4とバー20a・20bとの連結は、溶接あるいはボルト止めなどでよく、特に限定されるものではない。また、バー20a・20bの形状を板状体(矩形)として説明したが、楕円等であってよく、特に限定されるものではない。
さらに、可動筐体3・4は、X軸方向に延びる2つのレール21を有する。レール21は、枠体7の長手方向(X軸方向)に延びる2つの端面の中央部に刻設された溝9に嵌入されるように、溝9に相対する位置であって、可動筐体3・4の内側に設けられる。なお、レールと溝の関係は次のように形成されてもよい。つまり、枠体7の長手方向(X軸方向)に延びる2つの端面の中央部にレールを設け、可動筐体3・4の内側であって、そのレールに相対する位置に溝を刻設する構造であってもよい。ただし、枠体7の側に溝9を刻設する構造とする方が、レール21を枠体7の内部に収容できる分だけスライド式端末装置1を小型化できる。従って、本実施の形態では、枠体7に溝9を刻設して、可動筐体3・4にレール21を取り付ける構造を採用している。
また、図3に示すように、可動筐体3・4の内部に液晶表示部2を収容した状態において、可動筐体3・4と液晶表示部2の第一主面との間には何も取り付けられていない。これは、スライド式端末装置1が、図5によって説明したように、枠体7の底面10に連動連結部11を取り付けた構造を採用しているためである。
上記構成において、本実施の形態に係るスライド式端末装置1の動作を図7〜図9により説明する。
図7は、可動筐体3・4が互いに離れた状態(以下、離間状態)における、スプリング17aおよびスプリング17bの様子を示す図である。この状態では、スプリング17aおよびスプリング17bは、その弾性力によって、可動筐体3・4を互いに遠ざける方向に継続的に力を加えている。つまり、スプリング17aおよびスプリング17bは、“く”の字に成形されているため、そのX軸方向に向いた部位が、常に、可動筐体3・4を互いに遠ざける方向に継続的に力を加えている。従って、この状態から可動筐体3・4を互いに近づける方向に移動させようとすると、後述する中間状態になるまでは、常に、可動筐体3・4は互いに離間する方向(離間する方向)に力が印加される。
図8は、可動筐体3・4が互いに当接した状態(以下、当接状態)における、スプリング17aおよびスプリング17bの様子を示す図である。この状態では、スプリング17aおよびスプリング17bは、その弾性力によって、可動筐体3・4を互いに当接させる方向に継続的に力を加えている。つまり、スプリング17aおよびスプリング17bは、“く”の字に成形されているため、そのX軸方向に向いた部位が、常に、可動筐体3・4を互いに当接させる方向に継続的に力を加えている。従って、この状態から可動筐体3・4を互いに遠ざける方向に移動させようとすると、後述する中間状態になるまでは、常に、可動筐体3・4は互いに当接する方向に力が印加される。
図9は、可動筐体3・4が離間状態と当接状態との中間に位置する状態(以下、中間状態)における、スプリング17aおよびスプリング17bの様子を示す図である。この状態は、スプリング17aおよびスプリング17bの弾性力は、可動筐体3・4が離間状態と当接状態のどちらにも向かわない方向、つまり、X軸方向へのスプリングの弾性力がゼロとなっている状態である。そして、この中間状態を境として、可動筐体3・4が離間状態に向かうのであれば、スプリング17aおよびスプリング17bの弾性力は、可動筐体3・4を離間状態に向かわせる方向に働き、中間状態から当接状態に向かうのであれば、スプリング17aおよびスプリング17bの弾性力は、可動筐体3・4を当接状態に向かわせる方向に働く。従って、可動筐体3・4を動かす場合には、スプリング17aおよびスプリング17bの弾性力を上回る外力を可動筐体3・4に与える必要がある。
次に、可動筐体3・4が離間状態(図7)から中間状態(図9)、そして当接状態(図8)に移動する動作を説明する。なお、上述したように、この移動に際しては、スプリング17aおよびスプリング17bの弾性力を上回る外力が可動筐体3・4に印加されているものとする。
まず、図7の離間状態から、可動筐体3・4の両方に対して、可動筐体3・4を当接させる方向に外力を加える。可動筐体3のバー20aにはリンクアーム13aが、可動筐体4のバー20bにはリンクアーム13bが、それぞれ連結されている。従って、可動筐体3・4が互いに当接する方向に移動するに伴い、リンクアーム13aには図7においてX軸左向きの力が、およびリンクアーム13bには図1においてX軸右向きの力が、それぞれ印加される。そして、リンクアーム13aおよびリンクアーム13bは、それぞれ連結レバー14に連結されているため、連結レバー14には図7の矢印の方向に力が加えられる。それにより、連結レバーは、反時計回りに回転する。
なお、ここでは可動筐体3・4の両方に対して外部から力を加えるものとして説明しているが、何れか一方に外力を加えてもよい。例えば、可動筐体3に対して可動筐体4に当接する方向に力を加えた場合を考える。このとき、上述したように、リンクアーム13aにはX軸左向きの力が加えられる。その力によって、連結レバー14は反時計回りに回転する。それにより、連結レバー14に連結したリンクアーム13bにはX軸右向きの力が加えられ、その力によって可動筐体4が可動筐体3に当接する方向に移動する。
このようにして、可動筐体3・4の両方あるいは何れか一方に対して、可動筐体3・4が当接する方向に力を加えることにより、可動筐体3・4は、離間状態から中間状態へ、そして当接状態へと移行する。ここで、上述したように、枠体7は、長手方向(X軸方向)に延びる2つの端面の中央部に刻設された溝9を有する。また、可動筐体3・4は、X軸方向に延びる2つのレール21を有する。そして、レール21は、溝9に嵌入されるように位置決めされている。従って、レール21は溝9に沿って移動するため、可動筐体3・4はX軸方向に可動に液晶表示部2に係合される。
上記動作において、本実施の形態に係るスライド式端末装置1によって奏する効果を説明する。
可動筐体3・4は、リンクアーム13aおよびリンクアーム13bと連結レバー14とが連結した構成である。従って、可動筐体3・4の両方あるいは何れか一方に対して、可動筐体3・4を当接する方向、あるいは離間する方向に力を加えた場合、可動筐体3・4は連動して移動することができ、さらに、左右両方向(X軸方向)における可動筐体3・4の同時開閉操作を実現することができる。
ここで、従来のスライド機構を備えた蓋開閉装置では、該スライド機構は、本実施の形態に当てはめて説明すると、液晶表示部の上面側に取り付けられていた。従って、従来のスライド機構を備えた蓋開閉装置では、該スライド機構を取り付ける分だけ基板6に埋め込む液晶画面5のサイズを小さくする必要があった。さらに、該蓋開閉装置は、該スライド機構を液晶表示部の上面側に取り付けている分だけ、そのスライド量を大きくすることができなかった。あるいは、該蓋開閉装置は、デザイン性等の観点から、該スライド機構を外部から視認できないように隠す必要があったため、必然的に蓋のスライド量が小さくなっていた。この点、スライド式端末装置1では、連動連結部11が液晶表示部2の第二主面側に取り付けられている。従って、スライド式端末装置1は、上述した従来の課題をすべて解消することができ、その結果、基板6に埋め込む液晶画面5のサイズを大きく取ることができ、また可動筐体3・4のスライド量をより大きくすることができる。
さらに、上記構成とすることにより、スライド式端末装置1は、液晶表示部2の第一主面と可動筐体3・4との間のスペースを広く取ることができ、そのスペースに様々な部品類を配置することもできる。例えば、PNDであれば、その開いたスペースに、従来であれば装置の背面側に配置していたアンテナを取り付けることも可能である。
このように、スライド式端末装置1は、液晶画面5のサイズを大きくし、またスライド量も大きく取ることができ、さらには、開いたスペースに様々な部品類を配置することもできる。このような理由から、スライド式端末装置1の操作性、及び使用性は、従来のスライド式端末装置に比べて、格段に向上している。
これらの効果は、スプリング17aおよびスプリング17bを使用することなく達成できる作用効果でもあり、従って、スプリング17aおよびスプリング17bを使用するかどうかは、適宜選択することができる。
なお、本実施の形態では、リンクアーム13a、リンクアーム13bのそれぞれのアーム長さを変えて、可動筐体3・4のスライド量を異なるものとすることもできる。これにより、装置内部の部品類の配置を適宜変更する場合や、デザイン性、機能性等の観点から行う改善、改良に適切に対応することができる。
次に、スプリング17aおよびスプリング17bを使用することによって得られる効果について説明する。上述したように、可動筐体3・4は、当接状態から中間状態に至るまでの間、スプリング17aおよびスプリング17bの弾性力によって、常に、互いに当接する方向に力が印加される。従って、ユーザが、スライド式端末装置1を携帯して持ち運ぶ際に、可動筐体3・4が勝手に離間して液晶表示部2が露出する、あるいは露出した結果、液晶画面5がユーザの知らない間に傷つくような事態を避けることができる。つまり、上記構成とすることにより、スライド式端末装置1の携帯性は格段に向上し、ユーザにとって持ち運びに際して生じる問題を低減することができる。
また、可動筐体3・4は、離間状態から中間状態に至るまでの間、スプリング17aおよびスプリング17bの弾性力によって、常に、互いに離間する方向に力が印加される。従って、ユーザがスライド式端末装置1を使用する際に、スライド式端末装置1の水平方向の傾斜の具合によって可動筐体3・4が勝手に当接する方向に移動する事態を避けることができる。つまり、上記構成とすることにより、スライド式端末装置1の使用性、操作性は格段に向上し、ユーザにとって使いやすい装置を提供することができる。
このように、スライド式端末装置1は、スプリング17aおよびスプリング17bを備えることにより、可動筐体3・4の開閉状態を、何ら外力を加えることなく、安定して保つことができる。それにより、不使用時の携帯性、および使用時の操作性、使用性が格段に優れたスライド式端末装置を実現することができる。
さらに他の効果についても説明する。例えば図9を参照して、可動筐体3・4が、離間状態と当接状態との中間に位置する状態から、互いに当接する方向に移動した場合を考える。このとき、リンクアーム13a・13bおよびスプリング17a・17bは、同一平面上に配設されていなければ、互いに接触することはない。しかしながら、その場合、リンクアーム13a・13bおよびスプリング17a・17bが同一平面上に配設されていない分だけ、スライド式端末装置1の厚みは増すことになる。
この点、連結レバー14、リンクアーム13a・13b、及びスプリング17a・17bの取り付け位置、形状、あるいは連結レバー14とリンクアーム13a・13bとの接続位置等を適宜調節して、リンクアーム13a・13bおよびスプリング17a・17bを同一平面上に配置しつつ、リンクアーム13a・13bとスプリング17a・17bとが互いに干渉しないように設計することも勿論可能である。このように設計することで、スライド式端末装置のさらなる薄型化を実現することができる。その結果、より携帯性に優れたスライド式端末装置をユーザに提供することができる。
以上のように、本実施の形態に係るスライド式端末装置1は、上記構成を備えることにより、その携帯性と共に、操作性および使用性の向上を実現することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態に係るスライド式端末装置30は、スライド式端末装置1の携帯性、及び使用性をさらに高めた構成を備える。以下、スライド式端末装置30の構成を図10〜図16に基づいて説明する。なお、図1〜図9を参照して前述した構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付している。従って、これらの構成要素の詳細な説明は省略する。
図10は、スライド式端末装置30の上面図であり、スライド(後述の可動筐体32・33)を開けた状態の上面図である。図11は、スライド式端末装置30の液晶表示部31にスライダ機構34が収容される様子を説明する斜視図である。
スライド式端末装置30は、上面に液晶画面5を備える液晶表示部31と、液晶表示部31に対してX軸方向に可動に係合された可動筐体32・33とを含む。液晶表示部31は、液晶表示部2の構成を備えると共に、さらにスライダ機構34を備える。図11に示すように、スライダ機構34は、液晶表示部31のY軸方向に延びる端面(端面X)からその内部に向かって形成されたスライダ機構収容部35に収容される。なお、図11では、スライダ機構収容部35の外部にスライダ機構34が取り出されている様子を示しているが、実施に際しては、スライダ機構34はスライダ機構収容部35の内部に収容されており、図示しないストッパによってスライダ機構収容部35の外に出ることが防がれる。
なお、図11では、液晶表示部31にスライダ機構34が1つ収容される図を示している。しかしながら、実際には、スライダ基板36は、可動筐体32・33に対してそれぞれ設けられるため、2組存在する。従って、図11の端面Xと対向する端面Yにも、さらに、その内部に向かって形成された図示しないスライダ機構収容部が形成されている。
ここで、より具体的に、スライダ機構34の構造を図12、及び図13により説明する。図12は、スライダ機構34の上面図である。図13は、スライダ機構34の側面図である。
図12に示すように、スライダ機構34は、可動筐体32・33の移動に伴ってスライダ機構収容部35の内部を移動する板状のスライダ基板36と、スライダ基板36の長手方向に延びる両端面の端部であって、スライダ機構収容部35に挿入される側とは反対側に取り付けられる、スライダ基板36に対して垂直方向に延びる板状のアーム係合部37(支持部材)と、アーム係合部37に形成された貫通孔38に係合されたアーム39とを備える。
アーム係合部37は、スライダ基板36に取り付けられるが、スライダ基板36と一体成形されてもよい。アーム係合部37の高さh(あるいは、自身が移動する可動筐体32・33の内部であって、その鉛直上側の内面とアーム係合部37との距離)は、後述の理由により、所定の高さに成形されている。また、アーム係合部37は、スライダ基板36(取付部材)を挟んで2組取り付けられるが、両者は、スライダ基板36に対して略対称となる位置に取り付けられ、その形状は略同一である。
アーム39は、図11、及び図12に示すように、“凸”の形状から、その飛び出た部分(“コ”を横にした上側部分)を取り除いた形状である。そして、アーム39は、アーム端部40を貫通孔38に嵌入することにより、貫通孔38を中心に回転自在にアーム係合部37に係合されている。
次に、可動筐体32・33について、図14、及び図15を用いて説明する。図14は、可動筐体32・33およびスライダ機構34の側面図である。図15は、可動筐体32・33およびスライダ機構34の上面図である。
図14に示すように、可動筐体32・33は、45度に切り欠きが入った端部22の内側に、スライダ機構34のアーム39を係合する樹脂スプリング50(移動時当接部)を取り付けている。そして、図15に示すように、樹脂スプリング50は、スライダ機構34のアーム39を両側から挟むように、可動筐体32・33に2つ取り付けられている。また、樹脂スプリング50は、互いに向き合う方向に2つの突起部51を備えると共に、アーム39を回転自在に係合する係合部52を備える。樹脂スプリング50および突起部51は、ある一定の力が加わると変形されるように弾性のある樹脂で成形されている。係合部52は、アーム39と樹脂スプリング50とが接触する点において、Y軸方向に延びるアーム39に凸部を設け、また係合部52を凹部とすることにより、係合部52を中心にアーム39を回転自在に係合する構成とすることができる。なお、ここで説明した構成は一例であって、アーム39と係合部52との係合は、他の方法であってもよい。
樹脂スプリング50は、図14に示すように、アーム係合部37と接触する位置が円弧状に形成されており、その円弧状となった位置にアーム係合部37の頂部が当接している。そして、突起部51は、その円弧状に形成された樹脂スプリング50の先端部に位置する。従って、アーム39は、突起部51によって、図14の右側方向への移動が抑制された状態に置かれている。つまり、突起部51は、アーム39の自由な移動を制限するロックとしての機能を果たしている。
樹脂スプリング50は、図14に示すように、円弧状に形成された先端部に突起部51を有し、その突起部51から上方に向かって延び、可動筐体32・33の上面裏側に取り付けられている。
上記構成において、本実施の形態に係るスライド式端末装置30の動作を図16〜図20により説明する。図16は、スライド式端末装置30の可動筐体32・33が当接した状態における、Y軸方向から見たスライド式端末装置30の側面図である。図17は、スプリング17a・17bの弾性力によって、可動筐体32・33が離間した状態における、スライド式端末装置30の側面図である。図18は、図17の状態における可動筐体32・33を、さらに離間させる方向(開方向)に引いて、アーム39が突起部51を乗り越える様子を示す図である。なお、このとき、スライダ機構34は、スライダ機構収容部35の出口よりも大きく成形されたストッパ45によって、それ以上はスライダ機構収容部35の外部にスライドすることを抑止された状態にある。ストッパ45は、特に限定されないが、スライダ基板36の長手方向に対して垂直な方向にプレート、ボルト等を取り付ける構造としてよい。図19は、図18の状態における可動筐体32・33を、さらに離間させる方向に引いて、アーム39が突起部51を乗り越えた様子を示す図である。図20は、図19の状態における可動筐体32・33を、さらに離間させる方向に引いて、アーム係合部37の頂部が可動筐体32・33の上面の裏側に接触した様子を示す図である。
まず、可動筐体32・33が当接した状態(図16)、および、スプリング17a・17bの弾性力によって、可動筐体32・33が離間した状態(図17)におけるスライダ機構34と樹脂スプリング50との関係を説明する。上記の各状態では、図14に記載された状態と同様に、アーム39は、突起部51が存在するために、図14の右側方向への移動が抑制された状態に置かれている。従って、図16、図17において、可動筐体32では、アーム39が、突起部51に対して図面右側に位置し、可動筐体33では、アーム39が、突起部51に対して図面左側に位置している。なお、以降では、説明の便宜のため、可動筐体33についてのみ説明を行い、可動筐体32・33についての説明は省略する。しかしながら、その動作は、可動筐体32・33についても同様のことが言える。
次に、図17の状態からさらに可動筐体33を離間させる方向(図の矢印の方向)に外力を加えた場合、その外力によって、アーム39が、弾力性のある樹脂製の突起部51を乗り越えようとする(図18)。より具体的には、スライダ機構34は、スライダ基板36の長手方向に対して垂直な方向に取り付けられたストッパ45によって、図示する以上はスライダ機構収容部35の外部(図面左側)にスライドできない状態に置かれている。従って、可動筐体33を左側に移動させる方向に外力を加えたとしても、スライダ機構34は同じ方向に移動することができない。同様に、アーム係合部37も図示する位置よりも左側へは移動できない。しかしながら、アーム係合部37に係合されたアーム39は回転可動に係合されているため、アーム39は、可動筐体33と共に図面左側へ移動しようとする。これにより、可動筐体33が左側へ移動することにより、アーム39は突起部51を乗り越える方向に力を受ける。
そして、図19に示すように、さらに外力が加わると、ついにアーム39は突起部51を乗り越える。その後、アーム39は係合部52を中心に回転する。このとき、アーム係合部37の頂部と可動筐体33の上面の裏面44との相対的位置関係は、互いに近接していく関係になる。つまり、アーム39の回転運動によって、スライダ機構34を備えた液晶表示部31と可動筐体33との相対的距離は徐々に近接していく。そして、さらに外力が加わると、最終的にはアーム係合部37の頂部が可動筐体33の裏面44と接触してアーム39の回転運動が終了する(図20)。
ここで、枠体7の角部8および可動筐体33の端部23は、互いに平行となるように45度に切り欠きが入っている。そして、アーム係合部37の高さhは、アーム係合部37の頂部が可動筐体33の裏面44と接触した時に、枠体7の角部8および可動筐体33の端部23が互いに当接するように設定されている。また、可動筐体33の厚みと枠体7の厚みは同一に設計されている。これにより、アーム係合部37の頂部が可動筐体33の裏面44と接触した時に、可動筐体33の上面と枠体7の上面とのフラット化が実現される。
なお、図16〜図20において、液晶表示部31の底面10と可動筐体33との間にマスクプレート53が取り付けられている。マスクプレート53は、一方の端部が底面10に固定され、もう一方の端部が、可動筐体33の下面の裏側に可動に取り付けられている。マスクプレート53は、例えば図20を例に、底面10と可動筐体33の下面との間に生じる隙間を埋めるために取り付けるためのものであり、またその隙間から埃等が混入することを防ぐために取り付けられる。なお、マスクプレート53は、SUS製の鋼板であっても、樹脂製の板状体であってもよい。
また、突起部51の位置は適宜調節することができる。例えば、図20におけるアーム39の位置の真下あたりに突起部51を配置してもよい。突起部51をこの位置に配置することにより、アーム係合部37の頂部が可動筐体33の裏面44と接触した時に、アーム39と突起部51との間のスペース(遊び)が軽減される。これにより、ユーザが可動筐体32・33のみを把持した場合に、重力による液晶表示部31の落下を抑える構造とできる。このような理由から、突起部51の位置は適宜変更することが可能である。
上記動作において、本実施の形態に係るスライド式端末装置30によって奏する効果を図16〜図20により説明する。
スライド式端末装置30は、上記構成を備えることにより、離間状態にある可動筐体32・33に対してさらに力を加えることにより、その離間状態からさらに離間する方向に可動筐体32・33を移動させることができる。そして、ロックとして機能する突起部51を超えてアーム39が回転運動し、ついにはアーム係合部37の頂部が可動筐体33の裏面44と接触する。ここで、アーム係合部37の高さhは、アーム係合部37の頂部が可動筐体33の裏面44と接触した時に、枠体7の角部8および可動筐体33の端部23が互いに当接するように設定されている。従って、アーム係合部37の頂部が可動筐体33の裏面44と接触すると、その時点で枠体7の角部8および可動筐体33の端部23が互いに当接する。また、可動筐体33の厚みと枠体7の厚みを略同一とすることにより、可動筐体32・33の上面と枠体7の上面とのフラット化を実現することができる。
これにより、ユーザは、可動筐体33の上面と枠体7の上面とによって生じる段差を気にすることなく、スライド式端末装置30を使用することができる。また、段差に起因する(他の物との)引っ掛かりなどの不具合を、より一層低減することもできる。あるいは、図示しない液晶画面5および基板6の主面にさらに透明パネル、あるいはガラスパネル等を設けることにより、可動筐体32から可動筐体33に至るまでの装置の上面をフラット化にすることも可能である。
このように、スライド式端末装置30は、液晶表示部31がスライダ機構34を備え、また可動筐体32・33が樹脂スプリング50、突起部51等を備える構成である。そして、上記動作によって、可動筐体32・33の上面と枠体7の上面との間に生じていた段差を解消することでき、より使用性、操作性の高いスライド式端末装置をユーザに提供することができる。
さらに、樹脂スプリング50は、アーム係合部37と接触する位置が円弧状に形成されており、その円弧状となった位置にアーム係合部37の頂部が当接している。これにより、図16から図18に至るまでの間、アーム係合部37は上記円弧部と当接し、これにより該当接が解除されるまでの間、アーム係合部37は該円弧部を介して可動筐体32・33を図面上向きに支持することができ、可動筐体32・33のぐらつきを抑えることができる。その結果、スライド式端末装置30は、より使用性の高い装置をユーザに提供することができる。
(実施の形態3)
ここまで、本実施の形態に係るスライド式端末装置1・30について説明した。以下、スライド式端末装置1・30を,GPSを備えたPND(Personal Navigation device)に適用するケースについて説明する。
なお、PNDとは、小型の液晶画面、GPSアンテナ、電波の反射を抑えるための鉄板、および地図データの記録媒体にフラッシュメモリーを搭載した、小型のカーナビゲーション、またはナビゲーション機能を持つ小型電子機器である。一般の車載組み込み型カーナビゲーション機器よりも機能を簡易化したものが多く、筐体が小型のため日常的に自動車への取り付け・取り外しを簡易に行うことができる。また、歩行者が携帯して使用することもできる。
まずは、従来のPNDが有する課題を説明する。つまり、GPSは電波を受信するためにアンテナを必要とし、そのアンテナは、現在地情報等を表示する画面部を遮蔽しないように、PND本体の裏側に取り付けられる。しかしながら、その取付位置では上方(天井)からの電波が届きにくく、アンテナを開けないと現在地情報を取得することができない場合もある。そして、PNDは、アンテナを装置外部に取り付けることで、その携帯性、及び使用性が著しく悪化する。しかも、PNDは、受信感度を上げるためにアンテナを大きくすると共に、電波の反射を抑えるための鉄板も取り付ける必要がある。従って、従来のPNDでは、アンテナあるいは鉄板の取り付けに伴う携帯性の低下が問題となっていた。
そこで、スライド式端末装置1・30をPNDに採用することにより、上記の課題が解決されることを図21を用いて説明する。図21は、スライド式端末装置60の側面図である。なお、図1〜図20を参照して前述した構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付している。従って、これらの構成要素の詳細な説明は省略する。
スライド式端末装置60は、外部から現在地情報を取得する薄板状のGPSアンテナ61と、電波の反射を抑えるための鉄板62とを備える。GPSアンテナ61は、可動筐体32・33の裏面44に取り付けられている。鉄板62は、裏面44に対向する可動筐体32・33の内面63に取り付けられている。なお、鉄板62は、可動筐体32・33の下面に一体成形されてなる構成であってもよい。このように、スライド式端末装置60は、GPSアンテナ61がスライド式端末装置60の内部であって、上方からの電波を受信しやすい位置に取り付けられる。
上記構成を備えることにより、スライド式端末装置60は次の作用効果を奏する。
スライド式端末装置60は、可動筐体32・33を互いに当接または離間するように連動させる連動連結部11を液晶表示部31の底面に取り付けている。この点、上述したように、従来の蓋開閉装置では、本実施の形態の連動連結部11に相当する連動部は液晶表示部31の上面に設けられている。従って、スライド式端末装置30は、従来のPNDでは活用できなかった可動筐体32・33と液晶表示部31の上面との間のスペースを有効に使用することができる。
このような理由から、スライド式端末装置60は、GPSアンテナ61および電波の反射を抑えるための鉄板62を上記の位置に取り付けることができる。つまり、図21に示すように、薄板状のGPSアンテナ61を可動筐体32・33の裏面44に取り付け、可動筐体32・33の内面63に鉄板62を取り付ける構造を採用することができる。
この構成により、従来であれば装置の外部に取り付けていたGPSアンテナを装置内部に収容することができ、PNDの携帯性を著しく改善することができる。また、従来であれば、GPSアンテナは装置の背面に取り付けられていたため、上方からの電波が届きにくく、アンテナを開けないと現在地情報を取得することができない場合もあった。この点、スライド式端末装置60では、天井からの電波が届きやすい位置である裏面44にGPSアンテナ61が取り付けられている。そして、電波の反射を抑えるための鉄板62がその下方に取り付けれている。従って、従来に比べて、より確実に電波の受信を行うことができ、それにより常に位置情報を遅延なく取得でき、結果として装置の使用性が著しく改善される。このように、スライド式端末装置60をPNDに採用することによって、より携帯性および使用性に優れたPNDをユーザに提供することができる。
なお、ここまでは、可動筐体3・4・32・33は液晶表示部(液晶画面)のカバーとしての役割を有するものとして説明していた。しかしながら、可動筐体3・4・32・33と液晶表示部2・31とを電気的に接続し、可動筐体3・4・32・33の上面に液晶画面、あるいはスピーカーを備え付ける構成も可能である。これにより、装置の上面のほぼ全域に亘って液晶画面を有するPND、あるいは装置の左右(可動筐体3・4・32・33)からの音響を楽しむことができるPNDを実現できる。そして、上記構成は、新たな部品類、構成要素をスライド式端末装置1・30に追加することなく実現可能である。従って、スライド式端末装置60によって、スライド式端末装置1・30の携帯性を維持しつつ、より情報量が増えて使用性が向上したPNDをユーザに提供することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。