本発明は通信機能を利用してデータ通信を行う制御装置、制御方法、制御装置と端末装置とからなる通信システム、記憶媒体、プログラム等に関するものである。さらに詳しくは端末装置が制御装置に対してランダムアクセス方式によってアクセスする機能を持った通信システムに関するものである。
従来、端末装置と制御装置とのランダムアクセス方式においては、個々の端末装置が制御装置に対してランダムにデータを送信するため、端末装置が送信したデータ同士が衝突を起こす問題がある。
特開2000−348636号公報には、そのような問題に対処するための技術が開示されている。
特開2000−348636号公報には、ランダムアクセス方式で通信をおこなう端末装置は送信するデータを生成しても、すぐにデータの送信を試みず、一定の待機時間が経過してから、データの送信を試みるものである。それにより、特定の端末が連続してデータ伝送をおこなう場合に、特定の端末に通信権獲得の偏りが生じ、他の端末装置と制御装置との通信が途絶えることを防ぐ。
特開2000−348636号公報
しかし、従来の方法(特開2000−348636号公報)では、制御装置と通信をおこなう端末装置の数が増加した場合に、端末装置から送信されるデータの衝突の発生を低減することができない。
また、別の課題として、従来の方法では、制御装置と通信をおこなっている端末の数によらず、端末装置は同じ制御をおこなうため、制御装置と通信をおこなっている端末装置の数が少ない場合にはシステム全体としての通信効率が悪くなる。
そこで、本発明では、ランダムアクセス方式によって制御装置にアクセスする端末装置に関して、各々の端末装置から送信されるデータの衝突回数を削減することを目的とする。
また、本発明は、制御装置と通信をおこなう端末装置の数に基づいてデータの衝突回数削減のための制御をおこなうことで、制御装置と通信する端末装置の数が少ない場合に、システム全体としての通信効率の悪化を抑制することを目的とする。
上記課題を解決するために、本願第1の発明は、端末装置と通信可能な制御装置であって、端末装置と制御装置とが通信をおこなう通信期間を指定する情報を端末装置に送信し、制御装置と通信可能な範囲に存在する端末装置の数を把握し、前記通信可能な範囲に前記情報を送信する第1の処理と、前記通信可能な範囲に含まれる複数の通信範囲のそれぞれに異なる通信期間を指定する情報を送信する第2の処理とを実行可能にし、制御手段は、把握手段によって把握する端末装置の数に基づいて、第1の処理の実行と第2の処理の実行とを切替える。
本発明によれば、例えば、制御装置と通信をおこなう装置の数に応じてデータの衝突回数削減のための制御をおこなうことで、システム全体としての通信効率の悪化を抑制することができる。
以下に、図面を参照して、本発明の好適な実施形態を例示的に説明する。
本実施例では、端末装置20が制御装置10に対して、ランダムアクセス方式のひとつであるSlotted−ALOHA方式を用いてデータの送信を行う場合について説明する。
まず、本発明の実施例1における制御装置10の概略構成を説明する。
図1は本発明実施例1の制御装置10の概略構成を示したブロック図である。
制御部100は、CPU110と、ROM120と、RAM130を有する。
まず、CPU110について説明する。CPU110はROM120に格納されている各種プログラムに従って動作する。例えば、CPU110はROM120内の送信電力制御プログラム121によって送信電力調整部150に送信電力を制御するための指示を出す。
また、CPU110はROM120内のフレーム生成プログラム122に従ってフレームを生成し、生成したフレームの記憶領域132に格納する。フレームを生成する際にCPU110は、端末装置20が制御装置10にアクセスするアクセス期間に関する情報、例えばアクセス期間の開始時刻と終了時刻、あるいはタイムスロット数N(Nは任意の自然数)をフレームに保持させる。ここで指定した情報は、後に利用するため、アクセス期間に関する情報の記憶領域135に格納しておく。その後、CPU110は、フレームを送信するために生成したフレームを変調部140に送る。
また、CPU110はフレーム解析プログラム123に従って、端末装置20から受信したフレームを解析する。解析したフレームは、解析したフレームの記憶領域134に格納する。CPU110がROM120内のプログラムによっておこなう処理はこれらに限らず、他に制御装置10の制御に必要な種々の処理をおこなう。
次に、ROM120は、前述したプログラムのほかに、図3、図8に示すフローチャートに対応するプログラムやその他種々のプログラムを記憶しており、これらのプログラムはCPU110によって実行される。
RAM130はCPU110がプログラムを実行するときに使用するワークエリアを有する。また、RAM130は図1に示すようなさまざまなデータを記憶しておく領域を有する。例えば、送信電力レベル記憶領域131、生成フレームの記憶領域132、受信フレームの記憶領域133、解析したフレームの記憶領域134、アクセス期間に関する情報の記憶領域135を有する。また、RAM130は、制御に用いる変数の記憶領域136、端末装置情報管理領域137、その他の記憶領域138を有する。
変調部140は制御部100から送られてくるフレームの変調をおこない、変調したフレームを送信電力調整部150に渡す。
送信電力調整部150はCPU110からの指示に基づいて決定した送信電力によって、変調部140から送られてくるフレームの送信電力を調整し、送受切換部160に渡す。その後、送受切換部160に送られたフレームはアンテナ170を介して送信される。送信電力調整部150は送信電力レベルを最小送信電力レベルから最大送信電力レベルの間で、段階的にもしくは連続的に、増大または減少することが可能である。ここでいう最大送信電力レベルとは、ハードウェア制限によるものや政府の規定に基づくものである。
また、復調部180は、外部からアンテナ170および送受切換部160を介して受信したフレームの復調をおこなう。
次に、端末装置20の概略構成について説明する。
図1は本発明実施例1の端末装置20の概略構成を示したブロック図である。
制御部200は、CPU210と、ROM220と、RAM230を有する。
まず、CPU210について説明する。CPU210は、制御装置10から受信したフレームを受信フレームの記憶領域231に格納し、ROM220内のフレーム解析プログラム221に従って、受信したフレームの解析処理をおこなう。解析したフレームは、解析したフレームの記憶領域233に格納する。
また、CPU210はフレームを解析して得たアクセス期間の開始時刻やタイムスロット数Nなどの情報をもとに、タイムスロット選択プログラム222に従って、フレームを送信する際にタイムスロットを選択する処理をおこなう。
他にも、CPU210はフレーム生成プログラム223に従って、フレームを生成する処理をおこなう。ここでCPU210は、生成したフレームを、生成フレームの記憶領域231に一時的に格納しておき、送信する際に、変調部240に送る。CPU210がROM220内のプログラムによっておこなう処理はこれらに限らず、他に端末装置20の制御に必要な種々の処理をおこなう。
ROM220は、これらのプログラム以外にも、図4のフローチャートに対応するプログラムやその他種々のプログラムを記憶しており、これらのプログラムはCPU210によって実行される。
RAM230はCPU210がプログラムを実行するときに使用するワークエリアを有する。また、RAM230は図2に示すようなさまざまなデータを記憶しておく領域を有する。例えば、生成フレームの記憶領域231、受信フレームの記憶領域232、解析したフレームの記憶領域233、その他の記憶領域234を有する。
変調部240は制御部200から送られてくるフレームを変調する。変調されたフレームは、送受切換部250およびアンテナ260を介して送信される。復調部270はアンテナ260、送受切換部250を介して受信したフレームの復調をおこない、復調したフレームを制御部200に渡す。
次に、図1で説明した制御装置10の本実施例での動作を図3のフローチャートを用いて説明する。
まず、図1に示す制御装置10のCPU110は、送信電力プログラム121に従って送信電力調整部150に指示を出し、送信電力レベルを低レベルに設定する(ステップS300)。この際に、CPU110は、RAM130の送信電力レベル記憶領域131に送信電力が低レベルに設定してあることを格納しておく。
そして、CPU110はフレーム生成プログラム122に従って、アクセス期間に関する情報を保持したフレーム(以下、同報フレーム)を生成し、RAM130の生成フレームの記憶領域132に格納する(ステップS301)。その際に、CPU110はアクセス期間に関する情報で指定した、アクセス期間の開始時刻および終了時刻、アクセス期間に含まれるタイムスロット数N(Nは自然数)などの情報をアクセス期間に関する情報の記憶領域135に格納しておく。
次に、CPU110はステップS300で設定した低レベルの送信電力で、ステップS301で生成した同報フレームの送信をおこなう(ステップS302)。
その後、送信した同報フレームに対して、端末装置20からフレーム(以下、端末装置20から制御装置10に送られるフレームを無線フレームと呼ぶ)が送られてきた場合に、無線フレームの受信をおこなう。そして、受信した無線フレームを受信フレームの記憶領域133に格納する(ステップS303〜S304)。そして、CPU110は受信した無線フレームを解析し、解析したフレームをRAM130中の解析したフレームの記憶領域135に格納する(ステップS305)。一方、ステップS303において無線フレームの受信がない場合は、ステップS308に進む。
ステップS306において、CPU110は無線フレームを解析した結果、受信した無線フレームが復調部180によって正常に復調されたものであるかどうかを判断する。無線フレームが正常に復調されたものであると判断したCPU110は、ステップS307において、そのフレームの送信元である端末装置20に対して、フレームを正しく受信したことを示す信号、受信確認信号(Ack)を送信する。ステップS306において、例えば、受信した無線フレームが衝突を起こしたものだった場合には、そのフレームは正しく復調されないため、CPU110は端末装置20に対してAckの送信はおこなわず、ステップS308に進む。
ステップS308では、CPU110は、同報フレームの生成時に、アクセス期間に関する情報の記憶領域135に格納した情報を参照し、そのアクセス期間が経過したか否かを判断する。判断の結果、アクセス期間が経過していない場合は、ステップS303に戻り、ステップS303〜ステップS308を繰り返す。
一方、ステップS308において、アクセス期間が経過したと判断した場合、ステップS309にすすみ、CPU110は送信電力レベル記憶領域131に格納した送信電力レベルを参照し、設定されている送信電力が最大レベルであるかどうかを判断する。ここでは、送信電力はステップS300で設定した低レベルのままなので、送信電力レベルは最大レベルではないと判断し、ステップS310に進む。ステップS310において、CPU110は送信電力制御プログラム121に従って、送信電力調整部150の送信電力を上げ、ステップS301に戻る。CPU110は送信電力を上げる際に、送信電力レベル記憶領域131の送信電力レベルの値を、送信電力を上げた後の値に更新する。
その後、CPU110はステップS301〜S310の処理を繰り返す。ただ、CPU110は、ステップS310で何度か送信電力を上げた結果、ステップS309において送信電力が最大レベルだと判断した場合には、ステップS300に戻り、送信電力を低レベルに設定する処理をおこなう。ここでCPU110は、RAM130の送信電力記憶領域131に送信電力は低レベルに設定してあることを格納しておく。
次に、上記の図2のブロック図で示した端末装置20の動作について説明する。
端末装置20は、制御装置10から送られてきた同報フレームを受信して、制御装置に無線フレームを送信する。だが、端末装置20は制御装置10から受信した全ての同報フレームに応答を返すのではない。端末装置20は、一度制御装置10との通信が完了すると、その後一定の期間は、同報フレームが送られてきても通信する必要がないと判断し、その期間は同報フレームに応答しないようにする。このような構成にすることによって、まだ制御装置10との通信に成功していない端末装置20に、優先的に通信をおこなわせることができる。
では、図2で説明した端末装置20の本実施例での動作について図4のフローチャートを用いて説明する。
まずステップS400において、端末装置20のCPU210は、制御装置10から同報フレームが送られてきた場合に、ステップS401に進み、その同報フレームを受信し、受信した同報フレームをRAM230の受信フレームの記憶領域232に格納する。
そしてステップS402において、CPU210は、受信した同報フレームに応答するべきかどうかを判断する。応答するべきでないと判断した場合は、処理を終了する。この判断は、例えば、制御装置10から受信したAckによって制御装置10との通信に成功した端末装置20が、通信に成功した時刻以降一定の期間を計時し、一定の期間が経過していないと判断した場合になされる。
応答するべきであると判断した場合には、ステップS403に進む。ステップS403において、CPU210は、フレーム解析プログラム222に従って、受信フレームの記憶領域232に格納した同報フレームの解析を行い、解析したフレームの記憶領域233に格納する。そして、CPU210は解析したフレームから、制御装置10が指定したアクセス期間に関する情報(例えばアクセス期間の開始時刻と終了時刻)や、アクセス期間に含まれるタイムスロット数の値Nを認識する。
ステップS404において、CPU210はタイムスロット選択プログラム222に従って、認識したN個のタイムスロットの中から、一つを等確率で選択する。そして、ステップS405において、CPU210はフレーム生成プログラム223に従って、無線フレーム(実施例2以降で説明する、制御装置10との接続を要求するための無線フレーム、以下接続要求フレームを含む。)を生成し、生成した無線フレームを生成フレームの記憶領域231に格納し、ステップS406に進む。ステップS406で、CPU210はステップS404で選択したタイムスロットにおいて、制御装置10に対して、生成した無線フレームを送信する。
その後、ステップS407において、CPU210は、送信した無線フレームが制御装置10によって正常に受信されたことを認識するための受信確認信号(Ack)が送られてくるのを待ち、一定の期間内に送られてきた場合はステップS408にすすむ。そしてCPU210は、送られてきたAckを受信することで、送信した無線フレームが制御装置10によって正常に受信されたことを認識し処理を終了する。一方、ステップS407において一定期間内にAckが送られてこなかった場合は、CPU210は無線フレームの再送信をおこなう。その場合、ステップS400に戻り、再び制御装置10から同報フレームが送られてくるのを待つ。
次に前述した制御装置10および端末装置20からなるシステムの動作の一例を、図5のシステム構成図および図6のタイミング図および、図7の動作フロー図を参照して説明する。
今、図5に示すように本無線通信システムは1台の制御装置10と、8台の端末装置20(D1〜D8)によって構成されており、制御装置10は、3つの同報フレームから開始される一連のシーケンスを起動する。3つの同報フレームは、それぞれ低レベル、中レベル、最大レベルの3段階の送信電力で送信される。フレームを送信する送信電力の大きさによって、フレームの到達範囲は変わり、送信電力が大きいほど、フレームは制御装置10から遠い範囲に到達する。本実施例では、同報フレームを低レベルの送信電力で送信した場合に同報フレームが到達する範囲を第一の同報フレームの到達範囲500とする。同様に同報フレームを中レベルの送信電力で送信した場合に同報フレームが到達する範囲を第二の同報フレームの到達範囲501、同報フレームを最大レベルの送信電力で送信した場合に同報フレームが到達する範囲を第三の同報フレームの到達範囲502とする。
図6は、制御装置10が送信する第一の同報フレーム600、第二の同報フレーム602、第三の同報フレーム604が指定するアクセス期間601、603、605に対して、各端末装置D1〜D8がアクセスするタイミングを示す図である。ここで、それぞれのアクセス期間は6個のタイムスロットに分割されているものとし、同報フレームに応答する端末装置20はSlotted−ALOHA方式で動作しているため、これら6個のタイムスロットのうち、一つを選択し、無線フレームを送信する。
ここで、制御装置10および端末装置20(D1〜D8)の動作を図7の動作フロー図を用いて説明する。制御装置10は図7に示すように送信電力レベルを変更した連続する3つの同報フレームからなる一連のシーケンスを起動して処理を開始する。
まず、本実施例による制御装置10のCPU110は、ステップS700において最初に低い送信電力レベルで第一の同報フレーム600を送信する。この第一の同報フレーム600は、第一の同報フレームの到達範囲500まで到達する。その結果、複数の端末装置D1〜D8のうち、この第一の同報フレームの到達範囲500内に存在する端末装置のみが第一の同報フレーム600を受信することができる。ここでは、第一の同報フレームの到達範囲500内に存在する端末装置D1およびD2のみが第一の同報フレームを受信でき、端末装置D3〜D8はこの第一の同報フレーム600を受信できない。
ステップS701において第一の同報フレーム600を受信した端末装置D1、D2は、同報フレームに含まれるアクセス期間の情報に基づいてアクセス期間601を認識する。そして、タイムスロットの情報に基づいて、どのタイムスロットでアクセスをおこなうか選択する。その後、端末装置D1、D2はそれぞれ選択したタイムスロットで制御装置10に対して、無線フレームを送信する。
その様子を図6に示す。この例では、アクセス期間601の2番目のタイムスロットでD1が、4番目のタイムスロットでD2が無線フレームを送信している。その結果、フレーム衝突が起きることなく、それぞれの端末装置20から送信された無線フレームは制御装置10により正常に受信される。このように、第一の同報フレーム600の後に、第一のアクセス期間601が存在することを認識する端末装置はD1とD2に限られる。そのため、このアクセス期間601に無線チャネルへ競合アクセスする端末装置はD1およびD2のみとなり、アクセスする端末装置の数が制限されることからフレーム衝突が発生する確率が小さくなる。
また、端末装置D1、D2から送信される無線フレームを正常に受信した制御装置10は、端末装置D1、D2に対して、Ackを送信する。このAckを受信した端末装置D1、D2は、制御装置10との通信に成功したことを認識する。
そして、Ackを受信した端末装置D1、D2は、その後一定の期間は制御装置10からの同報フレームを受信してもそれに対して応答しない。
次に、ステップS702において、制御装置10のCPU110は送信電力レベルを中レベルに設定し、設定した送信電力で第二の同報フレーム602を送信する。この第二の同報フレーム602は図5に示す第二の同報フレームの到達範囲501まで到達する。この第二の同報フレームの到達範囲501内に位置する端末装置はD1からD5である。しかし、D1およびD2は第一の同報フレーム600に引き続くアクセス期間601において既に制御装置10と通信が完了しているため、第二の同報フレーム602に応答してアクセスする必要はない。これは、制御装置10との通信が成功したことを確認した端末装置D1、D2がそれ以降一定の時間は、制御装置10からの同報フレームを受信しても応答しない制御に基づくものである。従って第二の同報フレーム602の後に配置されるアクセス期間603においては、D3からD5までの3台の端末装置がアクセスすることになる。
ステップS703において、制御装置にアクセスする端末装置D3、D4、D5は、同報フレームに含まれるアクセス期間の情報に基づいてアクセス期間603を認識し、タイムスロットの情報に基づいて、どのタイムスロットでアクセスをおこなうか選択する。その後、端末装置D3、D4、D5はそれぞれ選択したタイムスロットで制御装置10に対して、無線フレームを送信する。
ここで図6は、第二の同報フレーム602に対して、アクセス期間603の有するタイムスロットのうち、2番目のタイムスロットでD4が、5番目のタイムスロットでD3が、さらに6番目のタイムスロットでD5が無線データを送信する様子が示されている。その結果、それぞれの端末装置によるフレーム衝突が起きることなく、各端末装置20から送信されたフレームが制御装置10によって正常に受信される。このように、中レベルの送信電力で送信した第二の同報フレームに対して、アクセスする端末装置20の数が3台に限られるため、フレーム衝突が発生する確率が小さくなる。
また、端末装置D3、D4、D5から送信される無線フレームを正常に受信した制御装置10は、端末装置D3、D4、D5に対して、受信確認信号(Ack)を送信する。この受信確認信号を受信した端末装置D3、D4、D5は、制御装置との通信に成功したことを認識し、その後一定の時間は制御装置10からの同報フレームを受信してもそれに対して応答しない。
最後に、ステップS704で制御装置10は最大送信電力レベルで第三の同報フレーム604を送信する。この第三の同報フレーム604は最大送信電力で送信されるため、図5に示す第三の同報フレームの到達範囲502まで到達する。この第三の同報フレーム604はすべての端末装置20によって受信される。しかし、端末装置D1からD5は既に第一のアクセス期間601および第二のアクセス期間603において既に制御装置10との通信が完了しているため、第三の同報フレーム604に応答しない。これは、制御装置10との通信が成功したことを確認した端末装置D1からD5がそれ以降一定の時間は、制御装置10からの同報フレームを受信しても応答しない制御に基づくものである。従って第三の同報フレーム604の後に配置されるアクセス期間605では、端末装置D6からD8までの3台の端末装置がアクセスすることになる。
ステップS705において、第三の同報フレーム604を受信した端末装置D6、D7、D8は、同報フレームに含まれるアクセス期間の情報に基づいてアクセス期間605を認識する。そして、タイムスロットの情報に基づいて、どのタイムスロットでアクセスをおこなうか選択する。その後、端末装置D6、D7、D8はそれぞれ選択したタイムスロットで制御装置10に対して無線フレームを送信する。
ここで図7はアクセス期間605の有するタイムスロットのうち、1番目のタイムスロットでD6が、2番目のタイムスロットでD7が、さらに5番目のタイムスロットでD8が無線チャネルにアクセスする。そして、フレーム衝突が起きることなくそれぞれの端末装置から送信されたフレームが制御装置によって正常に受信される様子を示している。端末装置D6、D7、D8から送信される無線フレームを正常に受信した制御装置10は、端末装置D6、D7、D8に対して、受信確認信号(Ack)を送信する。
以上のように制御装置10から送信される3つの同報フレームの送信電力を次第に増大させていくことによって、それぞれの同報フレームに応答する端末装置20の数を制限できるため、競合アクセスによるフレーム衝突を低減することができる。
なお、本実施例でいう端末装置20は携帯電話やコンピュータなどの情報機器に限らず、通信機能を有する装置であればよい。また制御装置10は、端末装置20に対して通信制御をおこなう無線アクセスポイントであってもよいし、携帯電話やコンピュータなどの情報機器であってもよい。以下の実施例についても同様であるものとする。
次に第2の実施例について説明する。
第2の実施例の制御装置の構成については、図1を流用して説明する。
WPANシステムのような無線通信システムでは、新たに起動した端末装置20が適宜制御装置10のサービスエリアに参加する。このときにその端末装置20が制御装置10に送信する、端末装置20に関する情報を含んだ接続要求フレームもSlotted−ALOHA方式で送信される。
制御装置10は、この接続要求フレームを衝突なく、正常に受信した場合に、自装置のサービスエリア内に新たな端末装置20が存在することを認識する。そして、制御装置10は、この端末装置20に関する情報をRAM内の端末装置情報管理領域137に登録しておくことによって、サービスエリア内の端末装置20を把握する。
登録される情報の形式の一例を図8に示す。図8の800は登録管理テーブルを表したものである。801は制御装置10に登録された端末装置20の端末装置IDである。この端末装置IDは、端末装置20の接続要求フレームを解析した結果から得ることができ、各端末を一意に識別するためのものである。802は、制御装置10が各端末装置20と最後に通信した時刻である。
制御装置10のCPU110は、接続要求フレームを正常に受信した場合に、そのフレームを解析し、そこから得られた結果から、そのフレームの送信元の端末装置20に関する情報を読み出す。そこから得られた端末装置IDを801に、CPU110は、そのフレームを解析した時刻を802に登録する。その後、制御装置10のCPU110は、受信したフレームを解析した結果、そのフレームの送信元が登録管理テーブル800に登録されているいずれかの端末装置20だった場合に、その端末装置20と最後に通信した時刻802を更新する。
そして制御装置10のCPU110は、各端末装置と最後に通信した時刻802から、予め定めておいた時間が経過しても、通信がおこなわれなかった端末装置20に関しては、その登録を削除する。このように、制御装置10は端末装置20の登録、削除を行う。
また、CPU110は、変数の記憶領域136に変数Lを用意し、登録管理テーブルに登録されている端末装置20の数をカウントし、その値を格納しておく。この数は端末装置20の登録や削除をするたびに、CPU110が登録後もしくは削除後の値に更新する。以上の処理によって、CPU110は接続状態にある端末装置20の数を把握する。
ここで、制御装置10がサービスエリアに所属する端末装置20の数を把握している場合に有効な送信電力制御方法を図1のブロック図と図9(a)、図9(b)のフローチャートを用いて説明する。制御装置10は、把握している端末装置20の数がM以上か、M未満かによって制御を切り替える。図9(a)は端末装置情報管理領域137に登録されている端末装置20の数LがMに満たないときの動作、図9(b)は端末装置20の数LがM以上のときの動作を示す。このMは動作をおこなう前に設定することが可能である。
まず端末装置20の数LがM未満である場合のフローチャート図9(a)について説明する。図1に示す制御装置10のCPU110は、送信電力制御プログラム121に従って、送信電力調整部150に指示を出し、送信電力レベルを最大レベルに設定する(ステップS900)。この際に、CPU110は、RAM130の送信電力記憶領域131に送信電力が最大レベルに設定してあることを格納しておく。
そしてCPU110はフレーム生成プログラム122に従って、アクセス期間に関する情報を保持した同報フレームを生成し、RAM130の生成フレームの記憶領域132に格納する(ステップS901)。この際に、CPU110はアクセス期間に関する情報で指定した、アクセス期間の開始時刻および終了時刻、アクセス期間に含まれるタイムスロット数N(Nは自然数)などの情報をアクセス期間に関する情報の記憶領域135に格納しておく。
ステップS902においては、CPU110はステップS900で設定した最大レベルの送信電力で、フレームの送信をおこなう。その後、送信した同報フレームに対して、端末装置20から無線フレームが送られてきた場合に、無線フレームの受信をおこない、受信したフレームの記憶領域133に格納する(ステップS903〜S904)。そして、受信した無線フレームを解析し、解析した無線フレームをRAM130中の解析したフレームの記憶領域135に格納する(ステップS905)。一方、ステップS903において無線フレームの受信がない場合は、ステップS912に進む。
ステップS906では、CPU110は受信した無線フレームが正常に復調されたかどうかを判断する。無線フレームが正常に復調されたと判断したCPU110は、ステップS907において、そのフレームの送信元である端末装置20に対して、受信確認信号(Ack)を送信し、ステップS908に移る。一方、ステップS906において、例えば、複数の端末装置20から送信されるフレームが衝突を起こしたとき、そのフレームは正しく復調することができない。このときCPU110は、ステップS907で受取確認信号(Ack)の送信はおこなわず、ステップS908に移る。
ステップS908で、CPU110は受信したフレームが、接続要求フレームかどうかを判断する。接続要求フレームだと判断した場合には、ステップS909に進む。接続要求フレームでないと判断した場合は、ステップS912に移る。
ステップS909で、CPU110は解析したフレームから必要な情報を読み出し、RAM中の端末装置記憶領域137にその情報を登録し、ステップS910に移る。ステップS910において、CPU110は、登録されている端末装置の数Lの値を1増やす。そしてステップS911に移り、CPU110は端末装置20の数LがM以上かどうかを判断する。M以上であると判断した場合は、送信電力の制御方法を変えるためにAに移る。またM未満であると判断した場合には、ステップS912に移る。
ステップS912において、CPU110はアクセス期間に関する情報の記憶領域135に格納した情報に基づいて、同報フレームの生成時に指定したアクセス期間が経過したかを判断する。判断の結果、アクセス期間が経過していない場合は、ステップS903に戻り、ステップS903からステップS912の処理を繰り返す。また、アクセス期間が経過したと判断した場合には、ステップS901に戻り、ステップS901からステップS912の処理を繰り返す。
前述したステップS911で、登録されている端末装置20の数LがM以上であると判断し、Aに移ると、CPU110は送信電力制御プログラム121に従って、送信電力調整部150に指示を出し、送信電力レベルを低レベルに設定する(ステップS913)。ここで、CPU110は、RAM130の送信電力レベル記憶領域131に、送信電力は低レベルに設定してあることを格納しておく。
そして実施例1と同様、生成フレームの記憶領域132にアクセス期間に関する情報を保持するフレームを生成し、そのフレームをステップS913で設定した低レベルの送信電力で送信する(ステップS914〜ステップS915)。その後、端末装置20から受信がある場合に、フレームを受信し、受信フレームの記憶領域133に格納する。その後、受信したフレームをフレーム解析プログラム123に従って、解析処理し、解析したフレームの記憶領域134に格納する(ステップS916〜ステップS918)。そしてステップS919に進む。
ステップS919では、CPU110は受信した無線フレームが正常に復調されたかどうかを判断する。無線フレームが正常に復調されたことを判断したCPU110は、ステップS920において、そのフレームの送信元である端末装置20に対して、受信確認信号(Ack)を送信し、ステップS921に進む。
一方、ステップS919において、例えば、複数の端末装置20から送信されるフレームが衝突を起こしたとき、そのフレームは正しく復調することができないため、受取確認信号(Ack)の送信はおこなわず、ステップS921に進む。
そして、ステップS921において実施例1と同様、CPU110はRAM130内のアクセス期間に関する情報の記憶領域135に格納した同報フレームの生成時に指定したアクセス期間が経過したかを判断する。アクセス期間が経過していない場合は、ステップS916に戻り、ステップS916からステップS921の処理を繰り返す。アクセス期間が経過した場合、ステップS922に進み、CPU110は送信電力レベル記憶領域131を参照し、設定してある送信電力が最大レベルであるかどうかを判断する。送信電力が最大レベルでない場合はステップS923に移り、送信電力を上げる。送信電力を上げた場合に、送信電力レベル記憶領域131の送信電力レベルの値を新しく設定した値に更新する。そして、ステップS914に戻り、ステップS914〜ステップS923の処理を繰り返す。その後、ステップS922において、送信電力レベル記憶領域131を参照し、設定してある送信電力が最大レベルであると判断した場合にステップS924に移る。
ステップS924では、前述した、登録された端末装置の削除処理によって、登録されている端末装置20の数LがM以上か、M未満かを判断する。登録されている端末装置20の数LがM以上である場合には、ステップS913に進み、送信電力レベルを複数の段階に設定する動作モードを続ける。登録されている端末装置20の数LがM未満であった場合には、Bに移り、同報フレームを最大送信電力で送信する動作モードに切り替える。
実施例2の端末装置20の動作については、実施例1と同様である。
次に前述した実施例2における制御装置10および端末装置20からなるシステムの動作の一例を、図10のシステム構成図および図11のタイミング図および、図12の動作フロー図を参照して説明する。ここでは、任意の数Mの値を2に設定した場合について説明する。
本実施例では、まず図10(a)のように制御装置10のサービスエリアに一台の端末装置D1が所属しているものとする。その後、端末装置D2および端末装置D3が新たにサービスエリアに所属する。その後の状態を示したのが図8(b)である。
図11(a)は、制御装置10が送信する同報フレーム1100が指定するアクセス期間に対して、端末装置D1がアクセスするタイミングを示す図である。図11(b)は同報フレーム1102が指定するアクセス期間1103に対して、端末装置D1と新たに制御装置10のサービスエリアに参加した端末装置D2、D3がアクセスするタイミングを示す図である。図11(c)も同様に、制御装置10が送信する第一の同報フレーム1104、第二の同報フレーム1106が指定するアクセス期間1105、1107に対して、各端末装置D1、D2、D3がアクセスするタイミングを示す図である。
まず図10(a)に示すように、本無線通信システムが制御装置10とただ一台の端末装置D1から構成される場合、所属する端末装置が一台のみであることを把握している制御装置10は、ステップS1200において送信電力を最大送信電力に設定する。そして、制御装置10は、最大送信電力で同報フレーム1100を送信する。
ステップS1201において、この同報フレーム900を受信した端末装置D1は、同報フレームに含まれるアクセス期間の情報に基づいてアクセス期間1101を認識し、タイムスロットの情報に基づいて、どのタイムスロットでアクセスをおこなうか選択する。その後、無線フレームを送信する。
図11(a)は同報フレーム1100を受信した端末装置D1が制御装置10にアクセスするタイミングを表している。本実施例では、端末装置D1はアクセス期間1101に含まれる例えば3番目のタイムスロットを選択してフレームの送信を行うことにより、制御装置10に対して通信が完了する。端末装置D1から送信される無線フレームを正常に受信した制御装置10は、端末装置D1に対して、受信確認信号(Ack)を送信する。
この後、図10(b)に示すように新たに端末装置D2およびD3が制御装置10のサービスエリアに参加する。このとき、まだ端末装置D2およびD3の存在を認識していない制御装置10は、最大送信電力レベルのままで、同報フレーム1102を送信する。
ステップS1203において同報フレーム1102を受信した端末装置D2は、制御装置10に対して、接続要求フレームを送信する。また、ステップS1204において同報フレームを受信した端末装置D1は、制御装置10に無線フレームを送信する。ただし、前回の通信から一定の期間が経過しておらず、同報フレーム1102に応答しなくてよい場合には、無線フレームを送信しなくてもよい。そして、同じくステップS1204において同報フレーム1102を受信した端末装置D3は、制御装置10に対して接続要求フレームを送信する。
図11(b)は同報フレーム1102を受信した端末装置D1、D2、D3が制御装置10にアクセスするタイミングを表している。本実施例では、端末装置D1はアクセス期間1103に含まれる例えば4番目のタイムスロットを、端末装置D2は1番目のタイムスロットを選択してフレームの送信を行う。そして、端末装置D3は3番目のタイムスロットを選択してフレームの送信を行うことにより制御装置10に対して通信が完了する。端末装置D1、D2、D3から送信される無線フレームを正常に受信した制御装置10は、端末装置D1、D2、D3に対して、受信確認信号(Ack)を送信する。ここで、制御装置10のCPU110はサービスエリア内に端末装置20が1台から3台になったことを把握する。そうすると、任意の数Mを超えるので、制御装置10のCPU110は、最大の送信電力レベルで同報フレームを送信する図12(a)および(b)に示す制御から、図12(c)に示す制御に切り替える。
まず図12のステップS1205において、本実施例による制御装置10のCPU110は、最初に低レベルの送信電力レベルで第一の同報フレーム1104を送信する。この第一の同報フレーム1104は、第一の同報フレームの到達範囲1000まで到達する。その結果、複数の端末装置D1〜D3のうち、この第一の同報フレームの到達範囲800内に存在する端末装置は制御装置10の近傍に位置するD2のみであり、端末装置D1およびD3はこの第一の同報フレーム1104を受信できない。
ステップS1206において、第一の同報フレーム1104を受信した端末装置D2は、同報フレームに含まれるアクセス期間の情報に基づいてアクセス期間1105を認識する。そして、タイムスロットの情報に基づいて、どのタイムスロットでアクセスをおこなうか選択する。その後無線フレームを送信する。
図11(c)は同報フレーム1104を受信した端末装置D2が制御装置10にアクセスするタイミングを表している。端末装置D2はアクセス期間905に含まれるタイムスロットのうち、例えば3番目のタイムスロットでフレーム送信を行うことにより、制御装置10に対して通信が完了する。端末装置D2から送信される無線フレームを正常に受信した制御装置10は、端末装置D2に対して、受信確認信号(Ack)を送信する。
次に、ステップS1207において、制御装置10のCPU110は最大送信電力で第二の同報フレーム1106を送信する。この第二の同報フレーム1106は図10(b)に示す第二の同報フレームの到達範囲1001まで到達する。その結果、端末装置D1〜D3はすべてこの第二の同報フレーム1106を受信するが、D2は既に通信を完了しているため応答しない。よって、ステップS1208では、端末装置D1およびD3のみがそれぞれアクセス期間1107に含まれるタイムスロットにおいて制御装置10に対して無線フレームを送信する。
その結果、図12(c)のように、アクセス期間1107で、例えば1番目のタイムスロットで端末装置D3が、3番目のタイムスロットで端末装置D1が無線チャネルにアクセスする。そして、フレーム衝突が起きることなく端末装置から送信されたフレームが制御装置によって正常に受信される。そして、端末装置D1から送信される無線フレームを正常に受信した制御装置10は、端末装置D1に対して、受信確認信号(Ack)を送信する。
以上、本発明に関する無線通信システムの制御装置10は、自分のサービスエリアに所属する端末装置20の数を把握しているので、所属している数によって制御装置10の動作を切り替えることが可能である。それによって、サービスエリア内の端末装置20の数に応じた適切な制御をおこなうことができる。
またMの値を2に設定することで、サービスエリア内の端末装置20が1台だけなのか、あるいは複数の端末装置が所属しているかによって動作を切り替えることが可能である。サービスエリア内の端末装置20の数が1台の場合には、制御装置10のサービスエリアに新たに端末装置20が参加してこない限りは、無線フレームの衝突は起きない。そのような場合にまで、送信電力を制御する必要は無いので、そこで衝突が起きる場合と、起きない場合にわけて送信電力制御方法を切り替えることで、効率的な制御をおこなうことが可能である。
また、本実施例のように制御装置10が自装置のサービスエリア内に所属する端末装置数を把握している場合には、その端末装置数に応じて、送信電力レベルの段階を増やした送信電力制御をおこなってもよい。例えば、端末装置数が3台の場合には、低レベル、最大レベルの2段階の送信電力制御をおこない、端末装置数が10台ある場合には、レベル1〜レベル5までの5段階の送信電力に変更する制御をおこなうようにしてもよい。
さらに、自装置のサービスエリア内に所属する端末装置の数に応じて、アクセス期間に含まれるタイムスロットの数を変更しても良い。例えば、サービスエリア内の端末装置の数が多くなるにつれて、タイムスロットの数も増やすことで、各端末装置が同じタイムスロットを選択する確率が減り、衝突を低減することができる。
次に第3の実施例について説明する。
本実施例では、端末装置20から送られてくるフレームの衝突を検知して、送信電力制御の方法を切り替える例について説明する。なお、制御装置10の構成については、実施例1で説明した図1を流用し、図1と図13(a)、(b)のフローチャートを用いて説明する。ただし、本実施例では、図1に示す制御装置10のRAM130の内容が一部実施例1と異なり、RAM130は変数の記憶領域136に端末装置20からの受信数を格納する変数Kを保持する。なお図13(a)は制御装置10のサービスエリア内に存在する端末装置20が1台以下の場合の動作を表すフローチャートであり、図13(b)は制御装置10のサービスエリア内に存在する端末装置20が複数台の場合の動作を表すフローチャートを示す。
まず、図1に示す制御装置10のCPU110は、送信電力制御プログラム121に従って、送信電力調整部150に指示を出し、送信電力レベルを最大レベルに設定する(ステップS1300)。この際に、CPU110は、RAM130の送信電力記憶領域131に送信電力が最大レベルに設定してあることを格納しておく。
そしてCPU110はフレーム生成プログラム122に従って、アクセス期間に関する情報を保持した同報フレームを生成し、RAM130の生成フレームの記憶領域132に格納する(ステップS1301)。この際に、CPU110はアクセス期間に関する情報で指定した、アクセス期間の開始時刻および終了時刻、アクセス期間に含まれるタイムスロット数N(Nは自然数)などの情報をアクセス期間に関する情報の記憶領域135に格納しておく。
ステップS1302においては、CPU110はステップS1300で設定した最大レベルの送信電力で、フレームの送信をおこなう。その後、送信した同報フレームに対して、端末装置20から無線フレームが送られてきた場合に、無線フレームの受信をおこない、受信したフレームの記憶領域133に格納する(ステップS1303〜S1304)。そして、受信した無線フレームを解析し、解析した無線フレームをRAM130中の解析したフレームの記憶領域135に格納する(ステップS1305)。一方、ステップS1303において無線フレームの受信がない場合は、ステップS1308に進む。
ステップS1306では、CPU110は受信した無線フレームが正常に復調されたかどうかを判断する。無線フレームが正常に復調されたことを判断したCPU110は、ステップS1307において、そのフレームの送信元である端末装置20に対して、受信確認信号(Ack)を送信し、ステップS1308に移る。ステップS1306において、例えば、複数の端末装置20から送信されるフレームが衝突を起こしたとき、そのフレームは正しく復調することができない。このときCPU110は、受取確認信号(Ack)の送信はおこなわず、Aに移る。
ステップS1308に移ると、CPU110はアクセス期間に関する情報の記憶領域135に格納した情報に基づいて、同報フレームの生成時に指定したアクセス期間が経過したかを判断する。判断の結果、アクセス期間が経過していない場合は、ステップS1303に戻る。また、アクセス期間が経過していると判断した場合には、ステップS1301に戻る。
前述したステップS1306において、Aに移ると、CPU110は、送信電力制御プログラム121に従って、送信電力調整部150に指示を出し、送信電力レベルを低レベルに設定する(ステップS1309)。ここで、CPU110は、RAM130の送信電力レベル記憶領域131に、送信電力は低レベルに設定してあることを格納しておく。
そして、CPU110はステップS1310でRAM130の変数の記憶領域136に端末装置20からの受信数を保持する変数Kを用意し、用意した変数Kに初期値0を設定しておく(ステップS1310)。またCPU110はステップS1311でRAM130の変数の記憶領域136にフレーム衝突検出フラグFを用意し、用意した変数Fに初期値0を設定しておく。
そして実施例1と同様、生成フレームの記憶領域132にアクセス期間に関する情報を保持するフレームを生成し、そのフレームをステップS1309で設定した低レベルの送信電力で送信する(ステップS1312〜ステップS1313)。その後、端末装置20から受信がある場合に、フレームを受信し、受信フレームの記憶領域133に格納する。その後、受信したフレームをフレーム解析プログラム123に従って、解析処理をおこない、解析したフレームの記憶領域134に格納する(ステップS1314〜ステップS1316)。
ステップS1317では、CPU110は受信した無線フレームが正常に復調されたかどうかを判断する。無線フレームが正常に復調されたことを判断したCPU110は、ステップS1319において、そのフレームの送信元である端末装置20に対して、受信確認信号(Ack)を送信する。そして端末装置20から受信があった場合は、受信数Kを1増やす(ステップS1320)。
一方、ステップS1317において、例えば、複数の端末装置20から送信されるフレームが衝突を起こしたとき、そのフレームは正しく復調することができないため、受取確認信号(Ack)の送信はおこなわず、ステップS1318に進む。ステップS1318では、RAM130の変数領域136に用意したフレーム衝突フラグFに1を代入する。
そして、ステップS1321において実施例1と同様、CPU110はRAM130内のアクセス期間に関する情報の記憶領域に格納した同報フレームの生成時に指定したアクセス期間が経過したかを判断する。アクセス期間が経過していない場合は、ステップS1314に戻り、ステップS1314からステップS1321の処理を繰り返す。アクセス期間が経過した場合、CPU110は送信電力レベル記憶領域131を参照し、設定してある送信電力が最大レベルであるかどうかを判断する(ステップS1322)。送信電力が最大レベルでない場合はステップS1323に移り、送信電力を上げる。送信電力を上げた場合に、送信電力レベル記憶領域131の送信電力レベルの値を新しく設定した値に更新する。そして、ステップS1310に戻り、ステップS1310〜ステップS1323の処理を繰り返す。その後、ステップS1322において、送信電力レベル記憶領域131を参照し、設定してある送信電力が最大レベルであると判断した場合にステップS1324に移る。
ステップS1324では、フレーム衝突検出フラグFが1かどうかを判断する。フレームの衝突は、サービスエリア内に複数の端末がある場合におこる。よって、フレーム衝突フラグが1の場合は、CPU110はステップS1324において、制御装置のサービスエリア内に複数の端末が存在することを認識し、ステップS1309に進み、送信電力レベルを複数の段階に設定する動作モードを続ける。また、フレーム衝突フラグが0の場合は、ステップS1325に進む。
ステップS1325においては、CPU110が、受信数Kの値が2以上であると判断した場合、CPU110はステップS1324において、制御装置10のサービスエリア内に複数の端末装置20が存在することを認識する。そして、ステップS1309に進み、送信電力レベルを複数の段階に設定する動作モードを続ける。受信数Kの値がそれ以外の場合は、サービスエリア内に端末装置20が、存在しない、もしくは1台の場合であるので、Bに移り、同報フレームを最大送信電力で送信する動作モードに切り替える。
実施例2の端末装置の動作については、実施例1と同様である。
前述した制御装置10および端末装置20の動作について、図14のシステム構成図および図15のタイミング図および、図16の動作フロー図を参照して説明する。
本実施例では、まず図14(a)のように制御装置10のサービスエリアには一台の端末装置D1が所属しているものとする。このとき制御装置10は、サービスエリアに属する端末装置が一台だけであるため、最大送信電力で同報フレームを送信している。その後、図14(b)のように新たに端末装置D2が当該制御装置10のサービスエリアに参加する。なお、同報フレームを低レベルの送信電力レベルで送信した場合に、同報フレームが到達する範囲を第一の同報フレームの到達範囲1400とする。また、同報フレームを最大レベルの送信電力レベルで送信した場合に同報フレームが到達する範囲を第二の同報フレームの到達範囲1401とする。ここでは、端末装置D2が参加した結果、次の状況になる場合について説明する。端末装置D2は図14(c)に示すように第一の同報フレームの到達範囲1400内に存在し、端末装置D1は第二の同報フレームの到達範囲1401内、かつ第一の同報フレームの到達範囲1400外に存在する場合について説明する。
図15は制御装置10が送信する同報フレーム1500、第一の同報フレーム1502、第二の同報フレーム1504が指定するアクセス期間1501、1503、1505に対して、各端末装置D1、D2がアクセスするタイミングを示す。
図14(c)の状態になったときに、D2が新たに存在することをまだ検出していない制御装置10は、図16(a)のステップS1600において送信電力レベルを最大送信電力に設定し、同報フレーム1500を送信する。
ステップS1601において、この同報フレームを受信した端末装置D1、D2は、同報フレーム1500に含まれるアクセス期間の情報に基づいてアクセス期間1501を認識する。そして、タイムスロットの情報に基づいて、どのタイムスロットでアクセスをおこなうか選択する。その後、端末装置D1、D2はそれぞれ選択したタイムスロットで制御装置10に対して、無線フレームを送信する。
ここで図15に、同報フレーム1500を受信した各端末装置が制御装置10にアクセスするタイミングを示す。端末装置D1とD2がともにアクセス期間1501の2番目のタイムスロットで無線フレームを送信しており、これら二台の端末装置から送信された無線フレームは衝突を起こしている。
その結果、制御装置10はこれら無線フレームの信号電力を検出するため、何らかの無線フレームが送信されていることを認識するものの、これら無線フレームが衝突しているため、制御装置10はこれら無線フレームを正しく復調することができない。つまりこの時、制御装置10はフレーム衝突を検出し、すでに自分のサービスエリアに存在している端末装置D1以外に、新たに他の端末装置が存在することを認識し、動作モードを図16(b)に変更する(図13のステップS1306からAに移る処理に対応している)。
図16(b)に移ると、制御装置10は送信電力制御を行う一連のシーケンスを開始する。
まず、制御装置10は、ステップS1603において、低い送信電力で第一の同報フレーム1502を送信する。端末装置D2は第一の同報フレーム1502の到達範囲内に存在するためにこの同報フレームを受信できるが、端末装置D1は第一の同報フレーム1502の到達範囲外に存在するため受信できない。
従って端末装置D2のみがステップS1604において、第一の同報フレーム1502を受信して、同報フレーム1502に含まれるアクセス期間の情報に基づいてアクセス期間1503を認識する。そして、端末装置D2は、タイムスロットの情報に基づいて、どのタイムスロットでアクセスをおこなうか選択する。その後無線フレームを送信する。図15に示すように、アクセス期間1503では、2番目のタイムスロットで端末装置D2のみが無線チャネルにアクセスし、フレーム衝突が起きることなく端末装置から送信されたフレームが制御装置によって正常に受信される様子を示している。端末装置D2から送信される無線フレームを正常に受信した制御装置10は、端末装置D2に対して、受信確認信号(Ack)を送信する。
次に制御装置10のCPU110は、ステップS1605において、送信電力を最大送信電力に設定し、第二の同報フレーム1504を送信する。端末装置D1およびD2は第二の同報フレーム1504を受信するが、D2はアクセス期間1503において既に通信を完了しているため、端末装置D1のみがアクセス期間1505に含まれるタイムスロットにおいて制御装置10に対して無線フレームを送信する。
図15に示すアクセス期間1505では、2番目のタイムスロットで端末装置D1のみが無線チャネルにアクセスし、フレーム衝突が起きることなく端末装置から送信されたフレームが制御装置によって正常に受信される様子を示している。端末装置D2から送信される無線フレームを正常に受信した制御装置10は、端末装置D2に対して、受信確認信号(Ack)を送信する。
以上本実施例2に示すように、本発明に関わる無線通信システムの制御装置は、自分のサービスエリアに所属する端末装置に加え、新たに他の端末装置から接続要求フレームが送信された場合でも、それらフレーム衝突を検出し動作を切り替えることが可能である。これによって、制御装置はフレーム衝突の発生を極力削減し、短時間ですべての端末装置20との通信に成功する効果を持つ。
なお本実施例では、端末装置20から送信されるフレームの衝突を検出することで、制御装置10が動作モードを切り替える例を説明した。動作モードの切り替えは最大送信電力レベルで同報フレームを送信する動作モードから、送信電力レベルの異なる複数の同報フレームを送信する動作モードに切り替える場合を説明した。しかし、動作モードの切り替えは、これに限らず、制御装置10が送信電力の異なる複数の同報フレームを送信する動作モードで動作している時に、フレームの衝突を検知することで送信電力を変化させる段回数を増やして同報フレームを送信するようにしてもよい。
(その他の実施例)
送信電力を設定する段階数は、実施例1では送信電力は低レベル、中レベル、最大レベルの3段階、実施例2および実施例3では低レベル、最大レベルの2段階の場合を説明したが、送信電力を変更する段階の数は2段階や3段階以外の値でもよい。例えば、レベル1、レベル2、レベル3、レベル4、レベル5(最大レベル)といった5段階にわけて設定してもよい。
また、前述した実施例では、各構成をソフトウェアによる処理とハードウェアによる処理との組合せで実現する場合を例にして説明していた。これらの構成について、実施例ではソフトウェアで実現する場合について説明した構成をハードウェアで実現してもよく、ハードウェアで実現する場合について説明した構成をソフトウェアで実現してもよい。
また、上記のように実施形態を詳述したが、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施態様をとることが可能である。
尚、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラム(実施形態では図に示すフローチャートに対応したプログラム)を、システム或いは装置に直接或いは遠隔から供給する場合を含む。また、そのシステム或いは装置のコンピュータが供給されたプログラムコードを読み出して実行することによって達成される場合を含む。
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、制御装置あるいは端末装置のコンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
また、プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、などがある。
本発明の制御装置の構成を示すブロック図である。
本発明の端末装置の構成を示すブロック図である。
本発明の実施形態1における制御装置のフローチャートを示す図である。
本発明の実施形態における端末装置のフローチャートを示す図である。
本発明の実施形態1における無線通信システムのモデル図である。
本発明の実施形態1におけるタイミング図である。
本発明の実施形態1における動作フロー図である。
本発明の実施形態における登録管理テーブルを表した図である。
本発明の実施形態2における制御装置のフローチャートを示す図である。
本発明の実施形態2における無線通信システムのモデル図である。
本発明の実施形態2におけるタイミング図である。
本発明の実施形態2における動作フロー図である。
本発明の実施形態3における制御装置のフローチャートを示す図である。
本発明の実施形態3における無線通信システムのモデル図である。
本発明の実施形態3におけるタイミング図である。
本発明の実施形態3における動作フロー図である。
符号の説明
110 CPU
121 送信電力制御プログラム
122 フレーム生成プログラム
131 送信電力レベル記憶領域
150 送信電力調整部