JP5041212B2 - 低温液化ガスの岩盤内貯蔵施設およびその施工方法ならびに漏洩検査方法 - Google Patents
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このようなメンブレン式の貯槽は凍結式の貯槽に比べて構造がやや複雑にはなるものの、凍結式の場合に比べて岩盤の影響を受け難いので確実な気密保持性能が確保でき、しかも凍結式の場合と同様にいずれは貯槽の外側に凍結領域が形成されてそれが二次的なバリアになるとも考えられることから、信頼性や安定性の点では凍結式のものより有利であるとされている。
そのための試験はJIS Z 2333に規定されているアンモニア漏れ試験により行うことが考えられている。これは、LNG地下式貯蔵タンクを対象として規定されたもので、メンブレン材を取り付けた後にその背面側にアンモニアガスを封入するとともに、メンブレン材の表面の溶接線上にアンモニア検知剤を塗布することにより、アンモニアガスが漏洩するような溶接不良箇所があるとそこから漏洩したアンモニアガスと検知剤との反応によって検知剤の色が変化することから、その変色の有無を観察することで溶接不良を発見するというものである。
つまり、通常のLNG地下式貯蔵タンクは直径がせいぜい数十メートル程度のサイロ状の形態のものであるが、岩盤内貯蔵施設は全長が数百メートルにも及ぶ長大なトンネル状の形態となることが想定されており、そのような大規模で特異な形態の施設に対して上記のような通常のアンモニア漏れ試験をそのまま実施することは困難であり、敢えて実施するとすれば膨大な手間と費用を要することは不可避である。
そのため、この種の大規模な岩盤内貯蔵施設の施工に際してはメンブレン材に対する漏洩試験を効率的に行い得る有効適切な方策の開発が不可欠である。
各ブロックの試験用管路を複数箇所に分散配置すると良く、各ブロックの試験用管路を供給管路と吸引管路とにより構成すると良い。
また、目地材の少なくとも一部を止水コーティング材により被覆すれば目地部の止水性を充分に確保することができる。
また、目地材の少なくとも一部を低熱伝導性の樹脂材により形成することにより、目地材を通しての熱ロスを低減することができる。
また、各ブロックの試験用管路を複数箇所に分散配置するとブロック全体に試験用ガスを速やかに供給できる。
さらに、各ブロックの試験用管路を供給管路と吸引管路とにより構成すればブロック全体を試験ガスに速やかに置換することができる。
本実施形態の岩盤内貯蔵施設は長大なトンネルの形態とされた大規模なもので、その最先端部の縦断面形状と横断面形状を図1〜図2に示すように、岩盤内に形成した円形断面のトンネル状の空洞1の表面に必要に応じて吹付コンクリート2を形成し、その上に躯体コンクリート3、保冷材4、メンブレン材5を順次積層した構造の覆工を形成して、その内部空間をLNG等の低温液化ガスの貯槽(タンク)として使用するものである。
そして、その施工に際してはメンブレン材5に対する溶接不良による漏洩試験として上述したようなアンモニア漏れ試験を行うものであり、その試験を効率的に行うことを目的として、覆工の施工に際してはメンブレン材5の背面側の空間(つまり躯体コンクリート3とメンブレン材5との間に形成される保冷材4の設置空間)を予め複数の漏洩試験ブロックに区画しておき、しかもその漏洩試験ブロックを躯体コンクリート3の施工の際に打ち継ぎ部に設置される目地材6によって区画形成することを主眼とするものである。
なお、図示例の目地材6は躯体コンクリート3中に埋設される基部に非加硫ブチルゴム等の止水コーティング材7により被覆されており、それにより目地部の止水性が充分に確保されるようになっている。
また、目地材6の他の構成例として、図3(b)に示すように区画板6aの一部を低熱伝導性の樹脂材6abにより形成しても良く、それにより区画板6a全体を鋼材やステンレス材等の金属材料により形成する場合に比べて躯体コンクリート3への熱ロスを抑制することができる。
したがって、ある区間の躯体コンクリート3を施工した後に、その表面上に保冷材4を積層し、さらにその表面にメンブレン材5を取り付けて、図3に示すように各ブロックの縁部においてはメンブレン材5を目地材6に対して溶接することにより、それら躯体コンクリート3とメンブレン材5と目地材6とにより囲まれた密閉空間としての漏洩試験ブロックが躯体コンクリート3の打設区間ごとに区画形成され、保冷材4は各漏洩試験ブロック内にそれぞれ独立に取り付けられることになる。
本実施形態においては、図2および図4に示すように、各ブロックごとに空洞1の頂部と両側部の3カ所に試験用管路8が分散配置され、かつそれぞれの試験用管路8は供給管路8aと排気管路8bとを対として構成されているとともに、供給管路8aと排気管路8bにはそれぞれ間隔をおいて複数(図示例では2カ所ずつ)箇所に供給分岐管路9a、排気分岐管路9bが接続されてそれらの先端は供給口10aおよび排気口10bとしてブロック内において開口している。
つまり、本例では各ブロックごとに6カ所ずつの供給口10aと排気口10bとが分散配置されており、したがってアンモニア漏れ試験に際しては供給管路8a、供給分岐管9aを通して各供給口10aから各ブロックの全域にわたってアンモニアガスが供給され、かつそれと同時に各ブロックから排気口10b、排気分岐管路9b、排気管路8bを通して排気がなされることによって、各ブロック内全体をアンモニアガスに速やかに置換し得るものとなっている。
図5(a)に示すように空洞1を掘削し、必要に応じてその表面に吹付コンクリート2を形成した後、(b)に示すように空洞1の最先端部から坑口側に向かって一定区間ずつ躯体コンクリート3を段階的に施工していく。その際には打ち継ぎ部に上記の目地材6を設置していくとともに、躯体コンクリート3内には試験用管路8(供給管路8aおよび排気管路8b)を埋設していく。
そして、(c)に示すように躯体コンクリート3を施工した区間に対して保冷材4およびメンブレン材5を取り付けて1ブロックの覆工を完成させた後、そのブロックに対するアンモニア漏れ試験を実施する。すなわち、そのブロックに供給管路8aを通してアンモニアガスを供給するとともに排気管路8bを通して排気を行ってブロック内全体をアンモニアガスに置換するとともに、メンブレン材5の内面には溶接線に沿ってアンモニア検知剤を塗布する。
これにより、溶接不良箇所があればそこでアンモニア検知剤が変色するから、ブロック全体を観察して不良箇所があれば補修を行った後、再試験を行う。
以上の試験をブロック単位で行いながら、隣接する他の区間に対して同様に躯体コンクリート3の施工と保冷材4およびメンブレン材5の取り付け工程を順次実施していき、完成したブロックに対して同様にアンモニア試験を順次行っていく。
2 吹付コンクリート
3 躯体コンクリート
4 保冷材
5 メンブレン材
6 目地材
6a 区画板
6ab 樹脂材
6b 止水板
7 止水コーティング材
8 試験用管路
8a 供給管路
8b 排気管路
9a 供給分岐管路
9b 排気分岐管路
10a 供給口
10b 排気口
Claims (7)
- 岩盤内に掘削した空洞の表面に、躯体コンクリート、保冷材、メンブレン材からなる覆工を形成し、該覆工の内部空間を低温液化ガスを貯蔵するための貯槽とする構造の岩盤内貯蔵施設であって、
躯体コンクリートとメンブレン材との間に形成される保冷材の設置空間を、躯体コンクリートの打ち継ぎ部に設置される目地材によって複数のブロックに区画するとともに、
メンブレン材に対する漏洩試験のための漏洩試験用ガスを各ブロックに対して独立に供給するための試験用管路を躯体コンクリートに埋設してなり、
前記目地材は、躯体コンクリートをブロックごとに打設形成する際の妻型枠としても機能する区画板と、該区画板の基部に一体に設けられた止水板とによるT形断面の部材であり、
前記区画板の先端部にメンブレン材を溶接してなることを特徴とする低温液化ガスの岩盤内貯蔵施設。 - 請求項1記載の低温液化ガスの岩盤内貯蔵施設であって、
目地材の少なくとも一部を止水コーティング材により被覆してなることを特徴とする低温液化ガスの岩盤内貯蔵施設。 - 請求項1または2に記載の低温液化ガスの岩盤内貯蔵施設であって、
目地材の少なくとも一部を低熱伝導性の樹脂材により形成してなることを特徴とする低温液化ガスの岩盤内貯蔵施設。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の低温液化ガスの岩盤内貯蔵施設であって、
各ブロックの試験用管路を複数箇所に分散配置してなることを特徴とする低温液化ガスの岩盤内貯蔵施設。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の低温液化ガスの岩盤内貯蔵施設であって、
各ブロックの試験用管路を供給管路と吸引管路とにより構成してなることを特徴とする低温液化ガスの岩盤内貯蔵施設。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の低温液化ガスの岩盤内貯蔵施設を施工するための方法であって、
空洞を掘削した後、躯体コンクリートを所定区間ごとに段階的に打ち継いで施工していくとともに、
躯体コンクリートの施工の際には打ち継ぎ部に目地材を設置して該目地材により保冷材の設置空間を複数のブロックに区画していくとともに、各ブロックにそれぞれ独立の試験用管路を埋設していき、
当該ブロックに対する保冷材およびメンブレン材の施工が完了した後、当該ブロックに検査用管路から漏洩試験用ガスを供給してメンブレン材の溶接不良を検査するための漏洩試験を行うことにより、該漏洩試験をブロック単位で順次行っていきつつ貯槽全体を完成させることを特徴とする低温液化ガスの岩盤内貯蔵施設の施工方法。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の低温液化ガスの岩盤内貯蔵施設を対象として、供用開始後に貯蔵している低温液化ガスの漏洩検査を行うための方法であって、
各ブロックに埋設されている試験用管路によって各ブロックから独立に吸引を行って吸引ガス成分を分析することにより、貯蔵している低温液化ガスの漏洩の有無と漏洩発生ブロックの特定を行うことを特徴とする低温液化ガスの岩盤内貯蔵施設の漏洩検査方法。
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