JP5029526B2 - 回転式圧縮機における冷媒ガスの吸入量制御装置 - Google Patents

回転式圧縮機における冷媒ガスの吸入量制御装置 Download PDF

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Description

本願発明は、回転式圧縮機の低速回転領域及び高速回転領域における冷媒ガスの吸入量を調整可能とした吸入量制御装置に関するものである。
特許文献1は、ベーン式圧縮機の高速回転時の冷房能力過剰を抑制するために考案されたもので、次のような構成が開示されている。ベーン式圧縮機において、圧縮室の吸入ポート又は吸入ポートに連通する流通路の流入口に、吸入ポート又は流入口の開口面積よりも狭い面積の弁部を有するリード弁が配設される。
リード弁は圧縮室へ吸入されるガス量が少ない低速回転時には吸入通路の開度が大きい状態に保持されて冷房能力を充分に発揮する。一方、回転が上昇した時、リード弁は吸入ガス量の増大によって吸入通路の開度を連続的に絞る方向に回動され、圧縮室内に吸入されるガス量を抑制するように作用する。従って、特許文献1に開示された技術は高速回転時における冷房能力の過剰を防止することができる。
特許文献2は、油量調整弁としてスプール式絞り弁の構成を開示している。即ち、弁本体の圧油通路の途中に圧油通路よりも大径、かつ圧油通路と同軸の弁体室が形成される。弁体室には、圧油通路よりも大径の有底筒状の弁体が圧油の流れに押されて所定距離だけ摺動可能に内装されている。弁体の底壁には、圧油通路の軸線に対して偏心した貫通孔が設けられている。
圧油が圧油通路内を弁体の底壁側から開口側へ流れると、弁体は圧油によって移動され、弁体の底壁が弁体室の壁面から離れる。このため、圧油は弁体の貫通孔の開口面積分だけ流れることができる。一方、圧油が圧油通路内を弁体の開口側から底壁側へ、即ち前記と反対方向へ流れると、弁体が前記と反対側へ移動し、弁体の底壁が弁体室の壁面に当接する。貫通孔は圧油通路に対して偏心しているため、貫通孔の一部が閉鎖され、貫通孔の開口面積が絞られて圧油の流れの流量を減少する。従って、特許文献2に開示された技術は正逆方向に流れる圧油の流量を1つの油量調整弁によって異なる流量に調整することができる。
実開平2−137588号公報 実開昭57−48367号公報
特許文献1に開示された技術は、高速回転時に流量が増大した吸入ガスの圧力によってリード弁が回動し、弁部が吸入ポート又は流入口の一部を閉鎖して吸入ガスの通路を絞る構成である。また、低速回転時にはリード弁が開いて吸入ガスの通過流量を増加するように作用する。しかし、リード弁が開いた時、吸入ガスは弁部の周囲を回り込んで吸入ポート又は流入口を通過しなければならないため、弁部が抵抗となり充分な流量を確保することができないという問題がある。
また、前記した理由から、高速回転時に吸入ガスの流量を充分に絞ろうとすれば、低速回転時における吸入ガスの通路が狭まり、逆に低速回転時における吸入ガスの通路を広げようとすれば、高速回転時における吸入ガスの通路を充分に絞れないと言う矛盾した現象が生じやすく、吸入ガスの流量調整が難しい。従って、特許文献1に開示された技術では、低速回転時から高速回転時の全ての領域における適切な吸入ガス量の確保が困難である。
特許文献2に開示された技術は、圧油通路に対し偏心させた貫通孔を備える筒状の弁体により圧油の流れを絞る構成である。しかし、弁体による絞り効果は圧油通路を正逆方向に流れる圧油の内、一方の流れの場合にのみ生じ、しかも一方の流れに対しては常に同一の絞り効果を生じさせる構成である。また、絞り効果を解消するためには圧油の流れを反転させて他方向に変更しなければならない。従って、特許文献2に開示された技術では、低速回転領域から高速回転領域に亘って一方向に流れる冷媒ガスの流量調整を必要とする回転式圧縮機に適用することは困難である。
本願発明は、回転式圧縮機の圧縮室に吸入される冷媒ガスの流量を低速回転領域と高速回転領域とで適切に制御できるようにすることを目的とする。
請求項1に記載の本願発明は、吸入ポートと吸入通路と吸入室を含む冷媒ガスの吸入部、前記冷媒ガスの圧縮機構を含む圧縮部及び吐出ポートと吐出通路と吐出室を含む冷媒ガスの吐出部を備えた回転式圧縮機において、前記吸入部に弁座及び前記弁座に対して接近及び離間可能な弁体からなる絞り弁を配設し、前記弁座及び弁体にそれぞれ前記冷媒ガスの流通方向に貫通する貫通孔を形成し、前記弁座及び前記弁体の双方の貫通孔の中心軸線を前記吸入通路の中心軸線からそれぞれ異なる位置に偏心して配設し、前記弁体を前記弁座から離間する方向に付勢するとともに前記冷媒ガスの流量増加により前記弁座に接近させることを特徴とする。
請求項1記載の本願発明によれば、低速回転領域では弁体が弁座から離間するとともに弁体の貫通孔の存在により冷媒ガスの流動抵抗が少なく、冷媒ガスが充分な吸入量となるように調整される。一方、高速回転領域では弁体が弁座に当接することにより貫通孔の開口面積が絞られ、冷媒ガスが適切な吸入量に調節される。この結果、低速回転領域から高速回転領域に至る全回転領域において最適な冷房能力を得ることができる。
また、高速回転領域における弁体の貫通孔の開口面積を最も効率良く絞ることができ、冷媒ガスの吸入量の調整が容易である。
請求項に記載の本願発明は、前記弁座及び前記弁体を備えた絞り弁をユニット化したことを特徴とするため、回転式圧縮機へ絞り弁を取り付ける作業が容易となる。また、既存の圧縮機へも容易に装着することができる。
請求項に記載の本願発明は、前記弁座は前記吸入部と別体で形成され、前記吸入部に装着されることを特徴とするため、弁座及び弁体の貫通孔の形成位置が自由となり、貫通孔の絞り量の設定が容易となる。
請求項に記載の本願発明は、前記弁体を板状のスプールと前記スプールを付勢するコイルばねによって構成したことを特徴とするため、貫通孔の形成が容易となり、絞り弁を最も簡単に構成することができる。また、絞り弁を小型化することができ、回転式圧縮機へ容易に搭載することができる。
請求項に記載の本願発明は、前記スプールの外周面に前記吸入部の内周面に形成した案内溝と嵌合する突起を形成したことを特徴とするため、簡単な構成でスプールの摺動案内と回り止めを行うことができる。
請求項に記載の本願発明は、前記弁体を弾性体からなるリード弁によって構成し、前記弁座を前記リード弁が当接する剛体の弁座によって形成したことを特徴とするため、既知のリード弁に貫通孔を形成すれば足りるため、絞り弁を容易に得ることができる。
請求項に記載の本願発明は、前記弁座及び弁体弁体の通孔を真円によって形成したことを特徴とするため、弁体の貫通孔の絞り量を最も大きくすることができる。
請求項に記載の本願発明は、前記弁座及び弁体弁体の通孔を楕円によって形成したことを特徴とするため、低速回転領域において冷媒ガスが通過する貫通孔の開口面積を大きく取ることができる。
本願発明は、回転式圧縮機において、低速回転領域では冷媒ガスの充分な吸入量を確保して適切な冷房能力を発揮し、高速回転領域では冷媒ガスの吸入量を減少して過剰な冷房能力の発生を防止することができる。
(第1の実施形態)
図1〜図3に示した第1の実施形態は以下のように構成される。図1に示すように、ベーン式圧縮機のハウジング1は図の左方に位置するフロントハウジング2に図の右方に位置する有底筒状のリヤハウジング3が接合された状態で一体に形成されている。リヤハウジング3のフロント側内部には楕円筒状の内周面4を有するシリンダブロック5が収容され、その前後両端面にはフロントサイドプレート6及びリヤサイドプレート7が嵌合し、固定されている。フロントサイドプレート6及びリヤサイドプレート7には回転軸8がラジアルベアリング9を介して支持されている。
回転軸8にはシリンダブロック5内に位置するようにロータ10が嵌合し、固定されている。このロータ10には複数箇所に放射状にベーン溝11が形成され、各ベーン溝11にはベーン12が出没可能に収容されている。シリンダブロック5の内周面4とロータ10の外周面との間に形成された三日月状の空間は、前記ベーン12により複数の作動室13に区画形成されている。なお、図示されていないが、作動室13を形成する三日月状の空間は回転軸8に対して対象となる位置に2箇所形成されている。ロータ10、ベーン溝11及びベーン12は本願発明における冷媒ガスの圧縮機構を構成する。また、前記圧縮機構に作動室13を含めて本願発明の圧縮部を構成する。
ロータ10が回転すると、ベーン12の先端面が遠心力によりシリンダブロック5の内周面4に接触する。ロータ10の回転方向に関して作動室13が容積を拡大する行程が吸入行程となり、減少する行程が圧縮行程となる。前記吸入行程中の作動室13はシリンダブロック5に設けた吸入通路14及び吸入通路14に連通するフロントサイドプレート6に設けた吸入通路15を通してフロントハウジング2内の吸入室16と連通されている。吸入室16は図示しない外部冷媒回路に接続する吸入ポート17と連通し、冷媒ガスを吸入する。
シリンダブロック5の外周部にはリヤハウジング3及び両サイドプレート6、7とともに吐出室18が区画形成されている。シリンダブロック5には圧縮行程中の作動室13と吐出室18とを連通する複数の吐出口19が形成されている。これらの吐出口19は吐出弁20により開閉可能となっている。なお、吐出弁20はリテーナ21により開放位置が規制される。
リヤサイドプレート7には回転軸8の方向に貫通した小径の絞り通路22が形成され、吐出室18に連通している。また、リヤサイドプレート7のリヤ側の側面には、溝加工された吐出通路23が形成されている。吐出通路23は一端が絞り通路22に連通するとともに他端がリヤサイドプレート7とリヤハウジング3との間に形成された貯油室24に連通している。貯油室24はリヤハウジング3に形成した吐出ポート25により外部冷媒開路(図示せず)と連通している。
貯油室24内の上部には、吐出通路23から供給される冷媒ガス中のミスト状の潤滑油を分離するために油分離器26が設けられている。油分離器26を構成するケース27はリヤサイドプレート7に対し回転軸8のリヤ側端部及び吐出通路23を覆うように固定されている。ケース27は有底円筒状の油分離室28とその上部に嵌合固定された円筒状の油分離筒29とを備え、油分離室28の底面に貯油室24と連通する油通路30を有する。また、ケース27には回転軸8の方向に貫通する通路31が形成されている。通路31は、一端が吐出通路23の下方側出口32に連通し、他端が油分離筒29の外周面に指向されている。吐出室18、吐出口19、絞り通路22、吐出通路23、吐出ポート25及び通路31は本願発明の吐出部を構成する。
なお、ケース27の油通路30の下方部分には、リヤ側から見て屋根型(図示せず)に形成された油の案内板33が軸方向に突出して設けられている。案内板33は油分離室28の油通路30から滴下する油を下方へ案内するとともに貯油室24に貯留された油面を安定化する機能を有する。また、リヤサイドプレート7には油供給通路34が形成され、貯油室24に貯留された油をラジアルベアリング9及びベーン溝11等に導入して潤滑を行う。
一方、吸入ポート17にはユニット化された絞り弁35が配設されている。絞り弁35は図2及び図3に示すように、冷媒ガスの流通する吸入通路37を有する筒状の本体36と吸入通路37に装着された吸入通路37と別体の弁座38及び弁体39を主要部として構成されている。本体36は吸入ポート17にねじ込み、圧入あるいはボルト締め等の適宜手段により固定される。吸入通路37は入口付近の上流側内壁37aが大径に形成され、下流側内壁37bが上流側内壁37aよりも小径に形成されている。下流側内壁37bには、上流側内壁37aと下流側内壁37bとの境界位置から下流側に向けて一定の長さを有するV字状の案内溝40がほぼ180度位相を変えて2箇所に刻設されている。なお、前記吸入通路14、吸入通路15、吸入室16、吸入ポート17及び吸入通路37は本願発明における冷媒ガスの吸入部を構成する。
弁座38は一方側に小径の弁座部41を有し、他方側に大径のフランジ部42を有する板状のスプールで構成されている。弁座38には冷媒ガスの流通方向に貫通する真円の貫通孔43が形成されている。貫通孔43は弁座38を吸入通路37に装着した時、貫通孔43の中心軸線X1が吸入通路37の中心軸線X3に対して一定距離偏心するように設けられている。弁座38は弁座部41を上流側に向けた状態で案内溝40よりも下流側において下流側内壁37bに圧入あるいは接着等の固定手段により装着され、本体36と一体化されている。
弁体39は弁座38とほぼ同様に、小径の弁部44と大径のフランジ部45とを有する板状のスプールで構成されている。弁体39には冷媒ガスの流通方向に貫通して形成された真円の貫通孔46が形成されている。貫通孔46は弁体39を吸入通路37に挿入した時、貫通孔46の中心軸線X2が弁座38の貫通孔43の中心軸線X1と異なる位置において吸入通路37の中心軸線X3に対して一定距離偏心するように設けられている。また、弁体39のフランジ部45の外周には、案内溝40と同一の位相を有するように2箇所に山形の突起47が設けられている。突起47は案内溝40に嵌合し、弁体39の摺動を案内するとともに弁体39の回り止めを行う。
弁体39は弁部44を弁座38の弁座部41に向けて吸入通路37の入口側から挿入し、突起47を案内溝40に嵌合させて弁座38の上流側に摺動可能に配置する。弁座38のフランジ部42と弁体39のフランジ部45との間にコイルスプリング48を介在させることにより、弁体39は弁座38から離間する方向に付勢され、両者の間に一定の距離が保持される。この場合の一定の距離とは、弁座38及び弁体39による絞り作用が生じない距離である。なお、吸入通路37の中心軸線X3に対する貫通孔43の中心軸線X1及び貫通孔46の中心軸線X2の偏心距離はベーン式圧縮機の運転時に必要な絞り量に応じて種々設定することができる。また、貫通孔43、46の開口面積は同一に設定してあるが、必要に応じて異なる面積となるように設定してもよい。異なる開口面積の採用は絞り量を設定するための自由度を高めることができる。
弁座38及び弁体39間の距離を一定に保持するために、ストップリング49が下流側内壁37bに取り付けてある。しかし、コイルスプリング48の付勢力が零の状態における弁座38及び弁体39間の距離を一定距離又はそれに準ずる距離と定めることができれば、ストップリング49は不要である。前記した構成による絞り弁35はユニット化されているため、予め完成されたものをベーン式圧縮機の吸入ポート17に設置するだけで冷媒ガスの吸入量制御装置を構成することができ、取り付けも簡単である。
以上のように構成された第1の実施形態は以下のように作用する。
ベーン式圧縮機の一般的な動作を説明すると、回転軸8がエンジンの動力により回転されるため、ロータ10及びベーン12が回転され、吸入ポート17から吸入室16に流入した冷媒ガスは吸入通路15及び14を介して吸入行程中の作動室13に吸入される。作動室13内の冷媒ガスは、圧縮行程に入った作動室13の容積減少により圧縮される。圧縮された冷媒ガスは吐出口19及び吐出弁20を介して吐出室18に吐出される。
冷媒ガスが吐出室18へ間欠的に吐出されることにより発生する吐出脈動は、吐出された冷媒ガスが絞り通路22を介して吐出通路23に流入することにより抑制される。吐出通路23を流れる冷媒ガスは油分離器26の通路31から油分離筒29の外周面に吹き付けられ、油分離筒29の外周を旋回しながら油分離室28へ導かれる。このため、冷媒ガスから油が分離され、分離された油は油通路30から貯油室24内へ滴下される。油を分離された冷媒ガスは油分離筒29の内部を通して上方へ流れ、貯油室24の上部空間から吐出ポート25に導入される。
ベーン式圧縮機はエンジンの回転数に比例して低速回転領域から高速回転領域の間を変動している。ベーン式圧縮機が低速回転領域で運転される場合、絞り弁35の入口に流入する冷媒ガスは低流量である。このため、図2(a)に示すように、コイルスプリング48の付勢力が冷媒ガスの圧力に勝り、弁体39は突起47が案内溝40に案内されてストップリング49に当接する位置まで摺動し、弁座38から離間する。従って、冷媒ガスは若干蛇行するが、図2(b)に二重斜線で示すように、弁体39の貫通孔46及び弁座38の貫通孔43の開口面積S1全域を通って流れ、吸入室16に吸入される。このため、ベーン式圧縮機は低速回転領域における冷媒ガスの必要な流量を十分確保することができる。
一方、ベーン式圧縮機が高速回転領域で運転される場合、絞り弁35の入口に流入する冷媒ガスは高流量となる。このため、冷媒ガスの圧力がコイルスプリング48の付勢力に打ち勝ち、弁体39は突起47が案内溝40に案内されて弁座38側に接近し、最終的に図3(a)に示すように、弁体39の弁部44が弁座38の弁座部41に当接する。弁座38の貫通孔43及び弁体39の貫通孔46は各中心軸線X1、X2が吸入通路37の中心軸線X3に対して偏心しているため、図3(b)に二重斜線で示すように、絞られた開口面積S2が吸入通路37に連通する。従って、絞り弁35の入口に流入する高流量の冷媒ガスは絞り弁35によって予め設定された低流量に調整されて吸入室16に吸入され、過剰な冷房能力の発生が防止される。
このように、第1の実施形態におけるベーン式圧縮機は低速回転領域から高速回転領域に至る全領域において冷媒ガスの適切な吸入量を確保し、最適な冷房能力を得ることができる。
前記した第1の実施形態は以下の作用効果を有する。
(1)低速回転領域及び高速回転領域における冷媒ガスの吸入量を適切に制御することができるので、全回転領域において最適な冷房能力が得られる。
(2)絞り弁35の弁座38及び弁体39は、吸入通路37の中心軸線X3に対して偏心させた中心軸線を有する貫通孔43、46を備えているため、冷媒ガスの流動抵抗が少なく、効率の良い絞り機能が得られる。
(3)弁座38及び弁体39の貫通孔43、46は吸入通路37に対して共に偏心させた構成であるため、絞り量の設定における自由度を高めることができる。
(4)弁座38及び弁体39は板状のスプールを円形状に形成し、また貫通孔43、46を真円に形成するため、絞り弁35の構成が簡素化され、かつ小型化され、ベーン式圧縮機への搭載性を向上させることができる。
(5)絞り弁35は弁座38、弁体39及びコイルスプリング48を本体36に装着することによってユニット化した構成であるため、ベーン式圧縮機への組み付けが容易である。
(第2の実施形態)
図4及び図5に示す第2の実施形態は、第1の実施形態におけるスプール式の絞り弁35をリード弁式の絞り弁に変更したもので、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
第2の実施形態における絞り弁50は第1の実施形態と同様にベーン式圧縮機の吸入ポート17に設けられている。吸入ポート17は上流の入口側が吸入ポート17の中心軸線X3と同一の中心軸線を有する大径の吸入通路51に形成されている。吸入通路51は吸入ポート17との接続部を段差状に形成され、図の右側部分(図4、図5(a)参照)が高台座部52に形成され、左側部分が低台座部53に形成されている。
高台座部52には、板状の弁座54及び本願発明の弁体に相当するリード弁55の基端側がボルト56によって固定されている。弁座54及びリード弁55は略長方形状(図5(b)参照)に形成され、吸入ポート17を完全に覆うことができる寸法を有している。弁座54は剛体からなり、湾曲状に塑性変形されて先端側が低台座部53上に当接されている。また、弁座54には貫通孔57が形成され、貫通孔57は吸入ポート17及び吸入通路51の中心軸線X3に対して偏心した中心軸線X1を有する。リード弁55は弾性体からなり、図4の実線にて示されるように、変形しなければほぼ平面状態に維持される。従って、リード弁55は通常の状態で弁座54から一定距離だけ離間している。リード弁55には貫通孔58が形成され、貫通孔58は中心軸線X1と異なる位置となるように中心軸線X3から偏心された中心軸線X2を有する。
第2の実施形態におけるリード弁55はベーン式圧縮機の低回転領域において、自身の弾性力により平面状態を維持し、弁座54から離間している。従って、冷媒ガスは貫通孔58及び59の開口面積全域を流通することができるので、充分な流量を吸入室16へ吸入することができる。ベーン圧縮機の高回転領域になると、流量が増加した冷媒ガスの圧力により、リード弁55は図5(a)の実線にて示すように、自身の弾性力に抗して吸入通路51の下流側に撓み、弁座54に近接する。偏心した貫通孔58は偏心した貫通孔57に重なるため、冷媒ガスの通過可能な開口面積S3(図5(b)参照)が大きく絞られ、冷媒ガスの通過流量が抑制される。このように、第2の実施形態は貫通孔58を有するリード弁を用いて絞り弁を構成することによって、簡単な構成によりベーン式圧縮機の全回転領域において適切な冷房能力を得ることができる。また、冷媒ガスは貫通孔57及び58を流通するため、流動抵抗が減少される。
(第3の実施形態)
図6に示す第3の実施形態は、第1の実施形態における貫通孔43、46を変更したもので、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
第3の実施形態の絞り弁59において、本体36の吸入通路37に装着した弁座(図示せず)の貫通孔60及び弁体61の貫通孔62は楕円形状に形成されている。また、貫通孔60及び62はそれらの中心軸線(図示せず)が第1の実施形態と同様に、吸入通路37の中心軸線(図示せず)から偏心する位置となるように配設されている。弁体61の外周2箇所に形成した楔上の突起63は吸入通路37の内壁に形成したV字状の案内溝40に嵌合し、弁体61の摺動を案内するとともに回り止めを行う。
第3の実施形態において、ベーン式圧縮機の高回転領域では、弁体61が弁座(図示せず)に接近して吸入通路37に連通する貫通孔60及び62の開口面積を大きく絞り込み、冷媒ガスの吸入量を抑制することができる。一方、ベーン式圧縮機の低回転領域では弁体61がコイルスプリング(図示せず)の付勢力により弁座(図示せず)から離間し、絞り機能が消失する。貫通孔60及び62は楕円形状に形成されているため、図6に二重斜線で示したように、冷媒ガスの通路となる貫通孔62の開口面積S4(貫通孔60も同様)を真円の場合に比して大きくすることができ、小型化された絞り弁においても冷媒ガスの流量確保が容易になる。
本願発明は、前記した各実施形態の構成に限定されるものではなく本願発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、次のように実施することができる。
(1)第1〜第3の各実施形態では、弁座38、54及び弁体39、55の各貫通孔43、46、57、58、60、62の中心軸線X1、X2を共に吸入ポート17あるいは吸入通路37の中心軸線X3から偏心させた構成として説明したが、本願発明は弁座又は弁体のいずれか一方の貫通孔の中心軸線のみを偏心させた構成としても本願発明の作用効果を得ることができる。
(2)第1〜第3の各実施形態では、吸入部を構成する吸入ポート17あるいは吸入通路から独立した別体構成の弁座38、54が吸入ポート17あるいは吸入通路37に装着される構成であるが、吸入ポート17あるいは吸入通路37の内壁の一部を加工して弁座を構成することが可能である。この場合、弁座に形成される貫通孔は吸入ポート17あるいは吸入通路37を兼用することになるため、弁座の貫通孔の中心軸線は吸入ポート17あるいは吸入通路37の中心軸線と一致し、弁体の貫通孔の中心軸線のみが偏心する。
(3)前記(2)の変更例において弁座の貫通孔を偏心する構成は、例えば吸入通路37を図7のように形成することにより可能である。図7は第1の実施形態の図2(a)に示した絞り弁の構成の一部を変更したものであるため、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。絞り弁64において、本体36の下流側に形成される吸入通路37を本体36の上流側通路の中心軸線X4に対して偏心するように形成し、その中心軸線をX3とする。吸入通路37の上流側壁面に弁座65を形成する。弁座65の位置の通路を吸入通路37よりも小径に形成して弁座65の貫通孔66とするとともに貫通孔66の中心軸線X1を吸入通路37の中心軸線X3から偏心させた構成とする。また、弁体39の貫通孔46の中心軸線X2は貫通孔66の中心軸線X1と異なる位置に吸入通路37の中心軸線X3から偏心させた構成である。このように吸入通路37の一部を加工して弁座65を形成しても、各貫通孔46、66の中心軸線X1、X2を共に吸入通路37の中心軸線X3から偏心させることができる。この変更例においても、弁体39が弁座65に当接した時、冷媒ガスの流通可能な弁体39及び弁座65の開口面積は大きく絞られ、流量を抑制することができる。
(4)前記各実施の形態あるいは変更例によって説明した絞り弁35、50、59、64は、本願発明の吸入部に該当する例えば図1に示した吸入通路14及び15あるいは吸入室16に配設することが可能である。
(5)弁座38、54、65及び弁体39、55、61の各貫通孔43、46、57、58、60、62、66あるいは吸入ポート17及び吸入通路14、15、37、51は真円あるいは楕円に限らず角孔に形成することが可能である。
(6)本願発明は、ベーン式圧縮機に限らず、スクロール式圧縮機、スクリュー式圧縮機あるいはルーツ式圧縮機等の回転式圧縮機において実施することができる。
第1の実施形態を示すベーン式圧縮機の縦断面図である。 図1の絞り弁を拡大表示したもので、(a)は縦断面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。 高回転領域における絞り弁を拡大表示したもので、(a)は縦断面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。 第2の実施形態を示すベーン式圧縮機の縦断面図である。 図4の絞り弁を拡大表示したもので、(a)は縦断面図、(b)は(a)の平面図である。 第3の実施形態を示す絞り弁の横断面図である。 他の変更例を示す絞り弁の縦断面図である。
符号の説明
1 ハウジング
2 フロントハウジング
3 リヤハウジング
8 回転軸
10 ロータ
11 ベーン軸
12 ベーン
13 作動室
14、15、37、51 吸入通路
16 吸入室
17 吸入ポート
18 吐出室
25 吐出ポート
35、50、59、64 絞り弁
38、54、65 弁座
39、61 弁体
40 案内溝
43、46、57、58、60、62、66 貫通孔
47、63 突起
48 コイルスプリング
55 リード弁
S1、S2、S3、S4 開口面積
X1、X2、X3、X4 中心軸線

Claims (8)

  1. 吸入ポートと吸入通路と吸入室を含む冷媒ガスの吸入部、前記冷媒ガスの圧縮機構を含む圧縮部及び吐出ポートと吐出通路と吐出室を含む冷媒ガスの吐出部を備えた回転式圧縮機において、
    前記吸入部に弁座及び前記弁座に対して接近及び離間可能な弁体からなる絞り弁を配設し、前記弁座及び弁体にそれぞれ前記冷媒ガスの流通方向に貫通する貫通孔を形成し、
    前記弁座及び前記弁体の双方の貫通孔の中心軸線を前記吸入通路の中心軸線からそれぞれ異なる位置に偏心して配設し
    記弁体を前記弁座から離間する方向に付勢するとともに前記冷媒ガスの流量増加により前記弁座に接近させることを特徴とする回転式圧縮機における冷媒ガスの吸入量制御装置。
  2. 前記弁座及び前記弁体を備えた前記絞り弁をユニット化したことを特徴とする請求項1に記載の回転式圧縮機における冷媒ガスの吸入量制御装置。
  3. 前記弁座は前記吸入部と別体に形成され、前記吸入部に装着されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転式圧縮機における冷媒ガスの吸入量制御装置。
  4. 前記弁体を板状のスプールと前記スプールを付勢するコイルばねによって構成したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の回転式圧縮機における冷媒ガスの吸入量制御装置。
  5. 前記スプールの外周面に前記吸入部の内周面に形成した案内溝と嵌合する突起を形成したことを特徴する請求項に記載の回転式圧縮機における冷媒ガスの吸入量制御装置。
  6. 前記弁体を弾性体からなるリード弁によって構成し、前記弁座を前記リード弁が当接する剛体の弁座によって形成したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の回転式圧縮機における冷媒ガスの吸入量制御装置。
  7. 前記弁座及び前記弁体の通孔を真円によって形成したことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の回転式圧縮機における冷媒ガスの吸入量制御装置。
  8. 前記弁座及び前記弁体の通孔を楕円によって形成したことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の回転式圧縮機における冷媒ガスの吸入量制御装置。
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