JP5028111B2 - 質量分析装置および分析方法 - Google Patents

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Description

本発明は、試料表面を質量分析する装置に関するものである。詳細には、質量分析によるイメージングを高い空間分解能で実施するための装置および方法に関するものである。
従来、固体表面の物質を構成する原子の質量数や分子の分子量を測定する手法として、二次イオン質量分析(SIMS)法やレーザー脱離イオン化法がある。これらはイオンやレーザーを試料に照射して、その物理的効果や化学的効果により試料の構成原子や分子を表面から脱離させ、一部イオン化したものを質量分析器により測定するものである。その場合、レーザーを集束してもμm程度の大きさを持つため、質量分析で得られる情報の空間分解能は良くても数μmとなる。イオンはさらに細かく集束できるが、通常のSIMS分析では、原子や分子量が数十程度の小さな分子はそのままイオン化され、検出が容易であるが、分子量が数百以上の高分子では親イオンの検出が困難であった。
一方、近年のゲノム(genome)解析の進展により、生体内に存在する遺伝子産物であるタンパク質の解析の重要性が急速にクローズアップされてきている。中でも、組織切片におけるタンパク質解析の重要性が指摘されている。例えば、癌組織切片から再発や転移に関わるタンパク質を明らかにするといった試みが数多くなされている。これらの解析手法においてよく知られている一例として、(1)生体組織や細胞からのタンパク質の抽出、(2)タンパク質の分離、(3)タンパク質又はタンパク質分解物などポリペプチドの分析、(4)得られた分析結果の同定、といった手順の解析方法がある。
その中で、生体組織切片におけるタンパク質の二次元分布の可視化を目的とした、TOF−SIMS法(飛行時間型二次イオン質量分析法)をベースとする情報取得手法及び装置が、国際公開第2005/003715号パンフレットに開示されている。この手法は、インクジェット法などを用い、イオン化促進物質かつ/または消化酵素を上記の生体組織切片に直接付与し、タンパク質の種類に関する情報を、その位置情報を保持したままTOF−SIMS法により可視化するというものである。しかし、ここでは数十μmの細胞間の位置情報は取得できるが、細胞内の位置情報を得ることは困難である。
特開2004−191262号公報には、分子を数十nmの空間分解能で質量分析を行うために、探針の先端にマトリックス剤を塗布したものを試料表面近傍に近づけ、レーザー照射により分子を脱離イオン化し、質量分析を行う装置が開示されている。
一方、Analytical Chemistry 74(2002)4955−4968 “Organic secondary ion mass spectrometry : sensitivity enhancement by gold deposition.”には、金蒸着によって飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)の分子のイオン化効率を向上させる技術が紹介されている。これは、検出したい分子が金に接することによって、効率良くイオン化されることを示したものである。
国際公開第2005/003715号パンフレット 特開2004−191262号公報 Analytical Chemistry 74(2002)4955−4968
上述したように、これまで走査型プローブ顕微鏡の探針を用いて、質量分析の空間分解能の向上が試みられてきた。特に、生体分子のような分子量の高い分子を検出する手法が望まれている。前記特許文献2では、検出手段としてマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)を使用しており、マトリックス剤を先端に塗布された探針によって数十nm範囲にある高分子量の分子が検出できる。しかし、マトリックス剤の探針への塗布方法は煩雑であり、探針に塗布できるマトリックス量は限定される、もしくは塗布量の加減による探針先端径の調製が困難である。また、分子を検出するのに必要なマトリックス剤がレーザーを照射したときに瞬時に昇華してしまう可能性がある。以上のことから、所望面積の分析を終了できない可能性が高く、イメージングは困難である。以上のように、数十nmの空間分解能で高分子量の分子の存在をイメージングするには、装置の調整条件、および安定性で問題点があった。
よって、本発明の目的は、数十nmの空間分解能で高分子量の分子を安定的に検出することのできる質量分析方法および質量分析装置を提供することにある。
本発明に係る質量分析装置は、試料にパルスイオンビームを照射して生じる二次イオンの質量を検出する質量分析装置において、
金属コート探針と、
試料を保持する試料保持機構と、
パルスイオンビームを照射するイオン照射機構と、
前記金属コート探針を前記試料保持機構に保持される試料に対して相対的に移動させる移動機構と、
前記イオン照射機構により照射されるパルスイオンビームと前記金属コート探針とが同時に試料表面を走査するように制御する探針−イオン走査制御機構と、を備え、
前記移動機構は、少なくとも測定位置において前記金属コート探針が前記試料表面に接触するように前記金属コート探針を前記試料表面に対して走査させることができ、
前記探針−イオン走査制御機構は、前記測定位置で前記金属コート探針が前記試料表面に接触した際に、前記イオン照射機構が該接触点付近にパルスイオンビームを照射しているように制御できること、を特徴とする質量分析装置である。
本発明に係る質量分析方法は、保持された試料の表面に、金属コート探針を接触させ、該接触点付近にパルスイオンビームを照射することによって試料から生じる二次イオンの質量を検出すること、を特徴とする質量分析方法である。
本発明にかかる質量分析装置によれば、金属コート探針を試料表面近傍に接触させ、同時に接触点付近にパルスイオンビームを照射することにより、探針が接触した部分のみの試料のイオン化効率を向上させることができる。これにより、強調された接触部分のイオンでイメージングすることができ、高い空間分解能でのSIMS分析が可能となる。
上記で用いる探針の金属コート方法は確立されており、マトリックス剤と比較すると、コート厚さの調製(数十nm〜数百nm)が容易に可能である。さらに、求める空間分解能がオーバースペックの場合には、金属コート量を厚く調製することも容易であり、探針の持久性を向上させることができる。
また、金属コート探針として金コート探針を用いることで、SIMSのイオン化効率を大幅に高くすることができる。
さらには、金属コート探針の内部に探針先端が柱状構造物を含むことで、所望の空間分解能を維持することが可能となる。
以上のように、安定した所望の空間分解能でSIMS分析を実施できることが、本発明の特徴である。
(装置の構成)
図1は、本発明の質量分析装置の構成図を示す。本発明の質量分析装置は、パルス化した一次イオンを試料表面に照射して、試料から生じる二次イオンの質量を検出する質量分析装置である。よって、一次イオンを試料に照射して二次イオンを発生させるためのイオン化部と、試料から生じる二次イオンの質量分析を行う質量分析部とを有する。本発明の質量分析装置は、イオン化部として以下の構成要素を少なくとも有する。
(i)金属コート探針。
(ii)試料を保持する試料保持機構。
(iii)パルスイオンビームを照射するイオン照射機構。
(iv)金属コート探針を試料保持機構に保持される試料に対して相対的に移動させる移動機構。
(v)イオン照射機構により照射されるパルスイオンビームと金属コート探針とが同時に試料表面を走査するように制御する探針−イオン走査制御機構。
質量分析部としては既存の二次イオン質量分析装置(SIMS)の構成を用いることができる。
移動機構は、試料表面の面方向であるXY方向において金属コート探針を試料に対して相対的に走査させる機構と、試料表面の面方向に直交するZ方向において金属コート探針を試料に対して相対的に移動させる機構とを有する。XY方向の移動機構としては、金属コート探針の位置を固定して設置し、試料保持機構をXY方向に移動させる構成であってもよいし、試料保持機構の位置を固定して設置し、金属コート探針をXY方向に移動させる構成であってもよい。あるいは、金属コート探針および試料保持機構がともにXY方向に移動することができ、双方の移動が調整されて制御されるような構成とすることもできる。Z方向の移動機構は、金属コート探針および試料保持機構の少なくとも一方が移動可能に設置されていればよい。また、移動機構は、XY方向の移動とZ方向の移動とを調整して制御する回路を有し、試料表面の所定位置で探針が試料表面に接触するように制御することができる。よって、移動機構によって本発明の装置は探針を試料表面に対して走査させながら、測定部位に到達したときに探針が試料表面に接触するように動作させることができる。移動機構としては、以下で述べるとおり、原子間力顕微鏡(AFM)の走査機構を好適に利用することができる。
探針−イオン走査制御機構は、少なくとも金属コート探針が試料表面の測定位置に接触する際に、イオン照射機構が、金属コート探針と試料表面との接触点付近にパルスイオンビームを照射しているように、イオン照射機構により照射されるパルスイオンビームの照準位置の調節や時間的調節を行なう。この機構の構成は、他の機構との関係で適宜設定される。例えば、移動機構が金属コート探針をXY方向に移動させる構成である場合は、移動する金属コート探針と試料表面との接触点付近にパルスイオンビームの照準が合うようにイオン照射機構を金属コート探針と同時に走査するように制御する。移動機構が、試料保持機構のみをXY方向に移動させる場合は、金属コート探針をXY方向において固定して設置することができるので測定中はイオン照射機構の照準位置は移動しなくてもよく、イオン照射の時間的な調節を行なう。試料表面に対して金属コート探針およびパルスイオンビームを同時に走査する方法としては、以下(1)及び(2)の2つの手段を挙げるが、これに限定されない。
(1)図1(a)に記載の装置は、試料が保持されるステージと一次イオンビームを走査する回路を探針−イオン走査制御機構として有しており、それらを同時に走査することによって、試料と探針先端の接触点付近に一次イオンビームが照射される。この場合、探針−イオン走査制御機構は、ステージを位置的に制御することができ、イオン照射を時間的に制御することができるものである。
(2)図1(b)に記載の装置は、金属コート探針と一次イオンビームを走査する回路を探針−イオン走査制御機構として有しており、それらを同時に走査することによって、試料と探針先端の接触点付近に一次イオンビームが照射される。この場合、探針−イオン走査制御機構は、探針を位置的に制御することができ、イオン照射を位置的、かつ、時間的に制御することができるものである。
金属コート探針とSIMS検出計は、ともに試料の上方に備えられるが、装置の目的によって各構成部の配置には配慮されなければならない。図1(a)のように、ステージに対してやや垂直に金属コート探針が配置され、SIMS検出計が金属コート探針に触れないように配置されてもよい。あるいは、二次イオン検出時の質量分解能を高める為には、図1(b)のようにSIMS検出計がステージに対して直立していてもよい。また、金属コート探針とSIMS検出計が、図1(c)のようにお互いを触れないようにした状態で、ともに試料に対して垂直に近い状態とする構成でも良い。以上のような装置構成は、市販の原子間力顕微鏡(AFM)および二次イオン質量分析装置(SIMS)の構成を利用することができる。この場合に、AFMの探針として金属コート探針を用い、AFMの探針の走査機構とSIMSの一次イオン照射機構とが同時に試料表面を走査するための探針−イオン走査制御機構として走査回路を有する構成とすることができる。また、金属コート探針に特別な加工を施し、二次イオンの通路を作製することにより、金属コート探針をステージに対してやや垂直に配置し、その上方にSIMS検出計を配置することもできる。
本発明における検出計は、飛行時間型であることが好ましい。飛行時間型の二次イオン質量分析計では、試料から発生した二次イオンを強電場で加速して分析管に導く。分析管を通った二次イオンを検出する機構としては、セクター型、リフレクトロン型があるが、いずれであっても良い。
(走査方法)
本発明における金属コート探針、および/或いは、ステージの走査は、既存のAFMの原理によって行われる。AFMは、小さなてこの突起先端、即ち探針と試料表面の間に働く原子間力をてこの変形として測る顕微鏡である。てこの変形を測る一つの方式として、レーザーをてこに照射し、反射した光を光検出器で受け、検出回路からてこにフィードバックすることによって探針の制御を行う光てこ方式がある。この光てこ方式では、例えば、てこに照射するレーザーとしては半導体レーザーなどを用いることができ、反射した光を受ける光検出器としてフォトダイオードを用いることができる。原子間力の測定方法としては、測定条件の違いによる接触型あるいは非接触型が存在するが、本発明においては試料に金属コート探針が接触する接触型であることが好ましい。前記接触型においても、コンタクトモードと間欠接触モードが存在し、どちらのモードにおいても効果は同様に得られるが、柔らかい試料を傷つけないためには、間欠接触モードが好ましい。また、以上のように、通常のAFMの原理によって金属コート探針を走査するため、SIMS分析によるイメージングと同時に、AFM像を取得することも可能である。この場合は、本発明の探針の位置情報に基づいて走査型プローブ顕微鏡としての画像データを出力する画像処理部を備える。
(探針)
本発明の金属コート探針は、既に市販されているものを使用しても良く、金属はいかなる材質でも良いが、好ましくは金である。このことにより、金属コート探針先端を試料に接触させることによって、パルスイオンビームを前記接触点付近に照射したときに、試料表面の分子のイオン化効率が高くなり、SIMS検出計における検出効率が10倍〜10000倍上昇する。その検出効率の効果は高分子量の分子ほど高く得られるため、ソフトなイオン化により高分子量の分子検出が可能である飛行時間型二次イオン質量分析に適している。このような金コート探針は、AFMにおける電流同時測定などの用途として既に市販されている(例えば、SIIナノテクノロジー社製SI−AF01−A、先端径30nm以下)。
金属コート探針の金属コートを除く部分は、先端径が100nm以下のものであれば、いかなるものを使用しても良いが、例えば、市販されているAFMの探針(カンチレバー)が好適である。以下、金属コート探針の金属コートを除く部分を、探針源と称す。
探針源の材質としては、タングステン、シリコン、窒化シリコン、カーボン、ダイヤモンドなど、いかなるものを用いても良い。本発明においては、試料になるべく針圧等の影響を与えることなく質量分析を実施するためには、カンチレバーの材質となりうるものの中でも比較的柔らかい材質であることが好ましい。具体的には、タングステン、シリコン、あるいは窒化シリコンが好ましい。また、これらの材質によるカンチレバーは市販されているが、本発明の装置に金属の蒸着機構、あるいはスパッタ機構を設け、市販のカンチレバーを装置内で蒸着し、二次イオン質量分析のために使用しても良い。
探針源の性質としては、いかなるものでも良いが、上記に示したように試料になるべく針圧等の影響を与えることなく質量分析を実施することが目的であることから、バネ定数がより小さいものが好適である。
探針源の形態としては、いかなるものでも良いが、先端が尖ったもの、あるいは柱状構造物を一部に含む柱状構造物含有物が好ましい。前記の柱状構造物含有物は、本発明においては、特に空間分解能の長時間安定性を保持するのに相応しく、探針先端に柱状構造物が固定されたものが好ましい。具体的には、市販されているカーボンナノチューブ探針(例えば、同社製SI−DF3C)などが好適である。上記と同様の理由で相応しいものとして、先端が尖ったものとしては、例えば市販の探針でも、より尖ったものが好ましい。具体的にはハイアスペクトティップ(例えば、同社製SI−DF40H)、スーパーシャープティップ(例えば、同社製SI−DF20S)などが好適である。
図2に本発明における探針源、及び金属コート探針の模式図を示す。探針源として用いる通常のAFM探針(a)あるいはカーボンナノチューブ探針(d)に各々が金コートされた場合(b,e)、さらに厚くコートされた場合(c,f)の説明図を示す。本発明において、より高い空間分解能を得ようとする場合は、図2bが最も好適に用いられるが、カーボンナノチューブが数nm以下であるものを調製することができれば、その限りではない。一方、空間分解能が十分であり、かつ、長時間安定的に空間分解能を保持したい場合は、図2fが好適に用いられる。
金属コート探針の側面は、試料から発生した二次イオンが付着しないための処理が施されていることが好ましく、次のような電荷的処理が好適に利用できる。SIMS検出がポジティブモードであれば、正電荷を有する試薬でコートされていることが好ましく、検出されるはずのイオンが金属コート探針に吸着する恐れを低減できる。例えば、アミノヘキサンチオール溶液に金コート探針を浸漬することにより、金コート探針の周囲に正電荷を有する自己組織膜が作製される。その際、先端にも同様にアミノヘキサンチオールが吸着するが、分析時に試運転などによって除かれるため何ら問題はない。同じく、SIMS検出がネガティブモードであれば、負電荷を有する試薬でコートされることが好ましく、例えば、カルボキシヘキサンチオールなどの試薬を使用することによって、上記と同様の効果が得られる。
また、本装置が上記のような金属コート探針を複数有する構成であってもよく、その場合、試料の略同じ領域に接触させる構造となっていても良いし、各々の金属コート探針が試料の全く別の領域に接触していても良い。また、分析時に使用していない金属コート探針を予備的に装置内に保管するための予備探針保管部を備えていても良い。
(パルスイオンビーム)
金属コート探針の先端をステージ上の試料表面に接触させると同時に、一次イオンであるパルスイオンビームを接触点付近に照射すると、試料表面に存在する分子に金属が接触し、分子のイオン化が促進されるのは、以上に述べたとおりである。
本発明における一次イオンとしては、Ga+などの一般的な液体金属イオンの他、C60、Au3 +やBi3 +などのクラスターイオンを用いることもできる。特にC60クラスターイオン銃は高分子検出に用いられるが、通常のSIMS装置では、空間分解能が数十μmであるため、本発明によれば、2〜3桁高い空間分解能が得られる。その他のイオン銃を使用した場合においても、1〜2桁高い空間分解能が得られる。
その際、パルスイオンビームを照射する位置は、金属コート探針と試料の接触点、あるいは前記接触点から数十nmの範囲内であることが好ましい。さらに前記接触点から数十nmの範囲内にある金属コート探針側面に照射することが、試料の破壊を防ぐことができるため、さらに好ましい。
さらに、前記パルスイオンビームは、ピコ秒からナノ秒のパルス幅を有することが好ましく、この範囲のパルス幅を有することによって分子量検出時のピーク分解能を高めることができる。ピコ秒からナノ秒のパルス幅とは、ピコオーダーの秒(10-12以上10-9秒以下)あるいはナノオーダーの秒(10-9以上10-6秒以下)の範囲のパルス幅である。
以上のように、一次イオンビームの照射によって飛翔した二次イオンは、試料上方に備えられた検出計に入り検出される。金属のイオン増感効果は、分子量数十〜200程度の原子や低分子よりも、数百以上の分子量を持つ分子を検出するときに、より高い効果を示すため、ソフトなイオン化により高分子量の分子検出が可能であるTOF−SIMSに適している。上記の質量の検出方法は、いかなる方法でも良いが、上記の理由から、飛行時間型であることが好ましい。
本発明の構成で用いるパルスイオンビームの条件として、一次イオンビームのエネルギーは、12keV〜25keVの範囲に選択することが好ましい。一次イオンビームのパルス幅は0.5nsから10nsの範囲であることが望ましい。パルス周波数は1kHzから50kHzの範囲であることが望ましい。一次イオンビーム径は、0.1μmから10μmの範囲で選択することが好ましい。試料表面に対するイオンビーム照射角は45°から90°が好ましい。試料表面からイオンビーム照射口までの距離は5mmから50mmであることが好ましい。
(試料)
本発明の試料は、いかなるものでも良いが、上記したように検出器をTOF−SIMSとするときにより高い効果を得られることから、合成高分子、生体分子などTOF−SIMSによって好適に分析することができる試料が好ましい。具体的には、ポリマー、核酸、タンパク質、ペプチド、代謝物質、脂質などが挙げられる。また、これらを含む生体組織や細胞なども好適に用いることができる。
生体組織や細胞レベルの大きさの試料について質量分析を行う場合、サブミクロンレベルの空間分解能での質量分析イメージングが可能となるため、検出されたイオンがどの細胞由来のものであるかが容易に判別することができる。その際、必要に応じ、本発明者らが開示した国際公開第2005/003715号パンフレットに記載のイオン化促進物質(イオン増感物質)を付与してもよい。
(実施例1)
<金属コート探針使用による空間分解能とイオン増感効果の検証>
AngiotensinI(NewEnglandBiolabs社製、分子量1295.69)を100ng/μLに調製した水溶液を用意する。この水溶液10μLをシリコンウエハ上に滴下し、スピンコート(3000rpm、60sec)後、室温にて乾燥させ、質量分析イメージング用の試料とする。図1(b)で示される装置のステージ上に、前記試料を固定し、TOF−SIMS分析を行う。一次イオンビームは、試料表面からの角度45°、距離10mmの付近から照射する。検出計には、リフレクトロン飛行時間型質量分析計を用いる。測定条件を以下に要約する。
一次イオン:25kV Ga+、0.6pA(パルス電流値)、ランダムスキャンモード
一次イオンのパルス周波数:2.5kHz(400μs/shot)
一次イオンパルス幅:約10psec
測定領域:250nm×250nm
二次イオン像のpixel数:128×128
積算回数:256
その際、図3に示される前記試料250nm四方における4つの指定箇所A〜Dの表面を、10psecのパルス幅を有する一次イオンビームが走査するときのみ、金属コート探針を同箇所に接触させる。そして、E点など指定箇所以外の場所を走査するときは、金属コート探針を接触させないようにする。なお、金属コート探針としては、SIIナノテクノロジー社製SI−AF01−A(先端径30nm以下)を用いる。
以上の実験の結果、図4のようなTOF−SIMSスペクトルが得られる。図4(a)は、図3における指定箇所Aのスペクトル、図4(b)は図3におけるEのスペクトルを示す。図4の(a)と(b)のAngiotensinIの親イオンにあたる分子量1295.69、およびその同位体について比較すると、A点では、ピーク強度ではE点の約10倍、ピーク面積ではE点の約1000倍の感度で検出されていることがわかる。また、図5に、TOF−SIMSによる分子量1295.69のイメージングプロファイルを示す。金属コート探針が接触した箇所(図3中A〜D)の各周辺の数十nmがAngiotensinIの親イオンを強く検出していることから、イオン増感効果が得られていることがわかる。以上のことから、本発明の質量分析装置を使用することで、数十nmの空間分解能でSIMS分析を実施することが可能であると言える。
本発明における質量分析装置の構成の例を示す図である。 本発明における質量分析装置の構成の例を示す図である。 本発明における探針の例を説明した図である。 実施例1における試料上の測定部分を表す図である。 図3における(a)A、および(b)EのTOF−SIMSスペクトルの結果に関する概念図を示す。 実施例1における本発明の質量分析装置を用いたTOF−SIMSイメージング結果に関する概念図を示す。
符号の説明
10 金属コート探針
12 試料
14 ステージ
16 一次イオンビーム源
18 走査回路
20 SIMS検出計
22 レーザー
24 てこ
26 光検出器
28 検出回路

Claims (9)

  1. 試料にパルスイオンビームを照射して生じる二次イオンの質量を検出する質量分析装置において、
    金属コート探針と、
    試料を保持する試料保持機構と、
    パルスイオンビームを照射するイオン照射機構と、
    前記金属コート探針を前記試料保持機構に保持される試料に対して相対的に移動させる移動機構と、
    前記イオン照射機構により照射されるパルスイオンビームと前記金属コート探針とが同時に試料表面を走査するように制御する探針−イオン走査制御機構と、を備え、
    前記移動機構は、少なくとも測定位置において前記金属コート探針が前記試料表面に接触するように前記金属コート探針を前記試料表面に対して走査させることができ、
    前記探針−イオン走査制御機構は、前記測定位置で前記金属コート探針が前記試料表面に接触した際に、前記イオン照射機構が該接触点付近にパルスイオンビームを照射しているように制御できること、を特徴とする質量分析装置。
  2. 前記金属コート探針が、金コート探針であること、を特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
  3. 前記金属コート探針の内部に、柱状構造物を含むこと、を特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の質量分析装置。
  4. 前記柱状構造物が、カーボンナノチューブであること、を特徴とする請求項3に記載の質量分析装置。
  5. 前記金属コート探針の側面に、電荷的処理がなされていること、を特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の質量分析装置。
  6. 前記質量の検出が、飛行時間型計測によるものであること、を特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の質量分析装置。
  7. 前記試料が、ポリマー、核酸、タンパク質、ペプチド、代謝物質、脂質のうちのいずれかを含むこと、を特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の質量分析装置。
  8. 前記パルスイオンビームは、ピコ秒からナノ秒のパルス幅を有すること、を特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の質量分析装置。
  9. 保持された試料の表面に、金属コート探針を接触させ、該接触点付近にパルスイオンビームを照射することによって試料から生じる二次イオンの質量を検出すること、を特徴とする質量分析方法。
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