JP5021293B2 - 作物の生育状況分析方法、作物の生育状況分析装置及び作物の生育状況分析プログラム - Google Patents

作物の生育状況分析方法、作物の生育状況分析装置及び作物の生育状況分析プログラム Download PDF

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Description

本発明は、作物の生育状況分析方法に関し、リモートセンシングを利用したスペクトル画像より米粒の玄米蛋白含有率を推定して食味を診断するのに好適な作物の生育状況分析方法、作物の生育状況分析装置及び作物の生育状況分析プログラムに係わる。
作物の一例として米を例に説明する。従来、米の食味は水稲の生育状況を分析することでおおよそ判断することができる。米の食味を決定する主な要因として、米粒に含まれるアミロースと蛋白質が確認されており、これらはいずれも食味と負の相関がある。具体的には、アミロース含有率が高いほど粘りが少なく、また蛋白含有率が高いほど食感が悪くなる。アミロース含有率は主に品種と登熟期の気温によって決まることから、栽培管理による制御の余地は少ないとされる。一方、蛋白含有率は水稲の生育段階後期の窒素濃度を反映しているため、施肥や土壌管理による制御が可能である。そのため、美味しいお米作りのために、米粒蛋白含有率を測定・制御しようとする取り組みが各地で実施されている。
米粒蛋白含有率を測定する手法の一つに、SPAD測定器(葉緑素計)による地上調査がある。水稲成熟期の子葉(穂直下葉)のクロロフィル含量、葉身窒素濃度と米粒蛋白含有率との間には高い正の相関があり、上記葉緑素計による蛋白含有率の推定には、この原理が利用されている。
しかし、葉緑素計を用いた調査では、収穫前の稲の葉を一枚ずつ測定するので作業効率が良いとはいえない。また、圃場を広範囲に計測することは時間的及びコスト的に難しいため、面的な把握ができない。このように、葉緑素計は、圃場内の代表的な地点において計測を行なうために圃場内の斑の把握はできず、例えば収穫時に確認される部分倒伏などを把握することができない場合があった。
そこで、近年では、リモートセンシング(遠隔探査)技術により圃場を広範囲に測定して作物の生育状況を把握するようにしている。リモートセンシングは、図7に示すように、センサを搭載した航空機101や人工衛星102から圃場などの対象物103を撮影し、その対象物103の電磁波の反射、放射等を観測することにより、離れた所から直接作物に触れずに対象物を同定あるいは計測し、また、その特性を分析する技術である。
例えば下記非特許文献1においては、米の米粒蛋白含有率を、水稲成熟期のSPOT/HRVデータを用いて推定する方法が提案されている。すなわち、SPOT衛星に搭載されたセンサにより、図8に示す4波長域(バンド)のマルチスペクトル観測を行って得られるマルチスペクトルデータから、赤色域波長と近赤外域波長におけるデータを使用して正規化植生指数NDVI(Normalized Difference Vegetation Index)を求め、NDVIから米粒蛋白含有率を推定する。図9は、異なる2地点における4バンドのマルチスペクトル特性の一例を示すものである。
このように、通常、リモートセンシングでは、可視・近赤外領域における2つの波長域(赤色域波長、近赤外域波長)のデータを利用して観測を行っている。これは、前記2つの波長域における植物の活性度と蛋白含有率との間に相関が確認されていることによる。
しかし、従来のリモートセンシングによるマルチスペクトル観測は、数バンドによる観測であるために情報量が少なく、正確なスペクトル特性を把握することができないという問題があった。リモートセンシングでは、一般に可視青色域から近赤外域までを4〜6バンドで観測し、これらのバンドから得られるマルチスペクトルデータの解析を行う。植物は光合成活動を行なうので、可視域において光の吸収を行なう。しかし、マルチスペクトル観測では、個々のバンド幅が広いために情報が丸め込まれ、詳細な観測値の差異を把握することができない(図9参照)。
そこで、上記所定観測波長範囲を数十の波長域により観測することが試みられている。以下、このような多数の波長域を用いた観測を可能にするスペクトルセンサを、ハイパースペクトルセンサという。図10に、ハイパースペクトルバンド例の模式図を示す。米の蛋白含有率は、航空機ハイパースペクトル観測画像を利用することで高精度に推定することが可能である。図11は、任意の2地点におけるハイパースペクトル画像から得られたスペクトル特性の一例を示す。図11の横軸は観測波長を、縦軸は撮影対象からの放射輝度(スペクトル放射輝度)を表している。このスペクトル特性によれば、近赤外域において数箇所で大気成分の吸収が生じていることが詳細に確認できる。また、個々の観測波長域が狭いので、図9と比較して可視域でのピーク付近等、スペクトル特性を正確に把握することができる。
安積大治・志賀宏行,「水稲成熟期のSPOT/HRVデータによる米粒蛋白含有率の推定」,日本リモートセンシング学会誌,2003,Vol.23,No.5,p.451−457
ところで、ハイパースペクトル画像は、10以上の波長の観測値が得られるため、重回帰分析等を用いた推定モデル式の構築にあたっては、有意な説明変数の選択が必要である。一般に、多変量解析を行う場合は、多重共線性に留意しなければならない。
多重共線性とは、重回帰分析(増減法)において、独立ではない、すなわち相関の高い複数の変数を説明変数として加えた場合、推定精度が過剰に上昇する現象であり、ハイパースペクトル画像では、近隣の波長(例えば、いずれも近赤外領域であり、隣接する2つの波長等)を説明変数に含む場合に起こる現象である。
通常の多変量解析で用いられる重回帰分析により変数選択を行った場合、以下の(1)式に示すような変数が選択される(例として、平成17年度X県調査結果を利用)。図12は、そのときの分析結果に基づく精度評価図を示したものである。図12において、横軸は、坪刈分析結果に基づく米粒の玄米蛋白含有率(%)、縦軸は、航空機推定結果に基づく米粒の玄米蛋白含有率(%)を示す。この精度評価図からも確認できるように、坪刈分析結果に基づく玄米蛋白含有率と航空機推定結果に基づく玄米蛋白含有率には、高い正の相関関係が存在している。

平成17年度X県 蛋白含有率(%)
=0.037×Band52-0.027×Band39−0.025×Band56+0.007×Band66・・・・(1)
[標準誤差±0.17%、決定係数0.84]
しかしながら、説明変数として採用された近赤外域波長のBand52とBand56の間には、下記(2)式に示すように、非常に高い相関関係が確認され、多重共線性の問題が残る。つまり、互いに独立でないBand52とBand56を蛋白含有率の説明変数として採用することで、過剰な精度向上が起きていると考えられる。

Band56=0.93×Band52−1.9617・・・・(2)
[決定係数0.98]
図13は、Band52とBand56の相関関係の一例を示すものであり、横軸にBand52の観測値(放射輝度×100)、縦軸にBand56の観測値(放射輝度×100)をプロットしたグラフである。このグラフから見て取れるように、プロット点がほぼ一つの直線上にあり、2つのバンドには高い正の相関関係が存在している。
このような、説明変数の選択内容に応じて生じる多重共線性は、米粒の蛋白含有率の精度評価に影響するため、解決すべき問題である。
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、水稲などの作物の詳細なスペクトルデータから、多重共線性の影響を排除して作物の生育状況の分析を真に精度よく行えるようにすることを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、所定観測波長範囲を少なくとも数十の波長域により観測可能なスペクトルセンサを用いて、撮影対象地域のスペクトル画像を取得し、そのスペクトル画像から反射スペクトル情報を生成する。次に、撮影対象地域の作物の生育状況に関連した物理量を目的変数とし、反射スペクトル情報を説明変数とする単回帰分析により、相関の高い波長域を抽出する。同様に、上記単回帰分析により、レッドエッジ内の相関の低い波長域を抽出する。そして、相関の高い波長域の反射スペクトル情報と、レッドエッジ内の相関の低い波長域の反射スペクトル情報とを用い、撮影対象地域の作物の生育状況に関連した物理量を推定するための回帰式を構築する。この回帰式を用いて撮影対象地域の作物の生育状況に関連した物理量を推定する。
上記構成によれば、スペクトルセンサから作物の詳細な反射スペクトル情報を取得し、そのスペクトル情報から蛋白含有率と相関の低いレッドエッジ内の一波長と、蛋白含有率と相関の高い波長を説明変数として特定することにより、多重共線性の影響を排除した回帰分析を行うことができる。
本発明によれば、詳細なスペクトル情報から適切な波長域を特定して多重共線性の影響を排除した回帰分析が行えるようになるので、適正な精度評価、又は妥当性の高い推定モデル式(回帰式)を構築できる。それにより、水稲などの作物の生育状況を正確に分析することができる。
以下、本発明の一実施の形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。
リモートセンシングで用いられるスペクトルセンサには、太陽光104(図7参照)を受けた地表からの反射や散乱、地表の放射を計測する受動型センサと、スペクトルセンサからある波長の電磁波を出し、それに対する地表からの反射や散乱を計測する能動型センサがある。
受動型センサを利用したリモートセンシングは、植物が太陽光のうち可視域を吸収し、近赤外域の光を反射するという特徴を利用している。一般に、植物の光合成活動が活発な場合は可視域における光の吸収が大きく、植物の密度が高い場合は近赤外域における光の反射が大きいとされている。
本例では、航空機に受動型センサ(以下、単に「センサ」と呼ぶ。)を搭載してリモートセンシングを行う。撮影に用いる受動型センサとして、測定対象物のスペクトル特性を高い空間・波長分解能で計測することができる分光イメージセンサを用いる。例えば、AISA(Specium社製)では、従来の数バンドによるマルチスペクトル計測に対し、68バンドという多バンドによるハイパースペクトル計測が可能である。このAISAを航空機に搭載し、撮影対象圃場の上空を飛行して撮影を行う。撮影に航空機を利用した場合、人工衛星のように雲に遮られる等といった天候の影響を受けることなく、また人工衛星の周回軌道による撮影場所や時間の制約を最小限に抑え、良好なデータの取得が可能である。
本例で使用するAISAのスペックは、計測波長域400nm〜1000nm、バンド数68、スペクトルサンプリング2.04nm〜2.3nm、及び地上解像度1.5mである。AISAは、可視域から近赤外域の波長400nm〜1000nmの範囲を68バンドで観測する(図10参照)。AISAのようなハイパースペクトルセンサは、従来の衛星画像に代表されるマルチスペクトルデータと比較し、高い波長分解能にて放射輝度の観測を行うことができる。
なお、ハイパースペクトルの分光イメージセンサとしてAISAを用いた例について述べたが、少なくとも数十バンド以上の狭い波長域でスペクトル計測が可能な分光イメージセンサであればよい。
上記のセンサで収集されたデータは、地上の管理センタ等に設置された作物の生育状況分析装置に入力され、所定の分析処理が行われる。図1に、作物の生育状況分析装置の構成例を示す。作物の生育状況分析装置1は、入力部2、スペクトル情報生成部3、データベース4、波長域抽出部5、生育状況推定部6、出力部7から構成されている。作物の生育状況分析装置1は、例えばパーソナルコンピュータ等、コンピュータから構成される。
図1において、センサで観測された撮影対象地域のスペクトル画像データは、まず入力部2に入力される。入力部2は、例えば入力インタフェースとして機能するものである。上記センサで観測された撮影対象地域のスペクトル画像データが記録された記録媒体が当該装置に装着されると、そのスペクトル画像データは入力部2を介してスペクトル情報生成部3へ送出される。なお、上記入力部2へのスペクトル画像データの入力は、例えば無線通信により行ってもよい。
スペクトル情報生成部3は、入力部2から入力されたスペクトル画像データから、反射スペクトル情報としてピクセル毎にスペクトル特性を得る。この反射スペクトル情報は、データベース4へ供給される。
データベース4は、スペクトル情報生成部3で作成された反射スペクトル情報を蓄積するものであり、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)などの記憶手段に格納されている。データベース4は、反射スペクトル情報の他、撮影対象地域における米粒の蛋白含有率(%)など、必要なデータを蓄積している。
波長域抽出部5は、撮影対象地域の作物の生育状況に関連した物理量を目的変数とし、反射スペクトル情報を説明変数とする単回帰分析を行い、相関の高い波長域及びレッドエッジ内の相関の低い波長域を抽出する。そして、相関の高い波長域及びレッドエッジ内の相関の低い波長域の情報を、生育状況推定部6へ供給する。
生育状況推定部6は、波長域抽出部5から供給された相関の高い波長域及びレッドエッジ内の相関の低い波長域に基づいて、データベース4より相関の高い波長域の反射スペクトル情報とレッドエッジ内の相関の低い波長域の反射スペクトル情報を抽出する。そして、相関の高い波長域及びレッドエッジ内の相関の低い波長域の反射スペクトル情報を用いて、撮影対象地域の作物の生育状況に関連した物理量を推定する回帰式を用いて撮影対象地域の作物の生育状況に関連した物理量を推定し、その推定結果を出力部7へ送出する。あるいはデータベース4に保存する。
出力部7は、例えば出力インタフェースとして機能するものであり、推定結果をLCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置へ出力する。または、生育状況推定部6から供給された推定結果を、当該装置に装着された記録媒体に記録したり、無線通信等を介して外部装置へ送信したりできる構成としてもよい。
上述したスペクトル情報生成部3、波長域抽出部5及び生育状況推定部6の機能は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算制御装置がROM(Read Only Memory)に記憶されたプログラムをRAM(Random Access Memory)上に展開し、実行することで実現される。
図2は、上記構成の作物の生育状況分析装置1により行われる、作物の生育状況分析における最適波長の特定処理を示すフローチャートである。このフローチャートについて、図3〜図5を参照して説明する。本発明では、上記ハイパースペクトルセンサより得られたスペクトル特性から、蛋白含有率の推定モデル式構築における最適波長の特定、並びに単回帰分析により蛋白含有率と無相関となるレッドエッジ内の無相関波長の特定を行う。
図2において、まず入力部2が、センサで観測された撮影対象地域のスペクトル画像データを取得し、スペクトル情報生成部3へ供給する。波長域抽出部5は、データベース4に保存されている米粒の蛋白含有率(%)を目的変数、各ハイパースペクトル画像の観測値を説明変数として単回帰分析を行い、正負を問わず蛋白含有率と相関の高い波長域の特定を行う(ステップS1)。図3は、単回帰分析結果を示すグラフであり、横軸はハイパースペクトルの観測波長、縦軸は蛋白含有率に対する相関の度合いを表す相関係数を示している。相関係数が0.0のときは全く相関がないことを表している。図3に示す例において、説明変数候補として、相関係数の高い複数のプロット点12,13,14,15における波長域を抽出する。説明変数候補として抽出する波長は、隣接している波長でもよい。
また、波長域抽出部5は、上記と同様の目的変数及び説明変数を用いた単回帰分析を行い、米粒の蛋白含有率と無相関となるレッドエッジ11内の一波長(波長域)を特定する(ステップS2)。レッドエッジ11内の波長は、観測センサの設定によっても異なるため、700nm〜730nm程度を目安とする。具体的には、単回帰分析を行った際に、無相関もしくは極低い相関を示す波長であればよい。このレッドエッジ内の一波長の観測値は、後述する推定モデル式の最適波長を特定する際の回帰分析における基準値となるものである。
次に、波長域抽出部5は、上記相関の高い波長と、本発明を考案する過程で見出された蛋白含有率と無相関となるレッドエッジ内の一波長の各々における反射スペクトル情報とを組み合わせて説明変数を選択する。上記ステップS1の処理で説明変数候補として抽出した相関の高い波長と、上記ステップS2の処理で特定したレッドエッジ11内の波長とにより、植生指数例えばNDVI(2値から算出される正規化植生指数)を用いた回帰分析を行い、その決定係数Rを算出する(ステップS3)。
正規化植生指数は、これまでの研究(非特許文献1等を参照)において蛋白含有率との相関が確認されているものであり、レッドエッジを挟んで近赤外域波長での観測値(分光反射率)をNIR、赤色域波長での観測値(分光反射率)をREDとすると、下記の式で求められる。

正規化植生指数(NDVI)=(NIR−RED)/(NIR+RED)・・・・(3)
図4は、図3に示す単回帰分析結果に基づいて、観測波長域(Band)と決定係数Rとの関係を示したものである。図4において、横軸はハイパースペクトルの観測波長域(Band1〜Band68)、縦軸は決定係数Rを示す。前述のように、本例のハイパースペクトル観測波長域は68バンド(400nm〜1000nm)である。レッドエッジ内の特定波長域のプロット点16における決定係数Rはほぼ0、すなわち蛋白含有率との相関が極めて低い。他方、レッドエッジを挟んだ2つのプロット点17及び18における波長域の観測値の決定係数が高いので、いずれかのプロット点に対応した観測波長域(Band)の観測値を説明変数として抽出する。
現地では、撮影対象地域内で坪刈りを実施し、刈り取った米を成分分析装置にかけて成分分析を行い、米粒の蛋白含有率を検出する。そして、この現地調査結果と正規化植生指数(NDVI)を用いて単回帰分析を行い、決定係数Rを算出する。この決定係数Rを求める処理は、ステップS1の処理で説明変数として抽出した各波長域について実施する。
波長域抽出部5は、上記回帰分析の結果、決定係数Rの値が最も大きい、すなわち最も信頼性の高い波長を特定し、推定波長(最適波長)として選択する(ステップS4)。生育状況推定部6は、この推定波長を利用して米粒の蛋白含有率に対する推定モデル式(回帰式)を構築する(ステップS5)。
推定モデル式として、例えば正規化植生指数を利用した(4)式が知られている。

(蛋白含有率)=A×NDVI+B・・・(4)
[A,B:年次や地域、センサの観測条件等の諸条件を反映した定数]
生育状況推定部6は、構築した推定モデル式による米粒の蛋白含有率推定結果(推測値)を、実際に米が収穫された現地の調査結果(実測値)と照らし合わせて標準誤差を算出し、その精度を評価する(ステップS6)。標準誤差には、一例として、2乗平均平方根誤差(RMSE:Root Mean Square Error)を用いることができる。航空機センサより得られたデータから算出した蛋白含有率推定結果(%)と、実際に現地調査により得られた蛋白分析結果をグラフ化したものを、図5に示す。図より、蛋白含有率推定結果と蛋白分析結果との間に強い正の相関関係があることが分かる。
以上説明したように、本発明は、ハイパースペクトルセンサから作物の詳細なスペクトル情報を取得し、そのスペクトル情報から蛋白含有率と相関の低いレッドエッジ内の一波長と、蛋白含有率と相関の高い波長を説明変数として特定することにより、多重共線性の影響を排除した回帰分析を行うことができる。これにより、適正な精度評価、及び妥当性の高い推定モデル式を構築することができるので、作物の生育状況を正確に分析することができる。さらに、正確な蛋白マップの作成が行えるようになる。
また、従来、大学などの研究機関や民間企業などにより、ハイパースペクトルセンサを用いた種々の蛋白含有率推定モデル式が提案されてきたが、例えば、地域や観測年度などによって異なる観測波長(バンド)が選択されており、統一された観測波長を用いた推定モデル式が存在しなかった。しかしながら、本発明による作物の生育状況分析方法によれば、数十に及ぶ詳細な波長情報から多重共線性を考慮しつつ最適波長を特定することができる。
本発明による作物の生育状況分析方法は、水稲以外の例えば麦などの穀類、豆類などの登熟度合いの計測などにも応用可能である。また、ハイパースペクトル観測画像から、病害虫による被害状況などの各種推定モデル式の構築を行う場合にも、適用可能である。例えば、いもち病などの葉色に変化を生じる病害による被害(例えば水稲であれば紋枯病やごま葉枯病、苗立枯細菌病、もみ枯細菌病、ばか苗病など)の状況把握に利用することができる。このように、作物の様々な状況、状態を分析することができる。
図6は、害虫被害マップの一例として、いもち病被害画像を示した図である。圃場内の感染源(画像上は赤や黄などで表されている)20から周囲へ拡大していることが確認できる。このように、被害の度合いに応じて階調表示することにより、上述の蛋白マップ同様、害虫被害状況を面的に確認することができる。
なお、上記実施形態では、植生指数の一例として正規化植生指数(NDVI)を用いたが、この例に限るものではない。
その他、本発明は、上述した実施の形態の例に限定されるものではなく、バンド数など、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能であることは勿論である。
なお、本発明は、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPU等の制御装置)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
この場合のプログラムコードを供給するための記録媒体としては、例えば、フロッピディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、DVD、磁気テープ、不揮発性のメモリカードなどを用いることができる。
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の例の機能が実現される場合も含まれる。
また本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
本発明の一実施形態に係る作物の生育状況分析装置のブロック構成を示す図である。 本発明の一実施形態に係る最適波長の特定処理を示す図である。 本発明の一実施形態に係る単回帰分析結果を示す図である。 本発明の一実施形態に係る観測波長域と決定係数の関係を示す図である。 本発明の一実施形態に係る精度評価を示す図である。 本発明の一実施形態に係るいもち病被害画像例を示す図である。 リモートセンシングによる撮影例を示す図である。 マルチスペクトルバンド例を示す図である。 マルチスペクトル特性例を示す図である。 ハイパースペクトルバンド例を示す図である。 ハイパースペクトル特性例を示す図である。 精度評価図の一例である。 2つのバンド間の相関が高い場合の例を示す図である。
符号の説明
1…作物の生育状況分析装置、2…入力部、3…スペクトル情報生成部、4…データベース、5…波長域抽出部、6…生育状況推定部、7…出力部、11…レッドエッジ、12…プロット点(赤色域)、13,14,15…プロット点(近赤外域)、16…プロット点(基準点)、17,18…プロット点(説明変数に対応)

Claims (7)

  1. 所定観測波長範囲を少なくとも数十の波長域により観測可能なスペクトルセンサを用いて、撮影対象地域のスペクトル画像を取得するステップと、
    前記スペクトル画像から反射スペクトル情報を生成するステップと、
    前記撮影対象地域の作物の生育状況に関連した物理量を目的変数とし、反射スペクトル情報を説明変数とする単回帰分析により、相関の高い波長域を抽出するステップと、
    前記単回帰分析により、レッドエッジ内の相関の低い波長域を抽出するステップと、
    前記相関の高い波長域の反射スペクトル情報と、前記レッドエッジ内の相関の低い波長域の反射スペクトル情報とを用い、前記撮影対象地域の作物の生育状況に関連した物理量を推定するための回帰式を構築するステップと、
    前記回帰式を用いて前記撮影対象地域の作物の生育状況に関連した物理量を推定するステップと
    を有することを特徴とする作物の生育状況分析方法。
  2. 前記相関の高い波長域を抽出するステップにおいて、説明変数候補として複数の波長域を抽出し、
    前記説明変数候補として抽出した各波長域の反射スペクトル情報と、前記レッドエッジ内の相関の低い波長域とを用いて植生指数を算出し、
    前記複数の波長域毎に前記植生指数を用いた単回帰分析を行い、
    該単回帰分析において最も相関の高い波長域を選択し、該選択した波長域及び前記レッドエッジ内の相関の低い波長域の反射スペクトル情報を、前記回帰式の説明変数に用いる
    ことを特徴とする請求項1に記載の作物の生育状況分析方法。
  3. 前記植生指数は正規化植生指数である
    ことを特徴とする請求項2記載の作物の生育状況分析方法。
  4. 前記撮影対象地域から採取した作物に含まれる生育状況に関連した物理量と、前記回帰式より推定した前記撮影対象地域の作物の生育状況に関連した物理量とを比較し、当該回帰式の精度を評価する
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の作物の生育状況分析方法。
  5. 前記作物の生育状況に関連した物理量は蛋白含有率である
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の作物の生育状況分析方法。
  6. 所定観測波長範囲を少なくとも数十の波長域により観測した撮影対象地域のスペクトル画像を入力する入力部と、
    前記スペクトル画像から反射スペクトル情報を生成するスペクトル情報生成部と、
    前記撮影対象地域の作物の生育状況に関連した物理量を目的変数とし、反射スペクトル情報を説明変数とする単回帰分析により、相関の高い波長域及びレッドエッジ内の相関の低い波長域を抽出する波長域抽出部と、
    前記相関の高い波長域の反射スペクトル情報と、前記レッドエッジ内の相関の低い波長域の反射スペクトル情報とを用い、前記撮影対象地域の作物の生育状況に関連した物理量を推定する回帰式を用いて前記撮影対象地域の作物の生育状況に関連した物理量を推定する生育状況推定部と、
    前記推定結果を出力する出力部と
    を有することを特徴とする作物の生育状況分析装置。
  7. 所定観測波長範囲を少なくとも数十の波長域により観測した撮影対象地域のスペクトル画像を入力する機能と、
    前記スペクトル画像から反射スペクトル情報を生成する機能と、
    前記撮影対象地域の作物の生育状況に関連した物理量を目的変数とし、反射スペクトル情報を説明変数とする単回帰分析により、相関の高い波長域及びレッドエッジ内の相関の低い波長域を抽出する機能と、
    前記相関の高い波長域の反射スペクトル情報と、前記レッドエッジ内の相関の低い波長域の反射スペクトル情報とを用い、前記撮影対象地域の作物の生育状況に関連した物理量を推定するための回帰式を用いて前記撮影対象地域の作物の生育状況に関連した物理量を推定する機能と、
    前記推定結果を出力する機能と
    をコンピュータに実現させるための作物の生育状況分析プログラム。
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