JP5017106B2 - 吸着の検出及び定量化 - Google Patents
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Description
好ましい実施形態では、吸着の量は、次に、吸着をopf方向のpvf−opfプロットのサイクルの最大幅として推定する方法を用いてを定量化することができる。定量化の適切な方法は、「C−means」クラスター化、ファジー「c−means」クラスター化、又は楕円近似技術を含むことができる。
ここで、簡略化した概略的な縮尺通りではない添付図面を参照して例示的な実施形態により本発明を以下に説明する。
吸着とは、静止摩擦を意味し、入力の変動に応答した要素の滑らかな移動が、静的部分が先ず起こり、スリップジャンプと呼ばれる突発的な急なジャンプがそれに続くような要素の特性である。スリップジャンプは、出力スパンの百分率として表される。機械系におけるその発生源は、滑らかな移動中に運動摩擦を超える静止摩擦である(Choudhury他、2004年a)。吸着のこの定義は、本発明の基礎を形成する。プロセス産業においては、吸着は、一般的にバルブ移動の百分率又は制御信号のスパンとして測定される(Gerry及びRuel、2001年)。例えば、2%の吸着とは、バルブが動かなくなった時に、それがその制御信号の累積変化が制御信号の範囲の2%に等しいか又はそれよりも大きくなった時にのみ動き始めることになることを意味する。制御信号の範囲が4mAから20mAの場合、2%吸着とは、マグニチュードが0.32mAよりも小さい制御信号の変化ではバルブを移動させることはできないことを意味する。
本明細書で説明する技術は、バルブと同様に他の最終的な制御要素に適用することができることを理解すべきである。従って、バルブという用語が使用されている時、バルブ及び他の同様の最終制御要素を意味するものとする。
プロセス又は被制御変数(pv)とコントローラ出力(op)データからスリップジャンプ(J)を推定するのは、バルブ出力中のスリップジャンプがプロセス動力学によって隠されるので容易ではない。従って、本発明においては、吸着量をパラメータ「S」(不動帯及び吸着帯)で表している。
制御ループにバルブ非線形性があると、多くの場合に、非ガウス分布かつ非線形性の時系列、すなわち、プロセス出力(pv)とコントローラ出力(op)データが生成される。非ガウス信号は、分布がガウス分布に適合しない時の信号である。非ガウス信号としては、例えば、非対称分布を有する信号を含むことができる。制御ループに存在すると考えられるハードウエア故障のトラブルシューティング診断ツールとして、より高次の統計データベースの非線形アセスメントを使用することができる(Choudhury他、2002年、Choudhury他、2004年b)。制御誤差信号(sp−pv)のガウス分布性及び非線形性の試験は、制御ループの性能不良の判断の有用な診断の助けである。信号中の非線形相互作用の存在に対する正規バイスペクトル又はバイコヒーレンスの感度を1つの試験で使用することができる。非線形時系列独特の特性は、1つの周波数成分の位相が他の位相で判断されるような位相結合が存在することである。位相結合により、信号のバイコヒーレンス中で検出することができるより高次のスペクトルの特徴が生じる。ここで適用する非線形性試験では、バイコヒーレンスを用いて非線形性を評価するものである。バイコヒーレンスは、以下のように定義される。
・プロセスは、局所的に線形である。
・ループに入ってくる非線形外乱はない。
外乱が測定可能である場合、試験を適用して外乱の線形性を検査することができる。また、バルブ自体が非線形特性、例えば、平方根又は等比率特性を有する場合があると議論することができ、これは、確かに故障ではない。明確にするために、単純なフィードバックシステムにおいて等比率特性と平方根値特性を用いるシミュレーション研究(Choudhury、2004年c)が行われている。バルブステムの移動又はバルブに対する入力信号の変化がバルブ移動の全スパン(0%から100%)の±20%以内である場合、制御ループは、定常調節管理下で線形挙動を呈することは判明した。これはまた、バルブ特性曲線を入念に観察すれば認識することができる。
非線形性の検出は周波数領域の方法であるから、周波数領域ベースの濾過を行うことが好ましい。非線形性が検出されると、自乗バイコヒーレンスプロット中の有意なピークから有意な非線形相互作用の原因である周波数を判断することができる。ウィーナーフィルタのような周波数領域フィルタを使用すると、著しく信号非線形性に寄与する信号の1つ又は複数の部分を取得することができる。一実施形態では、pvとopの両方の濾過は、周波数領域ウィーナーフィルタを使用して行われる。周波数領域ウィーナーフィルタは、不要な周波数チャンネルのパワーをゼロに設定するものである。一実施形態では、例えば、使用するフィルタは、ウィーナーフィルタを近似したもの(Press他、1986年)であり、その理由は、真のウィーナーフィルタでは、後でチャンネルから差し引く望ましい周波数チャンネル内のノイズパワーの推定値も必要であるからである。詳細な設計アルゴリズムは、Thornhill他(2003年)に示されており、そこでは、ナイキスト周波数を超えるエイリアス周波数及びフィルタ幅に関する制約の処理の方法を説明している。フィルタの周波数範囲は、バイコヒーレンスプロット中のピーク検査で選択する。非線形性検出アルゴリズムには、多数のデータ点(例えば、4096個のサンプル)を使用することが好ましい。同じデータセットに濾過も行われる。しかし、pvf−opfプロット中でこのような多数のデータ点を使用すると、バルブ問題のどの公知のパターンとも適合しにくいプロットが生成される場合がある。従って、一実施形態では、僅か700個のデータ点から成るデータのセグメントをpvf−opfプロットの構築に選択することができる。尚、pvf及びopfは、濾過されたpv及びop信号である。
2つのクラスター中心のx座標間の差の絶対値から吸着量を推定することができる。クラスターの最終中心が(op1;pv1)と(op2;pv2)である場合、以下の式を使用して吸着量を取得する。
所定のデータ点がopとpvであると仮定する。ここで、以下の通りである。
所定のデータセットには、線形移動及び回転した円錐が必要であることが多い。従って、回転及び移動円錐を変換座標X−Yに当て嵌める必要がある(図4(f)を参照されたい)。式B−4は、以下のように書き換えることができる。
1.制御誤差信号(sp−pv)に対してNGIとNLIを計算する。これらの指数の両方が0よりも大きい場合、次の段階に行く。そうでなければ、すなわち、両方の指数が0よりも大きくない場合、非線形性は問題ではない。性能不良の原因は、コントローラの厳しい調整か、コントローラの調整外れか、又は振動性外部外乱と考えられる(図2を参照されたい)。
2.非線形性が検出された状態で、段階1の最大バイコヒーレンスピークに対応する周波数対(f1,f2)を取得する。尚、全ての周波数は、サンプリング周波数が1になるように正規化される。f’1=min(f1,f2)とf’2=max(f1,f2)を定義する。
3.周波数領域フィルタ(例えば、ウィーナーフィルタ)の境界は、[ωL=max(0.004,f’1−0.05)、ωH=min(0.5,f’2+0.05)]から取得することができる。尚、有意なピークの正確な位置がフィルタ境界上にならないことを保証するために、0.05を周波数に対して加減する。±0.05以外の異なる境界を使用することもできる。
4.pvとopデータを濾過してpvfとopfを取得する。
5.データのうちの規則的な振動を備えたセグメントを取得する。
a.セグメント長L、例えば、L=1000を選択する。
b.opfデータを長さLのセグメントに分割する。op信号の方が多くの場合にpv信号よりもノイズが少ないから、ここでは、pvfではなくopfを選択する。
c.opfデータの各セグメントに対してrとTpを計算する。
d.rmax=max(r)を取得する。
e.rmaxを有するopのセグメントのTpに等しいTpsを取得する。
f.L>5Tpsの場合、L=5Tpsを選んで段階bに行く。
g.ここで、opfsは、rmaxに対応するopfデータのセグメントであり、pvfsは、opfsに対応するpvfデータの部分である。
6.pvfs及びopfsデータを使用して、pvfとopfの関係を取得する。
7.円錐を選択したpvfs及びopfsデータに当て嵌める。
8.公式8を使用して吸着を定量化する。公式6に基づいて、クラスター化技術も使用して吸着を定量化することができる。
当業者には明らかであるように、本明細書で請求する本発明の範囲から逸脱することなく、特定の開示内容の様々な修正、適応、及び変更を行うことができる。説明した発明の様々な特徴及び要素は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書で説明する組合せと異なる方法で組み合わせることができる。
第1の実施例は、凝集装置からの凝集液の流量を操作することによってタービン出口に位置する凝集装置中のレベルを制御する発電所のレベルコントロールループを表している。各タグに対して総数8640件のサンプルを5sのサンプリング速度で収集した。図4(a)は、レベル(pv)、設定値(sp)、コントローラ出力(op)に関する時間傾向を示している。ループは、動的挙動を示している。バイコヒーレンス計算に使用したデータ点は、4096であり、図4(b)は、制御誤差信号(sp−pv)に対応する自乗バイコヒーレンスプロットを示している。NGI及びNLIの値は、それぞれ、0.04と0.61であることが判明し、これは、大きなループ非線形性を示すものであった。図4(b)のバイコヒーレンスプロットからは、0.001から0.1の範囲の周波数が非線形相互作用の原因である最も大きな信号周波数であることが分る。従って、周波数境界が0.001と0.1にあるウィーナーフィルタを使用してpv及びop信号を濾過した。上述のThornhill他(2003年)の方法を用いたところ、コントローラ出力信号は、平均周期が19.78サンプリングインスタントで、200データ点のセグメント長に対して最大r値が10.5である規則的な振動を示すことが判明した。最大r値は、2801から3000のサンプルに対応する。非線形性を隔離するには、pvf−opfプロットが有用であることが見出されている。そこで、このセグメントに対応する濾過pvfとopfを図4(c)にプロットしており、バルブ吸着を示す楕円パターンが示されている。図4(d)は、吸着定量化に使用した「C−means」クラスター化技術を示している。白抜き三角形と黒塗り三角形で示す点は、それぞれ、クラスターの初期中心と、最終中心である。本方法でこのループ内の吸着量を定量化すると11.3%である。一方、図4(e)は、吸着定量化でファジー「c−means」クラスター化を使用した実施例を示している。反復段階時にクラスター中心が示す軌跡は、矢印で方向付けられた三角形付きの線で示されている。最終中心は、ここでもまた連続した三角形となっている。本方法で推定した吸着量は、11.25%である。図4(f)は、代数的楕円当て嵌め技術を示すものであり、本方法で推定した吸着量は、11.40%である。3種類の方法で得られた結果は、いずれも実質的に同一ものであり、互いからの振れの限界値は、実際的に許される範囲内である。
確認のために、この実施例の結果をこのループで利用可能なバルブ保定装置データと比較した。図5は、実際のバルブ位置とコントローラ出力(op)のプロットを示している。このプロットから、方向変更中にバルブに吸着が発生していることが明確に分る。このプロットから、吸着量を11.25%と推定することができ、この推定値は、提案された方法から得られた結果と合致するものである。
吸着の公知の模擬事例を使用したシミュレーションによってバルブ吸着検出及び定量化のための本発明の方法の適用性を明らかにした。模擬データを生成するために、フィードバック制御構成における簡単な単入力単出力(SISO)システム(図6)を使用した。時間遅延を備えた一次プロセスを以下の伝達関数を使用して示している。
多くの場合に、測定されない振動性外乱、例えば正弦波は、被制御及び被操作変数にサイクルを開始する可能性があり、多くの場合に、バルブ問題として誤診される可能性がある。この実施例は、ノイズの他にプロセスに追加された時の振幅2、周波数0.01の正弦波外乱の影響を示すものである(図6を参照されたい)。ループ中に吸着モデルは使用しなかった。従って、診断結果から、吸着又はあらゆる他の非線形性がないことが分るはずである。図8(a)の被制御変数(pv)の時間傾向からは、プロセス出力の振動性挙動を示している。Horchの相互相関試験(Horch、1999年)からは、バルブ吸着の可能性を示す奇妙な相関関数を示している(図8(b)を参照されたい)。しかし、ここで開発したより高次の統計試験からは、NGIは0に等しいことが分り、これは、線形ループを示すものである。コントローラに対する誤差信号に関するバイコヒーレンスプロットを図8(c)に示している。バイコヒーレンスプロットが平坦であるので、ループの線形性が確認される。
本発明の方法の評価をいくつかの異なる種類のプロセス産業から取得した選択制御ループデータに基づいて行った。各ループに対して、設定値(sp)、被制御出力(pv)、及びコントローラ出力(op)のデータが利用可能であった。特記のない限り、各事例に対して4096のデータ長を自乗バイコヒーレンスの計算に使用した。各ループに関するこれらの変数の時間傾向、自乗バイコヒーレンスプロット、「c−means」クラスター化プロット、当て嵌めた楕円プロットを示している。表1(下表)に全てのループの数値的結果を示す。制御バルブ問題の事前知識なしにこれらのデータを解析した後に、解析結果をプラント職員との連絡に基づいて確認した。「C−means」及びファジー「C−means」クラスター化の両方は類似の方法であるので、簡潔さを期すために「C−means」クラスター化技術を用いた結果のみをここに記す。
これは、実施例1で上述した同じ発電所のレベルコントロールループである。それはまた、凝集液流量を操作することによってタービン出口に位置する凝縮器のレベルも制御する。図9(a)は、sp、pv、及びopデータの時間傾向を示している。図9(b)は、自乗バイコヒーレンスプロットを示している。NGIとNLIの値は、0.1と0.40であった。これらの値から、非線形性がこのループの問題であることが明確に分る。バイコヒーレンスプロット中の最大ピークの位置から、自動化の節で説明した段階の後にウィーナーフィルタの周波数範囲を取得した。フィルタの周波数帯域は、[0.001 0.08](1000サンプル/サイクルから12.5サンプル/サイクル)である。平均振動周期は、コントローラ出力信号の場合は、50サンプルである。吸着を定量化するために、最大振動指数に対応するデータのセグメント(rのマグニチュードは、この場合は22であった)を選択した。「c−means」クラスター化と楕円近似技術の両方によって得られる見かけの吸着量は4%である。「c−means」クラスター化プロットを図9(c)に示し、図9(d)は、吸着定量化の楕円近似技術を示している。
このループは、実施例1で説明した同じ発電所の別のレベルコントロールループである。それはまた、凝集液流量を操作することによってタービン出口に位置する凝縮器のレベルも制御する。図108(a)は、sp、pv、及びopデータの時間傾向を示している。図10(b)は、制御誤差信号の自乗バイコヒーレンスプロットを示している。NGIのマグニチュードは、−0.02であり、非線形性は、このループの問題ではないことが明確に分る。図10(c)は、バルブ位置(mv)とコントローラ出力(op)のプロットを示すものであり、バルブの応答が線形であることが分る。
これは、精錬所から取得したフロー制御ループである。このループの解析結果を図11と表1(下表)の3行目にも示している。少量の吸着の存在(ループ3に対しては0.35%)が、振幅が大きい振動の原因となっていた(このループの図11(a)のpvのマグニチュードを参照されたい)。
これは、カナダ、ブリティッシュコロンビアの「Teck−Cominco」鉱山プラントの炉内給送乾燥システムの温度制御ループである。乾燥器燃焼チャンバ温度の制御は、燃焼チャンバに至る天然ガスの流量を操作することによって行う。図12の左上のプロットは、温度(pv)、設定値(sp)、コントローラ出力(op)の時間傾向を示している。このプロットから、被制御変数(pv)とコントローラ出力の両方に明確な振動があることが分る。
他の結果を表1(以下)の6行目と図12に示す。このループで見つかった吸着量は、約1%であった。
これは、精錬プラントの圧力制御ループである。このデータのデータ点は、20sのサンプル間隔で収集した僅か1500箇所である。図13の時間傾向からは、pv及びop変数に関して12.2個のサンプルで振動があることが分る。詳細な解析結果を図13と表1の5行に示す。バルブに存在する見掛けの吸着は、約11%であった。
これは、濃度制御ループを説明している。このデータセットに含まれるデータ点は、1sのサンプリング間隔で収集された1100箇所である。図14(a)の時間傾向からは、pvとopの両方の変数に対して28.3個のサンプルで振動があることが分る。詳細な解析結果を図14と表1(下表)の6行目にも示している。この濃度制御ループのバルブ中に存在する見掛けの吸着は、約1%であった。
本明細書で参照した以下の参考文献は、その全体が本明細書で再生されたかのように本明細書において引用により組み込まれている。
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pv 被制御変数
Claims (4)
- 産業プロセス内の吸着を自動的に検出する方法であって、保守を必要とする制御ループを選別して優先順位をつけるために、
(a)プロセス出力pv及びコントローラ出力opデータをプロセスから取得する段階、
(b)
(c)前記制御誤差信号、前記pv信号、又は前記op信号が非ガウス分布及び非線形の両方である場合に、pv及びop関係を取得し、周波数領域フィルタを用いて前記pv及びopデータを濾過するする段階、
(d)濾過されたデータから、規則的な振動を有するセグメントを選択する段階、
(e)前記pv−opデータのセグメントのプロットが楕円か否かを判断することにより、該pv−opデータのセグメントから、前記プロセスが吸着を被っているか否かを判断する段階、
(f)opの方向の前記pv−opデータの楕円の幅を測定することによって、見掛けの吸着の量を定量化する段階、
を含むことを特徴とする方法。 - spデータも前記プロセスから得られ、前記制御誤差信号が非ガウス分布かつ非線形であるか否かを判断するのに直接的に使用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 楕円の幅は、
(i)データをクラスター化するとともに、前記opの方向の2つのクラスターの中心の座標間の差の絶対値を決定することによって、
又は、
(ii)楕円をデータ上に当て嵌め、当て嵌めた楕円のop方向の最大幅を決定することによって、
決定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。 - 前記楕円の幅は、「C−means」クラスター化、ファジー「c−means」クラスター化、又は楕円近似方法によって測定されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
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