JP5016654B2 - クラッド材の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、クラッド材は、異なる性質を有する2種類以上の金属板材の積層体であり、単一の金属板材では達し得ない複数の特性を兼ね備えている。前記クラッド材は、例えば、異なる性質を有する2種類以上の金属板材を重ね合わせ、圧延法などにより接合することにより製造されている(例えば、特許文献1を参照)。
しかしながら、特許文献1に記載の方法には、製法上、金属板材の積層数が限られてしまい、付与することができる特性の種類が限られてしまう。しかも、特許文献1に記載の方法によれば、被覆材の特性によっても、付与することができる特性の種類が制約されてしまう傾向がある。
前記ワークをECAP法によって屈折させることにより、当該ワークを屈折部でせん断変形させて、各金属線同士を固相接合させる接合工程と、
をこの順に含むことを特徴とする。
これにより、複数本の金属線を少なくとも部分的に固相接合して、一体化することができる。したがって、本発明のクラッド材の製造方法によれば、用いられる金属線の種類を選択することにより、種々の特性をクラッド材に付与することができ、種々の機能を兼ね備えたクラッド材を得ることができる。
特に、本発明のクラッド材の製造方法では、前記ワークをECAP法によって屈折させているので、ワークに生じるせん断ひずみ量を十分確保することができる。このため、金属線同士をより強固に接合することができる。
この場合、圧縮工程と接合工程とを、前記貫通孔内で一連に行うことができるので、クラッド材を効率よく製造することができる。
この場合、ワークに生じるせん断ひずみ量を十分確保することができる。このため、金属線同士をより強固に接合することができる。
この場合、貫通孔の内壁面とワークの表面との間の摩擦抵抗を低減することができる。このためワークを貫通孔に容易に通すことができる。
この場合、金属線相互間の接合強度をさらに高めることができる。
これにより、クラッド材における金属線同士をより強固に固相接合させることができ、しかも、組織をより一層微細化することができる。
この場合、パイプの材料自体が有する延性および潤滑性によって、貫通孔の内壁面とワークの表面との間の摩擦抵抗を効果的に低減することができる。このためワークを貫通孔に容易に通すことができる。
この場合、金属線同士をより良好に固相接合させることができる。
以下、本発明の一実施形態に係るクラッド材の製造方法について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るクラッド材の製造方法の処理手順を示す工程図である。図1においては、図2に示される製造装置1を用い、ECAP(Equal−Channel Angular Pressing)法によりクラッド材を製造した場合の処理手順を例として挙げて説明する。
金型10の貫通孔11は、途中部にほぼ直角に屈折した屈折部12を有するL字形のものであり、金型10の上面および側面にそれぞれ上流側開口部13および下流側開口部14を有している。本実施形態の製造装置1では、貫通孔11の上流側開口部13から下流側開口部14に至るまで、断面形状が正方形形状とされており、かつその断面積が同じになるようにされている。
また、貫通孔11の長手方向に直交する断面の一辺の寸法は、パイプ20の外径と略同寸法となっている。
ホルダー41は、金型10の外周を包囲した状態で、この金型10を移動不能に拘束している。このホルダー41には、金型10の貫通孔11の下流側開口部14に対応する位置に切り欠き部42が設けられている。
また、加熱部50は、ホルダー41の外周外方に設けられている。この加熱部50は、金型10を所定温度に加熱するヒータ51と、このヒータ51を収容するとともに、金型10を所定温度に保つジャケット本体52とから構成されている。
ジャケット本体52には、貫通孔11の下流側開口部14に対応する位置に切り欠き部53が設けられており、クラッド材23を製造装置1の外に取り出すことができるようにされている。
パイプ20は、複数本の金属線21のキャリヤーであるとともに、金属線21と固相接合させるための材料として用いられている。
また、金属線21は、パイプ20を構成する銅とは異なる機械的性質を有する銅からなる線材である。
クラッド材の組成は、例えば、パイプ20を構成する金属と全ての金属線21を構成する金属との質量比により設定することができる。この実施形態においては、パイプ20の内部空間が金属線21によってほぼ塞がれている。
この圧縮工程では、ワーク22が、貫通孔11の鉛直側通路11aの途中に位置している場合、つまり、ワーク22の下端部が鉛直側通路11aの底部Bに到達していない場合(図3(a)参照)には、複数本の金属線21の相互間に隙間d1が生じている(図3(b)参照)。
そして、プランジャー30によりワーク22をさらに押圧することにより、ワーク22の先端が鉛直側通路11aの底部Bに突き当たると(図4(a)参照)、ワーク22に圧縮方向への強い加圧力が負荷される。これにより、ワーク22が円筒状から角筒状に変形するとともに、長手方向に収縮する。また、このとき、複数本の金属線21それぞれが拡幅し、複数本の金属線21の相互間の隙間d1が潰され、複数本の金属線21間の界面が強圧にて互いに面接触した状態で、ワーク22が貫通孔11内に張り詰められる(図4(b)参照)。
前記加圧力は、パイプ20を構成する材料および金属線21を構成する金属の種類やパイプ20および金属線21の寸法などに応じて、適宜設定する。また、貫通孔11内におけるワーク22の通過速度は、得られるクラッド材の組織の状態や、材料強度に応じて、適宜設定する。
この接合工程では、図5に示されるように、ワーク22に対して、屈折部12の外側屈折線Cと内側屈折線Dとを結ぶ平面において、CからD方向およびDからC方向にせん断力が連続的に負荷される。
さらに、かかるせん断力により、屈折部12の外側屈折頂線Cと内側屈折頂線Dとを結ぶワーク22の平面上の金属の組織が微細化される。
したがって、ワーク22が屈折部12を通過することによって、金属線21を相互に固相接合させ得るとともに、組織の微細化を図ることができる。
本実施形態では、前記圧縮工程および接合工程が、ECAP法により一つの貫通孔11内で一連に行なわれるので、クラッド材を効率よく製造することができる。
この押し出し工程では、例えば、金型10の上流側開口部13側より、別のワーク22を貫通孔11内に装填し、プランジャー30により押圧することにより、先に加工されたクラッド材23を貫通孔11より押し出すことができる。
得られたクラッド材23は、衝撃吸収材、振動吸収材やセンサーの材料などの種々の用途が期待される。
しかも、パイプ20の外周面に、固形潤滑材202が塗布されているため、パイプ20と貫通孔11との間の摩擦の発生をより効果的に低減させることができる。
前記実施形態では、パイプ20の内部に金属線21を充填してワーク22を作製した後、当該ワーク22を貫通孔11の内部に装填しているが、これに代えて、パイプ20を貫通孔11内にセットした状態で、このパイプ20内に複数本の金属線21を充填してもよい。
さらに、前記パイプ20は、鉄、ステンレスなどの材料からなる円筒体201の外周面に、前記銅などの延性および潤滑性を有する材料をメッキしたものでもあってもよい。要するにパイプ20は、少なくとも外周面が貫通孔11の内壁面に対して、潤滑性を有すればよい。
前記複数本の金属線21は、それぞれ、同一種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
また、前記複数本の金属線21に対して、非金属からなる線材を混ぜてもよい。
また、貫通孔11の鉛直側通路11aと水平側通路11bとが成す屈折角度は、屈折部12を通過するワーク22に対してせん断力を負荷することができる角度であればよい。かかる屈折角度が小さいほどワークに生じるせん断ひずみ量を大きくすることができる。前記屈折角度は、押し出し抵抗を抑制して製造効率を向上させる観点から、好ましくは30°以上であり、十分なせん断変形量を得る観点から、好ましくは150°以下である。高い製造効率で、十分なせん断変形量を得ることができる観点から、貫通孔11が屈折部12においてほぼ直角に屈折していることがより好ましい。
各種金属線を用い、クラッド材を製造した。
製造装置1において、貫通孔11は、長手方向に直交する断面において、2.5mm×2.5mmの寸法の正方形形状とした。また、屈折部12における屈折角度は、90°とした。パイプ20として、99.9質量%の純度の銅からなり、内径2.1mm、外径2.5mmおよび長さ27mmの円形断面の銅管を用いた。なお、金型10は、分割金型とした。
その後、パイプ20内に30本の金属線21を充填し、かつこのパイプ20を構成する円筒体201の外周面に、二酸化モリブデンからなる固形潤滑材202を塗布して、ワーク22を得た。
実施例1〜5の各試料のL字状の側面を、長手方向(図5において左右方向)に直交する幅寸法が1/2になるまで研磨し、その断面を光学顕微鏡で観察した。実施例1〜5で得られた試料について、断面を観察した結果を示す光学顕微鏡写真を図6に示す。図6中、(a)は、銅からなる金属線(図中、「Cu」)、(b)は、銀からなる金属線(図中、「Ag」)、(c)は、アルミニウムからなる金属線(図中、「Al」)、黄銅からなる金属線(図中、「Brass」)、鉄からなる金属線(図中、「Fe」)を用いた場合の結果を示す。
また、図6に示された結果から、パイプ20の素材である銅が圧縮されて、貫通孔11の内壁面に薄く伸ばされ、金属線21をその内部に包み込んでいることがわかる。これにより、貫通孔11の内壁面とパイプ20との間でのみ摩擦が生じていることが明らかである。
この結果から、金属線21の種類に応じてワーク22を適宜加熱することにより、より効果的に金属線21同士を固相接合させる得ることがわかる。
実施例1、3〜5の各試料を代表例として、貫通孔11の屈折部12を通過していない部分と、前記屈折部12を通過した部分において、荷重を9.80665Nとした場合のマイクロビッカース硬さを、JIS Z2244にしたがって測定した。その結果を表1に示す。なお、表中、「屈折部未通過部」は、屈折部12を通過していない部分におけるマイクロビッカース硬さを示し、「屈折部通過部」は、屈折部12を通過した部分におけるマイクロビッカース硬さを示す。屈折部12を通過していない部分におけるマイクロビッカース硬さは、屈折部12を通過する前の押圧により、ワーク22が圧縮加工を施されたときの影響を示しており、屈折部12を通過した部分におけるマイクロビッカース硬さは、圧縮加工に加えて、屈折部12を通過することにより、さらにせん断変形も加わったときの影響を示している。
この結果から、屈折部12を有する貫通孔11にワーク22を通すことにより、組織を微細化させて、その硬さを硬くできることがわかる。
この結果から、金属線21の種類に応じて、ワーク22を適宜加熱することにより、より効果的に硬さをより硬くできることがわかる。
10 金型
11 貫通孔
12 屈折部
13 上流側開口部
14 下流側開口部
20 パイプ
21 金属線
22 ワーク
23 クラッド材
30 プランジャー
Claims (8)
- 複数本の金属線からなるワークまたは金属製のパイプに複数本の金属線を充填したワークに圧縮加工を施して、各金属線の相互間に生じた隙間を潰す圧縮工程と、
前記ワークをECAP法によって屈折させることにより、当該ワークを屈折部でせん断変形させて、各金属線同士を固相接合させる接合工程と、
をこの順に含むことを特徴とするクラッド材の製造方法。 - 前記圧縮工程および接合工程を、ECAP法によって連続的に行う請求項1記載のクラッド材の製造方法。
- 前記貫通孔が前記屈折部においてほぼ直角に屈折している請求項1記載のクラッド材の製造方法。
- 前記パイプの少なくとも外周面が潤滑性を有する請求項1記載のクラッド材の製造方法。
- 前記接合工程において、ワークを加熱して固相接合を促進させる請求項1記載のクラッド材の製造方法。
- 前記接合工程を複数回行なう請求項1記載のクラッド材の製造方法。
- 前記パイプの材料が、銅、アルミニウムおよび黄銅からなる群より選択されたいずれか一種である請求項1記載のクラッド材の製造方法。
- 前記金属線の材料が、銅、アルミニウム、黄銅、銀および鉄からなる群より選択された少なくとも一種である請求項1記載のクラッド材の製造方法。
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