JP5012904B2 - 微量分注技術を用いたマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法及びマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析法 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、微量分注技術を用いたマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法及びマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(Method of preparing sample for matrix-assisted laser desorption ionization mass spectrometry using microdispensing technology and method of matrix-assisted laser desorption ionization mass spectrometry)に関する。本発明は、マトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析分野に属する。本発明は、細胞生物学、生化学、分子生物学等の生物学分野や、臨床学、診断学、病理学等の医学分野にも属する。
【0002】
【背景技術】
<マトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析>
MALDI法の開発によって、生体高分子のソフトイオン化技術が確立され、プロテオミクス分野を含むさまざまな技術分野において、MALDI質量分析を用いた研究が急速に発展している。
【0003】
例えば、ポストゲノム時代の一翼を担うプロテオミクス研究においては、様々な生命現象の主因となるタンパク質の様々な解析情報を、如何に創薬の成果に結びつけるかなど、製薬企業を中心として研究の加速が図られている。しかし遺伝子と異なり、タンパク質は種類が多く性質も様々であることから、大量の試料を確実に解析する技術が求められている。このような要請に応えるために、MALDI質量分析用のサンプルの調製を自動化した装置などが開発されている。このような装置には、通常、微量の試薬溶液を分注することができる機構が備わっており、この機構によって、MALDI質量分析に用いられるマトリクス溶液の微量分注を自動的に行うことができる。このような装置の例としては、特許文献1:日本国特開2003−98154号公報や、特許文献2:日本国特開2005−283123号公報で使用する装置が挙げられる。
【0004】
近年、細胞や生体組織などの標本を直接測定する技術が開発され、発展している。例えば、生体組織標本などを直接測定することによって、生体組織標本などに含まれる生体分子(例えば、脂質、ペプチド、タンパク質など)を、生体内での位置情報を保ったまま検出することが可能である。MALDI質量分析法の発展に伴い、生体組織標本などに含まれる生体分子の直接的な測定も、MALDI質量分析装置を用いて行われるようになってきた。このような技術においては、たとえば、生体組織標本の薄切片を試料とし、当該薄切片上の複数の位置に、マトリクス溶液を供給し、各位置についてマススペクトルを得る。
【0005】
マトリクス溶液の供給を行う例としては、スプレー技術を用いたマトリクス溶液の噴霧、ピエゾ素子などを用いたインクジェット技術を用いたマトリクス溶液の微量分注が挙げられる。特許文献3:日本国特開2004−347594号公報や、非特許文献1:Analytical Chemistry (1997) vol. 69, pp. 4751-4760には、インクジェット技術を用いてマトリクスの微量分注を行い、生体組織を直接MALDI質量分析したことが報告されている。
【0006】
マトリクス溶液の供給を行う他の例としては、アコースティックマイクロディスペンサー(acoustic microdispenser)を用いた微量分注も挙げられる。非特許文献2:Analytical Chemistry (2006) vol. 78, pp. 6448-6456には、アコースティックマイクロディスペンサーを行い、生体組織を直接MALDI質量分析したことが報告されている。
【0007】
一方、測定対象物質を固相化(ブロット)したメンブレン上において、直接対象物質をMALDI質量分析する方法も行われている。例えば、測定対象物質をメンブレンにブロットし、酵素処理液及びマトリクス溶液をインクジェット技術を用いて微量分注し、その後、メンブレン上で直接対象物質を解析する(例えば、特許文献4:国際公開第98/47006号パンフレット、特許文献5:日本国特表2001−521623号公報)、及び非特許文献3:Molecular & Cellular Proteomics (2002) vol. 1, pp. 490-499参照)。
【0008】
なお、インクジェット技術は、印刷業界において広く使われてきた技術である。 例えば、優れた吐出安定性と均一な印字を得るために、染料または顔料から選択される着色成分、一価または二価の炭素数5〜炭素数10の鎖長を有する分枝のアルコール、アセチレングリコール系界面活性剤、保湿剤、樹脂エマルジョン、及び水を少なくとも含む水性インク組成物が用いられている(例えば、特許文献6:日本国特開2006−257361号公報参照)。
【0009】
【特許文献1】
日本国特開2003−98154号公報
【特許文献2】
日本国特開2005−283123号公報
【特許文献3】
日本国特開2004−347594号公報
【特許文献4】
国際公開第98/47006号パンフレット
【特許文献5】
日本国特表2001−521623号公報
【特許文献6】
日本国特開2006−257361号公報
【非特許文献1】
Analytical Chemistry (1997) vol. 69, pp. 4751-4760
【非特許文献2】
Analytical Chemistry (2006) vol. 78, pp. 6448-6456
【非特許文献3】
Molecular & Cellular Proteomics (2002) vol. 1, pp. 490-499
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の目的
従来、MALDIプレート上で、生体組織標本でない通常のサンプルの測定を行う場合、マトリクス溶媒は、アセトニトリル−トリフルオロ酢酸水溶液(より具体的な例としては、50(v/v)%アセトニトリル−0.1(v/v)%トリフルオロ酢酸水溶液)の組成を有するものが多く用いられていた。このような組成の溶媒に、マトリクスとして、例えば広範囲の質量範囲を解析することができるものであればシナピン酸を溶解することによって、マトリクス溶液が調製される。
【0011】
その後、ピエゾ素子などを用いたインクジェット機構を用いた微量分注装置によってマトリクス溶液の供給を行うことで、生体組織切片上で直接生体分子の解析が行われるようになったが、マトリクスの溶媒の組成としては、従前と同じ組成のものが依然として用いられている。しかしながら、上記のような組成のマトリクス溶媒を用いたマトリクス溶液を、ピエゾ素子によって長時間分注し続けると、ピエゾ素子先端部においてシナピン酸の結晶化現象が起こる。この現象は、分注の安定性に悪影響を及ぼすことなり、極端な場合には、ピエゾ素子先端部の完全なつまりを誘導する。
【0012】
上記の問題の解決のために、シナピン酸を十分に溶解する疎水性溶媒をマトリクス溶液に含ませることが考えられる。しかしながら、そのようなマトリクス溶液を用いると、今度は組織切片上におけるシナピン酸の結晶状態に悪影響を及ぼす。つまり、組織切片上での直接的MALDI-MS解析における感度及び分解能に問題をもたらす結果となる。
【0013】
上記の問題を回避するために、組織切片上での直接的MALDI-MS解析には、シナピン酸以外のマトリクスが用いられている。具体的には、シナピン酸よりも疎水性が低い2,5−ジヒドロキシ安息香酸がマトリクスとして用いられている。2,5−ジヒドロキシ安息香酸をマトリクスとして用いることにより、シナピン酸をマトリクスとして用いた溶液よりも、安定した微量分注を可能にしているが、このときのマトリクス溶媒としても、やはりアセトニトリル−トリフルオロ酢酸水溶液が用いられる。また、2,5−ジヒドロキシ安息香酸は、シナピン酸に比べて、MS解析可能となる質量値範囲が低分子側に限定される点で有用性が低い。
【0014】
このように、従前のマトリクス溶液においては、有用に用いることができるマトリクスが制限される傾向にあり、それに伴い、MS解析可能となる質量値範囲まで制限されるという問題を抱えていた。そのため、シナピン酸のように、より広範囲の質量値範囲を解析することが可能なマトリクスを用いても、安定した微量分注を行うことが可能な方法は必要である。
【0015】
本発明者らは、シナピン酸をマトリクスとして用いた場合でも安定的に微量分注を可能にするには、粘度及び表面張力に起因する従来からの微量分注の困難さを克服する必要があることに着目した。従前と同じ組成を有するマトリクス溶媒は、粘度及び表面張力ともに低い。このような物性は、ピエゾ素子などを用いて安定した微量分注を行うには不適切である。しかしながら、MALDI質量分析の分野においては、このようなマトリクス溶液の機械的物性に着目されることがないために、従前と同じ組成のものが長く用いられてきた。
【0016】
一方、印刷業界においては、上記の日本国特開2006−257361号公報に開示のように、安定な連続分注を実現するための機械的物性をインク組成物に付与するための添加物が研究されている。このような添加物は、インク組成物に対して好ましい物性を付与するが、マトリクス溶液には用いることができない。すなわち印刷業界で用いられるような添加物は、仮にマトリクス溶液に含ませたとしても、測定対象物上に滴下した後のマトリクスの結晶状態に悪影響を与える。このため、測定対象物のイオン化を阻害し、MS解析におけるイオン強度の低下を招く。
【0017】
本発明の目的は、微量分注技術を用いたマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法であって、安定した微量分注を連続して行うことが可能で、且つ広範なマトリクスに対して適用可能な方法を提供することにある。また、本発明の目的は、広範囲の質量範囲について測定可能であり、且つ感度及び精度よく解析することが可能なマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の概要
本発明者らは、マトリクス溶液に、適切な粘度及び表面張力を付与することによって、上記本発明の目的が達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明には、以下の発明が含まれる。
【0019】
(1) マトリクス支援レーザー脱離イオン化法による質量分析に使用されるべきマトリクス溶液であり、0.85mPa・s(23℃)以上の粘度及び25〜30mN/m(23℃)の表面張力を有するマトリクス溶液を、1fl〜1μlの量の分注を行う微量分注手段を用いて、測定に供すべきサンプルに分注し、質量分析用サンプルを得ることを含む、微量分注手段を用いたマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
【0020】
上記(1)において、粘度の上限値は特に限定されるものではない。本発明が微量分注技術を用いるという観点からは、例えば微量分注手段として、インクジェット機構を有する微量分注装置で分注することができる許容粘度の最大値として50mPa・s(23℃)が挙げられる。
【0021】
(2) 前記マトリクス溶液は、溶媒として、炭素数3〜10の直鎖又は分枝鎖を有するアルコールを有する、(1)に記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
【0022】
(3) 前記炭素数3〜10の直鎖又は分枝鎖を有するアルコールは、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、t-ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、2,3−ジメチル−1−ペンタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2,2−ジメチル−3−ヘキサノール、2,5−ジメチル−2−ヘキサノール、1−ノナノール、2−ノナノール、3−ノナノール、2,3−ジメチル−3−ヘプタノール、3,6−ジメチル−3−ヘプタノール、1−デカノール、3−デカノール、4−デカノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、4−n−プロピル−4−ヘプタノール、3−エチル−2−メチル−2−ヘプタノール、及び3,4−ジエチル−3−ヘキサノールからなる群から選ばれる、(2)に記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
【0023】
(4) 前記炭素数3〜10の直鎖又は分枝鎖を有するアルコールは、前記マトリクス溶液中に5〜30体積%含む、(2)または(3)に記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
【0024】
(5) マトリクスが、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2−(4−ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸、シナピン酸、フェルラ酸、3−ヒドロキシピコリン酸、及びジスラノールからなる群から選ばれる、(1)〜(4)のいずれかに記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
【0025】
(6) 前記測定に供すべきサンプルは、ペプチド、糖鎖、脂質、核酸、それらの誘導体及び複合体からなる群から選ばれる生体分子を含む、(1)〜(5)のいずれかに記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
【0026】
(7) 前記測定に供すべきサンプルが、生体組織切片である、(1)〜(6)のいずれかに記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
【0027】
(8) 前記生体組織切片が凍結切片又はパラフィン切片である、(7)に記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
【0028】
(9) 前記測定に供すべきサンプルは、支持体に固定化されている、(1)〜(8)のいずれかに記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
【0029】
(10) 前記支持体の素材が、ガラス、紙、木材、金属、磁性粒子及び高分子からなる群から選ばれる、(9)に記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
【0030】
(11) 前記支持体がメンブレンである、(9)に記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
【0031】
(12) 前記支持体に固定化されたサンプルは、生体分子の調製物を前記支持体に滴下し、乾燥することを含む工程によって調製したものであるか、又は、
生体分子の調製物を、前記支持体に熱的又は電気的に転写することを含む工程によって調製したものである、(9)〜(11)のいずれかに記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
【0032】
(13) 前記分注手段が、インクジェット機構を有する装置によるものである、(1)〜(12)のいずれかに記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
【0033】
(14) (1)〜(13)のいずれかに記載の方法によって得られた質量分析用サンプルを、マトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析装置を用いた測定に供する、マトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析法。
【発明の効果】
【0034】
本発明によると、微量分注手段を用いたマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法であって、安定した微量分注を連続して行うことが可能で、且つ広範なマトリクスに対して適用可能な方法を提供することができる。また、本発明によると、広範囲の質量範囲について測定可能であり、且つ感度及び精度よく解析することが可能なマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
1.マトリクス溶液の物性
本発明において、マトリクス溶液は、0.85mPa・s(23℃)以上の粘度及び25〜30mN/m(23℃)の表面張力を有する。
マトリクス溶液の物性をこのような範囲に設定することによって、微量分注を安定化させることが可能になる。すなわち長時間の連続した微量分注を行う際に、同じ状態の液滴を滴下し続けることが可能であり、同じ状態のマトリクス結晶を連続して得ることが可能である。このため、例えば大量の試料を連続して処理する場合は、それらの試料を確実に処理することが可能になる。また、組織切片などにおいて、一定の範囲に多数滴下を行う場合は、当該範囲の全体において同じスポットを多数形成すること、すなわち均一なスポットを形成することが可能になる。さらに、質量分析測定用サンプルの作成工程が自動化された場合は、どのようなスポットにおいても、良好な解析感度及び分解能を安定して得ることができるため、非常に信頼性の高い解析結果を得ることが可能になる。
【0036】
1−1.マトリクス溶液の粘度
マトリクス溶液の粘度が、0.85mPa・sを下回ると、分注の安定性に欠く。すなわち、分注手段における液体吐出口にマトリクスの結晶が析出や、極端な場合には吐出口の完全なつまりを起こす。
粘度の上限値は特に限定されるものではない。本発明が微量分注手段を用いるという観点からは、例えば、微量分注手段としてインクジェット機構を備えた微量分注装置で分注することができる許容粘度の最大値として50mPa・s(23℃)が挙げられる。また、後述のように、好ましい粘度をマトリクス溶液に付与するための添加物を加えた場合に、マトリクス溶液の粘度と表面張力とはある程度連動する、すなわち粘度が増加すれば表面張力が下がるという傾向が見られる。この観点からは、表面張力が上記の25mN/mとなる粘度を好ましい上限値とすることができる。具体的には、当該添加物の種類及び量により異なる。
【0037】
1−2.マトリクス溶液の表面張力
表面張力が25mN/mを下回ると、マトリクス溶液の拡散が大きくなる。すなわち、分注したマトリクス溶液が測定試料上で広がり、あるいは測定試料とマトリクスとの均一な結晶化形成を阻害するため、MS解析に不適切である。
表面張力が30mN/mを超えると、粘度が小さくなりすぎる。粘度が小さくなりすぎると、分注が不安定性となり、分注手段における液体吐出口にマトリクスの結晶の析出や、極端な場合には吐出口の完全なつまりを起こす。
【0038】
2.マトリクス溶液の組成
本発明のマトリクス溶液は、溶質としてのマトリクス物質と、溶媒(以下、マトリクス用溶媒と記載する場合がある。)としてのマトリクス以外の成分とから構成されるとする。下記2−2に記載の添加物を含むマトリクス溶液において、当該添加物は、当該溶媒を構成する成分のひとつとして位置づける。
【0039】
2−1.マトリクス物質
本発明において用いることができるマトリクス物質(以下、単にマトリクスと記載する。)としては、特に限定されない。すなわち、本発明の方法では、例えばインクジェット機構の分注ノズルの液体吐出口におけるマトリクスの不所望な析出が抑えられ、安定な分注を連続して行うことが可能であるため、従前のマトリクス溶液に用いられた場合には安定して分注することができなかった析出性の高いマトリクスであっても、有用に用いることができる。
従って、マトリクスとしては、測定対象となる生体物質などに応じ、広範な範囲から選択することができる。このため、マトリクスの具体例としては特に限定されるわけではないが、例えば、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2−(4−ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸、シナピン酸、フェルラ酸、3−ヒドロキシピコリン酸、ジスラノール、及びグリセロールからなる群から選ぶことができる。特に本発明では、測定対象となる質量範囲が広いシナピン酸を有用に用いることができる点で優れている。
【0040】
マトリクス溶液中のマトリクスの濃度は特に限定されず、マトリクスの種類などに応じ、当業者が適宜決定することができる。例えば、0.1 mg/ml〜飽和濃度で用いることができる。さらに、マトリクス物質自体が粘度の高いもの(例えば、グリセロールなど)であれば、その濃度は、マトリクス物質自体の粘度とマトリクス溶液全体の粘度とを考慮することによって、当業者によって適宜決定されうる。
【0041】
2−2.マトリクス用溶媒構成成分−添加物
本発明では通常、マトリクス溶液に上記項目1に記載の物性を付与するための添加物をマトリクス溶液中に含ませる。本発明のマトリクス溶液は、従来のマトリクス溶液よりも大きい粘度を持たせているため、当該添加物としては、通常、それ自体ある程度の粘度を有する液体であり、従来のマトリクス溶液に加えられることによって、マトリクス溶液の粘度を上げることができ、且つ質量分析自体に支障とならない(すなわち従前と同様のシグナル情報を得ることができる)ものが、当業者によって適宜選択される。
【0042】
具体的には、炭素数3〜10の直鎖または分枝鎖を有するアルコールを当該添加物として用いることができる。このようなアルコールの典型例としては、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、t-ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、2,3−ジメチル−1−ペンタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2,2−ジメチル−3−ヘキサノール、2,5−ジメチル−2−ヘキサノール、1−ノナノール、2−ノナノール、3−ノナノール、2,3−ジメチル−3−ヘプタノール、3,6−ジメチル−3−ヘプタノール、1−デカノール、3−デカノール、4−デカノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、4−n−プロピル−4−ヘプタノール、3−エチル−2−メチル−2−ヘプタノール、3,4−ジエチル−3−ヘキサノールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、当該添加物としては、炭素数3〜6の直鎖又は分岐鎖を有するアルコールが好ましく、炭素数3〜5の直鎖又は分岐鎖を有するアルコールが好ましく、更には、炭素数3〜4の直鎖又は分岐鎖を有するアルコールが好ましい。特にマトリクス溶液の調製のしやすさの観点から、水への溶解度が0.1g/100ml(20℃)〜無限大、更には1g/100ml(20℃)〜無限大のアルコールが好ましい。例えば、これらのアルコールは、1種を又は複数種を組み合わせて用いることができる。
このようなアルコールの使用は、マトリクス溶液に好ましい物性を付与するため、質量分析における感度及び分解能の向上をもたらし、且つ、シグナル情報としては従前と同様のものを与えることができるため、極めて有効である。
【0043】
このようなアルコールなどの添加物の量は、マトリクス溶液の粘度及び表面張力が上記1に記載の範囲内に収まるような量となるように、当業者によって適宜調節される。
例えば、当該調節の際には、選択した添加物が固有に有する粘度の理論値を利用しても良い。また、例えば、上記例示のグリセロールのように、それ自体粘度の高いマトリクス物質を用いる場合を除いては、マトリクス溶液とマトリクス用の溶媒との間で、粘度及び表面張力に差がほとんどない(すなわちその差は実質的に無視することができる)ことが発明者らによって確認されている。このため、当業者は、溶媒調製の段階で、添加物を適当量加えることによって粘度及び表面張力を所望の値に適宜調整し、その後、調製された溶媒にマトリクスを溶解させることもできる。一方、粘度の高いマトリクス物質を用いる場合は、それ自体がマトリクス溶液の粘性に影響する。従ってこの場合、当業者は、添加物が固有に有する粘度の理論値に加え、マトリクス物質が固有に有する粘度の理論値もさらに利用することにより、溶媒ではなく、マトリクス溶液全体としての粘度を適宜調整することができる。
【0044】
添加物として選択される物質固有の粘度がさまざまであるため、マトリクス溶液中に含ませる具体的な量としては、添加物として選択される物質の種類によって異なるが、目安として、マトリクス用溶媒中、5〜30(v/v)%、或いは5〜20(v/v)%とすることができる。上記範囲を下回ると、粘度が小さくなりすぎる傾向にある。粘度が小さくなりすぎると、分注手段における液体吐出口にマトリクスの結晶の析出や、極端な場合には吐出口の完全なつまりを起こすことがあるため、連続分注における分注の安定性に欠ける。上記範囲を上回ると、表面張力が過度に低下する傾向にある。表面張力が低下しすぎると、分注したマトリクス溶液が測定試料上で広がりやすく、あるいは測定試料とマトリクスとの均一な結晶化形成を阻害しやすくなるため、MS解析に不適切となる場合がある。
【0045】
2−3.マトリクス用溶媒構成成分−その他の成分
その他の溶媒構成成分としては、従来のマトリクス溶液における溶媒が用いられて良い。例えば、水、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸、ギ酸、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフランからなる群から選ぶことができる。本発明においては、その他の溶媒構成成分及びその組成は、当業者が適宜決定することができる。その際、例えば、当該その他の溶媒構成成分に対する上記の添加物の溶解度などを考慮することができる。好ましくは、少なくとも、水、アセトニトリル及びトリフルオロ酢酸をその他の溶媒構成成分とすると良い。すなわち、マトリクス用溶媒を、前記添加物、水、アセトニトリル、及びトリフルオロ酢酸を含むものとすることが好ましい。トリフルオロ酢酸は、溶媒中0.1〜0.5(v/v)%程度用いられることが多い。アセトニトリルの量としては特に限定されることなく、さまざまな量が許容される。例えば、添加物及びアセトニトリルの総量が、溶媒中30〜80(v/v)%となるような量で用いることができる。
【0046】
マトリクス用溶媒の一例として、5〜30(v/v)%の炭素数3〜10の直鎖又は分子鎖を有するアルコール、20〜45(v/v)%のアセトニトリル、及び0.1(v/v)%のトリフルオロ酢酸を含む水溶液が挙げられる。
【0047】
3.測定に供すべきサンプル
本発明において測定に供すべきサンプルは、マトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI)質量分析を用いた研究において扱われうるあらゆるサンプルを含み、なんら制限を受けるものではない。
本発明においては、測定に供すべきサンプルは、検出すべき対象として通常生体分子を含んでいる。検出すべき対象となる生体分子としては、特に限定されるものではない。例えば、ペプチド、糖鎖、脂質、核酸、それらの誘導体及び複合体が挙げられる。ペプチドには、オリゴペプチド及びタンパク質が含まれる。核酸にはDNA及びRNAが含まれる。誘導体には、融合ペプチド、化学修飾ペプチド、及び翻訳後修飾ペプチドが含まれる。複合体には、糖ペプチド及び糖脂質が含まれる。このような検出対象は、項目3−1に示す標本中や、項目3−2に示す生体分子を含む調製物中に含まれる。
【0048】
3−1.標本
本発明において、標本としては、生物の細胞や組織などの検体を含むもの、すなわち細胞標本や組織標本が含まれる。検体は、通常、適当な包埋媒体によって包埋されたものとして提供される。検体は、いかなる生物に由来するものであっても良い。動物であれば、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類など幅広く許容され、特に哺乳類に由来するものであることが好ましい。この中でも、マウスやヒトに由来するものであることがさらに好ましい。
【0049】
組織標本の場合、通常、生体内における構造をそのまま保持した切片標本として提供される。このような標本としては、形態学的、免疫組織化学的及び酵素組織化学的解析を含むあらゆる解析において研究ターゲットとなる標本が対象となる。従って、当該生体の全身標本、臓器標本、組織標本、及び胚子標本を問わない。さらに、当該標本が病理検体である場合、当該生体が罹患している疾病としては、癌、アルツハイマー病、パーキンソン病、虚血性脳疾患、虚血性心疾患を問わない。
【0050】
上述の標本は、薬物動態を解析するための標本であっても良い。薬物動態を解析するための標本とは体内動態(吸収、分布、代謝、及び排泄)の観点から薬剤としての可能性を検証・評価するための標本で、具体的には薬物を投与された生体に由来する標本である。このような標本の解析においては、例えば薬剤が結合する生体分子を検出することによって、標的部位に到達した薬剤の存在を調べる。
【0051】
また、標本の包埋媒体としては特に限定されず、例えば、水、パラフィン、セロイジン、カーボワックス、ゼラチン、アルブミン、アガロース、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等や、グリコールメタクリレート等の水溶性樹脂等が挙げられる。本発明においては、切片標本として、水を包埋媒体とする凍結切片や、パラフィンを包埋媒体とするパラフィン切片がよく用いられる。
【0052】
凍結切片は、室温に戻すことによって本発明に供してよいが、その他の切片標本は、適宜、質量分析を可能にするための適切な処理(例えば包埋媒体を除去する処理)を行うことによって、露出した状態の切片標本とすることができる。露出とは、生体試料が包埋媒体に包埋された標本から、包埋媒体が溶出し、生体試料が露出することをいう。このような状態の生体試料の切片標本を、本発明に供することができる。
【0053】
パラフィン切片の場合、マトリクスの微小結晶を作りやすく、作業性に優れるとともに好ましい解析結果を得ることができるという利点がある。さらに、凍結切片を試料とする場合よりも、レトロスペクティブ・スタディ(retrospective study)が可能で汎用性のある病理診断でも有効であるという点で優れている。
【0054】
このように、生体内における構造を保持した標本を用いる場合、質量分析の対象となる生体分子の局在が、生体内における場合と同じものとして形態学的に検証することができる。すなわち、生体内の位置情報を保ったまま標的の生体分子を質量分析によって検出することが可能であり、さらには質量分析イメージングが可能である。
【0055】
3−2.生体分子を含む調製物
生体分子を含む調製物としては、MALDI質量分析を用いた研究において扱われうるサンプルのうち上記の標本以外のあらゆるサンプルを含む。具体的には、採取体液、細胞抽出物、無細胞系合成産物、酵素処理産物、合成ペプチド、核酸増幅産物、合成核酸、及びそれらの精製物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。精製物としては、当業者に良く知られた精製処理、及び、電気泳動によって展開されたものを含む。電気泳動処理が行われたものである場合、当該調製物は、ゲルなどの媒体に包含された形態を有するが、その他の場合は、当該調製物は、溶液又は懸濁液の形態を有しうる。
【0056】
4.支持体への固定化
上記標本や生体分子を含む調製物のような、測定に供すべきサンプルは、直接的に、或いは一旦メンブレンに固定化(具体的には転写など)された後に、適当な支持体に固定化(具体的には転写又は貼り付けなど)され、測定に供される。
【0057】
4−1.支持体
支持体としては、特に限定されるものではない。支持体の素材としては、たとえば、ガラス、紙、木材、金属、磁性粒子、高分子、及びこれらを組み合わせた素材が挙げられる。高分子には合成樹脂や多糖類を含む。メンブレンも、高分子支持体の一態様として位置づけることができる。メンブレンの素材としては、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ニトロセルロース、ポリアミド、ポリエチレン等の合成樹脂及びその誘導体を挙げることができる。ポリアミドとしては、ナイロン等が挙げられる。メンブレンへの転写は、サンプルの長期保存が可能であるという利点を有する。
支持体は、素材が異なるものが複数種用いられうる。本発明は、質量分析に向けられるため、電気伝導性を有する素材を含む支持体を少なくとも用いる。このような電気伝導性支持体としては、例えば金属製支持体である質量分析用サンプルプレートがしばしば使用されるが、これに限定されず、電気伝導性物質がコーティングされた支持体も使用することができる。この場合、コーティングされた支持体の素材としては特に限定されず、具体的には上に例示したものが含まれる。また電気伝導性物質としても特に限定されず、具体的にはインヂウムチンオキサイド(ITO)などが含まれる。電気伝導性物質がコーティングされた支持体のより具体的な例としては、インヂウムチンオキサイテッドコーティングスライドグラスやインヂウムチンオキサイテッドコーティングシートなどが挙げられる。
【0058】
4−2.固定化
固定化のための方法は、当業者が適宜決定することができるものであって、転写或いは貼り付けによる固定化を含む。転写の方法としては、例えば、電気的転写、熱的転写、及びバキューム式転写などが挙げられる。支持体上への貼り付けには、例えば導電性両面粘着テープ等を用いることができる。
【0059】
例えば、標本の場合は、直接支持体に貼り付けるか、或いは一旦メンブレン上に転写した後、当該メンブレン上に転写された生体分子を固体支持体上に貼り付け或いは転写することによって固定化を行うことができる。
例えば、生体分子を含む調製物の場合は、当該調製物を支持体上に直接滴下することによって固定化を行うことができる。滴下に際しては、後述の項目6に記載の分注技術を用いることができる。支持体上に、多数のスポットをアレイ上に配列することにより、効率的な解析を行うことが可能になる。
滴下後は、乾燥させるか、又はインキュベーションを行い、固定化を完了させることができる。
また、生体分子を含む調製物の場合は、ゲル電気泳動で分離し、ゲル中に分離された生体分子を、固体支持体上に直接転写するか、又は一旦メンブレン上に転写した後、当該メンブレン上に転写された生体分子を固体支持体上に貼り付け或いは転写することによって固定化を行うことができる。
【0060】
5.その他の処理
測定に供すべきサンプルは、質量分析による検出のための適当な処理が適宜行われたものであって良い。そのような処理としては特に限定されず、例えば、酵素による分解処理や、免疫学的複合体を形成させる処理などが挙げられる。これらの処理は、検出したい分子の種類に応じ、当業者によって適宜行われるものである。
【0061】
6.微量分注手段
上記項目1〜2に示したマトリクス溶液は、上記項目3〜5に示した測定すべきサンプルに対して、微量分注手段を用いて分注される。
微量分注を行うための手段としては、特に限定されない。本発明において、微量分注とは、1fl〜1μlの微量液滴の分注をいう。微量分注手段としては、手動(例えばマイクロピペッター)及び自動(例えば自動分注装置)を問わず、そのような微量液滴の形成を行うことができる器具又は装置を特に限定されることなく用いることができる。本発明は、マトリクス溶液の微量分注を安定化することが可能であるため、微量分注手段として、連続した分注を行う自動分注装置を用いる場合に特に有用である。また、より微量の液滴を分注する装置を用いた場合に有用である。
【0062】
微量分注を行うことができる装置としては、様々な吐出機構を備えたものを特に限定されることなく用いることができる。例えば、インクジェット機構を備えた装置を用いることができる。インクジェット機構としては、液体吐出口を有する液体収容容器と収容容器に備えられたピエゾ素子からなるインクジェット機構や、液体吐出口を有する液体収容容器と収容容器の加熱機構からなるインクジェット機構が挙げられる。微量分注手段として、インクジェット機構を用いた場合、約50pl〜1μlの微量液滴の分注が可能である。このような装置としては、国際公開第98/047006号パンフレット、日本国特開2004−347594号公報などが挙げられる。また、インクジェットより微量の液滴形成が可能な機構、例えば静電吸引力を利用した液滴形成機構を用いてもよい。このような装置としては、国際公開第03/020418号パンフレットが挙げられる。
【実施例】
【0063】
以下に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、以下において、%で表される量は、特に断りの無い限り体積を基準とした量である。また、以下において、アセトニトリルをMeCN、トリフルオロ酢酸をTFA、ブタノールをBuOH、メタノールをMeOH、プロパノールをPrOH、及びシナピン酸をSAと略記する。さらに、マススペクトルにおいては、横軸は質量/電荷(Mass/Charge)、縦軸は相対強度(%Int.)を表す。
【0064】
[粘度の測定]
以下の実験例及び実施例において、粘度の測定は、SV Type VIBRO VISCOMETER(A&D company.Ltd製)を用いた。
図6に示すように、試料Sample中に、先端に振動子(Vibrator)(感応板(Sensor Plate))を取り付けた一対の板ばね(Spring plate)と、温度センサー(Temperature sensor)を浸した。23℃の条件下、この板ばねを、電磁駆動部(Electromagnetic drive)により、一定の振動数で、図中に振動方向(Direction of vibration)として示されるとおり、逆位相に共振振動させた。ここで、感応板と試料との間には試料の粘度に依存する摩擦力が働くために、試料によってその振幅は異なる。VIBRO VISCOMETERは、電流値をコントロールすることによって、板ばねの振動を一定の振幅に維持している。感応板と試料との間に生じる粘性摩擦力は試料の粘度と比例関係にあることから、駆動電流値を測定することによって、試料の粘度を測定した。
【0065】
[表面張力の測定]
以下の実験例及び実施例において、表面張力の測定は、自動接触角計 “Drop Shape Analysis System” DSA10(KRUSS製)を用いた。
液体試料を注射器に採取し、図7に示すように、注射針先端にペンダントドロップ(懸滴)を形成した。当該懸滴の輪郭形状及び密度から、画像処理により、式1(式中、gは重力加速度、ρは液体試料の密度、deは懸滴の最大直径、dsは懸滴の下端よりdeだけ上の位置における懸滴の径、1/Hは、ds/deから算出した補正項を示す。)をフィッティングさせて表面張力を算出した。具体的には、図7に示すように、注射針先からぶら下がった懸滴のdeを自動測定後、その値からdsを算出し、それらの値から、式1により表面張力γを算出した。この方法により表面張力γを10回以上算出し、それらを加算平均した値を最終的な表面張力の値とした。
【0066】
[実験例1]
以下の(a)〜(j)の水溶液(マトリクス用溶媒)を調製した。
(a) 50% MeCN, 0.1%TFA
(b) 50% 2-prOH, 0.1%TFA
(c) 30% MeOH, 20% 2-prOH, 20% BuOH, 0.1%TFA
(d) 10% MeCN, 40% 2-BuOH, 0.1%TFA
(e) 20% MeCN, 30% 2-BuOH, 0.1%TFA
(f) 30% MeCN, 20% 2-BuOH, 0.1%TFA
(g) 40% MeCN, 10% 2-BuOH, 0.1%TFA
(h) 20% MeCN, 30% t -BuOH, 0.1%TFA
(i) 30% MeCN, 20% t -BuOH, 0.1%TFA
(j) 40% MeCN, 10% t -BuOH, 0.1%TFA
【0067】
水平な実験台にステンレスプレートを置き、上述のマトリクス用溶媒を、それぞれマイクロピペッターを用いて1μLずつ、ステンレスプレート上に載せ、風乾させた。目視により、マトリクス用溶媒の乾燥後の状態を観察することによって、ステンレスプレート上におけるマトリクス用溶媒の広がりを確認した。ステンレスプレート上へ滴下され乾燥した後の各マトリクス用溶媒(a)〜(j)の広がりを示す写真を、図1に示す。
【0068】
通常、アルコールをマトリクス溶液に加えた場合、マトリクス溶液を測定対象物に分注した際に表面張力の低下により拡散してしまい、結果としてMS測定において感度低下につながる。
図1に示すように、アルコールを一定値以上でマトリクス用溶媒中に加えた場合、マトリクス用溶媒のステンレスプレート上での著しい拡散が見られる。本実験例では、上記2種類のアルコール(2-BuOHあるいはt-BuOH)のうち、2-BuOHでは20%を超えると著しい拡散が見られ、t-BuOHでは30%を超えると拡散が見られた。なお、後述の実験例3に示すように、マトリクス用溶媒と、それにマトリクス物質(ただしマトリクス物質自体が高い粘度を有する場合除く)を溶解して調製して得たマトリクス溶液との間の、粘度及び表面張力の差は、本質的に同視することが許容される。従って、本実験例の場合は、アルコールの添加は一定量(すなわち2-BuOHでは20%、t-BuOHでは30%)を超えないことが、マトリクス溶液の拡散を防ぎMS分析における感度低下を抑制することが分かる。またアルコールによって添加する上限が違うのはそれぞれのアルコールにおける粘度と表面張力の違いに依存するためと思われる。このため、アルコールを加えたマトリクス用溶媒の特徴をより詳しく調べるために、それぞれの溶液における粘度と表面張力を以下の実験例2で確かめた。
【0069】
[実験例2]
様々な組成を有するマトリクス溶媒を調製し、それぞれの粘度、表面張力をそれぞれ測定した。粘度については、V Type VIBRO VISCOMETER(A&D company.Ltd)を用いて、マトリクス用溶媒が23℃で安定したときに測定を行った。炭素数3または炭素数4のアルコールを用いたマトリクス溶媒の例や、その他の組成を有するマトリクス溶媒の例における粘度及び表面張力について、下記表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1よりアルコールの添加により粘度の上昇、それに伴う表面張力の低下が認められる。また上記マトリクス用溶媒(k)のように、5%のアルコール(t-BuOH)の添加によっても粘度の上昇が認められており、このことがマトリクス溶液を安定して微量分注することにつながっている。逆に、上記マトリクス用溶媒(e)、(d)、(h)のように、30%を超えるアルコール(2-BuOH、t-BuOH)の添加は表面張力の大きな低下につながっており、実際に上記表にエントリーされたマトリクス用溶媒の中で最も低い値となっている。
【0072】
[実験例3]
50% MeCN及び0.1%TFA水溶液からなるマトリクス用溶媒(a)を調製した。このマトリクス用溶媒(a)に、シナピン酸(SA)を、通常用いられる濃度である5 mg/mLになるように溶解し、マトリクス溶液(A)を調製した。当該マトリクス用溶媒(a)と、当該マトリクス溶液(A)との粘度及び表面張力を測定した。その結果を表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
表2が示すように、マトリクス用溶媒とマトリクス溶液との、粘度及び表面張力の値は大きく変化するものではない。同様のことが、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2−(4−ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸、フェルラ酸、3−ヒドロキシピコリン酸、及びジスラノールなどのマトリックスにもいえる(ただし、グリセロールのように、それ自体が粘度の高いものは除く)。このことから、所望の粘度及び表面張力を有する本発明のマトリクス溶液の調製は、マトリクス溶液全体を厳密に当該所望の粘度及び表面張力に調整するという方法のほかに、予め、マトリクス用溶媒を当該所望の粘度及び表面張力に調整し、その後、マトリクス用溶媒にマトリクス物質を溶解するという方法で行うことが許容される。
【0075】
[実験例4]
50% MeCN及び0.1%TFAを含む水溶液であるマトリクス用溶媒(a)に、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸を5 mg/ml の濃度で溶解し、従来から通常一般に使われるマトリクス溶液(A)を調製した。このマトリクス溶液(A)を支持体に連続分注した。本実験例においては、支持体として、感水紙を用いている。感水紙は水に接触すると黄色から青色に変色する特殊な紙であり、分注位置を正確に評価するために用いた。
【0076】
分注は、1滴につき100 pLずつ、支持体上の1箇所につき5滴ずつという条件で、4時間連続して行った。このとき、それぞれの分注位置間の距離は500μmである。分注装置としては、インクジェット機構を有するケミカルプリンタCHIP-1000(島津製作所製)を用いて行った。
【0077】
上述のような、従来から通常一般に用いられるマトリクス溶液を用いた感水紙への連続分注の結果を、図2に示す。図2では、分注後の感水紙の画像、及びその一部を拡大した画像(zoomed image 1及びzoomed image 2)を示す。
図2が示すように、通常一般に使われるマトリクス溶液をインクジェット技術を用いて微量分注した場合、マトリクススポットの並びに乱れが生じている。このように、通常一般に使われるマトリクス溶液を、長時間安定して分注することは困難である。
【0078】
[実験例5]
40% MeCN、10% 2-BuOH、及び0.1%TFAを含む水溶液であるマトリクス用溶媒(g)に、シナピン酸(SA)を5 mg/ml の濃度で溶解し、本発明のマトリクス溶液(G)を調製した。このマトリクス溶液(G)を感水紙に連続分注した。
【0079】
分注は、1滴につき100 pLずつ、支持体上の1箇所につき10滴ずつという条件で、2時間にわたり連続して行った。このとき、それぞれの分注位置間の距離は約400μmである。分注装置としては、実験例4と同じケミカルプリンタCHIP-1000(島津製作所製)を用いて行った。
上述のような、本発明のマトリクス溶液を用いた感水紙への連続分注の結果を、図3に示す。
【0080】
図3が示すように、本発明のマトリクス溶液を用いると、緻密に整然と並んだ多数のマトリクススポットが得られる。それぞれのマトリクススポットは全て同様の状態のものとして得られている。このように、従前のマトリクス溶液を用いた実験例4よりも分注位置間の距離が狭いことからより厳しい分注条件であったにもかかわらず、本発明のマトリクス溶液を用いた本実験例の連続分注は、非常に安定して行われたことが示された。
【0081】
[実施例1]
マウス脳組織(凍結切片)をITOシートに載せたものを試料として、本発明のマトリクス溶液を用いた組織上MS解析を行った。まず上記組織切片を載せたITOシートを適当な大きさにハサミで切り出した後、アルコール溶液による組織の洗浄を行った。この後導電性両面テープを介してステンレスプレートに貼り付け、組織切片を完全に乾燥させた。
【0082】
シナピン酸(SA)をマトリクスとする、以下の組成のマトリクス溶液を調製した。
(A) 5 mg/mL SA, 50% MeCN, 0.1% TFA (比較用)
(K) 5 mg/mL SA, 45% MeCN, 5% t-BuOH, 0.1% TFA
(J) 5 mg/mL SA, 40% MeCN, 10% t-BuOH, 0.1% TFA
(I) 5 mg/mL SA, 30% MeCN, 20% t-BuOH, 0.1% TFA
【0083】
次に、各マトリクス溶液を、ケミカルプリンタCHIP-1000(島津製作所製)を用いて組織切片上に微量分注を行った。一点に対する微量分注量としては、1回あたり100 pL/1滴を10滴連続滴下し、それを40回繰り返した量とした。またそれぞれの分注位置間の距離は800μmとした。
【0084】
マトリクス溶液(A)、(K)、(J)、及び(I)を用いた場合のマトリクススポットの写真を、それぞれ図4(A)、図4(K)、図4(J)、及び図4(I) に示す。図4が示すように、本発明のマトリクス溶液は、分注の安定化のための添加物(すなわち本実施例ではt-BuOH)を含ませているにもかかわらず、組織切片上のシナピン酸の結晶は、従来のマトリクス溶液(A)の場合と同様に良好な結晶化状態を有するものとして得られる。
【0085】
この後、MALDI-TOF MS、AXIMA-TOF2(島津製作所)を用い、それぞれの分注位置に対する質量分析を、linear mode/positive modeにて行った。質量値の較正は市販の標準化合物による外部標準法で行った。測定法はマトリクススポットの中心に対してラスター解析(250×250 mm, 25 mm pitchで169点、5shots、169 profiles)で実施した。
【0086】
マトリクス溶液(A)、(K)、(J)、及び(I)の使用によって得られたMSスペクトルを、それぞれ図5(A)、図5(K)、図5(J)、及び図5(I)に示す。図5が示すように、本発明のマトリクス溶液(K)、(J)、(I)を用いた場合でも、従前のマトリクス溶液(A)を用いた場合と同様のピークが検出されている。このことから、本発明のマトリクス溶液が、添加物(すなわち本実施例ではt-BuOH)を含んでいても、従前のマトリクス溶液(A)の場合と同様に、良好な解析感度及び分解能が得られることが確認された。
【0087】
しかも、本発明のマトリクス溶液は、上記実験例4及び5の比較で示されたとおり、従前のマトリクス溶液(A)とは異なり、長時間の分注を非常に安定して行うことを可能にする。このため、組織切片上の一定の範囲においても、緻密に整然と並んだ多数のマトリクススポットを、同様の結晶化状態で得ることが可能であることが明らかである。従って、本発明のマトリクス溶液を用いると、従前のマトリクス溶液を用いた場合とは異なり、上記実施例1で得られたような良好な解析感度及び分解能が示されるMS解析結果を、当該一定範囲のどの位置においても同様に得ることが可能になることが明らかである。
【0088】
以上の結果より、本発明のマトリクス溶液によって、連続する微量分注を安定して行うことが可能になるため、特定の範囲全体において同じスポットを多数形成すること、すなわち均一にスポットを形成することが可能になる。さらに、組織上MS解析に適用した場合、マトリクスの結晶化阻害を起こすことなく、良好な解析感度及び分解能を得ることが可能になる。しかも、組織上の解析範囲全体に同じスポットを多数形成することができるため、どのようなスポットにおいてもそのような良好な解析感度及び分解能を安定的に得ることができる。このため、非常に信頼性の高い解析結果を得ることが可能になる。
【0089】
上記実施例においては、マトリクスとしてシナピン酸、添加物としてt-ブタノール、及びその他のマトリクス用溶媒構成成分として、水、アセトニトリル、及びトリフルオロ酢酸を含み、特定の粘度及び表面張力を有するマトリクス溶液を用いて、インクジェット技術を用いた微量分注によって、組織上MS解析を行った。しかし、本発明は、特定の粘度及び表面張力を有していれば、上記以外の組成を有するマトリクス溶液にも適用される。例えば、本発明は、上記シナピン酸以外のマトリクスや、上記t-ブタノール以外の添加物、及び/又は上記以外のその他のマトリクス用溶媒構成成分を含むマトリクス溶液にも適用される。また、本発明は、上記インクジェット技術以外の分注技術、及び、上記組織上MS解析以外のMS解析にも適用される。そのため、上記実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、実験例1において、本発明のマトリクス溶液に用いることができるマトリクス用溶媒(f)(g)(h)(i)(j)を含むさまざまなマトリクス用溶媒(a)〜(j)を、ステンレスプレート上に滴下した後の、それぞれの液滴の広がりを示す写真である。
【図2】図2は、実験例4において、従前のマトリクス溶液(A)を感水紙に連続分注した後の、感水紙の画像、及びその一部を拡大した画像(zoomed image 1及びzoomed image 2)である。
【図3】図3は、実験例5において、本発明のマトリクス溶液(G)を感水紙に連続分注した後の感水紙の画像である。
【図4】図4は、実施例1において、従前のマトリクス溶液(A)、及び本発明のマトリクス溶液(K)、(J)及び(I)を用いてマウス脳組織の凍結切片上に形成させた際の、マトリクススポットの写真である。
【図5】図5は、実施例1において、従前のマトリクス溶液(A)、及び本発明のマトリクス溶液(K)、(J)及び(I)を用いてマウス脳組織の凍結切片の組織上MS解析を行って得られたマススペクトルである。
【図6】図6は、実験例及び実施例における、マトリクス用溶媒及びマトリクス溶液の粘度を測定する方法を示した図である。
【図7】図7は、実験例及び実施例における、マトリクス用溶媒及びマトリクス溶液の表面張力を測定する方法を示した図である。
Claims (14)
- マトリクス支援レーザー脱離イオン化法による質量分析に使用されるべきマトリクス溶液であり、0.85mPa・s(23℃)以上の粘度及び25〜30mN/m(23℃)の表面張力を有するマトリクス溶液を、1fl〜1μlの量の分注を行う微量分注手段を用いて、測定に供すべきサンプルに分注し、質量分析用サンプルを得ることを含む、微量分注手段を用いたマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
- 前記マトリクス溶液は、溶媒として、炭素数3〜10の直鎖又は分枝鎖を有するアルコールを含む、請求項1に記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
- 前記炭素数3〜10の直鎖又は分枝鎖を有するアルコールは、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、t-ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、2,3−ジメチル−1−ペンタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2,2−ジメチル−3−ヘキサノール、2,5−ジメチル−2−ヘキサノール、1−ノナノール、2−ノナノール、3−ノナノール、2,3−ジメチル−3−ヘプタノール、3,6−ジメチル−3−ヘプタノール、1−デカノール、3−デカノール、4−デカノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、4−n−プロピル−4−ヘプタノール、3−エチル−2−メチル−2−ヘプタノール、及び3,4−ジエチル−3−ヘキサノールからなる群から選ばれる、請求項2に記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
- 前記炭素数3〜10の直鎖又は分枝鎖を有するアルコールは、前記マトリクス溶液中に5〜30体積%含む、請求項2又は3に記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
- マトリクスが、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2−(4−ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸、シナピン酸、フェルラ酸、3−ヒドロキシピコリン酸、ジスラノール、及びグリセロールからなる群から選ばれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
- 前記測定に供すべきサンプルは、ペプチド、糖鎖、脂質、核酸、それらの誘導体及び複合体からなる群から選ばれる生体分子を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
- 前記測定に供すべきサンプルが、生体組織切片である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
- 前記生体組織切片が凍結切片又はパラフィン切片である、請求項7に記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
- 前記測定に供すべきサンプルは、支持体に固定化されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
- 前記支持体の素材が、ガラス、紙、木材、金属、磁性粒子及び高分子からなる群から選ばれる、請求項9に記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
- 前記支持体がメンブレンである、請求項9に記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
- 前記支持体に固定化されたサンプルは、生体分子の調製物を前記支持体に滴下し、乾燥することを含む工程によって調製したものであるか、又は、
生体分子の調製物を、前記支持体に熱的又は電気的に転写することを含む工程によって調製したものである、請求項9〜11のいずれか1項に記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。 - 前記分注手段が、インクジェット機構を有する装置によるものである、請求項1〜12のいずれか1項に記載のマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析用サンプルの調製法。
- 請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法によって得られた質量分析用サンプルを、マトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析装置を用いた測定に供する、マトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析法。
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