JP4998186B2 - 管楽器の吹鳴装置および管楽器の吹鳴方法 - Google Patents

管楽器の吹鳴装置および管楽器の吹鳴方法 Download PDF

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本発明は、管楽器を吹き鳴らす装置および方法に関し、特に、マウスピースに設けられたリードの振動により発音する管楽器を吹き鳴らす装置および方法に関する。
例えば、管楽器の音響特性の測定においては、人がその管楽器を吹き鳴らしてその特性測定を行うことが一般的である。しかし、管楽器へ吹き込む息の強さや、吹奏者の口腔内容積などは吹奏者毎に異なるため、ピッチやアタック、ダイナミクスなどが吹奏者毎に異なり、測定結果に再現性が乏しいといった問題がある。また、管楽器を人が吹き鳴らして音響特性の測定を行う態様では、長時間に亘って一定の音程(ピッチ)および一定の音量で吹き鳴らすこと(すなわち、安定的に吹き鳴らすこと)は困難であり、ロングトーンについての測定に支障が生じるといった問題もある。そこで、エアコンプレッサから吐出される空気流を管楽器に供給してその管楽器を吹奏することが提案されている(例えば特許文献1)。
特開2007−65197号公報
しかし、サクソフォーンのようにマウスピースに設けられたリードの振動により発音する管楽器を、エアコンプレッサを用いて吹奏することは実際には極めて難しい。その理由は、以下の通りである。図5(a)は、サクソフォーンのマウスピース11とそのマウスピース11に装着されたリード12とをくわえた吹奏者の口腔の様子を示す図であり、図5(b)は、マウスピース11とリード12との隙間へ流れ込む空気の流量Rと、吹奏者の口腔内圧力P1とマウスピース11内の圧力P2との差ΔPの関係を示すグラフである。図5(b)に示すように、ΔPが大きくなるに連れて空気流量Rは次第に増加し、その増加が頭打ちになったあたりからサクソフォーンは鳴り始めるのであるが、ΔPが一定値thを超えると、空気流量Rは0になり、サクソフォーンは鳴らなくなる。これは、圧力差ΔPが一定値thを超えると、リード12がマウスピース11へ張り付き、両者の隙間がなくなるからである。このように、マウスピースに設けられたリードの振動により発音する管楽器においては、リードおよびマウスピースの周囲の圧力(上記口腔内圧力)とマウスピース内の圧力との差が極めて重要である。
これに対して、図6に示すように、管楽器1のマウスピースを収容したマウスピースキャップ40へエアコンプレッサ20から吐出された空気流を流入させて圧力差ΔPを再現しようとしても、その流入開始直後に圧力差ΔPが閾値thを超えてしまうことが本出願発明者の行った実験により判明した。図6に示すように、エアコンプレッサ20から吐出される空気流を管楽器1へ供給する態様では、エアコンプレッサ20から空気流案内路30へ吐出される空気流の流量をエアコンプレッサ20に設けられている流量調整弁(図示略)で調整するのであるが、管楽器1のリードを閉じさせない程度の流量で空気流を供給するといった微調整は極めて難しいのである。これが、リードの振動で発音する管楽器をエアコンプレッサを用いて吹奏することが難しい理由である。
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、マウスピースに設けられているリードの振動により発音する管楽器を長時間に亘って安定的に吹き鳴らすことを可能にする技術を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、空気流を吐出するエアコンプレッサと、管楽器のマウスピースを収容するマウスピースキャップと、弾力性を有する壁面を有する中空体を有する圧力制御バッファと、前記エアコンプレッサから吐出される空気流を分枝させて、前記マウスピースキャップ内および前記圧力制御バッファの中空体内へ案内する空気流案内路と、前記エアコンプレッサから前記空気流案内路に吐出される空気流の流量を調整する流量調整手段とを有することを特徴とする管楽器の吹鳴装置、を提供する。
かかる吹鳴装置においては、エアコンプレッサから吐出された空気流は空気流案内路によりマウスピースキャップ内および圧力制御バッファの中空体内へ案内される。空気流案内路から空気が流入するに連れて、マウスピースキャップ内および圧力制御バッファの中空体内の圧力は共に上昇しようとするのであるが、この中空体の壁面は弾力性を有しているため、その膨張によってその内圧の上昇は緩やかなものになる。一方、マウスピースキャップは空気流案内路で上記中空体と接続されているのであるから、そのマウスピースキャップ内の圧力の上昇も緩やかなものになる。このようにマウスピースキャップ内の圧力が急激に上昇することはないため、上記管楽器が発音機構としてリードを有するものであっても、リードとマウスピースとの隙間が閉じることはなく、その管楽器は鳴り始める。そして、マウスピースキャップにマウスピースが収容された管楽器が鳴り始めた状態において、エアコンプレッサから空気流案内路へ吐出される空気流の流量を流量調整手段によって調整すれば、上記管楽器は一定の音量で鳴り続ける。ここで、エアコンプレッサは長時間に亘って空気流を安定的に発生させるため、本発明に係る吹鳴装置によれば、管楽器を安定的に吹き鳴らすことができるのである。
より好ましい態様においては、上記吹鳴装置の前記圧力制御バッファが有する中空体は、外から加わった圧力に応じて容積が変化するものであることを特徴とする。このような態様の吹鳴装置によれば、管楽器が鳴っている状態で、圧力制御バッファの中空体に外から圧力を加えてその容積を変化させると、その容積の変化につれて内圧が変化する。このような圧力制御バッファの中空体の内圧が変化すると、マウスピースキャップ内の圧力も変化し、マウスピースキャップ内の圧力とマウスピース内の圧力との差に応じた空気流がマウスピースとリードとの隙間に流れ込み、管楽器から放音される音の音量が変化する。そして、所望の音量で管楽器が鳴っている状態において、エアコンプレッサから空気流案内路へ吐出される空気流の流量を流量調整手段によって調整すれば、その音量が維持される。
また、別の好ましい態様においては、上記吹鳴装置のマウスピースキャップには、前記マウスピースに設けられているリードに当接する弾性部材が設けられているとともに、前記リードに当接する面とは反対の面から前記弾性部材を押圧する押圧部材が設けられていることを特徴とする。このような態様においては、上記弾性部材を介して前記押圧部材によりリードを押圧することにより、該リードの振動量の微調整が行われる。一般に、マウスピースキャップ内の圧力(すなわち、口腔内圧力に相当する圧力)とマウスピース内の圧力との差と、マウスピースとリードの隙間へ流れ込む空気量との関係は音のピッチ毎に異なるため、マウスピースキャップ内の圧力が同一であっても、管楽器から放音される音の音量はピッチ毎に異なる。しかし、本態様においては、リードの振動量を微調整することによって、各ピッチの音を略同じ音量で放音させることが可能になる。
また、上記課題を解決するために、本発明は、空気流を吐出するエアコンプレッサと、管楽器のマウスピースを収容するマウスピースキャップと、弾力性を有する壁面を有する中空体を有する圧力制御バッファとの間に、前記エアコンプレッサから吐出される空気流を分枝させて、前記マウスピースキャップ内および前記圧力制御バッファの中空体内に案内する空気流案内路を設ける第1の工程と、前記エアコンプレッサから前記空気流案内路へ吐出される空気流の流量を増加させ、前記マウスピースキャップ内にマウスピースが収容された管楽器が鳴り始めた時点で、前記エアコンプレッサから前記空気流案内路へ吐出される空気流の流量を一定にする第2の工程とを有することを特徴とする管楽器の吹鳴方法を提供する。発音機構としてリードを備えた管楽器をかかる方法により長時間に亘って一定の音量で吹き鳴らすことができることは前述した通りである。なお、前記圧力制御バッファとして、外から加わった圧力に応じて容積が変化する中空体を使用し、前記第2の工程の後の工程として、前記管楽器が鳴っている状態において、前記圧力制御バッファの中空体に外から圧力を加えて、前記中空体の内圧を調整し、前記管楽器の吹鳴音の音量を調整する第3の工程と、前記第3の工程において調整された音量が維持されるように、前記エアコンプレッサから前記空気流案内路へ吐出される空気流の流量を調整する第4の工程とをさらに実行する態様によれば、管楽器を長時間に亘って所望の音量で安定的に吹鳴させることができることは前述した通りである。
本発明によれば、マウスピースに設けられているリードの振動により発音する管楽器を長時間に亘って安定的に吹き鳴らすことが可能になる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。
(A:第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る吹鳴装置2Aの構成例を示す図である。図1に示すように、吹鳴装置2Aは、エアコンプレッサ20、空気流案内路30、マウスピースキャップ40およびゴム風船50Aを含んでいる。なお、図1では、図6と同一である構成要素には同一の符号が付されている。
エアコンプレッサ20は、例えばサクソフォーンなどの管楽器1を吹き鳴らすための空気流(すなわち、演奏者が管楽器1のマウスピースへ吹き込む息を模した空気流)を発生させるものである。このエアコンプレッサ20の空気流吐出口には空気流案内路30が接続される。
空気流案内路30は、例えば1センチメートル程度の内径を有する管状部材である。空気流案内路30の一方の端はエアコンプレッサ20の空気流吐出口に接続されており、他方の端は図1に示すように2分枝し、マウスピースキャップ40とゴム風船50Aの各々に接続されている。この空気流案内路30は、エアコンプレッサ20から吐出された空気流をマウスピースキャップ40内およびゴム風船50A内へ案内するためのものである。図1に示すように、空気流案内路30には、エアコンプレッサ20から上記分枝に至る途中に流量調整弁31が設けられている。この流量調整弁31の開放度を調整することにより、エアコンプレッサ20から空気流案内路30に吐出される空気流の流量を制御することができる。なお、本実施形態では、空気流案内路30に設けられた流量調整弁31を上記流量調整手段として用いたが、エアコンプレッサに設けられている流量調整弁を上記流量調整手段として用いても良い。図1と図6とを比較すれば明らかなように、本実施形態に係る吹鳴装置2Aは、エアコンプレッサ20によって発生させた空気流の一部をゴム風船50Aへ流入させるように構成したことに特徴がある。このような構成としたことの技術的意義については後に明らかにする。
マウスピースキャップ40には、管楽器1のマウスピースが収容される。このマウスピースキャップ40は、空気流案内路30を案内されてくる空気流を上記マウスピースへ流入させるとともに、吹奏者の口腔の役割やその唇等による演奏操作をシミュレートするためのものである。図2は、マウスピースキャップ40の構成を示す図である。図2に示すように、マウスピースキャップ40は、その構成要素として、キャップ本体41、人工唇42、人工歯43および密閉シール44を有している。
キャップ本体41は、例えば樹脂などによりコップ状に形成された部材である。このキャップ本体41の底面には、空気流案内路30を案内されてくる空気流が流入する空気流入孔41aが設けられており、同側面には、マウスピース11に装着されるリード12に対向する位置に人工歯43が貫通する貫通孔41bが設けられている。このキャップ本体41については、マウスピース11を持ち運ぶ際の保護用品として一般に市販されているマウスピースキャップに上記空気流入孔41aおよび貫通孔41bを設けることにより作成すれば良い。
人工唇42は、人肌と同等のゲル硬度を有するウレタンゲルなどで形成された弾性部材である。この人工唇42は、楽器吹奏者の唇の役割を果たすものであり、リード12を押さえてその振動量(すなわち、管楽器1が発する音のピッチ)を調整するためのものである。人工歯43は、人工唇42をリード12に対向する面とは反対側の面から押圧する押圧部材、すなわち、上記楽器吹奏者の前歯の役割を果たすものである。このように、人工唇42および人工歯43は、楽器吹奏者の唇等による演奏操作をシミュレートするものである。
密閉シール44は、キャップ本体41とマウスピース11との隙間を塞ぎ、空気漏れを防止するためのものである。この密閉シール44については、マウスピース11にキャップ本体41を装着した後に両者の隙間に市販のコーキング剤やシール剤を流し込むことにより形成すれば良い。この密閉シール44によりマウスピース11とキャップ本体41の隙間が埋められ、演奏者の口腔の役割を果たす閉空間が形成されるのである。
以上がマウスピースキャップ40の構成である。
次いで、エアコンプレッサ20を用いて管楽器1を吹鳴させる具体的な手順について説明する。エアコンプレッサ20から吐出される空気流により管楽器1を吹鳴させるには、まず、エアコンプレッサ20、マウスピースキャップ40およびゴム風船50Aの間に空気流案内路30を図1に示すように接続し、さらに、マウスピースキャップ40に管楽器1のマウスピース11を収容する操作を行う(以下、これら一連の操作を「第1の工程」と呼ぶ)。そして、この第1の工程に後続する第2の工程では、エアコンプレッサ20を作動させ、流量調整弁31を開放してゆく。このように流量調整弁31を開放してゆくと、エアコンプレッサ20から吐出される空気流は空気流案内路30によりマウスピースキャップ40およびゴム風船50Aへ案内される。
空気流案内路30から空気が流入するに連れてマウスピースキャップ40の内壁とマウスピース11により区画される閉空間(すなわち、吹奏者の口腔の役割を担う閉空間:以下、第1の閉空間)および中空体であるゴム風船50A内の閉空間(以下、第2の閉空間)の圧力は共に上昇しようとする。しかし、ゴム風船50Aの壁面は弾力性を有しているため、その伸長(すなわち、ゴム風船50A全体の膨張)によって上記第2の閉空間内の圧力の上昇が吸収され、第2の閉空間内の圧力の上昇は緩やかなものになる。また、第1の閉空間と第2の閉空間とは空気流案内路30によって繋がっているため、両者の内圧は略同一になる。したがって、第1の閉空間内の圧力の上昇も緩やかなものになる。このように、本実施形態に係る吹鳴装置2Aにおいては、第1の閉空間内の圧力が急激に上昇することはなく、マウスピース11とリード12との隙間が閉じることはない。つまり、本実施形態に係る吹鳴装置2Aのゴム風船50Aは、マウスピースキャップ40の内壁とマウスピース11により形成される閉空間内の圧力が急激に上昇することを防止する圧力制御バッファの役割を果たすのである。
以上に説明したように、本実施形態においては、マウスピース11とリード12の隙間が閉じることはなく、マウスピースキャップ40内の圧力とマウスピース11内の圧力との差に応じた流量の空気流が上記隙間へ流入するため、管楽器1が鳴り始める。このように管楽器1が鳴り始めた状態で流量調整弁31の開放度を一定に保てば、管楽器1は一定の音量で放音し続けるのである。
ところで、本実施形態に係る吹鳴装置2Aによれば、管楽器1を一定の音量で吹き鳴らすことが可能になるのであるが、その音量を変化させることは難しいことが本出願発明者の行った実験により判明した。より詳細に説明すると、管楽器1から放音される音の音量を増加させるためには、流量調整弁31をさらに開放してマウスピースキャップ40内の圧力を上昇させる必要がある。しかし、管楽器1が鳴り始めた状態からさらに流量調整弁31をさらに開放すると、ゴム風船50Aがさらに膨張し破裂する虞があることが上記実験により判明したのである。この実験結果を踏まえて、本出願発明者は、以下に説明する第2実施形態の吹鳴装置2Bを発明したのである。
(B:第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る吹鳴装置2Bの構成例を示す図である。この吹鳴装置2Bは、ゴム風船50Aに換えて、フットポンプ50Bで圧力制御バッファを構成した点に特徴がある。ここで、フットポンプとは、ゴムボートや浮き輪などを膨らますための足踏み式ポンプのことであり、外から加わった圧力に応じて容積が変化する中空体をポンプ本体として有している。また、一般に、フットポンプのポンプ本体はゴム風船に比較して強度が高いため、管楽器1の吹鳴音の音量を増加させる操作に伴う内圧の上昇にも充分に耐えることができる。
次いで、本実施形態において管楽器1を吹鳴させる手順について説明する。
吹鳴装置2Bの各構成要素を図3に示すように接続するとともにマウスピースキャップ40に管楽器1のマウスピース11を収容し、その管楽器1が鳴り始めるまで流量調整弁31を開放すること、すなわち、前述した第1および第2の工程を行うことは、前述した第1実施形態の場合と同一である。しかし、管楽器1から放音される音の音量に変化を与えるために、以下の操作を行うことが前述した第1実施形態と異なる。
すなわち、本実施形態においては、管楽器1が鳴り始め、流量調整弁31の開放度を一定に保った状態で、フットポンプ50Bの中空体(ポンプ本体)に外から圧力を加える操作(例えば、ポンプ本体を足で踏む操作)を行う(第3の工程)。このような操作を行うと、フットポンプ50Bの中空体の容積は、外から加えた圧力の強さに応じて変化し、その内圧(上記第2の閉空間内の圧力)も変化する。このように上記第2の閉空間の圧力が変化すると、その変化に応じて上記第1の閉空間内の圧力が変化し、管楽器1から放音される音の音量が増減する。そして、フットポンプ50Bのポンプ本体に外から加える圧力の強さに応じて流量調整弁31の開放度を調整し、所望の音量で管楽器1が鳴る状態になったところその開放度を一定に保てば(第4の工程)、管楽器1を所望の音量で吹き鳴らすことが可能になる。また、管楽器1が一定の音量で鳴っている状態でフィンガリング(すなわち、トーンホールを指で押さえる操作)を行えば、ピッチを変えることもできる。ただし、図5(b)に示す空気流量と圧力差の関係はピッチによって異なるため、音の鳴りやすさや音量はピッチによって異なる。そこで、人工歯43により人工唇42を押圧する強さをピッチ毎に適宜調整してリード12を押さえる力を調整し、各ピッチの音が一定の音量で放音されるようにすれば良い。
このように、本実施形態に係る吹鳴装置2Bによれば、マウスピース11に設けられたリード12の振動により発音する管楽器1をエアコンプレッサ20を用いて、安定的かつ長時間に亘って一定の音量および一定のピッチで吹き鳴らすことが可能になるとともに、その音量を自由に増減させることが可能になる。
以上説明したように、本発明によれば、エアコンプレッサやマウスピースキャップ、ゴム風船やフットポンプ等の市販の物を利用して簡便に、リードの振動で発音する管楽器を長時間に亘って安定的に吹き鳴らすことが可能になる。
(C:変形)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、かかる実施形態に以下に述べる変形を咥えても良いことは勿論である。
(1)様々なピッチの音を出す必要がない場合には、人工唇42や人工歯43を設ける必要がないことは言うまでも無い。また、上述した第1実施形態では、圧力制御バッファとしてゴム風船50Aを用い、第2実施形態では、同圧力制御バッファとしてフットポンプ50Bを用いた。しかし、本発明に係る吹鳴装置の必須構成要素である圧力制御バッファは、これらゴム風船やフットポンプに限定されるものではなく、弾力性を有する壁面(例えば、弾力性を有する材料で形成された壁面や、蛇腹形状などの弾力性を有する形状に加工された壁面)を有する中空体を有するものであれば良い。また、上記第1および第2の実施形態の説明から明らかなように、上記中空体としては、外から加わった圧力に応じて容積が変化するものであることが好ましい。
(2)上述した実施形態では、人工歯43による押圧量を調整することによって、リード12の振動量を調整し、管楽器1から放音される音の音量がピッチによらずに一定になるようにした。しかし、ピッチと音量との関係は、リード12の振動量のみならず、マウスピース11を咥えた演奏者の口腔内容積にも依存することが知られているから、この口腔内容積との関係を再現できるようにしても良い。このようなことは、図4に示すように、壁面が蛇腹状に形成されたキャビティ60をマウスピースキャップ40と空気流案内路30との間に介挿し、上記蛇腹を伸ばしたり縮めたりしてキャビティ60の容積を変化させることによって実現可能である。例えば蛇腹付き薬瓶(壁面の一部が蛇腹状に形成された薬瓶)の底面に空気流案内路30に接続する孔を穿ってキャビティ60を作成すれば良い。
本発明の第1実施形態に係る吹鳴装置2Aの構成例を示す図である。 同吹鳴装置2Aのマウスピースキャップ40の断面図である。 本発明の第2実施形態に係る吹鳴装置2Bの構成例を示す図である。 変形例に係る吹鳴装置の構成例を示す図である。 サクソフォーンが鳴る原理を説明するための図である。 エアコンプレッサを用いた吹鳴装置の実験例を示す図である。
符号の説明
1…管楽器、11…マウスピース、12…リード、2A,2B…吹鳴装置、20…エアコンプレッサ、31…流量調整弁、30…空気流案内路、40…マウスピースキャップ、41…キャップ本体、42…人工唇、43…人工歯、44…密閉シール、50A…ゴム風船、50B…フットポンプ。

Claims (5)

  1. 空気流を吐出するエアコンプレッサと、
    管楽器のマウスピースを収容するマウスピースキャップと、
    弾力性を有する壁面を有する中空体を有する圧力制御バッファと、
    前記エアコンプレッサから吐出される空気流を分枝させて、前記マウスピースキャップ内および前記圧力制御バッファの中空体内へ案内する空気流案内路と、
    前記エアコンプレッサから前記空気流案内路に吐出される空気流の流量を調整する流量調整手段と、
    を有することを特徴とする管楽器の吹鳴装置。
  2. 前記圧力制御バッファが有する中空体は、外から加わった圧力に応じて容積が変化するものであることを特徴とする請求項1に記載の管楽器の吹鳴装置。
  3. 前記マウスピースキャップには、前記マウスピースに設けられているリードに当接する弾性部材が設けられているとともに、前記リードに当接する面とは反対の面から前記弾性部材を押圧する押圧部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の管楽器の吹鳴装置。
  4. 空気流を吐出するエアコンプレッサと、管楽器のマウスピースを収容するマウスピースキャップと、弾力性を有する壁面を有する中空体を有する圧力制御バッファとの間に、前記エアコンプレッサから吐出される空気流を分枝させて前記マウスピースキャップ内および前記圧力制御バッファの中空体内に案内する空気流案内路を設ける第1の工程と、
    前記エアコンプレッサから前記空気流案内路へ吐出される空気流の流量を増加させ、前記マウスピースキャップ内にマウスピースが収容された管楽器が鳴り始めた時点で、前記エアコンプレッサから前記空気流案内路へ吐出される空気流の流量を一定にする第2の工程と、
    を有することを特徴とする管楽器の吹鳴方法。
  5. 前記圧力制御バッファとして、外から加わった圧力に応じて容積が変化する中空体を有するものを使用し、前記第2の工程の後の工程として、前記管楽器が鳴っている状態において、前記圧力制御バッファの中空体に外から圧力を加えて、前記中空体の内圧を調整し、前記管楽器の吹鳴音の音量を調整する第3の工程と、
    前記第3の工程において調整された音量が維持されるように、前記エアコンプレッサから前記空気流案内路へ吐出される空気流の流量を調整する第4の工程と、
    をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の管楽器の吹鳴方法。
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