JP4992665B2 - バラスト水の処理システム - Google Patents
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Description
このようにバラスト水が取水した海域と異なる海域に排水されると、海水中の生物が本来の生息地でない海域に移動させられることとなり、海洋の生態系に大きな影響を及ぼすこととなる。
該磁気分離装置は、原水に鉄酸化物粒子を添加して、被除去物に磁性を付与した後に、磁気フィルタを通過させて、被除去物を磁気フィルタに磁着して分離除去している。このように磁気で被除去物を分離除去しているため、磁気フィルタの水通過用の空孔を広くしても被除去物を分離除去でき、水処理の高速化を図ることができる。
排水される前記バラスト水を収容する複数の保管容器と、
洋上に浮遊させ、前記各保管容器の上側部を支持すると共に下側部を海水中に沈降させた状態で支持する保持手段を備え、
前記保管容器を保持した前記保持手段を前記船舶からバラスト水を輸送管を介して前記保管容器に移し替え可能な位置まで曳航し、前記保管容器にバラスト水を移し替え、その後、
バラスト水浄化処理装置が設置された陸上施設またはバラスト水浄化処理装置が設置された水処理専用船舶へ曳航し、あるいは、
洋上保管場所に曳航して停留させ、船舶からバラスト水の給水要求を受けると、前記保持手段で前記船舶まで曳航し、該保管容器に貯留したバラスト水を前記船舶のバラスト水タンクへと送給することを特徴とするバラスト水の処理システムを提供している。
さらに、保管容器に貯留されたバラスト水は、他の船舶のバラスト水として再利用、あるいは船舶外の陸上または専用船舶に設けたバラスト水浄化処理装置(以下、バラスト水処理装置と略称する)によりバラスト水を浄化処理し、この処理水を海へ排水または浄水として再利用することができる。
また、洋上に浮遊する保持手段により保管容器の下側部を海水中に沈降させた状態で支持しているため、港に停泊するバラスト水を排出する船舶と洋上保管場所またはバラスト水処理装置が設置された陸上施設や専用船舶との間を曳航により容易に移動させることができる。これにより、バラスト水の洋上保管場所またはバラスト水処理装置を必ずしも積荷港の近くに設ける必要がなく、洋上保管場所またはバラスト水処理装置を設ける場所の自由度が高くなる。
さらに、バラスト水処理装置を船舶に搭載している場合には、航海中に水処理を終える必要がある等の時間的な制約が厳しいため、高速度で水処理できる高性能なバラスト水処理装置が必要となる。これに対して、本発明のバラスト水処理システムではバラスト水処理装置を船舶外に設けることができるため、水処理の時間的な制約が少なく、バラスト水処理装置に高速処理が要求されない。
また、前記保管容器はバラスト水を収容した後に閉鎖するため、浄化処理する前のバラスト水が海へ流出することが防止できると共に海水の混入を防止することができる。
保管容器を閉鎖する構成は種々の構成が可能であり、例えば、保管容器の開口側上部を紐で縛り上げて閉鎖する構成や開口に別体の蓋を被せて閉鎖する構成が挙げられる。
さらに、前記係止具により保管容器を保持手段に着脱自在としているため、収容するバラスト水の量や曳航する海の水深に応じて保管容器を交換することができる。また、保管容器と保持手段を着脱自在としたことにより、保管容器と保持手段の回収作業および設置作業を容易にすることができる。
前記保管容器の1つの容量は200m3〜1000m3であることが好ましい。1つの保管容器の容量が200m3より小さいと1隻の船舶のバラスト水を移し替えるのに多数の保管容器が必要となるからであり、1000m3より大きいと保管容器の管理や移動が行いにくくなる。保管容器の1つの容量は、入港する船舶のバラスト水の容量や湾の水深、海流の速さ等に応じて、適切な値を選ぶことができる。また入港する頻度は少ないが、大容量のバラスト水を搭載する船舶に対しては、複数の容器を組み込んだユニットと、このユニットをさらに複数組み合わせることで対応できる。
また、有機繊維からなる織布に、ゴムまたはプラスチックを被覆した引布により形成してもよい。さらに、前記引布を複数積層してもよい。
前記ゴムとしては、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、EPDM、ポリオレフィン系の熱可塑性エラストマーまたは有機過酸化物を用いて架橋されたゴムが好ましい。 前記プラスチックとしては、塩化ビニル系またはポリオレフィン系が好ましい。
前記有機繊維としては、ポリエステル、ポリエチレンまたはフッ素系樹脂が好ましい。
前記浮き材の材質は洋上に浮くものであればよいが、強度を考慮すると鋼材やFRPが好適に用いられる。
この場合、船舶からバラスト水の要求を受けたときに、洋上保管場所で停留させている保持容器を前記船舶まで曳航し、保管容器に貯留したバラスト水を船舶のバラスト水タンクへと送給する。
即ち、船舶から排出されたバラスト水を保管容器に貯留しておき、必要に応じて他の船舶に再度バラスト水として供給して、バラスト水を海に排水しないため、バラスト水を浄水処理する必要がない。
前記システムとすると、保管容器に貯留したバラスト水を浄化処理した後に海洋投棄するため、バラスト水の給水海域と投棄海域が相違しても生物形態に影響を及ぼすことがなく投棄することができる。かつ、浄化処理しているため、水不足地域では浄水として再利用することも可能となる。
また、バラスト水処理装置で浄化された水を再び保管容器に戻し、バラスト水として船舶へ供給し利用してもよい。この場合、バラスト水を既に浄化処理しているため、船舶の航海後、他のどこの海でもそのまま排水することができる。
被除去物が含まれるバラスト水に磁性粒子を添加する磁性粒子供給部と、
磁気フィルタを備え、前記磁性粒子供給部で添加された磁性粒子が付着して磁性を帯びた
被除去物を前記磁気フィルタの空孔通過時に磁着して分離する磁気分離装置と、
前記磁気フィルタの空孔よりも小さい空孔を有する多孔質の濾過膜を備え、前記磁気分離装置で除去されなかったバラスト水中の被除去物を前記濾過膜で捕捉する濾過装置と、
を備えていることが好ましい。
このように、まず、高速に被除去物を除去できる磁気分離装置で被除去物の90%以上の大半を除去した後に、濾過装置で濾過しているため、バラスト水中の被除去物は少量となり、濾過膜の目詰まりが発生しにくくなり、よって、濾過膜の透過流量の低下を抑制でき、処理時間を短縮化できる。
このように、磁気分離装置と濾過装置の夫々の利点を生かすと共に欠点を相互に補完することで、大量のバラスト水を高速処理できると共に被除去物の除去率を確実に高めることができる。
また、超電導線材として酸化物超電導線材を用いると、金属系超電導線材と比較して、臨界温度が高いため、温度上昇による臨界電流密度の低下が小さく、クエンチしにくい高い安定性を有し、電磁石の動作が安定する。かつ、酸化物超電導線材を用いた電磁石は、金属系の超電導線材を用いた電磁石よりも軽量かつコンパクトな構成とすることができる。
さらに、酸化物超電導線材コイルの電磁石で磁場を付与した磁気フィルタは、付着した被除去物を取り除く洗浄時に減磁する際に、高速で減磁できると共に、洗浄後の励磁も高速で行える。このように、磁気分離装置における磁界の発生と消去とを短時間で行えるため、磁気フィルタの洗浄に要する時間を短縮でき、分離処理効率を高めることができる。
前記最大孔径を0.1μm〜15μmとしているのは、0.1μm以上の被除去物を確実に捕捉するためである。0.1μm以上を捕捉できるようにすると、バラスト水中に細菌が浮遊する場合、細菌が0.1μm以上であれば細菌も捕捉して除去することができる。
前記PTFE製の多孔質膜を有する中空糸は、該PTFE多孔質膜のみからなる1層でも良いし、複数層を積層したものでもよい。
前記中空糸を複数本集束して処理水取出配管に連結した中空糸膜モジュールを、濾過装置の槽中に複数個浸漬配置し、該濾過槽中に前記磁気分離装置で処理した処理水を流入し、中空糸の多孔質膜を通して、濾過された中空糸内の処理水を前記処理水取出配管に介設したポンプで吸引して取り出している。また、濾過槽中に散気管を配置し、中空糸膜モジュールの間や、各中空糸膜モジュールの密集した中空糸間にバブリングして濾過膜の表面に付着する被除去物の付着を抑制することが好ましい。
前記のように濾過装置で0.1μm以上の被除去物を捕捉できるようにした場合、バラスト水中に0.1μm未満の粒子や細菌が存在すると濾過装置でも分離できない。前記水処理装置で、例えば、1つのバラスト水タンクに貯留されたバラスト水を磁気分離装置で分離除去後に濾過装置で濾過していく場合、磁気分離工程および濾過工程で分離除去されなかった前記0.1μm未満の粒子や細菌が残存する濃縮液として濾過槽中に残存する。この濾過槽に残存する濃縮液は処理するバラスト水の通常1〜5%程度となる。
この残存した濃縮液を前記のように配管を通して電解装置へと送給し、該電解装置内でオゾン、次亜塩素酸、ナノバブルを付与して、残存する0.1μm未満の細菌を殺菌している。
図1乃至図10に、本発明の第1実施形態を示す。
本実施形態のバラスト水の処理システムは、図1に示すように、出港地でオイルタンカーからなる船舶103内のタンクに供給されたバラスト水を、原油が供給される積荷港101において保管容器40に移し替えた後、積荷港101に設置されたオイルタンク100よりタンクへ原油を供給している。
前記保管容器40は洋上に浮遊させており、バラスト水が貯留した後、積荷港から離れた洋上保管場所90へと曳航して保管しておき、あるいは積荷港から直接あるいは洋上保管場所90で一旦保管してから、岸壁120に設置したバラスト水処理装置10を設けた陸上施設へ曳航し、該バラスト水処理装置10によりバラスト水を浄化処理している。
保管容器40は、図3に示すように、上端に開口40aを設けた円筒状の浮袋状とし、ポリエステル製の有機繊維からなる織布に、EPDMからなるゴムを被覆した可撓性を有する引布により形成している。よって、保管容器40は空状態では収縮または折り畳み可能としている。なお、ゴムに替えてプラスチックを用いてもよい。
本実施形態では、保管容器40の直径を5m、長さを25mとし、1つの保管容器40に約490m3のバラスト水を貯留できるようにしている。
前記保管容器40の保持手段50への固定には、図5に示すS字状の係止具45を用いており、係止具45の一端を保管容器40の係止具取付部40bに通して保管容器40に固定すると共に、他端を保持手段50の固定具51に通して保持手段50に固定している。
なお、船舶60により曳航する保持手段50は2つに限らず、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
図7に示すように、保管容器40から配管70を介して供給されるバラスト水に磁性粒子供給部より供給される磁性粒子を添加して混合するバラスト水貯留槽13と、該バラスト水貯留槽13から供給されるバラスト水を処理する2台の磁気分離装置14と、該磁気分離装置14で処理された処理水を一時的に貯留する一時貯留槽15と、該一時貯留槽15から供給される処理水を再処理する2台の濾過装置16と、該濾過装置16と接続した電解装置17を備えている。
一時貯留槽15と濾過装置16との配管P3にポンプ19を介設し、ポンプ19の吐出側で2本に分岐し、分岐管を2台の濾過装置16A、16Bに接続している。該濾過装置16A、16Bで濾過処理した処理水は配管P4へ送給し、配管P4を介して処理水Q4を海へ排水している。
また、前記2台の濾過装置16の各濾過槽から濾過されずに残存した濃縮液を取り出す配管P5を介して電解装置17と接続している。電解装置17で電解処理した処理水の一部は配管P6を介して海へ排水すると共に処理水の一部は配管P7で濾過装置16へと戻し、濾過膜の逆洗浄水として用いている。
各磁気分離装置14A,14B内に大径の処理管20を横架し、該処理管20の一端の供給口20aを前記担磁バラスト水Q2を供給する配管P1と接続し、他端の取出口20bを配管P2と接続している。該処理管20は非磁性ステンレス、またはFRPやプラスチックなどからなる透磁性材で形成している。
前記処理管20の内部には円板形状とした磁気フィルタ21を軸線方向に一定ピッチをあけて多数(本実施形態では24枚)並設している。かつ、該処理管20内で多数枚の磁気フィルタ21を供給口20a側に向けて取出口20bから一定ピッチを保持した状態で移動可能に配置している。
詳細には、図9(A)(B)に示すように、処理管20の内周に移動管23を嵌合し、該移動管23の内周面に磁気フィルタ21の外周を嵌合する凹部23aと凸部23bとを軸線方向に交互に設け、該移動管23を所定時間間隔をあけて、移動管23に連結した往復移動ロッド29で連結している。
さらに、前記処理管20には、供給口20aに近接した外周に磁気フィルタ取出口20cを設けると共に、取出口20bに近接した外周に磁気フィルタ入口20dを外周に設け、径方向に出入可能としている。
本実施形態では、ビスマス2223系の酸化物超電導体線材のダブルパンケーキコイルから構成している。
前記超電導磁石22で発生する磁場内に、前記処理管20内の全ての磁気フィルタ21が位置する設定とし、よって、全ての磁気フィルタ21は超電導磁石により強い磁場を発生させるようにしている。
前記磁気フィルタ出口20cから循環搬送路26Aを通して磁気フィルタ洗浄器25に洗浄前の磁気フィルタ21を搬送し、洗浄後の磁気フィルタ21を循環搬送路26Bを通してフィルタ入口20dに搬送している。
前記磁気フィルタ洗浄器25内では、図9(C)に示すように、位置決め保持した磁気フィルタ21の一面側に圧縮空気を吹き付けるノズル27を設けると共に、他方側に除去した固形物を受容する保管28を設けている。
前記各中空糸膜モジュール30はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)多孔質膜からなる中空糸31を多数本集束し、上下両端を固定部材32(32b、32a)で中空糸31を一体的に集束固定した構成からなる。
該中空糸膜モジュール30で、前記磁気分離装置14で除去できなかった50μm未満の固形物を捕捉できるようにしている。かつ、該中空糸31では0.1μm以上の固形物や細菌を捕捉できるようにしている。
電解装置17は、電解槽に陰極及び陽極となる白金電極を吊り下げて処理液Q3中に浸漬し電気分解を行う構成としている。
前記処理水Q3には海水中に含まれる塩化物イオン(Cl−)が溶解しているので、電極反応により陽極板で塩素イオンを塩素(Cl2)に変換すると共に、陰極板で水酸化物イオン(OH−)を生成し、塩素(Cl2)と水酸化物イオン(OH−)の反応により次亜塩素酸イオン(ClO−)を生成している。
このように、バラスト水を収容する保管容器40を洋上で曳航可能に設けることにより、船舶外に設けたバラスト水処理装置10でバラスト水を浄化処理できる。よって、各船舶103にバラスト水処理装置を設ける必要がなく、大型のバラスト水処理装置による船舶の大型化を防止できると共にコストを低減することができる。
本実施形態では、積荷港101から離れた位置に、バラスト水を貯留した保管容器40を支持する保持手段50の停留手段を設けた洋上保管場所90に保管しておき、他の船舶104からバラスト水の要求を受けたときに、洋上保管場所90に停留させた保持手段50を船舶104まで曳航し、保管容器40に貯留したバラスト水を船舶104のバラスト水タンクへと送給している。即ち、バラスト水を浄化処理せずに、他の船舶のバラスト水として再利用している。
12 磁性粒子
14(14A、14B) 磁気分離装置
16(16A、16B) 濾過装置
21 磁気フィルタ
40 保管容器
40b 係止具取付部
45 係止具
50 保持手段
50a 浮き材
50b 収容部
51 固定具
Claims (4)
- 出港地で船舶内のタンクに給水されると共に積荷港で排水されるバラスト水の処理システムであって、
排水される前記バラスト水を収容する複数の保管容器と、
洋上に浮遊させ、前記各保管容器の上側部を支持すると共に下側部を海水中に沈降させた状態で支持する保持手段を備え、
前記保管容器を保持した前記保持手段を前記船舶からバラスト水を輸送管を介して前記保管容器に移し替え可能な位置まで曳航し、前記保管容器にバラスト水を移し替え、その後、
バラスト水浄化処理装置が設置された陸上施設またはバラスト水浄化処理装置が設置された水処理専用船舶へ曳航し、あるいは、
洋上保管場所に曳航して停留させ、船舶からバラスト水の給水要求を受けると、前記保持手段で前記船舶まで曳航し、該保管容器に貯留したバラスト水を前記船舶のバラスト水タンクへと送給することを特徴とするバラスト水の処理システム。 - 前記保管容器は可撓性を有するゴムまたはプラスチックからなる浮袋状とされ、空状態では収縮または折り畳み可能であり、かつ、バラスト水が移し替えられた後は閉鎖されるものであり、該容器の上部外周に係止具取付部を設け、該係止具取付部に取り付ける係止具は前記保持手段に着脱自在に固定されるものである請求項1に記載のバラスト水の処理システム。
- 前記保持手段は、浮き材を縦横方向にクロスさせて組み合わせた形状とし、前記縦横の浮き材で囲まれた各空間を1つの前記保管容器の収容部とし、該収容部を囲む縦横の浮き材に前記保管容器に取り付けられる係止具を着脱自在に固定する固定具を設けている請求項2に記載のバラスト水の処理システム。
- 前記陸上施設あるいは水処理専用船舶に設置されたバラスト水浄化処理装置へ前記保管容器から送給管を介してバラスト水を送給し、前記浄化用のバラスト水処理装置においてバラスト水中の固形物を分離除去および殺菌を行って浄化している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のバラスト水の処理システム。
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