JP4992665B2 - バラスト水の処理システム - Google Patents

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Description

本発明は、オイルタンカー等の船舶に大量に貯留されるバラスト水の処理システムに関するものである。
近年、船舶に積載するバラスト水の処理が問題となっている。バラスト水は空荷状態でも安全に航行するために船舶に積載される海水であり、バラスト水は出港時に付近の海域から取水し、入港時の積荷の積載時に海洋へ排水される。即ち、出港地の海水からなるバラスト水が入港地(積荷港)で排水され、例えば、日本から出港したオイルタンカーがオイル産油国のクエート等の中近東へ航行してオイルを搭載する場合、日本海域の海水がバラスト水として積載され、中近東の海域で洋上に排水されることとなる。
このようにバラスト水が取水した海域と異なる海域に排水されると、海水中の生物が本来の生息地でない海域に移動させられることとなり、海洋の生態系に大きな影響を及ぼすこととなる。
このため、バラスト水を浄化処理することが求められているが、バラスト水タンクの容量が1500トン〜5000トンと大型のタンカーで、出港から入港までの航海中に洋上で、バラスト水を処理水に交換処理する場合、非常に高速に大量処理する必要がある。しかも、海水中には藻等のミクロン単位の微生物が含まれるため、高速に大量処理することは困難である。
従来、本出願人は、特開2000−254544号公報(特許文献1)において、藻等の植物性微生物からなる被除去物を含む原水を、比較的高速で被除去物を分離除去できる磁気分離装置を提供している。
該磁気分離装置は、原水に鉄酸化物粒子を添加して、被除去物に磁性を付与した後に、磁気フィルタを通過させて、被除去物を磁気フィルタに磁着して分離除去している。このように磁気で被除去物を分離除去しているため、磁気フィルタの水通過用の空孔を広くしても被除去物を分離除去でき、水処理の高速化を図ることができる。
特開2000−254544号公報
しかしながら、特許文献1で提供している磁気分離装置で、大量のバラスト水を高速処理できるようにするためには、該磁気分離装置が非常に大型で高性能なものとなり、このような大型の装置を各船舶に搭載すると、船舶自体も大型化すると共にコスト高になる。
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、バラスト水の処理システムを船舶外に設けることにより、各船舶に搭載されるバラスト水の浄化処理装置を不要とすることを課題としている。
前記課題を解決するため、本発明は、出港地で船舶内のタンクに給水されると共に積荷港で排水されるバラスト水の処理システムであって、
排水される前記バラスト水を収容する複数の保管容器と、
洋上に浮遊させ、前記各保管容器の上側部を支持すると共に下側部を海水中に沈降させた状態で支持する保持手段を備え、
前記保管容器を保持した前記保持手段を前記船舶からバラスト水を輸送管を介して前記保管容器に移し替え可能な位置まで曳航し、前記保管容器にバラスト水を移し替え、その後、
バラスト水浄化処理装置が設置された陸上施設またはバラスト水浄化処理装置が設置された水処理専用船舶へ曳航し、あるいは、
洋上保管場所に曳航して停留させ、船舶からバラスト水の給水要求を受けると、前記保持手段で前記船舶まで曳航し、該保管容器に貯留したバラスト水を前記船舶のバラスト水タンクへと送給することを特徴とするバラスト水の処理システムを提供している。
前記本発明のバラスト水の処理システムによれば、積荷港で船舶より排水する必要があるバラスト水を輸送管を通して保管容器に移し替えるだけでよく、よって、船舶にバラスト水の浄化処理装置を設置する必要がない。また、保管容器へのバラスト水の移し替えが終了すると、船舶が停泊した港から保管容器は洋上保管場所等に曳航されるため、混雑する停泊港で邪魔にならない。
さらに、保管容器に貯留されたバラスト水は、他の船舶のバラスト水として再利用、あるいは船舶外の陸上または専用船舶に設けたバラスト水浄化処理装置(以下、バラスト水処理装置と略称する)によりバラスト水を浄化処理し、この処理水を海へ排水または浄水として再利用することができる。
また、洋上に浮遊する保持手段により保管容器の下側部を海水中に沈降させた状態で支持しているため、港に停泊するバラスト水を排出する船舶と洋上保管場所またはバラスト水処理装置が設置された陸上施設や専用船舶との間を曳航により容易に移動させることができる。これにより、バラスト水の洋上保管場所またはバラスト水処理装置を必ずしも積荷港の近くに設ける必要がなく、洋上保管場所またはバラスト水処理装置を設ける場所の自由度が高くなる。
さらに、バラスト水処理装置を船舶に搭載している場合には、航海中に水処理を終える必要がある等の時間的な制約が厳しいため、高速度で水処理できる高性能なバラスト水処理装置が必要となる。これに対して、本発明のバラスト水処理システムではバラスト水処理装置を船舶外に設けることができるため、水処理の時間的な制約が少なく、バラスト水処理装置に高速処理が要求されない。
前記保管容器は可撓性を有するゴムまたはプラスチックからなる浮袋状とされ、空状態では収縮または折り畳み可能であり、かつ、バラスト水が移し替えられた後は閉鎖されるものであり、該容器の上部外周に係止具取付部を設け、該係止具取付部に取り付ける係止具は前記保持手段に着脱自在に固定されるものであることが好ましい。
前記構成によれば、保管容器を可撓性を有するゴムまたはプラスチックにより形成しているため、バラスト水を貯留しない場合には保管容器を収縮または折り畳んで、コンパクトな状態で保管することができる。
また、前記保管容器はバラスト水を収容した後に閉鎖するため、浄化処理する前のバラスト水が海へ流出することが防止できると共に海水の混入を防止することができる。

保管容器を閉鎖する構成は種々の構成が可能であり、例えば、保管容器の開口側上部を紐で縛り上げて閉鎖する構成や開口に別体の蓋を被せて閉鎖する構成が挙げられる。
さらに、前記係止具により保管容器を保持手段に着脱自在としているため、収容するバラスト水の量や曳航する海の水深に応じて保管容器を交換することができる。また、保管容器と保持手段を着脱自在としたことにより、保管容器と保持手段の回収作業および設置作業を容易にすることができる。
前記保管容器の1つの容量は200m〜1000mであることが好ましい。1つの保管容器の容量が200mより小さいと1隻の船舶のバラスト水を移し替えるのに多数の保管容器が必要となるからであり、1000mより大きいと保管容器の管理や移動が行いにくくなる。保管容器の1つの容量は、入港する船舶のバラスト水の容量や湾の水深、海流の速さ等に応じて、適切な値を選ぶことができる。また入港する頻度は少ないが、大容量のバラスト水を搭載する船舶に対しては、複数の容器を組み込んだユニットと、このユニットをさらに複数組み合わせることで対応できる。
前記保管容器は大量のバラスト水を収容するものであるが、海水中に沈降させるため、高い強度を要しない。よって、ゴムまたはプラスチックのみにより形成してもよい。
また、有機繊維からなる織布に、ゴムまたはプラスチックを被覆した引布により形成してもよい。さらに、前記引布を複数積層してもよい。
前記ゴムとしては、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、EPDM、ポリオレフィン系の熱可塑性エラストマーまたは有機過酸化物を用いて架橋されたゴムが好ましい。 前記プラスチックとしては、塩化ビニル系またはポリオレフィン系が好ましい。
前記有機繊維としては、ポリエステル、ポリエチレンまたはフッ素系樹脂が好ましい。
前記保持手段は、浮き材を縦横方向にクロスさせて組み合わせた形状とし、前記縦横の浮き材で囲まれた各空間を1つの前記保管容器の収容部とし、該収容部を囲む縦横の浮き材に前記保管容器に取り付けられる係止具を着脱自在に固定する固定具を設けていることが好ましい。
前記構成によれば、保持手段を浮き材を縦横方向にクロスさせて組み合わせた簡単な形状とし、また、縦横の浮き材で囲まれた各空間を1つの保管容器の収容部とすることにより、保持手段に対して保管容器を均等に配置でき、安定した状態で保管容器と保持手段を洋上に浮上させ、曳航することができる。
前記浮き材の材質は洋上に浮くものであればよいが、強度を考慮すると鋼材やFRPが好適に用いられる。
前記船舶から前記保管容器で移し替えられたバラスト水の処理に関しては、他の船舶のバラスト水として再利用することができる。
この場合、船舶からバラスト水の要求を受けたときに、洋上保管場所で停留させている保持容器を前記船舶まで曳航し、保管容器に貯留したバラスト水を船舶のバラスト水タンクへと送給する。
即ち、船舶から排出されたバラスト水を保管容器に貯留しておき、必要に応じて他の船舶に再度バラスト水として供給して、バラスト水を海に排水しないため、バラスト水を浄水処理する必要がない。
また、バラスト水を浄化して海に排水する場合には、陸上施設あるいは水処理専用船舶に設置されたバラスト水処理装置へ前記保管容器を曳航した後、送給管を介してバラスト水をバラスト水処理装置へと送給し、該バラスト水処理装置でバラスト水中の固形物を分離除去および殺菌を行って浄化する。
前記システムとすると、保管容器に貯留したバラスト水を浄化処理した後に海洋投棄するため、バラスト水の給水海域と投棄海域が相違しても生物形態に影響を及ぼすことがなく投棄することができる。かつ、浄化処理しているため、水不足地域では浄水として再利用することも可能となる。
また、バラスト水処理装置で浄化された水を再び保管容器に戻し、バラスト水として船舶へ供給し利用してもよい。この場合、バラスト水を既に浄化処理しているため、船舶の航海後、他のどこの海でもそのまま排水することができる。
前記バラスト水処理装置は、
被除去物が含まれるバラスト水に磁性粒子を添加する磁性粒子供給部と、
磁気フィルタを備え、前記磁性粒子供給部で添加された磁性粒子が付着して磁性を帯びた
被除去物を前記磁気フィルタの空孔通過時に磁着して分離する磁気分離装置と、
前記磁気フィルタの空孔よりも小さい空孔を有する多孔質の濾過膜を備え、前記磁気分離装置で除去されなかったバラスト水中の被除去物を前記濾過膜で捕捉する濾過装置と、
を備えていることが好ましい。
前記バラスト水処理装置は、まず、バラスト水中に磁性粒子を添加し、該磁性粒子を被除去物に付着させて磁性を付与をした後、磁気分離装置で高速にバラスト水中の被除去物を分離除去し、該磁気分離装置で処理された処理水を濾過装置で精密濾過して磁気分離装置で除去できなかった被除去物を確実に除去している。
このように、まず、高速に被除去物を除去できる磁気分離装置で被除去物の90%以上の大半を除去した後に、濾過装置で濾過しているため、バラスト水中の被除去物は少量となり、濾過膜の目詰まりが発生しにくくなり、よって、濾過膜の透過流量の低下を抑制でき、処理時間を短縮化できる。
このように、磁気分離装置と濾過装置の夫々の利点を生かすと共に欠点を相互に補完することで、大量のバラスト水を高速処理できると共に被除去物の除去率を確実に高めることができる。
前記磁気分離装置は、磁気フィルタを磁化する電磁石を備え、該電磁石は超電導線のコイルを含み、超電導磁石としていることが好ましい。かつ、該超電導線として酸化物超電導線材を用いることが好ましい。
前記のように、超電導磁石を用いて磁気分離を行うと、超電導磁石が発生する強い磁界中に配置するステンレス鋼等の磁性体からなる磁気フィルタの細線の回りに強い磁場勾配を形成できる。この強い磁場及び磁場勾配を利用して、バラスト水中に分散する前記磁性粒子が付着して磁性が付与された被除去物を細線回りに磁着して分離できる。
また、超電導線材として酸化物超電導線材を用いると、金属系超電導線材と比較して、臨界温度が高いため、温度上昇による臨界電流密度の低下が小さく、クエンチしにくい高い安定性を有し、電磁石の動作が安定する。かつ、酸化物超電導線材を用いた電磁石は、金属系の超電導線材を用いた電磁石よりも軽量かつコンパクトな構成とすることができる。
さらに、酸化物超電導線材コイルの電磁石で磁場を付与した磁気フィルタは、付着した被除去物を取り除く洗浄時に減磁する際に、高速で減磁できると共に、洗浄後の励磁も高速で行える。このように、磁気分離装置における磁界の発生と消去とを短時間で行えるため、磁気フィルタの洗浄に要する時間を短縮でき、分離処理効率を高めることができる。
前記磁気分離装置は、ケース内部に、磁性粒子が添加されたバラスト水が流通する大径の処理管を備え、該処理管内に流路に沿って前記磁気フィルタを一定ピッチで並設している。これら磁気フィルタを内部に並設した処理管の外周には、前記超電導線を巻回したコイルを備えた環状の電磁石を外嵌して、磁気フィルタを超電導磁石の磁場中に配置している。
前記濾過装置は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)多孔質膜を前記濾過膜として備え、前記PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)多孔質膜の平均孔径は0.1μm〜15μmとしていることが好ましい。
前記PTFEは、機械的強度、耐薬品性(耐酸性、耐アルカリ性、耐酸化物性)等の耐久性に極めて優れるため、広範囲な被処理水に対応することができると共に耐久性が優れたものとすることができる。また、PTFEでは、前記最大孔径が0.1μm〜15μmで、厚さ5μm〜100μm程度の薄い多孔質膜としても強度を有する。
前記最大孔径を0.1μm〜15μmとしているのは、0.1μm以上の被除去物を確実に捕捉するためである。0.1μm以上を捕捉できるようにすると、バラスト水中に細菌が浮遊する場合、細菌が0.1μm以上であれば細菌も捕捉して除去することができる。
前記濾過装置は、前記PTFE製の多孔質膜を有する中空糸を集束した中空糸膜モジュールから形成していることが好ましい。
前記PTFE製の多孔質膜を有する中空糸は、該PTFE多孔質膜のみからなる1層でも良いし、複数層を積層したものでもよい。
前記中空糸を複数本集束して処理水取出配管に連結した中空糸膜モジュールを、濾過装置の槽中に複数個浸漬配置し、該濾過槽中に前記磁気分離装置で処理した処理水を流入し、中空糸の多孔質膜を通して、濾過された中空糸内の処理水を前記処理水取出配管に介設したポンプで吸引して取り出している。また、濾過槽中に散気管を配置し、中空糸膜モジュールの間や、各中空糸膜モジュールの密集した中空糸間にバブリングして濾過膜の表面に付着する被除去物の付着を抑制することが好ましい。
前記濾過装置は電解装置と配管を介して接続し、濾過されずに残存した処理水を前記電解装置へ送給して電解処理し、該電解装置で電解処理した電解液を前記濾過装置の濾過膜の逆洗浄水として供給していることが好ましい。
前記のように濾過装置で0.1μm以上の被除去物を捕捉できるようにした場合、バラスト水中に0.1μm未満の粒子や細菌が存在すると濾過装置でも分離できない。前記水処理装置で、例えば、1つのバラスト水タンクに貯留されたバラスト水を磁気分離装置で分離除去後に濾過装置で濾過していく場合、磁気分離工程および濾過工程で分離除去されなかった前記0.1μm未満の粒子や細菌が残存する濃縮液として濾過槽中に残存する。この濾過槽に残存する濃縮液は処理するバラスト水の通常1〜5%程度となる。
この残存した濃縮液を前記のように配管を通して電解装置へと送給し、該電解装置内でオゾン、次亜塩素酸、ナノバブルを付与して、残存する0.1μm未満の細菌を殺菌している。
前述したように、本発明によれば、船舶より排水するバラスト水を洋上に移動可能に設けた保管容器に貯留しておき、他の船舶のバラスト水として再利用、あるいは船舶外の陸上施設または専用船舶に設けたバラスト水処理装置によりバラスト水を浄化処理し、この処理水を海へ排水または販売することができる。これにより、各船舶にバラスト水の浄化処理装置を設ける必要がなく、大型の浄化処理装置による船舶の大型化を防止できると共にコストを低減することができる。
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図10に、本発明の第1実施形態を示す。
本実施形態のバラスト水の処理システムは、図1に示すように、出港地でオイルタンカーからなる船舶103内のタンクに供給されたバラスト水を、原油が供給される積荷港101において保管容器40に移し替えた後、積荷港101に設置されたオイルタンク100よりタンクへ原油を供給している。
前記保管容器40は洋上に浮遊させており、バラスト水が貯留した後、積荷港から離れた洋上保管場所90へと曳航して保管しておき、あるいは積荷港から直接あるいは洋上保管場所90で一旦保管してから、岸壁120に設置したバラスト水処理装置10を設けた陸上施設へ曳航し、該バラスト水処理装置10によりバラスト水を浄化処理している。
前記保管容器40は、図2に示すように、上側部を洋上に浮上する保持手段50により支持され、下側部を海水中に沈降させている。
保管容器40は、図3に示すように、上端に開口40aを設けた円筒状の浮袋状とし、ポリエステル製の有機繊維からなる織布に、EPDMからなるゴムを被覆した可撓性を有する引布により形成している。よって、保管容器40は空状態では収縮または折り畳み可能としている。なお、ゴムに替えてプラスチックを用いてもよい。
本実施形態では、保管容器40の直径を5m、長さを25mとし、1つの保管容器40に約490mのバラスト水を貯留できるようにしている。
保管容器40の上部には、周方向に等間隔をあけて4つの貫通穴からなる係止具取付部40bを設けている。また、保管容器40の外周面には、係止具取付部40bの下方位置に、保管容器40を閉鎖するための紐41を通して保持する紐挿通部40cを設け、該紐挿通部40cを通して保管容器40の外周面に巻き付けた紐41を交差させて引っ張ることにより、図3(B)に示すように、保管容器40を締め上げて閉鎖できるようにしている。保管容器40にバラスト水をを移し替える前は、紐41を緩めて保管容器40を開放する一方、保管容器40にバラスト水を移し替えた後は、紐41を締め上げて保管容器40を閉鎖している。
一方、前記保管容器40を支持する保持手段50は、図4に示すように、FRPからなる浮き材50aを縦横方向にクロスさせて組み合わせた形状とし、縦横の浮き材50aで囲まれた矩形状の各空間を1つの保管容器40の収容部50bとしている。よって、図4に示す保持手段50では、1つの保持手段50で6つの保管容器40を支持することができる。縦横の浮き材50aで囲まれた収容部50bの内面の各辺には、図4(B)に示すように、保管容器40に取り付けられる係止具45を着脱自在に固定するコ字状の固定具51を設けている。
前記保管容器40の保持手段50への固定には、図5に示すS字状の係止具45を用いており、係止具45の一端を保管容器40の係止具取付部40bに通して保管容器40に固定すると共に、他端を保持手段50の固定具51に通して保持手段50に固定している。
また、保持手段50の対向する外面にコ字状の連結枠52とL字状の連結片53を設け、図6に示すように、保持手段50Aの連結片53を他の保持手段50Bの連結枠52に引っ掛けて、保持手段50A、50Bを連結可能としている。また保持手段50Aの連結枠52には、船舶60に設けた引掛具61を引っ掛けて、該船舶60により保持手段50A、50Bを曳航する。保持手段50A、50Bは、船舶60によりオイルタンカー103からバラスト水を輸送管を介して保管容器40に移し替え可能な位置とバラスト水処理装置10が設置された岸壁102間の間を曳航される。
なお、船舶60により曳航する保持手段50は2つに限らず、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
前記バラスト水処理装置10を以下に詳述する。
図7に示すように、保管容器40から配管70を介して供給されるバラスト水に磁性粒子供給部より供給される磁性粒子を添加して混合するバラスト水貯留槽13と、該バラスト水貯留槽13から供給されるバラスト水を処理する2台の磁気分離装置14と、該磁気分離装置14で処理された処理水を一時的に貯留する一時貯留槽15と、該一時貯留槽15から供給される処理水を再処理する2台の濾過装置16と、該濾過装置16と接続した電解装置17を備えている。
前記バラスト水貯留槽13と磁気分離装置14との間の配管P1にポンプ18を介設し、該ポンプ18の吐出側で配管P1を2本に分岐し、分岐管を2台の磁気分離装置14A、14Bに接続し、バラスト水を所要の水圧で磁気分離装置14A、14Bに供給している。この2台の磁気分離装置14A、14Bは配管P2を介して一時貯留槽15に接続し、磁気分離した処理水を一時貯留している。
一時貯留槽15と濾過装置16との配管P3にポンプ19を介設し、ポンプ19の吐出側で2本に分岐し、分岐管を2台の濾過装置16A、16Bに接続している。該濾過装置16A、16Bで濾過処理した処理水は配管P4へ送給し、配管P4を介して処理水Q4を海へ排水している。
また、前記2台の濾過装置16の各濾過槽から濾過されずに残存した濃縮液を取り出す配管P5を介して電解装置17と接続している。電解装置17で電解処理した処理水の一部は配管P6を介して海へ排水すると共に処理水の一部は配管P7で濾過装置16へと戻し、濾過膜の逆洗浄水として用いている。
前記バラスト水貯留槽13には、貯留するバラスト水Q1に粉末状の磁性粒子12を添加する投入口13aを設けている。該磁性粒子12として表面に水酸基を有する鉄酸化物粒子を用いている。該バラスト水貯留槽13の内部にバラスト水Q1と磁性粒子12とを撹拌混合する撹拌手段(不図示)を付設しており、バラスト水に含まれる被除去物に磁性粒子12を付着させて磁性を付与し、担磁バラスト水Q2としている。
前記バラスト水貯留槽13に添加する磁性粒子12は平均粒径が1μm〜50μmで、バラスト水量を100質量%とすると、磁性粒子12は0.2〜5質量%で添加している。
前記磁気分離装置14は、図8に示すように、ケース40内を隔壁24により隔てて2台の磁気分離装置14A、14Bとしている。
各磁気分離装置14A,14B内に大径の処理管20を横架し、該処理管20の一端の供給口20aを前記担磁バラスト水Q2を供給する配管P1と接続し、他端の取出口20bを配管P2と接続している。該処理管20は非磁性ステンレス、またはFRPやプラスチックなどからなる透磁性材で形成している。
前記処理管20の内部には円板形状とした磁気フィルタ21を軸線方向に一定ピッチをあけて多数(本実施形態では24枚)並設している。かつ、該処理管20内で多数枚の磁気フィルタ21を供給口20a側に向けて取出口20bから一定ピッチを保持した状態で移動可能に配置している。
詳細には、図9(A)(B)に示すように、処理管20の内周に移動管23を嵌合し、該移動管23の内周面に磁気フィルタ21の外周を嵌合する凹部23aと凸部23bとを軸線方向に交互に設け、該移動管23を所定時間間隔をあけて、移動管23に連結した往復移動ロッド29で連結している。
さらに、前記処理管20には、供給口20aに近接した外周に磁気フィルタ取出口20cを設けると共に、取出口20bに近接した外周に磁気フィルタ入口20dを外周に設け、径方向に出入可能としている。
前記各磁気フィルタ21は磁性体からなる金属線材のメッシュからなり、メッシュで囲まれる空孔21aで5μm以上の固形物を磁着して捕捉できるようにしている。また、該ステンレス網からなる磁気フィルタ21を前記処理管20内に多数枚を一定ピッチで並設している。
前記処理管20の外周面には超電導磁石22を外嵌固定している。該超電導磁石22は酸化物超電導線材が巻回されたコイル22aで形成し、該コイル22aを超電導温度に保持する冷却容器22b内に収容している。
本実施形態では、ビスマス2223系の酸化物超電導体線材のダブルパンケーキコイルから構成している。
前記超電導磁石22で発生する磁場内に、前記処理管20内の全ての磁気フィルタ21が位置する設定とし、よって、全ての磁気フィルタ21は超電導磁石により強い磁場を発生させるようにしている。
前記磁気フィルタ21には除去する固形物が付着するため、定期的に洗浄する必要があり、各磁気分離装置14A、14B内に夫々圧縮空気を吹き付ける磁気フィルタ洗浄器25を設置し、該磁気フィルタ洗浄器25と前記処理管20の磁気フィルタ出口20cと磁気フィルタ入口20dとを循環搬送管26A、26Bで接続している。
前記磁気フィルタ出口20cから循環搬送路26Aを通して磁気フィルタ洗浄器25に洗浄前の磁気フィルタ21を搬送し、洗浄後の磁気フィルタ21を循環搬送路26Bを通してフィルタ入口20dに搬送している。
前記磁気フィルタ洗浄器25内では、図9(C)に示すように、位置決め保持した磁気フィルタ21の一面側に圧縮空気を吹き付けるノズル27を設けると共に、他方側に除去した固形物を受容する保管28を設けている。
前記濾過装置16(16A、16B)は図10に示すように、各浸漬槽35内にそれぞれ複数の中空糸膜モジュール30を垂直方向に吊下して液中に浸漬する構成からなる。
前記各中空糸膜モジュール30はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)多孔質膜からなる中空糸31を多数本集束し、上下両端を固定部材32(32b、32a)で中空糸31を一体的に集束固定した構成からなる。
該中空糸膜モジュール30で、前記磁気分離装置14で除去できなかった50μm未満の固形物を捕捉できるようにしている。かつ、該中空糸31では0.1μm以上の固形物や細菌を捕捉できるようにしている。
具体的には、中空糸膜モジュール30は、両端開口の中空糸31を多数本集束して、中空糸31の下端開口は樹脂でモールドして下部固定部材32aで封止すると共に、上端開口は上部固定部材32bで保持した状態で集水ヘッダー33の内部に連通させ、該集水ヘッダー33を集水管34と連通している。各中空糸モジュール30の集水管34は1本の共通処理液集水管となる前記配管P4に連結して、濾過膜を透過した濾過処理水をまとめて送給できるようにしている。
前記濾過槽35の底壁35aに送給口35gを設け、該送給口35gを一時貯留槽15と配管P3を介して連通し、該配管P3に介設したポンプ19より所要圧力で前記磁気分離装置14で固形物を分離除去した処理水Q3を濾過槽35に流入させ、外圧濾過型としている。即ち、濾過槽35に供給した処理水Q3は中空糸31に外周面から内周面に流通して濾過され、中空部に濾過済みの処理水Q4が流入させ、該中空部の処理水Q4を前記配管P4に介設したポンプ105で吸引している。
さらに、濾過装置16において、安定した濾過処理を継続させるため、中空糸モジュール30の下方側に散水用のパイプ33を配管し、該パイプ33に散気用ブロア37から加圧空気を供給している。該パイプ33に供給した加圧空気をパイプ33に設けた気体噴射穴33aより噴射し、処理液Q3中にバブリングを発生させ、中空糸31の表面又は膜間に堆積した固形物を剥離除去できるようにしている。
前記濾過装置16A、16Bには、各濾過槽35で濾過されずに残存した濃縮液を取り出す配管P5を介して電解装置17と接続している。この濾過槽35に残存する濃縮液は、磁気分離工程および濾過工程で処理する原水の1〜5%程度である。
電解装置17は、電解槽に陰極及び陽極となる白金電極を吊り下げて処理液Q3中に浸漬し電気分解を行う構成としている。
前記処理水Q3には海水中に含まれる塩化物イオン(Cl−)が溶解しているので、電極反応により陽極板で塩素イオンを塩素(Cl2)に変換すると共に、陰極板で水酸化物イオン(OH−)を生成し、塩素(Cl2)と水酸化物イオン(OH−)の反応により次亜塩素酸イオン(ClO−)を生成している。
前記電解装置17で電解処理した処理水Q5の一部は、前記のように配管P6を介して海へ排水し、処理水Q5の残部は定期的に配管P7を通して濾過槽35の中空糸31内に供給し、逆洗浄水として用いている。
前記した本発明のバラスト水の処理システムによれば、船舶103より排水するバラスト水を保管容器40に移し替えた後に、該保管容器を曳航して洋上保管場所90で一旦保管し、その後にバラスト水処理装置10を設置した岸壁まで曳航し、あるいは、船舶から直接にバラスト水処理装置10を有する陸上施設を設置した岸壁まで曳航して、バラスト水処理装置10によりバラスト水を浄化処理して海へ排水することができる。
このように、バラスト水を収容する保管容器40を洋上で曳航可能に設けることにより、船舶外に設けたバラスト水処理装置10でバラスト水を浄化処理できる。よって、各船舶103にバラスト水処理装置を設ける必要がなく、大型のバラスト水処理装置による船舶の大型化を防止できると共にコストを低減することができる。
なお、バラスト水処理装置10は陸上に設置せず、図11に示すように、水処理専用船舶80に設置してもよい。
図12に、本発明の第2実施形態を示す。
本実施形態では、積荷港101から離れた位置に、バラスト水を貯留した保管容器40を支持する保持手段50の停留手段を設けた洋上保管場所90に保管しておき、他の船舶104からバラスト水の要求を受けたときに、洋上保管場所90に停留させた保持手段50を船舶104まで曳航し、保管容器40に貯留したバラスト水を船舶104のバラスト水タンクへと送給している。即ち、バラスト水を浄化処理せずに、他の船舶のバラスト水として再利用している。
前記システムによれば、船舶から保管容器40に移し替えたバラスト水を洋上保管場所90に保管しておき、必要になったときに再度バラスト水を船舶に移し替えて、バラスト水を再利用することができる。
前記実施の形態はすべての点で例示であって、これら実施形態に限定されず、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
本発明の第1実施形態のバラスト水の処理システムの概略図である。 保管容器と保持手段の正面図である。 保管容器を示し、(A)は開放状態を示す図面、(B)は閉鎖状態を示す図面である。 保持手段を示し、(A)は斜視図、(B)は収容部の平面拡大図である。 保管容器と保持手段の取付構造を示し、(A)は垂直断面図、(B)は平面図である。 保持手段を船舶で曳航する状態を示す図面である。 バラスト水処理装置の構成を示す図面である。 バラスト水処理装置の磁気分離装置を示す構成図である。 (A)(B)(C)は図8の要部拡大図である。 濾過装置を示す概略図である。 第1実施形態の変形例を示す図面である。 第2実施形態のバラスト水の処理システムの概略図である。
符号の説明
10 バラスト水処理装置
12 磁性粒子
14(14A、14B) 磁気分離装置
16(16A、16B) 濾過装置
21 磁気フィルタ
40 保管容器
40b 係止具取付部
45 係止具
50 保持手段
50a 浮き材
50b 収容部
51 固定具

Claims (4)

  1. 出港地で船舶内のタンクに給水されると共に積荷港で排水されるバラスト水の処理システムであって、
    排水される前記バラスト水を収容する複数の保管容器と、
    洋上に浮遊させ、前記各保管容器の上側部を支持すると共に下側部を海水中に沈降させた状態で支持する保持手段を備え、
    前記保管容器を保持した前記保持手段を前記船舶からバラスト水を輸送管を介して前記保管容器に移し替え可能な位置まで曳航し、前記保管容器にバラスト水を移し替え、その後、
    バラスト水浄化処理装置が設置された陸上施設またはバラスト水浄化処理装置が設置された水処理専用船舶へ曳航し、あるいは、
    洋上保管場所に曳航して停留させ、船舶からバラスト水の給水要求を受けると、前記保持手段で前記船舶まで曳航し、該保管容器に貯留したバラスト水を前記船舶のバラスト水タンクへと送給することを特徴とするバラスト水の処理システム。
  2. 前記保管容器は可撓性を有するゴムまたはプラスチックからなる浮袋状とされ、空状態では収縮または折り畳み可能であり、かつ、バラスト水が移し替えられた後は閉鎖されるものであり、該容器の上部外周に係止具取付部を設け、該係止具取付部に取り付ける係止具は前記保持手段に着脱自在に固定されるものである請求項1に記載のバラスト水の処理システム。
  3. 前記保持手段は、浮き材を縦横方向にクロスさせて組み合わせた形状とし、前記縦横の浮き材で囲まれた各空間を1つの前記保管容器の収容部とし、該収容部を囲む縦横の浮き材に前記保管容器に取り付けられる係止具を着脱自在に固定する固定具を設けている請求項2に記載のバラスト水の処理システム。
  4. 前記陸上施設あるいは水処理専用船舶に設置されたバラスト水浄化処理装置へ前記保管容器から送給管を介してバラスト水を送給し、前記浄化用のバラスト水処理装置においてバラスト水中の固形物を分離除去および殺菌を行って浄化している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のバラスト水の処理システム。
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