JP4990006B2 - 樹脂混和物およびその硬化物 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂混和物に関する。
加熱することにより流動性を発現する熱可塑性樹脂は、非常に多くのものが開発され、産業のあらゆる分野で利用されている。熱可塑性樹脂の例を挙げると、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル/スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)、メタクリル樹脂(PMMA)、塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、GF強化ポリエチレンテレフタレート(GF―PET)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリァイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)等がある。更に近年では、熱可塑性エラストマーも数多くの製品が製造されている。
また、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等がある。
これら熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂は使用用途によっては、耐熱性、耐油性、耐薬品性、柔軟性、耐候性が不十分な場合がある。そこで、単一の樹脂では達しえない性能を付与するなど性能の向上を図るために、樹脂製造時(重合時)他のモノマーで変性する方法が通常行われている。上記例示で相当するもののみならず、これまでに各種樹脂が生み出されてきている。変性方法としてはグラフト化技術がある。その一つとして、一旦重合した熱可塑性樹脂に対し、ラジカル開始剤等で活性化し、そこに新たなモノマーを添加することにより、そのモノマーが重合したブロックが枝状に樹脂に結合したものが得られる。しかし、この方法では、添加したモノマーが残存したり、それだけが重合したポリマーが生成したりする問題がある。そのため、本来グラフトにより期待されるべき上記性能を十分付与することが難しい。
また、上記グラフト化技術の他に、Milkovichらによって示された重合性の基を有する重合体であるマクロモノマーを用いた、樹脂の変性技術が開発されている(例えば、特許文献1、5を参照。)。具体的には、上記グラフト化技術と同様に、一旦重合した樹脂を活性化し、そこにマクロモノマーを反応させることにより、グラフト化させたものが得られる。当該方法は残存モノマーも減少させることができる利点がある。しかし、この方法でも、マクロモノマーのみが重合したものや未反応のマクロモノマーが残存することが課題である。
上記マクロモノマーを使用したグラフト化技術では異なり、主体となる樹脂の重合系(重合中)に、マクロモノマーを共重合させることによりグラフトポリマーを得る方法が開発されている(例えば、特許文献2、3、6を参照。)。当該方法では、マクロモノマーのみが重合したものや未反応のマクロモノマーが残存するといった課題が解決される利点がある。当該方法に使用できる既に様々なマクロモノマーが合成され、それを共重合したグラフトポリマーが多数合成されている。しかし、構造が制御されたマクロモノマーを合成することは容易ではなく、中でも、アクリル系重合体はその副反応のために重合制御が容易でないため、当該グラフト化技術に好適な末端に重合性の基を有するアクリル系マクロモノマーを工業規模で、安定かつ経済的に製造することは難しい場合が多い。
更に、これの方法はモノマー、マクロモノマーによる変性は重合を伴うことから、専用の反応装置、得られたポリマーの脱水、脱溶剤、精製用の装置が必要なことから、コストアップに繋がるという工業的な規模での実施には経済的は課題がある。
また、樹脂の性能を向上させる方法としては、異種ポリマーによるアロイ技術があるが、ポリマーアロイ技術は異種ポリマーを効率良く分散させる必要があり、特定の配合物処方、混練技術が必要である。
特開昭49−30462号公報 特開昭61−200111号公報 特開昭60−238301号公報 USP4304705 USP3786116 特開昭62−64814
上記のように、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を高強度化、靭性付与、柔軟性、耐熱性、耐油性、耐薬品性向上等様々な特性の改善するために、モノマーやマクロモノマーを用いたグラフト化が行われている。しかし、依然として、より良い性能を発現するための変性技術及びそれにより製造された樹脂の開発が求められている。
また、非反応性の樹脂、反応性オリゴマーのブレンドによる樹脂改質も検討されているが、上述の課題を解決するに至ってない。
そこで、本願発明は、より簡便かつ容易に、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂により良い性能を発現させうる樹脂混和物およびその硬化物を提供することを目的とする。
上述の現状に鑑み、本発明者らが鋭意検討した結果、重合性の炭素−炭素二重結合を有する基を、少なくとも1つの分子末端に有するビニル系重合体と、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂とを混練してなる混和物を硬化させると、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の物性に、予想以上に良好な性能を付与・改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(a)熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂、および、(b)下記一般式(1)で表される基を、1分子あたり少なくとも1個分子末端に有するビニル系重合体
−OC(O)C(R)=CH2 (1)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。)
を含有する、樹脂混和物に関する。
上記一般式1中のRは、水素、または、メチル基であることが好ましい。
上記(a)熱可塑性樹脂が、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、二トリルゴム、水素化ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタンジエン・スチレンゴム、ノルボルネンゴム、多硫化ゴム、天然ゴムおよび熱可塑性エラストマーからなる群から選らばれる少なくとも1種が好ましい。また、上記(a)熱可塑性樹脂は、エポキシ基、水酸基、酸基およびハロゲン基からなる群から選ばれる少なくとも一種の反応性官能基を有することが好ましい。
上記(a)熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂からなる群から選らばれる少なくとも1種が好ましい。
上記(a)熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂と上記(b)ビニル系重合体との配合割合は、上記(a)熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂および上記(b)ビニル系重合体の総量100重量%に対して(b)ビニル系重合体が0.1重量%以上90重量%以下であるのが好ましい。
上記(b)ビニル系重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)の値が1.8未満であることが好ましい。
上記(b)ビニル系重合体の主鎖がリビングラジカル重合により製造されたものが好ましく、原子移動ラジカル重合がより好ましい。上記原子移動ラジカル重合は、触媒として銅の錯体を用いることが好ましい。前記(b)ビニル系重合体の主鎖が連鎖移動剤を用いたビニル系モノマーの重合により製造されたものであることが好ましい。
上記(b)ビニル系重合体の主鎖は、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも一種を主として重合して製造されたものであることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステルを主として重合して製造されたものがより好ましく、アクリル酸エステルを主として重合して製造されたものがさらに好ましい。
上記(b)ビニル系重合体の数平均分子量が3000以上であることが好ましく、5000以上であることがより好ましく、8000以上であることがさらに好ましい。
上記(b)ビニル系重合体には、下記一般式2:
−CR12X (2)
(式中、R1、R2は、ビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基。Xは、塩素、臭素、又は、ヨウ素を表す。)
で表されるビニル系重合体の末端ハロゲン基を、下記一般式3
+-OC(O)C(R)=CH2 (3)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。M+はアルカリ金属、また
は4級アンモニウムイオンを表す。)
で示される化合物で置換することにより製造されたものを使用することが好ましく使用できる。
上記(b)ビニル系重合体には、末端に水酸基を有するビニル系重合体と、一般式4
XC(O)C(R)=CH2 (4)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。Xは塩素、臭素、または水酸基を表す。)
で示される化合物との反応を行って製造されたものを好ましく使用できる。
上記(b)ビニル系重合体は、末端に水酸基を有するビニル系重合体に、ジイソシアネート化合物を反応させ、残存イソシアネート基と下記一般式5
HO−R’− OC(O)C(R)=CH2 (5)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。R’は炭素数2〜20の2価の有機基を表す。)
で示される化合物との反応を行って製造されたものを使用してもよい。
上記樹脂混和物には、さらに、(c)開始剤を含有することができる。(c)開始剤には、熱重合開始剤、光重合開始剤およびレドックス開始剤からなる群から選ばれる少なくとも一種を使用することができる。
本発明の硬化物は、上記樹脂混和物を硬化させて得られる。
上記硬化物が、加熱および/または活性エネルギー線により硬化して得られうる。活性エネルギー線には、UVおよび/または電子線を使用することができる。
本発明の混和物によれば、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の機械物性や耐熱性、耐油性、耐薬品性、耐候性等の特性を改善した樹脂を得ることができ、それらは、発泡体、繊維、成形体、フィルム被覆材に加工し、利用することができる。熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂単独で得られる加工品では、柔軟性を付与する目的で可塑剤を併用した場合、可塑剤成分が高温、常温経時でブリードアウトするという課題があるが、本発明の樹脂混和物では全く発生しない。また、可塑剤を使用せずに機械物性を改善する方法として、反応性のオリゴマーを添加、硬化させる方法が試みられているが反応性オリゴマーとして例えばウレタンアクリレートを添加した場合には、加工品の耐熱性が低下するとか、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートの場合であれば、伸びが極端に低下する等の問題点は指摘されていたが、この様な問題点はなく、機械物性、耐熱性をより向上させることができる。
以下に、本発明の、遷移金属触媒を用いた原子移動ラジカル重合法により効果的にビニル系モノマーを重合させてビニル系重合体を製造する方法について、詳細に説明する。
<<(a)熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂>>
熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル/スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)、メタクリル樹脂(PMMA)、塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、GF強化ポリエチレンテレフタレート(GF―PET)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリァイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、シリコーンゴム、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、(メタ)アクリレート・ブタジエン・スチレン樹脂(MBS)、フッ素樹脂(PF)、ウレタン樹脂(PU)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエステル樹脂、ポリエーテール樹脂等が使用できる。
ビニル系重合体(b)との混和性の点から塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ウレタン樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、ポリスチレン樹脂が好まましく。さらに、(b)成分添加により機械物性、耐候性、耐熱性、耐油性、耐薬品性の改善効果が顕著であることから、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エピクロロヒドリンゴム、MBS樹脂、スチレン樹脂がより好ましい。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。(b)成分との相溶性の点からフェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
上記、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂には反応性の官能基を含まれていてもよい。反応性の感応としては特に限定はないが、エポキシ基、水酸基、酸基、ハロゲン基等が挙げられる。
官能基別で、同樹脂に架橋剤を添加することで機械物性、耐熱性、、耐油性、耐薬品性を向上させることができる。
官能基別の架橋剤としては、特に限定はないが、エポキシ基の場合、加熱硬化系では安息香酸アンモニウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛/ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛の組合せ、イソシアヌル酸/四級アンモニウム塩基の組合せ、酸無水物、熱潜在性のアミン系架橋剤、常温硬化の場合にはポリアミン、ポリアミド化合物、ポリアミドアミン化合物、ポリチオール化合物、無機酸、無機塩基等が挙げられる。
水酸基の場合、イソシアナート、酸水物化合物等が挙げられる。
酸基特のカルボン酸の場合は、ヘキサメチレンジアミンカーバメート/ジ−o−トリグアニジンの組合せ、多官能性エポキシ化合物、ポリアミン化合物(カルボン酸無水物の場合)、多価水酸基化合物(カルボン酸無水物の場合)等が挙げられる。
ハロゲン基の場合は、カルボン酸ナトリウム塩/カルボン酸カリウム塩/硫黄の汲み合せ。
<<(b)ビニル系重合体>>
<主鎖>
本発明におけるビニル系重合体(b)は、ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体であって、その主鎖を構成するビニル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。具体的には特開2005−232419公報段落[0018]記載の各種モノマーのような、(メタ)アクリル酸系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー、ケイ素含有ビニル系モノマー、マレイミド系モノマー、ニトリル基含有ビニル系モノマー、アミド基含有ビニル系モノマー、ビニルエステル類、アルケン類、共役ジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を表す。
本発明の樹脂混和物に使用されるビニル系重合体(b)の主鎖は、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1つのモノマーを主として重合して製造されるものであることが好ましい。ここで「主として」とは、ビニル系重合体(b)を構成するモノマー単位のうち、50モル%以上が上記モノマーであることを意味し、好ましくは70モル%以上である。
なかでも、生成物の物性等から、芳香族ビニル系モノマー及び/または(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましく、アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーがより好ましくアクリル酸エステルモノマーがさらに好ましい。特に好ましいアクリル酸エステルモノマーとしては、アクリル酸アルキルエステルモノマーが挙げられ、具体的には、アクリル酸エチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−メトキシブチルである。
本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合、更にはブロック共重合させても構わなく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40重量%以上含まれていることが好ましい。
本発明におけるビニル系重合体(b)の分子量分布、即ち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1.8未満であり、より好ましくは1.7以下であり、さらに好ましくは1.6以下であり、よりさらに好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.4以下であり、最も好ましくは1.3以下である。分子量分布が大きすぎると同一架橋点間分子量における粘度が増大し、取り扱いが困難になる傾向にある。本発明でのGPC測定は、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにて行い、数平均分子量等はポリスチレン換算で求めることができる。
本発明におけるビニル系重合体(b)の数平均分子量は特に制限はないが、GPCで測定した場合に、500〜1,000,000の範囲が好ましく、3,000〜100,000がより好ましく、5,000〜80,000がさらに好ましく、8,000〜50,000がなおさら好ましい。分子量が低くなりすぎると、ビニル系重合体(b)の本来の特性が発現されにくい傾向があり、一方、高くなりすぎると、取扱いが困難になる傾向がある。
<ビニル系重合体(b)の合成法>
本発明で使用するビニル系重合体(b)は、種々の重合法により得ることができ、特に限定されないが、モノマーの汎用性、制御の容易性等の点からラジカル重合法が好ましく、ラジカル重合の中でも制御ラジカル重合がより好ましい。この制御ラジカル重合法は「連鎖移動剤法」と「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。得られるビニル系重合体(b)の分子量、分子量分布の制御が容易であるリビングラジカル重合がさらに好ましく、原料の入手性、重合体末端への官能基導入の容易さから原子移動ラジカル重合が特に好ましい。上記ラジカル重合、制御ラジカル重合、連鎖移動剤法、リビングラジカル重合法、原子移動ラジカル重合は公知の重合法ではあるが、これら各重合法については、たとえば、特開2005−232419公報や、特開2006−291073公報などの記載を参照できる。
本発明におけるビニル系重合体(b)の好ましい合成法の一つである、原子移動ラジカル重合について以下に簡単に説明する。
原子移動ラジカル重合では、有機ハロゲン化物、特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物等が開始剤として用いられることが好ましい。具体的には特開2005−232419公報段落[0040]〜 [0064]記載の化合物が挙げられる。
ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を1分子内に2つ以上有するビニル系重合体を得るためには、2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として用いるのが好ましい。具体的に例示するならば、
Figure 0004990006
Figure 0004990006
等が挙げられる。
原子移動ラジカル重合において用いられるビニル系モノマーとしては特に制約はなく、上述した例示したビニル系モノマーをすべて好適に用いることができる。
重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましくは周期律表第7族、8族、9族、10族、又は11族元素を中心金属とする金属錯体でありより好ましくは0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルを中心金属とする遷移金属錯体、特に好ましくは銅の錯体が挙げられる。銅の錯体を形成するために使用される1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジル若しくはその誘導体、1,10−フェナントロリン若しくはその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン若しくはヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等が配位子として添加される。
重合反応は、無溶媒でも可能であるが、各種の溶媒中で行うこともできる。溶媒の種類としては特に限定されず、特開2005−232419公報段落[0067]記載の溶剤が挙げられる。これらは、単独でもよく、2種以上を併用してもよい。また、エマルジョン系もしくは超臨界流体CO2を媒体とする系においても重合を行うことができる。
重合温度は、限定はされないが、0〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは、室温〜150℃の範囲である。
<重合性の炭素−炭素二重結合導入法>
得られたビニル系重合体へのヒドロシリル化反応可能なアルケニル基の導入方法としては、公知の方法を利用することができる。例えば、特開2004−203932公報段落[0080]〜[0091]記載の方法が挙げられる。これらの方法の中でも制御がより容易である点から、一般式(2)のビニル系重合体の末端ハロゲン基を、一般式(3)のラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物で置換することにより製造されたものであることが好ましい。
一般式(2)で表される末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体は、上述した有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する方法、あるいは、ハロゲン化合物を連鎖移動剤としてビニル系モノマーを重合する方法により製造されるが、好ましくは前者である。
一般式(3)で表される化合物としては特に限定されないが、Rの具体例としては、例えば、−H、−CH3、−CH2CH3、−(CH2nCH3(nは2〜19の整数を表す)、−C65、−CH2OH、−CN、等が挙げられ、好ましくは−H、−CH3である。
+はオキシアニオンの対カチオンであり、M+の種類としてはアルカリ金属イオン、具体的にはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、および4級アンモニウムイオンが挙げられる。4級アンモニウムイオンとしてはテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラベンジルアンモニウムイオン、トリメチルドデシルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンおよびジメチルピペリジニウムイオン等が挙げられ、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオンである。一般式(3)のオキシアニオンの使用量は、一般式(2)のハロゲン基に対して、好ましくは1〜5当量、更に好ましくは1.0〜1.2当量である。この反応を実施する溶媒としては特に限定はされないが、求核置換反応であるため極性溶媒が好ましく、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリル、等が用いられる。反応を行う温度は限定されないが、一般に0〜150℃で、重合性の末端基を保持するために好ましくは室温〜100℃で行う。
<<開始剤成分(c)>>
(c)成分としては特に限定はないが、熱重合開始剤、光重合開始剤、レッドクス開始剤等が挙げられる。
なお、熱重合開始剤、光重合開始剤、レッドクス開始剤はそれを単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として使用してもよいが、混合物として使用する場合には、各開始剤の使用量は、後述のそれぞれの範囲内にあることが好ましい。
熱重合開始剤としては、特に制限はないが、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤、過硫酸塩開始剤等が挙げられる。
公知のものを使用することができる。例えば、特開2006−2654884公報段落[0104]〜[0106]記載のものが挙げられる。
熱重合開始剤としては、アゾ系開始剤及び過酸化物開始剤からなる群から選ばれる。更に好ましいものは、2,2′−アゾビス(メチルイソブチレ−ト)、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、ベンゾイルパーオキサイド並びにこれらの混合物である。
熱重合開始剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
(c)成分として熱重合開始剤を使用する場合、熱重合開始剤は触媒的に有効な量で存在し、その添加量は特に限定されないが、本発明の(b)成分100重量部に対して好ましくは約0.01〜5重量部、より好ましくは約0.025〜2重量部である。
レドックス(酸化還元)系開始剤は、幅広い温度領域で使用できる。特に、下記開始剤種は常温で使用できることが有利である。適切なレドックス系開始剤としては、限定されるわけではないが、例えば特開2006−2654884公報段落[0109]記載のものが挙げられる。
レドックス開始剤系では有機過酸化物と第3級アミンの組み合わせ、有機化酸化物と遷移金属のが好ましく、クメンハイドロパーオキサイドとアニリン類の組み合わせ、クメンハイドロパーオキサイドとコバルトナフテートの組み合わせがさらに好ましい。
レドックス系開始剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
(c)成分としてレドックス系開始剤を使用する場合、レドックス系開始剤は触媒的に有効な量で存在し、その添加量は特に限定されないが、本発明の(b)成分100重量部に対して好ましくは約0.01〜5重量部、より好ましくは約0.025〜2重量部である。
活性エネルギー線より硬化させる場合には、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル開始剤と光アニオン開始剤とが挙げられる。光ラジカル開始剤としては、例えば、特開2006−265488公報段落[0097]記載のものが挙げられる。さらに、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光ラジカル開始剤が挙げられる。
光ラジカル開始剤としては、本発明の樹脂混和物の硬化性と貯蔵安定性のバランスの点で、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドがより好ましい。
光アニオン開始剤としては、例えば、1,10−ジアミノデカン、4,4’−トリメチレンジピペラジン、カルバメート類及びその誘導体、コバルト−アミン錯体類、アミノオキシイミノ類、アンモニウムボレート類等が挙げられる。
近赤外光重合開始剤としては、近赤外光吸収性陽イオン染料等を使用しても構わない。近赤外光吸収性陽イオン染料としては、650〜1500nmの領域の光エネルギーで励起する、例えば特開平3−111402号公報、特開平5−194619号公報等に開示されている近赤外光吸収性陽イオン染料−ボレート陰イオン錯体等を用いるのが好ましく、ホウ素系増感剤を併用することがさらに好ましい。
これらの光重合開始剤は、単独、又は2種以上混合して用いても、他の化合物と組み合わせて用いてもよい。
他の化合物との組み合わせとしては、具体的には、ジエタノールメチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンとの組み合わせ、さらにこれにジフェニルヨードニウムクロリド等のヨードニウム塩を組み合わせたもの、メチレンブルー等の色素及びアミンと組み合わせたもの等が挙げられる。
なお、前記光重合開始剤を使用する場合、必要により、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、パラターシャリーブチルカテコール等の重合禁止剤類を添加することもできる。
(c)成分として光重合開始剤を使用する場合、その添加量は特に制限はないが、硬化性と貯蔵安定性の点から、(b)成分100重量部に対して、0.001〜10重量部が好ましい。
<<樹脂混和物>>
本発明の樹脂混和物は、上記(a)および(b)、場合によってさらに(c)成分を含有してなるものであるが、物性を調整するために、さらに各種の添加剤、例えば、重合性のモノマー及び/またはオリゴマー硬化調整剤、金属石鹸、充填材、微小中空粒子、可塑剤、接着性付与剤、溶剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、物性調整剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤、光硬化性樹脂等を、必要に応じて適宜配合してもよい。これらの各種添加剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
<重合性のモノマー及び/またはオリゴマー>
本発明の樹脂混和物には、本発明の効果を損なわない範囲でモノマー及び/またはオリゴマーを添加することができる。ラジカル重合性の基を有する、モノマー及び/又はオリゴマー、あるいは、アニオン重合性の基を有する、モノマー及び/又はオリゴマーが、硬化性の点から好ましい。
前記ラジカル重合性の基としては、(メタ)アクリル基等の(メタ)アクリロイル系基、スチレン基、アクリロニトリル基、ビニルエステル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基、塩化ビニル基等が挙げられる。なかでも、本発明に使用するビニル系重合体と類似する(メタ)アクリロイル系基を有するものが好ましい。
前記アニオン重合性の基としては、(メタ)アクリル基等の(メタ)アクリロイル系基、スチレン基、アクリロニトリル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基等が挙げられる。なかでも、本発明に使用するビニル系重合体と類似する(メタ)アクリロイル系基を有するものが好ましい。
前記モノマーの具体例としては、特開2006−265488公報段落[0123]〜[0131]記載のものが挙げられる。
前記オリゴマーとしては、特開2006−265488公報段落[0132]記載のものが挙げられる。
上記のうち、(メタ)アクリロイル系基を有する、モノマー及び/又はオリゴマーが好ましい。また、(メタ)アクリロイル系基を有するモノマー及び/又はオリゴマーの数平均分子量は、5000以下であることが好ましい。さらに、表面硬化性の向上や、作業性向上のための粘度低減のために、モノマーを用いる場合には、分子量が1000以下であることが、相溶性が良好であるという理由からさらに好ましい。
重合性のモノマー及び/又はオリゴマーの使用量としては、表面硬化性の向上、タフネスの付与、粘度低減による作業性の観点から、(b)成分100重量部(以下、単に部ともいう)に対して、1〜200部が好ましく、5〜100部がより好ましい。
<金属石鹸>
本発明の樹脂混和物には、金型離型性を高めるために必要に応じて金属石鹸をさらに含有させることができる。
金属石鹸としては、特に制限はないが、一般に長鎖脂肪酸と金属イオンが結合したものであり、脂肪酸に基づく無極性あるいは低極性の部分と、金属との結合部分に基づく極性の部分を一分子中に合わせて持っているものであれば、公知のものを任意に使用できる。
長鎖脂肪酸としては、例えば炭素数1〜18の飽和脂肪酸、炭素数3〜18の不飽和脂肪酸、脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中では、入手性の点から炭素数1〜18の飽和脂肪酸が好ましく、離型性の効果の点から炭素数6〜18の飽和脂肪酸が特に好ましい。金属イオンとしては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウム)、亜鉛、鉛、コバルト、アルミニウム、マンガン、ストロンチウム等が挙げられる。
具体的に例示すれば、特開2005−232419公報段落[0155]記載の金属石鹸が挙げられる。
これらの金属石鹸の中では、入手性、安全性の点からステアリン酸金属塩類が好ましく、特に経済性の点から、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛からなる群から選択される1つ以上のものが最も好ましい。
この金属石鹸の添加量としては特に制限はないが、ビニル系重合体(b)100重量部に対して0.025〜5重量部の範囲で使用することが好ましく、0.05〜4重量部使用するのがより好ましい。配合量が5重量部より多いと硬化物の物性が低下する傾向があり、0.025重量部より少ないと金型離型性が得られにくい傾向がある。
<充填材>
充填材としては、特に限定されないが特開2005−232419公報段落[0158]記載の充填材が挙げられる。
これら充填材のうちでは、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク等が好ましい。
特に、これら充填材で強度の高い硬化物を得たい場合には、主に結晶性シリカ、溶融シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー及び活性亜鉛華等から選ばれる充填材を添加できる。なかでも、比表面積(BET吸着法による)が50m2/g以上、通常50〜400m2/g、好ましくは100〜300m2/g程度の超微粉末状のシリカが好ましい。またその表面が、オルガノシランやオルガノシラザン、ジオルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物で予め疎水処理されたシリカが更に好ましい。
また、低強度で伸びが大である硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛及びシラスバルーン等から選ばれる充填材を添加できる。なお、一般的に、炭酸カルシウムは、比表面積が小さいと、硬化物の破断強度、破断伸びの改善効果が充分でないことがある。比表面積の値が大きいほど、硬化物の破断強度、破断伸びの改善効果はより大きくなる。
更に、炭酸カルシウムは、表面処理剤を用いて表面処理を施してある方がより好ましい。表面処理炭酸カルシウムを用いた場合、表面処理していない炭酸カルシウムを用いた場合に比較して、本発明の樹脂混和物の作業性を改善し、該樹脂混和物の貯蔵安定性効果がより向上すると考えられる。
前記の表面処理剤としては、公知のものを使用でき、例えば、特開2005−232419公報段落[0161]記載の表面処理剤が挙げられる。
この表面処理剤の処理量は、炭酸カルシウムに対して、0.1〜20重量%の範囲で処理するのが好ましく、1〜5重量%の範囲で処理するのがより好ましい。処理量が0.1重量%未満の場合には、作業性の改善効果が充分でないことがあり、20重量%を越えると、該樹脂混和物の貯蔵安定性が低下することがある。
特に限定はされないが、炭酸カルシウムを用いる場合、配合物のチクソ性や硬化物の破断強度、破断伸び等の改善効果を特に期待する場合には、膠質炭酸カルシウムを用いるのが好ましい。
一方、重質炭酸カルシウムを配合物の増量、コストダウン等を目的として添加することがある特開2005−232419公報段落[0163]記載のものを使用することができる。
上記充填材は、目的や必要に応じて単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。充填材を用いる場合の添加量は、ビニル系重合体(b)100重量部に対して、充填材を5〜1000重量部の範囲で使用するのが好ましく、20〜500重量部の範囲で使用するのがより好ましく、40〜300重量部の範囲で使用するのが特に好ましい。配合量が5重量部未満の場合には、硬化物の破断強度、破断伸び、接着性と耐候接着性の改善効果が充分でないことがあり、1000重量部を越えると該樹脂混和物の作業性が低下することがある。
<微小中空粒子>
物性の大きな低下を起こすことなく軽量化、低コスト化を図ることを目的として、微小中空粒子をこれら補強性充填材に併用して添加することができる。
このような微小中空粒子(以下において、「バルーン」と称することがある。)には、特に限定はされないが、「機能性フィラーの最新技術」(CMC)に記載されているように、直径が1mm以下、好ましくは500μm以下、更に好ましくは200μm以下の無機質あるいは有機質の材料で構成された中空体(無機系バルーンや有機系バルーン)が挙げられる。特に、真比重が1.0g/cm3以下である微小中空体を用いることが好ましく、更には0.5g/cm3以下である微小中空体を用いることが好ましい。
前記無機系バルーン及び有機系バルーンとしては、特開2005−232419公報段落[0168]〜[0170]に記載されているバルーンを使用することができる。
上記バルーンは単独で使用しても良く、2種類以上混合して用いても良い。さらに、これらバルーンの表面を脂肪酸、脂肪酸エステル、ロジン、ロジン酸リグニン、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミカップリング剤、ポリプロピレングリコール等で、分散性及び配合物の作業性を改良するために処理したものも使用することができる。これらのバルーンは、配合物を硬化させた場合の物性のうち、柔軟性及び伸び・強度を損なうことなく、軽量化させコストダウンするために使用される。
バルーンの添加量は、特に限定されないが、ビニル系重合体(b)100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部、更に好ましくは0.1〜30重量部の範囲で使用できる。この量が0.1重量部未満では軽量化の効果が小さく、50重量部より多いとこの配合物を硬化させた場合の機械特性のうち、引張強度の低下が認められることがある。また、バルーンの比重が0.1以上の場合は、その添加量は好ましくは3〜50重量部、更に好ましくは5〜30重量部である。

<酸化防止剤>
本発明の樹脂混和物には、各種酸化防止剤を必要に応じて用いてもよい。これらの酸化防止剤としては、p−フェニレンジアミン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤や、二次酸化防止剤としてリン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
<可塑剤>
本発明の樹脂混和物には、必要に応じて可塑剤を配合することができる。
可塑剤としては特に限定されないが、物性の調整、性状の調節等の目的により、例えば、特開2005−232419公報段落[0173]記載の可塑剤が挙げられる。これらの中では、粘度の低減効果が顕著であり、耐熱性試験時における揮散率が低いという点から、ポリエステル系可塑剤、ビニル系重合体が好ましい。また、数平均分子量500〜15000の重合体である高分子可塑剤が、添加することにより、該樹脂混和物の粘度及び該樹脂混和物を硬化して得られる硬化物の引張り強度、伸び等の機械特性が調整できるとともに、重合体成分を分子中に含まない可塑剤である低分子可塑剤を使用した場合に比較して、初期の物性を長期にわたり維持できるため好適である。なお、限定はされないがこの高分子可塑剤は、官能基を有しても有しなくても構わない。
上記高分子可塑剤の数平均分子量は、500〜15000と記載したが、好ましくは800〜10000であり、より好ましくは1000〜8000である。分子量が低すぎると熱にさらされたり液体に接した場合に可塑剤が経時的に流出し、初期の物性を長期にわたり維持できないことがある。また、分子量が高すぎると粘度が高くなり、作業性が低下する傾向がある。
これらの高分子可塑剤のうちで、ビニル系重合体(b)と相溶するものが好ましい。中でも相溶性及び耐候性、耐熱老化性の点からビニル系重合体が好ましい。ビニル系重合体の中でも(メタ)アクリル系重合体が好ましく、アクリル系重合体がさらに好ましい。このアクリル系重合体の合成法は、従来からの溶液重合で得られるものや、無溶剤型アクリルポリマー等を挙げることができる。後者のアクリル系可塑剤は溶剤や連鎖移動剤を使用せず高温連続重合法(USP4414370、特開昭59−6207号公報、特公平5−58005号公報、特開平1−313522号公報、USP5010166)にて作製されるため、本発明の目的にはより好ましい。その例としては特に限定されないが、東亞合成品UPシリーズ等が挙げられる(工業材料1999年10月号参照)。勿論、他の合成法としてリビングラジカル重合法をも挙げることができる。この方法によれば、その重合体の分子量分布が狭く、低粘度化が可能なことから好ましく、更には原子移動ラジカル重合法がより好ましいが、これに限定されるものではない。
高分子可塑剤の分子量分布は特に限定されないが、狭いことが好ましく、1.8未満が好ましい。1.7以下がより好ましく、1.6以下がなお好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.4以下が特に好ましく、1.3以下が最も好ましい。
上記高分子可塑剤を含む可塑剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、必ずしも必要とするものではない。また必要によっては高分子可塑剤を用い、物性に悪影響を与えない範囲で低分子可塑剤を更に併用しても良い。
なおこれら可塑剤は、重合体製造時に配合することも可能である。
可塑剤を用いる場合の使用量は、限定されないが、ビニル系重合体(b)100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは5〜50重量部である。1重量部未満では可塑剤としての効果が発現しにくい傾向があり、100重量部を越えると硬化物の機械強度が不足する傾向がある。
上記可塑剤以外に、本発明においては、次に述べる反応性希釈剤を用いても構わない。
反応性希釈剤として、硬化養生中に揮発し得るような低沸点の化合物を用いた場合は、硬化前後で形状変化を起こしたり、揮発物により環境にも悪影響を及ぼしたりすることから、常温での沸点が100℃以上である有機化合物が特に好ましい。
反応性希釈剤の具体例としては、1−オクテン、4−ビニルシクロヘキセン、酢酸アリル、1,1−ジアセトキシ−2−プロペン、1−ウンデセン酸メチル、8−アセトキシ−1,6−オクタジエン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
反応性希釈剤の添加量は、ビニル系重合体(b)100重量部に対し、好ましくは0.1〜100重量部、より好ましくは0.5〜70重量部、さらに好ましくは1〜50重量部である。
<光安定剤>
本発明の樹脂混和物には、必要に応じて光安定剤を添加しても良い。光安定剤は各種のものが知られており、例えば大成社発行の「酸化防止剤ハンドブック」、シーエムシー化学発行の「高分子材料の劣化と安定化」(235〜242)等に記載された種々のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
特に限定はされないが、光安定剤の中でも、紫外線吸収剤が好ましく、具体的には、、例えば、チヌビンP、チヌビン234、チヌビン320、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン329、チヌビン213(以上いずれも日本チバガイギー製)等のようなベンゾトリアゾール系化合物やチヌビン1577等のようなトリアジン系、CHIMASSORB81等のようなベンゾフェノン系、チヌビン120(日本チバガイギー製)等のようなベンゾエート系化合物等が例示できる。
また、ヒンダードアミン系化合物も好ましく、そのような化合物の具体的には2006−274084号公報記載のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
更には紫外線吸収剤とヒンダードアミン系化合物の組合せはより効果を発揮することがあるため、特に限定はされないが併用しても良く、併用することが好ましいことがある。
光安定剤は前述した酸化防止剤と併用してもよく、併用することによりその効果を更に発揮し、特に耐候性が向上することがあるため特に好ましい。予め光安定剤と酸化防止剤を混合してあるチヌビンC353、チヌビンB75(以上いずれも日本チバガイギー製)などを使用しても良い。
光安定剤の使用量は、熱硬化性樹脂または熱硬化性樹脂(a)とビニル系重合体(b)100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲であることが好ましい。0.1重量部未満では耐候性を改善の効果が少なく、10重量部超では効果に大差がなく経済的に不利である。
<接着性付与剤>
本発明の樹脂混和物を成形ゴムとして単独で使用する場合には、特に接着付与剤を添加する必要はないが、異種基材との二色成形等に使用する場合に配合できる接着性付与剤としては、樹脂混和物に接着性を付与するものであれば特に限定されないが、架橋性シリル基含有化合物が好ましく、更にはシランカップリング剤が好ましい。
これらを具体的に例示すると、特開2005−232419公報段落[0184]記載の接着性付与剤が挙げられる。
また、ヒドロシリル化反応を阻害しない範囲において、分子中にエポキシ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、カルバメート基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、ハロゲン基、(メタ)アクリル基等の、炭素原子及び水素原子以外の原子を有する有機基と、架橋性シリル基を併せ持つシランカップリング剤を用いることができる。
これらを具体的に例示すると、特開2005−232419公報段落[0185]記載の炭素原子及び水素原子以外の原子を有する有機基と、架橋性シリル基を併せ持つシランカップリング剤が挙げられる。
これらの中でも、硬化性及び接着性の点から、分子中にエポキシ基あるいは(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン類がより好ましい。
これらは、単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤以外の接着性付与剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン−フェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジンエステル樹脂硫黄、アルキルチタネート類、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。
また、接着性を更に向上させるために、架橋性シリル基縮合触媒を上記接着性付与剤とともに併用することができる。架橋性シリル基縮合触媒としては、例えば、特開2005−232419公報段落[0187]記載されているものが挙げられる。
上記接着性付与剤は、ビニル系重合体(b)100重量部に対して、0.01〜20重量部配合するのが好ましい。0.01重量部未満では接着性の改善効果が小さく、20重量部を越えると硬化物物性が低下し易い傾向がある。好ましくは0.1〜10重量部であり、更に好ましくは0.5〜5重量部である。
上記接着性付与剤は1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。
<溶剤>
本発明の樹脂混和物には、必要に応じて溶剤を配合することができる。
配合できる溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は重合体の製造時に用いてもよい。
<その他の添加剤>
本発明の樹脂混和物には、樹脂混和物又はその硬化物の諸物性の調整を目的として、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。このような添加物の例としては、たとえば、難燃剤、老化防止剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤、などがあげられる。これらの各種添加剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
このような添加物の具体例は、たとえば、特公平4−69659号、特公平7−108928号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号の各明細書などに記載されている。
<<硬化物の作製方法>>
本発明の樹脂混和物は、全ての配合成分を予め配合密封した1液型として調製でき、また、開始剤だけを抜いたA液と、開始剤を充填材、可塑剤、溶剤等と混合したB液を成形直前に混合する2液型としても調製できる。
本発明による樹脂混和物は、比較的高温でも貯蔵安定性に優れることから、当該樹脂混和物をより低い粘度で扱うことが可能となり、ロール成形、押出し成形、液状射出成形等に好適である。
また、(b)成分配合比率によっては、常温でも流動性を持たすことが可能であり、常温での光硬化、レドックス硬化が可能である。
<<硬化物>>
本発明の硬化物は、上記樹脂混和物を硬化させて得られるものである。
当該樹脂混和物を硬化させる方法としては、特に限定されない。
(c)成分として熱重合開始剤を用いる場合、その硬化温度は、使用する熱重合開始剤、(a)熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂成分、ビニル系重合体(b)、添加される他の化合物等の種類により異なるが、通常50℃〜250℃が好ましく、70℃〜200℃がより好ましい。
(b)成分として光重合開始剤を用いる場合、活性エネルギー線源により光又は電子線を照射して、硬化させることができる。
活性エネルギー線源としては特に限定はないが、用いる光重合開始剤の性質に応じて、例えば高圧水銀灯、低圧水銀灯、電子線照射装置、ハロゲンランプ、発光ダイオード、半導体レーザー、メタルハライド等が挙げられる。
(c)成分として光重合開始剤を用いる場合、その硬化温度は、0℃〜150℃が好ましく、5℃〜120℃がより好ましい。
(c)成分としてレドックス系開始剤を用いる場合、その硬化温度は、−50℃〜250℃が好ましく、0℃〜180℃がより好ましい。
<<成形方法>>
本発明の樹脂混和物を成形体として用いる場合の成形方法としては、特に限定されず、一般に使用されている各種の成形方法を用いることができる。例えば、注型成形、圧縮成形、トランフファー成形、射出成形、押し出し成形、回転成形、中空成形、熱成形等が挙げられる。特に自動化、連続化が可能で、生産性に優れるという観点から、ロール成形、カレンダー成形、押出し成形、液状射出成形、射出成形によるものが好ましい。
<<用途>>
本発明の樹脂混和物は、特に限定はされないが、自動車用材料、電気・電子部品材料、電線・ケーブル用絶縁被覆材等の電気絶縁材料、コーティング材、発泡体、電気電子用ポッティング材、フィルム、ガスケット、オイルシール、Oリング、パッキン、ホース・チューブ類、ロール、ダイヤフラム、注型材料、各種成形材料等の様々な用途に利用可能である。
更に、本発明の樹脂混和物から得られたゴム弾性を示す成形体は、ガスケット、パッキン類を中心にシール材用途にも適用できる。
例えば自動車分野では、ボディ部品として、気密保持のためのシール材、ガラスの振動防止材、車体部位の防振材、特にウインドシールガスケット、ドアガラス用ガスケットに使用することができる。シャーシ部品として、防振、防音用のエンジン及びサスペンジョンゴム、特にエンジンマウントラバーに使用することができる。エンジン部品としては、トランスミッションオイルクーラーホース、エンジンオイルクーラーホース、エアダクトホース、ターボインタークーラーホース、ホットエアーホース、ラジエターホース、パワーステアリングホース、燃料ホース、ドレインホース等の冷却用、燃料供給用、吸気及び排気用等のホース類、エンジンカムカバーやオイルパンのガスケット、オイルポンプ用ガスケット、パワーステアリングベーンポンプ用ガスケット、インテークマニホールド用ガスケット、スロットルボディ用ガスケット、コンプレッサー用ガスケット、タイミングベルトカバー用ガスケット、クランクシャフトシールガスケット、カムシャフトシールガスケット、トランスミッションシールガスケット、等のガスケット類、各種Oリング、オイルシール、パワーステアリングシールベルトカバーシール、シールワッシャ−、オイルレシーバ、プラグチューブシール、スクイーズパッキン、リップシールパッキン、ボアプラグ、インジェクションパイプシール、ブレーキドラムシール、ワイヤーハーネス等のコネクタシール、オイルレベルゲージ、ブリーザ、バルブ、ダイアフラム等各種ゴム部品、燃料噴射装置、燃料加熱装置、エアダンパ、圧力検出装置、熱交換器用樹脂タンクのオイルクーラー、可変圧縮比エンジン、シリンダ装置、圧縮天然ガス用レギュレータ、圧力容器、筒内直噴式内燃機関の燃料供給システムもしくは高圧ポンプ用のOリング、イグナイタHICもしくは自動車用ハイブリッドIC用のボッティング材、等速ジョイントブーツ材及びラック&ピニオンブーツ材、エンジンコントロール基板用のコーティング材、モール、ヘッドランプレンズ、サンルーフシールもしくはミラー用の接着剤に使用することができる。また、排ガス清浄装置部品、ブレーキ部品にも使用できる。
電気分野では、コーティング、ポッティング、パッキン、Oリング、ベルト等に使用できる。具体的には、高電圧用厚膜抵抗器、ハイブリッドICの回路素子、HIC、電気絶縁部品、半導電部品、導電部品、モジュール、印刷回路、セラミック基板、ダイオード、トランジスタもしくはボンディングワイヤーのバッファー材、半導電体素子、または光通信用オプティカルファイバー等のコーティング材、トランス高圧回路、プリント基板、可変抵抗部付き高電圧用トランス、電気絶縁部品、半導電部品、導電部品、太陽電池またはテレビ用フライバックトランス等のポッティング材、重電部品、弱電部品、太陽電池の裏面封止、電気・電子機器の回路や基板等のシーリング材、照明器具用の飾り類、防水パッキン類、防振ゴム類、防虫パッキン類、クリーナ用の防振・吸音と空気シール材、電気温水器用の防滴カバー、ヒータ部パッキン、電極部パッキン、安全弁ダイアフラム、酒かん器用のホース類、防水パッキン、電磁弁、スチームオーブンレンジ及びジャー炊飯器用の防水パッキン、給水タンクパッキン、吸水バルブ、水受けパッキン、接続ホース、ベルト、保温ヒータ部パッキン、蒸気吹き出し口シール等、燃焼機器用のオイルパッキン、Oリング、ドレインパッキン、加圧チューブ、送風チューブ、送・吸気パッキン、防振ゴム、給油口パッキン、油量計パッキン、送油管、ダイアフラム弁、送気管等、音響機器用のスピーカーガスケット、スピーカーエッジ、ターンテーブルシート、ベルト、プーリー等のゴム部品が挙げられる。また、ブラウン管ウェッジ、ネック、電気絶縁部品、半導電部品または導電部品等の接着剤、電線被覆の補修材、電線ジョイント部品の絶縁シール材、OA機器用ロール、インク用ワイパ、振動吸収剤、ゲル等にも使用できる。
建築分野では、構造用ガスケット(ジッパーガスケット)、空気膜構造屋根材、防水材、定形シーリング材、防振材、防音材、セッティングブロック、摺動材等に使用できる。
スポーツ分野では、スポーツ床として全天候型舗装材、体育館床等、スポーツシューズとして靴底材、中底材等、球技用ボールとしてゴルフボール等に使用できる。
防振ゴム分野では、自動車用防振ゴム、鉄道車両用防振ゴム、航空機用防振ゴム、防舷材等に使用できる。
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
また、下記実施例中、「数平均分子量」及び「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(shodex GPC K−804、K−802.5;昭和電工(株)製)、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。
下記実施例中、「平均末端(メタ)アクリロイル基数」は、「重合体1分子当たりに導入された(メタ)アクリロイル基数」であり、1H−NMR分析及びGPCにより求められた数平均分子量より算出した。ただし、NMRはBruker社製ASX−400を使用し、溶媒として重クロロホルムを用いて23℃にて測定した。
なお、下記実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
(製造例1)
各原料の使用量を表1に示す。
(1)重合工程
アクリル酸エステル(予め混合されたアクリル酸エステル)を脱酸素した。攪拌機付ステンレス製反応容器の内部を脱酸素し、臭化第一銅、全アクリル酸エステルの一部(表1では初期仕込みモノマーとして記載)を仕込み、加熱攪拌した。アセトニトリル(表1では重合用アセトニトリルと記載)、開始剤としてジエチル2,5−ジブロモアジペート(DBAE)を添加、混合し、混合液の温度を約80℃に調節した段階でペンタメチルジエチレントリアミン(以下、トリアミンと略す)を添加し、重合反応を開始した。残りのアクリル酸エステル(表1では追加モノマーとして記載)を逐次添加し、重合反応を進めた。重合途中、適宜トリアミンを追加し、重合速度を調整した。重合時に使用したトリアミンの総量を重合用トリアミンとして表1に示す。重合が進行すると重合熱により内温が上昇するので内温を約80℃〜約90℃に調整しながら重合を進行させた。
(2)酸素処理工程
モノマー転化率(重合反応率)が約95%以上の時点で反応容器気相部に酸素‐窒素混合ガスを導入した。内温を約80℃〜約90℃に保ちながらしながら反応液を数時間加熱攪拌して反応液中の重合触媒と酸素を接触させた。アセトニトリル及び未反応のモノマーを減圧脱揮して除去し、重合体を含有する濃縮物を得た。濃縮物は著しく着色していた。
(3)第一粗精製
トルエンを重合体の希釈溶媒として使用した。重合体100kgに対して100〜150kg程度のトルエンで(2)の濃縮物を希釈し、ろ過助剤、吸着剤(キョーワード700SEN、キョーワード500SH)を添加した。反応容器気相部に酸素‐窒素混合ガスを導入した後、約80℃で数時間加熱攪拌した。不溶な触媒成分をろ過除去した。ろ液は重合触媒残渣によって着色および若干の濁りを有していた。
(4)第二粗精製
ろ液を攪拌機付ステンレス製反応容器に仕込み、吸着剤(キョーワード700SEN、キョーワード500SH)を添加した。気相部に酸素−窒素混合ガスを導入して約100℃で数時間加熱攪拌した後、吸着剤等の不溶成分をろ過除去した。ろ液はほとんど無色透明な清澄液であった。ろ液を濃縮し、ほぼ無色透明の重合体を得た。
(5)(メタ)アクリロイル基導入工程
重合体100kgをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)約100kgに溶解し、アクリル酸カリウム(末端Br基に対して約2モル当量)、熱安定剤(H−TEMPO:4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−n−オキシル)、吸着剤(キョーワード700SEN)、を添加し、約70℃で数時間加熱攪拌した。DMACを減圧留去し、重合体濃縮物を重合体100kgに対して約100kgのトルエンで希釈し、ろ過助剤を添加して固形分をろ別し、ろ液を濃縮し、末端にアクリロイル基を有する重合体[P1]を得た。得られた重合体の1分子あたりに導入されたアクリロイル基数、数平均分子量、分子量分布を併せて表1に示す。
Figure 0004990006
(実施例1)
製造例1で得られた共重合体[P1]3部、NipolAR31(エポキシ基含有耐熱タイプアクリルゴム、日本ゼオン製)97部、酸化防止剤として、ノクラックWhite(N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業製)を2部、滑剤としてグレッグG−8205(エステル系ワックス、大日本インキ化学工業製)1部、ステアリン酸1部をラボプラストミル(LABO PLASTOMILL MODEL 30C150、東洋精機製作所製)を用い、チャンバー内の樹脂温度(チャンバー温度)が80℃から混練を開始し、ローター回転数20rpmで1.5分→50rpmで1.5分→65rpmで1.5分それぞれ混練し、剪断発熱により樹脂温度が約95℃に達した時点で混練を停止し、樹脂温度85℃以下までチャンバー内で冷却した。そこへ、共重合体[P1]の開始剤として、パーブチルI(t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、日本油脂製)0.03部、NipolAR31の架橋剤として安息香酸アンモニウム1.46部を加え、チャンバー温度を80℃、ローター回転数20rpmで1.5分→45rpmで1.5分→60rpmで1.5分間それぞれ混練して、開始剤、架橋剤を樹脂成分に分散させた。さらに、真空ポンプを用いて、5分間脱揮して樹脂内の気泡を除去して樹脂混和物を得た(チャンバー温度80℃、ローターの回転条件;40rpm)。
得られた樹脂混和物を金型(100mm*140mm、厚さ2mm)に流し込み、温度170℃でプレス加硫を30分間行い、厚さ約2mmのゴム状硬化物シートを得た。
得られたシートからJIS K 6251に準じて、(1/3号ダンベル)サイズに切り出し、引張り特性を評価した。また、得られたシートから、JIS K 6253に準じて、20mm*20mm幅のシートを6枚重ねてゴム硬度を測定した。これらの結果を表3に示す。
(実施例2〜5)
配合量以外は、実施例1と同様の方法で樹脂混和物の混練、物性評価を行った。樹脂混和物の配合処方は表2に示すとおりである。これらの結果を表3に示す。
(実施例6)
NipolAR31の代わりに、NipolAR32(エポキシ基含有耐寒タイプアクリルゴム、日本ゼオン製)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で樹脂混和物の混練、物性評価を行った。また、ゴム状硬化物シートの作成と同一硬化条件で、直径29mm、厚さ12.5mmの円筒形状硬化物を作成し、JIS K 6262に準じて150℃、25%圧縮、70時間条件での圧縮永久歪を測定した。これらの結果を表3に示す。
(実施例7〜10)
配合量以外は、実施例6と同様の方法で樹脂混和物の混練、物性評価を行った。樹脂混和物の配合処方は表2のとおりである。これらの結果を表3に示す。
(比較例1)
実施例1において、共重合体[P1]およびパーブチルI加えず、NipolAR31を100部、安息香酸アンモニウムを1.5部した以外は、実施例1と同様の方法樹脂混和物の混練、物性評価を行った。樹脂混和物の配合処方は表2に示すとおりである。これらの結果を表3に示す。
(比較例2)
実施例6において、共重合体[P1]およびパーブチルI加えず、NipolAR32を100部、安息香酸アンモニウムを1.5部した以外は、実施例6と同様の方法樹脂混和物の混練、物性評価を行った。樹脂混和物の配合処方は表2に示すとおりである。これらの結果を表3に示す。
Figure 0004990006
Figure 0004990006
実施例1〜5と比較例1の比較から以下のことが明らかである。発明者のこれまでの知見に反し、ビニル系重合体(b)単独硬化物の機械物性と比較して、(a)成分に添加、硬化させた場合に予想以上の高伸び、低ジュラス化が見られた。特に、ビニル系重合体(b)の添加比率が10%、30%の実施例3、4ではM100(100%モジュラス)の低下が著しく、柔軟性の付与効果が顕著となっている。
さらに、実施例6〜10と比較例2の比較から上記と同様、共重合体[P1]の添加により柔軟性が付与されていることが分かる他、共重合体[P1]の添加により耐熱圧縮性の改善効果が見られる。
本発明の樹脂混和物は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂に(メタ)アクリロイル基含有ビニル系重合体を添加、混練、硬化させることで、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の機械物性、耐熱、耐薬品性、耐薬品性、耐候性を改善できることから、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の改質剤として好適である。また、該(メタ)アクリロイル基含有ビニル系重合体は液状であることから樹脂混和物の可塑化が可能である。その結果、混練温度、ミルのローター回転数、混練時間、成形時間等の混練、成形条件を低減でき、省工程化、省エネルギー化にも効果がある。

Claims (16)

  1. (a)エポキシ基、水酸基、酸基およびハロゲン基からなる群から選ばれる少なくとも一種の反応性官能基を有する、アクリルゴムまたはメタクリル樹脂、および、
    (b)下記一般式(1)で表される基を、1分子あたり少なくとも1個分子末端に有する(メタ)アクリル系重合体
    −OC(O)C(R)=CH2 (1)
    (式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。)
    を含有する、樹脂混和物。
  2. 前記(a)が、エポキシ基含有アクリルゴムである、請求項1記載の樹脂混和物。
  3. 前記(a)と(b)との配合割合は、前記(a)および(b)の総量100重量%に対して(b)が0.1重量%以上90重量%以下である、請求項1または2に記載の樹脂混和物。
  4. 前記(b)(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)の値が1.8未満である、請求項1〜3いずれか一項に記載の樹脂混和物。
  5. 前記(b)(メタ)アクリル系重合体の主鎖がリビングラジカル重合により製造されたものである、請求項4記載の樹脂混和物。
  6. 前記リビングラジカル重合が原子移動ラジカル重合である、請求項5に記載の樹脂混和物。
  7. 前記原子移動ラジカル重合は、触媒として銅の錯体を用いる、請求項6記載の樹脂混和物。
  8. 前記(b)(メタ)アクリル系重合体の主鎖が、連鎖移動剤を用いた(メタ)アクリル系モノマーの重合により製造されたものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂混和物。
  9. 前記(b)(メタ)アクリル系重合体の主鎖が(メタ)アクリル酸エステルを主として重合して製造されたものである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂混和物。
  10. 前記(b)(メタ)アクリル系重合体の主鎖がアクリル酸エステルを主として重合して製造されたものである、請求項9記載の樹脂混和物。
  11. 前記(b)(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量が3000以上である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の樹脂混和物。
  12. さらに、(c)開始剤を含有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の樹脂混和物。
  13. 前記(c)開始剤が、熱重合開始剤、光重合開始剤およびレドックス開始剤からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項12に記載の樹脂混和物。
  14. 請求項1〜13のいずれか一項に記載の樹脂混和物を硬化させて得られる硬化物。
  15. 前記硬化物が、加熱および/または活性エネルギー線により硬化させて得られる、請求項14記載の硬化物。
  16. 前記活性エネルギー線がUVおよび/または電子線である、請求項15記載の硬化物。
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