JP4989224B2 - Dnaワクチン組成物およびその使用方法 - Google Patents

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Description

本発明は、一般に、HIV−1により誘導される疾患および感染を防御するための予防ワクチン分野に関する。より詳細には、本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対するDNAワクチンに関する。
2000年の終りまでに、全世界で3610万人がHIVに感染していると推定されている。同年のみで、全世界で約300万人がHIV/AIDS関連疾患で死亡している。この死亡数うちの推定500,000人が15歳未満の児童であった。世界的公衆衛生におけるHIVワクチンの重要性は、どんなに誇張してもし過ぎることはない。
ヒトにおけるHIV−1感染またはHIV−1誘導疾患を阻害または予防する有効なワクチンは、一定のリスクの高い集団の治療およびHIV−1感染またはHIV−1誘導疾患の危険性があり得る一般集団のための一般的な予防ワクチン接種として有用であると認識されている。HIV−1感染に対する長期防御を付与するワクチンが最も有用であろう。不運なことに、HIV−1感染およびHIV−1疾患の防止のために有用なワクチンの開発方法においては多数の問題が存在する。ある問題は、HIV−1ウイルスの固有の性質およびその機能的性質の結果である可能性が最も高く、今までのところ有効なワクチンは開発されていない(概説については、Berzofsky et al.,Developing Synthetic Peptide Vaccines for HIV−1,Vaccines 95,pps.135−142,1995;Cease and Berzofsky,Toward a Vaccine for AIDS:The Emergence of Immunobiology−Based Vaccine Design,Annual Review of Immunology,12:923−989;Berzofsky,Progress Toward Artificial Vaccines for HIV,Vaccines 92,pps.40−41,1992)を参照のこと)。
HIVはレトロウイルスであり、それは、そのゲノムがDNAよりもむしろRNAからなることを意味する。HIV−1およびHIV−2と呼ばれる2つの主なウイルス株が存在し、HIV−1は主にヒト感染を担う株である。HIVのRNAゲノムは、タンパク質の殻で覆われている。RNAゲノムとタンパク質の殻との組合わせはヌクレオキャプシドとして公知であり、タンパク質および脂質の両方のエンベロープで覆われている。
HIVによる宿主細胞への感染は、ウイルスエンベロープ中に存在する高度にグリコシル化されたタンパク質であるHIVのgp120タンパク質が、宿主細胞のCD4受容体分子に結合した時に開始される。この相互作用により、ウイルスと細胞膜とが融合し、その後にウイルスが細胞に侵入する一連の事象が開始される。
宿主細胞への侵入後、HIV RNAは、ウイルス逆転写酵素によって二本鎖DNAに転写される。一旦宿主ゲノムに組み込まれると、宿主のRNAポリメラーゼII酵素による転写を介して、HIVは自身を発現する。転写の調節および転写後の転写物のプロセシングの両方を介して、HIVは、HIV自体が発現する範囲を超える高い調節レベルを発揮することができる。
HIVウイルスの研究により、HIVの病原性に関して重要な多数の遺伝子およびゲノム領域に関する情報を含む、ウイルスの分子生物学についての多くの情報が明らかとなった。これらの遺伝子および領域のうち、HIvのrt、int、vif、および3’LTRが重要である。
HIVのrt遺伝子は、ウイルス逆転写酵素をコードする。この酵素は、HIVのRNAゲノムを利用し、宿主ゲノムに組み込み可能な、対応する線状二本鎖DNA分子を産生する。
HIVのint遺伝子は、インテグラーゼをコードする。これは、宿主ゲノムへの逆転鎖酵素によって産生された線状二本鎖ウイルスDNAの挿入を実際に触媒する酵素である。宿主ゲノムへのウイルスDNAの組み込みを完了するために、宿主細胞DNA修復機構は、宿主DNAとウイルスDNAとのライゲーションを行う。
HIVのvif遺伝子は、「ウイルス感染因子」として公知のタンパク質をコードする。このタンパク質は、感染性ビリオンの産生に必要である。タンパク質は、HIV−1を阻む細胞インヒビターを切り抜ける可能性が高く、ウイルスコアおよび組み込み前複合体(preintegration complex)の安定性を増強することもできる。
HIV−1のLTR(長末端反復)領域は、HIV遺伝子の発現を駆動するのに必要なプロモーター領域を含む。HIV−1の5’LTRは、主にHIV−1遺伝子発現の駆動を担うプロモーターを含み、5’LTR配列が破壊されたとしても、3’LTRがこの機能を引き受ける。3’LTRは、宿主ゲノムへのウイルスDNAの組み込みに必要である。
他の重要なHIV−1遺伝子には、gag、pol、nef、及びvpuがある。
gag遺伝子は、特に、HIVのp27キャプシドタンパク質をコードする。このタンパク質は、ウイルスヌクレオキャプシドの集合組立に重要である。p27タンパク質が、ウイルスの感染力に必要なHIV細胞タンパク質CyAと相互作用するということも公知である。p27とCyAとの相互作用を破壊すると、ウイルス複製が阻害されることが示されている。
pol遺伝子は、HIV−1のrt配列及びint配列を含むので、特に、逆転写酵素およびインテグラーゼをコードする。
nef遺伝子産物(Negative Factor又はNefとして知られている)は、多数の潜在的に重要な性質を有する。Nefは、CD4およびMHCクラスIタンパク質を下流制御する能力を有し、これらは共に、身体のウイルス感染細胞認識能力にとって重要である。Nefについてはまた、細胞タンパク質キナーゼを活性化し、細胞のシグナル伝達プロセスを妨害することも示されている。サル免疫不全ウイルス(SIV)の病原性クローン由来のnefの欠失により、成体マカクザルにウイルス非病原性が付与されることは、おそらく最も重要であろう。従って、機能的nef遺伝子は、SIVがin vivoで疾患を引き起こす能力に不可欠である。さらに、nef遺伝子が大きく欠失しているHIV陽性個体は、10年を超えて健康を維持しており、細胞CD4数も減少しないことが、研究により示されている。
vpu遺伝子は、最初は機能が未知であったが(未知のウイルスタンパク質Viral Ptotein Unknown又はVpuとして公知となった)、CD4およびMHCクラスI発現を下流制御しウイルスの出芽を促進することが現在公知となったタンパク質をコードする。Vpuはまた、イオンチャネルとして作用する別のウイルスタンパク質に類似する。vpu遺伝子は、HIV−1中には存在するが、HIV−2中には存在しない。
ほぼ全てのウイルス感染において、感染集団における一定の部分集団は、回復し、同一病原体による更なるウイルス感染に対し免疫になる。典型的なウイルス病原体の例には、麻疹、灰白髄炎、水痘、B型肝炎、および痘瘡の病原体が含まれる。HIV−1感染の高い死亡率、並びに、HIV−1感染に対する回復および防御免疫が非常に稀であることは、病原性HIV−1が非改変野生型ウイルス病原体である場合に霊長類がHIV−1感染に対して天然の免疫を生じる能力に、疑問を投げ掛けるものである。従って、霊長類集団にHIV−1ウイルスに対する防御免疫を付与するワクチンに対して多大な要求が存在する。
将来のウイルス感染に耐性を示す代表的なものは、ウイルス病原体を認識することができる「中和抗体」の生成である。別の手段は、感染組織に対する細胞性免疫である。典型的なウイルス感染では、中和抗体および細胞性免疫の生成は、感染からの回復の先駆けとなる。しかし、HIV−1感染では、中和抗体および細胞性免疫は、感染の非常に初期に出現し、ウイルス負荷の一過性の減少にしか関連しない。中和抗体および細胞性免疫の生成にも関わらず、HIV−1感染におけるウイルス複製が回復し、AIDS(後天性免疫不全症候群)が発症する。したがって、HIV−1感染では、中和抗体および細胞性免疫は防御免疫を正確に評価する手段ではない。
HIV−1の有効なワクチンの開発におけるさらなる問題は、野生型ウイルスの抗原性の多様性である。組換えHIV−1外殻タンパク質を介して生成されたワクチンは、ウイルスの特定の表現型に対する耐性を付与するが、広範な免疫性を示さない可能性が高い。組換えHIV−1gp120ペプチド(HIV−1ウイルス外殻タンパク質)を使用したワクチン開発は、毒性を示さないで第I相臨床試験を通過する。しかし、中和抗体は一過性にしか出現しないことがデータにより示された。したがって、組換えHIV−1gp120ペプチドワクチンは、短期間しか作用することができず、将来的に感染する、感受性が逆戻りする。
一般に、生ウイルスワクチンは、単離されたウイルスタンパク質よりも病原体ウイルスに対してより良好な免疫を誘導することが認められている(例えば、Putkonen et al.,Immunization with Live attenuated SIVmac Cand Protect Macaques Against Mucosal Infection with SIVsm,Vaccines 96,pps.200−210,1996;Dimmock and Primrose Introduction to Modern Virology,Fourth Ed.,Blackwell Science,1994を参照のこと)。HIV−1ワクチンなどの生レンチウイルスワクチンの使用は認められていないが、これは、接種された個体の宿主DNAにウイルスDNAが組み込まれるため、接種された集団中でこのウイルスが無制限にとどまるという強い懸念があるからである(例えば、Haaft et al.,Evidence of Circulating Pathogenic SIV Following Challenge of Macaques Vaccinated with Live Attenuated SIV,Vaccines 96,pps.219−224,1996を参照のこと)。従って、HIV−1に対する安全且つ有効なワクチンは、最初は非病原性であるワクチンウイルスが無作為に変異または他の変化のいずれかを起こすことによって起こり得る強毒性病原菌感染の発生を防止するような修飾を含む。このようなワクチンとしての可能性を有するものの1つに、HIV−1に対するDNAワクチンの形態があり得る。
DNAワクチンを、一般に、プラスミドDNAまたはRNA分子の形態でニードルまたは微粒子銃を介して宿主組織に注入する。一旦送達されると、DNAは、トランスフェクトされた細胞内で抗原ペプチドの発現を誘導する。米国特許第6,194,389号には、動物被験体中に生理学的免疫応答生成タンパク質を産生するための脊椎動物細胞へのDNAの導入方法が記載されており、その全体が本明細書中で参考として援用される。
ワクチン有効性試験は、一般に、生きたウイルスまたはDNAを用いて被験体を攻撃することを必要とする。ヒト被験体を使用して予備研究を試みることは倫理的および実際的に困難である。予備デザインおよび候補ワクチンの試験のためのモデル系の使用は、ウイルスの種々の種特異的性質によって妨げられている。HIV−1ウイルス自体が、一定の比率で感染するのみであり、ヒトに加えてチンパンジー種が危険にさらされていることが現在知られている。HIV−1ウイルスワクチンの完全な予備研究のために十分な数のこのような危険にさらされている動物が得られる可能性は極めて低い。有効な類似の動物モデル系を使用することが好ましい。
HIV−1の1つの類似のモデル系は、SIVmac(サル免疫不全ウイルス、マカクザル)系であった。SIVは種々のサル(マカクザルが含まれる)に感染するが、SIVとHIVとの間の相違により、SIVの潜在的なヒトワクチンとしての使用は制限される。したがって、HIVの近縁種であるウイルスから作製したワクチンが必要とされているが、試験目的のための動物モデルで依然として感染性を示す。
SIVmacのバックグラウンドにHIV−1のエンベロープタンパク質を置くことによってキメラSIV−HIVウイルスが開発されている。キメラウイルスはサルに感染性を示すことが証明されたが、末期のエイズまたは偽HIV−1感染サルの正確なモデルは得られなかった。
Berzofsky et al.,Developing Synthetic Peptide Vaccines for HIV−1,Vaccines 95,pps.135−142,1995 Cease and Berzofsky,Toward a Vaccine for AIDS:The Emergence of Immunobiology−Based Vaccine Design,Annual Review of Immunology,12:923−989 Berzofsky,Progress Toward Artificial Vaccines for HIV,Vaccines 92,pps.40−41,1992 Putkonen et al.,Immunization with Live attenuated SIVmac Cand Protect Macaques Against Mucosal Infection with SIVsm,Vaccines 96,pps.200−210,1996 Dimmock and Primrose Introduction to Modern Virology,Fourth Ed.,Blackwell Science,1994 Haaft et al.,Evidence of Circulating Pathogenic SIV Following Challenge of Macaques Vaccinated with Live Attenuated SIV,Vaccines 96,pps.219−224,1996
本発明は、非感染被験体に防御免疫を供与するか感染被験体に治療免疫を供与することを目的とする。
本発明は、HIVに対する免疫化のためのDNAワクチンに関する。本発明は、HIVに対する免疫応答を刺激することができる複数のウイルスタンパク質をコードする配列を有するDNA分子を含む。該DNA分子には、逆転写酵素、インテグラーゼ、およびVifをコードする遺伝子を破壊することにより、ワクチンとして使用するための安全性が付与される。該DNA分子には、3’LTRの少なくとも部分的な欠失によって、さらに安全性が付与される。
本発明の該DNA分子は更に、SV40ポリアデニル化配列を含む。さらに、本発明の該DNA分子は、好ましくは、天然のSIVプロモーター配列によって調節される。
本発明はまた、本発明の前記DNAワクチンの個体への投与によるHIVに対する該個体の免疫化方法に関する。
本発明は、さらに、複数のHIVサブタイプのみならずHIV以外のウイルスに対するワクチンに関し、ここで該ワクチンは、本明細書中に記載のオルソロガスHIV及び/又はSIV遺伝子の、他のウイルス由来の遺伝子への置換によって産生されたワクチンに関する。
本発明の特定のDNA構築物および方法は、ワクチン接種した宿主におけるHIV−1に対する免疫応答の惹起に有効である。
本発明の1つの態様は、HIVに対する免疫応答を刺激することができるウイルスタンパク質をコードするDNA分子に関する。好ましい実施形態では、該DNAワクチンは、HIVまたはSIVのgag、pro、vpx、vpr、nef、tatタンパク質をコードする。
本発明のDNA分子は、病原性において重要なタンパク質をコードする能力が除去されるように機能が破壊されているという点が重要である。より詳細には、好ましい実施形態においては、該DNAワクチンのvif、int、およびrt遺伝子の機能を破壊する。他の実施形態においては、rt遺伝子の機能を破壊する。変化した配列におけるヌクレオチドの数が、変化しない配列と異なるよう、少なくとも1つのヌクレオチドを挿入または欠失させることによって、該DNAをその機能上において破壊することができると予想される。機能的アミノ酸をコードする1つまたは複数のヌクレオチドを非機能的アミノ酸をコードする1つまたは複数の異なるヌクレオチドに置換することによって、病原性関連タンパク質をコードするDNAの機能を破壊できる、ということも予想される。本発明の好ましい実施形態では、病原性関連タンパク質をコードするDNAの機能的破壊はrt、int、およびvif遺伝子の欠失によって起こる。
本発明の別の重要な態様は、宿主ゲノムへのDNA配列の望ましくない組み込みを可能とする3’LTR配列を破壊するDNAワクチンを提供することである。機能的ヌクレオチドを、異なる非機能的ヌクレオチドへ置換することによっても、3’LTRの機能を無効にすることができる。該欠失した3’LTR領域が、SV40ポリアデニル化配列によって置換されることが好ましい。当業者は、SV40以外の種々の供給源由来のポリアデニル化部位を3LTR配列の置換物として使用することもできることを認識するであろう。
本発明のさらなる態様は、SHIVku2またはSIV5’LTRプロモーター(配列番号7)の使用による、本発明のDNA分子の調節である。このプロモーターは、DNAワクチン中に存在する、HIVに対する免疫応答を刺激することができるウイルスタンパク質の発現を駆動する。当業者は、本発明の別の実施形態を、所望のウイルスタンパク質の発現も駆動する他の機能的プロモーター配列と置換しうることを認識するであろう。
Δ4−SHIVku2DNA構築物の構築
図1は、本発明のΔ4−SHIVku2DNA構築物(配列番号1)の略図である。本発明のDNAワクチンであるΔ4−SHIVku2DNA構築物(配列番号1)の構築を以下のように行う。本発明のワクチンのために使用したベクターは、pET−9aである。pET−9aの2.3kbのEcoRI/XmmIフラグメントを、約7.4kbの修飾SHIVku2プロウイルスゲノムおよびSV40の約0.5kbのポリアデニル化シグナル配列と置換して、中間ベクターを得る。EcoRIおよびNotI制限部位を、別の中間ベクター中の5’LTRおよびnef遺伝子の末端のすぐ上流に作製する。逆転写酵素(rt)、インテグラーゼ(int)、およびvifの遺伝子を、pro遺伝子の下流末端とvpx遺伝子の上流との間の約2.5kb DNAフラグメントの欠失によって消失させる。次いで、SHIVku2プロウイルスゲノムのエンベロープ(env)、nef、および3’LTRをコードする約3.8kbのヌクレオチド配列を、HIV−1のenvおよびnef遺伝子をコードする約3.2kbのEcoRV/NotI DNAフラグメントと置換する。SHIVku2中のSIVmac239のリーダー配列、gag、およびpro遺伝子をコードする約2.5kbのNarI/BstE II DNAフラグメントを、HIV−1のHIV−1リーダー配列、gag、およびproをコードする約2.4kbのNarI/BstE IIフラグメントと置換して、Δ4−SHIVku2DNA構築物(配列番号1)を得る。而して、本発明のワクチンの5’LTR、vpx、及びvprはSIVmac239に由来し、gag、pro、tat、rev、vpu、env、及びnefはHIV−1に由来する。本発明のDNAワクチンであるΔ4−SHIVku2DNAの好ましい実施形態の配列を、配列番号1と命名する。
Δ4−SHIVku2DNA構築物(配列番号1)の構造をより完全に詳述するために以下の情報を提供する。全gagおよびpol遺伝子をコードするSHIVku2の4,981bpフラグメント(従って、ゲノムのrtおよびint部分を含む)ならびにvif遺伝子の最初の472bpを、Δ4−SHIVku2DNA構築物中のHIV−1の2,376bpのDNAフラグメントと置換する。この2,376bpフラグメントは、全HIV−1gag遺伝子およびHIV−1pol遺伝子の一部をコードする(プロテアーゼをコードする全領域が含まれ、逆転写酵素の最初の104個のアミノ酸に対応するヌクレオチドが除去され、intおよびvif遺伝子が完全に除去されている)。置換されたSHIVku2の4,981bpフラグメントを、配列番号2と命名する。置換されたSHIVku2のvif遺伝子の最初の472bpのDNA配列を、配列番号3と命名する。欠失された4,981bp及び472bpのSHIVku2配列(それぞれ、配列番号2および配列番号3)を置換するために使用したHIV−1の2,376bpフラグメントのDNA配列を、配列番号4と命名する。
上記に加えて、SHIVku2の3’LTRから411bpのDNAフラグメントを欠失させて、Δ4−SHIVku2DNA構築物(配列番号1)を得る。この欠失された3’LTR配列を、配列番号5と命名する。Δ4−SHIVku2DNA構築物では、欠失された3’LTR配列を、SV40ポリアデニル化シグナル配列の481bpのDNA配列と置換し、これを配列番号6と命名する。
Δ4−SHIVku2DNAワクチンの効果
本発明の機能的態様およびその使用に由来する実験結果を詳述する前に、以前のものの有効性との比較によって本発明の有効性を確立することが必要である。本発明のワクチン前およびその試験より以前には、以前のもののワクチンとしての有用性は知られていなかった。
HIVに対する生ウイルスワクチンがウイルスに対する防御の誘発に非常に有効であることは、本発明者らによって行われた以前の研究から知られている。DNAワクチンがこのような防御の提供に同様に有効であり得ることを立証するために、5頭のマカクザルを使用した実験を行った。この動物のうちの3頭に、ワクチンの安全性を増大させるためにrtおよび3’LTRを欠損させたΔ2−SHIVku2DNA(特許出願10/279,992号(その全体が本明細書中で参考として援用される)においてV7として以前に記載)を注射した。Δ2−SHIVku2DNAにおいてはまた、欠損した3’LTR配列がSV40ポリアデニル化配列に置換されている。残りの2頭の動物は、生ウイルスワクチンで免疫化した。DNAワクチンでワクチン接種した3頭の動物にそれぞれ2mgのDNAを皮内注射し、6週間後に5mgのDNAを筋肉内注射し、3回目は、12週間後に0.5mgのDNAを筋肉内注射した。最後の免疫化から12週間後に、マカクザルの静脈内にSHIV89.6Pの非希釈ストック調製物で攻撃誘発した。対象区の接種動物では、同一用量のSHIV89.6Pによって、その100%において疾患が発症されるということに留意することが重要である。生ウイルスをワクチン接種した2頭のマカクザルに、ワクチン接種から10週間後に同一のSHIVウイルスで攻撃誘発した。
その後該動物を研究することにより、DNAワクチンが、EnvおよびGagペプチド中のエピトープに対するELISPOT(商標)(Cellular Technology Limited,Cleveland,Ohio)応答、ならびに、SHIVku2に対する中和抗体を誘導することが明らかとなった。ELISPOT(商標)応答は、本明細書中で、表示されるエピトープを発現する細胞数の基準と定義する。DNAワクチンをワクチン接種した3頭全ての動物がSHIV89.6Pに感染したが、血漿中でそれぞれ低レベルのウイルスRNAのみを産生し、CD4 T細胞を喪失しなかった。DNAワクチンΔ2−SHIVku2DNAをワクチン接種した動物は、攻撃誘発後に既往性の強いELISPOT(商標)応答を示した。これらの動物における感染は、28週間を超えて制御された。28週間目に、DNAワクチンで免疫化した3頭の動物は、生ワクチンで免疫化した動物ほどの有効性を有する防御を示した。こうして、前記DNAワクチンは、異種SHIV89.6Pに対する防御の誘発において生ワクチンと同等であることが証明された。さらに、DNAワクチン接種を受けた動物は、以前の生ワクチンウイルス接種の負荷に耐える必要はなかった。
Δ2−SHIVku2およびΔ4−SHIVku2DNAワクチンのin vivo有効性
実施例2に記載の実験はrt遺伝子および3’LTRを欠くDNAワクチンであるΔ2−SHIVku2DNAの有効性を示していたものの、本発明のワクチンであるΔ4−SHIVku2がワクチンとして有効であるかどうかは明らかではなかった。この不確定さは、本発明のワクチンであるΔ4−SHIVku2が4つの欠失(rt、int、vif、および3’LTR)を含み、各欠失はウイルスの感染性に重要なウイルスゲノムの一部に対応するという事実に由来する。ウイルスを非感染性にすること及び使用時の安全を目的として欠失させたが、生ウイルスよりもむしろDNAを使用するという事実に加えて、これらの4つの欠失により、ワクチンのHIV−1に対する防御付与を不可能とするかどうかは知られていなかった。驚くべきことに、本発明のウイルスは、異種SHIV89.6Pに対する防御の誘導において、実施例2の生ウイルスとの比較で記載したΔ2−SHIVku2DNAワクチンと同様に有効であることが証明された。
3頭のマカクザルに、5mgのΔ2−SHIVku2DNAを筋肉内注射し、他のマカクザルに5mgの本発明のΔ4−SHIVku2DNAを筋肉内注射した。11週間後に注射を繰り返し、第2の免疫化から6週間後に、動物の静脈内にSHIV89.6Pの非希釈ストックで攻撃誘発した。6頭全ての動物が、第1の注射から3週間後にワクチンに対してELISPOT(商標)応答を示し、この応答は、約3週間後に検出不可能なレベルまで減少した。第2の注射からたった1週間後に応答が再度出現し、低レベルまで再度減少した。攻撃誘発時には最小の応答しか検出されなかった。攻撃誘発から1週間までに、各動物は高力価のウイルス複製を示し、これは強力なCMI(細胞媒介性免疫)応答と適合した。攻激誘発から2週間後、前記動物におけるウイルス負荷は、1週間前に認められた濃度の1/10と1/20との間のレベルに減少した。CD4 T細胞を喪失した動物は認められなかった。注射からたった2週間後にDNAが防御を誘導する能力は、前記DNAワクチンの有効性を強調するものであり、本実験結果は、さらなる欠失にも関わらず、本発明のΔ4−SHIVku2DNA構築物であるDNAワクチン(配列番号1)が、Δ2−SHIVku2DNAワクチンと同様の有効性を示す、言い換えると、生ウイルスワクチンと同様の有効性を示すことを、明確に示した。
3’LTRの置換物としてのSV40ポリアデニル化配列の有用性
3’LTR配列の置換物としてのSV40ポリアデニル化配列の有用性を比較するために、更なる実験を行った。該実験は、V5実施形態であるインタクトな3’LTRを有するSHIVku2DNAワクチンと、SV40ポリアデニル化配列と置換された3’LTRを有するV6実施形態であるSHIVku2DNAワクチン(配列番号6)との、ベクターがコードするウイルスタンパク質を発現する能力の比較によって完遂された(V5およびV6実施形態は、特許出願番号10/279,992号(その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されている)。該2つのDNA分子の細胞内区画および細胞外区画中におけるウイルスタンパク質の発現についての性能を、トランスフェクトした初代ヒト繊維芽細胞細胞、ヒト胚腎臓上皮細胞株293、およびJurkat細胞中で比較した。発現の持続時間およびタンパク質の産生量ならびに翻訳後修飾および前駆タンパク質の切断についてもDNAを比較した。3’LTR欠失V6実施形態であるSHIVku2DNAワクチン構築物は、驚くべきことに、両LTRを有するV5実施形態であるSHIVku2DNAワクチンよりもウイルスタンパク質産生でより有効であると判断した。タンパク質産生の持続時間もまた、3’LTR欠失ワクチンにおいての方が長かった。免疫沈降分析により、3’LTR欠失により、gag前駆体の切断が迅速となり、細胞外区画に輸送されるp27の量が2倍となることが明らかとなった。まとめると、これらのデータは、3’LTRの欠失により宿主DNAへのウイルスゲノムの組み込みに関する懸念が軽減されるだけでなく、ウイルスタンパク質がより有効に発現することを示している。
サイトカインとΔ4−SHIVku2DNAワクチンとの同時投与
次に、本発明のワクチンによって誘導される免疫応答を、サイトカイン(例えば、GM−CSF)DNAの同時投与によって増強することができるかどうかを確認するために研究を行った。BALB/Cマウスを、100μgのΔ4−SHIVku2DNAと25μgのマウスGM−CSF DNAとの混合物によって筋肉内を通じて免疫化した。注射を2週間間隔で2回行い、マウスを第2の免疫化から1週間後に屠殺した。脾細胞を、ELISPOT(商標)アッセイにおいて5群に分割したSIV Gagペプチドに対する応答について試験した。免疫化用量が低く、且つ組織サンプルを初期に採取したにも関わらず、CMI応答がピークになる前に、ワクチンDNAと共にGM−CSF DNAを投与された4頭全ての動物が、20〜40細胞/106脾細胞の範囲でELISPOT(商標)応答を示したのに対して、ワクチンDNAのみを投与された動物ではその50%しかこのような応答を示さなかった。注射部位に多数の単核球が集中したことによって証明されるように、GM−CSFが顕著な走化性効果を生じた。この効果は、さらに多くの抗原提示樹状細胞を注射部位に引き付け、該現象はDNAワクチンのみを投与された動物で示された。しかし、驚くべきことに、ワクチンDNAおよびGM−CSFの両方を投与されたマウスは、DNAワクチンのみを投与された動物よりも低いCMI力価を示した。すなわち、ワクチンのみによって生成されたウイルスタンパク質特異的ELISPOT(商標)陽性細胞数は、ワクチン+GM−CSFによって生成された細胞数より有意に多かった。活性化脾細胞を発生する注射被験体の数の増加が予防的または治療的に望ましい場合、Δ4−SHIVku2DNAワクチンとGM−CSFなどのサイトカインとの同時投与が望ましいであろうと結論づけられた。
このように、本発明のDNAワクチンは、HIVに対する防御を得るのに有用である。本発明で使用されたDNAは、SHIVku2(病原性を高める有効性の高い複製ストラテジーを有するウイルス)に由来する。該DNAの転写機構は、ウイルスDNAのプロモーター/エンハンサー配列を格納する5’LTRの保存によって維持された。さらに、5’LTRは、NFKB、NFAT、及びSP−1などの転写因子のための結合部位と、tat(ウイルスDNAの転写を担うHIVおよびレンチウイルスに固有の分子)のRNAのための結合部位とを含む。該DNAが宿主細胞DNAに組み込まれる能力を最小にするためにインテグラーゼ遺伝子および3’LTRを欠失させた。したがって、該DNAは、無期限に組織中に存続することができない。さらに、逆転写酵素およびvif遺伝子の欠失により、ゲノムが感染性ウイルスをコードする能力が損なわれた。同時に、env、gag、vpu、tat、及びnef遺伝子によってコードされるウイルスタンパク質は、該DNAでトランスフェクトされた細胞中で高度に発現された。本発明のDNAワクチンは、マカクザルで免疫原性が高く、異種ウイルスに対して防御免疫を誘発する。該DNAは抗レトロウイルス薬物療法の実施時にいつでも注射可能であるため、本発明のワクチンが、予防的にのみならず、HIVに既に感染した個体に治療的にも使用することができる点は重要である。
上記で提供した実施例および開示は本発明の一定の実施形態を説明するが、本発明を制限する意図を有していない。本開示に関して、本発明の精神または範囲を逸脱することなく多数の方法で本発明を修正可能であることは当業者に明らかである。例えば、上記のenv、gag、およびnef遺伝子を切り出して、HIVの別のサブタイプ由来の対応遺伝子と置換することができる。従って、本発明のワクチンを、HIVの種々のサブタイプに対する免疫化のために使用することができる。さらに、上記のenv、gag、nef、および他の遺伝子を、SARSおよびC型肝炎などの他のウイルス由来の遺伝子と置換することができる。したがって、上記の本発明のDNAワクチンを、HIVまたはSIV以外由来のウイルス遺伝子の発現を駆動し、それにより種々の他のウイルスに対するDNAワクチンを得るための「エンジン」として使用することができる。本発明は、以下の特許請求の範囲のみによって制限される。
(関連出願の相互参照)
本出願は、2003年9月16日提出の米国特許仮出願番号60/503,197号の利益を主張する。
(発明の背景)
政府の権利に関する記述。本発明は、NIH助成金番号1401830およびG1402500によって一部援助を受けた。合衆国政府は、本発明に権利を有し得る。
本発明のΔ4−SHIVku2DNA構築物の略図である。 本発明のΔ4−SHIVku2DNA構築物の円形図である。

Claims (6)

  1. ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のgag遺伝子、HIVのpro遺伝子、サル免疫不全ウイルス(SIV)のvpx遺伝子、SIVのvpr遺伝子、HIVのvpu遺伝子、HIVのnef遺伝子、HIVのtat遺伝子、HIVのenv遺伝子、HIVのrev遺伝子をコードするコード配列、および前記コード配列に作動可能に連結されたプロモーターを有する単離されたDNA分子を含有するDNA組成物であって、
    前記コード配列がポリアデニル化配列に作動可能に連結され、前記DNA組成物が、機能的な逆転写酵素(rt)遺伝子、機能的なインテグラーゼ(int)遺伝子、および機能的なウイルス感染性因子(vif)遺伝子を含まず、免疫反応を刺激可能である、DNA組成物
  2. 前記プロモーター配列が、SIVの5’長末端反復(5’LTR)である請求項に記載のDNA組成物。
  3. 前記DNA分子が、機能的な3’長末端反復(3’LTR)も含まない、請求項1または2に記載のDNA組成物。
  4. 前記ポリアデニル化配列が、SV40のポリアデニル化配列である請求項1〜3のいずれか1項に記載のDNA組成物。
  5. 薬学的に許容可能な担体をさらに含む請求項1からのいずれか1項に記載のDNA免疫原性組成物。
  6. 前記単離されたDNA分子が、配列番号1を含むものである請求項4に記載のDNA組成物。
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