JP4982823B2 - 果実栽培における水管理方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、この経験による灌水管理は、農作業の熟練を必要としていて何人でも採用できるものでなかった。又、その判断は実際の降雨・天候の影響を考慮して修正せねばならず、勘にたよったものとなりがちで、バラツキと不確実さがあった。
しかしながら、この発明では、植物(トマト)によって及び蒸散によって消費されるポット内の水を、毛細管現象を利用して液槽から吸い上げて給水させるものであり、植物と天候にまかせて給水させるだけであり、人為的に植物に水分ストレスを与えるものでないから、高品質の果実の生産は期待しにくいものである。
1) 収穫時の果実が目標の糖度と酸度となるように開花後の所定期間の間の水分ストレスの栽培モデルを設定し、果樹の水分ストレス値を定期的又は不定期的に実測し、設定した栽培モデルの水分ストレス値に近づくようにその差異に応じて果樹への灌水を調整する果実栽培における水管理方法に於いて、実測した水分ストレス値を所定期間のモデル開始日から実測日まで日積して実測日積算値を求め、栽培モデルのモデル開始日から同実測日までのモデルの水分ストレス値を日積してモデル日積算値を求め、実測日積算値からモデル日積算値を差し引いた差分△Sを算出し、その差分△Sを補償するように実測日以降の栽培モデルの水分ストレス値を修正し、実測の水分ストレス値が栽培モデルの修正された水分ストレス値に近づくように果樹の灌水を調整するようにしたことを特徴とする、果実栽培における水管理方法
2) モデル開始日から実測日までの水分ストレスの日積算値の差分△Sを実測日からモデルの終了日までの残存日数で除した日割差分値だけ、栽培モデルの各水分ストレスの値から減じた水分ストレス値を同実測日以降の栽培モデルの修正された水分ストレス値とした、前記1)記載の果実栽培における水管理方法
3) モデル開始日から実測日までの水分ストレスの日積算値の差分△Sと、その実測日からモデルの終了日までの栽培モデルの水分ストレスの日積算値Sとから下記数1の修正係数kを算出し、同実測日以降の栽培モデルの水分ストレス値に上記修正係数kを乗じたストレス値を実測日以降の目標の修正された水分ストレス値とした、前記1)記載の果実栽培における水管理方法
(数1)
k=(S−△S)/S
4) 一回の灌水の水量を果樹の収穫量又は樹齢が増加するとともに多くし、且つ実測の水分ストレス値から栽培モデルのモデル水分ストレス値又は修正されたモデル水分ストレス値を差し引いた差分値の負値が大きくなるに従って、灌水回数を増やすように灌水させる、前記1)〜3)何れか記載の果実栽培における水管理方法
5) 一回の灌水の水量を果樹の収穫量又は樹齢が増大するとともに多くし、且つモデル開始日から実測日までの水分ストレスの日積算値の差分△Sの負値が大きくなるに従って、灌水回数を増やすように灌水させる、前記1)〜3)何れか記載の果実栽培における水管理方法
にある。
本願発明の水分ストレス値の修正計算は、実際の水分ストレス値と、モデルの水分ストレス特性値を入力してコンピュータプログラムを用いて計算するのを一般的とする。
本発明の水分ストレスは、水ポテンシャルの値として数値化するのが一般的である。水ポテンシャルは負の値が大きい程乾燥状態で吸水能力が高いものである。
本発明での栽培モデルの水分ストレスの日積算値の差分に応じた修正は、栽培モデルの期間の中間前後で1回又は複数回行う。
本発明におけるモデル開始日とは、水分ストレスが果実に影響を強く与え始める水管理が要求される期間の開始日のことであって、果樹の品種・栽培地の風土で多少変わるが、ミカンの場合は開花後60日目程であり、モデル終了日は、果実(ミカン)の収穫日であり、開花後190日目程である。
まず栽培モデルの設定のデータを得るため、ミカンの開花(5月〜6月)の60日目から190日目(収穫日)までの期間において、10日間隔で水ストレス値を計測し、収穫した果実の糖度と酸度との関係を調査する。特に8月上旬から9月中旬の水分ストレスが果実の糖・酸度に大きく影響を与えることが経験的に知られているので、特に8月上旬〜9月中旬までの水分ストレス(水ポテンシャルとして計測)の測定平均値と、収穫果実の糖度(単位:Brix)と、酸含量(単位:g/100ml)の関係を求める。
y=−10.442x2−29.709x−6.6889
R2=0.9461
y:収穫時糖度(Brix)
x:水ポテンシャル(MPa)
R:相関度
又、収穫時酸含量z(g/100ml)と水ポテンシャルx(MPa)の相関の式は下式となった。
z=−0.7026x+0.308
R2=0.6702
z:収穫時酸含量(g/100ml)
R:相関度
収穫時酸含量zは、水ポテンシャルが負の方向に大きくなるに従って、酸含量も大きくなる。
S=1.8402y2+34.146y−258.3
R2=0.6978
S:開花後60〜190日間の水ポテンシャル日積算値
R:相関度
別の栽培モデルの設定方法は、標準の目標糖度・酸度(例えば上記の目標糖度13.0,酸含量1.05〜1.13)の標準栽培モデルを作成しておき、別の目標糖度tに対して、その標準栽培モデルの水ポテンシャルを下記の様に修正して糖度tの栽培モデルの水ポテンシャルytの経日特性を下式によって求めることによっても可能である。
ks=St/S13
yt=y13*ks=y13*St/S13
yt:目標糖度tにおける栽培モデルの水ポテンシャル値(Brix)
y13:目標糖度13における標準栽培モデルの水ポテンシャル値(Brix)
S13:図3からの糖度13.0の標準の栽培モデルの水ポテンシャル日積算値
St:図3からの糖度tの水ポテンシャル日積算値
S90 g=−28.000(MPa・日)
S90 m=−26.563(MPa・日)
△S90=S90 g−S90 m=−1.437(MPa・日)
修正栽培モデルの修正水ポテンシャル=モデル水ポテンシャル−△S90/d2
d2:モデル終了日−モデル修正の最終実測日
(d2=190日−90日=100日)
△S90/d2:水ポテンシャルの修正分
従って、図4に示す最初の栽培モデルの90日目以降の水ポテンシャルを上記計算された修正水ポテンシャルに修正して、新しい修正栽培モデルとする。図5中修正水分ポテンシャルを点線で示している。
同じ地区の同じ品種の従来の水管理方式の平均糖度が11.4、酸含量は0.96であった。これから、本実施例の水管理方法によれば、高い糖度と目標の酸度の果実が確実に収穫できた。
修正水ポテンシャルの値=最初の栽培モデルの水ポテンシャル*k
k=(S−△S)/S
上記の水分ストレス(水ポテンシャル)の差分に応じて表3に示す灌水回数を60日目まで行い、次に70日目からは上記の水分ストレスの日積算値の差分の負値の大きさに応じて灌水回数を増やす表4の方法で実行した灌水回数を決めた灌水回数例を表5に示す。
2 相関式線
3 相関式線
Claims (5)
- 収穫時の果実が目標の糖度と酸度となるように開花後の所定期間の間の水分ストレスの栽培モデルを設定し、果樹の水分ストレス値を定期的又は不定期的に実測し、設定した栽培モデルの水分ストレス値に近づくようにその差異に応じて果樹への灌水を調整する果実栽培における水管理方法に於いて、実測した水分ストレス値を所定期間のモデル開始日から実測日まで日積して実測日積算値を求め、栽培モデルのモデル開始日から同実測日までのモデルの水分ストレス値を日積してモデル日積算値を求め、実測日積算値からモデル日積算値を差し引いた差分△Sを算出し、その差分△Sを補償するように実測日以降の栽培モデルの水分ストレス値を修正し、実測の水分ストレス値が栽培モデルの修正された水分ストレス値に近づくように果樹の灌水を調整するようにしたことを特徴とする、果実栽培における水管理方法。
- モデル開始日から実測日までの水分ストレスの日積算値の差分△Sを実測日からモデルの終了日までの残存日数で除した日割差分値だけ、栽培モデルの各水分ストレスの値から減じた水分ストレス値を同実測日以降の栽培モデルの修正された水分ストレス値とした、請求項1記載の果実栽培における水管理方法。
- モデル開始日から実測日までの水分ストレスの日積算値の差分△Sと、その実測日からモデルの終了日までの栽培モデルの水分ストレスの日積算値Sとから下記数1の修正係数kを算出し、同実測日以降の栽培モデルの水分ストレス値に上記修正係数kを乗じたストレス値を実測日以降の目標の修正された水分ストレス値とした、請求項1記載の果実栽培における水管理方法。
(数1)
k=(S−△S)/S - 一回の灌水の水量を果樹の収穫量又は樹齢が増加するとともに多くし、且つ実測の水分ストレス値から栽培モデルのモデル水分ストレス値又は修正されたモデル水分ストレス値を差し引いた差分値の負値が大きくなるに従って、灌水回数を増やすように灌水させる、請求項1〜3何れか記載の果実栽培における水管理方法。
- 一回の灌水の水量を果樹の収穫量又は樹齢が増大するとともに多くし、且つモデル開始日から実測日までの水分ストレスの日積算値の差分△Sの負値が大きくなるに従って、灌水回数を増やすように灌水させる、請求項1〜3何れか記載の果実栽培における水管理方法。
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