JP4982753B2 - 温度制御装置及び温度制御方法 - Google Patents

温度制御装置及び温度制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、所定の物体の温度制御を、フィードバック制御により行う温度制御装置、温度制御方法及び温度制御プログラムに関する。
温度、圧力、流量、レベルなどの種々の状態変数が時間的に変化する制御対象に対し、これらの状態変数が目標値に追従するように操作量を制御する自動制御手法として、PID(比例、積分、微分)制御が知られている。このPID制御は、特に温度制御などの分野においては広範に用いられている。
図12は、PID制御に基づく従来の温度制御アルゴリズムの一例を示すブロック図である。図12から明らかなように、PID制御を用いた温度制御においては、温度制御装置が、目標温度と現在の温度Tとの間の偏差を算出し、その偏差に基づいてPID各要素の係数で演算を施すことにより、操作量を決定する。そして、制御対象は、この操作量により、温度Tが目標温度になるように制御される。このようなPID制御では、毎回の演算量が多く、演算速度に長時間を要することから、十分な高速応答を実現することができなかった。
また、PID各要素の係数は数学的手法で導入されたものであり、基本的に温度制御対象の物理特性に直結するものではないため、前記各係数の最適値を理論的に求めることが事実上不可能である。このため、前記各係数は、経験的な勘またはカットアンドトライによって決定しており、適切な値に決定するのが容易でなかった。かかる観点からも、正確かつ高速な応答を実現することができなかった。
さらに、図12からも明らかなように、PID制御には目標温度に到達するために積分要素が必要である。このため、原理的に振動が生じることを避けることができず、このことからも十分正確かつ高速な応答を実現することができなかった。
上述したような問題に鑑み、PID制御に対して種々の改良が試みられている。例えば、特許文献1においては、制御対象の制御量を、時間的に変化する目標値に追従させる自動制御の際、制御量の目標値に対して正確に追従させることができる設定値の設定方法が開示されている。かかる制御方法によれば、制御対象の系の特性に合わせ、正確に設定値に追従させてサーボ制御を行なうことができるという利点を有する。
また、特許文献2には、制御対象から検出された現在値と目標となる設定値との間の偏差を演算するとともに、その演算された偏差に応じてPID制御演算を行なった後、温度制御装置の現在の動作量が所定範囲内にあるか否かを判定して、所定範囲内にあるときで、かつ、偏差の符号が反転したときは、その所定範囲内の動作量に応じて予め設定されている出力比をPID制御演算値に乗算して出力し、また、所定範囲外であるときは、その所定範囲外の動作量に応じて予め設定されている出力比をPID制御演算値に乗算して出力することを特徴とするPID制御方法が開示されている。
しかしながら、上述したようないずれのPID制御によっても、正確かつ高速な応答性を有する温度制御を行うことは未だできていない。
ところで、このようなPID制御による問題を解決するために、恒温植物の温度制御アルゴリズムを利用した制御手法が、特許文献3,4に開示されている。この制御手法は、恒温植物の一種であるザゼンソウが、外気温度が氷点下になっても、その体温を約20度前後に維持するという特性を利用したものであり、ザゼンソウの温度制御アルゴリズムを推定してモデル化し、そのモデルを用いて制御対象となる所定の物体の温度を制御するものである。
特開2001−92501号公報 特開2000−163101号公報 特開2005−63180号公報 国際公開WO2006/061892A1号公報
本発明は、正確かつ高速な応答性を有する新規な温度制御アルゴリズムを提供し、この温度制御アルゴリズムを利用して、所定の物体の温度制御を正確かつ高速に行うことを目的とする。
上記目的を達成すべく、本発明は、温度制御アルゴリズムを用いたフィードバック制御により、所定の物体の温度制御を行う装置において、前記物体の温度が目標温度に達するまでの間に、初期温度に応じた一定値を操作量として温度制御を行う第1の制御部と、前記物体の温度が目標温度に達した後に、制御周期あたりの前記物体の温度変化量がゼロになるように、前記一定値に加えて前記温度変化量に応じた値を操作量として温度制御を行う第2の制御部とを備えることを特徴とする、温度制御装置に関する。
また、本発明は、前記温度制御装置の発明に実質的に相当する方法及びプログラムとしても実現し得るものであり、本発明には、温度制御方法及び温度制御プログラムも包含される。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行い、従来のPID制御の代わりとなる新たな制御方式として、正確かつ高速な応答性を有する温度制御アルゴリズムの探索を行った。その結果、自然界に存在する生物の恒温特性に着目し、その中でも採取が容易であり、極低温においても十分な恒温特性を有することができるという理由から、恒温植物の恒温特性を利用することを想到した。実際、岩手県などの寒冷地に自生するザゼンソウ(Symplocarpus foetidus)と呼ばれる植物は、氷点以下における外気温度の変動にも関わらず、その体温を20℃程度に維持できる。
したがって、本発明者らは、このような恒温植物の温度制御メカニズムを解析することによって、前記恒温植物は優れた正確かつ高速の応答性を有する温度制御アルゴリズムを有することを見出し、この温度制御アルゴリズムを利用することによって、目的とする物体の温度制御を行うことを想到した。
本発明の一態様において、Eをエネルギー、Eを前記初期温度に応じた初期エネルギー、ΔEを制御周期あたりのエネルギー変化量、Aをフィードバック係数、及び、ΔTを物体の温度変化量とした場合に、物体の温度が目標温度に達するまでの間は、次のエネルギーE
に応じた値を操作量とし、物体の温度が目標温度に達した後は、次のエネルギーE
に応じた値を操作量として温度制御を行う。
また、本発明の一態様において、Tを物体の温度、λを物体の熱伝達率、ηを物体が有するエネルギーから熱量への変換係数、Eを前記初期温度に応じた初期エネルギー、Qexを物体と外気との間で授受される熱量、及び、ΔEを前記温度変化量に応じたエネルギーとした場合に、物体の温度が目標温度に達するまでの間の温度制御アルゴリズムを、
とし、物体の温度が目標温度に達した後の温度制御アルゴリズムを、
として温度制御を行う。
以上説明したように、本発明によれば、正確かつ高速な応答性を有する新規な温度制御アルゴリズムを提供することができ、この温度制御アルゴリズムを利用して、所定の物体の温度制御を正確かつ高速に行うことができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて詳細に説明する。
〔ザゼンソウによる温度制御〕
まず、ザゼンソウによる温度制御について、その温度特性及び発熱制御機構モデルを用いて詳細に説明する。
図1は、急激な温度変化に対するザゼンソウの温度特性の一例を示すグラフである。この温度特性は、群落地から採取したザゼンソウを人口気象室内へ移植し、室内温度(ザゼンソウの外気温度、以下、「外気温度」という。)Tを急激に変化させたとき(0.5〜1℃/分)の、ザゼンソウの肉穂花序の温度(以下、「ザゼンソウの温度」という。)Tの変化を示すものである。ザゼンソウは、外気温度Tが変化した場合であっても、その温度Tを一定に保つように発熱制御を行う。図1によれば、ザゼンソウの温度Tは、外気温度Tの変化に従ってやや遅れて追従するが、その後穏やかに回復して、ほぼ元の温度に戻っていることがわかる。この場合、ザゼンソウの温度T変化の周期は、約58分である。
図2は、緩慢な温度変化に対するザゼンソウの温度特性の一例を示すグラフである。この温度特性は、図1と同様の人口気象室内において、外気温度Tを緩慢に変化させたとき(0.015℃/分)の、ザゼンソウの温度Tの変化を示すものである。図2によれば、ザゼンソウの温度Tは、外気温度Tが下がるとともに低下し続け、内在する温度センサの感度である±0.9℃を超える体温変化(最大1.5℃)に対しても無反応であることが分かる。
図3は、ザゼンソウの発熱制御機構モデル(1)を示すブロック図である。この発熱制御機構モデル(1)は、遅延器1、減算器2、温度センサー3、エネルギー発生器4、ヒーター5、減算器6、熱伝達器7、減算器8、熱伝達器9及び加算器10により構成される。遅延器1は、ザゼンソウの温度T(t)に対してτだけ遅延させた温度T(t−τ)を生成する。ここで、τは制御周期に相当するサンプリング時間を示す。減算器2は、ザゼンソウの温度T(t)と温度T(t−τ)との間の差分演算を行い、制御周期τの温度変化量(変化勾配)ΔTを出力する。
温度センサー3は、所定の感度(図3の温度センサー3の箇所に示したように、0℃近傍に±0.9℃の不感帯が存在する。)を有し、制御周期τの温度変化量ΔTをフィードバック制御信号ΔSに変換し、フィードバック制御信号ΔSを出力する。
エネルギー発生器4は、フィードバック制御信号ΔSにフィードバック係数Aを乗算した生化学的エネルギーΔEを発生する。
ここで、フィードバック係数Aは、フィードバックされた温度変化をどの程度伝達させるかを決定するパラメータである。
エネルギー発生器4により発生された生化学的エネルギーΔEの一部が発熱量になることから、ヒーター5は、生化学的エネルギーΔEに変換効率ηを乗算した熱量変化ΔQを出力する。すなわち、ヒーター5により、生化学的エネルギーΔEに応じた熱量ΔQが出力される。
ここで、変換効率ηは、生化学的エネルギーから熱量へ変換する際の効率を示すパラメータである。
また、ザゼンソウ(の肉穂花序)と外気との間で授受される熱量Qexは、ニュートンの冷却則より、これらの温度差に比例すると考えられる。ここで、減算器6は、ザゼンソウの温度T(t)と外気温度T(t)との間の差分演算を行い、この温度差を出力し、熱伝達器7は、この温度差(T(t)−T(t))に熱伝達率hを乗算した熱量Qexを出力する。したがって、ザゼンソウと外気との間で授受される熱量Qexは以下のとおりになる。
ここで、熱伝達率hは、ザゼンソウと外気との間の熱伝達係数を示すパラメータである。
減算器8は、生化学的エネルギーΔEに応じた熱量ΔQと、ザゼンソウと外気との間で授受される熱量Qexとの間の差分演算を行い、総熱量変化量ΔQ’を出力する。
熱伝達器9は、総熱量変化量ΔQ’に熱伝達率の逆数1/λを乗算して温度に変換し、加算器10は、熱伝達器9により変換された温度と、初期温度T(境界t=0のときのザゼンソウの温度:T(0))との間の加算演算を行い、ザゼンソウの温度Tが求められる。
ここで、熱伝達率λは、ザゼンソウの熱伝達率を示すパラメータである。
したがって、図3に示したザゼンソウの発熱制御機構モデル(1)における発熱制御システムは、以下の式により表すことができる。
このように、図3に示したザゼンソウの発熱制御機構モデル(1)によれば、例えば外気温度Tが下がると、ザゼンソウと外気との間で授受される熱量Qexが大きくなり、マイナスの総熱量変化量ΔQ’によりザゼンソウの温度Tが下がる。そして、制御周期τの温度変化量ΔTに応じた生化学的エネルギーΔEを発生し、この生化学的エネルギーに応じた熱量ΔQを出力して総熱量変化量ΔQ’がゼロになるように制御する。その結果、ザゼンソウの温度Tは一定を維持する。すなわち、外気温度Tが下がると、制御周期τの温度変化量ΔTがゼロになるように、エネルギー発生器4が生化学的エネルギーΔEを発生し、ヒーター5がこの生化学的エネルギーΔEに応じた熱量ΔQを出力する。
次に、前述した(8)式において、初期温度Tを発生するために必要な初期エネルギーをEとした場合のモデル(2)について説明する。この場合の発熱制御システムは、以下の式により表すことができる。
但し、生化学的エネルギーΔE及び初期エネルギーEは、以下のとおりである。
前述した(9)式は時間t≧0の場合を示しており、時間t<0の場合は、以下のように、単純な発熱の式により表すことができる。
図4は、ザゼンソウの発熱制御機構モデル(2)を示すブロック図である。この発熱制御機構モデル(2)は、前述した(8)式及び(9)式をモデル化したものであり、ザゼンソウ体温のカオス次元解析から得られた制御要素の次元数(2以上3未満)に基づいて、その発熱制御システムにおける制御要素を、炭水化物から生化学的エネルギーを発生する器官(TCAサイクル)と、その生化学的エネルギーを熱エネルギーに変換する器官(ミトコンドリア)とに区別して構成したものである。
図4に示すように、発熱制御機構モデル(2)は、遅延器1、減算器2、温度センサー3、エネルギー発生器40、ヒーター50、加算器21、減算器22、減算器6、熱伝達器7及び熱伝達器9により構成される。また、エネルギー発生器40は、時間t≧0の場合におけるフィードバック制御用のエネルギー発生器4と、時間t<0の場合におけるエネルギー発生器41とを備えている。また、ヒーター50は、同様に、時間t≧0の場合におけるフィードバック制御用のヒーター5と、時間t<0の場合におけるヒーター51とを備えている。ここで、エネルギー発生器40が、炭水化物から生化学的エネルギーを発生する器官(TCAサイクル)に相当し、ヒーター50が、その生化学的エネルギーを熱エネルギーに変換する器官(ミトコンドリア)に相当する。
図3に示した発熱制御機構モデル(1)と図4に示す発熱制御機構モデル(2)とを比較すると、両モデルは、フィードバック制御のための遅延器1、減算器2、温度センサー3、エネルギー発生器4及びヒーター5を備え、また、ザゼンソウと外気との間で授受される熱量Qexを生成するための減算器6及び熱伝達器7を備え、さらに、熱量を温度に変換する熱伝達器9を備えている点で共通し、図4に示す発熱制御機構モデル(2)が、初期温度Tを発生するために必要な初期エネルギーをEとした場合のエネルギー発生器41及びヒーター51を備え、また、加算器21及び減算器22を備えている点で相違する。以下、図4において、図3と同一部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
エネルギー発生器41は、初期温度Tを発生するために必要な生化学的な初期エネルギーEを発生する。初期エネルギーEは、前述した(10)式の右側に示した式により表すことができる。
エネルギー発生器41により発生された初期エネルギーEの一部が発熱量になることから、ヒーター51は、初期エネルギーEに変換効率ηを乗算した初期熱量Qを出力する。すなわち、ヒーター51により、初期エネルギーEに応じた初期熱量Qが出力される。
加算器21は、制御周期におけるザゼンソウの温度差からフィードバック制御により生じた、生化学的エネルギーΔEに応じた熱量ΔQと、初期エネルギーEに応じた初期熱量Qとの間の加算演算を行い、加算熱量を出力する。
減算器22は、前記加算熱量と、ザゼンソウと外気との間で授受される熱量Qexとの間の差分演算を行い、総熱量Qを出力する。そして、熱伝達器9は、総熱量Qに熱伝達率の逆数1/λを乗算し、ザゼンソウの温度Tが求められる。
このように、図4に示したザゼンソウの発熱制御機構モデル(2)によれば、図3に示した発熱制御機構モデル(1)と同様に、外気温Tが下がると、ザゼンソウと外気との間で授受される熱量Qexが大きくなり、マイナスの総熱量変化量ΔQ’によりザゼンソウの温度Tが下がる。そして、制御周期τの温度変化量ΔTに応じた生化学的エネルギーΔEを発生し、この生化学的エネルギーに応じた熱量ΔQを出力して総熱量変化量ΔQ’がゼロになるように制御する。その結果、ザゼンソウの温度Tは一定を維持する。すなわち、制御周期τの温度変化量ΔTがゼロになるように、エネルギー発生器4が生化学的エネルギーΔEを発生し、ヒーター5がこの生化学的エネルギーΔEに応じた熱量ΔQを出力する。
次に、図4に示したザゼンソウの発熱制御機構モデル(2)における発熱制御システムを表す(9)式について、実物のザゼンソウとの間の整合性を検証する。以下、(9)式を用いたコンピュータシミュレーションの結果を示す。尚、各パラメータは、制御周期τ=3(分)、変換効率η=0.1、熱伝達率h=0.3(kcal/mh℃)、フィードバック係数A=0.8、熱伝達率λ=0.33(kcal/mh℃)、初期エネルギーE=80(W・s)、初期温度T=20(℃)とする。ここで、ザゼンソウの発熱制御システムにおいて、制御係数は、制御性能に関係するフィードバック係数A、及びザゼンソウ体温の振動周期に関係する制御周期τである。
図5は、図4に示した発熱制御機構モデル(2)のシミュレーションにおいて、急激な温度変化に対する温度特性の一例を示すグラフである。この温度特性は、図1と同様の条件の下で、外気温度Tを急激に変化させたときのザゼンソウの温度T変化を示すものである。図5によれば、外気温度Tの変化に対して明らかに、温度Tを一定に保つように発熱制御を行っており、温度T変化の周期は約60分であることがわかる。つまり、シミュレーションによれば、図5に示した発熱制御機構モデルによる温度特性は、図1に示した実物のザゼンソウの温度特性と同様であることがわかる。
図6は、図4に示した発熱制御機構モデル(2)のシミュレーションにおいて、緩慢な温度変化に対するザゼンソウの温度特性の一例を示すグラフである。この温度特性は、図2と同様の条件下で、外気温度Tを緩慢に変化させたときのザゼンソウの温度T変化を示すものである。図6によれば、温度Tは、外気温度Tが下がるとともに低下し続け、開始から約340分経過した後の温度Tの低下量は、約1.5℃であることがわかる。つまり、シミュレーションによれば、図6に示した発熱制御機構モデルによる温度特性は、図2に示した実物のザゼンソウの温度特性と同様であることがわかる。
このように、図5及び図6に示したシミュレーションの結果は、実物のザゼンソウの温度特性を良く再現しており、ザゼンソウの発熱制御機構モデルとして確からしいことがわかる。これにより、図4に示したザゼンソウの発熱制御機構モデル(2)における発熱制御システムを表す(9)式は、実物のザゼンソウとの間で整合性があるといえる。
次に、図4に示したザゼンソウの発熱制御機構モデル(2)による温度制御と従来のPID制御との相違について説明する。図7は、図4に示した発熱制御機構モデル(2)によるザゼンソウアルゴリズム及びPID制御アルゴリズムのシミュレーションによって算出した、ステップ応答特性の一例を示すグラフである。このステップ応答特性は、制御対象を1/(s+1)とし、ザゼンソウアルゴリズムにおいて、初期エネルギーE=2.0、フィードバック係数A=1.5、制御周期τ=0.01とし、PID制御アルゴリズムにおいて、P=2.1007、I=2.255、D=0.0056とした場合の特性である。
図4に示した発熱制御機構モデル(2)のザゼンソウアルゴリズムにおいて、t<0のとき(すなわち、T=T以前)は、図4に示したエネルギー発生器41により、固定(一定)の操作量Eが図示しない制御対象に出力され、t≧0のとき(すなわち、T=T以降)は、図4に示したフィードバック制御にてエネルギー発生器4により、可変の操作量ΔEが図示しない制御対象に出力される。
すなわち、制御対象に出力される操作量は、図4において、エネルギー発生器40からヒーター50に入力されるエネルギーEである。
フィードバック制御が開始する前のt<0では、(13)式のエネルギーに相当する操作量が出力され、フィードバック制御が開始した後のt≧0では、(14)式のエネルギーに相当する操作量が出力される。
図7によれば、ザゼンソウアルゴリズムのステップ応答特性において、t<0のときは、固定(一定)の操作量Eが出力されるから、温度Tはそれに従って上昇し、t≧0のときは、フィードバック制御により温度差ΔTがゼロになるように可変の操作量ΔEが出力され、ほぼ一定の温度Tとなっていることがわかる。また、ザゼンソウアルゴリズムのステップ応答特性は、t=0付近の特性を除いて、PID制御アルゴリズムのステップ応答特性とほぼ同等であることがわかる。
図8は、図4に示した発熱制御機構モデル(2)によるザゼンソウアルゴリズム及びPID制御アルゴリズムのシミュレーションによって算出した、ステップ応答特性の一例を示すグラフである。このステップ応答特性は、制御対象を1/(a・s+1)とし、a=1,1.5,2とした場合のそれぞれの特性を示している。図8によれば、ザゼンソウアルゴリズムでは、図7と同様に、大幅な性能劣化がないことがわかる。
〔温度制御装置〕
次に、図4に示した発熱制御機構モデル(2)を温度制御装置に適用した例について説明する。図9は、本発明の実施の形態による温度制御装置を含むシステムを示す概略図である。この温度制御システムは、発熱制御機構モデル(2)を適用した温度制御装置101と、ペルチェ素子などから構成される加熱装置102と、この加熱装置102上に載置され、温度制御に供する物体103とを備えて構成される。温度制御装置101は、物体103から温度情報(物体の温度)を入力し、図4に示した発熱制御機構モデル(2)のザゼンソウアルゴリズムにより、(12)〜(14)式に示したエネルギーEを算出し、この値に相当する操作量の電力を加熱装置102へ出力する。加熱装置102は、入力した電力に応じて加熱され、これにより、物体103の温度が一定に維持するように制御される。
図9に示した温度制御システムの温度制御装置101は、図4に示した発熱制御機構モデル(2)の遅延器1、減算器2、温度センサー3、エネルギー発生器40及び加算器10に相当し、加熱装置102は、ヒーター50及び加算器21に相当し、物体103は、減算器6、熱伝達器7、減算器22及び熱伝達器9に相当する。また、温度制御装置101が入力する物体103の温度はT(t)に相当し、温度制御装置101が出力する電力(操作量)は、ΔE及びEに相当する。
図10は、図9に示した温度制御装置101によるステップ応答特性を示すグラフである。このステップ応答特性は、図9に示した実機の温度制御システムによる特性である。図10によれば、物体103の温度Tは、オーバーシュート及びアンダーシュートすることなく、素早く一定の温度を維持し、安定した応答となることがわかる。
図11は、図9に示した温度制御装置によるステップ応答特性、及び、図12に示したPID制御アルゴリズムを有する温度制御装置によるステップ応答特性を示すグラフである。図11によれば、ザゼンソウアルゴリズムでは、図10と同様に、大幅な性能劣化がないことがわかる。
以上のように、本発明の実施の形態による温度制御装置101によれば、物体103の温度制御を正確かつ高速に行うことができ、オーバーシュートやアンダーシュートをほとんど生じることがない。
また、本発明の実施の形態による温度制御装置101によれば、初期エネルギーE、フィードバック係数A及び制御周期τの3つのパラメータを設定するに際し、初期エネルギーEは、目標温度である初期温度Tを超える熱量となるように大きめに設定し、フィードバック係数Aは、正確に目標温度である初期温度Tに到達するように大きめに設定し、制御周期τは、サンプリング時間として任意に設定すればよい。従来のPID制御では、PIDの各パラメータの設定が非常に困難であったが、温度制御装置101によるザゼンソウアルゴリズムの制御では、前記3つのパラメータを、PIDの各パラメータに比べて容易に設定することができる。
尚、温度制御装置101は、CPU、RAMなどの揮発性の記憶媒体、ROMなどの不揮発性の記憶媒体、マウスやキーボード、ポインティングデバイス等の入力装置、画像やデータを表示する表示器、並びに外部と通信するためのインタフェースを備えたコンピュータによって構成される。温度制御装置101の機能は、ザゼンソウアルゴリズムを記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピィーディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することもできる。
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。例えば、本発明で用いる温度制御アルゴリズムとしてザゼンソウのような恒温植物を挙げたが、好ましくは(9)式で示されるアルゴリズムが抽出できるような恒温特性を有するものであれば特に限定されない。しかしながら、好ましくはザゼンソウを用いる。また、本発明の物体としては、固体に限定することなく、液体や気体にも適用されることは上記説明から明らかである。
急激な温度変化に対するザゼンソウの温度特性の一例を示すグラフである。 緩慢な温度変化に対するザゼンソウの温度特性の一例を示すグラフである。 ザゼンソウの発熱制御機構モデル(1)を示すブロック図である。 ザゼンソウの発熱制御機構モデル(2)を示すブロック図である。 図4のモデルのシミュレーションにおいて、急激な温度変化に対する温度特性の一例を示すグラフである。 図4のモデルのシミュレーションにおいて、緩慢な温度変化に対する温度特性の一例を示すグラフである。 図4のモデルによるアルゴリズム及びPID制御アルゴリズムのシミュレーションによって算出した、ステップ応答特性の一例を示すグラフである。 図4のモデルによるアルゴリズム及びPID制御アルゴリズムのシミュレーションによって算出した、ステップ応答特性の一例を示すグラフである。 本発明の実施の形態による温度制御装置を含むシステムを示す概略図である。 図9の温度制御装置によるステップ応答特性を示すグラフである。 図9の温度制御装置によるステップ応答特性、及び、図12のPID制御アルゴリズムを有する温度制御装置によるステップ応答特性を示すグラフである。 PID制御に基づく従来の温度制御アルゴリズムの一例を示すブロック図である。
符号の説明
1 遅延器
2,6,8,22 減算器
3 温度センサー
4,40,41 エネルギー発生器
5,50,51 ヒーター
7,9 熱伝達器
10,21 加算器
100 温度制御システム
101 温度制御装置
102 加熱装置
103 物体

Claims (2)

  1. 恒温植物の温度制御アルゴリズムを用いたフィードバック制御により、所定の物体の温度制御を行う装置において、
    前記物体の温度が目標温度に達するまでの間に、初期温度に応じた一定値を操作量として温度制御を行う第1の制御部と、
    前記物体の温度が目標温度に達した後に、制御周期あたりの前記物体の温度変化量がゼロになるように、前記一定値に加えて前記温度変化量に応じた値を操作量として温度制御を行う第2の制御部とを備えることを特徴とする温度制御装置であり、
    当該第1の制御部は、次のエネルギーEに応じた値を操作量として物体の温度制御を行い、


    (E:エネルギー、E0:前記初期温度に応じた初期エネルギー、T:物体の温度、λ:物体の熱伝達率、η:物体が有するエネルギーから熱量への変換係数、Qexを物体と外気との間で授受される熱量)
    当該第2の制御部は、次のエネルギーEに応じた値を操作量として温度制御を行う、



    (A:フィードバック係数、ΔT:物体の温度変化量、ΔE:制御周期あたりのエネルギー変化量、τ:制御周期に相当するサンプリング時間)
    ことを特徴とする温度制御装置。
  2. 恒温植物の温度制御アルゴリズムを用いたフィードバック制御により、所定の物体の温度制御を行う方法において、
    前記物体の温度が目標温度に達するまでの間に、初期温度に応じた一定値を操作量として温度制御を行う第1のステップと、
    前記物体の温度が目標温度に達した後に、制御周期あたりの前記物体の温度変化量がゼロになるように、前記一定値に加えて前記温度変化量に応じた値を操作量として温度制御を行う第2のステップとを有することを特徴とする温度制御方法であり、
    当該第1のステップは、次のエネルギーEに応じた値を操作量として物体の温度制御を行い、


    (E:エネルギー、E0:前記初期温度に応じた初期エネルギー、T:物体の温度、λ:物体の熱伝達率、η:物体が有するエネルギーから熱量への変換係数、Qexを物体と外気との間で授受される熱量)
    当該第2のステップは、次のエネルギーEに応じた値を操作量として温度制御を行う、



    (A:フィードバック係数、ΔT:物体の温度変化量、ΔE:制御周期あたりのエネルギー変化量、τ:制御周期に相当するサンプリング時間)
    ことを特徴とする温度制御方法。
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