JP4982709B2 - 付着珪藻の付着防止剤 - Google Patents
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また、キュベノール(Cubenol)については、これまでアミジグサ科(Dictyotaceae)に属する海藻(非特許文献7)とサルビア属(Salvia)やピヌス属(Pinus)に属する植物に一般的に含まれていることが知られており、また、抗菌・抗カビ活性が知られているが(非特許文献10, 非特許文献11、非特許文献12)、付着珪藻に対する付着阻害活性については知られていない。
1.海藻抽出物の脂溶性画分を含む、付着珪藻の付着防止剤、
2.海藻が、アミジグサ科(Dictyotaceae)に属する褐藻、ソゾ属(Laurencia)に属する紅藻、アナメ(Agarum clathratum)、ミヤベモク(Sargassum miyabei)、およびウミトラノオ(Sargassum thunbergii)からなる群の中から選択される少なくとも一つである、上記1に記載の付着防止剤、
3.アミジグサ科(Dictyotaceae)に属する褐藻が、エゾヤハズ(Dictyopteris divaricata)およびシワヤハズ(Dictyopteris undulata)からなる群の中から選択される少なくとも一つであり、そしてソゾ属(Laurencia)に属する紅藻が、ミツデソゾ(Laurencia okamurae)、ウラソゾ(Laurencia nipponica)、ローレンシア パシフィカ(Laurencia pacifica)、ローレンシア マジュスキュラ(Laurencia majuscula)、ローレンシア フィリホルミス(Laurencia filiformis)、ローレンシア ジョンストニィー(Laurencia johnstonii)およびローレンシア クラビホルミ(Laurencia claviformi)からなる群の中から選択される少なくとも一つである、上記2に記載の付着防止剤、
4.有効成分としてローリンテロール、イソローリンテロール、プレパシフェノール、2,10−ジブロモ−3−クロロ−9−ヒドロキシ−α−カミグレン、キュベノールおよびクロマゾナロールからなる群の中から選択される少なくとも一つを含む、付着珪藻の付着防止剤、
である。
本発明で、海藻とは、藻類のうち、クロレラなどの単細胞藻類を含まない海産の大形藻類を意味し、光合成色素としてクロロフィル a と bを有する緑藻、光合成色素としてクロロフィル aを有する紅藻、光合成色素としてクロロフィル a と cを有する褐藻が含まれる。海藻には、例えば、ウラソゾ(Laurencia nipponica)、ミツデソゾ(L. okamurae)、ハネソゾ(L. pinnata)、クロソゾ(L. intermedia)、ヒメソゾ(L. venusta)、マギレソゾ(L. saitoi)、コブソゾ(L. undulata)、ローレンシア パシフィカ(Laurencia pacifica)、ローレンシア マジュスキュラ(Laurencia majuscula)、ローレンシア フィリホルミス(Laurencia filiformis)、ローレンシア ジョンストニィー(Laurencia johnstonii)、ローレンシア ヨナグニエンシス(Laurencia yonaguniensis)、ローレンシア クラビホルミ(Laurencia claviformi)などのソゾ属(Laurencia)に属する紅藻;エゾヤハズ(Dictyopteris divaricata)、シワヤハズ(Dictyopteris undulata)、アミジグサ(Dictyota dichotoma)、イトアミジ(Dictyota linearis)、フクリンアミジ(Dilophus okamurae)、コモングサ(Spatoglossum pacificum)、サナダグサ(Pachydictyon coriaceum (Holmes) Okamura)、ウミウチワ(Padina arborescens Holmes)、ウスユキウチワ(Padina minor)、コナウミウチワ(Padina crassa)などのアミジグサ科(Dictyotaceae)に属する褐藻;アナメ(Agarum clathratum)、スジメ(Costraia costata)、ツルアラメ(Ecklonia stolonifera)などのコンブ科(Laminariaceae)に属する褐藻;ウミトラノオ(Sargassum thunbergii)、ミヤベモク(Sargassum miyabei)、ウガノモク(Cystoseira hakodatensis )、ジョロモク(Myagropsis myagroides)、フシスジモク(Sargassum confusum )、エゾノネジモク(Sargassum yezoense)などのホンダワラ科(Sargassaceae)に属する褐藻などが挙げられる。本発明で用いる海藻は、1種だけでなく、2種以上を組合せても良い。また、本発明で、付着珪藻とは、水中の構造物、例えば、岩、杭、船底などの表面に着生して生育している珪藻類をいう。そして、付着珪藻には、例えば、Nitzchia sp.、Cylindrotheca closterium、Navicula sp.、Amphora sp.、Achnanthes sp.などが挙げられるがこれらに限定されない。
小樽市で採集した紅藻ミツデソゾ(232g、湿重量)をメタノール1.2Lで24時間浸漬抽出した。抽出液をエバポレーターを用いて減圧濃縮後、水とジエチルエーテル(各125mL)で3回2層分配し、得られた脂溶性画分に硫酸ナトリウムを加えて脱水し、減圧濃縮した。ろ過処理後、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(2.5×38cm)でヘキサン/酢酸エチル(95:5)で溶出後、さらにヘキサン/酢酸エチル(9:1)で溶出した。後者の画分を、シリカゲルの大量分取用薄層クロマトグラフィーにより、トルエンで展開し、ローリンテロール16.7mgを単離した。1H NMRデータは文献値と一致した(非特許文献2、3)。
本試験は、ウニおよびアワビの摂食阻害試験方法(月刊海洋vol27 (1) 13-21 (1995) 鈴木稔、藻類の生理活性物質の多様性)として用いられたものを、独自に付着珪藻の試験のために改変したものである。
用いた珪藻はCylindrotheca closteriumおよびNitzchia sp.である。ろ過天然海水を用いて、ヨーガンソン培地を作製し、121℃、20分間オートクレーブした。浅型滅菌シャーレ(90×15mm)に培養液を25mL加えた。5.9cm角に切断したセルロースのTLCアルミシート上の直径1.5cmの円内に試験する物質あるいは抽出物を吸着させた後、シャーレに静置した。珪藻を植え継ぎ、目視観察により評価した。
ローリンテロールをセルロースのTLCアルミシートに180μg/cm2吸着させて、水槽内に静置し、ろ過天然海水(独立行政法人水産総合研究センター北海道区水産研究所の施設内のポンプで直接くみ上げた天然海水を砂ろ過した。12月〜3月に実施した。)を流したところ、2週間後吸着部分には珪藻の付着は認められなかったが、非吸着部分には珪藻の付着が認められた。さらに、ローリンテロールは、付着珪藻Nitzchia sp.に対して3μg/cm2で強力な付着阻害活性を示し、試験区の円内に珪藻が付着している面積は1%以下であった。また、付着珪藻Cylindrotheca closteriumに対して3μg/cm2で強力な付着阻害活性を示し、試験区の円内に珪藻が付着している面積は1%以下であった。
根室市で採集した褐藻アナメ(58g、湿重)をメタノール300mLで3回抽出した。抽出液を減圧濃縮後、水とジエチルエーテル(各50mL)で3回分配し、得られた脂溶性画分をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーでヘキサン/酢酸エチル95:5、ヘキサン/酢酸エチル9:1で溶出後、さらにヘキサン/酢酸エチル4:1(21LC)で溶出した。最後の画分47mg(乾燥重量)を、ODSのフラッシュクロマトグラフィーで分離した。80%メタノール、90%メタノール、100%メタノールで溶出後、100%クロロホルムで溶出した画分(21LC−D)を11mg(乾燥重量)得た。
小樽市で採集した褐藻ミヤベモク(365g、湿重)をメタノール1.5Lで3回抽出した。抽出液を減圧濃縮後、水とジエチルエーテル(各250mL)で3回分配し、得られた脂溶性画分をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーでヘキサン/酢酸エチル95:5、ヘキサン/酢酸エチル9:1、ヘキサン/酢酸エチル4:1、ヘキサン/酢酸エチル1:1、酢酸エチル100%、酢酸エチル/メタノール9:1、酢酸エチル/メタノール4:1、酢酸エチル/メタノール1:1で溶出後、さらに、酢酸エチル/メタノール1:3で溶出した。ヘキサン/酢酸エチル4:1画分(473mgの乾燥物をエタノールで10mg/mLに濃度調製したもの)および酢酸エチル/メタノール1:3画分(10.8mgの乾燥物をエタノールで10mg/mLに濃度調製したもの)をセルロースのTLCアルミシートに140μg/cm2吸着させて、珪藻Cylindrotheca closteriumを培養したシャーレ内に静置したところ、2週間後吸着部分には珪藻の付着は認められなかったが、非吸着部分には珪藻の付着が認められた。
室蘭市で採集した褐藻ウミトラノオ(10g、湿重)をメタノールで3回抽出した。抽出液を減圧濃縮後、水とジエチルエーテル(各25mL)で3回分配し、得られた脂溶性画分(乾燥物をエタノールで10mg/mL濃度調製したもの)をセルロースのTLCアルミシートに140μg/cm2吸着させて、珪藻Cylindrotheca closteriumを培養したシャーレ内に静置したところ、2週間後吸着部分には珪藻の付着は認められなかったが、非吸着部分には珪藻の付着が認められた。
室蘭市で採集した紅藻ウラソゾ(40g、湿重)をメタノールで3回抽出した。抽出液を減圧濃縮後、水とジエチルエーテル(各25mL)で3回分配し、得られた脂溶性画分(340mgの乾燥物をエタノールで10mg/mLに濃度調製したもの)をセルロースのTLCアルミシートに140μg/cm2吸着させて、珪藻Cylindrotheca closteriumを培養したシャーレ内に静置したところ、2週間後吸着部分には珪藻の付着はなく、非吸着部分には珪藻の付着がみられた。珪藻Nitzchia sp.についても同様に付着阻害効果が認められた。
実施例5に記載と同様に、室蘭で採集されたイギス目・フジマツモ科ウラソゾ400 g(冷凍湿重量)をメタノール500mlで3回抽出した。抽出物を濃縮後、水とジエチルエーテルで2層分配を行った。12.5μg/cm2で活性が見られたジエチルエーテル層をn−ヘキサンと酢酸エチルを用いたシリカゲルカラムフラッシュクロマトグラフィーにより分画を行った。分画後、n−ヘキサン/酢酸エチル=4:1およびn−ヘキサン/酢酸エチル=1:1の画分をPTLC行った。溶媒は100%ベンゼンおよびクロロホルム:メタノール=97:3を使用し、付着珪藻阻害活性を示す化合物2種類を得た。2種類の化合物はそれぞれPTLCにより再精製し、化合物A(2.8mg)および化合物B(4mg)を得た。
NMRの測定から、化合物AはNMRの測定から、プレパシフェノール(非特許文献5)Phycological Research (1999), 47(2), 87-95.)であることが分かった。また、化合物Bは2,10−ジブロモ−3−クロロ−9−ヒドロキシ−α−カミグレン(非特許文献6.)であることが分かった。
実施例1のローリンテロールとは異なる付着阻害物質をミツデソゾからさらに単離同定するため、小樽市忍路で採集されたイギス目・フジマツモ科ミツデソゾ300g(冷凍湿重量)をメタノール500mlで3回抽出した。抽出物を濃縮後、水とジエチルエーテルで2層分配を行った。50μg/cm2活性が見られたジエチルエーテル層をn−ヘキサンと酢酸エチルを用いたシリカゲルカラムフラッシュクロマトグラフィーにより分画を行った。分画後、n−ヘキサン/酢酸エチル=9:1の画分をPTLC行った。溶媒は100 %トルエンおよびヘキサン:ベンゼン=1:1を使用し、付着珪藻阻害活性を示す化合物4種類を得た。4種類の化合物はそれぞれPTLCにより再精製し、化合物A(11.6mg)(収率約13%)化合物B(3.8mg)および化合物CとDの混合物(0.5mg)を得た。
NMRの測定から、化合物Aは実施例1に記載のローリンテロール(Laurinterol)であることが分かった。化合物Bはデブロモローリンテロール(Debromolaurinterol)であることが分かった。化合物CとDの混合物はイソローリンテロール(Isolaurinterol)とデブロモイソローリンテロール(Debromoisolaurinterol)の混合物(1:1)であることが分かった(非特許文献2、3) 。
付着珪藻に対する付着阻害活性試験は、実施例1に記載したように、TLCセルロースシートを用いて実施した。
25℃のインキュベーター内で飼育した付着珪藻Nitzchia sp.およびCylindrotheca closteriumを用いて、単離したローリンテロール、デブロモローリンテロール、イソローリンテロールとデブロモイソローリンテロールの混合物(1:1)の阻害活性を試験した。阻害活性試験にはMERCK社製TLCアルミシートを用い、これらの化合物をエタノールに溶かした溶液を各試験区に10μl注ぎ、乾燥させた後、円形シャーレに静置し、ヨーガンスン改変培地を25ml注入した。試験区の大きさは直径1.6cmである。試験する化合物の濃度は3μg/cm2であった。シャーレ内に珪藻を植え継ぎ、7日後の付着状況を肉眼で観察した。
デブロモローリンテロールは付着珪藻Nitzchia sp.に対して10μg/cm2で弱い付着阻害活性を示した。一方、Cylindrotheca closteriumに対して10μg/cm2では活性を示さなかった。これは、濃度が低くすぎたためと考えられた。
イソローリンテロールとデブロモイソローリンテロールの混合物(1:1)は、付着珪藻Nitzchia sp.に対して1μg/cm2で強力な付着阻害活性を示し、試験区の円内に珪藻が付着している面積は1%以下であった。また、付着珪藻Cylindrotheca closteriumに対して1μg/cm2で強力な付着阻害活を示し、試験区の円内に珪藻が付着している面積は1%以下であった。
イソローリンテロールとデブロモイソローリンテロールのそれぞれの純品を分離できなかったが、ローリンテロールの活性が強いのに対して、デブロモローリンテロールの活性は弱いことから、化合物における臭素原子の有無が活性に大きく影響していると推測された。これよりイソローリンテロールとデブロモイソローリンテロールの混合物(1:1)の活性はイソローリンテロールにそのほとんどがあり、デブロモイソローリンテロールにはあまりないものと推測された。よって、イソローリンテロールは、0.5μg/cm2程度で付着阻害活性を示すものと推測された。
室蘭で採集されたアミジグサ目・アミジグサ科エゾヤハズ450g(冷凍湿重量)をメタノール500mlで3回抽出した。抽出物を濃縮後、水とジエチルエーテルで2層分配を行った。12.5μg/cm2で活性が見られたジエチルエーテル層をn−ヘキサンと酢酸エチルを用いたシリカゲルカラムフラッシュクロマトグラフィーにより分画を行った。分画後、n−ヘキサン/酢酸エチル=9:1およびn−ヘキサン/酢酸エチル=9:3の画分についてPTLCを2回繰り返した。n−ヘキサン/酢酸エチル=9:1の画分から、溶媒としてベンゼン100%を使用したところ、化合物A(乾燥重量で10mg)を得た。n−ヘキサン/酢酸エチル=9:3の画分から、溶媒としてクロロホルム:メタノール=99:1を使用したところ、化合物B(乾燥重量で1mg)を得た。
NMRおよびMSの測定から、化合物Aはキュベノール(非特許文献7)であることが分かった。また、NMRおよびMSの測定から、化合物Bはクロマゾナロール(非特許文献8、9)であることが分かった。
クロマゾナロールは、付着珪藻Nitzchia sp.に対して10μg/cm2で強力な付着阻害活性を示し、試験区の円内に珪藻が付着している面積は1%以下であった。また、付着珪藻Cylindrotheca closteriumに対して3μg/cm2で強力な付着阻害活性を示し、試験区の円内に珪藻が付着している面積は1%以下であった。
Claims (4)
- 海藻抽出物の脂溶性画分を含む付着珪藻の付着防止剤であって、海藻が、ソゾ属(Laurencia)に属する紅藻である、付着防止剤。
- ソゾ属(Laurencia)に属する紅藻が、ミツデソゾ(Laurencia okamurae)、ウラソゾ(Laurencia nipponica)、ローレンシア パシフィカ(Laurencia pacifica)、ローレンシア マジュスキュラ(Laurencia majuscula)、ローレンシア フィリホルミス(Laurencia filiformis)、ローレンシア ジョンストニィー(Laurencia johnstonii)およびローレンシア クラビホルミ(Laurencia claviformi)からなる群の中から選択される少なくとも一つである、請求項1に記載の付着防止剤。
- 海藻抽出物の脂溶性画分を含む付着珪藻の付着防止剤であって、海藻が、エゾヤハズ(Dictyopteris divaricata)およびシワヤハズ(Dictyopteris undulata)からなる群の中から選択される少なくとも一つである、付着防止剤。
- 有効成分としてローリンテロール、イソローリンテロール、プレパシフェノール、2,10−ジブロモ−3−クロロ−9−ヒドロキシ−α−カミグレン、キュベノールおよびクロマゾナロールからなる群の中から選択される少なくとも一つを含む、付着珪藻の付着防止剤。
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