JP4979111B2 - ポリ乳酸樹脂組成物、その製造方法、成形品、フィルム、及びシート - Google Patents
ポリ乳酸樹脂組成物、その製造方法、成形品、フィルム、及びシート Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ乳酸とセルロースエステルを主成分とするポリ乳酸樹脂組成物、その製造方法それからなる成形品、フィルム、及びシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリ乳酸は、高い融点を持ち、また溶融成形可能で実用上優れた生分解性ポリマーとして期待されている。しかしながら、ポリ乳酸は結晶化速度が遅く、結晶化させて成形品等に用いるには限界があった。例えば射出成形する場合、長い成形サイクル時間や成形後の熱処理を必要とするだけでなく、成形時や熱処理時の変形が大きく耐熱性に劣るなど、実用的には大きな問題があった。そのため、実用的な成形サイクル内での成形で、耐熱性を改良する方法が望まれていた。
【0003】
一方、セルロースおよびセルロースエステル、セルロースエーテル等のセルロース誘導体は、地球上で最も大量に生産されるバイオマス材料であり、また生分解性ポリマーであることから大きな注目を集めている。またこれらのセルロース誘導体を溶融成形する方法としては、特許文献1に記載の様に、セルロースアセテートにポリエチレングリコールのような水溶性可塑剤を配合して溶融紡糸する方法が知られている。しかしながら、ポリエチレングリコールの様な吸湿性の高い可塑剤を使用することは用途が制限されることから好ましくなく、より汎用的な方法が望まれていた。
【0004】
ところで2種もしくはそれ以上のポリマー同士を混合することは、ポリマーブレンドまたはポリマーアロイとして広く知られており、個々のポリマーの欠点を改良する方法として広く利用されている。しかしながら、一般的に2種のポリマーを混合した場合、多くは個々の相に分離し、一方の相が数μm以上の不均一な粗大分散構造を有するのが一般的である。この様な分散形態の場合、不透明であり、また機械強度も低く、さらには溶融混練時の吐出時にバラス効果を起こしやすく生産性に劣るものとなるのが多い。一方、極まれに2種のポリマーが均一に混合する場合があり、この種のものは、一般的に相溶性ポリマーまたは混和性ポリマーと呼ばれ、優れた特性を示すことが期待されるが、その例は限られたものである。
【0005】
特許文献2には、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルからなるポリマー成分と可塑剤からなる樹脂組成物に、天然物を添加することにより、柔軟性と耐熱性を有した生分解性樹脂組成物を得る方法が記載されている。しかしながら該文献においては、天然物として澱粉(馬鈴薯、とうもろこし、さつまいも、タピオカ等から得られる)、キチン、キトサン、セルロース類が挙げられ、セルロース類としてセルロースエステルの範疇に含まれるアセチルセルロースが例示されているのみであり、実際に配合した具体例はない。つまり該公報中には、ポリ乳酸とアセチルセルロースを溶融混練することにより、優れた相溶性または混和性を示し、かつ優れた耐熱性を有することについては一切言及されていない。
【0006】
【特許文献1】
特開昭53−11564号公報(第1−2頁)
【特許文献2】
特開平11−241008号公報(第2、5頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れた透明性、機械特性、耐熱性に優れたポリ乳酸樹脂組成物を提供すること課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ポリ乳酸樹脂とセルロースエステルを配合してなる樹脂組成物が優れた相溶性または混和性を有し、かつ優れた耐熱性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)(A)重量平均分子量5万以上のポリ乳酸樹脂、(B)セルロースエステル、および
チタンアルコキシド、アルミニウムアルコレート、アルミニウムキレートから選ばれる有機金属化合物および/またはメタクリル樹脂ユニットをポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル系樹脂から選ばれる主鎖となる高分子にグラフト共重合の分岐鎖として含む高分子化合物からなる(C)相溶化剤とを溶融混練してなるポリ乳酸樹脂組成物であって、(A)ポリ乳酸樹脂と(B)セルロースエステルとがポリ乳酸樹脂組成物中で相溶化し、示差走査熱量計(DSC)で測定したポリ乳酸樹脂組成物中のポリ乳酸のガラス転移温度が変化しているものであるポリ乳酸樹脂組成物、
(2)(A)重量平均分子量5万以上のポリ乳酸樹脂、(B)セルロースエステル、および
チタンアルコキシド、アルミニウムアルコレート、アルミニウムキレートから選ばれる有機金属化合物および/またはメタクリル樹脂ユニットをポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル系樹脂から選ばれる主鎖となる高分子にグラフト共重合の分岐鎖として含む高分子化合物からなる(C)相溶化剤とを溶融混練してなるポリ乳酸樹脂組成物であって、ポリ乳酸樹脂組成物が、光散乱装置または小角X線散乱装置を用いて行う散乱測定において、構造周期0.01〜3μmの両相連続構造、または粒子間距離0.01〜3μmの分散構造を有するものであるポリ乳酸樹脂組成物、
(3)ポリ乳酸樹脂組成物を0.2mm厚さのシートとした場合、波長400nmの可視光線における光線透過率が40%以上である上記(1)または(2)記載のポリ乳酸樹脂組成物、
(4)前記(B)成分が、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートよりなる群より選ばれる少なくとも一種のセルロースエステルである上記(1)〜(3)のいずれか1項記載のポリ乳酸樹脂組成物、
(5)(A)ポリ乳酸樹脂と(B)セルロースアセテート樹脂の合計を100重量部としたときに、(A)ポリ乳酸樹脂99重量部以下50重量部超及び(B)セルロースアセテート1重量部以上50重量部未満である上記(4)記載のポリ乳酸樹脂組成物、
(6)(A)重量平均分子量5万以上のポリ乳酸樹脂、(B)セルロースエステル、および
チタンアルコキシド、アルミニウムアルコレート、アルミニウムキレートから選ばれる有機金属化合物および/またはメタクリル樹脂ユニットをポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル系樹脂から選ばれる主鎖となる高分子にグラフト共重合の分岐鎖として含む高分子化合物からなる(C)相溶化剤とを溶融混練することを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物の製造方法、
(7)(A)重量平均分子量5万以上のポリ乳酸樹脂、(B)セルロースエステル、および
チタンアルコキシド、アルミニウムアルコレート、アルミニウムキレートから選ばれる有機金属化合物および/またはメタクリル樹脂ユニットをポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル系樹脂から選ばれる主鎖となる高分子にグラフト共重合の分岐鎖として含む高分子化合物からなる(C)相溶化剤とを溶融混練することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか1項記載のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法、
(8)上記(1)〜(5)のいずれか1項記載のポリ乳酸樹脂組成物からなる成形品、
(9)上記(1)〜(5)のいずれか1項記載のポリ乳酸樹脂組成物からなるフィルム、
(10)上記(1)〜(5)のいずれか1項記載のポリ乳酸樹脂組成物からなるシートである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明に用いられるポリ乳酸樹脂は、実用的な機械特性を満足させるため、重量平均分子量が5万以上であることが必要であり、好ましくは8万以上、さらに10万以上であることがより好ましい。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。
【0012】
また本発明のポリ乳酸樹脂とは、L−乳酸及び/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他のモノマー単位としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。上記他の共重合成分の共重合量は、全単量体成分に対し、0〜30モル%であることが好ましく、0〜10モル%であることが好ましい。
【0013】
本発明において、特に高い耐熱性を有する樹脂組成物を得るためには、ポリ乳酸樹脂として乳酸成分の光学純度が高いものを用いることが好ましい。ポリ乳酸樹脂の総乳酸成分の内、L体が80%以上含まれるかあるいはD体が80%以上含まれることが好ましく、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることが特に好ましく、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることが更に好ましい。
【0014】
ポリ乳酸樹脂の製造方法としては、既知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
【0015】
ポリ乳酸樹脂の融点は、特に制限されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、さらに150℃以上であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂の融点は通常、乳酸成分の光学純度を高くすることにより高くなり、融点120℃以上のポリ乳酸樹脂は、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることにより、また融点150℃以上のポリ乳酸樹脂は、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることにより得ることができる。
【0016】
本発明におけるセルロースエステルとは、セルロースの水酸基がエステル化剤によって封鎖されているものを言う。具体的なエステル化剤としては、酸塩化物(例えば塩化アセチル、塩化プロピオニルなど)、酸無水物(例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸など)、カルボン酸化合物(例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸など)、カルボン酸化合物誘導体(例えばアミド化合物、エステル化合物など)、環状エステル(例えばε−カプロラクトンなど)などが挙げられる。
【0017】
具体的なセルロースエステルの種類としては、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート等が挙げられ、相溶性または混和性の観点から中でもセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートが好ましく、さらにはセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートがより好ましい。
【0018】
またセルロースにおける水酸基の置換度(セルロースエステルに置換された水酸基の平均個数)は、グルコース単位あたり0.5〜2.9であることが好ましい。またポリ乳酸とのより良好な相溶性または混和性を付与するためには、置換度は1.8〜2.9であることが好ましく、また2.0〜2.8であることがより好ましい。
【0019】
また上記置換度は、アルカリ加水分解により生成したエステル化剤を高速液体クロマトグラフィーに供し定量することによって求めることができる。
【0020】
本発明においては、後述の透明性を向上させる目的で、さらにポリ乳酸樹脂とセルロースエステルの相溶性を改良する1種または2種以上の、チタンアルコキシド、アルミニウムアルコレート、アルミニウムキレートから選ばれる有機金属化合物および/またはメタクリル樹脂ユニットをポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル系樹脂から選ばれる主鎖となる高分子にグラフト共重合の分岐鎖として含む高分子化合物からなる相溶化剤を配合する。
【0021】
チタンアルコキシドは一般式Ti(OR) m であらわされる。ここでmは整数でありアルコラート基の配位数をあらわし、一般的には1〜4である。Rは任意のアルキル基から選択される。Rとしては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などがあり、さらにこれらが連続したダイマー、トリマー、テトラマーなどがある。特にチタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトラブトキシドテトラマーが好ましい例として挙げられる。アルミニウムアルコレート(トリアルコキシアルミニウム)類としては、たとえばアルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート等が挙げられ、アルミニウムキレート類としては、たとえばエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等を挙げることができる。特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが好ましく、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートとしては、川研ファインケミカル若しくは味の素ファインテクノ製の“プレンアクト”AL−Mが好ましい例として挙げられる。
【0023】
かかるポリオレフィンとは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンの単独重合体、ランダムまたはブロック等の形態をなす相互共重合体、これらα−オレフィンの過半重量と他の不飽和単量体とのランダム、ブロックもしくはグラフト等の共重合体化したものを指し、ここで他の不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、グリシジルメタクリル酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミド等の不飽和有機酸またはその誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;スチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;ビニルトリメチルメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン;ジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネン等の非共役ジエンなどを用いることができる。共重合の場合には、α−オレフィンや他の単量体は、2種に限らず、複数種からなるものであってもよい。
【0024】
また、前記ポリスチレンとは、スチレン、メチルスチレン、グリシジル置換スチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体、ランダムまたはブロック等の形態をなす相互共重合体、これらの過半重量と他の不飽和単量体とのランダム、ブロックもしくはグラフト等の共重合体化したものを指し、ここで他の不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、グリシジルメタクリル酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミド等の不飽和有機酸またはその誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;ビニルトリメチルメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン;ジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネン等の非共役ジエンなどを用いることができる。共重合の場合には、スチレン系モノマーや他の単量体は、2種に限らず、複数種からなるものであってもよい。
【0025】
さらに、前記アクリル系樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、グリシジルメタクリル酸等のアクリル系樹脂モノマーの単独重合体、ランダムまたはブロック等の形態をなす相互共重合体、これらの過半重量と他の不飽和単量体とのランダム、ブロックもしくはグラフト等の共重合体化したものを指し、ここで他の不飽和単量体としては、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミド、スチレン、メチルスチレン、グリシジル置換スチレン等の不飽和有機酸またはその誘導体;酢酸ビニル等のビニルシラン;ジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネン等の非共役ジエンなどを用いることができる。共重合の場合には、アクリル系樹脂モノマーや他の単量体は、2種に限らず、複数種からなるものであってもよい。
【0026】
またここでグラフト共重合によって導入されるメタクリル樹脂は、メタクリル酸メチル単独、またはメタクリル酸メチルと他の共重合性のビニルまたはビニリデン系単量体の混合物を重合して得られるものであり、好ましくは80重量%以上のメタクリル酸メチルを含有するものである。他の共重合性のビニルまたはビニリデン系単量体としては、好ましくはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどの炭素数1〜8のアクリル酸アルキルエステル、スチレン、及びアクリロニトリルが挙げられる。導入されるメタクリル樹脂は、一種に限らず、複数種でも可能である。
【0027】
メタクリル樹脂をグラフト共重合により変性した高分子の具体例としては、ポリエチレン−g−ポリメタクリル酸メチル(PE−g−PMMA)(“g”は、グラフトを表す、以下同じ)、ポリプロピレン−g−ポリメタクリル酸メチル(PP−g−PMMA)、ポリ(エチレン/プロピレン)−g−ポリメタクリル酸メチル(EPM−g−PMMA)、ポリ(エチレン/アクリル酸エチル)−g−ポリメタクリル酸メチル(EEA−g−PMMA)、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)−g−ポリメタクリル酸メチル(EVA−g−PMMA)、ポリ(エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸)−g−ポリメタクリル酸メチル(E/EA/MAH−g−PMMA)、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−g−ポリメタクリル酸メチル(EGMA−g−PMMA)、ポリ(アクリル酸エチル/グリシジルメタクリレート)−g−ポリメタクリル酸メチル(EA/GMA−g−PMMA)等が挙げられ、特にポリ(エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸)−g−ポリメタクリル酸メチル(E/EA/MAH−g−PMMA)、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−g−ポリメタクリル酸メチル(EGMA−g−PMMA)が好ましい例として挙げられる。
【0028】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、溶融混練法を採用することが好ましい。溶融混練法は、各成分を溶融混練することにより製造する方法である。その溶融混練方法については、特に制限はなく、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、単軸または2軸押出機等の通常使用されている公知の混合機を用いることができる。中でも生産性の観点から、単軸または2軸押出機の使用が好ましい。またその混合順序についても特に制限はなく、例えばポリ乳酸とセルロースエステルをドライブレンド後、溶融混練機に供する方法や、予めポリ乳酸とセルロースエステルを溶融混練したマスターバッチを作製後、該マスターバッチとポリ乳酸とを溶融混練する方法等が挙げられる。また必要に応じて、その他の添加剤を同時に溶融混練する方法や、予めポリ乳酸とその他の添加剤を溶融混練したマスターバッチを作製後、該マスターバッチとポリ乳酸とセルロースエステルとを溶融混練する方法を用いてもよい。また溶融混練時の温度は190℃〜240℃の範囲が好ましく、またポリ乳酸の劣化を防ぐ意味から、200℃〜220℃の範囲とすることがより好ましい。
【0029】
本発明の溶融混練を経て製造されたポリ乳酸樹脂組成物は、相溶性または混和性に優れていることから、透明性に優れており、ポリ乳酸樹脂組成物を用いて0.2mm厚さのシートとした場合、通常波長400nmの可視光線における光線透過率が40%以上のものを得ることができる。また好ましい態様においては、波長400nmの可視光線における光線透過率が50%以上のものを得ることができる。さらに好ましい態様においては波長400nmの可視光線における光線透過率が60%以上のものをも得ることができる。
【0030】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、相溶性または混和性に優れており、配合するセルロースエステルの種類や配合量によってはポリ乳酸樹脂とセルロースエステルが相溶化する場合があり、この場合、特に透明性に優れることから各種透明用途で好適に用いられることから好ましい。ここで「相溶化している」とは、分子レベルで両成分が均一に混合していることを意味する。組成物中で各成分が相溶化しているか否かの判断は、ガラス転移温度で判断する方法が挙げられる。相溶化している場合には、ガラス転移温度が各々単独のものより変化し、多くの場合、単一のガラス転移温度を示す。ガラス転移温度の測定方法としては、示差走査熱量計(DSC)で測定する方法、動的粘弾性試験により測定する方法のいずれも用いることができる。
【0031】
また本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、セルロースエステルの種類や配合量によってはポリ乳酸樹脂とセルロースエステルが、構造周期0.01〜3μmの両相連続構造、または粒子間距離0.01〜3μmの分散構造を有する場合があり、この場合も優れた機械特性と耐熱性を両立することから好ましい。これらの両相連続構造や分散構造は、溶融混練時に一旦相溶化後、スピノーダル分解により相分離すること等によって生じたものと推定されるが、これに限定されるものではない。またこれらの両相連続構造、もしくは分散構造を確認するためには、例えば、光学顕微鏡観察や透過型電子顕微鏡観察により、両相連続構造が形成されることの確認や、光散乱装置や小角X線散乱装置を用いて行う散乱測定において、散乱極大が現れること等によって確認することができる。なお、光散乱装置、小角X線散乱装置は最適測定領域が異なるため、構造周期の大きさに応じて適宜選択して用いられる。この散乱測定における散乱極大の存在は、ある周期を持った規則正しい相分離構造を持つ証明であり、その周期Λm は、両相連続構造の場合構造周期に対応し、分散構造の場合粒子間距離に対応する。またその値は、散乱光の散乱体内での波長λ、散乱極大を与える散乱角θm を用いて次式
Λm =(λ/2)/sin(θm /2)
により計算することができる。
【0032】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物の、配合量に関しては特に制限はないが、ポリ乳酸樹脂とセルロースアセテート樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリ乳酸樹脂99重量部以下50重量部超及びセルロースアセテート1重量部以上50重量部未満とする場合には、ポリ乳酸樹脂の特性を改良する点で有用であり、特にポリ乳酸樹脂の透明性や機械特性や耐熱性の改良に特に効果がある。
【0033】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物には、天然由来の有機充填剤を配合することも可能である。天然由来の有機充填剤としては、天然物に由来するものであり、好ましくはセルロースを含むものであって、特に制限されるものではない。
【0034】
天然由来の有機充填剤の具体例としては、籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材などのチップ状のもの、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナッツ繊維などの植物繊維もしくはこれらの植物繊維から加工されたパルプやセルロース繊維および絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、ラクダなどの動物繊維などの繊維状のもの、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質、澱粉などの粉末状のものが挙げられ、成形性の観点から、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質粉末、澱粉などの粉末状のもの、麻繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維が好ましく、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、ケナフ繊維がより好ましく、紙粉、木粉、ケナフ繊維がさらに好ましく、紙粉が特に好ましい。また、これらの天然由来の有機充填剤は、天然物から直接採取したものを用いてもよいが、地球環境の保護や資源保全の観点から、古紙、廃木材および古衣などの廃材をリサイクルして用いてもよい。
【0035】
古紙とは、新聞紙、雑誌、その他の再生パルプ、もしくは、段ボール、ボール紙、紙管などの板紙であり、植物繊維を原料として加工されたものであれば、いずれを用いてもよいが、成形性の観点から、新聞紙および段ボール、ボール紙、紙管などの板紙の粉砕品が好ましい。
【0036】
また、木粉に使用される木材の具体例としては、松、杉、檜、もみ等の針葉樹材、ブナ、シイ、ユーカリなどの広葉樹材などがあり、その種類は問わない。
【0037】
紙粉としては、特に限定されるものではないが、成形性の観点から、接着剤を含むことが好ましい。接着剤としては、紙を加工する際に通常使用されるものであれば特に限定されるものではなく、酢酸ビニル樹脂系エマルジョンやアクリル樹脂系エマルジョンなどのエマルジョン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、セルロース系接着剤、天然ゴム系接着剤、澱粉糊およびエチレン酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤やポリアミド系接着剤などのホットメルト接着剤などを挙げることができ、エマルジョン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤およびホットメルト接着剤が好ましく、エマルジョン系接着剤およびポリビニルアルコール系接着剤がより好ましい。なお、これらの接着剤は、紙加工剤用のバインダーなどとしても使用されるものである。また、接着剤には、クレイ、ベントナイト、タルク、カオリン、モンモリロナイト、マイカ、合成マイカ、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウムおよび酸化ネオジウムなどの無機充填剤が含まれていることが好ましく、クレイ、ベントナイト、タルク、カオリン、モンモリロナイト、合成マイカおよびシリカがより好ましい。
【0038】
また、紙粉としては、成形性の観点から、灰分が5重量%以上であることが好ましく、5.5重量%以上であることがより好ましく、8重量%以上であることがさらに好ましい。上限については、特に限定されるものではないが、60重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。ここで、灰分とは、電気炉などを用いて450℃以上の高温で8時間、有機充填剤10gを焼成した時の残存する灰分の重量の焼成前の紙粉の重量に対する割合である。
【0039】
また、紙粉としては、紙粉中に5〜20重量%の無機化合物を含有するものが好ましく、無機化合物の元素としてアルミニウム、ケイ素、カルシウムを含有するものがより好ましく、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、硫黄を含有するものがさらに好ましく、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、硫黄、マグネシウムを含有するものが特に好ましく、さらにアルミニウムの含有量がマグネシウムの含有量の2倍以上のものが特に好ましい。
【0040】
アルミニウム、ケイ素、カルシウム、硫黄、マグネシウムの存在量比としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記元素の総数を100とした場合、アルミニウムが1〜60モル%、ケイ素が20〜90モル%、カルシウムが1〜30モル%、硫黄が1〜20モル%、マグネシウムが0〜20モル%であることが好ましく、アルミニウムが10〜55モル%、ケイ素が20〜85モル%、カルシウムが1〜25モル%、硫黄が1〜15モル%、マグネシウムが0〜10モル%であることがより好ましく、アルミニウムが20〜50モル%、ケイ素が25〜80モル%、カルシウムが3〜20モル%、硫黄が2〜10モル%、マグネシウムが0〜8モル%であることがさらに好ましい。これらの元素分析については、天然由来の有機充填剤の単体、天然由来の有機充填剤の灰分のいずれを用いても測定することができるが、本発明においては灰分を用いる。なお、元素分析は、蛍光X線分析、原子吸光法、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくは透過型電子顕微鏡(TEM)とエネルギー分散形X線マイクロアナライザー(XMA)を組み合わせた装置を用いることにより、測定することができるが、本発明においては蛍光X線分析を用いる。
【0041】
また、紙粉としては、成形性の観点から、表面上に微粒子が付着するセルロースを含むことが好ましい。微粒子とは、特に限定されるものではなく、前述したような接着剤に含まれる無機充填剤であってもよいし、有機物もしくはその他の無機物のいずれであってもよいが、粒子がケイ素とアルミニウムを含有するものが好ましい。微粒子の形状は、針状、板状、球状のいずれでもよい。微粒子のサイズは、特に限定されるものではないが、0.1〜5000nmの範囲に分布していることが好ましく、0.3〜1000nmの範囲に分布していることがより好ましく、0.5〜500nmの範囲に分布していることがさらに好ましく、1〜100nmの範囲に分布していることが特に好ましく、1〜80nmの範囲に分布していることが最も好ましい。なお、ここで特定の範囲に「分布している」とは、微粒子総数の80%以上が特定の範囲に含まれることを意味する。微粒子の付着形態は、凝集状態もしくは分散状態のいずれでもよいが、分散状態で付着していることがより好ましい。上記微粒子のサイズは、天然由来の樹脂と天然由来の有機充填剤を配合した樹脂組成物から得られる成形品を透過型電子顕微鏡により8万倍の倍率で観察することができ、観察する微粒子の総数は、任意の100個とする。
【0042】
また、紙粉以外のその他の天然物由来の有機充填剤においても、上記特徴、すなわち、灰分量、その組成を有するもの、微粒子が付着したものを選択して用いることが好ましい。
【0043】
本発明に対して、本発明の目的を損なわない範囲で充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、その他の有機繊維、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ワラステナイト、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土など)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤等)、滑剤、離形剤、難燃剤、染料および顔料を含む着色剤、核化剤などを添加することができる。
【0044】
本発明に対して、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えばポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミドなど)および熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)および軟質熱可塑性樹脂(例えばエチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体など)などの少なくとも1種以上をさらに含有することができる。
【0045】
本発明の樹脂組成物は、相溶性または混和性に優れ溶融混練可能であることから、射出成形や押出成形などの方法によって、各種成形品に加工し利用することができる。成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フイルム、繊維、シートなどとして利用できる。またフイルムとしては、未延伸、一軸延伸、二軸延伸、インフレーションフィルムなどの各種フイルムとして、繊維としては、未延伸糸、延伸糸、超延伸糸など各種繊維として利用することができる。また、これらの物品は、電気・電子部品、建築部材、自動車部品、日用品など各種用途に利用することができる。
【0046】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
比較例1〜5
表1記載の組成からなる原料を、押出温度210℃に設定した2軸スクリュー押出機(池貝工業社製PCM−30)に供給し、ダイから吐出後のガットをすぐに氷水中に急冷し、構造を固定した。本ガットはいずれも透明感のあるものであった。
【0048】
該ガットから10mg切り出したサンプルについて、ポリ乳酸のガラス転移温度を、PERKIN−ELMER社製DSC−7を用いて、20℃/分の昇温速度で測定した際の変曲点から求めた結果を、表1に記した。
【0049】
さらに上記氷水中に急冷し、構造を固定したガットから厚み100μmの切片を切り出し、210℃に設定されたホットステージ上で再溶融させ、その時の構造を対物レンズ20倍、接眼レンズ5倍の倍率100倍の位相差光学顕微鏡で観察した結果を表1に記した。
【0050】
図1に比較例1の組成物における各成分の分散形態を示す位相差光学顕微鏡写真を示す。該写真からは構造が観察されない。
【0051】
図2に比較例3の組成物における各成分の分散形態を示す位相差光学顕微鏡写真を示す。該写真から、規則的な両相連続構造が観察される。
【0052】
さらにここで構造が確認されたサンプルについては、別途、上記氷水中に急冷し、構造を固定したガットから厚み100μmの切片を切り出し、波長632.8nmのHe−Neレーザーを光源とする光散乱装置を用い、散乱強度のピーク位置(θm)から、下記式を用いて構造周期または粒子間距離を計算した結果を記した。
Λm =(λ/2)/sin(θm /2)
また、上記ダイから吐出後、氷水中に急冷し構造を固定したガットを用い、加熱プレスにより210℃×1分間加圧し、厚み0.2mmのシートを作製した。
【0053】
次に、該シートを用い、(株)島津製作所製 分光光度計MPC3100により、波長400nmの可視光線の透過率を測定した。
【0054】
図3に、比較例1〜3のシートの写真を示す。該写真によれば、シートを通して背景の文字が鮮明に見えることから、本発明のシートが透明性に優れることがわかる。
【0055】
また別途、該シートを140℃に温調された熱風オーブン中で1時間熱処理後、長さ×幅×厚み=40mm×8mm×0.2mmのサンプルを切り出し、セイコーインスツルメンツ(株)製、EXSTAR6000粘弾性測定装置を用い、0℃から2℃/分の昇温速度で昇温し、1Hzの正弦波による動的粘弾性試験を行い、その貯蔵弾性率が1GPaに低下する温度を測定した。かかる温度を耐熱温度とし、結果を表1に記した。
【0056】
また別途、該シートから、長さ×幅×厚み=50mm×10mm×0.2mmのサンプルを切り出し、23℃、50%RHの環境下、オリエンテック社製テンシロンUTA−4を用いて、チャック間距離20mm、引張速度10mm/分で測定した引張強度、引張伸び測定結果を表1に記した。
【0057】
実施例1〜6
表2記載の組成からなる原料を、押出温度225℃に設定した2軸スクリュー押出機(池貝工業社製PCM−30)に供給し、ダイから吐出後のガットをすぐに氷水中に急冷し、構造を固定した。本ガットはいずれも透明感のあるものであった。
【0058】
該ガットから10mg切り出したサンプルについて、ポリ乳酸のガラス転移温度を、PERKIN−ELMER社製DSC−7を用いて、20℃/分の昇温速度で測定した際の変曲点から求めた結果を、表2に記した。
【0059】
さらに上記氷水中に急冷し、構造を固定したガットから厚み100μmの切片を切り出し、210℃に設定されたホットステージ上で再溶融させ、その時の構造を対物レンズ20倍、接眼レンズ5倍の倍率100倍の位相差光学顕微鏡で観察した結果を表2に記した。
【0060】
また、上記ダイから吐出後、氷水中に急冷し構造を固定したガットを用い、加熱プレスにより210℃×1分間加圧し、厚み0.2mmのシートを作製した。
【0061】
次に、該シートを用い、(株)島津製作所製 分光光度計MPC3100により、波長400nmの可視光線の透過率を測定し、結果を表2に記載した。
【0062】
また別途、該シートを140℃に温調された熱風オーブン中で1時間熱処理後、長さ×幅×厚み=40mm×8mm×0.2mmのサンプルを切り出し、セイコーインスツルメント(株)製、EXSTAR6000粘弾性測定装置を用い、0℃から2℃/分の昇温速度で昇温し、1Hzの正弦波による動的粘弾性試験を行い、その貯蔵弾性率が1GPaに低下する温度を測定した。かかる温度を耐熱温度とし、結果を表2に記した。
【0063】
なお、使用樹脂は、以下に示すものを使用した。
PLA−1:ポリ乳酸(D体の含有量が1.2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が16万であるポリL乳酸樹脂)
CAP−1:セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社製、CAP、アセテート置換度:0.1、プロピオネート置換度:2.6)
CTA−1:セルローストリアセテート(ダイセル化学工業社製、LT−35、アセテート置換度:2.93)
CDA−1:セルロースジアセテート(ダイセル化学工業社製、LT−40、アセテート置換度:2.42)
CEL−1:セルロース(セルロースパウダー、アルドリッチ試薬)
AL −1:有機アルミニウム化合物(アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、味の素ファインテクノ社製、“ブレンアクト”AL−M)
TI −1:有機チタン化合物(チタンテトライソプロポキシド、東京化成試薬)
P −1:メタクリル樹脂変性高分子化合物(ポリ(エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸)−g−ポリメタクリル酸メチル(E/EA/MAH−g−PMMA)、日本油脂社製、“モディパー”A8200)
また、ポリ乳酸の重量平均分子量は、日本Warters(株)製、Warters2690を用い、PMMAを標準とし、カラム温度40℃、クロロホルム溶媒を用いて測定した。
【0064】
またセルロースエステルの置換度は、試料0.3gに対し、2NのNaOHを40ml加え、70℃×2時間アルカリ加水分解後、1NHClを80ml加え中和し、溶液を、高速液体クロマトグラフィーでエステル化剤量を定量し、グルコース単位あたりの置換度を求めた。
【0065】
比較例6
セルロースエステルを配合しなかったこと以外は、比較例1〜5と同様に溶融混練し、セルロースエステル混合系との比較用のサンプルとした。
【0066】
比較例7
セルロースエステルの替わりに、未誘導体であるセルロースを用いた以外は、比較例1〜5と同様に溶融混練し、セルロースエステル混合系との比較用のサンプルとした。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【発明の効果】
本発明のバイオマス系材料であるポリ乳酸とセルロースエステルとを配合してなる樹脂組成物により、透明性、機械特性、耐熱性に優れた樹脂組成物が得られるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】比較例1の組成物における各成分の分散形態を示す位相差光学顕微鏡写真を示す。
【図2】比較例3の組成物における各成分の分散形態を示す位相差光学顕微鏡写真を示す。
【図3】比較例1、2、3のシートの写真を示す。
Claims (10)
- (A)重量平均分子量5万以上のポリ乳酸樹脂、(B)セルロースエステル、および
チタンアルコキシド、アルミニウムアルコレート、アルミニウムキレートから選ばれる有機金属化合物および/またはメタクリル樹脂ユニットをポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル系樹脂から選ばれる主鎖となる高分子にグラフト共重合の分岐鎖として含む高分子化合物からなる(C)相溶化剤とを溶融混練してなるポリ乳酸樹脂組成物であって、(A)ポリ乳酸樹脂と(B)セルロースエステルとがポリ乳酸樹脂組成物中で相溶化し、示差走査熱量計(DSC)で測定したポリ乳酸樹脂組成物中のポリ乳酸のガラス転移温度が変化しているものであるポリ乳酸樹脂組成物。 - (A)重量平均分子量5万以上のポリ乳酸樹脂、(B)セルロースエステル、および
チタンアルコキシド、アルミニウムアルコレート、アルミニウムキレートから選ばれる有機金属化合物および/またはメタクリル樹脂ユニットをポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル系樹脂から選ばれる主鎖となる高分子にグラフト共重合の分岐鎖として含む高分子化合物からなる(C)相溶化剤とを溶融混練してなるポリ乳酸樹脂組成物であって、ポリ乳酸樹脂組成物が、光散乱装置または小角X線散乱装置を用いて行う散乱測定において、構造周期0.01〜3μmの両相連続構造、または粒子間距離0.01〜3μmの分散構造を有するものであるポリ乳酸樹脂組成物。 - ポリ乳酸樹脂組成物を0.2mm厚さのシートとした場合、波長400nmの可視光線における光線透過率が40%以上である請求項1または2記載のポリ乳酸樹脂組成物。
- 前記(B)成分が、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートよりなる群より選ばれる少なくとも一種のセルロースエステルである請求項1〜3のいずれか1項記載のポリ乳酸樹脂組成物。
- (A)ポリ乳酸樹脂と(B)セルロースアセテート樹脂の合計を100重量部としたときに、(A)ポリ乳酸樹脂99重量部以下50重量部超及び(B)セルロースアセテート1重量部以上50重量部未満である請求項4記載のポリ乳酸樹脂組成物。
- (A)重量平均分子量5万以上のポリ乳酸樹脂、(B)セルロースエステル、および
チタンアルコキシド、アルミニウムアルコレート、アルミニウムキレートから選ばれる有機金属化合物および/またはメタクリル樹脂ユニットをポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル系樹脂から選ばれる主鎖となる高分子にグラフト共重合の分岐鎖として含む高分子化合物からなる(C)相溶化剤とを溶融混練することを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物の製造方法。 - (A)重量平均分子量5万以上のポリ乳酸樹脂、(B)セルロースエステル、および
チタンアルコキシド、アルミニウムアルコレート、アルミニウムキレートから選ばれる有機金属化合物および/またはメタクリル樹脂ユニットをポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル系樹脂から選ばれる主鎖となる高分子にグラフト共重合の分岐鎖として含む高分子化合物からなる(C)相溶化剤とを溶融混練することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法。 - 請求項1〜5のいずれか1項記載のポリ乳酸樹脂組成物からなる成形品。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載のポリ乳酸樹脂組成物からなるフィルム。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載のポリ乳酸樹脂組成物からなるシート。
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