上記本発明の構成によると、各シーンにおいて、ユーザーがシステム側に望む特定の目的に対し一定の効果が達成できるよう、該目的に適合するもてなし機能がシステム側にてシステム被選択もてなし機能として自動選択される。具体的には、複数のもてなし機能の各シーンでの採用優先順位を示す機能採用優先度情報を、もてなし機能の内容特定情報と対応付けて機能抽出テーブルの形で記憶し、各シーンにおいて機能採用優先度情報が示す採用優先順位に従いもてなし機能を選択し、システム被選択もてなし機能として自動作動させるのである。他方、このシステム被選択もてなし機能が動作する際に、ユーザーの手動操作により何らかの別機能が選択される場合がある。例えば、上記目的効果を達成する上でシステム側が自動選択したシステム被選択もてなし機能の動作のみではユーザーが不十分と感じ、別機能を手動選択した場合である。本発明においては、このような別機能が随伴もてなし機能として手動選択され、システム被選択もてなし機能と並行して動作した場合に、自動選択されたシステム被選択もてなし機能の目的効果に対し、該随伴もてなし機能の動作が寄与しているか否かをモニタリングする。そして、その目的効果への寄与が予め定められたレベルを超えてモニタリングされた場合に、随伴もてなし機能の機能採用優先度情報を、該モニタリング前よりも採用優先順位が高められるように更新する。つまり、手動選択された随伴もてなし機能の効果寄与をモニタリングにより分析し、その分析結果に基づいて機能採用優先度情報を更新することで、次回以降の同じシーンにおける該随伴もてなし機能の動作自動化のための学習を行なうことができる。
具体的には、もてなし実行制御部は、採用優先順位が予め定められたレベル以上となるように機能採用優先度情報が更新された随伴もてなし機能を、次回以降はシステム被選択もてなし機能として動作させるように構成することで、効果寄与の大きかった随伴もてなし機能の動作自動化を効果的に図ることができる。この場合、随伴もてなし機能の動作はあくまで手動によるものであるから、そのときユーザーが所望した手動動作内容が次回以降の動作に反映されることが望ましいといえる。そこで、目的効果への寄与が予め定められたレベルを超えてモニタリングされた随伴もてなし機能の動作履歴を記録する随伴もてなし機能動作履歴記録手段を設け、もてなし実行制御部は、更新後の機能採用優先度情報に基づいて随伴もてなし機能がシステム被選択もてなし機能として次回に選択された場合に、記録された動作履歴に従いこれを動作させるように構成するとよい。
システム被選択もてなし機能の目的効果は、車室内又は車室外の予め定められた環境パラメータの改善効果として定めることができる。機能効果寄与モニタリング手段は、随伴もてなし機能の動作に伴う該環境パラメータの変化を検知する環境パラメータ検知手段を有するものとして構成できる。こうした環境パラメータとしては、車室内温度(環境パラメータ検知手段は、例えば車室内温度センサである)、車室内の臭い強度(環境パラメータ検知手段は、例えば臭いセンサである)、車室内湿度(環境パラメータ検知手段は、例えば車室内湿度センサあるいは窓曇りセンサである)、車室内炭酸ガス濃度(環境パラメータ検知手段は、例えば車室内湿度センサあるいは炭酸ガスセンサである)、車外照度(環境パラメータ検知手段は、例えば車外照度センサである)などを例示できる。
機能採用優先度情報は、対応するもてなし機能を動作させたときに期待される環境パラメータの改善方向への変化率を反映した情報とすることができる。そして、随伴もてなし機能を動作させた場合に環境パラメータ検知手段が検知する環境パラメータの改善方向への変化率が、システム被選択もてなし機能に対応する機能採用優先度情報に反映される該環境パラメータの改善方向への変化率よりも大きくなった場合に、機能採用優先度情報更新手段は、当該随伴もてなし機能に対応する機能採用優先度情報を、検知された環境パラメータの改善方向への変化率を反映したものとなるように更新するよう機能させることができる。機能採用優先度情報に反映される環境パラメータの改善方向への変化率が大きいほど、対応する随伴もてなし機能は、次回以降、システム被選択もてなし機能として自動選択されるための優先度が高まり、結果として、(次回以降の)当該随伴もてなし機能とシステム被選択もてなし機能との併用により、対象となる環境パラメータをより速やかに改善目標値に収束させることが可能となる。
例えば、対照となる環境パラメータが車室内温度の場合、検知された車室内温度が不快(例えば、暑い/ないし寒い)と想定される場合は、システム被選択もてなし機能として空調装置が選択され、環境パラメータとしての車室内温度を改善方向(つまり、快適方向:暑ければ涼しくする方向、寒ければ暖かくする方向)に導くように動作する。しかし、密閉された車室内環境を改善する上では、(自動車用の空調装置がそれほど普及していなかった時代には通常行なわれていたごとく)窓の開閉により車外と車内とを流通させることも、車室内温度の改善には有効である。この場合、ユーザーが手動によりパワーウィンドウを操作して窓を開閉し、車室内温度が改善方向に誘導されれば、該パワーウィンドウを随伴もてなし機能として、対応する機能採用優先度情報を、車室内温度の改善度合いに応じて更新することができる。
特に車室内温度改善にパワーウィンドウ操作が関与するシーンとしては、車室内温度が閾温度を超える高温状態となっている状況下での、自動車への接近シーン又は乗り込みシーンを例示できる。特に、夏季炎天下では密閉された車室内温度は極度に上昇し、ユーザーは乗り込みに際して車室内にこもった熱気を一刻も早く車外に放出したいと考えるのが通常である。この場合、システム被選択もてなし機能を空調装置の冷房機能とし、随伴もてなし機能をパワーウィンドウの開放機能とするのが妥当である。こうした状況下では、空調装置を自動作動させても、そのクールダウンに相当の時間を要し、居たたまれなくなったユーザーは、パワーウィンドウを手動操作して窓を全開にする操作を行なう。そして、窓を開放させなかった場合に想定される車室内温度の冷却方向への変化率が、窓が手動操作された結果有意に大きくなればパワーウィンドウの機能採用優先度が高くなるように更新され、次回以降は空調装置とともにパワーウィンドウも作動し、窓が自動的に開放されることとなる。このとき、どの座席のパワーウィンドウが開放されたか、また、どの程度まで車室内温度が低下した場合に(あるいは、どの程度まで空調装置のクールダウンが進んだ場合に)パワーウィンドウを閉状態に戻したかなどを履歴として記録しておけば、次回以降は、その記録内容に従い、ユーザーが自分で行なった所望の操作履歴を再現する形でパワーウィンドウを動作させることができる。
また、運転・滞在シーンにて車室内で異臭が発生し、これをユーザーが不快と感じたならば、環境パラメータは車室内の臭い強度となる。この場合、システム被選択もてなし機能としては、空調装置による換気機能(外気取り入れモード)又は空気清浄装置を自動作動させることが想定できる。しかし、それでも車室内の臭い解消効果が不十分とユーザーが感じれば、ユーザーは随伴もてなし機能としてパワーウィンドウを手動操作し、開放する。そして、窓を開放させなかった場合に想定される車室内臭い強度の解消方向への変化率が、窓が手動操作された結果有意に大きくなればパワーウィンドウの機能採用優先度が高くなるように更新され、次回以降は空調装置とともにパワーウィンドウも作動し、窓が自動的に開放されることとなる。このとき、パワーウィンドウの開度がどの程度であったか、また、どの程度まで車室内臭い強度が低下した場合にパワーウィンドウを閉状態に戻したかなどを履歴として記録しておけば、次回以降は、その記録内容に従い、ユーザーが自分で行なった所望の操作履歴を再現する形でパワーウィンドウを動作させることができる。
上記の構成によると、外乱刺激の種別ともてなし意図分類項目との組み合わせにより自動車利用に係る状況把握を行ない、意図推定テーブルを参照して、安全性、利便性及び快適性の少なくともいずれかの区分におけるもてなし意図(願望)の強度基準を与える基準意図パラメータ値を決定する。自動車利用に係る状況(意図分類と外乱種別)毎に特有の基準意図パラメータ値を意図強度の基準とし、これに現在の外乱刺激値を加味して意図強度パラメータ値を決定することで、該意図強度パラメータ値は、外乱刺激の大小も考慮した機能選択参照値として好適に使用することができる。そして、別途用意された機能特定テーブルにおいては、外乱刺激の種別ともてなし意図分類項目との組み合わせにより、もてなし動作部の機能を特定するための機能特定情報が抽出され、前述の意図強度パラメータ値に基づいて、抽出された機能の制御内容が決定されるので、もてなし意図に適合した機能を外乱刺激値に応じたレベルにて適正に選択・動作させることができる。これにより、もてなし動作部の動作内容がユーザー生体特性情報の内容に応じて適正に変化し、ひいては、自動車利用に際してのユーザーへサービス(もてなし)効果の、ユーザーの精神状態あるいは体調に応じた適正化を図ることができる。
もてなしに使用する機能は次のようなものを例示できる。まず、触覚系の機能としては、気温を制御対象項目とするもの、具体的には空調装置を例示できる。空調装置の機能は車内温度の調整であり、主に運転/滞在シーンに活用される。例えば、空調設定温度を低温側にシフトさせることで、高揚(あるいは興奮)した精神状態を沈静化したり、疲れ等により熱っぽくなった体調状態を和らげることができる。
また、触覚系のもてなし機能は、車内居住状態を制御対象項目とするものがある。車内居住状態を大きく支配するのは、やはりシート位置や高さであり、ドライバーの場合は、さらにハンドル位置も重要な因子となる。従って、当該もてなし意図に対応する機能として、シート位置調整機能やハンドル位置調整機能を用意しておくことができる。主に運転/滞在シーンに活用されるものであり、例えば、体調悪化等により注意力が散漫となっている場合は、シート位置を前寄りに出してハンドル位置も多少高く設定するなど、運転に対する集中力向上を支援することができるし、逆に、興奮している場合、あるいは疲れている場合などは、シート位置を深くしハンドル位置も多少下げることで、精神的にリラックスさせたり、疲れを和らげたりする上で効果的である。
次に、視覚系の機能としては、(車内外の)明るさを制御対象項目とするものがあり、具体的には、車外ないし車内の照明装置を例示できる。車外照明光は、夜間走行時の前照灯など走行に不可欠な機能も含まれるが、ユーザーの自動車への接近時においても、出迎え用のイルミネーションとして活用できる。また、車内照明光は、車内での操作機器の位置把握の他、車内の雰囲気形成にも重要な役割を果たす。この場合、体調や精神状態に応じて証明光量や色調を調整することが可能である。
また、視覚系の機能は、視覚情報を制御対象項目とするものがある。視覚情報とは、例えば、カーナビゲーション装置に出力される地図情報であり、また、テレビやDVDなどの映像情報であり、上記のカーナビゲーション装置又は映像出力装置が当該の機能を構成する。
聴覚系の機能としては、音響を制御対象項目とするものがあり、具体的にはカーオーディオシステムを例示できる。この場合、ユーザーの体調や精神状態に応じて、カーオーディオシステムの出力音量や、出力する音楽ソースの選曲内容を変化させるものとすることができる。これにより、気分や性格に応じて、ユーザーが欲する音楽ソースが自動的に選ばれ、演奏出力されるので、運転ないし車内滞在中のユーザーをタイムリーに喜ばせることができる。一方、車内の音響環境を調える上でバックグラウンド的に動作する機能として、音響ノイズキャンセリングシステムを用意しておくこともできる。
基準意図強度パラメータ値決定手段は、体調状態に対応した複数のもてなし意図分類項目に個別に対応する体調系基準意図パラメータ値と、精神状態に対応した複数のもてなし意図分類項目に個別に対応する精神調系基準意図パラメータ値とを互いに分離した形で決定するものとすることができる。意図推定テーブルと機能抽出テーブルとは、もてなし意図分類項目が、体調系基準意図パラメータ値に対応する体調系もてなし意図と、精神系基準意図パラメータ値に対応する精神系もてなし意図とに分離した形で定めることができる。もてなし意図分類項目を体調系もてなし意図と精神系もてなし意図とに分離し、意図推定テーブルと機能抽出テーブルも対応した分離形態を採用することで、精神状態と体調状態との機能選択上の競合回避が容易となり、機能選択上のアルゴリズムを大幅に簡略化できるとともに、精神状態と体調状態との双方が的確に反映された機能選択が可能となる。
体調系基準意図パラメータの種別は、体力消耗低減に関する意図強度を表わすパラメータ種別と、体力回復に関する意図強度を表わすパラメータ種別とを少なくとも含むものとできる。これにより、「もてなし意図」としていわゆる「しんどい思いをしたくない」あるいは「しんどいから楽にして欲しい」というユーザーの体調上のごく自然な願望を、機能選択に直接反映させることができる。また、精神系基準意図パラメータの種別は、不愉快排除に関する意図強度を表わすパラメータ種別と、愉快獲得に関する意図強度を表わすパラメータ種別と、気持高揚に関する意図強度を表わすパラメータ種別と、気持安静に関する意図強度を表わすパラメータ種別とを少なくとも含むものとできる。これにより、「(不愉快要素の出現による)精神的ストレスの軽減」あるいは「(ニュートラルな状態から偏った)精神状態の矯正」という精神状態向上に直結させたもてなし意図を、機能選択に直接反映させることができる。
また、体調・精神状態特定手段は、ユーザー生体特性情報の内容に基づいてユーザーの体調状態を正常体調状態と異常体調状態との間で区別して特定するものとできる。基準意図強度パラメータ値決定手段は、異常体調状態が特定された場合において正常体調状態が特定された場合よりも、体力消耗低減及び体力回復に関するパラメータに反映される意図強度を高く設定するものとすることができる。体調異常時には、体力消耗低減及び体力回復に直接寄与する機能への選択意図強度が高く設定されることで、ユーザーの負担を的確に軽減することができる。
また、体調・精神状態特定手段は、ユーザー生体特性情報の内容に基づいてユーザーの精神状態を興奮状態とニュートラル状態と落胆状態との間で区別して特定するものとできる。基準意図強度パラメータ値決定手段は、興奮状態が特定された場合においてニュートラル状態及び落胆状態が特定された場合よりも、気持安静に関するパラメータに反映される意図強度を高く設定する一方、落胆状態が特定された場合においてニュートラル状態及び興奮状態が特定された場合よりも、気持高揚に関するパラメータに反映される意図強度を高く設定するものとすることができる。これにより、ユーザーの精神状態が興奮状態のときには、気持安静化に直接寄与する機能への選択意図強度が高く設定されることで、その精神状態を効果的に沈静化でき、特に、ユーザーが運転者の場合には安全運転等に係る良好な精神基盤を確保することができる。また、ユーザーの精神状態が落胆状態のときには、気分高揚化に直接寄与する機能への選択意図強度が高く設定されることで、その精神状態を適正に盛り上げることができ、自動車内の滞在時間をより充実したものに転換することができるほか、落胆により散漫化したユーザーの精神状態を立て直すことができ、特に、ユーザーが運転者の場合には安全運転等に係る良好な精神基盤を同様に確保することができる。
また、体調・精神状態特定手段は、ユーザー生体特性情報の内容に基づいてニュートラル状態を盛り上がり願望状態とそれ以外の状態との間で区別して特定するものとできる。また、基準意図強度パラメータ値決定手段は、ニュートラル状態にて盛り上がり願望状態が特定された場合において同じくそれ以外の状態が特定された場合よりも、愉快獲得に関するパラメータに反映される意図強度を高く設定するものとできる。ユーザーの精神状態が盛り上がり願望である場合に、愉快獲得に直接寄与する機能への選択意図強度が高く設定されることで、その精神状態を適正に盛り上げることができ、自動車内の滞在時間をより充実したものに転換することができる。
機能特定テーブルは、セルに機能特定情報として機能の原理を特定するための原理特定情報が格納された原理探索テーブルとすることができ、該原理探索テーブルに付随する形で、各原理特定情報と個別機能とを互いに対応付けた二次元テーブルであって、テーブルの各セルに、対応する個別機能の座席別の採用優先度を示す前述の機能採用優先度情報を格納した機能抽出テーブルを設けることができる。機能抽出手段は、原理探索テーブル上にて原理特定情報を探索し、探索された原理に属する個別機能を機能抽出テーブル上にて検索するとともに、制御内容決定手段は、検索された個別機能を、対応する機能採用優先度情報が示す優先度の高いものから順に動作するように制御内容を決定することができる。自動車には、例えば車内の異なる位置に設けられるとともに機能原理的に共通した複数の機能群が設けられる場合がある。上記構成によると、その機能群を原理特定情報により大まかに特定し、その機能群に属する個別機能を、ユーザーの着座位置も考慮して優先度の高いものから順に動作させることで、検出・特定されたユーザーのもてなし意図を実現するのに最適の個別機能に速やかにたどり着くことができる。
次に、各種別の外乱刺激値は、いずれもニュートラル値を基準として正負両方向に値が設定可能とすることができる。他方、基準意図パラメータは、対応する外乱刺激に対するユーザーの排除意図が強いものほど絶対値が大きく設定され、かつ外乱刺激を相殺する意図を示すものと、外乱刺激を埋没させる意図を示すものとので互いに異なる符号を有するものとすることができる。意図強度パラメータ演算手段は、外乱刺激値の符号が反映される演算結果が得られるよう、基準意図パラメータ値と外乱刺激値とを結合する予め定められた演算を行ない、その演算結果を意図強度パラメータ値として設定するものとできる。制御内容決定手段は、該意図強度パラメータ値の絶対値に応じて、対応する機能の制御出力を、その符号に応じて予め定められた制御方向に設定するものとできる。
外乱刺激値は、例えば明るい⇔暗い、暑い⇔寒い、うるさい⇔静かなど、互いに相反する状態の間を行き来する形で変化するものが多く、当然、その2状態の間には、そのどちらでもないニュートラル状態(つまり、明るすぎも暗すぎもしないちょうどよい明るさの状態、暑すぎず寒すぎない快適な気温状態、うるさすぎず静かすぎもしない普通の音響状態)が存在し、該ニュートラル状態を基準として外乱刺激が各々上記2状態のどちらに偏っているかを、その符号によって一義的に表わすことができる。意図強度パラメータは、ニュートラル値からずれた外乱刺激に対しユーザーがどの程度の排除願望を抱いているかをその絶対値にて示し、その符号により、外乱刺激を相殺(キャンセル)する制御の向きを識別することができる。意図強度パラメータ値の符号は、外乱刺激の符号と一致し、例えば、明るい場合には暗くし、暗い場合には明るくする。あるいは暑い場合には涼しくし、寒い場合には暖かくする。意図強度パラメータ演算手段は、例えば、基準意図パラメータ値と外乱刺激値との乗算に基づいて意図強度パラメータ値を設定するようにすればよく、乗算の結果の絶対値が大きいほどもてなし意図を実現するための機能出力も大きくなり、制御内容把握も容易となる。
制御内容決定手段は、上記機能が空調装置である場合、意図強度パラメータの絶対値が大きいほど空調出力レベルが増大するように動作内容を決定するものとすることができる。ユーザーが体感的にどの程度「暑い」ないし「寒い」と感じているかを、対応する意図強度パラメータ値の絶対値及び符号(負であれば「暑い」、正であれば「寒い」)により把握でき、空調(暖房ないし冷房)の出力レベルを、ユーザーごとの適正状態にいち早く導くことができる。また、ユーザーの精神状態が高揚したものとなるほど設定温度が低くなるように、空調装置の動作出力内容を決定することができる。過度に精神状態が高揚している場合は体温も上昇しがちであり、これを空調温度の低減により、文字通りクールダウンすることが可能となる。他方、精神状態が落ち込んでいる場合は設定温度が上昇し、発汗や血行が促進され、気分ないし体調の高揚に導くことができる。
また、機能がカーオーディオシステムである場合、制御内容決定手段は、意図強度パラメータの絶対値が大きいほどが大きいほど出力音量が増大するように動作内容を決定するものとできる。車内騒音レベルが高くうるさい場合はオーディオ出力が増大し、騒音を音楽に埋没させ、音楽の聴き取りを容易にすることができる。また、意図強度パラメータの絶対値に応じてカーオーディオシステムから出力させる音楽ソースの選曲内容を変更するものこともできる。これにより、その都度体調や精神状態に応じた適正な選曲を行なうことができ、例えば、個々の体調ないし精神状態においてどのような音楽ソース(曲)が適当であるかを経験的に(例えば、ユーザーの選曲統計情報などにより)見出して、曲目とユーザー状態指数(あるいは前述の差分値)との関係を一義的に定めて記憶しておけば、意図強度パラメータ値に応じた選曲内容の適正化を容易に図ることができる。
また、機能が車内照明装置である場合、制御内容決定手段は、意図強度パラメータの絶対値が大きいほど照明光量が増大するように動作内容を決定するものとすることができる。例えば、ユーザーの精神状態が高揚したものとなるほど短波長側の照明色(例えば、薄緑、青色、水色、青みの白色など)となるように、車内照明装置の動作出力内容を決定できる。これらの照明色は、いわば寒色系であり、高ぶった精神状態を和らげて落ち着かせる効果があるとともに、車内滞在環境を爽快に演出することができる。一方、これとは逆に、精神状態が落ち込んでいる場合は照明色が長波長側(黄色、アンバー、赤色、ピンク、あるいはこれらの色彩を帯びた白色光)にシフトするように、車内照明装置の動作出力内容を決定できる。これらの照明色は暖色系であり、気分の高揚ないしは温かみのある演出によりリラックス効果に優れる。
次に、意図強度パラメータ演算手段は、自動車の複数の登録ユーザーを序列順位及び各ユーザーの意図強度パラメータ補正内容と対応付けて記憶するユーザー登録手段と、自動車に乗り込むユーザーを特定するユーザー特定手段を有するものとでき、特定されたユーザーのうち序列順位の上位に位置するユーザーの意図強度パラメータ補正内容を優先する形で、該意図強度パラメータ補正内容を用い意図強度パラメータ値を補正しつつ演算するものとすることができる。複数の登録ユーザーに序列順位をつけておき、実際に自動車を利用するユーザーが複数特定された場合に、それらユーザーのうち序列順位の最も高いユーザーの意図強度パラメータ補正内容が採用されるので、序列順位の上位のユーザーの意向がもてなし内容に的確に反映され、そのユーザーをVIP的にもてなすことができる。
意図強度パラメータ演算手段は、自動車に乗り込むユーザーの性格種別を特定するユーザー性格種別特定手段を有し、特定されたユーザーの性格種別に応じて意図強度パラメータ値を補正しつつ演算するものとできる。ユーザーの性格種別に応じてもてなし内容を微調整することができ、よりきめ細かい対応が可能となる。
以下、本発明の実施の形態を添付の図面を用いて詳しく説明する。図1は、本発明の一実施形態を示す自動車用ユーザーもてなしシステム(以下、単に「システム」ともいう)100の概念ブロック図である。該システム100は、種々のもてなし動作部502〜517,534,541,548,549,550,551,552,1001Bが接続された第一のコンピュータからなるもてなし実行制御部3と、種々のセンサ・カメラ群518〜528が接続された第二のコンピュータからなるもてなし意思決定部2とからなる自動車側搭載部100を、その要部とする形で構成されている。第一のコンピュータと第二のコンピュータは、いずれもCPU,ROM,RAMを備え、ROMに格納された制御ソフトウェアを、RAMをワークメモリとして実行することにより、後述の種々の機能を実現する。
上記システム100においては、ユーザーが自動車に向けて接近し、該自動車に乗り込み、該自動車を運転し又は車内にて滞在し、その後、降車に至るまでのユーザーの自動車利用に係る一連の動作が、予め定められた複数のシーンに区切られる。そして、区切られた複数のシーン毎に、もてなし動作部502〜517,534,541,548,549,550,551,552,1001Bが、ユーザーによる自動車の利用を補助するための、又はユーザーを楽しませるためのもてなし動作を行なう。本実施形態では、車外への音波発生装置としてホーン502、ブザー503が接続されている。また、照明装置(ランプ類)としては、ヘッドランプ504(ビームをハイとローとで切り替え可)、フォグランプ505、ハザードランプ506、テールランプ507、コーナリングランプ508、バックアップランプ509、ストップランプ510、車内照明511及び床下ランプ512が接続されている。また、他のもてなし動作部として、エアコン514、カーオーディオシステム(カーステレオ)515、電動シート・ハンドル516及びサイドミラーやバックミラーなどの角度調整用の駆動部517、カーナビゲーションシステム534、ドア開閉用のアシスト機構(以下、ドアアシスト機構という)541、空気清浄機548、重度体調不良(重度の眠気を催した状態を含む)に対する気付け・覚醒用成分の発生部549(例えば、運転用のハンドルの中心部に、運転者の顔付近を目指す形で気付け・覚醒用成分(例えば、アンモニアを含有するもの)を噴出するように取り付けられる)、運転者に注意喚起したり眠気から覚醒させるためのシートバイブレータ550(シート底部あるいは背もたれ部に埋設される)、ハンドルバイブレータ551(ハンドルの軸に取り付けられている)、車内騒音低減用のノイズキャンセラ1001Bが接続されている。
図2Bは、車内照明511の構成例を示すもので、各々固有の照明色からなる複数の照明部(本実施形態では、赤系照明511r、アンバー系照明511u、黄系照明511y、白系照明511w及び青系照明511bからなる)を有する。これらの照明は、もてなし意思決定部2からもてなし実行制御部3を経て入力される制御指令信号を受けて、指定されたものが選択され、制御指令信号に従い種々の点灯パターンにて点灯制御される。図3は、ユーザーの性格種別に応じて定められた点灯制御データ402の構成例を示すもので、もてなし意思決定部2のROMに記憶され、制御ソフトウェアにより随時読み出されて使用される。例えば、活動的な性格(SKC1(図11参照))に対しては、赤系照明511rを選んでこれをフラッシュ点灯(最初のみ、その後連続点灯)させ、おとなしい性格(SKC2)に対しては、アンバー系照明511uを選んでフェードイン点灯させる、などであるが、これはほんの一例である。
なお、照明装置は、白熱電球、蛍光ランプのほか、発光ダイオードを用いた照明装置を採用することも可能である。特に、赤色系(R)、緑色系(G)、青色系(B)の3原色の発光ダイオードを組み合わせることにより、種々の照明光を簡単に得ることができる。図4は、その回路構成の一例を示すもので、赤色系(R)、緑色系(G)、青色系(B)の各発光ダイオード3401が電源(Vs)に接続され、各々トランジスタ3402でスイッチング駆動される。このスイッチングは、コンパレータ3403に入力される三角波(のこぎり波でもよい)の周期と、指令信号の電圧レベルとによって定まるデューティ比によりPWM制御される。各色の発光ダイオード3401への指令信号の入力波形は、各々独立に変更可能であり、3つの発光色の混合比率に応じて任意の色調の照明色が得られ、また、色調や照明強度パターンを、指令信号の入力波形に応じて経時的に変化させることも可能である。なお、各色の発光ダイオード3401の発光強度は、上記のようにPWM制御する方式のほか、連続点灯を前提として駆動電流レベルにて調整することも可能であるし、これとPWM制御とを組み合わせた方式も可能である。
図5には、赤色系(R)、緑色系(G)、青色系(B)の各光の混合比(デューティ比による)と、視認される混合光の色との関係を示す(ここで示す混合比は、「1」を設定された色に対する他色の相対混合比で表わしており、この相対混合比を基準に絶対照明強度は別途設定される)。それぞれ、制御時に発光色を選択するためのインデックス(0〜14)が付与され、制御参照情報としてもてなし実行制御部3のROM(あるいは、もてなし意思決定部2側の記憶装置535:制御に必要な情報を、通信によりもてなし実行制御部3に送信すればよい)に記憶される。白色照明光は使用頻度が高く、着色された照明光との間でスムーズに制御移行できるように、白色を規定するインデックスが、該インデックスの配列上にて周期的に複数現れるように定められている。
特に中間に位置する白色(インデックス:6)を境として、その前後に、暖色系(うす黄→黄→赤)と寒色系(うす青→青→青紫)の各色が配列し、ユーザーの体調状態や精神状態に応じて、白色照明光から暖色系照明光ないし寒色系照明光にスムーズに切り替えることができるようになっている。ここで、演出等を特に考慮しない通常時の照明色は白色を中心に設定され、これに精神状態指数(数値が大きいほど高揚した精神状態であることを示す)の値が対応付けられている。中庸の精神状態(精神状態指数:5)では白色が選択され、精神状態指数が大きくなるほど(つまり、高揚した精神状態となるほど)青系、すなわち短波長側に、精神状態指数が小さくなるほど(つまり、沈んだ精神状態となるほど)赤系、すなわち長波長側に照明色が変化するように定められている。
次に、図6は、カーオーディオシステム515の構成例を示すもので、もてなし意思決定部2からもてなし実行制御部3を経て、曲特定情報やボリュームコントロール情報などの、もてなし用曲演奏制御情報が入力されるインターフェース部515aを有する。インターフェース部515aには、デジタルオーディオ制御部515e、多数の音楽ソースデータを格納した音楽ソースデータベース515b,515c(前者はMP3データベース、後者はMIDIデータベース)が接続されている。曲特定情報に基づいて選曲された音楽ソースデータはインターフェース部515aを経てオーディオ制御部に送られ、そこでデジタル音楽波形データにデコードされ、アナログ変換部515fでアナログ変換された後、プリアンプ515g及びパワーアンプ515hを経て、もてなし用曲演奏制御情報により指定されたボリュームにてスピーカ515jから出力される。
図1に戻り、電動ドア機構541は、乗降用のスライドドアあるいはスイング式ドアを、図示しないモータ(アクチュエータ)により自動開閉ないし開閉パワーアシストするためのものである。
図7は、ノイズキャンセラ1001Bの一構成例を示す機能ブロック図である。該ノイズキャンセラ1001Bの要部は、騒音抑制手段をなす能動的騒音制御機構本体2010と、必要音強調部(手段)2050とを含む。能動的騒音制御機構2010は、車内に侵入する騒音を検出する車内騒音検出マイク(ノイズ検知マイク)2011と、車内騒音検出マイク2011が検出する騒音波形と逆位相の騒音制御用波形を合成する騒音制御用波形合成部(制御音発生部)2015とを有する。騒音制御用波形は騒音制御用スピーカ2018から出力される。また、騒音制御用音波が重畳後の車内音に含まれる消し残し騒音成分を検出するエラー検出マイク2012と、消し残し騒音のレベルが縮小する方向にフィルタ係数が調整される適応フィルタ2014も設けられている。
車両自身に音源を有する車内騒音としては、エンジン音、路面音、風切り音などがあり、車内騒音検出マイク2011は、複数個のものが、個別の車内騒音の検知に適した位置に分散配置されている。車内騒音検出マイク2011は、搭乗者Jから見てそれぞれ違う位置にあり、マイク2011が拾う位置での騒音波形と、搭乗者Jが実際に聞く騒音波形との間には少なからぬ位相差がある。そこで、この位相差を合せこむために、車内騒音検出マイク2011の検知波形は適宜、位相調整部2013を介して制御音発生部2015に与えられる。
次に、必要音強調部2050は、強調音検知マイク2051及び必要音抽出フィルタ2053を含んで構成され、その必要音の抽出波形が制御音発生部2015に与えられる。ここでも、車内騒音検出マイク2011と同様の事情により、位相調整部2052が適宜設けられる。強調音検知マイク2051は、車外の必要音を取り込むための車外用マイク2051と、車内の必要音を取り込むための車内用マイク2051とからなる。いずれも周知の指向性マイクにて構成でき、車外用は、音検知の指向性の強い角度域が車外方向を向き、指向性の弱い角度域が車内方向を向くように取り付けられている。本実施形態では、マイク2051の全体が車外に出るように取り付けられているが、指向性の弱い角度域が車内側に位置し、指向性の強い角度域のみが車外に出るように、車内と車外とにまたがって取り付けることも可能である。他方、車内用マイク2051は、各座席に対応して、搭乗者の会話音を選択的に検知できるよう、音検知の指向性の強い角度域が搭乗者の正面側を向き、指向性の弱い角度域が反対方向を向くように取り付けられる。これら強調音検知マイク2051は、いずれも、その入力波形(検出波形)のうち必要音成分を優先的に通過させる必要音抽出フィルタ2053に接続されている。なお、図6のカーオーディオシステム515のオーディオ入力が車内必要音音源2019として利用されるようになっている。このオーディオ機器のスピーカ出力音(スピーカは騒音制御用スピーカ2018と兼用してもよいし、別途設けてもよい)は、騒音制御用波形が重畳されても相殺されないように制御される。
図8は、図7の機能ブロック図に対応したハードウェアブロック図の一例を示すものである。第一DSP(Digital Signal Processor)2100は騒音制御用波形合成部(制御音発生部)2015及び適応フィルタ2014(さらには位相調整部2013)を構成するものであり、車内騒音検出マイク2011がマイクアンプ2101及びA/D変換器2102を介して、また、騒音制御用スピーカ2018がD/A変換器2103及びアンプ2104を介してそれぞれ接続されている。他方、第二DSP2200は、抑制すべき騒音成分の抽出部を構成するものであり、エラー検出マイク2012がマイクアンプ2101及びA/D変換器2102を介して、また、オーディオ入力など抑制対象外の音声信号源、すなわち必要音音源2019がA/D変換器2102を介してそれぞれ接続されている。
必要音強調部2050は、必要音抽出フィルタ2053として機能する第三DSP2300を有し、必要音検知マイク(強調音検知マイク)2051がマイクアンプ2101及びA/D変換器2102を介して接続されている。そして、第三DSP2300はデジタル適応フィルタとして機能する。以下、フィルタ係数の設定処理について説明する。
緊急車両(救急車、消防車、パトカーなど)のサイレン音、踏み切り警報器音、後続車のクラクション音、ホイッスル音、人間の叫び声(子供の泣き声や女性の叫び声など)を、注意ないし危険認識すべき必要車外音(強調音)として定め、それらのサンプル音をディスク等に記録して、読み取り再生可能な参照強調音データとしてライブラリー化しておく。また、会話音については、複数人の個別のモデル音声を、同様に参照強調音データとしてライブラリー化しておく。なお、自動車への搭乗候補者が固定的に定められている場合には、モデル音声を、そのモデル音声自身の発声による参照強調音データとして用意しておけば、その搭乗候補者が乗車した場合の会話音の強調精度を高めることができる。
そして、フィルタ係数に適当な初期値を与え、強調音検知マイク2051による強調音検出レベルを初期値に設定する。次いで、各参照強調音を読み出して出力し、強調音検知マイク2051により検出する。そして、適応フィルタの通過波形を読み取り、参照強調音として通過できた波形のレベルを測定する。この検知レベルが目標値に達するまで上記の処理を繰り返す。このようにして、車外音及び車内音(会話音)の双方について、参照強調音を次々と取り替えて、通過波形の検知レベルが最適化されるよう、フィルタ係数を学習処理させる。上記のようにフィルタ係数が調整された必要音抽出フィルタ2053により、強調音検知マイク2051からの入力波形から必要音を抽出し、その抽出強調音波形を第二DSP2200に転送する。第二DSP2200は、車内騒音検出マイク2011の検知波形から、必要音音源(ここではオーディオ出力)2019からの入力波形と、第三DSP2300からの抽出強調音波形を差分演算する。
第一DSP2100に組み込まれるデジタル適応フィルタのフィルタ係数は、システムの使用に先立って初期化が行われる。まず、抑制対象となる種々の騒音を定め、それらのサンプル音をディスク等に録音して、再生可能な参照騒音としてライブラリー化しておく。そして、フィルタ係数に適当な初期値を与え、エラー検出マイク2012による消し残し騒音レベルを初期値に設定する。次いで、参照騒音を順次読み出して出力し、車内騒音検出マイク2011により検出する。適応フィルタを通過した車内騒音検出マイク2011の検出波形を読み取り、これを高速フーリエ変換することにより、騒音検出波形を、各々波長の異なる正弦波素波に分解する。そして、各正弦波素波の位相を反転させた反転素波を生成し、これを再度合成することにより、騒音検出波形と逆位相の騒音制御用波形が得られる。これを騒音制御用スピーカ2018から出力する。
適応フィルタの係数が適性に定められていれば、車内騒音検出マイク2011の波形からは騒音成分だけが効率良く抽出されているはずなので、これに基づいて逆相合成された騒音制御用波形により車内騒音を過不足なく相殺することができる。しかし、フィルタ係数の設定が適性でなければ相殺されない波形成分が消し残し騒音成分となって生ずる。これは、エラー検出マイク2012により検出される。消し残し騒音成分のレベルは目標値と比較され、目標値以下になっていなければフィルタ係数を更新し、これが目標値以下になるまで同様の処理を繰り返す。このようにして、参照騒音を次々と取り替えて、消し残し騒音成分が最小化されるよう、フィルタ係数を学習処理させる。そして、実使用時には、消し残し騒音成分を定常的にモニタリングし、常時これが最小化されるようにフィルタ係数をリアルタイム更新しつつ、上記と同様の処理を行なうことで、必要な音波成分を残しつつ、車内の騒音レベルのみを効果的に低減することができる。
図1に戻り、ユーザー側端末装置1は、本実施形態では周知の携帯電話として構成されている(以下、「携帯機1」ともいう)。この携帯機1には、着信音出力や音楽演奏のために、着信音データや音楽データ(MP3データあるいはMIDIデータ:着信音としても使用される)がダウンロード可能とされており、図示しない楽音合成回路にて該データに基づく演奏出力が可能である。
また、もてなし意思決定部2には、次のようなセンサ・カメラ群が接続されている。これらの一部はシーン推定情報取得手段として機能し、また、ユーザー生体特性情報取得手段として機能するものである。
・車外用カメラ518:自動車に接近してくるユーザーの姿を撮影する。ユーザーの仕草や顔の表情などを静止画ないし動画として取得する。ユーザーを拡大して撮影するために、望遠レンズを用いた光学式ズーム方式や、撮影画像をデジタル的に拡大するデジタルズーム方式を併用することができる。
・赤外線センサ519:自動車に接近するユーザー、ないし乗車したユーザーの顔部分からの放射赤外線に基づき、サーモグラフィーを撮影する。ユーザー生体特性情報取得手段である体温測定部として機能し、その時間的変化波形を測定することにより、ユーザーの体調状態ないし精神状態を推定することができる。
・着座センサ520:ユーザーが座席に着座したか否かを検出する。自動車のシートに埋設される近接スイッチ等で構成することができる。このほか、シートに着座したユーザーを撮影するカメラにより着座センサを構成することもできる。この方法であると、シートに荷物など、人以外の荷重源が載置された場合と、人が着座した場合とを相互に区別でき、例えば人が着座した場合にだけもてなし動作を行なう、といった選択制御も可能となる。また、カメラを用いれば、着座したユーザーの動作を検出することも可能であり、検出情報をより多様化することができる。なお、シート上でのユーザーの動作を検出するには、シートに装着した感圧センサを用いる方法もある。
さらに、本実施形態では、図9に示すように、シートの座部及び背もたれ部に複数分散埋設された着座センサ520A,520B,520Cの検知出力に基づいて、着座したユーザー(運転者)の姿勢変化を波形検出するようにしている。いずれも着座圧力を検出する圧力センサで構成され、具体的には、正面を向いて着座したユーザーの背中の中心に基準センサ520Aが配置される。座部のセンサは、それよりもシート左側に偏って配置された左側センサ520Bと、シート右側に偏って配置された右側センサ520Cとからなる。基準センサ520Aの出力は、差動アンプ603及び604にて、それぞれ右側センサ520Cの出力及び左側センサ520Bの出力との差分が演算され、さらにそれらの差分出力同士が、姿勢信号出力用の差動アンプ605に入力される。その、姿勢信号出力Vout(第二種生体状態パラメータ)は、ユーザーが正面を向いて着座しているときほぼ基準値(ここではゼロV)となり、姿勢が右に偏ると右側センサ520Cの出力が増加し、左側センサ520Cの出力が減少するので負側にシフトし、姿勢が左に偏るとその逆となって正側にシフトする。なお、右側センサ520C及び左側センサ520Bは、いずれも加算器601,602により、座部側のセンサ出力と背もたれ側のセンサ出力との加算値として出力されているが、座部センサ出力と背もたれセンサ出力の差分値を出力するようにしてもよい(このようにすると、運転者が前のめりになったとき背もたれセンサ側の出力が減少し、その差分値が増大するので、より大きな姿勢の崩れとして検出することができる。
・顔カメラ521:着座したユーザーの顔の表情を撮影する。例えばバックミラー等に取り付けられ、フロントグラス側から運転者を斜め上方から、シートに着座したユーザー(運転者)の顔を含む上半身を撮影する。その画像から顔部分の画像を切り出し、ユーザーの種々の表情を予め撮影して用意されたマスター画像と比較することにより、図10に示す種々の表情を特定することができる。精神状態ないし体調状態のいずれにおいても、状態が良好な順に表情の序列を決めておき、その序列に従って得点付与することにより(例えば、精神状態の場合、安定を「1」、注意散漫・不安を「2」、興奮・怒りを「3」とするなど)、表情を離散的な数値パラメータ(第二種生体状態パラメータ)として使用することができ、その時間変化を離散的な波形として測定できるので、当該波形に基づき、精神状態ないし体調状態の推定を行なうことも可能である。なお、顔を含む上半身の画像形状と、その画像上での重心位置から、運転者の姿勢の変化を検出することもできる。すなわち、重心位置の変化波形は姿勢の変化波形として使用でき(第二種生体状態パラメータ)、当該波形に基づき、精神状態ないし体調状態の推定を行なうことも可能である。なお、もてなし制御に使用するユーザー生体状態情報の取得源(ユーザー生体特性情報取得手段)としての機能以外に、バイオメトリックスによるユーザーの本人認証用にも使用される。また、目のアイリスの向きを拡大検出することで、顔や視線の方向を特定することもできる(例えば、やたらに時計の方向を見る場合は、「時間を気にして焦っている」と推定するなど)。また、視線方向の角度の時間的変化波形(真正面を向いているときを基準方向として、その基準方向に対する左右へのぶれ角度を波形変化として検出する)に基づき(第二種生体状態パラメータ)、運転者の体調状態あるいは精神状態を推定するのにも使用される。
・マイクロフォン522:ユーザーの声を検出する。これも、ユーザー生体特性情報取得手段として機能させうる。
・感圧センサ523:自動車のハンドルやシフトレバーの、ユーザーによる把握位置に取り付けられ、ユーザーの握り力や、握ったり放したりの繰り返し頻度などを検出する(ユーザー生体特性情報取得手段)。
・血圧センサ524自動車のハンドルのユーザー把握位置に取り付けられる(ユーザー生体特性情報取得手段)。血圧センサ524の検出する血圧値はその時間的変化が波形として記録され(第一種生体状態パラメータ)、その波形に基づいて運転者の体調状態ないし精神状態の推定に使用される。
・体温センサ525:自動車のハンドルのユーザー把握位置に取り付けられた温度センサからなる(ユーザー生体特性情報取得手段)。体温センサ525の検出する体温値はその時間的変化が波形として記録され(第一種生体状態パラメータ)、その波形に基づいて運転者の体調状態ないし精神状態の推定に使用される。
・皮膚抵抗センサ545:発汗等による体表面の抵抗値を測定する周知のセンサであり、自動車のハンドルのユーザー把握位置に取り付けられる。皮膚抵抗センサ545の検出する皮膚抵抗値はその時間的変化が波形として記録され(第一種生体状態パラメータ)、その波形に基づいて運転者の体調状態ないし精神状態の推定に使用される。
・網膜カメラ526:ユーザーの網膜パターンを撮影し、バイオメトリックスによるユーザーの本人認証用に使用される。
・アイリスカメラ527:バックミラー等に取り付けられ、ユーザーのアイリス(虹彩)の画像を撮影し、バイオメトリックスによるユーザーの本人認証用に使用される。アイリスの画像を用いる場合、その模様や色の個人性を利用して照合・認証を行なう。特にアイリス模様は後天的形成要素であり、遺伝的影響度も低いので一卵性双生児でも顕著な相違があり、確実に識別できる利点がある。アイリス模様を用いた認証方式は、認識・照合を迅速に行なうことができ、他人誤認率も低い特徴がある。また、アイリスカメラにより撮影された運転者の瞳孔寸法(第二種生体状態パラメータ)の時間的変化に基づいて、体調状態あるいは精神状態の推定を行なうことができる。
・静脈カメラ528:ユーザーの静脈パターンを撮影し、バイオメトリックスによるユーザーの本人認証用に使用される。
・ドアカーテシスイッチ537:ドアの開閉を検知する。乗り込みシーン及び降車シーンへの移行を検出する、シーン推定情報取得手段として使用される。
また、もてなし意思決定部2には、エンジン始動を検知するためのイグニッションスイッチ538の出力も分岐入力されている。また、湿度センサ546、室温センサ563、日照センサ564(エアコン514の制御用)、車外ノイズセンサ562(ノイズキャンセラ1001Bの制御用)、車内の明るさレベルを検出する照度センサ539、車内の音響レベルを測定する音圧センサ540も、もてなし意思決定部2に同様に接続されている。
また、もてなし意思決定部2には、タッチパネル(カーナビゲーションシステム534のモニタに重ねられたタッチパネルで兼用してもよい:この場合は、入力情報はもてなし実行制御部3からもてなし意思決定部2に転送される)等で構成された入力部529と、もてなし動作情報記憶部として機能するハードディスクドライブ等で構成された記憶装置535とが接続されている。
他方、もてなし実行制御部3には、車両位置情報を取得するためのGPS533(カーナビゲーションシステム534においても使用する)、ブレーキセンサ530、車速センサ531及び加速度センサ532も接続されている。
もてなし意思決定部2は、センサ・カメラ群518〜528の1又は2以上のものの検出情報から、ユーザーの性格、精神状態及び体調の少なくともいずれかを含むユーザー生体状態情報を取得し、その内容に応じてどのもてなし動作部にどのようなもてなし動作をさせるかを決定して、これをもてなし実行制御部3に指令する。もてなし実行制御部3は、これを受けて、対応するもてなし動作部502〜517,534,541,548,549,550,551,552,1001Bにもてなし動作を実行させる。すなわち、もてなし意思決定部2ともてなし実行制御部3とが互いに協働して、取得されたユーザー生体状態情報の内容に応じてもてなし動作部502〜517,534,541,548,549,550,551,552,1001Bの動作内容を変化させる機能を実現する。もてなし実行制御部3には、自動車側通信手段(ホスト側通信手段)をなす無線通信装置4が接続されている。該無線通信装置4は、自動車のユーザーが携帯するユーザー側端末装置(携帯機)1と無線通信網を介して通信する。
一方、カーオーディオシステム515には、ユーザーが手動で操作する操作部515d(図6)が設けられ、ここからの選曲データの入力により、所望の音楽ソースデータを読み出して演奏することもできる。また、操作部515dからのボリューム/トーンコントロール信号は、プリアンプ515gへ入力される。この選曲データは、インターフェース部515aから、図1のもてなし実行制御部3を経てもてなし意思決定部2へ転送され、これに接続された記憶装置535の選曲実績データとして蓄積される。その蓄積内容に基づいて、後述のユーザ−性格判定処理が行われる(つまり、カーオーディオシステム515の操作部515dは、ユーザー生体特性情報取得手段の機能を構成しているといえる)。
図11は、上記音楽ソースデータのデータベース構造の一例を示すものである。該データベース401には、曲ID、曲名及びジャンルコードと対応付ける形で音楽ソースデータ(MP3又はMIDI)が記憶されている。また、各音楽ソースデータには、その音楽を選曲したユーザーについて推定される性格種別(「活動的」、「おとなしい」、「楽観的」、「悲観的」、「頽廃的」、「体育会系」、「知性派」、「ロマンチスト」など)を示す性格種別コード、同じく年齢コード(「幼児」、「子供」、「ジュニア」、「青年」、「壮年」、「中点」、「熟年」、「敬老」、「年齢無関係」など)、性別コード(「男性」、「女性」及び「性別無関係」)が個々に対応付けて記憶されている。性格種別コードはユーザー性格特定情報の一つであり、年齢コード及び性別コードは、性格とは無関係なサブ分類である。ユーザーの性格が特定できても、年齢層や性別に合わない音楽ソースを選択したのでは、ユーザーを楽しませる「もてなし」としての効果は半減する。従って、ユーザーに提供する音楽ソースの適性をより絞り込むために、上記のようなサブ分類付与は有効である。
一方、各音楽ソースデータには、曲モードコードも個々に対応付けて記憶されている。曲モードコードは、その曲を選曲したユーザーの精神状態や体調と、当該曲との連関を示すデータであり、本実施形態では、「盛り上げ系」、「爽快系」、「温和・癒し系」、「ヒーリング・α波系」等に分類されている。なお、性格種別コード、年齢コード、性別コード、ジャンルコード及び曲モードコードは、各ユーザーに固有のもてなし内容を選定する際に参照するデータなので、これらを総称してもてなし参照データと呼ぶことにする。
さらに、各音楽ソースデータには、後述する体調指数PLと精神状態指数SLとが個々に対応付けて記憶されている。これらの指数は、該指数が示す体調ないし精神状態に適合する音楽ソースデータを特定するために事前に付与されたものである。その使用方法については後述する。
次に、本実施形態においてシーンは、接近シーン、乗車シーン、準備シーン、運転シーン、滞在シーン、降車シーン及び離脱シーン等が定められている。シーンの特定方法については、特許文献1〜3に詳細に開示されているのでここでは繰り返さないが、例えば、ユーザー側の図示しないGPSと、自動車側のGPS533とにより、自動車と、当該自動車外に位置するユーザーとの相対距離及びその変化を特定し、ユーザーが自動車へ予め定められた距離以内に接近したことを検出することでシーン特定が可能である。また、乗り込みシーンと降車シーンとは、ドアカーテシスイッチ537のドア開検知出力に基づいて特定する。また、各シーンに対応した個別シーンフラグが設けられ、時系列順に到来順序が定められた各シーンが到来する毎に、そのシーンに対応するフラグを「到来(フラグ値1)」に設定してゆくことで、現在どのシーンまで進んできているかを特定できる。また、準備シーンとシーン運転/滞在シーンとは、いずれも前述の着座センサがユーザーを検出しているか否かにより特定するが、自動車に乗り込んでイグニッションスイッチ538がONになるまでの間、あるいは、イグニッションスイッチ538がONにならず、かつ一定以上の着座継続が確認されるまでの間は、準備シーンとして認識される。また、離脱シーンへの移行は、降車シーンのあと、ドアカーテシスイッチ537がドア閉を検知することで識別される。
各もてなし動作は、対応するもてなし動作部の動作制御アプリケーションにより制御される。これらの動作制御アプリケーションはもてなし実行制御部3のROM(あるいは記憶装置535)内に記憶されている。
以下、自動車用ユーザーもてなしシステム(以下、単に「システム」ともいう)100の動作について説明する。図12は、システム100における、もてなし意思決定からもてなし動作実行に至る一連の処理の全体アルゴリズムを概念的に示すものである(これら3つの図は、対応する丸数字を接続子として、一つながりの図として読まれるべきものである)。もてなし主処理は、「目的推定(δ1)」、「個性適合(δ2)」、「状態適合(δ3)」、「演出対応(δ4)」、「機能選択(δ5)」、「駆動(δ6)」の各ステップからなる。
まず、「目的推定(δ1)」では、ユーザー位置検出(β1)及びユーザー動作検出(β2)により、現在のシーンを推定する。ユーザー位置検出(β1)は、具体的には、ユーザーと自動車との相対的位置関係(α1)を把握・特定することにより行なう。また、ユーザーの接近方向(α2)も考慮可能である。他方、ユーザー動作検出(β2)は、基本的には、ドアの開閉操作やシートへの着座など、シーン決定用に固定的に定められた動作を検出するセンサ類(シーン推定情報取得手段)の出力を用いて行なう(α5)。また、着座継続時間により準備シーンから運転/滞在シーンへの移行検知を行なう場合のように、特定動作の継続時間(α6)も考慮できる。
γ1でシーンが決定されれば、δ1にて、個々のシーンでのもてなし意図を推定する。「もてなし意図の推定」とは前述のごとく、刻々変化するユーザーの体調状態や精神状態に対し、その都度最も適合するもてなし内容、つまり、ユーザーが最も欲する種別のもてなし内容を推定することである。具体的には、図19及び図20に例示した意図推定テーブル371と図21に例示した原理作用テーブル372とを併用し、シーン毎に区分された安全性、利便性(楽に)及び快適性の分類項目毎に、ユーザーの体感、すなわち、触覚系、視覚系、嗅覚系及び聴覚系のそれぞれを対象とする制御対象環境項目に適合するもてなし意図が存在するか否かを検索する。もてなし意図が検索されれば、図22に例示する、対応するシーン別の機能抽出テーブル373を参照し、検索されたもてなし意図に対応するもてなし機能を抽出する。
また、δ2では、もてなし内容をユーザーの個性に適合させる処理となる。これは、具体的には、後述するユーザーの性格判定処理と、判定された性格に応じて、個々のもてなし処理に適正な重み付けをすること、つまり、個々のユーザーの性格に適合するよう、複数のもてなし動作の組み合わせを適宜カスタマイズしたり、あるいは、もてなし動作の程度を変更したりすることを目的とするものである。個性の特定には性格検出処理β4が必要である。性格検出処理β4は、アンケート処理(α7)など、ユーザー自身の入力により性格分類を取得して行なう方法と、ユーザーの動作、行為や思考パターン、あるいは表情などから、より分析的に性格分類を決定する方法との双方を用いることができる。後者については、音楽選曲の統計から性格分類を決定す方式(特許文献1,2)を採用している(α8:W2も参照)。
δ3は、もてなし内容をユーザーの精神/体調状態に適合させる処理を示す。また、δ4はもてなし演出対応処理であり、δ5は機能選択処理である。すなわち、ユーザー生体特性情報取得手段の検出情報に基づいて、ユーザーの精神状態及び体調を反映した精神/体調情報を取得し、その取得内容に応じてユーザーの精神状態ないし体調状態を推定する。より詳しくは、ユーザーから取得したユーザー生体特性情報から体調指数と精神状態指数とを算出し、さらに、それら体調指数ないし精神状態指数に基づいてユーザー状態指数を演算する。
ユーザー生体特性情報取得手段は、赤外線センサ519(顔色:α17)、顔カメラ521(表情:α9、姿勢:α11、視線:α12、瞳孔径:α13)、血圧センサ524(心拍(心電):α14)などが採用可能であるが、この他にも、運転操作実績を検出するセンサ類(502w、530、531,532;誤操作率:α10)、血圧センサ(α15)、着座センサ520(感圧センサによりシートにかかる体重分布を測定し、運転中の小刻みな体重移動を検出して、運転中の落ち着きが損なわれた判定を行ったり、偏った体重の掛かりかたを検出して、運転者の疲労の程度を判定したりすることができる)。詳細は後述する。
上記のユーザー生体特性情報取得手段からの出力を精神状態や体調状態を示す数値パラメータに置き換え(β5)、その数値パラメータ及びその時間的変化からユーザーの精神状態や体調状態を推定する(γ3,γ4)。その推定結果は、後述の基準意図パラメータ値の決定処理に使用され、該基準意図パラメータ値は、意図推定テーブル371(図19,20)と原理作用テーブル372とを併用したもてなし機能を抽出と制御内容決定処理に使用される。基準意図パラメータは推定された精神状態や体調状態を反映して特有の値に設定され、それに応じて、選択される機能やその制御内容も、推定されるユーザーの精神状態や体調状態に適合するものとなるように適正化される。また、同じシーンのもてなしであっても、ユーザーの性格が異なれば、その性格に適合したもてなし動作となるように微調整され、同じユーザーであっても精神状態や体調に応じて採用される機能の種別や程度が調整される。
照明光の場合を例に取れば、性格によってユーザーの指向する照明色が相違し(例えば、活発なタイプは赤系を、おとなしいタイプは緑や青系を指向)、体調の良し悪しによって照明強度に対する要望(例えば、体調が悪いときは照明による刺激を抑制するため光量を落とす)が相違することが多い。前者では照明光の周波数あるいは波長(赤系→緑系→青系の順に波長が短くなる)を調整するもてなし制御となり、後者は照明光の振幅を調整するもてなし制御となる。また、精神状態は、その両方に関係する因子であり、幾分陽気な精神状態において、さらに気分を盛り上げるために赤系の照明光を採用することもありえるし(周波数調整)、照明光の色を変えず、明るさを増したりすることもありえる(振幅調整)。また、過度に興奮した状態では、気持ちを沈めるために青系の照明光を採用したり(周波数調整)、照明光の色を変えず明るさを減らしたりする(振幅調整)、といった処理が考えられる。音楽の場合は、種々の周波数成分が含まれているのでより複雑であるが、覚醒効果を高めるために、数100Hz〜10kHz程度の高音域の音波を強調したり、逆に気持ちを沈めるために、リラックス時の脳波(α波)の周波数(7〜13Hz:ヒューマンレゾナンス)に、音波の揺らぎの中心周波数を合せこんだ、いわゆるα波系音楽を採用したりするなど、周波数/振幅により制御パターンを同様に把握することができる。
また、図1の照度センサ539(視覚刺激:α18)、音圧センサ(聴覚刺激:α19)などの出力から、現在ユーザーがどの程度の刺激を感じているかに関しての情報(外乱刺激)を得(環境検出:β6)、その外乱刺激値を推定する(γ5)。なお、特定すべき外乱刺激としては、触覚刺激(α20:例えば、ハンドルに取り付けられた感圧センサ523など)、及び嗅覚刺激(α21:嗅覚センサによる)なども併用することができる。また、外乱推定に関しては、ユーザーを取り囲む空間からの間接的刺激、具体的には、高さ(α22)、距離(α23)、奥行き(α24)及び自身ないし同乗者の体格(α25)等を考慮することも可能である(空間検出:β7)。
次に、ユーザー性格分類は、例えば以下のような方法により決定できる。
自動車のユーザーは、図1のもてなし意思決定部2のROM(書換えが可能となるように、フラッシュROMで構成しておくことが望ましい)等に形成されたユーザー登録部600(図2A)に予め登録される。このユーザー登録部は、各ユーザー名(あるいは、ユーザーID(及び暗証番号)と、その性格種別とが互いに対応付けられた形で登録されている。この性格種別は、後述のごとく、ユーザーによる自動車使用継続中に蓄積される、カーオーディオシステムの選曲統計情報に基づいて決定することも可能である。しかし、自動車の使用開始直後など、選曲統計情報の蓄積が不十分な場合、あるいは、操作履歴情報を敢えて収集せずに性格種別を推定したい場合は、性格種別情報又は該性格種別情報を特定するために必要な情報を、ユーザー自身により入力させ、その入力結果に基づいて性格種別を決定するようにしてもよい。
例えば、図1のモニタ536(カーナビゲーションシステム534のモニタで代用してもよい)に性格種別を表示し、ユーザーは自分に適合する性格種別を選んで、入力部529からこれを入力することができる。また、性格種別を直接入力させる代わりに、性格種別判定のためのアンケート入力を行なう方式を採用してもよい。この場合、モニタ536にはアンケートの質問事項を表示し、ユーザーは回答選択肢から回答を選ぶ形で答える(ここでは、選択ボタンで選択肢を構成し、この上に重ねられたタッチパネル529の該当位置に触れて選択入力を行なう)。全ての質問に回答することで、その回答の組み合わせに応じて予め定められた性格種別群から、1つのものが一義的に決定されるようになっている。
なお、ユーザー名を含めたユーザー登録入力も、上記の入力部529からなされ、決定された性格種別、序列順位及び体調系補正係数Dfb,Dfm(後述)とともに図2Aのユーザー登録部600に記憶される。また、これらの一連の入力は、携帯機1から行なうことも可能であり、この場合は、その入力情報を無線により自動車側に転送する。また、ユーザーが自動車購入する際に、入力部529か専用の入力ツールを用いて、ディーラー側で事前にユーザー登録入力を済ませておく方法もある。
カーオーディオシステムの選曲実績の統計情報に基づいて性格種別を決定する事例については、特許文献1〜3に開示されている通りなので、概略を説明する。図6のカーオーディオシステム515においては、ユーザーは操作部515dからの入力により、いつでも好きな曲を選んで演奏を楽しむことができる。ユーザーが自身で選曲した場合は、そのユーザーの特定情報(ユーザー名あるいはユーザーID)と、選曲された音楽ソースデータのIDと、前述のもてなし参照データRD(性格種別コード、年齢コード、性別コード、ジャンルコード及び曲モードコード)とが互いに対応付けられた形で、選曲実績記憶部(図1の記憶装置535内に形成されている)に記憶される。選曲実績記憶部には、ユーザー別に、その選曲実績の統計情報(図1の記憶装置535に記憶されている)が作成される。この統計情報では、選曲データが、性格種別コード別にカウントされ、どの性格種別の曲が最も多く選曲されたかが数値パラメータとして特定される。最も単純な処理としては、選曲頻度が最も高い性格種別を、そのユーザーの性格として特定することが可能である。例えば、統計情報に蓄積されている選曲実績数が一定レベルに到達すれば、例えばユーザー入力により初期設定された性格種別を、統計情報から上記のごとく導かれた性格種別と置き換えるようにすればよい。
なお、自動車の使用に先立っては、ユーザーの認証が必要である。特にユーザーが複数登録されている場合は、ユーザーによって性格種別が異なるものに設定され、もてなしの内容も異なるものとなるからである。最も簡単な認証方式は、携帯機1からユーザーIDと暗証番号を自動車側に送信し、これを受けたもてなし意思決定部2が、登録されているユーザーIDと暗証番号との照合を行なう方法である。また、携帯機1に設けたカメラにより顔写真の照合を行ったり、音声認証、指紋を用いた認証など、バイオメトリックス認証方式を採用することもできる。他方、自動車へのユーザーの接近時は、ユーザーIDと暗証番号とを用いた簡略な認証に留め、開錠後、自動車に乗り込んでから、前述の顔カメラ521、マイクロフォン522、網膜カメラ526、アイリスカメラ527あるいは静脈カメラ528などによるバイオメトリックス認証を行なうようにしてもよい。
以下、本発明のもてなしシステムの具体的な動作例について、運転/滞在シーンを例に取り、図13のフローチャートに従い説明する。まず、着座しているユーザーの精神状態と体調状態を推定する(図12:γ3,γ4)。具体的な方法については、特許文献1〜3に詳細に開示されており、ここでは概略のみを説明する。基本的には、取得した生体状態パラメータの時間的変化を測定し、その変化波形から精神状態と体調状態とを推定する方式を採用している。
生体状態パラメータとして「表情」を採用する場合は、図1の顔カメラ521を用い、所定のサンプリング間隔で顔画像を撮影し、マスター画像と順次比較することにより、表情種別(例えば、「安定」、「不安・不快」、「興奮・怒り」)を識別しつつ、その時間的変化を「変化小」、「増」、「微増」あるいは「急増」等として判定する。
生体状態パラメータとして「体温」を採用する場合は、体温センサ525(赤外線センサ519)を用いる。具体的には、一定時間間隔で定められたサンプリングタイミングが到来する毎に検出される体温値をサンプリングし、波形記録するとともに周知の高速フーリエ変換処理を行なって周波数スペクトラムを求め、そのスペクトラムの中心周波数(あるいはピーク周波数)fを演算する。また、波形を一定数の区間に分割し、区間別の体温平均値を演算する。そして、区間毎に、平均体温値を波形中心線として積分振幅を演算し、各区間の積分振幅を平均し、波形振幅の代表値として決定する。決定された周波数fが上限閾値fu0より大きくなっているかどうかを調べ、大きくなっていれば監視中の体温変化が「急」であると判定する。また、周波数fが下限閾値fL0(>fu0)より小さくなっているかどうかを調べ、小さくなっていれば監視中の体温変化が「緩」であると判定する。また、fu0≧f≧fL0ならば、監視中の体温変化は「標準」であると判定する。また、積分振幅A(平均値)の値は閾値A0と比較し、A>A0であれば、監視中の平均体温レベルは「変動」状態にあると判定する。また、A≦A0であれば、監視中の平均体温レベルは「維持(安定)」状態にあると判定する。
生体状態パラメータとして「血圧」を採用する場合は、血圧センサ524により検出される血圧波形の中心周波数(あるいはピーク周波数)fと、区間別の積分振幅A1,A2の平均値Aを演算する。周波数fが上限閾値fu0より大きくなっていれば監視中の血圧変化が「急」であると判定し、下限閾値fL0(>fu0)より小さくなっていれば「緩」であると判定し、fu0≧f≧fL0ならば「標準」であると判定する。また、振幅Aを閾値A0と比較し、A≦A0であれば、監視中の平均血圧レベルは「維持」状態にあると判定し、そうでなければ「変動」状態にあると判定する。血圧検出値の変化が急で変化の方向が「変動」である場合は、精神状態が「集中力散漫」と推定できる。体調不良に関しては、血圧の変動が緩やかとなる。また、血圧は急激に変動する場合は、「興奮(怒り)状態」であることを推定することができる。
生体状態パラメータとして「皮膚抵抗」を採用する場合は皮膚抵抗センサ545を用いる。ここでも同様に皮膚抵抗値をサンプリングし波形記録するとともに、スペクトラムの中心周波数(あるいはピーク周波数)fと区間別積分振幅A1,A2‥を演算する。そして、各区間の積分振幅Aを時間tに対してプロットし、最小二乗回帰して勾配αを求める。周波数fが上限閾値fu0より大きくなっていれば監視中の皮膚抵抗変化が「急」であると判定し、下限閾値fL0(>fu0)より小さくなっていれば「緩」であると判定する。また、fu0≧f≧fL0ならば「標準」であると判定する。さらに、勾配αの絶対値を閾値α0と比較し、|α|≦α0であれば、監視中の平均皮膚抵抗レベルは「一定」状態にあると判定する。また、|α|>α0の場合、αの符号が正であれば監視中の平均皮膚抵抗レベルは「増」状態にあると判定し、負であれば「減」状態にあると判定する。皮膚抵抗検出値の変化が急で変化の方向が「増」である場合は、精神状態が「集中力散漫」と推定できる。体調不良に関しては、軽度のものは皮膚抵抗の時間的変化にそれ程反映されないが、体調不良が進行すると、皮膚抵抗値の変化が緩やかに増加に転ずるので、「重度体調不良」の推定には有効である。また、皮膚抵抗値は急激に減少する場合は、「興奮(怒り)状態」であることを、かなり高精度に推定することができる。
生体状態パラメータとして「姿勢」を採用する場合は、シートに埋設した複数個の着座センサ520による姿勢信号を用い、姿勢信号波形の中心周波数(あるいはピーク周波数)fと区間別の積分振幅A1,A2‥の平均値Anと分散σ2を演算する。周波数fが上限閾値fu0より大きくなっていれば監視中の姿勢変化速度が「増」であると判定し、下限閾値fL0(>fu0)より小さくなっていれば「減」であると判定する。また、積分振幅Aの平均値Anの値を予め定められた閾値と比較して、姿勢移動量を「変化小」、「微増」および「急増」のいずれかに判定する(平均値Anが大きいほど、姿勢移動量は増加傾向にある)。また、分散σ2の値が閾値以上になっている場合は、姿勢移動が増減傾向にあると判定する。姿勢の変化は、基本被特定状態(「体調不良」、「集中力散漫」及び「興奮状態」)の相違に応じて顕著に異なる傾向を示すので、それらを相互識別する上で特に有効なパラメータである。正常であれば、運転中のユーザーは適度に姿勢を保ちながら運転に必要な緊張感を持続される。他方、体調不良が生ずると、辛さを和らげようとして時折姿勢を変える仕草が目立つようになり、姿勢移動量は微増傾向となる。しかし、体調不良がさらに進行すると(あるいは、極度の眠気に襲われた場合)、姿勢が不安定になってぐらつくようになり、姿勢移動は増減傾向となる。このときの姿勢移動は、体のコントロールが利かない不安定なものなので、姿勢移動の速度は大幅に減少する。また、集中力が散漫になっている場合も、姿勢移動はだらしなく増減するが、体のコントロールは利く状態であるから、姿勢移動速度はそれほど減少しない点に違いがある。他方、興奮状態にある場合は、落ち着きがなくなったり、いらいらしたりして姿勢移動は急増し、移動速度も大きくなる。
生体状態パラメータとして「視線角度」を採用する場合は、前述の顔画像中にて瞳孔位置と顔中心位置とを特定するとともに、顔中心位置に対する瞳孔の正面方向からのぶれを演算して視線角度θを求め、その時間的変化波形を取得する。そして、同様に、波形の中心周波数(あるいはピーク周波数)fと、区間別積分振幅A1,A2の平均値An及び分散σ2とを演算する。周波数fが上限閾値fu0より大きくなっていれば監視中の視線角度θの変化速度が「増」であると判定し、下限閾値fL0(>fu0)より小さくなってれば「減」であると判定し、fu0≧f≧fL0ならば「正常」であると判定する。また、積分振幅Aの平均値Anの値を予め定められた閾値と比較して、視線角度θの変化量を「変化小」、「微増」および「急増」のいずれかに判定する(平均値Anが大きいほど、視線角度θの変化量は増加傾向にある)。さらには、Aの分散σ2の値が閾値以上になっている場合は、視線角度θの変化が増減傾向にある状態、つまり「変調」状態(いわゆる、目がきょろきょろした状態)にあると判定する。視線角度θは、集中力が散漫になった場合に移動量が急増し、また、きょろきょろと変調を来たすようになるので、該集中力散漫と推定する上での有力な決め手となる。また、体調不良が生ずると、その不良の程度に応じて視線移動量が減少するので、体調不良の推定にも有効である。また、興奮状態でも視線移動量は減少するが、体調不良時は、視界に変化が起きた場合に視線がついてゆきにくくなり、移動速度も減少するのに対し、興奮状態では、視界の変化等に鋭敏に反応してこれを睨みつけるなど、時折生ずる視線移動の速度は非常に大きいので、互いに識別することができる。
生体状態パラメータとして「瞳孔径」を採用する場合は、アイリスカメラ527(図1)によりユーザーのアイリスを撮影し、その画像上にて瞳孔径dを決定し、その時間変化波形を取得する。そして、その波形から区間別の瞳孔径平均値dn、区間別の積分振幅A1,A2の平均値An及び分散σ2を演算する。瞳孔径平均値dnが閾値d0より大きくなっていれば「瞳孔開」と判定する。また、大きくなっていなければ分散σ2が閾値σ20よりも大きいかどうかを調べ、大きければ「瞳孔径変動」と判定する。また、大きくなければ「正常」と判定する。瞳孔径dは、ユーザーの精神状態に応じて顕著に変化し、特に、特有の瞳孔開状態があるか否かに基づいて、ユーザーが興奮状態にあるか否かを高精度に推定することができる。また、瞳孔径が変動する場合は、集中力散漫であると推定することができる。
生体状態パラメータとして「ステアリング操作状態」を用いる場合は、直線走行時にステアリングのサンプリング及び評価を行なう。具体的には、一定時間間隔で定められたサンプリングタイミングが到来する毎に、操舵角センサ547の出力により現在の操舵角度φを読み取る(例えば、直進中立状態でφ=0°とし、左右いずれかへの触れ角として定義する(例えば右方向の角度を正、左方向の角度を負とする)。そして、その操舵角度値を波形として取得し、中心周波数(あるいはピーク周波数)fと、区間別の積分振幅A1,A2‥及びその分散σ2を演算する。周波数fが上限閾値fu0より大きくなっていれば操舵角度φの変化速度が「増」であると判定し、下限閾値fL0(>fu0)より小さくなっていれば「減」であると判定し、fu0≧f≧fL0ならば「正常」であると判定する。また、積分振幅Aの分散σ2が閾値σ20よりも大きければ操舵誤差が「増」と判定し、大きくなければ「正常」と判定する。操舵誤差の増大を検知することで、運転者が集中力散漫状態や興奮状態にあることを推定できる。他方、重度の体調不良(居眠り状態を含む)が発生した場合も、正常な操舵が妨げられるので、誤差の増大傾向からこれを推定することができる。他方、体調不良や集中力の散漫化は操舵への反応が遅れがちになり、操舵速度の減少からこれを推定することができる。また、興奮状態では、いらいらして急ハンドルを切りがちになるので、操舵速度の増加からこれを推定することができる。
このようにして得られた生体状態パラメータの時間的変化に係る判定結果を用いて、ユーザーの具体的な体調/精神状態の判定(推定)が行なわれる。そして、個々の具体的には、記憶装置535内には、図14に示すように、ユーザーの判定すべき精神状態と体調状態との組み合わせである複数の被特定状態と、個々の被特定状態が成立していると判定するための、複数のユーザー生体特性情報取得手段がそれぞれ検出しているべき生体状態パラメータの時間的変化状態の組み合わせとを対応付けて記憶した判定テーブル1601が記憶されている。
被特定状態となる体調状態は、本実施形態では「正常」、「疲労」、「軽度異常」、「重度異常」であり、同じく精神状態は「落胆」、「ニュートラル」(ただし、「癒され」「中央」「盛り上がり」の3パターンに細分化されている)、「興奮(激情・興奮)」である。個々の被特定状態に対応する体調指数PL及び精神状態指数SLの値の設定例を、判定テーブル1601内に示している。生体状態パラメータとしては、この後のシーンで使用するものも含め、「血圧」、「体温」、「皮膚抵抗」、「表情」、「姿勢」、「視線」、「瞳孔(寸法)」及び「操舵」の各パラメータが網羅されている(同じパラメータであっても、使用するセンサあるいはカメラはシーンに応じて、目的とする生体状態パラメータの取得に有利なものが適宜選択される)。
具体的には、各生体状態パラメータの時間的変化に係る判定結果(例えば、「急減」や「増加」など)をリードし、リードした個々の判定結果を、判定テーブル1601上の各被特定状態に対応する時間的変化状態の組み合わせと順次照合する。この場合、例えば、全ての生体状態パラメータについて、被照合情報と判定結果とが一致した被特定状態のみを採用する処理としてもよいが、参照する生体状態パラメータが多い場合は、被照合情報と判定結果とが全ての生体状態パラメータについて一致するのが稀となり、ユーザーの体調状態あるいは精神状態の推定を柔軟に行なうことができなくなる。従って、照合カウンターの得点(N)を「一致度」とみなして、最も得点の高いもの、つまり一致度の最も高いものを、被特定状態として確定させる方法が有効である。
なお、例えば平均血圧レベルが「変動」と判定された場合のように、同じ生体状態パラメータの状態が複数の被特定状態(「集中力散漫」あるいは「興奮状態」)への成立に肯定的に寄与する場合もあるが、この場合は、それら各被特定状態の照合カウンターをインクリメントする。例えば、平均血圧レベルが「変動」と判定された場合は、4つの照合カウンター値N1,N4,N5,N6がインクリメントされる。
他方、被照合情報と判定結果との一致不一致は、既に種々説明したごとく、生体状態パラメータ(周波数あるいは振幅等)の閾値との比較で判断されているものがほとんどであり、上記のように一致/不一致を二値的(つまり、シロかクロか)に決定する際に、実際のパラメータの指示値と閾値との偏差がどの程度であったかは情報として埋没することになる。しかし、実際には、閾値に近接した値で一致/不一致が決定される場合は、いわば「グレー」の判定であり、閾値から隔たった(例えば閾値を大幅にクリアした)形で一致/不一致が決定される場合と比較して、判定結果への寄与の度合いを小さく扱うようにすることが本来的には望ましい。
これを解決する方法としては、被照合情報と判定結果とが完全に一致した場合にのみ照合カウンターへの加算を行なうようにするのに代え、完全一致せずとも、定められた範囲内で近接した結果が得られた場合は、完全一致の場合よりも低い得点に制限しつつ、これを照合カウンターへ加算することが考えられる。例えば、被照合情報が「急増」となっている場合、判定結果も「急増」であれば3点を、「増」の場合は2点を、「微増」の場合は1点を加算する方式を例示できる。
図13に戻り、体調状態と精神状態とが特定できればS2に進み、特定された体調状態に対応する体調系基準意図パラメータ値を決定する処理となる。本実施形態では、体調系基準意図パラメータは5成分(fb1,‥,fb5)からなる空間パラメータである(以下、これを[fb]≡[fb1,‥,fb5]と記し、体調系基準意図ベクトルと称する)。上記5成分のうち、fb1、fb2が体力消耗低減に関する意図強度を表わすパラメータ種別に属し、fb3、fb4、fb5が体力回復に関する意図強度を表わすパラメータ種別に属する。具体的には、fb1は「力/時間を低減する」、fb2は「手間/人を低減する」の各意図に対応するものである。また、fb3は「補給する」、fb4は「休息する」、fb5は「効果を高める」の各意図に対応するものである。
次に、S3では、特定された精神状態に対応する精神系基準意図パラメータ値を決定する処理となる。本実施形態では、精神系基準意図パラメータは7成分(fm1,‥,fm7)からなる空間パラメータである(以下、これを[fm]≡[fm1,‥,fm7]と記し、精神系基準意図ベクトルと称する)。上記7成分のうち、fm1、fm2が不愉快排除に関する意図強度を表わすパラメータ種別に属し、fm3、fm4が愉快獲得に関する意図強度を表わすパラメータ種別に属する。また、fm5が気持高揚に関する意図強度を表わすパラメータ種別に属し、fm6、fm7が気持安静に関する意図強度を表わすパラメータ種別に属する。具体的には、fm1は「対象を排除する(ストレス源を排除する)」、fm2は「誤魔化す(ストレスを感じなくする)」の各意図に対応するものである。fm3は「対象を得る(好きなもの/イメージを認識する)」、fm4は「誤魔化す(別の好きな雰囲気を楽しむ)」の各意図に対応するものである。fm5は「気持高揚(車/目的地のイメージが強調される)」の意図に対応するものである。fm6は「癒される」、fm7は「効果を高める」の各意図に対応するものである。
各体調状態に対応する体調系基準意図ベクトル[fb]の各成分の設定値は、図15に示す体調系基準意図ベクトル設定テーブル601(図1のもてなし意思決定部2のROMに記憶されている)にまとめられており、決定された体調状態に対応するものが随時読み出されて使用される。また、各精神状態に対応する精神系基準意図ベクトル[fm]の各成分の設定値は、図16に示す精神系基準意図ベクトル設定テーブル602(図1のもてなし意思決定部2のROMに記憶されている)にまとめられており、決定された精神状態に対応するものが随時読み出されて使用される。
基準意図ベクトル[fb][fm]の各成分(すなわち、成分基準意図パラメータ)は、対応する外乱刺激に対するユーザーの排除意図が強いものほど絶対値が大きく設定される。具体例を挙げて説明する。まず、体調系基準意図ベクトル[fb]については、図15に示すように、体力消耗低減に関する意図強度を表わすパラメータ種別fb1及びfb2の値が、体調異常の場合において体調正常時よりも明らかに大きく設定されている(特に、重度体調異常時に値が最大値(1)となり、軽度体調異常時においては値が若干下げられている(0.8)。体力回復に関する意図強度を表わすパラメータ種別(fb3、fb4、fb5)についても同様であり、fb4(休息する)については、正常時にあっても、疲労時には値が若干高く設定されている。
また、精神系基準意図ベクトル[fm]については、図16に示すように、気持高揚に関する意図強度を表わすパラメータ種別fm5が、落胆時においてニュートラル時や激情・興奮時よりも値が大きく設定され、気持を高揚させる意図を強調するようにしている(なお、同じニュートラルでも、盛り上がりが要求される場面では値が大きく設定されている)。逆に、気持安静に関する意図強度を表わすパラメータ種別fm6、fm7は、激情・興奮時において落胆時やニュートラル時よりも値が大きく設定され、高ぶった気持をクールダウンする意図を強調するようにしている(なお、同じニュートラルでも、癒しが要求される場面では値が大きく設定されている)。
なお、不愉快要素を歓迎するユーザーは通常はいないので、不愉快排除に関する意図強度を表わすパラメータ種別fm1、fm2の値は総じて高めに設定される。逆に、激情・興奮時や落胆時などでは精神安定欠如のため愉快要素を受け入れる余裕がないこともあり、愉快獲得に関する意図強度を表わすパラメータ種別fm3、fm4値は総じて低めに設定される。そして、ニュートラル時においては、通常時は同様に値は低めであるが、癒しが要求される場面、盛り上がりが要求される場面と推移するにつれ、値が次第に高くなるように設定されている。
次に、図13のS4に進み、使用する体調系基準意図ベクトル[fb]及び精神系基準意図ベクトル[fm]の補正を行なう。具体的には、自動車に乗り込んでいる各ユーザーの序列順位を図2Aのユーザー登録部600で検索し、序列順位が最も上位に位置するユーザーの体調系補正係数Dfb,Dfmを読み出す。体調系補正係数Dfbは、体調系基準意図ベクトル[fb]の成分設定値を補正するためのものであり、対応するユーザーが好む体的刺激レベルの個人差(つまり、強めの刺激を好むか弱めの刺激を好むか:例えば、冷房であれば冷え性で弱冷を好むか、逆に汗かきで強冷を好むか、などを反映するものである)に応じて、ユーザー毎に固有の値が定められる。本実施形態では、図17に示すように、弱め、ニュートラル、強めにそれぞれ対応して、体調系補正係数Dfbの値が3段階に定められている。体調系補正係数Dfbは、ベクトル[fb]の各成分に乗ずる形で使用され、「ニュートラル」は補正なし(1)、「弱め」は値縮小(0.8)、「強め」は値拡大(1.2)に作用する。
また、精神系補正係数Dfmは、精神系基準意図ベクトル[fm]の成分設定値を補正するためのものであり、ユーザーの外乱排除速度に対する欲求個人差(つまり、おっとり型かせっかち型か:例えば、冷房であればゆっくり冷えることを好むか、速やかに冷えることを好むか、などを反映するものである)に応じて、ユーザー毎に固有の値が定められる。該精神系補正係数Dfmは、ユーザー登録部600内の性格種別とも密接な対応関係にあり、おっとり型の性格については精神系補正係数Dfmの値が小さく設定され、逆にせっかち型の性格については精神系補正係数Dfmの値が大きく設定される。本実施形態では、スロー、ニュートラル、ファストにそれぞれ対応して、精神系補正係数Dfmの値が3段階に定められている。精神系補正係数Dfmは、ベクトル[fm]の各成分に乗ずる形で使用され、「ニュートラル」は補正なし(1)、「スロー」は値縮小(0.8)、「ファスト」は値拡大(1.2)に作用する。
当然、体的刺激レベルの好みはユーザー毎に皆違うので、これらを一律に充足する補正条件を見出すことは困難である。そこで、ユーザーの序列順位(乗り込んだユーザー間のいわば力関係)を導入し、序列順位が最も上位に位置するユーザーの補正条件を優先した処理を行なうわけである。
さて、補正されたベクトル[fb]、[fm]の各成分は、図19及び図20に示す意図推定テーブル371上に以下のようにして展開される。意図推定テーブル371はもてなし意思決定部2のROM内に格納され、以下のような構造を有する。すなわち、マトリックスの縦軸に各シーン(乗る→降りる→滞在→運転)が配列し、シーン毎に、安全性(安全に)、利便性(楽に)及び快適性(快適に)の3つのもてなし意図分類項目が設定されている。このうち、利便性(楽に)のもてなし意図分類項目には体調系基準意図ベクトル(パラメータ)の各成分が示す5つの意図強度項目が割り当てられ(図20)、快適性(快適に)のもてなし意図分類項目には精神系基準意図ベクトル(パラメータ)の各成分が示す7つの意図強度項目が割り当てられている(図19)。
他方、マトリックスの横軸には、触覚系、視覚系及び聴覚系の少なくとも3つの属性(このほか、さらに嗅覚があるが、図では欄外となっている)に区分された外乱刺激の項目が配列している。外乱刺激は車内外乱と車外外乱とがあるが、ここでは車内外乱の場合について例示している。触覚系外乱刺激には気流温度、車内物温度、湿度、圧力(振動)がある。また、視覚系外乱刺激には光(照度)がある。さらに、聴覚系外乱刺激には音がある。いずれも、対応するセンサの入力から値取得される(図13:S5)。
各種別の外乱刺激値は、いずれもニュートラル値を基準として正負両方向に値が検出されるようになっている(具体的に、各外乱刺激値は、いずれもニュートラル値をゼロとして、正方向に+0.5、+1.0及び負方向に−0.5、−1.0の5段階に検出される)。いずれも、明るい⇔暗い、暑い⇔寒い、うるさい⇔静かなど、互いに相反する状態の間を行き来する形で変化するものである。具体的には、気流温度については、その強度(振幅に相当:程度)が、暑い→(温かい、ニュートラル、涼しい)→寒い、の間で変化し、(機能動作の結果として得られる温度変化の)速度(周波数に相当)は、急速→(速い、ニュートラル、遅い)→緩やか、の間で変化する。車内物温度については、その強度が、熱い→(ニュートラル)→冷たい、の間で変化する。湿度は、その強度が、濡れる→(湿る、ニュートラル)→乾く、の間で変化する。振動については、その強度が、強い→(ニュートラル)→弱い、の間で変化し、速度(周波数)は、高い→(ニュートラル)→低い、の間で変化する。光(照度)については、その強度が、眩しい→(ニュートラル、薄暗い)→暗い、の間で変化し、速度(周波数(光の色))は、暖色→(ニュートラル)→寒色、の間で変化する。音については、その強度が、うるさい→(ニュートラル)→静か、の間で変化し、速度(周波数)は、賑やか→(ニュートラル)→穏やか、の間で変化する。
前述のごとく、基準意図ベクトル[fb]、[fm]の各成分(各成分基準意図パラメータ)は、対応する外乱刺激に対するユーザーの排除意図が強いものほど絶対値が大きく設定されるとともに、各成分は、意図推定テーブル371の各セル上にて、対応する外乱刺激値との積が基準意図パラメータとして演算される(図13:S6)。もし、対応する外乱刺激値がニュートラル値(つまり、ゼロ)であれば、この積の値(意図強度パラメータ)もゼロとなる(図19及び図20にて空白のセルは、意図強度パラメータの値がゼロであることを示す)。このことは、対応する外乱刺激に対するユーザーの排除意図が存在しない(つまり、何もせずともユーザーにとって最も心地よい外乱刺激状態が実現している)ことを意味し、当該の外乱刺激を抑制するための対応機能の動作を抑制(あるいは禁止)する意図が反映される。
対応する外乱刺激値の絶対値がゼロでなければ、意図強度パラメータはゼロでなくなり、その絶対値が大きいほど外乱刺激の排除意図が大きく設定されていると解釈される。ただし、意図強度パラメータは、基準意図ベクトル[fb]、[fm]の各成分と、対応する外乱刺激値との積の逆数により定義したり、同じく比により定義したりすることもでき、その絶対値と外乱刺激排除意図の大きさとの関係は演算定義により異なることはいうまでもない。
意図強度パラメータの符号は外乱刺激の符号と一致し、該符号は、対応する機能の制御の向きに対応付けられる。すなわち、外乱刺激値は、上記のごとく互いに相反する状態の間を行き来する形で変化し、その2状態の間には、そのどちらでもないニュートラル状態(つまり、明るすぎも暗すぎもしないちょうどよい明るさの状態、暑すぎず寒すぎない快適な気温状態、うるさすぎず静かすぎもしない普通の音響状態)が存在し、該ニュートラル状態を基準として外乱刺激が各々上記2状態のどちらに偏っているかが、その符号によって一義的に表わされる。
前述のごとく、基準意図パラメータは、ニュートラル値からずれた外乱刺激に対しユーザーがどの程度の排除願望を抱いているかをその絶対値にて示すものであり、これを用いて外乱刺激値との積により演算される意図強度パラメータの符号により、外乱刺激を相殺(キャンセル)する向きの制御が行なわれる。つまり、明るい場合には暗くし、暗い場合には明るくする、あるいは暑い場合には涼しくし、寒い場合には暖かくする作用となる。また、うるさい場合は、静かにするかそのうるささを誤魔化す向きの制御を行なう。
機能の具体的な選択・決定は、図21に示す原理探索テーブル372と図22の機能抽出テーブル373とを用いて行なう(図13:S7、S8)。原理探索テーブル372は、セル構造は意図推定テーブル371と同じであるが、各セルには機能特定情報として、機能の原理を特定するための原理特定情報が格納されている。また、機能抽出テーブル373は原理探索テーブル372に付随する、各原理特定情報と個別機能とを互いに対応付けた二次元テーブルであり、テーブルの各セルに、対応する個別機能の座席別の採用優先度を示す機能採用優先度情報が格納されている。機能採用優先度情報は、具体的には、テーブル縦軸に割り振られた各機能原理に対し、個々の機能がどの程度効果上貢献するかを数値で示す効果値ポイントであり、この効果値ポイントが高く設定されている機能ほど、採用したときの対応する機能原理への貢献度が高いことを意味する。
以下、精神系基準意図ベクトルに関係する部分により代表させて、より具体的な実施例を説明する(体調系基準意図ベクトルに関係する部分についても、基本的な処理の流れは同じである)。図19は、意図推定テーブル371の精神系基準意図ベクトル[fm]の設定部分を抜き出したものであり、図21は、原理探索テーブル372の対応部分を抜き出したものである。図19にて、精神系基準意図ベクトル[fm]の各成分[fm1,fm2,fm3,fm4,fm5,fm6,fm7]の設定値は[1,1,0.2,0.2,0.2,0.8,0.8]であり、Dfm=0.8で補正することにより[0.8,0.8,0.16,0.16,0.16,0.64,0.64]にて意図推定テーブル371上に設定されている。一方、外乱については、例えば視覚系外乱である光の強度に関しては、5段階の極小値−1.0が検出されているので、対応するセルの意図強度パラメータの設定値は[−0.8,−0.8,−0.16,−0.16,−0.16,−0.64,−0.64]となっている。
図21の原理探索テーブル372の対応部分を見れば、視覚系の原理特定情報として、例えば、不愉快排除→ストレス源排除→意思疎通強化の意図項目には、「内 表示」(理性系)及び「内 照明」(感性系)がそれぞれ格納されている(なお、原理探索テーブル372上にて空欄となっているセルは、対応する機能原理が存在しないことを示す)。前者は、図22の機能抽出テーブル373上にて、例えばメーターやインジケータ類、あるいはカーナビゲーション装置やカーステレオなどの表示を、夜間(あるいは暗所)点灯状態とする機能と結び付けられる(ただし、図22では表示を省略している)。また、後者は車室内照明であり、図22の機能抽出テーブル373上では、車内作用→視覚作用→照明の欄にて、前後、左右の各座席にて、上/下(すなわち、足元及び天井)の各位置を照らすべく配置されたイルミネーション(図1:車内照明511)に対し、それぞれ効果値ポイント「3」にて、該当する機能を選択することが指定されている(こうして、システム側にて効果値ポイント(機能採用優先度情報)に基づき自動選択される機能がシステム被選択もてなし機能である)。対応する意図強度パラメータの設定値は−0.8(かなり暗い)であり、もてなし実行制御部は、これを相殺するために+0.8に対応する発光出力で、表示や照明を明るく駆動制御することとなる(図13:S9)。
図19にて、触覚系外乱の気流温度(強度)に関しては、5段階の中小値−0.5が検出されているので、対応するセルの意図強度パラメータの設定値は[−0.4,−0.4,−0.08,−0.08,−0.08,−0.32,−0.32]となっている。
図21の原理探索テーブル372の対応部分を見れば、触覚系の原理特定情報として、例えば、不愉快排除→ストレス源排除→厚さ/寒さ解消の意図項目に、「内 エアコン」(感性系)が格納されている。これは、図22の機能抽出テーブル373上にてエアコン機能と結び付けられる(ただし、図22では表示を省略している)。対応する意図強度パラメータの設定値は−0.4(涼しい)であり、もてなし実行制御部は、これを相殺するために+0.4に対応する暖房出力で車室内が暖かくなるようにエアコン制御を行なう(図13:S9)。エアコンの該暖房機能がシステム被選択もてなし機能である。
また、不愉快排除→誤魔化す→ストレスを感じなくする、の意図項目には原理特定情報として、「内 照明」(感性系)が格納されている。対応する機能は照明色の調整であり、照明色が長波長側(黄色、アンバー、赤色、ピンク、あるいはこれらの色彩を帯びた白色光)にシフトするように変化させる。これらの照明色は暖色系であり、温かみのある(あるいは気分の高揚に寄与する)演出効果に優れるからである。該照明がシステム被選択もてなし機能となる。
さらに、愉快獲得→好きなもの/イメージが入手できる→趣味情報を提供、の意図項目には原理特定情報として、「内 全表示」(理性系)が格納されている。図22の機能抽出テーブル373上では、例えばカーナビゲーション装置の情報出力機能(例えば、涼感を提供する施設(喫茶店やプールなど)の案内情報)が結び付けられる(ただし、図22では表示を省略している)。好感雰囲気創出の意図項目には原理特定情報として、「内 音発生」(感性系)が格納されている。図22の機能抽出テーブル373上では、例えばせせらぎや波、風等の涼感を誘う効果音出力機能が結び付けられ、システム被選択もてなし機能として採用される(ただし、図22では表示を省略している)。
図19にて、聴覚系外乱の音(強度)に関しては、5段階の極大値+1.0(つまり、相当うるさい)が検出されているので、対応するセルの意図強度パラメータの設定値は[0.8,0.8,0.16,0.16,0.16,0.64,0.64]となっている。図21の原理探索テーブル372の対応部分を見れば、聴覚系の原理特定情報として、例えば、不愉快排除→ストレス源排除→騒音解消の意図項目に、「内 音防止」(感性系)が格納されている。これは、図22の機能抽出テーブル373上にてノイズキャンセラ1001Bと結び付けられる(ただし、図22では表示を省略している)。対応する意図強度パラメータの設定値は0.8であり、もてなし実行制御部は、これを相殺するために+0.8に対応する出力で車室内騒音がキャンセルされるようにノイズキャンセラ1001Bの制御を行なう(図13:S9)。該ノイズキャンセラ1001Bがシステム被選択もてなし機能となる。
また、愉快獲得→好きなもの/イメージが入手できる→趣味情報を提供、の意図項目には原理特定情報として、「内 音楽発生」(感性系)が格納されている。図22の機能抽出テーブル373上では、カーステレオの音楽出力機能が結び付けられる(ただし、図22では表示を省略している)。音楽ソースは、その都度体調や精神状態に応じた適正な選曲を行なう(図13:S9)。該カーステレオがシステム被選択もてなし機能となる。
次に、いずれのシーンにおいても、システム被選択もてなし機能の動作中に、ユーザーの手動により別のもてなし機能が選択された場合、もてなし意思決定部2はこれを随伴もてなし機能として特定する。そして、システム被選択もてなし機能の各シーンでの目的効果に対する、随伴もてなし機能の動作に基づく寄与を、具体的には、車室内又は車室外のどの環境パラメータの改善に寄与するかをモニタリングする。このモニタリングは、当該環境パラメータの検出に適合するセンサ(環境パラメータ検知手段:以下、状況モニタ用センサという)を用いて行なう。そして、その随伴もてなし機能の、上記目的効果への寄与が予め定められたレベルを超えてモニタリングされた場合、機能抽出テーブル373(図22)上にて該随伴もてなし機能に対応する効果値ポイント(機能採用優先度情報)を、該モニタリング前よりも採用優先順位が高められるように、ここでは数値が大きくなるように更新する処理を行なう。
上記の処理の基本的な流れを示すのが図23のフローチャートである。S101では、状況モニタ用センサの検出情報を取得する。システム被選択もてなし機能の関与する環境パラメータは、該システム被選択もてなし機能を選択する際に参照した原理探索テーブル372(図21)上にて、該当する機能原理に対応するもてなし意図(縦軸)及び外乱刺激項目とに応じて選択することができる。
例えば、図21の場合、機能原理が「内 音防止」であれば、モニタ対象空間が車室内であり、もてなし意図が「騒音解消」、外乱刺激項目が「聴覚」なので、車室内の騒々しさを音圧センサ540(図1)でモニタリングすればよいことが明らかである。また、機能原理が「内 エアコン」であれば、モニタ対象空間が車室内であり、もてなし意図が「暑さ/寒さ解消」、外乱刺激項目が「触覚」なので、車室内温度を室温センサ563(図1)でモニタリングすればよいことが明らかである。
図23に戻り、S102では、取得したセンサ検出情報から効果値ポイントe**を算出する。具体的には、随伴もてなし機能を動作させた場合に状況モニタ用センサ(環境パラメータ検知手段)が検知する環境パラメータの改善方向への変化率を算出し、その変化率に基づいて効果値ポイントeh*が算出される。なお、改善方向の特定は、図20の意図推定テーブル上にて、該当するもてなし意図及び外乱刺激項目に対応する意図強度パラメータの符号により判定できる。
そして、S103で、該算出された効果値ポイントeh*が、機能抽出テーブル373(図22)にすでに格納されているシステム被選択もてなし機能に対応する効果値ポイントe**(機能採用優先度情報)と比較され、S104にてeh*>e**となった場合に、機能抽出テーブル373(図22)において、当該随伴もてなし機能の効果値ポイントを増加方向に修正・更新する(S105)。
なお、環境パラメータの検出値に直接反映される上記改善方向への変化率は、システム被選択もてなし機能の寄与と随伴もてなし機能の寄与とが合成されたものであり、算出される効果値ポイントeh*も、その機能合成結果を反映したものとして算出されることとなる。ここで、随伴もてなし機能は、システム被選択もてなし機能としての自動動作を行なわなかった機能であるから、該当するもてなし意図への効果寄与も、もとはゼロと想定されていたものである。従って、効果値ポイントeh*が増加したのであれば、その増分は随伴もてなし機能が新たに参加することに由来した寄与であるとみなすことができる。この場合、随伴もてなし機能の効果値ポイントを更新する方法としては次の2種類があり、そのどちらを採用してもよい。
(1)機能合成結果を反映した効果値ポイントeh*と機能抽出テーブル373(図22)上のシステム被選択もてなし機能に対応する効果値ポイントe**との差分Δe*を演算し、そのΔe*を機能抽出テーブル373(図22)上にて該随伴もてなし機能の効果値ポイントとして割り振る形で更新する。
(2)機能抽出テーブル373(図22)上にてシステム被選択もてなし機能と随伴もてなし機能とを機能統合し、これに、機能合成結果を反映した上記効果値ポイントeh*を新たに割り振る。
この実施形態では、(2)の方式を採用するものとして、さらに具体的な実施形態につき以下に説明する。第一例として、車室内温度改善にパワーウィンドウ操作が関与するシーンとして、車室内温度が閾温度を超える高温状態となっている状況下での、自動車への接近シーン又は乗り込みシーンを対象とする。夏季炎天下では密閉された車室内温度は極度に上昇し、ユーザーは乗り込みに際して車室内にこもった熱気を一刻も早く車外に放出したいと考えるのが通常である。この場合、システム被選択もてなし機能を空調装置の冷房機能とし、随伴もてなし機能をパワーウィンドウの開放機能とするのが妥当である。こうした状況下では、空調装置を自動作動させても、そのクールダウンに相当の時間を要し、居たたまれなくなったユーザーは、パワーウィンドウを手動操作して窓を全開にする操作を行なう。そして、窓を開放させなかった場合に想定される車室内温度の冷却方向への変化率が、窓が手動操作された結果有意に大きくなればパワーウィンドウの機能採用優先度が高くなるように更新される。すると、次回以降は空調装置とともにパワーウィンドウも作動し、窓が自動的に開放されることとなる。このとき、どの座席のパワーウィンドウが開放されたか、また、どの程度まで車室内温度が低下した場合に(あるいは、どの程度まで空調装置のクールダウンが進んだ場合に)パワーウィンドウを閉状態に戻したかなどを履歴として記録しておけば、次回以降は、その記録内容に従い、ユーザーが自分で行なった所望の操作履歴を再現する形でパワーウィンドウを動作させることができる。
この場合の動作フローチャートの例を図24に示している。
S1101では状況モニタ用センサの検出情報を取得する。図24のフローチャートでは、シーン検出用の前述した種々のセンサ群からの入力情報を検出し、S1102でその入力値からすでに説明した方式に従い、シーンを特定する。S1103でそのシーンの特定に成功すればS1104に進み、そのシーンに関係するもてなし意図を、前述の意図推定マトリックス371(図19、図20:ただし、乗り込みシーンに対応する部分は表示を略している)上にて、すでに説明した方法により推定する。ここでは乗り込みシーンが特定されたものとする。乗り込みシーンでの車室内クールダウン(適正な車内温度)に関しては、基本的には意図項目が不愉快排除であって、不愉快排除に関する意図強度を表わすパラメータ種別であるfm1、fm2は、ニュートラル(盛り上がり)を除いては全て「1」、つまり、不愉快排除に関しては、精神状態とは無関係に意図強度が最大値に設定されている点に注意する。この場合、もてなし意図を「不愉快排除」に特化する場合は、車外から接近するユーザーの詳細な精神状態を特に詳細に特定しない方式が可能である。
次いで、S1105に進み、推定されたもてなし意図に対応する機能原理を、原理探索テーブル372(図21)上で探索・選出する。機能原理が選出されればS1106に進み、効果値の算出に必要な情報を選定する。例えば、機能原理が「内 エアコン」であれば、車室内温度が当該情報として選ばれる。なお、接近シーンでのもてなし意図としては、「適正な車内温度」以外に「適正な車外明るさ」、「適正な車内臭レベル」、「適正な車内明るさ」などを例示できる。
続いてS1107に進み、随伴もてなし機能として、このタイミングで手動操作された機能を全て抽出する。そして、随伴もてなし機能の手動操作をトリガとして、S1108で、効果値の算出に必要な情報に係る状況モニタ用センサの入力値モニタを開始し、S1109でその入力値から効果値ポイントeh*を算出する。そして、S1110では、算出した効果値ポイントeh*を機能抽出テーブル373上の効果値ポイントe**と比較する。S1111でeh*>e**であれば、機能抽出テーブル373(図22)上にてシステム被選択もてなし機能と随伴もてなし機能とを機能統合し、これに、機能合成結果を反映した上記効果値ポイントeh*を新たに割り振る形で機能抽出テーブル373の更新処理を行なう。
図25は、乗車シーンでの機能抽出テーブル373における効果値ポイントの設定例を示している。前述の4つのもてなし意図である「適正な車外明るさ」(機能は「発光」:例えば、図1のランプ群504〜510,512)、「適正な車内明るさ」(機能は「発光」:例えば、図1の車内照明511)、「適正な車内温度」(機能は「暖房」「冷房」:例えば、図1のエアコン514)、「適正な車内臭レベル」(機能は「消臭」:例えば、図1の空気清浄機548)について、各座席空間(ここでは空間の上下の違いも区別)の効果値ポイントが格納されている。
「適正な車外明るさ」、「適正な車内明るさ」の2つは、グラフ1及びテーブル2に示すように、機能動作により車外ないし車内の明るさが大きくなるほど効果値ポイントが大きくなるように補正される。
また、「適正な車内温度」に関しては、グラフ3,4及びテーブル3、4に示すように、現在温度が目標温度(ここでは、エアコン設定温度の80%とする)へ推移するための推移時間が短いほど効果値ポイントが大きくなるように補正される。ただし、暖房時にあっては、車室内温度レベルと車外気温レベルによって推移時間が大きく左右されるので、車室内温度及び車外気温の検出値に応じて補正係数が定められており、また、冷房時にあっては、車室内温度レベルと日射量レベルによって推移時間が大きく左右されるので、車室内温度及び日射量の検出値に応じて補正係数が定められている。いずれの場合も、実際に測定された推移時間にこれらの補正係数を乗じた値を補正推移時間として計算し、その補正推移時間を用いて補正ポイントを計算する。いくつかの計算例を、各テーブルの下に示してある。
さらに「適正な車内臭レベル」についても、グラフ5及びテーブル5に示すように、臭いセンサ542が検出する現在臭い強度が目標臭い強度(ここでは、固定的に定められた設定臭い強度の80%とする)へ推移するための推移時間が短いほど効果値ポイントが大きくなるように補正される。ただし、この推移時間も臭気レベルによって推移時間が大きく左右されるので、該臭気レベルの検出値に応じて補正係数が定められている。そして、実際に測定された推移時間にこれらの補正係数を乗じた値を補正推移時間として計算し、その補正推移時間を用いて補正ポイントを計算する。計算例を、テーブル5の下に示してある。
例えば、車室内温度が、前述のごとく室温センサ563(図1)を状況モニタ用センサとしてモニタリング開始され、随伴もてなし機能としてパワーウィンドウが、例えば、運転席側での操作で前後左右4つのウィンドウを全て全開操作し、所定時間(例えば1分)経過した後、再度4つのウィンドウを閉じる操作をした場合を考える。冷房使用時は、図25に示すように、どの座席についても機能抽出テーブル373上の効果値ポイントe**は3.0になっている。しかし、パワーウィンドウによる全座席の窓開閉処理により推移時間が短縮され、算出された効果値ポイントeh*が例えば3.4に増加したならば、このときのパワーウィンドウの動作履歴(上記の場合、4つのウィンドウを全開し、所定時間後に4つのウィンドウを締め切る動作)が記録されており、その記録されたパワーウィンドウ動作が新機能として乗車シーンでの冷房動作機能と統合され、かつ、統合された機能全体に効果値ポイントe**=3.4を付与する形で、図25の機能抽出テーブル373の内容が更新される。その結果、次回の同じシーンでは、冷房動作だけでなく記録され履歴でのパワーウィンドウ動作が自動的に再現・実施されることになる。
次に、図26は第二例を示すフローチャートで、適正な車内臭レベル維持に関し、複数の随伴もてなし機能として空気清浄機548とパワーウィンドウ操作との双方が関与する運転・滞在シーンを対象とする。S2101では、関与する可能性のある複数の状況モニタ用センサを予め一義的に選定しておき、その全てについてセンサ入力値の取得を開始する。S2102〜S2105では、手動操作された複数の随伴もてなし機能をその操作入力情報に基づいて順次特定する。S2106では、どのような随伴もてなし機能が選ばれたかを解析し、もてなし意図を特定する。例えば、どのような随伴もてなし機能が選ばれたかによってシーンを特定することにより、図25の流れと同様にもてなし意図を特定することが可能である。効果値ポイントの算出と機能抽出テーブル373の内容更新に係るS2107〜S2113の処理の流れは、基本的には図25のS1105〜S1112と同じであり、複数の随伴もてなし機能のそれぞれについて該処理が繰り返し実施される形になっている。
図27は、この場合の効果値ポイントの設定例を示している。もてなし意図として、「室内空気のリフレッシュ」(機能は「換気」:例えば、図1のパワーウィンドウ535)、「適正な車内温度」(機能は「暖房」「冷房」:例えば、図1のエアコン514)、「適正な車内臭レベル」(機能は「消臭」:例えば、図1の空気清浄機548)について、各座席空間(ここでは空間の上下の違いも区別)の効果値ポイントの設定値が格納されている。
効果値ポイントの補正方式は、「適正な車内温度」及び「適正な車内臭レベル」については図25と同一である。また、「室内空気のリフレッシュ」については、図27のグラフ6及びテーブル6に示すように、図示しない車室内CO2濃度センサが検出する現在CO2濃度が目標CO2濃度(ここでは、固定的に定められた設定CO2濃度の80%とする)へ推移するための推移時間が短いほど効果値ポイントが大きくなるように補正される。ただし、この推移時間はCO2濃度レベルによって推移時間が大きく左右されるので、該CO2濃度レベルの検出値に応じて補正係数が定められている。そして、実際に測定された推移時間にこれらの補正係数を乗じた値を補正推移時間として計算し、その補正推移時間を用いて補正ポイントを計算する。計算例を、テーブル6の下に示してある。
車室内の臭いレベルが臭いセンサによりモニタリングされている。そして、パワーウィンドウを、例えば、運転席(右)側及び後席左側の2つのウィンドウをそれぞれ1/4開く操作、空気清浄機の動作開始の操作、及び、さらに他の操作も順次行なったとする。これらの随伴もてなし機能の操作による効果値ポイントeh*は順次個別に計算され、機能抽出テーブル373(図27)上の対応する効果値ポイントe**と比較される。このうち、効果値ポイントe**の改善代の大きかった一定数(例えば2つとする)の上位機能がパワーウィンドウ動作と空気清浄機動作であった場合、このときのパワーウィンドウの動作履歴と空気清浄機548の操作履歴とが記録され、その記録された両動作が新機能として、それぞれ計算された効果値ポイントを付与する形で、図25の機能抽出テーブル373に新たに登録され、内容更新される。その結果、次回の同じシーンでは、臭いレベルが高くなったときに、記録された履歴でのパワーウィンドウ動作と空気清浄機動作とが自動的に再現・実施されることになる。
最後に、図28は第三例を示すフローチャートで、ウィンドウの内面曇り防止に関し、複数の随伴もてなし機能としてパワーウィンドウ操作が関与する運転・滞在シーンを対象とする。S3101で〜S3105の処理流れは図26のS2101〜2105と同じである。S3106では、どのような随伴もてなし機能が選ばれたかの解析を行なう代わりに、機能選択マトリックス上の全ての意図項目に対する状況モニタ用センサをいわばじゅうたん爆撃式に監視し、効果値ポイントの算出を行なう。効果値ポイントの算出と機能抽出テーブル373の内容更新に係るS3107〜S3113の処理の流れは、基本的には図26のS2108〜S2113と同じである。図29Aと図29Bとは、この場合の効果値ポイントの設定例を示している。
ここでは全てのもてなし意図に係る効果値ポイントが監視対象になっているが、特に、「視界確保(窓曇り)」の機能(図1のエアコン514)について、予想外に効果値ポイントが高く計算されてきたとすれば、このとき記録されているパワーウィンドウ操作履歴(第二例と同じく、運転席(右)側及び後席左側の2つのウィンドウをそれぞれ1/4開く操作)が窓曇り防止に効果的に寄与したと判定される、そして、その記録されたパワーウィンドウ操作が新機能としてエアコン動作機能と統合され、かつ、統合された機能全体に計算された効果値ポイントを付与する形で、図29A、図29Bの機能抽出テーブル373の内容が更新される。その結果、次回の窓曇り検出時には、パワーウィンドウ動作が自動的に再現・実施されることになる。