JP4961526B2 - シリカ微粒子の表面修飾を利用した可視発光材料およびその製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、このようなイオン注入法は炭化ケイ素(SiC)由来の発光中心を誘起するには有用な方法であるが、イオン注入に際しては、ケイ素や炭素をイオン化するための特別な真空設備が必要となるといった問題がある。
さらに研究を進め、上述の従来のアルキルクロロシラン(C n H 2n+1 SiCl 3 )の末端の-SiCl3結合が水酸基と高い反応性があることを利用して、シリカ微粒子表面を炭化水素基で表面修飾し、適当な条件で熱処理することで、可視域の幅広い波長域で発光する可視発光材料を作製可能であることを見出し、本発明を完成したものである。
この試料からの発光が熱処理温度、熱処理雰囲気、シリカ微粒子の表面を修飾させるアルキル基の長さにどのように依存するのかについては、後述する。
また、フュームドシリカを用いて、シリカ微粒子のサイズを極小化することにより、単位表面積当りのOH基を増加させて発光効率を向上させるのである。フュームドシリカの粒径は、1〜100nmとするが、粒径は細かいほうが望ましい。
ここで、実際に使用したフュームドシリカは、以下の通りである。
・製造メーカー:Sigma, St. Louis, Missouri, USA
・型番:S 5130
・粒径:7nm
なお、標準的なフュームドシリカの不純物の分析値を以下に示しておく。
・Al2O3 0.001%以下, Fe2O3 0.0001%以下, TiO2 0.001%以下
本実施例では、フュームドシリカに対し、アルキル基がすべて直鎖である炭素数が1〜18のアルキルクロロシラン(C n H 2n+1 SiCl 3 )を、溶媒にペンタンを用いてAr雰囲気で反応させている。その後、遠心分離機にかけ未反応のアルキルクロロシランを取り除き、室温で乾燥させて試料を作製している。また、このようにして作製した試料をペレット状に形成し、空気中又は窒素中で150〜300℃の温度範囲で所定の時間、熱処理を行い試料を作製する。
Silane, 以下、「OTS」と略する。)のものを例にして、試料の作製方法を詳細に説明する。
フュームドシリカ(2g)と撹拌子をナスフラスコに入れ、グローブボックス内で三方コックの栓をすることによりアルゴン(Ar)雰囲気にする。次に、グローブボックスからフラスコを取り出し、三方コックの一方からArを流し、撹拌しながらもう一方からシリンジを用いてペンタン(50ml)、OTS(0.5ml)を入れる。三方コックの片方を閉じ、もう片方には塩化水素が発生するためゴム風船を取りつけ一日放置する。その後、溶媒のペンタンを除くため、栓をはずし室温で乾燥させる。
この成形したペレットを電気炉(super-burn,(株)モトヤマ)を用いて、大気中で、150〜300℃の温度範囲で所定の時間、熱処理を行うことで、本発明に係る可視発光特性を有するシリカ成形材料を得ることができるのである。ここでは、所定の時間を2時間として試料を作製している。
なお、温度と時間には相関関係があり、温度が高ければ短い加熱時間が、温度が低ければ長い加熱時間が作製に必要とされる。
次に、フュームドシリカの表面を修飾させるアルキル基の長さの発光への影響について説明する。励起波長は炭化ケイ素では350〜400nmの励起で発光することが知られているため、励起波長400nmで発光測定を行った。
上記実施例の試料における発光の微視的メカニズムについて、以下説明を行う。
SiO2にC+ やSi+をイオン注入やプラズマCVDで導入することにより、シリカ中に炭素−ケイ素結合体を形成させ、可視発光材料の作製に成功している例があるが、これらSiC/C複合体からの発光スペクトルは、本試料からの発光スペクトルと類似していることから,本試料においても炭化水素基の熱分解の過程で試料内にSiC/C複合体が形成され,それが本試料の可視発光中心になっているのではないかと推察できる。
なお、以下では、最大の発光強度示した炭素数18のアルキルシランを表面修飾させた試料を用いてデータを示している。
また、発光ピーク位置は熱処理時間とともに長波長側へとシフトしていることがわかる。
を示している。励起波長が、350nmから375nm、そして400nmと長波長側になるほど、発光強度が高くなり、かつ、発光ピーク波長が480nm付近にシフトしていくことが理解できる。
図11から、遅延時間を遅らせていくと、発光強度は減少し、75nsで発光はほぼ消失していることが理解できる。
本試料の発光寿命は、本装置の時間分解能より短いため、正確な寿命測定は困難であるが、発光寿命はその減衰の様子から数ns〜10nsと予測される。
試料aと試料bの発光ピーク強度が460nmあたりに観測されるのに対し、試料cでは発光ピーク強度が470nmあたりに観測され、試料dでは発光ピーク強度が480nmあたりに観測され、試料eでは発光ピーク強度が470nmあたりに観測されている。
これは、窒素雰囲気中のみで焼結した試料と比較して、窒素雰囲気中で焼結した後に大気雰囲気中で再焼結した試料は、大気雰囲気中で再焼結する時間の増加に伴って、発光ピーク波長が長波長側にシフトすることを示している。
・励起波長:400nm(励起源:スペクトラフィジックス社製 モードロックチタンサファイアレーザーTsunami+周波数ダブラー Model39)
・検出器:浜松ホトニクス社製 ピコ秒蛍光寿命測定装置C4780
測定の結果を示す図14から、試料aは発光強度が1%以下となるのに50ns程度であり、一方、試料bは発光強度が1%以下となるのに30ns程度である。
このことから、大気雰囲気中で焼結した試料bよりも、窒素雰囲気中で焼結した試料aの方が、減衰の時定数がわずかに長いことが理解できる。
図15は、フュームドシリカの表面を四塩化ケイ素(SiCl4)により表面修飾した試料の発光スペクトルを示している。ここで、上述した炭化水素基で表面修飾した試料と比べると、励起波長400nmでは殆ど発光強度がなく、励起波長300〜350nmの範囲で発光が観測された。なお、図15は、励起波長が340nmのものを示している。
図15から、フュームドシリカの表面を四塩化ケイ素(SiCl4)により表面修飾した試料が、420nm付近にピークを持ち、600nm付近までおよぶブロードな発光スペクトルを有していることが理解できよう。
Claims (12)
- (a)シリカ微粒子を炭化水素基で表面修飾する表面修飾工程と、
(b)表面修飾後のシリカ微粒子を150〜300℃の温度範囲で所定時間熱処理する熱処理工程と、
からなり、
熱処理工程において、空気雰囲気中で加熱処理することを特徴とする可視発光特性を有するシリカ微粒子の製造方法。 - (a)シリカ微粒子を炭化水素基で表面修飾する表面修飾工程と、
(b)表面修飾後のシリカ微粒子を150〜300℃の温度範囲で所定時間熱処理する熱処理工程と、
からなり、
熱処理工程において、窒素雰囲気中で所定時間加熱処理し、その後、空気雰囲気中で所定時間加熱処理することを特徴とする可視発光特性を有するシリカ微粒子の製造方法。 - 請求項1又は2に記載の製造方法における熱処理工程において、加熱温度を200℃とし、加熱時間を2時間としたことを特徴とするシリカ微粒子の製造方法。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法における表面修飾工程において、アルキルクロロシラン(C n H 2n+1 SiCl 3 )(nは4以上の整数)を用いて、シリカ微粒子表面に炭化水素基を修飾することを特徴とするシリカ微粒子の製造方法。
- (a)シリカ微粒子を炭化水素基で表面修飾する表面修飾工程と、
(b)表面修飾後のシリカ微粒子を加圧成形して加圧成形体を形成する加圧工程と、
(c)該加圧成形体を150〜300℃の温度範囲で所定時間熱処理する熱処理工程と、
からなることを特徴とする可視発光特性を有するシリカ成形材料の製造方法。 - 請求項5に記載の製造方法における熱処理工程において、加熱温度を200℃とし、加熱時間を2時間としたことを特徴とするシリカ成形材料の製造方法。
- 請求項5又は6に記載の製造方法における表面修飾工程において、アルキルクロロシラン(C n H 2n+1 SiCl 3 )(nは4以上の整数)を用いて、シリカ微粒子表面に炭化水素基を修飾することを特徴とするシリカ成形材料の製造方法。
- 請求項5乃至7のいずれかに記載の製造方法における熱処理工程において、窒素雰囲気中で加熱処理することを特徴とする可視発光特性を有するシリカ成形材料の製造方法。
- 請求項5乃至7のいずれかに記載の製造方法における熱処理工程において、空気雰囲気中で加熱処理することを特徴とするシリカ成形材料の製造方法。
- 請求項5乃至7のいずれかに記載の製造方法における熱処理工程において、窒素雰囲気中で所定時間加熱処理し、その後、空気雰囲気中で所定時間加熱処理することを特徴とするシリカ成形材料の製造方法。
- 請求項5乃至10のいずれかに記載の製造方法により得られるシリカ成形材料を蛍光体として用いた発光素子。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法により得られるシリカ微粒子を含有する樹脂化材料を蛍光体として用いた発光素子。
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