JP4958569B2 - 熱伝導性樹脂組成物、熱伝導性シートならびにパワーモジュール - Google Patents
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特に、エポキシ樹脂が用いられたベース樹脂に、熱伝導性を向上させるための無機フィラーを分散させた熱伝導性樹脂組成物は、チップ部品の封止や、発熱部品の搭載された回路と放熱板との間の絶縁層の形成などといった電子部品用途において広く用いられている。
例えば、特許文献1には、ベース樹脂とフィラーとを含む熱伝導性樹脂組成物によりシート状に形成された高熱伝導性樹脂層が、金属箔が用いられて形成された金属箔層上に積層された金属箔付高熱伝導接着シートが記載されており、この金属箔付高熱伝導接着シートが半導体チップの接着に用いられることが記載されている。
例えば、特許文献2には、エポキシ樹脂中に無機フィラーを80〜95重量%もの高充填させることにより、成形品の熱伝導率が3〜10W/mKとなることが記載されている。
フィラーと樹脂との界面の濡れが十分でない場合には、この界面における熱伝達率も低いものとなりフィラーを高充填しても熱伝導性樹脂組成物により形成される成形品の熱伝導率を十分向上させることが困難となるばかりでなく、この成形品の強度を低下させてしまうおそれを有する。
また、特許文献3では、窒化ホウ素が用いられたフィラー(以下「窒化ホウ素フィラー」ともいう)をイソシアネート系化合物で処理して、フィラーのエッジに存在するアミンや水酸基などによるフィラー間の相互作用を変化させることが記載されており、さらに、特許文献4では、ノニオン系界面活性剤などの添加剤が含有された熱伝導性樹脂組成物について記載されている。
これらの方法によれば熱伝導性樹脂組成物におけるフィラーの分散性改善効果が期待されるものの、いずれの場合も、樹脂成分に対するフィラーの濡れ性に対する十分な改善効果を期待することは困難である。
すなわち、窒化ホウ素フィラーと、エポキシ樹脂とが含有され、さらに、添加剤が含有されている従来の熱伝導性樹脂組成物は、優れた熱伝導率を有しつつ強度にも優れた成形品を形成することが困難であるという問題を有している。
したがって、熱伝導性樹脂組成物における窒化ホウ素フィラーと樹脂との界面の熱伝達率も向上させることができる。
すなわち、熱伝導性樹脂組成物を、優れた熱伝導率を有しつつ強度にも優れた成形品を形成し得るものとし得る。
まず、図1を参照しつつ金属箔付高熱伝導接着シートについて説明する。
このエポキシ樹脂の滲み出しが激しい場合には、例えば、金属箔層の背面側など本来金属部分が露出しているべき個所にエポキシ樹脂被膜を形成させてしまうおそれがある。
高熱伝導性樹脂組成物に適度な流れ性を付与して、これらの問題をより確実に抑制させ得る点において、このエポキシ樹脂としては、エポキシ当量450〜2000g/eqの常温固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、エポキシ当量160〜220g/eqの多官能の常温固体で87℃から93℃の間に軟化点を有するノボラック型エポキシ樹脂とが(ビスフェノールA型エポキシ樹脂/ノボラック型エポキシ樹脂)=40/60〜60/40となる重量比率で混合されているものを用いることが好ましい。
なお、このエポキシ当量は、JIS K 7236により求めることができる。
なお、高熱伝導性樹脂層の形成に用いられる熱伝導性樹脂組成物には、この窒化ホウ素フィラーに加えて、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、二酸化ケイ素、ダイヤモンドなどが用いられたフィラーを本発明の効果を損ねない範囲において併用することができる。
p−ジニトロソベンゼン骨格を有する化合物としては、例えば、大内新興化学工業社より商品名「バルノック DNB」として市販のポリ−p−ジニトロソベンゼンを挙げることができ、p−キノンジオキシム骨格を有する化合物としては「バルノック GM」として市販のp−キノンジオキシムを挙げることができる。
このことから、オキシム基あるいはニトロソ基を有する化合物が用いられた添加剤は、高熱伝導性樹脂層の強度を向上させ得る。
さらに、樹脂とフィラーとの界面の接触熱抵抗を低減(熱伝達率を向上)させて高熱伝導性樹脂層の熱伝導率も向上させ得る。
しかも、同じ窒素原子を含有する置換基でも1級アミン、2級アミン、3級アミンなどは、エポキシ樹脂の硬化剤、硬化促進剤として作用し、常温下において熱伝導性樹脂組成物を未架橋の状態で長期間保持することが困難であり、一方で極端に求核性、塩基性の低い窒素原子を含む置換基は窒化ホウ素フィラーとの親和性が低下するのに対して、オキシム基およびニトロソ基は、窒化ホウ素フィラーとの親和性と熱伝導性樹脂組成物の保存性の両面において優れている。
したがって、これらが用いられた添加剤が配合された熱伝導性樹脂組成物は、架橋されて用いられることにより、その成形品の強度をさらに向上させ得るのみならず熱伝導率をいっそう向上させ得る。
なお、ポリ−p−ジニトロソベンゼンあるいはp−キノンジオキシムがエポキシ樹脂と架橋しているかどうかは、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計などを用いて赤外吸収スペクトル(以下「IRスペクトル」ともいう)を測定し、ニトロソ基あるいはオキシム基に帰属する吸収ピークが、架橋前の熱伝導性樹脂組成物に比べて減少しているか、または、消失してしまっているかを観察することで確認することができる。
特に、添加量が過剰になると架橋反応が進みすぎて基材への接着性などが低下するおそれがあり、一方で少なすぎる場合には樹脂成分に対する窒化ホウ素フィラーの濡れ性を十分向上させることが困難となるおそれを有する。
すなわち、良好なる接着性を有しつつ熱伝導率や強度に優れた成形品を形成させ得る点において、ポリ−p−ジニトロソベンゼンあるいはp−キノンジオキシムを熱伝導性樹脂組成物中に配合する場合には、その合計配合量が、窒化ホウ素フィラー100重量部に対して1〜5重量部であることが好適である。
この金属箔としては、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄などの純金属や合金が用いられたものを例示でき、さらに、各種メッキが施されたものや、あるいは、複数種類の金属が積層されているクラッド箔なども用いることができる。
この表面粗化については、金属箔の表面をサンドブラスト処理や酸化処理するなどして施すことができる。
なお、電解金属箔を用いる場合においては、そのマット面(粗化面)を高熱伝導性樹脂層との積層界面として利用することができ、サンドブラスト処理や酸化処理などの特段の処理を必要としない点において好適である。
さらに、この電解銅箔には、マット面にジンケート処理が施されているものを用いることが好ましい。
すなわち、熱伝導性にも優れ、取り扱い性にも優れた熱伝導性シートを作製し得る。
例えば、熱伝導性樹脂組成物と溶剤とを混合してコーティング液を作製し、該コーティング液を金属箔上にコーティングした後に乾燥して金属箔層上に高熱伝導性樹脂層を形成するなどして金属箔付高熱伝導接着シートを作製することができる。
また、セパレータフィルム上にコーティング液をコーティングし、乾燥した後にセパレータフィルムを剥離して高熱伝導性樹脂層のみ熱伝導性シートを一旦作製した後に、金属箔とラミネートして金属箔付高熱伝導接着シートを作製することができる。
すなわち、本実施形態の熱伝導性樹脂組成物が用いられた熱伝導性シートを使用することによりパワーモジュールを故障の発生が抑制された品質の高いものとし得る。あるいは、パワーモジュールを高集積化、高容量化させ得る。
例えば、金属箔付高熱伝導接着シートのように金属箔層を有する熱伝導性シートの作製に用いられる場合に限定するものではなく、高熱伝導性樹脂層(熱伝導性樹脂組成物)のみにより形成された熱伝導性シートの作製に用いることも可能である。
あるいは、熱伝導性シート以外の他用途に熱伝導性樹脂組成物を用いることも可能である。
(ベース樹脂溶液の調整)
ビスフェノール型エポキシ樹脂(東都化成社製、商品名「YD−011」)66gと、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成社製、商品名「YDCN704」)66gと、硬化剤である4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化社製、商品名「セイカキュアーS」)26g、硬化促進剤であるBF3−モノエチルアミン1.3gと、2−ブタノン106gとを混合溶解させてベース樹脂溶液を作製した。
窒化ホウ素フィラー(昭和電工社製、商品名「UHP−1」)100gをプリミックス社製「ハイビスミキサー」に入れ、さらに、p−ジニトロソベンゼン骨格を有する化合物が用いられた添加剤(大内新興化学工業社製、商品名「バルノック DNB」)1.0gを10mlのトルエンに溶解させた溶液を加えて減圧状態で10分間攪拌した後、常圧に戻した。
次いで、前記ベース樹脂溶液212.6gを加えて、再び減圧下で攪拌を実施した。
なお、窒化ホウ素フィラーは、55体積%となるように調整した。
この攪拌後、溶剤を乾燥させることにより原料粉体(熱伝導性樹脂組成物)を作製した。
得られた原料粉体をプレス成形(圧力5.9MPaで、120℃×15分後さらに180℃×120分プレス)して0.2mm厚さの熱伝導性シートを作製した。
なお、プレス後の熱伝導性シートのIRスペクトルを観察したところニトロソ基を示すピークが消失しており、エポキシ樹脂との架橋がなされていることが確認された。
添加剤を大内新興化学工業社製、商品名「バルノック DNB」に代えて、p−キノンジオキシム骨格を有する化合物である、大内新興化学工業社製、商品名「バルノック GM」とした以外は、実施例1と同様に熱伝導性シートを作製した。
窒化ホウ素フィラー(昭和電工社製、商品名「UHP−1」)36gを結晶性エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名「YH4000−H」)4.5g、フェノール系硬化剤(混合物)4.5g、三フッ化ホウ素モノエチルアミン0.1、添加剤(大内新興化学工業社製、商品名「バルノック DNB」)0.36gを東洋精機製作所製、商品名「ラボプラストミル」に入れて100℃で15分間混練した。
混練後の熱伝導性樹脂組成物を実施例1と同じプレス条件にてプレス成形して0.2mm厚さの熱伝導性シートを作製した。
なお、この実施例3の熱伝導性樹脂組成物における窒化ホウ素フィラー含有量は60体積%である。
添加剤(大内新興化学工業社製、商品名「バルノック DNB」)を加えなかったこと以外は実施例1と同様に熱伝導性シートを作製した。
添加剤を大内新興化学工業社製、商品名「バルノック DNB」に代えて、ニトロソ基とオキシム基のいずれも含まれていないポリカルボン酸型高分子界面活性剤(花王社製、商品名「ホモゲノールL−18」)とした以外は実施例1同様に熱伝導性シートを作製した。
添加剤(大内新興化学工業社製、商品名「バルノック DNB」)を加えなかったこと以外は実施例3と同様に熱伝導性シートを作製した。
各実施例、比較例で作製した熱伝導性シートを用いて熱伝導率の測定を実施した。
熱伝導率は、アイフェイズ社製、商品名「ai−phase mobile」により熱拡散率を求め、さらに、示差走査熱量計(DSC)を用いた測定により熱伝導性シートの単位体積あたりの熱容量を測定し、先の熱拡散率に乗じることにより算出した。
また、硬化された熱伝導性シートの脆さを指触にて判定し、取り扱いが良好で成形時における支障が生じないと見られるものを「○」、やや脆い感じがあるものの実用上問題ない普通レベルと感じられるものを「△」、もろく、成形時に慎重な取り扱いを要するものを「×」として判定した。
結果を表1に示す。
Claims (3)
- 窒化ホウ素フィラーと、エポキシ樹脂とが含有されており、さらに、添加剤が含有されている熱伝導性樹脂組成物であって、
前記添加剤には、ポリ−p−ジニトロソベンゼンが含有されていることを特徴とする熱伝導性樹脂組成物。 - 請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物をシート状に成形してなることを特徴とする熱伝導性シート。
- 請求項2に記載された熱伝導性シートが用いられていることを特徴とするパワーモジュール。
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