JP4958452B2 - リパーゼ阻害剤およびリパーゼ阻害剤の製造方法 - Google Patents

リパーゼ阻害剤およびリパーゼ阻害剤の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は栃の実から得られた物質の新規な用途に関する技術で、特に食品に混ぜることで肥満の原因となるリパーゼの阻害活性を図るのに適用して有効な技術である。
従来、トチノキ(Aesculus turbinata)の種子、すなわち栃の実(以下、トチノミと表記する場合もある)は、古くは飢饉の際の非常食として利用されていた。また、現在においては、日本各地で栃餅、栃の実だんご等の食品原料として使用されている。
栃の実は、サポニンを多く含むため、苦味が強い。したがって、サポニンを除去するためのあく抜きをしなければ、栃の実を食品として使用することはできない。このサポニンの主成分は、エスシン(escin)と呼ばれるトリテルペノイド配糖体の混合物である。日本の各地域で伝承的に様々なあく抜き方法がとられている。その代表的な方法としては、栃の実を水に晒し、煮熟、木灰液に浸漬する方法である。
一方、かかるエスシンは、西洋トチノキ(Aesculus hippocastanum L.)の種子にも含まれており、血糖値上昇抑制、アルコール吸収抑制、抗炎症、さらに抗腫脹等の種々の薬理活性が報告されている。この抽出物は、実際に炎症や腫脹の治療を目的とする医薬品や化粧品に使用されている。
従来一般的に行われている栃の実の食品原料としての使用、及び使用に際してのあく抜きについては、非特許文献1に述べられている。栃の実の苦味成分がエスシンであることについては、非特許文献2、3に記載されている。さらに、エスシンの薬理作用等については、非特許文献3〜10に記載されている。
また、非特許文献11には西洋トチノキ種子の質量分析上の特徴等が記載されている。併せて、非特許文献12には中国のトチノキ種子に関しての記述が見られる。
また、特許文献1には、段落0014でセイヨウトチノミ抽出物が血行促進作用を有するものとして使用されることが例示されている。
松山利夫、「野生堅果類とくにトチノミとドングリ類のアク抜き技術とその分布」、国立民族学博物館研究報告、2、p498-528(1977) 松川泰三、「栃の実サポニンに就て(第1報)」、薬学雑誌、55、p350-357(1935) 吉川雅之、「薬用植物に見る生理機能10マロニエ」、食品と科学、p50-53(2000) Yoshikawa,M.、Murakami,T.、Matsuda,H.、Yamahara,J.、Murakami,N. 、and Kitagawa, I.、「Bioactive saponins and glycosides.III. horse chestnut.(1): The structures, inhibitory effects on ethanol absorption, and hypoglycemic activity of Escins Ia,IIa,Ib,IIb and IIIa from the seeds of Aesculus hippocastanum L.」、Chem. Pharm. Bull., 44, 1454-1464(1996) Yoshikawa, M.、Harada, E.、Murakami, T.、Matsuda, H.、Wariishi, N.、Yamahara, J.、Murakami, N. and Kitagawa,I.、「Escins Ia, IIa, Ib, IIb and IIIa, bioactive triterpene oligoglycosides, from the seeds of Aesculus hippocastanum L.: Their inhibitory effects on ethanol absorption, and hypoglycemic activity on glucose tolerance test.」、Chem. Pharm. Bull., 42, 1357-1359(1994) 山原條二、松田久司、村上敏之、島田ひろみ、吉川雅之、「薬用植物の血糖値上昇抑制作用と作用成分−トリテルペン配糖体の構造と活性」、和漢医薬学雑誌、13、p295-299(1996) 吉川雅之、「薬用植物の糖尿病予防成分 医食同源の観点から」、化学と生物、40、p172-178(2002) Guillaume, M. and Padioleau, F.、「Veintomic effect, vascular protection, anitiinflammatory and free radical scavenging properties of horse chestnut extract.」、Arzneimittelforschung, 44 , 25-35(1994) Sirori, C. R.、「Aescin : Phamacology, phamacokinetics and therapeutic profile.」、Phamacological Research, 44, 183-193(2001) 吉川雅之、村上敏之、大槻恵子、山原條二、松田久司、「生物活性サポニン及び配糖体(第13報).西洋トチノキ種子サポニン(3):高速液体クロマトグラフィーを用いたEscin Ia,IIa, Ib 及びIIbの定量分析」、薬学雑誌、119、p81-87(1999) Facino, R. M.,Carini, M., Moneti, G., Arlandini, E., Pietta, P. and Mauri, P., 「Mass spectrometric characterization of horse chestnut saponins (Escin).」、Org. Mass Spectrometry, 26, 989-990(1991) Zang, Z.、Koike, K.、Jia, Z.、Nikaido, T.、Guo, D. and Zheng, J.、「New saponins from the seeds of Aesculus chinensis」、Chem. Pharm. Bull., 47, 1515-1520(1999) 特開2004−155684号公報
本発明者は、菓子類等の食品製造の技術開発に携わるなか、日本各地で古来より使用されている栃の実の健康効果について研究を行っていた。栃の実の近縁種である西洋トチノキ種子の薬理作用については、前掲の各種文献にもあるように、種々報告されている。
本発明者は、西洋トチノキ種子のサポニン(エスシン)については、血糖値上昇抑制作用等があることが知られているが、これまでに知られている薬理作用とは別の新たな薬理作用がないか調べる必要があると考えた。
従来日常的に摂取している食品成分の薬理作用については、近年、様々の形で調べられ、新たな薬効が見つかっている。かかる食品として使用されていた成分から見つかった薬理活性物質は、新たに開発された合成品とは異なり、その使用量さえ把握していれば基本的には安全に使用できるとの安心感が持てる。
そこで、従来、食品として使用されている成分については、種々の薬理活性作用についてその有無を実際に検証することが重要であると、本発明者は考えていた。かかる考え方に沿って、栃の実についても、今まで知られていたのとは異なる薬理活性の有無について調査を行う必要があると痛感した。
通常は栃の実はあく抜きしてから食用に使用されるが、かかる栃の実についての新たな薬理活性を調べるにあたっては、あく抜き処理前、あく抜き処理後の双方で調べることにした。
かかる研究を通して、栃の実から、新たな薬理活性物質を見出すことができれば、かかる物質を食品等に混ぜることで、古来より使用されていた栃の実を、健康食品等の材料として積極的に利用することができる筈である。また、かかる栃の実は、既に、食材の一つとして古来から利用されており、安心して摂取することが可能なものとも言える。
本発明の目的は、栃の実由来の新たな薬理効果を有する物質を見いだすことにある。
他の本発明の目的は、栃の実由来の健康効果を有する物質の利用技術を提供することにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
本発明者は、前記課題に鑑み、栃の実のあく抜き処理前後の薬理作用、健康効果を示す物質の探査を行った。その結果、これまでは全く知られていなかった新たな薬理作用が、栃の実由来のサポニン類にあることが分かった。
すなわち、食品原料である栃の実のサポニン類のエスシン、デアセチルエスシン、デサシルエスシンに、それぞれ新たな薬理作用であるリパーゼの阻害作用があることを突き止めた。
本発明は、かかる新規な薬理作用に基づきなされたものである。すなわち、本発明のリパーゼ阻害活性物質は、(化1)に示す化学構造の化学物質を有することを特徴とする。
(但し、Rは、チグロイル(tigloyl)基、アンゲロイル(angeloyl)基、Hのいずれかであり、Rは、アセチル(acetyl)基、Hのいずれかであり、Rは、D-グルコピラノシル(D-glucopyranosyl)、D-キシロピラノシル(D-xylopyranosyl)のいずれかである。)
かかる構成において、前記化学物質は、栃の実由来であることを特徴とする。また、本発明の食品は、前記構成のリパーゼ阻害活性物質を有することを特徴とする。かかる構成において、前記食品は、肥満抑止効果を有する健康食品であることを特徴とする。
上記化学構造を有する化学物質は、R1がtigloyl基で、Rがacetyl基で、RがD-glucopyranosylの場合がエスシンIaである。Rがtigloyl基で、Rがacetyl基で、RがD-xylopyranosylの場合がエスシンIIaである。Rがangeloyl基で、Rがacetyl基で、RがD-glucopyranosylの場合がエスシンIbである。Rがangeloyl基で、Rがacetyl基で、RがD-xylopyranosylの場合がエスシンIIbである。かかるエスシンのそれぞれにリパーゼ阻害活性が見られた。
また、Rがtigloyl基で、RがHで、RがD-glucopyranosylの場合がデアセチルエスシンIaである。Rがtigloyl基で、RがHで、RがD-xylopyranosylの場合がデアセチルエスシンIIaである。Rangeloyl基で、RがHで、RがD-glucopyranosylの場合がデアセチルエスシンIbである。Rがangeloyl基で、RがHで、RがD-xylopyranosylの場合がデアセチルエスシンIIbである。かかるデアセチルエスシンのそれぞれにリパーゼ阻害活性が見られた。
また、R、RがHで、RがD-glucopyranosylの場合が、デサシルエスシンIである。R、RがHで、RがD-xylopyranosylの場合がデサシルエスシンIIである。かかるデサシルエスシンのそれぞれに、リパーゼ阻害活性が見られた。
すなわち、本発明のリパーゼ阻害活性物質は、リパーゼ阻害活性物質としてエスシン、あるいはデアセチルエスシン、あるいはデサシルエスシンを有することを特徴としている。かかる構成において、前記エスシン、あるいは前記デアセチルエスシン、あるいは前記デサシルエスシンは、栃の実由来であることを特徴とするものである。
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
本発明のリパーゼ阻害活性物質は、栃の実から見いだされたリパーゼ阻害活性を示す化学物質を有しており、特にあく抜き処理後の栃の実は苦味が低減されて古来より食用として用いられているため、菓子等の嗜好品をも含めた一般の食品、健康食品、食品添加材、飲料等に安心して使用することができ、肥満防止に役立つリパーゼ阻害機能を示す機能性食品の開発が行える。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明者は天然のトチノキ種子に含まれているサポニンの抽出物、およびエスシンIa、IIa、Ib、IIbの単離物、あく抜き処理した食品用トチノキ種子に含まれているサポニン抽出物、およびデアセチルエスシンIa、IIa、Ib、IIbの単離物、デサシルエスシンI、IIのそれぞれについてリパーゼ阻害活性を測定し、その阻害作用を初めて見出した。
本発明に係るリパーゼ阻害活性物質は、栃の実のあく抜き処理前、あるいは栃の実のあく抜き処理後のものを、熱水抽出あるいはメタノール、エタノール等のアルコールを用いた溶媒抽出することで製造することができる。
栃の実のあく抜き処理のステップは、例えば、生の栃の実を保存のため水分含量20%以下までに乾燥した栃の実を水に浸漬、皮剥し、水でさらすか沸騰するなどのように処理して、木灰、あるいは炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、石灰等のアルカリ剤に浸漬または煮ればよい。
本発明を実施するに際して使用した栃の実は、日本産のトチノキ(Aesculus turbinata)の実である。勿論、トチノキの種類であれば、例えば、西洋トチノキ(Aesculus hippocastanum L.)、あるいは中国に植生しているトチノキ(Aesculus chinensis)の種子にも適用できることは言うまでもない。
あく抜き処理ステップ後の抽出ステップとしては、例えば、熱水抽出で行えばよい。かかる熱水抽出は、例えば、あく抜き栃の実水で煮て行えばよい。熱水温度は、50℃以上の範囲で管理すればよい。かかる温度範囲に設定した理由は、温度50℃未満では抽出効率が悪く時間がかかるためである。
また、抽出ステップは、アルコール等の有機溶媒を用いても構わない。例えば、アルコールを用いた抽出の場合には、0(0を含まない)〜100%以下のメタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール等のアルコールを使用することができる。
このようにして得られた物質は、リパーゼ阻害活性を示すことが、本発明で初めてあきらかにされた。
かかるリパーゼ阻害活性物質は、エスシン、デアセチルエスシン、デサシルエスシンであることが確認された。かかる物質の内、デアセチルエスシン(deacetylescin)は、エスシン(escin)の22位の炭素に結合したアセチル基が、脱アセチル化された構造を有している。
そこで、デアセチルエスシンに関しては、上記の如く採取した栃の実から抽出することもできるが、場合によっては、エスシンを出発物質として、エスシンのアルカリ処理によっても製造することができる。
例えば、アルカリ剤として炭酸カリウムや水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等を用い、pH8〜14の条件でエスシンに対して、加水分解処理を行わせ、エスシンの22位の炭素に結合した官能基の脱アセチル化を行えばよい。さらには、デサシルエスシンについても、エスシンの加水分解により、21位のtigloyl基あるいはangeloyl基、22位のアセチル基等を脱離することで合成することもできる。
このようにして得られたリパーゼ阻害活性物質は、上記リパーゼ阻害活性作用を有する物質の単品でも構わないし、あるいはその他の物質との混合物であっても構わない。
かかるリパーゼ阻害活性物質は、食品へ混ぜて使用することができる。例えば、菓子類、総菜等の食品が挙げられる。特に、食品のうちでも菓子類としては、餅、団子、煎餅、クッキー、ゴーフレット等の菓子が例示として挙げられる。食品には、調味料を含めても構わない。さらに、食品に混ぜる食品添加材としての使用も考えられる。
また、商品形態としては、粉末、錠剤、液体、ペースト状等としての製品提供が考えられる。健康食品としては、例えば、液剤、エキス剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、シロップ剤、飲料等の形態が考えられる。
さらに、本発明の製品としては、上記食品原料、食品添加物、調味料、サプリメント等の健康食品等々を含めた食品の他に、医薬品原料として、あるいは医薬品そのものとしての使用も当然に考えられる。
本発明に係る上記食品原料、食品添加物、調味料、サプリメント等の健康食品等々を含めた食品、医薬品原料、医薬品等々では、リパーゼ阻害活性を示すエスシン、デアセチルエスシン、デサシルエスシンのそれぞれの一日の摂取量として、現時点では、例えば、体重 1kg当り0.1 mg以上、500 mg以下が好ましいと考えられる。
かかるエスシン 、デアセチルエスシン、デサシルエスシンのリパーゼ阻害活性物質は、肥満防止効果を期待して、上記の如く、食品、医薬等として摂取することができる。本来、食事中の脂肪は、膵臓のリパーゼによって脂肪酸とβ−モノグリセリドに分解され、その後に小腸上皮細胞から吸収されるが、かかる膵臓リパーゼによる脂肪分解を阻害することによって、脂肪の吸収を低下させて肥満の防止を図ることができる。前記エスシン、デアセチルエスシン、デサシルエスシンは、かかるリパーゼの阻害活性を示している。
尚、天然の栃の実からの抽出物を製品として提供するについては、あく抜き処理前の栃の実を原料とする場合はエスシンを、あく抜き処理後の栃の実を原料とする場合にはデアセチルエスシン、デサシルエスシンを主体としたリパーゼ阻害活性物質の混合物となる場合もある。すなわち、リパーゼ阻害活性を示す栃の実由来のサポニンとして提供される場合もある。勿論、エスシン、デアセチルエスシン、デサシルエスシンの100%単離物を使用して、製品とする場合もある。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。本発明では、例えば、栃の実の抽出と精製に際しては、あく抜き処理前あるいはあく抜き処理後の栃の実をメタノールに浸漬抽出し、その後にメタノールを減圧乾固し、Diaion HP-20カラムとChoromatorex ODS 1024Tカラムで精製してサポニン画分を得た。その後、逆相の高速液体クロマトグラフィー(以下HPLC)であく抜き処理前の栃の実からエスシンIa、IIa、Ib、IIbを、あく抜き処理後の栃の実からデアセチルエスシンIa、IIa、Ib、IIbを得た。デサシルエスシンI、IIは、エスシンIa、IIaをアルカリ加水分解して調製した。
(実験材料)
実験材料としては、本実験では、兵庫県北部で採取された栃の実を使用した。採取した栃の実は、トチノキ(Aesculus turbinata)の種子を用いた。木灰は牧野木材工業(岡山)から得た。0.05% TMS含有ピリジン-d5は、和光純薬工業(大阪)から購入した。β−エスシン(β-escin)、その他の特級試薬、HPLC分析用のメタノール、そして蒸留水は、ナカライテスク(京都)から入手した。
(栃の実のあく抜き処理方法)
乾燥した栃の実を、4日間、水に浸漬して皮をやわらかくして剥いだ後、栃の実1kg(水分52.8 %, w/w)を3倍量の水で1時間、煮熟した。煮熟後の栃の実をあく抜きするため、木灰1kgに60℃の温湯(1.4リットル)を加えたペースト状の木灰液を用意した。これに栃の実1kgを浸漬し、さらに48時間放置した。その後、あく抜き状態を食味により確認した後、栃の実を水道水で洗浄した。あく抜き状態の判断は、食味により苦味の程度を熟練作業者が官能評価した。
(栃の実サポニンの薄層クロマトグラフィー:TLC分析)
TLCプレートは、silica gel 60F254 (MERCK製)を使用した。展開溶媒はクロロホルム/メタノール/蒸留水(65:35:10, v/v)の下層を用いた。発色は10 %硫酸溶液を噴霧し、150℃で加熱してスポットを確認した。TLCの標準物質としては、市販のβ−エスシン(Rf値0.24)を非特許文献4に記載のYoshikawaらの方法でアルカリ加水分解して得たデサシルエスシン(desacylescin:Rf値 0.12)を用いた。
(栃の実からのサポニンの抽出と定量)
栃の実中のサポニンの組成と含有量を分析するため、あく抜き前の皮剥栃の実からサポニンの抽出と精製を非特許文献4に記載のYoshikawaらの方法に準じて行った。すなわち、乾燥栃の実を、4日間、水に浸漬して皮をやわらかくした後、皮を除去した。この栃の実4kg(水分52.2 %, w/w)を1週間、メタノールに浸漬した後、濾過した。得られたメタノール抽出物を濃縮乾固して乾燥物154 gを得た。この抽出物を、Diaion HP-20カラム(長さ500 mm×内径 60 mm、日本錬水製、東京)に供し、蒸留水3000 mlで糖類画分を、メタノール3000 mlでサポニンを含む画分を、そして酢酸エチル3000 mlで脂質画分を溶出した。このカラムでのメタノール溶出画分を濃縮乾固して、粗サポニン画分の56 gを得た。
この粗サポニン10 gをChromatorex ODS 1024Tカラム(長さ320 mm×内径32 mm、富士シリシア化学製、愛知)に供し、40 %メタノール1000 ml、90 %メタノール1000 ml、100 %メタノール1000 mlの順に溶出した。標準物質として市販のβ−エスシンと市販のβ−エスシンから非特許文献4に記載のYoshikawaらの方法でアルカリ加水分解して得たデサシルエスシンを用いたTLC分析で、目的のサポニン類は90 %メタノール溶出画分に回収された。90 %メタノールを減圧乾固すると8.45 gの粗結晶が得られた。この操作を繰り返し、あく抜き処理前の栃の実4kg(水分52.2%, w/w)からサポニン類 47 gを得た。あく抜き処理後の栃の実(水分 64.8 %, w/w)についても同様の方法により、サポニン類を抽出し定量をした。Diaion HP-20カラムとChromatorex ODS 1024Tカラムを用いて精製したサポニン類11 gを得た。
(栃の実サポニンのHPLC分析と分取)
HPLC分析には、島津製作所製のLC-2010AシステムとクロマトパックCR8Aを用いた。分析用カラムとしてワイエムシィ製のYMC-Pack ODS AM(AM312-3)カラム(長さ150 mm×内径6 mm )を、また、分取用カラムには、ワイエムシィ製のYMC-Pack ODS AM (AM 322)カラム(長さ150 mm×内径10 mm )を利用した。移動相としてメタノール/ 10 mMリン酸緩衝液(pH 2.7)(62:38, v/v)を用い、溶出速度として、分析用カラムでは、0.8 ml/minに、分取用カラムでは3.0 ml/minに合わせた。検出は203 nmの波長で行った。
(エスシンIa、IIa、Ib、IIbの炭酸カリウム溶液による処理と成分分析)
あく抜き処理前の栃の実成分のエスシンIa、IIa、Ib、IIbのそれぞれの成分をHPLCで分離精製した。そして、木灰浸漬時とほぼ同様のアルカリ度に調製した5 %炭酸カリウム溶液(pH 11.7)中で、個々の成分を48時間、室温で静置した。その後、0.1 M塩酸水溶液で中和した後、C18マキシクリーンカートリッジカラム(オルテック製,東京)にかけて40 %メタノールで洗浄後、70 %メタノールで溶出し、0.45μmのメンブレンフィルターで濾過後、HPLC分析にかけた。
(機器分析)
核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR、13C-NMR)による分析には、日本電子社製のJEOL JNM-A400 FT-NMR(400Mz)を用いた。試料を0.05 %TMS含有ピリジン-d5に溶解し測定にかけた。質量分析には、サーモクエスト社製のイオントラップ型質量分析装置モデルLCQ Deca XPを用いて、正イオンモードでのエレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization、ESI)法により解析した。水分測定は、島津製作所製の赤外水分計EB-340MOCにより分析した。
(実験結果)
a)あく抜き処理前後の栃の実中のサポニン含量について
あく抜き後の栃の実中のサポニン残存量を把握する目的で、前記要領で、あく抜き処理前の栃の実と、あく抜き処理後のものから同様の操作でサポニンを抽出し、Diaion HP-20カラムとChromatorex ODS 1024Tカラムにより精製したサポニン画分の重量を比較した。
これらのサポニン画分を、TLCで分析したところ、あく抜き処理前のサポニン画分では、市販のβ−エスシンと同じ位置に主要なスポットが1つ確認された。また、あく抜き処理後のサポニン画分ではデサシルエスシンに相当するスポット、微量なエスシンに相当するスポット、そして、エスシンとデサシルエスシンの間にスポットが確認された。この結果、あく抜き前とあく抜き後では、サポニン類の組成変化が起こっていることが確認された。
これらのサポニン画分の重量を比較したところ、あく抜き処理前の栃の実(水分52.2%, w/w)4 kgからは47 g、あく抜き処理後の栃の実(水分64.8%, w/w)4 kgからは11 gのサポニン類を得た。したがって、水分量から、栃の実の乾燥固形重量あたりのサポニン量を算出すると、あく抜き処理前では、栃の実固形重量あたり2.5 %(w/w)、あく抜き処理後では0.78 %(w/w)のサポニンを含有していることが明らかとなり、あく抜き処理した場合も、サポニン類は30 %程度残存することが確認された。
b)あく抜き処理による栃の実中のサポニン成分の化学変化について
あく抜き処理により栃の実中のサポニン類の化学変化を調べるため、あく抜き処理前後の栃の実から抽出したサポニン画分をHPLC分析にかけた。図1に示すように、その結果、あく抜き処理前の栃の実のサポニンの溶出位置は、市販の標準品のβ-エスシンに含まれる4つの成分の保持時間と一致した。
これらの溶出パターンは、非特許文献10に記載の吉川らの報告とも一致した。さらに、図1(A)のi、ii、iii、ivの各ピークを分取し、1H-NMR,13C-NMR、そして、ESI法による正イオンモードでの質量分析にかけた。それらの分析した結果は、非特許文献4、11に記載の文献値と一致した。このことから、図1(B)のi、ii、iii、ivの4つのピークは、それぞれ、エスシンIa、IIa、Ib、IIbに相当することが確認された。
一方、あく抜き処理後の栃の実のサポニン成分は、図1(C)に示すように、i’、ii’、iii’、iv’の新たなピークを示した。非特許文献4記載のYoshikawaらの方法でエスシンの21位のアシル(acyl)基、22位のアセチル(acetyl)基がともに加水分解されたデサシルエスシンは、図1のHPLC条件で6分付近に溶出された。今回、観察された未知物質のピークは、それぞれエスシンIa、IIa、Ib、IIbが木灰のアルカリ成分により、21位のアシル基、もしくは22位のアセチル基が脱離したものと考えられる。
もし、エスシンの21位のアシル基が切断されると仮定すると、エスシンのIaとIb、そしてIIaとIIbが同一構造になり、ピークは2つになるはずである。しかし、今回の試料では、そのような結果は得られなかった。したがって、i’、ii’、iii’、iv’はエスシンIa、IIa、Ib、IIbの22位のアセチル基が脱離したものであると推定される。
尚、このことを確認するため、あく抜き処理前の栃の実に由来するエスシンIa、IIa、Ib、IIbの個々の成分をHPLCで分取して5 %炭酸カリウム溶液(pH 11.7)中で静置した。この反応物を中和し、C18マキシクリーンカートリッジカラムによる前処理後、HPLCによる分析にかけたところ、図2(A)〜(D)に示すように、エスシンIa、IIa、Ib、IIbからそれぞれ,i’、ii’、iii’、iv’が生成していることが確認された。
以上のことより、i’、ii’、iii’、iv’のピークは、エスシンIa、IIa、Ib、IIbのそれぞれが脱アセチル化したものと考えられた。したがって、栃の実の木灰によるあく抜き処理のアルカリ条件では、図3に示すように、22位のアセチル基が優先的に脱離することが確認された。
この理由として、エスシンの22位のアセチル基は、21位のアシル基に比べ立体的に水酸化物イオンの求核攻撃を受けやすいこと、そして、21位のアシル基はα、β共役カルボニル構造を有し、アシル基のカルボニル炭素に対する水酸化物イオンの求核攻撃を妨げたためと思われる。
また、図1(B)と図1(C)を比較した際に、あく抜き処理前後でエスシン類の存在比率が異なる理由については、i’、ii’のC21位のチグロイル(tigloyl)基は,iii’、iv’のアンゲロイル(angeloyl)基に比べ立体障害効果が少なく、i’、ii’はiii’、iv’よりも優位に加水分解され、デサシルエスシンI、IIに変換されたためと推察された。
c)あく抜き処理により生成したエスシン由来の未知のサポニンの化学構造について
TLC分析で、あく抜き処理後の主要なサポニンとして、デサシルエスシンとエスシンとデサシルエスシンの間の位置に未知のサポニンが確認された。なお、微量なエスシンも確認された。そこで、あく抜き処理により生成した図2のi’〜iv’の未知のサポニンの化学構造の確認のため、HPLCでそれぞれを単離し、質量分析、1H-NMR、そして13C-NMRによる構造解析を行った。質量分析の結果では、表1に示すように、エスシン類の22位のアセチル基が脱離することに一致する分子イオンピークが得られた。また1H-NMR分析により、表2に示すように、エスシンIaとIIaの21位のチグロイル基とIbとIIbのアンゲロイル基の存在が確認された。
さらに、表3に示す13C-NMR分析の結果により、あく抜き処理前のエスシン類のデータと比較して、21位のチグロイル基、あるいはアンゲロイル基に相当するシグナルが検出された。それに対して、あく抜き処理後のエスシン類の22位のアセチル基を示す1H-NMRと 13C-NMRのシグナルは認められなかった。
以上の結果より、HPLCでのi’、ii’、iii’、iv’はエスシンIa、IIa、Ib、IIbのそれぞれの22位のアセチル基が、図3に示すように、加水分解されたものであることが確認された。この結果、あく抜き処理されて食用となる栃の実の主要サポニンは、エスシン類が木灰のアルカリ成分により、22位のアセチル基が加水分解された化合物と同定された。
すなわちi’は21-O-tigloylprotoaescigenin 3-O-[β-D- glucopyranosyl-(1-2)] [β-D-glucopyranosyl-(1-4)]-β-D-glucuronopyranosyl acid、ii’が21-O-tigloylprotoaescigenin 3-O-[β-D-xylopyranosyl-(1-2)][β-D-glucopyranosyl -(1-4)]-β-D−glucuronopyranosyl acid、iii’が21-O-angeloylprotoaescigenin 3-O-[β-D− glucopyranosyl-(1-2)][β-D-glucopyranosyl-(1-4)]-β-D- glucuronopyranosyl acid、そしてiv’が21-O-angeloylprotoaescigenin 3-O-[β- D-xylopyranosyl-(1-2)][β-D-glucopyranosyl-(1-4)]-β-D-glucuronopyranosyl acidと決定された。
これらの4つのサポニンのうちi’とiii’は、非特許文献12に記載の如く、中国産トチノキ種子(Aesculus chinenis)から単離されたaesculioside A、aesculinoside Bと同一の化学構造である。中国産栃の実は、健胃や鎮痛の目的で使用される“Sha Luo Zi”と呼ばれる生薬の原料になっているという。しかし、ii’とiv’の化学構造をもつサポニンについては、我々の知る限り、まだ報告がない。
(膵臓リパーゼ阻害活性測定用の試料の調製)
トリオレインを基質とした場合の膵臓リパーゼ阻害活性の測定には、あく抜き処理前、あるいは、あく抜き処理後の栃の実のメタノール抽出物を、Diaion HP-20カラムとChromatorex ODS 1024Tカラムを用いて精製して得たサポニン画分を用いた。
4-methylumbelliferyl oleate (4-MU oleate)を基質とした場合の膵臓リパーゼ阻害活性の測定には、以下の単離物を用いた。
エスシンIa、IIa、Ib、IIbの各単離物は、あく抜き処理前の栃の実のメタノール抽出物を、Diaion HP-20カラムとChromatorex ODS 1024Tカラムを用いて精製して得たサポニン画分3 gからHPLCにより分取することにより得た。この結果、エスシンIaを255 mg、IIaを126 mg、Ibを169 mg、IIbを149 mgを単離した。
デアセチルエスシンIa、IIa、Ib、IIbの各単離物は、あく抜き処理後の栃の実のメタノール抽出物を、Diaion HP-20カラムとChromatorex ODS 1024Tカラムを用いて精製したサポニン画分3 gからHPLCにより分取することにより得た。この結果、デアセチルエスシンIaを58 mg、IIaを34 mg、Ibを102 mg、IIbを80 mgを単離した。
デサシルエスシンI、IIは、あく抜き処理前の栃の実から得たサポニン画分から単離したエスシンIa、IIaを、それぞれ、非特許文献4に記載されているYoshikawaらの方法でアルカリ加水分解することにより得た。なお、デサシルエスシンI、IIの構造は、ESI法による質量分析の結果と融点測定の結果を、非特許文献4のデータと比較することにより確認した。
このようにあく抜き処理前の栃の実、あく抜き処理後の栃の実のそれぞれに含まれているサポニン、すなわちエスシン、デアセチルエスシン、デサシルエスシンのそれぞれについて、リパーゼ阻害活性作用について調べた。かかるリパーゼ阻害活性については、次のようにして調べた。
(膵臓リパーゼの阻害活性の確認)
a)トリオレインを基質とした場合のリパーゼ阻害活性測定
トリオレインを基質とした場合の、ブタ膵臓リパーゼ阻害活性の測定は、リパーゼ反応により遊離したオレイン酸を、平山らのローダミン6G試薬で比色定量する方法で行った。
基質溶液は、トリオレイン0.1 gに0.5 %デオキシコール酸ナトリウムを含む0.1 M Mcllvaine緩衝液(pH 7.4)10mlを加え、超音波処理して調製した。ローダミン試薬は、ローダミン6G(100 mg)に、0.2Mリン酸緩衝液(pH 11)100 mlとベンゼン800 mlを加え、分液ロートで激しく振とうし、静置、分相させた後、上相のローダミン-ベンゼン溶液を褐色瓶にいれ冷暗所保管し、使用前にヘキサンで2倍に希釈し使用した。
試験管に基質溶液0.1 ml、0.5 M Mcllvaine緩衝液(pH 7.4)0.2 ml、蒸留水0.55 ml、被検物栃の実サポニン類(あく抜き処理前もしくはあく抜き処理後の栃の実のメタノール抽出物をDiaion HP-20カラムとChromatorex ODS 1024Tカラムで精製したもの)をジメチルスルホキシドに溶解したもの0.05 mlを加え混合した。
この溶液を、37℃で振とうしながら5分間予備加温した。この溶液に、ブタ膵臟リパーゼ(Sigma, typeII)を0.1 M Mcllvaine緩衝液(pH7.4)に溶解した酵素液を0.1 ml加え、37℃、30分振とうしながら反応させた。
反応後、ヘキサン/エタノール/3N 硫酸(400:200:1, v/v)を6 ml加え、よく混合した。静置後、上相のヘキサン相2 mlを別の試験管にとり、ローダミン試薬1 mlを加え、冷暗所で20 分間静置した。
この後、514 nmの吸収を測定することで遊離したオレイン酸を定量した。尚、ブランクには、100℃、10分加熱して失活させた酵素で反応させたものを用いた。
かかる方法で測定した栃の実のあく抜き処理前と、あく抜き処理後のサポニン類の結果を、図4に示す。
尚、図4に示すあく抜き処理前のサポニン類としては、HPLCの分析結果からは、エスシンIa、IIa、Ib、IIbの比が35:30:23:12の組成比の混合物であった。また、あく抜き処理後のサポニン類としては、HPLCの分析結果からは、デアセチルエスシンIa、IIa、Ib、IIbの比が13:13:50:24で、デサシルエスシンI、IIの比が58:42の混合物であった。また、微量に含まれているエスシン類では、エスシンIaとIIaは検出されず、Ib、IIbの比が59:41であった。デアセチルエスシン類とデサシルエスシン類とエスシン類の混合比は1:1:0.02であった。
b)4-methylumbelliferyl oleate (4-MU oleate)を基質とした場合の膵臓リパーゼ阻害活性測定
0.1 %デオキシコール酸ナトリウムを含む0.1 M Mcllvaine緩衝液(pH7.4)0.04 mlに、同様の緩衝液で溶解した0.1 mM 4-methylumbelliferyl oleate (4-MU oleate) 0.1 mlと、被検物である栃の実サポニン類を70 %に溶解した溶液0.01 mlをよく混合した後、ブタ膵臓リパーゼ(TypeII)を同様の緩衝液で溶解した酵素液0.05 mlを加えて、37℃、20分間反応させた。
反応後、0.1 Nの塩酸水溶液を加えて反応停止後、さらに0.1 Mのクエン酸ナトリウムを加えた後、励起波長320 nm、 蛍光波長450 nmの吸収を測定することにより遊離した4-MUの量を測定した。尚、ブランクには、100℃、10分加熱して失活させた酵素で反応させたものを用いた。
かかるリパーゼ阻害活性作用の測定方法により、栃の実から得られたサポニンのリパーゼ阻害活性について調べた。その結果を表4に示す。
表4に示すように、栃の実サポニン単離物のリパーゼ阻害活性の測定では、いずれのサポニンにも阻害活性が認められた。活性の強度はエスシン類>デサシルエスシン類>デアセチルエスシン類となった。また、エスシン類において、C21位のアシル基がangeloyl基を有しているIb、IIbの方が、tigloyl基を有しているIa、IIaよりも高い阻害活性を示すことが分かった。
あく抜き処理後のサポニン画分は、あく抜き処理前に比べリパーゼ阻害活性は低かったが、それでも十分な抗肥満効果があると考えられる。
次に、かかる栃の実のサポニンの摂取における高脂肪食誘発肥満マウスに及ぼす影響を調べた。ICRメスマウス(3週齢)を10日間普通食(オリエンタル酵母製、MF飼料)にて予備飼育した。その後、マウスの平均体重がほぼ等しくなるように、高脂肪食(HF)、高脂肪食+0.1%あく抜き処理前の栃の実サポニン(HFTB-0.1)、高脂肪食+0.5%あく抜き処理前の栃の実サポニン(HFTB-0.5)、高脂肪食+0.5%あく抜き処理後の栃の実サポニン(HFTA-0.5)、普通食(MF)を投与する5群に分けた。
尚、試験に用いた栃の実サポニン類は、あく抜き処理前もしくはあく抜き処理後の栃の実のメタノール抽出物をDiaion HP-20カラムとChromatorex ODS 1024Tカラムで精製したものである。
1週間毎に、マウスの体重を測定した。最終週に、エーテルで軽麻酔後、マウスを解剖して採血して血液検査、腹腔内脂肪の重量測定を行った。
尚、食餌の配合は表5の通りである。
その結果、図5に示すように、サポニン投与群はいずれも体重の増加が抑制された。また、腹腔内脂肪重量、血中中性脂肪もサポニン投与群は有意に少なかった。
また、かかる高脂肪食投与下2日間あたりのマウス糞便中に含まれる脂質重量を測定したところ、サポニン投与群は有意に無投与群に比べて脂質含量が多かった。サポニン投与群ではリパーゼが阻害されたことにより、食餌中の脂質が分解せずに排泄されたとものと考えられる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
前記実施の形態では、栃の実由来のエスシン、デアセチルエスシン、デサシルエスシンについて述べたが、本発明に係るエスシン、デアセチルエスシン、デサシルエスシンについては、天然品由来ではなくても、化学合成品であっても構わない。かかる化学合成品においては、天然由来物質をスタート物質とした半合成品であっても構わない。
また、本実施の形態では、栃の実由来のサポニン類として確認されたが、しかし、他の木の実におけるサポニン類に含まれているエスシン、デアセチルエスシン、デサシルエスシンであっても構わないことは言うまでもない。さらには、かかるエスシン、デアセチルエスシン、デサシルエスシンは、木の実由来でなくても一向に構わない。
本発明は、リパーゼ阻害活性を示す健康食品、機能性食品等の分野で利用することができる。
(A)〜(C)は逆相HPLCの分析結果を示すチャートで、(A)は市販のβ-エスシンについて、(B)はあく抜き処理前の栃の実由来のサポニンについて、(C)はあく抜き処理後の栃の実由来のサポニンについての分析結果である。 エスシンIa、IIa、Ib、IIbのアルカリ反応物の逆相HPLCの分析結果を示すチャートで、(A)の上段はエスシンIa、(B)の上段はエスシンIIa、(C)の上段はエスシンIb、(D)の上段はエスシンIIbに関するもので、各々の下段にはそれぞれ5%の炭酸カリウムでアルカリ処理した後の反応後に関するものである。 あく抜き処理前後の栃の実由来のサポニンの化学構造を示す説明図である。 あく抜き処理前後の栃の実由来のサポニン類のリパーゼ阻害活性を示す説明図である。 マウスの体重に与える栃の実サポニンの影響を示す説明図である。

Claims (8)

  1. (化1)に示す化学構造の化学物質を有することを特徴とするリパーゼ阻害
    (但し、Rは、チグロイル(tigloyl)基、アンゲロイル(angeloyl)基、Hのいずれかであり、Rは、アセチル(acetyl)基、Hのいずれかであり、Rは、D−グルコピラノシル(D-glucopyranosyl)、D−キシロピラノシル(D-xylopyranosyl)のいずれかである。)
  2. 請求項1記載のリパーゼ阻害剤は、栃の実から抽出されたものであることを特徴とするリパーゼ阻害
  3. 請求項1記載のリパーゼ阻害剤は、
    前記R がチグロイル基、R がアセチル基、R がD−グルコピラノシルであるエスシンIa、
    前記R がチグロイル基、R がアセチル基、R がD−キシロピラノシルであるエスシンIIa、
    前記R がアンゲロイル基、R がアセチル基、R がD−グルコピラノシルであるエスシンIb、
    および、
    前記R がアンゲロイル基、R がアセチル基で、R がD−キシロピラノシルであるエスシンIIb、
    のいずれかを有することを特徴とするリパーゼ阻害剤。
  4. 請求項1記載のリパーゼ阻害剤は、
    前記R がチグロイル基、R がHで、R がD−グルコピラノシルであるデアセチルエスシンIa、
    前記R がチグロイル基、R がHで、R がD−キシロピラノシルであるデアセチルエスシンIIa、
    前記R が、アンゲロイル基、R がHで、R がD−グルコピラノシルであるデアセチルエスシンIb、
    および、
    前記R がアンゲロイル基、R がHで、R がD−キシロピラノシルであるデアセチルエスシンIIb、
    のいずれかを有することを特徴とするリパーゼ阻害剤。
  5. 請求項1記載のリパーゼ阻害剤は、
    前記R 、R がHで、R がD−グルコピラノシルであるデサシルエスシンI、または、
    前記R 、R がHで、R がD−キシロピラノシルであるデサシルエスシンIIを有することを特徴とするリパーゼ阻害剤。
  6. 栃の実をあく抜き処理するステップと、
    あく抜き処理後の前記栃の実からデアセチルエスシンを抽出する抽出ステップとを有することを特徴とする
    デアセチルエスシンを有効成分として含むリパーゼ阻害剤の製造方法。
  7. 栃の実をあく抜き処理するステップと、
    あく抜き処理後の前記栃の実からデサシルエスシンを抽出する抽出ステップとを有することを特徴とする
    デサシルエスシンを有効成分として含むリパーゼ阻害剤の製造方法。
  8. 栃の実をアルコールに浸漬する工程と、
    前記工程で得られたアルコールからエスシンを抽出する抽出ステップとを有することを特徴とする
    エスシンを有効成分として含むリパーゼ阻害剤の製造方法。
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