ところで、定期的なメッセージ交換が上述のように頻繁に行われ、しかもシステムを構成する火災感知器の台数が多ければ多いほど火災感知器同士の送信タイミングが重なって、信号の衝突が生じる確率が高くなるので、かかる衝突を回避する必要がある。
そのために特許文献1に記載のものでは、無線通信に使用されるキャリアが検出されている間は無線信号の送信を行わずにキャリアが検出されていないときに無線信号を送信するキャリアセンス方式が採用されている。
しかしながら、キャリアセンス方式を採用した火災報知システムでは、何れかの火災感知器が火災を感知して発報信号を送信する場合、まず受信を行ってキャリアが検出されていなければ、受信から送信に切り換えて発報信号を送信するのであるが、受信/送信の切り替えに一定の時間を要するため、受信状態から送信状態に切り替える間に他の火災感知器が送信を開始した場合はこれを検出することができず、信号の衝突が発生する可能性があった。
また、無線信号の伝送プロトコルとしてPure−ALOHA方式を採用した場合、無線信号の衝突による失報を回避するために連送回数を増やすと、送信時間デューティが増加し、規格で決められた制限値を超えてしまう可能性があった。
このように上述の衝突回避方法ではそれぞれ別個の問題が生じるために、受信装置と複数の火災感知器との間の無線通信を時分割多元接続(TDMA)方式で行うことによって、信号の衝突を回避しつつ通信の信頼性を確保した火災報知システムを本出願人は既に提案している(特願2005−168719号など)。この火災報知システムでは、受信装置から火災感知器への下り方向の1つのタイムスロットと、火災感知器から受信装置への上り方向の複数のタイムスロットとで構成されるフレームが一定数集まったスーパーフレームの中で、受信装置並びに火災感知器が火災感知情報を少なくとも含む情報を授受している。また受信装置は、スーパーフレームの先頭フレームの下りタイムスロットにおいて、定期送信信号を各火災感知器に定期的に送信し、この定期送信信号を受信した火災感知器では、自器の状態を示す応答信号を自器に割り当てられた上りタイムスロットで返送しており、このような定期通信処理を行うことで受信装置は各火災感知器の状態を把握している。
ここで、受信装置と複数の火災感知器との間で時分割多元接続方式により無線通信を行うためには、先ず受信装置と各火災感知器との間で同期をとる必要がある。例えば携帯電話の通信方式では、端末(火災報知システムでは火災感知器に相当)側で、基地局(火災報知システムでは受信装置に相当)からの制御チャンネルを先ず受信して、通信のタイミングを取得するようにしている。しかしながら、火災報知システムでは携帯電話の通信方式のように制御チャンネルのようなものが存在せず、また常に通信が行われるものでも無いため、同期がとれていない火災感知器では、受信装置に対して次のスーパーフレームの先頭スロットまでの時間情報を要求する同期要求信号を送信し、受信装置が、同期要求信号に対して時間情報を含む応答信号を返送することで、各火災感知器が通信の同期をとるのであるが、上述の定期通信処理を行う定期通信フレームにおいて、何れかの火災感知器から同期要求信号が送信された場合、受信装置からの無線信号或いは他の火災感知器からの無線信号と衝突が発生し、定期通信処理および同期処理の双方に失敗するという問題があった。
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、定期通信処理を確実に行いつつ、同期処理を行えるようにした火災報知システムを提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、火災を感知する複数の火災感知器と、各々の火災感知器との間で電波を媒体とする無線通信を行う受信装置とを有し、火災感知器は、火災に伴って発生する温度変化及び煙のうち少なくとも何れか一方を検出することで火災を感知する感知手段と、受信装置との間で無線信号を送受信する第1無線送受信手段と、少なくとも感知手段で火災が感知されたときに第1無線送受信手段を制御して火災感知情報を無線信号により送信させる第1制御手段と、を備え、受信装置は、火災感知器との間で無線信号を送受信する第2無線送受信手段と、第2無線送受信手段を制御するとともに第2無線送受信手段で受信する無線信号から火災感知情報を得る第2制御手段と、を備え、受信装置から火災感知器への下り方向の1つのタイムスロットと、火災感知器毎に個別に割り当てられた火災感知器から受信装置への上り方向の複数のタイムスロットとで構成されるフレームが一定数集まったスーパーフレームの中で、受信装置の第1制御手段並びに火災感知器の第2制御手段が火災感知情報を少なくとも含む情報を授受し、スーパーフレームを構成する複数のフレームのうち少なくとも1つのフレームを定期通信フレームとし、定期通信フレームにおいて、受信装置が各火災感知器に定期送信信号を送信し且つ定期送信信号に対する各火災感知器からの応答信号を受信装置が受信する火災報知システムであって、通信の同期がとれていない火災感知器の第1制御手段は、第1無線送受信手段を制御して、次のスーパーフレームの先頭スロットまでの時間情報を要求する同期要求信号を受信装置に対して送信させ、受信装置の第2制御手段は、定期通信フレーム以外のフレームで第2無線送受信手段が火災感知器からの同期要求信号を受信した場合、第2無線送受信手段を制御して上記時間情報を含む応答信号を火災感知器に返送させる同期処理を行い、定期通信フレームで第2無線送受信手段が火災感知器からの同期要求信号を受信した場合、同期処理を行わず定期通信処理を実行することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、火災感知器に、同期要求信号の再送処理を作業者に促すための表示を行う表示手段を設け、火災感知器の第1制御手段は、同期要求信号に対する応答信号を受信できない場合、第1無線送受信手段が同期要求信号を送信してから所定の待機時間が経過した時点で、表示手段を制御して同期要求信号の再送処理を作業者に促すための表示を行わせることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1の発明において、火災感知器の第1制御手段は、同期要求信号に対する応答信号を受信できない場合、第1無線送受信手段が同期要求信号を送信してから所定の待機時間が経過した時点で、第1無線送受信手段を制御して同期要求信号を受信装置に再送させることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1の発明において、火災感知器に、受信装置が同期処理を実行可能な状態であることを表示する表示手段を設け、受信装置の第2制御手段は、第2無線送受信手段が定期通信フレームにおいて火災感知器からの同期要求信号を受信した場合、定期通信フレームが終了した時点で第2無線送受信手段を制御して、同期処理を実行可能な状態であることを報知する報知信号を火災感知器へ送信させ、同期要求信号を送信した火災感知器の第1制御手段は、第1無線送受信手段が受信装置からの報知信号を受信すると、表示手段を制御して受信装置が同期処理を実行可能な状態であることを表示させることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1の発明において、受信装置の第2制御手段は、第2無線送受信手段が定期通信フレームにおいて火災感知器からの同期要求信号を受信した場合、定期通信フレームが終了した時点で第2無線送受信手段を制御して、同期処理を実行可能な状態であることを報知する報知信号を火災感知器へ送信させ、同期要求信号を送信した火災感知器の第1制御手段は、第1無線送受信手段が受信装置からの報知信号を受信すると、第1無線送受信手段を制御して同期要求信号を受信装置に再送させることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、通信の同期がとれていない火災感知器から同期要求信号が送信された場合、受信装置の第2制御手段では、定期通信フレームで第2無線送受信手段が同期要求信号を受信した場合、同期処理を行わずに、定期通信処理を実行しているので、時間情報を含む応答信号が返送されることによって発生する信号の衝突を防止して、定期通信処理を確実に行わせることができるという効果がある。しかも、受信装置の第2制御手段では、定期通信フレーム以外のフレームで第2無線送受信手段が同期要求信号を受信した場合、第2無線送受信手段を制御して時間情報を含む応答信号を火災感知器に返送させる同期処理を行っているので、定期通信処理を妨げることなく、通信の同期を確実にとることができるという効果がある。
請求項2の発明によれば、火災感知器の第1制御手段は、同期要求信号に対する応答信号を受信できない場合、同期要求信号を送信してから所定の待機時間が経過した時点で、表示手段により同期要求信号の再送処理を作業者に促すための表示を行わせているので、この表示を見た作業者が再送処理を行うことで、定期通信処理を確実に確保しつつ、通信の同期をとることができる。
請求項3の発明によれば、火災感知器の第1制御手段は、同期要求信号に対する応答信号を受信できない場合、同期要求信号を送信してから所定の待機時間が経過した時点で、同期要求信号を送信しているので、定期通信処理を確実に確保しつつ、定期通信処理が終了した後で自動的に通信の同期をとることができる。
請求項4の発明によれば、火災感知器の第1制御手段は、受信装置からの報知信号を受信すると、表示手段により同期処理を実行可能な状態であることを表示させているので、この表示を見た作業者が再送処理を行うことで、通信の同期を確実にとることができる。
請求項5の発明によれば、火災感知器の第1制御手段は、受信装置からの報知信号を受信すると、第1無線送受信手段を制御し、受信装置に対して同期要求信号を送信させているので、同期処理が実行可能な状態の受信装置に同期要求信号を再送することで、通信の同期を確実にとることができる。
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
本発明の実施形態1を図1〜図3に基づいて説明する。本実施形態の火災報知システムは、1台の受信装置1と、複数台の火災感知器10とで構成されている。
火災感知器10は、例えば施設の天井に設置されるものであって、図1(a)に示すように火災に伴って発生する温度変化又は煙の何れか一方、或いは、温度変化と煙の両方を検出することで火災を感知する感知部11と、所定のデータフォーマットを規定の周波数の搬送波に変復調し、受信装置1との間で電波を媒体とする無線信号を送受信する無線送受信部12(第1無線送受信手段)と、無線送受信部12を制御して後述する火災感知情報や応答メッセージなどを無線信号により送信させる制御部13(第1制御手段)と、電池を電源として感知部11、無線送受信部12、制御部13などの動作電源を生成する電池電源部14と、無線信号を送受信するためのアンテナ15と、同期要求信号を送信してから所定の待機時間を計時するタイマ16と、制御部13によって点灯、消灯が制御されるLED17(表示手段)とを備える。制御部13はマイコンとEEPROMなどの不揮発性メモリを主構成要素とし、不揮発性メモリに格納されているプログラムを実行することで後述する各種の処理を実行するものである。なお、各火災感知器10には固有のアドレスが製造時若しくは施工時に付与され、制御部13の不揮発性メモリに格納されている。
一方、受信装置1は、例えば施設の管理室などに設置されるものであって、図1(b)に示すように後述するデータフォーマットを規定の周波数の搬送波に変復調し、火災感知器10との間で電波を媒体とする無線信号を送受信する無線送受信部2(第2無線送受信手段)と、各種の設定を行うための操作スイッチ、火災警報や種々の表示を行うための表示デバイス(例えば、液晶表示器など)、警報音や警報メッセージ等を鳴動するスピーカなどを有する表示操作部3と、無線送受信部2や表示操作部3の制御を行う制御部4(第2制御手段)と、商用電源から無線送受信部2、表示操作部3、制御部4の動作電源を生成する電源部5と、無線信号を送受信するためのアンテナ6とを備える。制御部4はマイコンとEEPROMなどの不揮発性メモリを主構成要素とし、不揮発性メモリに格納されているプログラムを実行することで後述する各種の処理を実行するものである。なお、受信装置1にも火災感知器10と異なる固有のアドレスが製造時若しくは施工時に付与され、制御部4の不揮発性メモリに格納されている。
なお、受信装置1には消防署への通報装置となる所謂受信機(図示せず)が有線接続されており、受信装置1が火災感知器10から火災の発報信号を受信すると、受信した発報信号を受信機へ有線信号で出力し、受信機から警報を発生させたり消防署へ通報させるようになっている。すなわち受信装置1は、火災感知器10から無線信号で送信された火災の発報信号を有線信号に変換して所謂受信機に出力する無線−有線変換ユニットとしての機能を有しているのであるが、受信装置1に旧来の受信機の機能を持たせ、受信装置1が火災感知器10から火災の発報信号を受信すると、受信装置1が警報を発したり消防署に直接通報するようにしても良い。
この火災報知システムでは、受信装置1と複数の火災感知器10との間の無線通信を、受信装置1を親機とする時分割多元アクセス(TDMA)方式により双方向で行っている。また、その無線通信には免許が不要な周波数を利用しており、日本では小電力セキュリティや特定小電力無線規格、米国ではFcc Regulations Part15 SubpartC、欧州ではShort Range Device規格に準拠した無線特性を満足しなければならない。例えば欧州で策定される予定のEN規格(EN54−25)では、300秒に1回の割合で定期的なメッセージ交換を行うことが義務づけられており、受信装置1から10台の火災感知器10に対して定期送信信号を一斉に送信した場合、最初の火災感知器10からの応答信号を10秒以内に受信し、全ての火災感知器10からの応答信号を100秒以内に受信することが要求されており、さらに送信時間デューティを0.1%未満に制限することが要求されている。
ここで、受信装置1と火災感知器10との間で授受される信号のデータフォーマットを図2(b)に示す。このデータフォーマットは、1と0が交番する32ビットのプリアンブル(ビット同期パターン)PRと、規定のビット列からなる16ビットのユニークワード(フレーム同期パターン)UWと、火災報知システムに割り当てられる32ビットの固有のID(システムID)SysIDと、各火災感知器10に割り当てられた8ビットの固有のID(感知器ID)NodeIDと、16ビットのメッセージMsgと、16ビットの誤り検出符号CRCとで構成される。すなわち、火災感知器10の固有アドレスは(システムID+感知器ID)となり、受信装置1の固有アドレスはシステムIDとなる。
受信装置1が特定の火災感知器10を指定してメッセージを送信する場合は、データフォーマットの感知器IDに当該火災感知器10の感知器IDを指定し、全ての火災感知器10に対してメッセージを同報送信する場合は、データフォーマットの感知器IDに「0(ゼロ)」を指定して送信すればよい。また火災感知器10が受信装置1に対して返信する場合、自器の感知器IDをデータフォーマットの感知器IDに設定して送信すればよい。
一方、無線信号を受信した火災感知器10並びに受信装置1では、無線送受信部12,2において受信信号を増幅し且つデータフォーマットを復調して制御部13,4に出力する。制御部13,4では、無線送受信部12,2で復調されたデータをマイコンが具備するデジタルの入力ポートでサンプリングし、プリアンブルPRの受信中にビットタイミングを抽出して、次に連続する16ビット分の受信ビットを規定のユニークワードと一致するまで1ビットずつシフトすることでユニークワードを検出する。さらに制御部13,4は、受信したシステムIDと感知器IDを不揮発性メモリに格納されている固有アドレスと照合し、これらが一致し且つビット誤りが検出されなかった場合にメッセージMsgを受理する。
また図2(a)は本実施形態の無線通信で運用される通信フレームを示し、受信装置1から所望の或いは全ての火災感知器10に宛てて発する下り情報を格納する下り方向の1つのタイムスロットBと、下りタイムスロットBに続けて各火災感知器10から受信装置1に宛てて発する上り情報を格納する上り方向のn個(例えばn=99)のタイムスロットDl〜Dnとで1つのフレームF1,F2…を構成し、さらにm個(例えばm=30)の連続するフレームF1〜Fmを集めてスーパーフレームSFを構成してある。ここで、送信時間デューティの制限から、上述した定期送信信号とそれに対する応答信号の交換はスーパーフレームSFの先頭フレームF1(このフレームF1を定期通信フレームと言う)で実施し、その他のフレームでは定期的な信号の送受信は行わず、火災を感知した時のみ火災報知信号を送信するようにしており、火災を感知していない場合はスタンバイ状態となっている。また各フレームFl〜Fmにおける上り方向のタイムスロットDl〜Dnを個々の火災感知器10に個別に割り当てることによって、定期的なメッセージ交換(定期送信信号とそれに対する応答信号の交換)の間隔が相対的に短い場合、例えば上述したEN規格のように300秒に1回というような場合であっても、火災感知器10から送信される無線信号同士の衝突を確実に回避することができる。なお各火災感知器10に対する上り方向のタイムスロットDl〜Dnの割り当ては、例えば、火災感知器10に設けたディップスイッチ(図示せず)によって設定したり、製造工程において制御部13の不揮発性メモリに予め格納しておいたり、あるいは、設置時に無線通信を用いて受信装置1から順番に各火災感知器10に割り当てて制御部13の不揮発性メモリに格納するなどの方法で行えばよい。
上述のようなTDMA方式による無線通信では、受信装置1と各火災感知器10との間でフレーム同期をとる必要があるのであるが、本システムを新規に構築したり、本システムに火災感知器10を追加する際に受信装置1に火災感知器10を新規に登録する場合や、システムの動作中に何らかの原因で同期が外れたことを、受信装置1からの下り信号を複数回に亘って受信できないことにより検知して、火災感知器10が再同期を受信装置1に要求する場合や、電池切れ或いは故障などで通信不能となった後に火災感知器10を復旧させてシステムに再登録させる場合には、火災感知器10と受信装置1との間で通信の同期が確立していないため、先ず通信の同期をとる必要がある。
フレーム同期がとれていない火災感知器10の制御部13は、受信装置1に対して通信のタイミング、すなわち次のスーパーフレームの先頭スロットまでの時間情報を要求する同期要求信号を無線送受信部12から送信させるのであるが、制御部13では、同期がとれておらず自器に割り当てられたスロット位置(タイミング)が判っていないため、同期要求信号が必要になった任意の時点で、無線送受信部12を制御して同期要求信号を送信させることになる。
以下では、同期が確立していない火災感知器10が通信の同期をとる場合の動作を図3のフローチャートに基づいて説明する。受信装置1の制御部4は、下りタイムスロットB以外は無線送受信部2を受信状態で動作させており(ステップS1)、その間に同期がとれていない火災感知器10の制御部13が、無線送受信部12を制御して受信装置1へ同期要求信号を送信させると(ステップS2)、受信装置1の無線送受信部2が火災感知器10からの同期要求信号を受信する。
この時、受信装置1の制御部4では、無線送受信部2が同期要求信号を受信したフレームが定期通信フレームF1であるか否かを判断し(ステップS3)、定期通信フレームF1でなければ、無線送受信部2を制御して上述の時間情報を含む応答信号を、同期要求信号を発した火災感知器10に返送させる同期処理を実行する(ステップS11)。同期要求信号を発した火災感知器10では、無線送受信部12が受信装置1から返送された応答信号を受信し、制御部13が応答信号に含まれる時間情報を取得することで、次のスーパーフレームSFの先頭スロットF1までの時間情報を把握でき、通信の同期をとることができる。そして、通信の同期がとれた後は、火災感知器10に割り当てられたタイムスロットでTDMA方式による無線通信を行うのである。
一方、ステップS3において同期要求信号を受信したフレームが定期通信フレームF1の場合、受信装置1の制御部4では、無線送受信部2が定期通信を行っている火災感知器10からの信号(すなわち定期送信信号に対する応答信号)を受信できたか否かを判定する(ステップS4)。ここで、受信装置1の無線送受信部2が火災感知器10からの応答信号を受信できた場合は、制御部4は定期通信処理をそのまま継続して実行した後(ステップS12)、定期通信処理を終了する(ステップS7)。
この場合、受信装置1では火災感知器10からの同期要求信号を受信せず、定期通信処理を優先して実行しているので、定期的に実施される定期通信処理を確実に行えるのであるが、同期要求信号を送信した火災感知器10では、同期要求信号に対する応答信号が返送されないため、通信の同期に失敗することになる。
ここで、同期要求信号を送信した火災感知器10では、制御部13が、同期要求信号に対する応答信号を所定時間内(例えばタイムスロット1個分の時間)に受信できないことから同期に失敗したと判断しており、同期に失敗したと判断した時点でタイマ16を起動して所定の待機時間の計時を開始させるとともに、LED17を点滅させており、LED17の点滅状態により同期に失敗したことを表示する。そして、上記の待機時間が経過し、タイマ16の計時が終了すると(ステップS8)、制御部13はLED17を点滅状態から点灯状態に切り替えて、同期要求信号の再送を促すリトライ表示を行う(ステップS9)。ここに、タイマ16が計時する待機時間は、スーパーフレームSFを構成する1つのフレームのフレーム長に設定されており、例えば1フレームのフレーム長が10秒であれば、待機時間も10秒に設定されている。したがって、同期要求信号を送信した火災感知器10の制御部13では、同期に失敗したと判断した時点より10秒(1フレーム長)が経過した時点で、LED17を点灯状態に切り替えてリトライ表示を行うのである。なお、同期要求信号の送信時から10秒が経過していれば定期通信フレームF1は終了しているので、この表示を見た作業者が再送処理を行い(ステップS10)、火災感知器10から同期要求信号を再送させれば、受信装置1は定期通信フレームF1以外のフレームで同期要求信号を受信することができ、受信装置1により同期処理を確実に行わせることができる(ステップS11)。なお、火災感知器10の制御部13は、リトライ表示後に無線送受信部12から同期要求信号を再送させると、LED17を消灯させて、リトライ表示を終了する。
ここで、作業者が火災感知器10から同期要求信号を再送させる操作は以下のような方法で行うことができる。火災感知器10では施工時に必ず同期処理が行われるように、電池電源部14に電池を接続すると、制御部13が無線送受信部12を制御して同期要求信号を送信させるようになっている。したがって、LED17のリトライ表示を見た作業者は、この火災感知器10の電池電源部14から電池を一旦外し、その後電池を再接続することで、無線送受信部12から同期要求信号を再送させることができる。また火災感知器10に、同期要求信号を無線送受信部12から強制的に送信させるための操作釦(図示せず)が設けられている場合は、LED17のリトライ表示を見た作業者が上記の操作釦を押操作して、同期要求信号を再送させれば良い。
また、ステップS4において受信装置1の無線送受信部2が定期通信中の信号を受信できなかった場合、その原因としては、火災感知器10からの同期要求信号を受信したために、定期通信中の火災感知器10からの応答信号を受信できなかった場合(ケース1)と、定期通信中の信号と同期要求信号の両方とも受信できなかった場合(ケース2)とがあるが、前者のケース1では受信装置1の制御部4は、定期通信処理を優先するため、火災感知器10からの同期要求信号を無視することになる。
何れのケース1,2でも、何れかの火災感知器10から定期送信信号に対する応答信号を受信できていないため、受信装置1の制御部4では、定期通信の信号を受信できなかったタイムスロットに対応する火災感知器10に対して、定期通信フレームF1の次のフレームF2で無線送受信部12から応答信号の再送を要求する信号を送信させる(ステップS5)。ここで、受信装置1の制御部4は、応答信号を受信できなかったスロットに対応する火災感知器10のアドレスが判っているので、フレームF2の下りタイムスロットBで、その火災感知器10のアドレスを指定して応答信号の再送を要求する信号を送信させ、この火災感知器10からの応答信号を受信できれば(ステップS6)、定期通信処理を終了する(ステップS7)。例えば定期通信フレームF1において、受信装置1がスロットD3に割り当てた火災感知器10から応答信号を受信できなかった場合、受信装置1の制御部4は、無線送受信部2を制御し、次のフレームF2の下りタイムスロットBで、スロットD3に割り当てた火災感知器10のアドレスを指定して再送要求信号を送信させ、この火災感知器10が再送要求信号を受信できれば、フレームF2の上りタイムスロットD3で火災感知器10から応答信号が再送されるので、定期通信処理を完了することができる。
また、何れのケース1、2でも同期要求信号を送信した火災感知器10では、受信装置1から同期要求信号に対する応答信号が返送されないため、通信の同期に失敗することになる。ここで、同期要求信号を送信した火災感知器10では、制御部13が、同期要求信号に対する応答信号を所定時間内に受信できないことから同期に失敗したと判断しており、同期に失敗したと判断した時点でLED17を点滅させるとともに、タイマ16による計時動作を開始させている。そしてタイマ16の計時が終了すると(ステップS8)、制御部13はLED17を点滅状態から点灯状態に切り替えて、リトライ表示を行わせている(ステップS9)。すなわち、同期要求信号を送信した火災感知器10の制御部13では、同期に失敗したと判断した時点より待機時間(例えば10秒)が経過した時点で、LED17を点灯状態に切り替えており、この表示を見た作業者が再送処理を行って(ステップS10)、火災感知器10から同期要求信号を再送させることで、受信装置1により定期通信フレームF1以外の通信フレームで同期要求信号を受信させて、受信装置1により同期処理を行わせることができる(ステップS11)。なお、火災感知器10の制御部13は、リトライ表示後に無線送受信部12から同期要求信号を再送させると、LED17を消灯させて、リトライ表示を終了する。
また、定期通信フレームF1において何れかの火災感知器10から定期送信信号に対する応答信号を受信できなかったために、定期通信フレームF1以外のフレームで、応答信号の再送を要求する再送要求信号の送信中や、この再送要求信号に対する応答信号の返送中に、他の火災感知器10からの同期要求信号の送信が偶然に一致した場合、図3に示したフローチャートのステップS4からステップS11までの処理を実行し、同期処理が完了するまで上記の処理を繰り返し行えばよい。
上述のように本実施形態では、受信装置1の制御部4が同期処理に優先して定期通信処理を実行しているので、各火災感知器10との間の定期通信処理を確実に行うことができる。しかも、同期処理に優先して定期通信処理を実行したために、火災感知器10で同期処理に失敗した場合、同期に失敗した時点から所定の待機時間が経過した時点で、火災感知器10の制御部13がLED17を点滅状態から点灯状態に切り替えることで、作業者に対して同期要求信号の再送処理を促すリトライ表示を行っているので、作業者に同期要求信号の再送処理(リトライ処理)を行わせることで、定期通信処理を確保しつつ、通信の同期をとる必要がある火災感知器10に対しては同期処理を確実に行わせることができる。なお、本実施形態ではリトライ表示を行う表示手段としてLED17を用いているが、表示手段をLED17のような点灯表示部に限定する趣旨のものではなく、ブザーなどの報知音で再送処理を促す報知音発生部により表示手段を構成しても良い。
ところで、本実施形態では火災感知器10の制御部13が、同期に失敗したと判断した時点でLED17を点滅させるとともに、タイマ16の計時を開始させ、タイマ16がカウントアップすると、LED17を点滅状態から点灯状態に切り替えてリトライ表示を行うのであるが、タイマ16がカウントアップした時点で、無線送受信部12を制御して同期要求信号を自動的に再送させるようにしても良く、作業者による再送処理が不要なので、通信の同期をとる作業の作業性を向上させることができる。なお、この場合でも、火災感知器10の制御部13が、LED17を用いてリトライ表示を行わせるようにしても良く、火災感知器10の現在の状態が容易に判別できるという利点がある。
(実施形態2)
本発明の実施形態2を図4に基づいて説明する。尚、火災報知システムの構成は実施形態1と同様であるので、同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
本システムでは、実施形態1と同様に、受信装置1の無線送受信部2が定期通信フレームF1において火災感知器10からの同期要求信号を受信した場合、制御部4は同期処理を行わず、定期通信処理を継続して実行するのであるが、定期通信フレームF1を終了して同期処理を実行可能な状態となった場合、同期処理を実行可能な状態であることを示す報知信号を無線送受信部2から、同期要求信号を送信した火災感知器10へ送信させ、火災感知器10ではLED17の表示により受信装置1が同期処理を可能な状態であることを作業者に報知している。
以下に同期が確立していない火災感知器10が通信の同期をとる場合の動作を図4のフローチャートに基づいて説明する。なお図4中のステップS21からステップS27までの処理は、図3のフローチャートのステップS1からステップS7までの処理と同様であるので、その説明は省略し、ステップS28以後の動作について説明を行う。
定期通信フレームF1において、同期のとれていない火災感知器10から受信装置1に同期要求信号が送信された場合、受信装置1の制御部4では、同期処理は行わずに定期通信処理を継続して実行し、定期通信処理を終了する(ステップS24からステップS27までの処理)。受信装置1の制御部4が定期通信処理を終えると、定期通信フレームF1が終了し次のフレームに移行しているので、同期処理を行うことができる。この時、受信装置1の制御部4では、無線送受信部2を制御して、同期処理を実行可能な状態であることを示す報知信号を、同期要求信号を送信した火災感知器10に送信させる(ステップS28)。一方、同期要求信号を送信した火災感知器10では、同期要求信号に対する応答信号を受信できないため、通信の同期に失敗するのであるが、無線送受信部12が受信装置1から上記の報知信号を受信すると、制御部13がこの報知信号に基づいてLED17を点灯させ、受信装置1が同期処理を実行可能な状態であることを示し、作業者に対して同期要求信号の再送を促すリトライ表示を行う(ステップS29)。この表示を見た作業者が再送処理を行い(ステップS30)、火災感知器10から同期要求信号が再送されると、受信装置1は、定期通信フレームF1を終了し、同期処理を実行可能な状態となっているので、火災感知器10からの同期要求信号を受けて上述の同期処理を実行することができる(ステップS31)。
上述のように本実施形態では、受信装置1の制御部4が同期処理に優先して定期通信処理を実行しているので、各火災感知器10との間の定期通信処理を確実に行うことができる。しかも、同期処理に優先して定期通信処理を実行したために、火災感知器10で同期処理に失敗した場合、受信装置1が、定期通信フレームを終了し同期処理を実行可能な状態になった時点で、同期処理を実行可能なことを示す報知信号を火災感知器10へ返送しており、同期要求信号を送信した火災感知器10の制御部13は、無線送受信部12が報知信号を受信するとLED17を点灯させて、同期処理が可能な状態であることを作業者に報知している。したがって、この表示を見た作業者が所定の操作を行って、火災感知器10から同期要求信号を再送させることで、同期処理が可能なタイミングで同期要求信号を再送させて、受信装置1により同期処理を確実に行わせることができる。なお、本実施形態では、受信装置1が同期処理を実行可能な状態であることを表示する表示手段としてLED17を用いているが、表示手段をLED17のような点灯表示部に限定する趣旨のものではなく、ブザーなどの報知音で再送処理を促す報知音発生部により表示手段を構成しても良い。
ところで、本実施形態では、受信装置1から火災感知器10に対して上記報知信号が送信された際に、この報知信号を受信した火災感知器10では、制御部13が、LED17を用いてリトライ表示を行わせているのであるが、報知信号を受信した時点で、無線送受信部2を制御して同期要求信号を自動的に再送させるようにしても良く、作業者による再送処理が不要なので、通信の同期をとる作業の作業性を向上させることができる。また、同期要求信号を再送する際に、受信装置1は同期処理を実行可能な状態であるので、受信装置1により確実に同期処理を実行させることができる。なお、この場合にも、火災感知器10の制御部13が、LED17を用いてリトライ表示を行わせるようにしても良く、火災感知器10の現在の状態が判りやすいという利点がある。
なお、本発明の精神と範囲に反することなしに、広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は、特定の実施形態に制約されるものではない。