JP4955961B2 - 原子核スピン間の相関強度制御方法 - Google Patents

原子核スピン間の相関強度制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、量子コンピュータ等の量子情報処理機における量子ビットに利用可能な原子核スピンの制御方法に関し、特に、原子核スピン間の相関強度の制御方法に関する。
近年、量子力学的な重ね合わせの状態を量子ビットに利用して超並列計算が可能な量子コンピュータ等の量子情報処理機に関する研究が行われている。特に、原子核スピンは外部からの影響を受けにくく、量子情報処理において、重ね合わせの状態を保持できるコヒーレント時間が長いことから、液体や固体を構成する原子の核スピン(以下、原子核スピンと称する)を量子ビットに利用したNMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)量子コンピュータに関する研究が実用化に向けて行われている。
従来、原子核スピンを利用したNMR量子コンピュータとしては、例えば、非特許文献1のように、液体分子の原子核スピンを利用して量子計算を行った結果が報告されている。図9は、量子ビットに使用した液体分子の構造図である。同図に示すように、液体分子を構成する7つの原子(図中では41から47に相当する)のそれぞれの原子核スピンが量子ビットに相当する。そして、NMRにより、それぞれの量子ビットのコヒーレント状態を制御し量子計算を行う。しかしながら、液体分子を利用したNMR量子コンピュータにおいては、巨視的な分子数が必要であるために、実用化には量子ビット数の増加及び集積化が困難という問題がある。
これに対し、最近では、固体中の原子核スピンを利用したNMR量子コンピュータに関する研究が行われている。例えば、非特許文献2には、微細な層構造を有する半導体において、電子間の相互作用などを制御可能な局所領域における原子核スピンを制御する技術が開示されている。しかしながら、局所領域における原子核スピンは、外部の原子核スピンとの間の相互作用が強いために、コヒーレント時間が短くなってしまうという問題がある。
ところで、従来、固体結晶などの分子構造を解析する手法として知られているNMRにおいて、原子核スピン間の相互作用を抑制するマジックアングル・サンプル・スピニング法(以下、MAS法と称する)がある(例えば、非特許文献3参照)。MAS法においては、固体結晶である試料を磁場に対して所定の角度だけ傾けて高速回転させることで、原子核スピン間の相互作用を抑制する。
ネイチャー(Nature)、第414巻、2001年12月、p.883−887 ネイチャー(Nature)、第434巻、2005年4月、p.1001−1005 ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジックス(Journal Of Chemical Physics)、第89巻、1998年11月、p.6046−6052
しかしながら、MAS法においては、試料を磁場に対して所定の角度に傾けて高速回転させる。このため、原子核スピンを制御するための配線が試料に接続できない。また、原子核スピン間の相互作用を抑制することはできるが、量子ビットに相当する原子核スピン間の相互作用の強度である相関強度を制御できないという問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑み、その課題とするところは、原子核スピンを制御するための配線を可能としつつ、固体結晶の原子核スピン間の相関強度を制御することを可能とすることにある。
第1の本発明に係る原子核スピン間の相関強度制御方法は、閃亜鉛鉱型結晶で構成される半導体層の最も接近した原子同士を直線で結んだ結晶軸と当該半導体層に印加する磁場とのなす角度がマジックアングルになるように当該半導体層及び磁場を設置するステップと、前記半導体層に配置されたゲートに一定のバイアスを印加することで、前記半導体層に二次元電子ガス層を形成すると共に、当該二次元電子ガス層にポイントコンタクト領域を形成するステップと、前記バイアス値を調整することで前記ポイントコンタクト領域における原子核スピン間の相関強度を制御するステップと、を有することを特徴とする。
本発明にあっては、半導体層の結晶軸と磁場とのなす角度がマジックアングルになるように半導体層及び磁場を設置することで、まず、半導体層において、原子核スピン間の相互作用を抑制する。そして、ゲートに印加したバイアスの値を調整することで、ポイントコンタクト領域において、自由電子の電子密度を調整し電子スピンを介した原子核スピン間の相互作用の強度を制御する。
尚、本発明では、閃亜鉛鉱型結晶において、最も近接した原子同士を直線で結んだ軸を結晶軸と定義する。
第2の本発明に係る原子核スピン間の相関強度制御方法は、閃亜鉛鉱型結晶で構成される半導体層の最も接近した原子同士を直線で結んだ結晶軸のうちの少なくとも1つと当該閃亜鉛鉱型結晶に印加する磁場とが平行になるように当該閃亜鉛鉱型結晶及び磁場を設置するステップと、前記半導体層に配置されたゲートに一定のバイアスを印加することで、前記半導体層に二次元電子ガス層を形成すると共に、当該二次元電子ガス層にポイントコンタクト領域を形成するステップと、前記バイアス値を調整することで前記ポイントコンタクト領域における原子核スピン間の相関強度を制御するステップと、を有することを特徴とする。
本発明にあっては、閃亜鉛鉱型結晶に印加する磁場と、閃亜鉛鉱型結晶において、最も近接した原子同士を直線で結んだ軸のうちの少なくとも1つとが平行になるように閃亜鉛鉱型結晶及び磁場を設置することで、結晶軸が磁場に対して平行になるものと、平行にならないものが存在することになり、結晶面において交互に異なる原子核スピン間の相互作用の状態を利用して、原子核スピン間の相互作用の強度を制御する。
上記原子核スピン間の相関強度制御方法において、閃亜鉛鉱型結晶は、二次元電子ガス層を形成可能な半導体層を構成するものであって、半導体層に配置されたゲートに一定のバイアスを印加することで半導体層に二次元電子ガス層を形成すると共に、二次元電子ガス層にポイントコンタクト領域を形成するステップと、バイアス値を調整することでポイントコンタクト領域における原子核スピンの相関強度を制御するステップと、を更に有することを特徴とする。
本発明にあっては、原子核スピン間の相互作用の強度が結晶面において交互に異なっている状態を維持したまま、半導体層に形成された二次元電子ガス層におけるポイントコンタクト領域において、ゲートに印加したバイアスの値を調整することで、自由電子の電子密度を調整し電子スピンを介した原子核スピン間の相互作用の強度を制御する。
本発明によれば、試料を回転させることがないので、原子核スピンを制御するための配線を可能としつつ、固体結晶の原子核スピン間の相関強度を制御することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、本実施の形態においては、閃亜鉛鉱型結晶における最も近接した原子同士を直線で結んだ軸を結晶軸と定義する。
[第1の実施の形態]
まず、第1の実施の形態に係る原子核スピン間の相関強度制御方法において、好適な閃亜鉛鉱型結晶を有する半導体素子について説明する。
図1は、半導体素子の基本構成を示す断面斜視図である。同図の半導体素子100は、二次元電子ガス層8を形成可能な層構造となっている。具体的には、半導体素子100は、Siドープn型GaAs(100)基板であるバックゲート10の上に、ノンドープGaAs層とAlGaAs層とからなるバリア層6を有し、バリア層6の上にGaAs層を有し、この上にバリア層5を有し、バリア層5上にTi/Auからなる一対のショットキースプリットゲート3,4(Ti膜上にAu膜を積層した構造)と絶縁層2を有し、絶縁層2上にTi/Auからなるマイクロストリップ線路のアンテナ1を有する構造である。尚、図1は、半導体素子100を鉛直方向に2分した状態の断面図である。
バリア層5は、AlGaAsを堆積し、その表面に1原子層程度のSiをドープし、さらに、AlGaAsを堆積し、その表面に1原子層程度のSiをドープし、再度AlGaAsを堆積し、GaAsを堆積することにより形成される。バリア層5におけるこれらSiドープ層、AlGaAs層、Siドープ層からなる短周期超格子部分を図1ではSiドープ層7と称する。
このSiドープ層7とバリア層6との間におけるGaAs層は、二次元電子ガスが形成されるため、二次元電子ガス層8となる。二次元電子ガス層8には、Siドープ層7を通じて電子が供給される。
また、ショットキースプリットゲート3,4の間隔は、二次元電子ガス層8が狭窄され、ナノスケールのポイントコンタクト領域9を形成可能な間隔とし、ここでは例えば、この間隔を600ナノメートルとする。
次に、閃亜鉛鉱型結晶を有する半導体素子における原子核スピン間の相関強度を制御する制御装置について説明する。
図2は、原子核スピン相関強度制御装置の概略的な構成を示すブロック図である。同図に示すように、原子核スピン相関強度制御装置200は、図1の半導体素子100とともに、半導体素子100における二次元電子ガス層8のポイントコンタクト領域9を挟む位置に対向配置された一対の電流端子11,12と、半導体素子100の縦方向の電圧Vxxを測定する一対の電圧測定端子13,14と、一対のショットキースプリットゲート3,4に一定のバイアス電圧Vspを印加する電源装置15と、半導体素子100に対して磁場Bを印加する図示しない磁場発生装置とを有する。
次に、本発明の特徴である原子核スピン間の相関強度制御方法について図面を参照しながら具体的に説明する。
ステップ1:まず、図1に示すように、半導体素子100のGaAs(100)基板面に対して垂直方向に磁場Bが印加されるように半導体素子100及び磁場Bを設置する。ここで例えば磁場Bの磁束密度は6.3テスラとする。半導体素子100を温度60mKの環境下に置く。
図3は、ステップ1において、図1のように設置された半導体素子100における閃亜鉛鉱型結晶GaAsに着目し、Ga,As原子と磁場Bの方向との位置関係を示した結晶構造図である。同図に示すように、As原子に最も近接したGa原子とを直線で結んだ結晶軸1〜4と、磁場Bの方向とのなす角度αは54.7°(マジックアングル)になっている。
図4(a)は、図3の閃亜鉛鉱型結晶GaAsに印加する磁場の方向を変化させた場合における原子核スピン間の相互作用の変化を示すグラフである。同グラフの横軸θと縦軸φは、図4(b)に示すように閃亜鉛鉱型結晶における3次元空間を極座標系で示した場合の磁場Bの方向を示す座標系である。濃淡は原子核スピン間の相互作用の強度を示しており、白が最大で黒が最小である。ここでは閃亜鉛鉱型結晶GaAsにおいて、最も近接した全ての原子核の相互作用を足し合わせた値である。
同図に示すように、例えば、磁場が図3のようなGaAs結晶の結晶軸1〜4に対して54.7°(マジックアングル)傾いた方向に印加される場合は、図4(a)では、θ=0°で、Φは任意の角度に相当する。このとき原子核スピン間の相互作用の強度はゼロになっている。
すなわち、閃亜鉛鉱型結晶GaAsの結晶軸と磁場Bの方向とのなす角度が54.7°(マジックアングル)になるように半導体素子100及び磁場Bを設置した場合、原子核スピン同士の磁気モーメントによる双極子相互作用の影響といった原子核スピン間の相互作用が抑制される。
ステップ2:次に、半導体素子100のバックゲート10及び半導体素子100に配置された一対のショットキースプリットゲート3,4に一定のバイアスを印加する。ここでは例えばバックゲート10の電圧を−0.15Vに固定し、ショットキースプリットゲート3,4には−0.8Vの電圧を印加する。
これにより、半導体層に二次元電子ガス層8が形成されると共に、二次元電子ガス層にポイントコンタクト領域9が形成される。ここでポイントコンタクト領域9は、例えば、200ナノメートル×200ナノメートル程度の面積に形成される。また、この面積は、小さい程よく、例えば、数ナノメートルであることが望ましい。
ここで、原子核スピン相関強度制御装置200により、アンテナ1に対してAs原子の原子核スピンに共鳴するパルス状のマイクロ波を照射し、電流端子11,12間に電流を流し、端子間の縦抵抗値を測定する。
図5は、測定した半導体素子100の縦抵抗値ΔRxx(kΩ)とマイクロ波のパルス幅τ(msec)との関係を示すグラフである。同図のグラフでは縦抵抗値を縦軸に、パルス幅を横軸にプロットした。縦抵抗の測定条件は、磁場を6.3テスラ、温度60mK、バックゲート電圧を−0.15V、ショットキースプリットゲート電圧Vspを−0.8V、マイクロ波の周波数を45MHzとした。
図5の縦抵抗値の縦振動はコヒーレント振動と呼ばれる。コヒーレント振動の包絡線の時定数が、コヒーレント時間Tに相当する。一方、縦抵抗値は次式(1)で表される。但し、Ωは振動の周波数、τはマイクロ波パルスの時間幅を示す。
ΔRxx = 1 − cos(Ω × τ)exp(−τ / T) ・・・(1)
よって、測定された縦抵抗値から式(1)のパラメータを最適化することでコヒーレント時間Tが求まる。
図5の測定結果から得られたコヒーレント時間Tは1.5msecとなった。この結果は、ショットキースプリットゲート3,4に印加するバイアス電圧の値−0.8Vが十分に小さく、ポイントコンタクト領域9においては自由電子が存在せず、電子スピンを介した原子核スピンAsと外部の原子核スピンAsとの間の相互作用が抑制された状態であることを示している。
ステップ3:そして、ショットキースプリットゲート3,4に印加する一定のバイアス値を例えば、−0.25Vに調整する。ここでもステップ2と同様に、原子核スピン相関強度制御装置200により、半導体素子100の縦抵抗値を測定する。
図6は、測定した半導体素子100の縦抵抗値ΔRxx(kΩ)とマイクロ波のパルス幅τ(msec)との関係を示すグラフである。同図のグラフでも同様に、縦抵抗値を縦軸に、パルス幅を横軸にプロットした。尚、縦抵抗の測定条件は、ショットキースプリットゲート電圧Vspを−0.25Vに変更した点以外は、ステップ2の測定条件と同様である。
ここでも、測定された縦抵抗値から式(1)のパラメータを最適化することでコヒーレント時間を算出した。図6の測定結果から得られたコヒーレント時間Tは0.6msecとなり、ステップ2の結果と比較すると、より短くなった。
この結果は、ショットキースプリットゲート3,4に印加したバイアス電圧により、ポイントコンタクト領域9において自由電子が発生し、自由電子による電子スピンを介して、原子核スピンAs間に相互作用が生じたことを示している。さらに、ショットキースプリットゲート3,4に印加するバイアス電圧Vspの値を任意に調整すれば、自由電子密度を制御し電子スピンを介した原子核スピン間の相互作用の強度が制御可能であることを示している。
したがって、第1の実施の形態によれば、閃亜鉛鉱型結晶を有する半導体素子100の結晶軸と磁場Bとのなす角度がマジックアングルになるように半導体素子100及び磁場Bを設置することで、まず、半導体素子100において、原子核スピン間の相互作用を抑制する。そして、一対のショットキースプリットゲート3,4に印加する一定のバイアス値を調整することで、ポイントコンタクト領域9において、自由電子の電子密度を調整し電子スピンを介した原子核スピン同士の相互作用の強度を制御する。
このように、半導体素子100を回転させることがないので、原子核スピンを制御するための配線を可能としつつ、原子核スピン間の相関強度を制御することができる。
尚、第1の実施の形態においては、閃亜鉛鉱型結晶の結晶軸と磁場とのなす角度が54.7°となるようにしたが、同角度がマジックアングルとなれば、これに限られるものでなく、例えば、磁場の方向を、180°位相をずらして、結晶軸と磁場の方向とのなす角度が125.3°となるようにしても、原子核スピン間の相互作用を抑制することができる。
また、第1の実施の形態においては、半導体素子100におけるショットキースプリットゲート3,4の下に位置する半導体積層構造は、上記の構造に限定されるものではなく、二次元電子ガス層を形成可能であれば、他の構造としてもよい。
[第2の実施の形態]
以下、第2の実施の形態に係る原子核スピン間の相関強度制御方法について説明する。
第2の実施の形態において使用する閃亜鉛鉱型結晶を有する半導体素子は、第1の実施の形態で説明したものと同様である。第1の実施の形態と異なる点は、半導体素子に対して印加する磁場の方向と、結晶軸とのなす角度が異なる点である。以下では、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
図7は、第2の実施の形態に係る原子核スピン間の相関強度制御方法において、好適な閃亜鉛鉱型結晶を有する半導体素子と磁場の印加方向を示す断面斜視図である。
ステップ1:まず、同図に示すように、磁場Bが半導体素子100の[111]方向に印加されるように半導体素子100及び磁場Bを設置する。
図8は、図7の半導体素子100の閃亜鉛鉱型結晶GaAsを構成する各原子と磁場の方向とを示す概略図である。同図に示すように、磁場Bの方向と、閃亜鉛鉱型結晶において、最も近接した原子同士を直線で結んだ結晶軸のうちのいくつかが平行になっている。尚、半導体素子100及び磁場Bの設置の際には、磁場Bの方向と結晶軸のうちの少なくとも1つとが平行になるように位置を調整する。
これにより、各結晶軸が磁場Bの方向に対して平行になるものと、平行にならないものとが存在する。ここでは結晶軸と磁場Bの方向とのなす角度が、磁場Bの方向に対して、結晶面1では109.4度から0度に、結晶面2では0度から109.4度へと交互に変化している。
図8の右の矢印は、結晶面における角度の変化に対応した原子核スピン間の相互作用の強度を示している。同図に示すように、結晶面において原子核スピン間の相互作用の強度に交互な違いが生じている。また、原子核スピン間の相互作用の強度は、結晶軸と磁場とのなす角度が0度のときは、109.4度の時と比べて2.25倍になる。
このように結晶面において、異なる原子核スピン間の相互作用の状態を利用して、原子核スピン間の相互作用の強度を制御することができる。
この結果は、結晶面を量子ビットとして使用し、結晶面を多層成長させることで、さらなる量子コンピュータの規模の拡大といった可能性を示している。
次に、第1の実施の形態において説明したステップ2,3と同様に、半導体素子100のショットキースプリットゲートに印加する一定のバイアス値を調整することで、原子核スピン間の相関作用の強度が結晶面において交互に異なっている状態を維持したまま、自由電子の電子密度を調整し電子スピンを介した原子核スピン同士の相互作用の強度を制御する。
したがって、第2の実施の形態によれば、閃亜鉛鉱型結晶に印加する磁場Bと、閃亜鉛鉱型結晶において、最も近接した原子同士を直線で結んだ結晶軸のうちの少なくとも1つとが平行になるように閃亜鉛鉱型結晶及び磁場Bを設置することで、結晶軸が磁場Bの方向に対して平行になるものと、平行にならないものが存在することになり、異なる原子核スピン間の相互作用の状態を利用して、原子核スピン同士の相互作用の強度を制御する。
さらに、原子核スピン間の相関作用の強度が結晶面において交互に異なっている状態を維持したまま、半導体層に形成された二次元電子ガス層におけるポイントコンタクト領域において、一対のショットキースプリットゲートに印加した一定のバイアス値を調整することで、自由電子の電子密度を調整し電子スピンを介した原子核スピン同士の相互作用を制御することができる。
このように、半導体素子100を回転させることがないので、原子核スピンを制御するための配線を可能としつつ、原子核スピン間の相関強度を制御することができる。
尚、上記の各実施の形態においては、半導体上に一対のショットキースプリットゲートを形成するようにしたが、これに限られるものではなく、例えば、図1の半導体素子において、二次元電子ガス層8を形成可能なGaAsと同層に、ナノオーダーの間隔を有する一対のショットキースプリットゲートを形成するようにしてもよく、この場合においても、本発明と同等の効果を奏することができる。
さらに、上記の各実施の形態においては、バイアスを印加するゲートには、一対のショットキースプリットゲートを使用するようにしたが、これに限られるものではなく、例えば、ナノオーダーのサイズを有する通常のゲートを使用するようにしてもよい。この場合には、ゲートに電圧を印加することで、ゲートの直下にゲートのサイズに対応したナノスケールの領域が形成される。
また、上記の各実施の形態においては、半導体素子は、化合物半導体GaAsによる半導体素子を使用したが、これに限られるものではない。閃亜鉛鉱型結晶を有する固体結晶であれば、本発明を適用することが可能であり、例えば、Si半導体であっても良い。
第1の実施の形態に係る原子核スピン間の相関強度制御方法において、好適な閃亜鉛鉱型結晶を有する半導体素子の基本構成と磁場の方向を示す断面斜視図である。 図1の半導体素子における原子核スピン間の相関強度を制御する原子核スピン相関強度制御装置の概略的な構成を示すブロック図である。 ステップ1において、図1のように設置された半導体素子における閃亜鉛鉱型結晶に着目し、各原子と磁場との位置関係を示した結晶構造図である。 図3の閃亜鉛鉱型結晶に印加する磁場の方向を変化させた場合における原子核スピン間の相互作用の変化を示すグラフと、3次元空間を極座標系で示した場合の磁場の方向を示す座標系である。 ステップ2において測定した半導体素子の縦抵抗値とマイクロ波のパルス幅との関係を示すグラフである。 ステップ3において測定した半導体素子の縦抵抗値とマイクロ波のパルス幅との関係を示すグラフである。 第2の実施の形態に係る原子核スピン間の相関強度制御方法において、好適な閃亜鉛鉱型結晶を有する半導体素子の基本構成と磁場の方向を示す断面斜視図である。 図7の半導体素子の閃亜鉛鉱型結晶を構成する各原子と磁場の方向とを示す概略図である。 従来のNMR量子コンピュータの量子ビットに使用した液体分子の構造図である。
符号の説明
1…アンテナ
2…絶縁層
3,4…ショットキースプリットゲート
5,6…バリア層
7…Siドープ層
8…二次元電子ガス層
9…ポイントコンタクト領域
10…バックゲート
11,12…電流端子
13,14…電圧測定端子
15…電源装置
41〜47…量子ビット1〜量子ビット7
100…半導体素子
200…原子核スピン相関強度制御装置

Claims (2)

  1. 閃亜鉛鉱型結晶で構成される半導体層の最も接近した原子同士を直線で結んだ結晶軸と当該半導体層に印加する磁場とのなす角度がマジックアングルになるように当該半導体層及び磁場を設置するステップと、
    前記半導体層に配置されたゲートに一定のバイアスを印加することで、前記半導体層に二次元電子ガス層を形成すると共に、当該二次元電子ガス層にポイントコンタクト領域を形成するステップと、
    前記バイアス値を調整することで前記ポイントコンタクト領域における原子核スピン間の相関強度を制御するステップと、
    を有することを特徴とする原子核スピン間の相関強度制御方法。
  2. 閃亜鉛鉱型結晶で構成される半導体層の最も接近した原子同士を直線で結んだ結晶軸のうちの少なくとも1つと当該閃亜鉛鉱型結晶に印加する磁場とが平行になるように当該閃亜鉛鉱型結晶及び磁場を設置するステップと、
    前記半導体層に配置されたゲートに一定のバイアスを印加することで、前記半導体層に二次元電子ガス層を形成すると共に、当該二次元電子ガス層にポイントコンタクト領域を形成するステップと、
    前記バイアス値を調整することで前記ポイントコンタクト領域における原子核スピン間の相関強度を制御するステップと、
    を有することを特徴とする原子核スピン間の相関強度制御方法。
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