(参考形態)
以下、回折素子成形金型およびこれを用いて成形された回折素子の参考形態について、図1および図2を参照して説明する。
図1は、本参考形態における回折素子成形金型の主要な構成部を、この回折素子成形金型内に成形される成形品とともに示したものである。
本参考形態における回折素子成形金型1は、樹脂材料が充填されるキャビティ2を有している。
また、回折素子成形金型1は、キャビティ2と連通されたゲート3を有しており、このゲート3を樹脂材料が通ることによって、樹脂材料がキャビティ2内に充填されるようになっている。
さらに、回折素子成形金型1は、ゲート3と連通されたランナ5およびこのランナ5と連通されたスプール(図示せず)を有している。
なお、図示はしないが、スプールには、複数のランナ5が放射状に連通され、各ランナ5の先端側に、ゲート3を介してキャビティ2がそれぞれ連通されている。
そして、射出成形の際には、高温の溶融樹脂材料を、スプール、ランナ5およびゲート3を経てキャビティ2内に射出・充填させ、このキャビティ2に充填された溶融樹脂材料を、スプール、ランナ5およびゲート3内に充填されている溶融樹脂材料とともに冷却して固化するようになっている。
これによって、図1に示すように、キャビティ2内の成形部位である回折素子本体6と、ゲート3内の成形部位8、ランナ5内の成形部位9および図示しないスプール内の成形部位とが一体成形された成形品が得られるようになっている。
そして、この成形品から、回折素子本体6を、ゲート3内の成形部位8とともに分離することによって、回折素子10(図2参照)を得ることができるようになっている。
なお、ゲート3内の成形部位8は、必ずしも回折素子本体6とともに成形品から分離される必要はない。その場合には、回折素子本体6のみによって回折素子10が構成されることになる。
本参考形態における回折素子成形金型1についてさらに詳述すると、この回折素子成形金型1は、固定側の金型である第1の金型としての固定側回折格子駒12を有しており、この固定側回折格子駒12は、回折素子本体6における光の回折に関与する光学機能部14の成形に用いられるようになっている。
具体的には、固定側回折格子駒12は、光学機能部14における厚み方向(図1において横方向)において互いに対向する2つの面のうちの一方の面としての回折格子面16の形状に相当する金型形状を有している。
なお、図2に示すように、回折格子面16は、所定の方向に長尺とされた複数の格子溝15が、これらの格子溝15の長手方向に直交する方向に整列されていることによって構成されている。
図1に戻って、固定側回折格子駒12の外側には、固定側の金型である第2の金型としての固定側枠駒18が周設されている。
この固定側枠駒18は、回折素子本体6における非光学機能部としての光学機能部14を包囲する筒状のバレル19の成形に用いられるとともに、回折素子本体6以外にも、ゲート3内の成形部位8、ランナ5内の成形部位9およびスプール内の成形部位の成形にも用いられるようになっている。
具体的には、固定側枠駒18は、バレル19の図1における右端面の形状と、この右端面に連なるバレル19の図1における右端部側の内周面の形状と、バレル19の図1における右端面に連なるバレル19の外周面の図1における右端部側の部位の形状とに相当する金型形状を有している。
また、固定側枠駒18は、ゲート3内の成形部位8の外周面の図1における右端部の形状に相当する金型形状を有している。
さらに、固定側枠駒18は、ランナ5内の成形部位9の外周面の図1における右端部の形状に相当する金型形状を有している。
さらにまた、固定側枠駒18は、スプール内の成形部位の外周面の一部の形状に相当する金型形状を有している。
固定側回折格子駒12に厚み方向において対向する位置には、可動側の金型である第3の金型としての可動側回折格子駒20が配設されている。
この可動側回折格子駒20は、固定側回折格子駒12に対して遠近可能とされているとともに、固定側回折格子駒12への近接状態において、固定側回折格子駒12とともに光学機能部14の成形に用いられるようになっている。
具体的には、可動側回折格子駒20は、光学機能部14における回折格子面16に厚み方向において対向する面としての平坦な光学面22の形状に相当する金型形状を有している。
可動側回折格子駒20の外側には、可動側の金型である第4の金型としての可動側枠駒23が周設されている。
この可動側枠駒23は、固定側枠駒18に対して接離可能とされているとともに、固定側枠駒18との当接状態において、固定側枠駒18とともに、バレル19、ゲート3内の成形部位8、ランナ5内の成形部位9およびスプール内の成形部位の成形に用いられるようになっている。
具体的には、可動側枠駒23は、バレル19の図1における左端面の形状と、この左端面に連なるバレル19の図1における左端部側の内周面の形状と、バレル19の図1における左端面に連なるバレル19の外周面の図1における右端部側の部位を除く部位の形状とに相当する金型形状を有している。
また、可動側枠駒23は、ゲート3内の成形部位8の外周面の図1における右端部を除く部位の形状に相当する金型形状を有している。
さらに、可動側枠駒23は、ランナ5内の成形部位9の外周面の図1における右端部を除く部位の形状に相当する金型形状を有している。
さらにまた、固定側枠駒18は、スプール内の成形部位の外周面の一部の形状に相当する金型形状を有している。
そして、このような4つの金型12、18、20、23は、射出成形の際には、図1に示すように、可動側回折格子駒20が、固定側回折格子駒12に対して厚み方向に所定の間隔を有した状態で近接する位置まで移動され、可動側枠駒23が、固定側枠駒18に接触する位置まで移動されるようになっている。これによって、前述したキャビティ2、ゲート3、ランナ5およびスプールが形成されるようになっている。
また、バレル19の図1における左端面に対応する位置には、厚み方向に長尺とされたエジェクタピン24が、可動側回折格子駒20および可動側枠駒23を貫通するようにして配設されている。
このエジェクタピン24は、可動側回折格子駒20および可動側枠駒23を、固定側回折格子駒12および固定側枠駒18(固定側)から離間する方向(図1における左方向)に移動させて成形品を回折素子成形金型1から取り出す際に、バレル19の図1における左端面に当接して、成形品を相対的に固定側に押し出すようになっている。
これにより、成形品を可動側回折格子駒20および可動側枠駒23から離脱させて固定側に残すことができるようになっている。
そして、本参考形態における回折素子成形金型1は、回折格子面16におけるゲート3から最も離れた反ゲート3側の端部に隣接する回折格子面16の外側位置に対応する位置に、キャビティ2内への樹脂材料(溶融樹脂材料)の充填の際に発生するガス(以下、「発生ガス」と称する)をキャビティ2の外部に逃がすためのガス逃げ部を有している。
さらに、回折素子成形金型1は、回折格子面16におけるゲート3に最も近いゲート3側の端部に隣接する回折格子面16の外側位置に対応する位置にも、ガス逃げ部を有している。
さらに、本参考形態において、各ガス逃げ部は、固定側回折格子駒12の外周面に形成された切り欠き部としての2つの駒側切り欠き部26、27とされている。
図1に示すように、これらの2つの駒側切り欠き部26、27は、回折格子面16におけるゲート3側の端部およびゲートに対向する側の端部にそれぞれ隣接する回折格子面16の外側位置に対応する2箇所の位置において、固定側回折格子駒12の外周面を、厚み方向に沿って平坦面状に切り欠くことによって形成されている。
このような回折素子成形金型1は、既存の回折素子成形金型に軽微な改良(駒側切り欠き部26、27の形成)を施すだけで簡便かつ安価に得ることができる。
そして、2つの駒側切り欠き部26、27により、固定側回折格子駒12と固定側枠駒18との間には、図1に示すように、樹脂材料の流出を防ぎつつ発生ガスのみをキャビティ2の外部に逃がすために好適な間隙d1が確保されている。
この間隙d1の寸法は、コンセプトに応じて種々変更することができるが、好ましくは0.01〜0.1mm(より好ましくは、0.01〜0.05mm)とされている。
また、駒側切り欠き部26、27は、回折格子面16の外側位置に対応する位置に形成されているため、駒側切り欠き部26、27が存在しないと仮定した場合に比べて回折格子面16の平面積をわずかに小さくするだけで、回折格子面16の格子溝15自体の形状には全く関与しないものとなっている。
すなわち、駒側切り欠き部26、27は、特許文献1のような格子溝自体の形状に関与する交差溝とは異なり、回折素子10の光学性能に悪影響を与える虞はない。
さらに、1つの駒側切り欠き部27は、回折格子面16におけるゲートに対向する側の端部の外側位置に対応する位置に形成されているため、発生ガスを、キャビティ2内における当該ガスの流動方向の下流側端部に相当する位置から効率的にキャビティ2の外部に逃がすことができるようになっている。
さらにまた、もう1つの駒側切り欠き部26は、回折格子面16におけるゲート3側の端部の外側位置に対応する位置に形成されているため、発生ガスを、キャビティ2内における当該ガスの流動方向の上流側端部に相当する位置からキャビティ2の外部に効率的に逃がすことができるようになっている。
したがって、本参考形態における回折素子成形金型1を用いて射出成形を行えば、回折格子面16の格子溝15の形状に影響を与えない位置に形成されたガス逃げ部としての駒側切り欠き部26、27により、発生ガスを、キャビティ2内における当該ガスの流動方向の下流側端部および上流側端部に相当する位置からキャビティ2の外部に効率的に逃がすことができる。
また、固定側枠駒18は、バレル19の図1における右端部側の内周面の右端部に対応する位置に、金型形状としての固定側バリ逃げ部29を有している。
この固定側バリ逃げ部29は、樹脂材料によって、固定側回折格子駒12と固定側枠駒18との間に図1における右方向に突出するバリが発生するとしても、このバリが、図1に示す製品基準面S1を超えないように規制するようになっている。
これによって、バリが折れて回折格子面16上に落下することにともなう回折格子面16の損傷を未然に回避することができるようになっている。
さらに、可動側枠駒23は、バレル19の図1における左端部側の内周面の左端部に対応する位置に、金型形状としての可動側バリ逃げ部30を有している。
この可動側バリ逃げ部30は、樹脂材料によって、可動側回折格子駒20と可動側枠駒23との間に図1における左方向に突出するバリが発生したとしても、このバリが、図1に示す製品基準面S2を超えないように規制するようになっている。
これによって、バリが折れて光学面22上に落下することにともなう光学面22の損傷を未然に回避することができるようになっている。
そして、このような回折素子成形金型1を用いた射出成形によって成形品として成形された後に、成形品から分離することによって得られる回折素子10は、図2に示すように、回折素子本体6と、この回折素子本体6に連設されたゲート3内の成形部位8とによって構成されている。
さらに、回折素子本体6は、光学機能部14と、バレル19を含む非光学機能部とによって構成されている。
光学機能部14は、図2に示すように、所定の方向に沿って長尺とされた格子溝15が整列された平面略円形状の回折格子面16を有している。また、光学機能部14の厚み方向の反対側の面(図2における紙面裏側の面)は、平面略円形状の平坦な光学面22となっている。
さらに、図2に示すように、回折格子面16は、2つの駒側切り欠き部26、27が形成された固定側回折格子駒12の金型形状が転写されていることによって、ゲート3側の端部およびゲート3に対向する側の端部に、これら両端部を通る仮想直線Lの方向(以下、「ゲート方向」と称する)に直交する平面直線形状の格子面側切り欠き部32、32を有している。
なお、本参考形態において、格子溝15の長手方向は、ゲート方向に対して平行ではなく、所定の角度を有している。
そして、回折格子面16が、格子面側切り欠き部32、32を有している結果、回折格子面16におけるゲート3側の端部と、その外側に位置するバレル19の内周面との間には、バレル19以外の非光学機能部としての1つの非回折格子面34が成形されている。
同様に、回折格子面16におけるゲート3に対向する側の端部と、その外側に位置するバレル19の内周面との間には、バレル19以外の非光学機能部としてのもう1つの非回折格子面35が成形されている。
このような回折素子10は、射出成形の際に、発生ガスを、駒側切り欠き部26、27によって、キャビティ2内における当該ガスの流動方向の下流側端部および上流側端部に相当する位置からキャビティ2の外部に効率的に逃がしつつ成形されたものであるため、固定側回折格子駒12をはじめとした回折素子成形金型1の金型形状が適切に転写されている。
したがって、このような回折素子10は、転写不良がほとんどなく、所望の波長の光を所望の方向に所望の回折効率で回折させることができるといった優れた光学性能を得ることができる。
なお、駒側切り欠き部26、27の形状は、図1および図2に示したものに限らず、種々の形状を選択することができる。
例えば、駒側切り欠き部の形状を、図3に示すような回折格子面36の中心に向かう平面円孤形状の格子面側切り欠き部37、37に対応する平面円孤形状にしてもよい。
さらに、駒側切り欠き部の形状を、図4に示すような回折格子面38の中心に向かう平面V字形状の格子面側切り欠き部39、39に対応する平面V字形状にしてよい。
また、駒側切り欠き部は、回折格子面におけるゲートに対向する側の端部に隣接する回折格子面の外側位置に対応する位置のみに形成する場合においても、発生ガスを、キャビティ2の外部に十分に逃がすことができる。
(第1実施形態)
次に、本発明に係る回折素子成形金型およびこれを用いて成形された回折素子の第1実施形態について図5および図6を参照して説明する。
なお、参考形態と基本的構成が同一もしくはこれに類する箇所については、同一の符号を用いて説明する。
図5に示すように、本実施形態における回折素子成形金型41は、固定側回折格子駒42の外周面における回折格子面43の外側位置に対応する位置に、ガス逃げ部としての駒側切り欠き部45、46が形成されている点で参考形態と同様である。
ただし、本実施形態においては、駒側切り欠き部45、46のより具体的な形成位置が参考形態とは異なっている。
すなわち、本実施形態において、駒側切り欠き部45、46は、固定側回折格子駒42の外周面における回折格子面43の外側位置に対応する位置であって、回折格子面43における格子溝15の長手方向の両端部に隣接する回折格子面43の外側位置に対応する2箇所の位置に形成されている。
これらの2つの駒側切り欠き部45、46は、固定側回折格子駒42の外周面が、前述した2箇所の位置において厚み方向に沿って平坦面状に切り欠かれていることによって形成されている。
このような回折素子成形金型41は、参考形態と同様に、既存の回折素子成形金型に軽微な改良(駒側切り欠き部45、46の形成)を施すだけで簡便かつ安価に得ることができる。
そして、2つの駒側切り欠き部45、46により、固定側回折格子駒42と固定側枠駒18との間には、参考形態と同様に、樹脂材料の流出を防ぎつつ発生ガスのみをキャビティ2の外部に逃がすために好適な間隙d2が確保されている。
この間隙d2の寸法は、コンセプトに応じて種々変更することができるが、好ましくは0.01〜0.1mm(より好ましくは、0.01〜0.05)とされている。
また、本実施形態における駒側切り欠き部45、46は、参考形態と同様に、回折格子面43の外側位置に対応する位置に形成されているため、駒側切り欠き部45、46が存在しないと仮定した場合に比べて回折格子面43の平面積をわずかに小さくするだけで、回折格子面43の格子溝15自体の形状には全く関与しないものとなっている。
すなわち、本実施形態における駒側切り欠き部45、46は、参考形態と同様に、回折素子47(図6参照)の光学性能に悪影響を与える虞はないといえる。
さらに、駒側切り欠き部45、46は、格子溝15の長手方向の両端部の外側位置に対応する位置に形成されているため、発生ガスを、格子溝15に沿ってキャビティ2の外部に効率的に逃がすことができるようになっている。
したがって、本実施形態における回折素子成形金型41を用いて射出成形を行えば、回折格子面43の格子溝15の形状に影響を与えない位置に形成されたガス逃げ部としての駒側切り欠き部45、46により、発生ガスを、格子溝15に沿ってキャビティ2の外部に効率的に逃がすことができる。
その他の回折素子成形金型41の構成は、参考形態と同様であるため、説明を省略する。
このような回折素子成形金型41を用いた射出成形によって成形品として成形された後に、成形品から分離することによって得られる回折素子47は、図6に示すような回折素子47となる。
図6に示す回折素子47は、参考形態と同様に、回折素子本体48と、この回折素子本体48に連設されたゲート3内の成形部位8とによって構成されている。
また、回折素子本体48は、光学機能部49と、バレル19を含む非光学機能部とによって構成されている。
さらに、光学機能部49は、図6に示すように、所定の方向に沿って長尺とされた格子溝15が整列された平面略円形状の回折格子面43を有している。また、光学機能部49の厚み方向の反対側の面(図6における紙面裏側の面)は、平面略円形状の平坦な光学面22となっている。
さらにまた、図6に示すように、回折格子面43は、2つの駒側切り欠き部45、46が形成された固定側回折格子駒42の金型形状が転写されていることによって、格子溝15の長手方向の両端部に、格子溝15の長手方向に直交する平面直線形状の格子面側切り欠き部50、50を有している。
なお、本実施形態において、格子溝15の長手方向は、ゲート方向に対して平行ではなく、所定の角度を有している。
そして、回折格子面43が、格子面側切り欠き部50、50を有している結果、回折格子面43における格子溝15の長手方向の両端部と、これら両端部の外側に位置するバレル19の内周面との間には、バレル19以外の非光学機能部としての非回折格子面51、52が成形されている。
このような回折素子47は、射出成形の際に、発生ガスを、駒側切り欠き部45、46によって、格子溝15に沿ってキャビティ2の外部に効率的に逃がしつつ成形されたものであるため、固定側回折格子駒42をはじめとした回折素子成形金型41の金型形状が適切に転写されている。
したがって、このような回折素子47は、転写不良がほとんどなく、参考形態と同様に、所望の波長の光を所望の方向に所望の回折効率で回折させることができるといった優れた光学性能を得ることができる。
なお、駒側切り欠き部の形状は、参考形態と同様に種々の形状を選択することができ、例えば、図2に示した平面円孤形状の格子面側切り欠き部37、37に対応する平面円孤形状であってもよいし、また、図3に示した平面V字形状の格子面側切り欠き部39、39に対応する平面V字形状であってもよい。
また、駒側切り欠き部は、回折格子面における格子溝15の長手方向の一方の端部に隣接する回折格子面の外側位置に対応する位置のみに形成する場合においても、発生ガスを、キャビティ2の外部に十分に逃がすことができる。
(第2実施形態)
次に、本発明に係る回折素子成形金型およびこれを用いて成形された回折素子の第2実施形態について図7および図8を参照して説明する。
なお、第1実施形態と基本的構成が同一もしくはこれに類する箇所については、同一の符号を用いて説明する。
図7に示すように、本実施形態における回折素子成形金型53は、固定側回折格子駒54が、回折格子面55におけるゲート3側の端部およびゲートに対向する側の端部に隣接する回折格子面55の外側位置に対応する外周面の2箇所の位置に、ガス逃げ部としての2つの駒側切り欠き部56、57を有している点で第1実施形態と同様である。
また、これらの2つの駒側切り欠き部56、57は、第1実施形態と同様に、固定側回折格子駒54の外周面が、前述した2箇所の位置において厚み方向に沿って平坦面状に切り欠かれていることによって形成されている。
ただし、本実施形態においては、駒側切り欠き部56、57のより具体的な形成位置が第1実施形態とは異なっている。
すなわち、本実施形態において、駒側切り欠き部56、57は、回折格子面55における格子溝15の長手方向の一方の端部となるゲート3側の端部に隣接する回折格子面55の外側位置に対応する位置と、回折格子面55における格子溝15の長手方向の他方の端部となるゲート3に対向する側の端部に隣接する回折格子面55の外側位置に対応する位置とに形成されている。
つまり、本実施形態における回折素子成形金型53は、固定側回折格子駒54によって、ゲート方向と格子溝15の長手方向とが互いに平行とされた回折格子面55を成形する点で、第1実施形態の回折素子成形金型1とは異なっている。
このような本実施形態における回折素子成形金型53は、第1実施形態と同様に、既存の回折素子成形金型に軽微な改良(駒側切り欠き部56、57の形成)を施すだけで簡便かつ安価に得ることができる。
そして、2つの駒側切り欠き部56、57により、固定側回折格子駒54と固定側枠駒18との間には、第1実施形態と同様に、樹脂材料の流出を防ぎつつ発生ガスのみをキャビティ2の外部に逃がすために好適な間隙d3が確保されている。
この間隙d3の寸法は、コンセプトに応じて種々変更することができるが、好ましくは0.01〜0.1mm(より好ましくは、0.01〜0.05)とされている。
また、本実施形態における駒側切り欠き部56、57は、第1実施形態と同様に、回折格子面55の外側位置に対応する位置に形成されているため、駒側切り欠き部56、57が存在しないと仮定した場合に比べて回折格子面55の平面積をわずかに小さくするだけで、回折格子面55の格子溝15自体の形状には全く関与しないものとなっている。
すなわち、本実施形態における駒側切り欠き部56、57は、第1実施形態と同様に、回折素子59(図8参照)の光学性能に悪影響を与える虞はないといえる。
さらに、駒側切り欠き部56、57は、回折格子面55におけるゲート3側およびゲート3に対向する側の端部の外側位置に対応する位置であって、回折格子面55における格子溝15の長手方向の両端部の外側位置に対応する位置に形成されているため、発生ガスを、格子溝15に沿ってキャビティ2内における当該ガスの流動方向の上流側端部および下流側端部に相当する位置からキャビティ2の外部により効率的に逃がすことができるようになっている。
したがって、本実施形態における回折素子成形金型53を用いて射出成形を行えば、回折格子面55の格子溝15の形状に影響を与えない位置に形成されたガス逃げ部としての駒側切り欠き部56、57により、発生ガスを、格子溝15に沿ってキャビティ2内における当該ガスの流動方向の上流側端部および下流側端部に相当する位置からキャビティ2の外部により効率的に逃がすことができる。
その他の回折素子成形金型の構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
このような回折素子成形金型53を用いた射出成形によって成形品として成形された後に、成形品から分離することによって得られる回折素子59は、図8に示すような回折素子59となる。
図8に示す回折素子59は、第1実施形態と同様に、回折素子本体60と、この回折素子本体60に連設されたゲート3内の成形部位8とによって構成されている。
また、回折素子本体60は、光学機能部61と、バレル19を含む非光学機能部とによって構成されている。
さらに、光学機能部61は、図8に示すように、所定の方向に沿って長尺とされた格子溝15が整列された平面略円形状の回折格子面55を有している。また、光学機能部61の厚み方向の反対側の面(図8における紙面裏側の面)は、平面略円形状の平坦な光学面22となっている。
さらにまた、図8に示すように、回折格子面55は、2つの駒側切り欠き部56、57が形成された固定側回折格子駒54の金型形状が転写されていることにより、格子溝15の長手方向の一方の端部となるゲート3側の端部と、格子溝15の長手方向の他方の端部となるゲート3に対向する側の端部とに、ゲート方向に直交する平面直線形状の格子面側切り欠き部62、62を有している。
また、前述したように、本実施形態において、格子溝15の長手方向は、ゲート方向に対して平行とされている。
そして、回折格子面55が、格子面側切り欠き部62、62を有している結果、回折格子面55における格子溝15の長手方向の一方の端部となるゲート3側の端部と、その外側に位置するバレル19の内周面との間には、バレル19以外の非光学機能部としての1つの非回折格子面64が成形されている。
同様に、回折格子面55における格子溝15の長手方向の他方の端部となるゲート3に対向する側の端部と、その外側に位置するバレル19の内周面との間には、バレル19以外の非光学機能部としてのもう1つの非回折格子面65が成形されている。
このような回折素子59は、射出成形の際に、駒側切り欠き部56、57によって、発生ガスを格子溝15に沿ってキャビティ2内における当該ガスの流動方向の上流側端部および下流側端部に相当する位置からキャビティ2の外部に効率的に逃がしつつ成形されたものであるため、固定側回折格子駒54をはじめとした回折素子成形金型53の金型形状が適切に転写されている。
したがって、このような回折素子59は、転写不良がほとんどなく、第1実施形態と同様に、所望の波長の光を所望の方向に所望の回折効率で回折させることができるといった優れた光学性能を得ることができる。
なお、駒側切り欠き部の形状は、第1実施形態と同様に種々の形状を選択することができ、例えば、図2に示した平面円孤形状の格子面側切り欠き部37、37に対応する平面円孤形状であってもよいし、また、図3に示した平面V字形状の格子面側切り欠き部39、39に対応する平面V字形状であってもよい。
また、駒側切り欠き部は、回折格子面における前述した格子溝15の長手方向の他方の端部となるゲート3に対向する側の端部に隣接する回折格子面の外側位置に対応する位置のみに形成する場合においても、発生ガスを、キャビティ2の外部に十分に逃がすことができる。
(第3実施形態)
次に、本発明に係る回折素子成形金型およびこれを用いて成形された回折素子の第3実施形態について図9および図10を参照して説明する。
なお、第1実施形態と基本的構成が同一もしくはこれに類する箇所については、同一の符号を用いて説明する。
図9に示すように、本実施形態における回折素子成形金型67は、固定側回折格子駒68が、回折格子面69におけるゲート3に対向する側の端部に隣接する回折格子面69の外側位置に対応する外周面の1箇所の位置に、ガス逃げ部としての1つの駒側切り欠き部70を有している点で第1実施形態と同様である。
また、この1つの駒側切り欠き部70は、第1実施形態と同様に、固定側回折格子駒68の外周面が、前述した1箇所の位置において厚み方向に沿って平坦面状に切り欠かれていることによって形成されている。
ただし、本実施形態においては、第1実施形態形態のように、回折格子面16におけるゲート3側の端部に隣接する回折格子面16の外側位置に対応する位置には駒側切り欠き部は形成されていない。
その代わりに、本実施形態においては、回折格子面69における格子溝15の長手方向の両端部のうちのゲート3に近い一方の端部に隣接する回折格子面69の外側位置に対応する位置に、ガス逃げ部としてのもう1つの駒側切り欠き部71が形成されている。
このような本実施形態における回折素子成形金型67は、第1実施形態と同様に、既存の回折素子成形金型に軽微な改良(駒側切り欠き部70、71の形成)を施すだけで簡便かつ安価に得ることができる。
そして、2つの駒側切り欠き部70、71により、固定側回折格子駒68と固定側枠駒18との間には、第1実施形態と同様に、樹脂材料の流出を防ぎつつ発生ガスのみをキャビティ2の外部に逃がすために好適な間隙d4が確保されている。
この間隙d4の寸法は、コンセプトに応じて種々変更することができるが、好ましくは0.01〜0.1mm(より好ましくは、0.01〜0.05)とされている。
また、本実施形態における駒側切り欠き部70、71は、第1実施形態と同様に、回折格子面69の外側位置に対応する位置に形成されているため、駒側切り欠き部70、71が存在しないと仮定した場合に比べて回折格子面69の平面積をわずかに小さくするだけで、回折格子面69の格子溝15自体の形状には全く関与しないものとなっている。
すなわち、本実施形態における駒側切り欠き部70、71は、第1実施形態と同様に、回折素子73(図10参照)の光学性能に悪影響を与える虞はないといえる。
また、1つの駒側切り欠き部70は、回折格子面69におけるゲート3に対向する側の端部の外側位置に対応する位置に形成されているため、発生ガスを、キャビティ2内における当該ガスの流動方向の下流側端部に相当する位置からキャビティ2の外部に効率的に逃がすことができるようになっている。
さらに、もう1つの駒側切り欠き部71は、回折格子面69における格子溝15の長手方向の一方の端部の外側位置に対応する位置に形成されているため、発生ガスを、格子溝15に沿ってキャビティ2の外部に効率的に逃がすことができるようになっている。
したがって、本実施形態における回折素子成形金型67を用いて射出成形を行えば、回折格子面69の格子溝15の形状に影響を与えない位置に形成されたガス逃げ部としての1つの駒側切り欠き部70により、発生ガスを、キャビティ2内における当該ガス2の流動方向の下流側端部に相当する位置からキャビティの外部に効率的に逃がすことができる。
さらに、回折格子面69の格子溝15の形状に影響を与えない位置に形成されたガス逃げ部としてのもう1つの駒側切り欠き部71により、発生ガスを、格子溝15に沿ってキャビティ2の外部に効率的に逃がすことができる。
その他の回折素子成形金型の構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
このような回折素子成形金型67を用いた射出成形によって成形品として成形された後に、成形品から分離することによって得られる回折素子73は、図10に示すような回折素子73となる。
図10に示す回折素子73は、第1実施形態と同様に、回折素子本体74と、この回折素子本体74に連設されたゲート3内の成形部位8とによって構成されている。
また、回折素子本体74は、光学機能部75と、バレル19を含む非光学機能部とによって構成されている。
さらに、図10に示すように、光学機能部75は、所定の方向に沿って長尺とされた格子溝15が整列された回折格子面69を有している。また、光学機能部75の厚み方向の反対側の面(図10における紙面裏側の面)は、平坦な光学面22となっている。
さらにまた、図10に示すように、回折格子面69は、2つの駒側切り欠き部70、71が形成された固定側回折格子駒68の金型形状が転写されていることによって、ゲート3に対向する側の端部および格子溝15の長手方向の一方の端部に、それぞれ、ゲート方向または格子溝15の長手方向に直交する平面直線形状の格子面側切り欠き部76、76を有している。
なお、本実施形態において、格子溝15の長手方向は、ゲート方向に対して平行ではなく、所定の角度を有している。
そして、回折格子面69が、格子面側切り欠き部76、76を有している結果、回折格子面69におけるゲート3に対向する側の端部と、その外側に位置するバレル19の内周面との間には、バレル19以外の非光学機能部として1つの非回折格子面78が成形されている。
同様に、回折格子面69における格子溝15の長手方向の一方の端部と、その外側に位置するバレル19の内周面との間には、バレル19以外の非光学機能部としてのもう1つの非回折格子面79が成形されている。
このような回折素子73は、発生ガスを、駒側切り欠き部70によって、キャビティ2内における当該ガスの流動方向の下流側端部に相当する位置からキャビティ2の外部に効率的に逃がし、かつ、これと並行して、発生ガスを、駒側切り欠き部71によって、格子溝15に沿ってキャビティの外部に効率的に逃がしつつ成形されたものであるため、固定側回折格子駒68をはじめとした回折素子成形金型67の金型形状が適切に転写されている。
したがって、このような回折素子73は、転写不良がほとんどなく、第1実施形態と同様に、所望の波長の光を所望の方向に所望の回折効率で回折させることができるといった優れた光学性能を得ることができる。
なお、駒側切り欠き部の形状は、第1実施形態と同様に種々の形状を選択することができ、例えば、図2に示した平面円孤形状の格子面側切り欠き部37、37に対応する平面円孤形状であってもよいし、また、図3に示した平面V字形状の格子面側切り欠き部39、39に対応する平面V字形状であってもよい。
また、固定側回折格子駒68が、回折格子面69におけるゲート3側およびゲートに対向する側の端部に隣接する回折格子面69の外側位置に対応する外周面の2箇所の位置と、回折格子面69における格子溝15の長手方向の両端部に隣接する回折格子面69の外側位置に対応する外周面の2箇所の位置とに、合計4つの駒側切り欠き部を有するようにしてもよい。そのようにすれば、発生ガスをさらに効率的にキャビティ2の外部に逃がすことが可能となる。
以上述べたように、本実施形態における回折素子成形金型1、41、53、67およびこれを用いて成形された回折素子10、47、59、73によれば、固定側回折格子駒12、42、54、68の外周面における回折格子面16、43、55、69の外側位置に対応する位置に形成された駒側切り欠き部26、27、45、46、56、57、70、71によって、発生ガスをキャビティ2から効率的に逃がすことが可能となる。
この結果、回折素子10、47、59、73の光学性能に悪影響を与えずに回折素子成形金型1、41、53、67の転写性を向上させることによって、優れた光学性能を確実に得ることができる回折素子10、47、59、73を成形することができ、かつ、回折素子成形金型1、41、53、67の寿命を向上させることができる。
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
例えば、本発明は、両面回折素子を成形する場合にも有効に適用することができるものである。
この場合には、固定側回折格子駒だけでなく、可動側回折格子駒にも、この可動側回折格子駒によって成形される回折格子面の外側位置に対応する位置に、第1〜第4実施形態に示した駒側切り欠き部と同様の駒側切り欠き部を形成することになる。
したがって、両面回折素子を成形する場合にも、2つの回折格子面にそれぞれ対応するガス逃げ部としての駒側切り欠き部により、発生ガスをキャビティから効率的に逃がすことができる。
この結果、両面回折素子の光学性能に悪影響を与えずに回折素子成形金型の転写性を向上させることによって、優れた光学性能を確実に得ることができる両面回折素子を成形することができ、かつ、両面回折素子用の回折素子成形金型の寿命を向上させることができる。