JP4950590B2 - 交通情報提供装置、交通情報提供システム、交通情報の送信方法、および交通情報の要求方法 - Google Patents
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Description
当初の交通情報サービスは、特定の道路区間の現況情報を提供することからスタートしたが、今日ではさまざまな形態に多様化を遂げつつある。この多様性の方向には大きく分けて2つある。ひとつは、予測情報の提供という時間方向の拡張である。これは予測情報の利用により、長距離の移動や長期的な配送計画においても、最適な経路選択や所要時間の見積りを可能とするものである。そして他のひとつは、プローブカーによる交通情報の提供エリアの拡大、すなわち空間方向の拡張である。これは、既存の路上センサではカバーされていない道路(リンク)についても交通情報の収集・提供を行うことで、より効果的なサービスの確立を目指すものである。
ここで、交通情報とは、例えば、該当するリンクの旅行時間をいう。
例えば、プローブカーの台数を全国で10万台とした場合、プローブカーが取得できる時間密度は、リンク当たりの平均で1時間に1回程度である。これを現行の路上センサと同等の5分周期のデータとして利用する上で、時系列上での欠損率は8割から9割以上に達する。このように疎なプローブデータを路上センサの相補的な情報源として活用するには、何らかのデータ補完技術が必要となる。
また、過去のプローブデータから複数リンクにおけるリンク間の相関関係を表す特徴空間を生成し、現況のプローブデータをその欠損に応じて特徴空間に射影することで、欠損したリンクの交通情報の推定補完を行う技術も知られている。特徴空間射影により推定補完を行うことの利点は、複数のリンクの間で相関のある成分に交通情報を分解し、その成分毎に補完データの算出および合成を行うことで、過去のプローブデータに含まれる多様な相関情報を活用した補完処理が可能になることにある(例えば、特許文献2および非特許文献1参照)。
また、過去のプローブデータを統計利用すれば欠損率が高い場合も推定は可能であるが、統計処理されたプローブデータは、過去のものであり、必ずしも現況を表すものではない。
また、相関の高いリンクと低いリンクとを峻別することなく推定補完を行うため、相関の低いリンクについては、補完演算が不安定になり、結果的に、特定のリンクの情報が現況、推定補完を含めて欠損しやすくなる。更に、推定補完処理の結果から、すなわち結果論でしか相関の高低を判別できなかったため、推定補完処理を終えた後に相関が低いリンクについては推定補完に使えないことがわかり、効率的に交通情報提供エリアのカバー率の拡大を図ることができないといった問題があった。
以降、リンク間の交通情報の相関の有無または高低を、リンクの相関(リンク相関)の有無または高低と適宜記載する。
すなわち、本発明は、特徴空間に対するリンクの射影ノルムを推定補完の可否を判定するための指標とすることで事前にリンク相関の高低を判別でき、また、相関の低いリンクのデータ収集優先度を上げることにより情報提供エリアのカバー率の拡大を図ることを目的とする。
図1は、第1実施形態に係る、例えば、プローブデータセンタに設置される交通情報提供装置の内部構成を示すブロック図である。
第1実施形態に係る交通情報提供装置は、記憶装置である過去プローブデータデータベース11と、演算装置であるフィルタ用基底演算装置12、射影ノルム演算装置13、相関フィルタ14、補完用基底演算装置15、合成係数演算装置16、交通情報推定装置17とで構成される。
プローブデータ履歴は、例えば、タイムスタンプ、リンクID、リンクあたりの旅行時間、速度、渋滞度に関する情報の時系列集合からなる。
フィルタ用基底演算装置12は、過去プローブデータデータベース11から複数のリンクの欠損を伴うプローブデータ履歴を取得して欠損値付きの主成分分析を行い、欠損値付きの主成分分析を行った結果得られる複数のリンクにおいて相関をもって変化する交通情報の成分をそのリンク群に関する特徴空間の基底(特徴空間基底)として射影ノルム演算装置13へ出力する。欠損値付きの主成分分析については、前記した特許文献2および非特許文献1に詳細に開示されているため、ここでの説明は省略する。
また、射影ノルム演算装置13は、フィルタ用基底演算装置12により出力される特徴空間基底を軸ベクトルとして複数のリンクの相関関係を表す特徴空間を生成し、この特徴空間上における射影ベクトルのノルム(射影ノルム)を算出して相関フィルタ14に出力する。特徴空間基底については後記する。ここで、射影ベクトルとは、対象となるリンクをベクトルで表現したとき、このベクトルを特徴空間に射影したベクトルである。射影ノルムは、例えばリンクをベクトル表現したベクトルと、特徴空間との角度を算出し、この角度を用いて前記したベクトルの余弦を求めることによって算出することができる。
なお、ここで、補完対象リンクリストとは、射影ノルムが補完可能閾値を超えたリンクを列挙したもので、少なくとも、リンク番号と、補完可否コード(0:不可、1:可)(補完対象リンクの情報)から成る。詳細は後記する。
また、補完用基底演算装置15は、過去プローブデータデータベース11に格納されているプローブデータ履歴のうち、相関フィルタ14により出力される補完対象リンクリストに補完可能なリンクとして登録されているリンクのプローブデータ履歴に対して、欠損値付きの主成分分析を行う。そして、補完用基底演算装置15は、欠損値付きの主成分分析の結果、生じる補完の対象である補完対象リンクにおいて相関をもって変化する交通情報の成分をそのリンク群に関する補完用基底として合成係数演算装置16および交通情報推定装置17へ出力する。
ここで、合成係数用基底とは、補完用基底の要素のうち、現況プローブデータにおいて欠損していないリンクに対応する要素のみで構成された基底である。
ここで、要素とは、基底ベクトルの要素(すなわち、成分)である。例えば、100本のリンクからなる基底があるとすると、各リンクに対応する成分が要素となる。詳しくは、図2を参照して後記する。
交通情報推定装置17は、合成係数演算装置16により出力される合成係数に基づき、補完用基底演算装置15によって出力される補完用基底を線形結合することにより、補完に用いる交通情報の推定値(推定補完情報)を算出し、車載端末へ送信する。
図2において、等号の左辺は、複数のリンク(リンク1〜リンク3)におけるある瞬間の交通情報(ここでは、旅行時間)の値を線の太さで表したものであり、等号の右辺は、それを複数の基底の線形結合として表したものである。右辺において、基底のそれぞれは(基底W(1),W(2))、各リンクにおいて相関をもって変化する交通情報の成分で構成され、各基底の合成係数は無相関に変化する。交通情報をこのように表現することで、複数リンクにおける交通状況の傾向を、各基底の合成係数の大きさによって表すことができる。
そして、“1:1:10”で変化する成分の強度(基底W(1)の合成係数a1)と、“10:1:5”で変化する成分の強度(基底W(2)の合成係数a2)によって、リンク1とリンク2に比べて、リンク3が卓越して渋滞している、あるいは、リンク1が渋滞して、リンク2は空いているなど、リンク1〜3の交通状況がどのような傾向にあるかを表現することができる。すなわち、ある瞬間の交通情報は、複数の基底と、合成係数とによって表現することができる。このようなリンク間の相関関係を表す基底のバリエーションは、当該リンク群の交通情報が持つ情報量の次数(成分の数)によって決まる。
このとき、各基底の成分が、要素となる。例えば、基底W(1)において、0.1,0.1,1.0はそれぞれ要素であり、各要素は、リンク1、リンク2、およびリンク3に対応する。
図2に示す基底の考え方を特徴空間という観点でとらえると、図3に示されるように、基底のそれぞれは特徴空間を構成する軸ベクトルであり、合成係数が特徴空間における座標に相当する。すなわち、図2に示す、当該リンク群におけるある瞬間の交通情報は、特徴空間の1点によって近似的に表すことができる。
逆に、現況の交通情報がプローブデータのように大きな欠損を含むものであっても、それを特徴空間上の1点に射影することができれば、その特徴空間座標の1点を元の交通情報データ空間(N本のリンクを軸とするN次元空間)に逆射影することによって、交通情報が欠損したリンクを推定補完することができる。このような特徴空間への射影を用いた推定補完には、複数リンクの間で相関のある成分毎に推定値が算出されるため、さまざまな要因による複合的な現象として観測される交通情報を適切に補完できるというメリットがある。
この場合、基底1〜基底Mで張られる特徴空間(図中、網掛けが付された平行四辺形)に対して、基底ベクトルPm(m=1〜M)は正規直交基底であるため、リンクiの単位ベクトルの射影点Tiは、ベクトルEiと基底ベクトルPmの内積で構成され、Ti=[P1,P2,…,PM]’Ei=P’Eiである(M次元の特徴空間座標系)。ここで、P=[P1,P2,…,PM]と表記することとする。この射影点をN次元のリンク座標系で表すと、PTi=PP’Eiという形になる。
ところで、射影行列PP’の要素(i,j)を単純に展開すると、p1ip1j+p2ip2j…+pMipMjであり、pmipmjを要素(i,j)として持つ行列は、PmPm’として表すことができる。したがって、PP’= P1P1’+ P2P2’+…+PMPM’と変形することができる。
ここで、主成分分析のスペクトル分解を用いると、リンク1〜Nのデータの共分散行列Vは、V≒λ1(P1P1’)+λ2(P2P2’)+…+λM(PMPM’)と分解して表すことができる。ここで、λmは、基底mにおけるデータの分散である。この形は、前記した射影行列PP’を構成する各基底ベクトルPmに、分散λmで重み付けした形に他ならない。そこで、スペクトル分解のこの性質を利用し、図1に示す相関フィルタ14は、射影ベクトルPP’Eiのノルム(射影ノルム)を用いる代わりに、分散で重み付けした射影ベクトル{λ1(P1P1’)+λ2(P2P2’)+…+λM(PMPM’)}Eiのノルムを用いて推定補完の可否についてフィルタリングしてもよい。
以下、図4に示すフローチャートを参照しながら図1に示す本発明の第1実施形態に係る交通情報提供装置の動作について詳細に説明する。
そして、フィルタ用基底演算装置12は、読み出したプローブデータ履歴を取得して欠損値付きの主成分分析を行い、欠損値付きの主成分分析を行った結果得られる複数のリンクにおいて相関をもって変化する交通情報の成分をそのリンク群に関するフィルタ用の基底である特徴空間基底として算出し、算出した特徴空間基底を射影ノルム演算装置13へ出力する(ステップS401)。
相関フィルタ14は、射影ノルムと、補完可能閾値とを比較することによってリンク毎に推定補完の可否を判定し(ステップS403)、判定の結果、射影ノルムが補完可能閾値を超えたリンク(すなわち、補完対象となるリンク)のリストである補完対象リンクリストを生成して補完用基底演算装置15へ出力する。なお、補完可能閾値は、フィルタ用基底演算装置12により出力される特徴空間基底の数によって決まる。
なお、ここでは、一般的な基底に基づいて説明する。
元データの各サンプル(時系列上のスナップショット、すなわちある瞬間のプローブデータ)は、これら基底の線形結合で表現することができる。この線形結合において、各基底にかかる合成係数が主成分であり、各サンプルに含まれている基底毎の重みを表す。また、基底を軸ベクトルとする特徴空間を考えれば、基底にかかる合成係数とは、特徴空間における座標に他ならない。
主成分分析で得られる基底は順位を持ち、上位の基底ほど元のデータについてメジャーな成分(情報量の大きな成分、例えば、複数リンクの交通情報が同じ傾向で変化する成分)を表し、下位の基底ほどマイナーな成分(例えば、ある1本のリンクだけに含まれるノイズ等)表す。すなわち、基底を多く使うほど、元の情報を細部まで再現することが可能になり(データの復元率があがる、すなわち累積寄与率が上がる)、どのようなリンクの交通情報をも表すことができる。このとき、各リンクの交通情報に相当する単位ベクトルの特徴空間への射影ノルムは、どんなリンクでも1に近くなる(例えば、x−y−z空間に射影するようなもの)。
一方、基底の数を減らすと、その特徴空間で表される情報量が自ずと減るため、他のリンクと高い相関をもって変化するリンクでないと大きな射影ノルムは得られない。そこで、射影ノルムに対する補完可能閾値を小さくしてメジャーなデータ成分を多少なりとも含んでいるリンクを補完可能であると判定する。
したがって、マイナーな成分しか持たないリンクを除外するには、基底の数を多くするほど、射影ノルムの補完可能閾値を高くする必要がある。
なお、補完可能閾値の大小の判定は相対的には前記したとおりであるが、補完可能閾値を絶対量とするときは、実際の運用に際してのチューニングが必要になる。
相関フィルタ14により生成される補完対象リンクリストは、補完可能閾値を超えた射影ノルムのリンクを列挙したものになる。相関フィルタ14は、各リンクの射影ノルムと補完可能閾値とを比較し、少なくとも、補完可能閾値を超えたリンクのリンク番号(リンクに対し、一意に付されるID(Identification))と補完可否コードとから成る補完対象リンクリストを図示せぬ記憶装置へ登録すると同時に、補完用基底演算装置15へ出力する。相関フィルタ14は、この処理を、交通情報の提供対象となる領域における全リンクについて行う。
ここで、補完可否コードとは、リンク毎に補完が可能であるか否か(ステップS403の結果)をリンクID毎に、1(可能)、0(不可能)の組み合わせで表現したものである。
続いて、補完用基底演算装置15は、過去プローブデータデータベース11に格納されたプローブデータ履歴に登録されているリンクの交通情報のうち、補完対象リンクリストに登録されている補完対象リンクの交通情報に対して欠損値付きの主成分分析を行い、当該補完対象リンクにおいて、相関をもって変化する交通情報の成分をそのリンク群に関する補完用基底として合成係数演算装置16および交通情報推定装置17へ出力する(ステップS404)。すなわち、過去プローブデータデータベースに格納されているプローブデータ履歴のうち、補完可能なリンクにおけるプローブデータ履歴を選択して、これらのプローブデータ履歴に対して、再び欠損値付きの主成分分析を行う。
前記したステップS401〜ステップS404の処理は、図4に示すフローチャート中、ループ1の中で実行される。ループ1は、過去データから補完用基底を決定する処理であり、補完用基底の更新周期毎に実行するループである。ループ1は、例えば、1日に1回、あるいは1週間に1回等の周期で実行するものとする。
合成係数演算装置16は、車載端末から交通情報の提供要求を受信すると、プローブカーから現況プローブデータを取得し、この現況プローブデータを基に、補完用基底演算装置15によって出力される補完用基底から、合成係数用基底を算出し、取得した現況プローブデータを算出した合成係数用基底の和として表すための合成係数を、重み付き射影によって算出し、交通情報推定装置17に出力する(ステップS405)。
重み付き射影は、例えば「線形代数とその応用」(G.ストラング著、山口昌哉 監訳、井上昭 訳、産業図書)において詳細に説明されている。
ここで、合成係数用基底とは、補完用基底の要素のうち、現況プローブデータにおいて欠損していないリンクに対応する要素のみで構成された基底である。
そして、交通情報推定装置17は、合成係数演算装置16によって出力される合成係数に基づき、補完用基底演算装置15によって出力される補完用基底を線形結合し、現況プローブデータが欠損しているリンクの推定補完に用いる交通情報の推定値(推定補完情報)を計算する(ステップS406)。
最後に、交通情報推定装置17が、現況のプローブデータが収集されなかったリンク(交通情報が欠損となったリンク)について、S406で算出された推定補完情報を出力する(ステップS407)。
なお、例えば、プローブカーが、現況プローブデータを5分周期毎に提供するのであれば、前記したステップS405〜S407の処理は、同じ5分周期で実行される。
図5は、第2実施形態に係る交通情報提供装置の内部構成を示すブロック図であり、図6は、第2実施形態に係る交通情報提供装置の動作を示すフローチャートである。
なお、第1実施形態と共通する要素については説明を省略する。
図6において、ステップS601から、ステップS603までは、図4のステップS401から、ステップS403と同様の処理のため、説明を省略する。
図5に示す本発明の第2実施形態において、図1に示す第1実施形態との差異は、第1実施形態の補完用基底演算装置15の代替として、部分基底演算装置25を用い、相関フィルタ24により出力される補完対象リンクリストを参照して、交通情報の提供対象の領域におけるリンクのうち、補完対象リンクリストに登録されていないリンクを補完対象外のリンクとして選択し、この補完対象外のリンクに相当する要素をリンク群に関する特徴空間基底から除外して補完用の部分基底を合成係数演算装置26および交通情報推定装置27に出力したことにある(図6のステップS604)。
交通情報の提供対象となる領域におけるリンクが100本あった場合、基底のそれぞれは100個の成分から構成される100次元ベクトルになる。この100次元ベクトルを、5つの基底ベクトルで表現できるならば、前記した100次元ベクトルは、5つの基底ベクトルで構成される5次元部分空間となる。
第2実施形態では、100本のリンクのうち、補完対象外のリンクが10本あったとすれば、元の空間からそれらの要素(補完対象外のリンクに対する要素)を除外し、90次元空間の中で5次元の特徴空間を用いて補完を行うことになる。
第1実施形態では、ステップS401(図4参照)において算出した特徴空間基底を基に、相関フィルタ14が、補完対象リンクを選択し、補完用基底演算装置15が、この選択された補完対象リンクのプローブデータ履歴を用いて、再度主成分分析を行うことによって、補完対象外リンクの影響を除外した補完用基底を算出している。
第2実施形態では、相関フィルタ24が、ステップS601において算出した特徴空間基底を基に、補完対象リンクを選択するところまでは、第1実施形態と同様の処理である。しかし、この処理の結果、得られた補完対象外リンクに対応する要素を、部分基底演算装置25が、ステップS601で算出した特徴空間基底の要素から、除外する点が第1実施形態と異なる。すなわち、第2実施形態において、交通情報提供装置は、第1実施形態における2度目の主成分分析を行わない。
図9から明確なように、フィルタリング前、各特徴空間基底(基底P1〜PM)は、いずれもN次元ベクトルで表現されていたものが、フィルタリング後、特徴空間基底の数に変化はないものの各基底の要素が減少し、ここでは、(N−2)次元ベクトルになっている。
前記したようにリンク2およびリンク4を除外するリンクとして選択する処理は、射影ノルムを基にリンク毎に補完の可否を判定することによってなされる(図4のステップS403と同様の処理)。
合成係数演算装置26は、プローブカーから得られる現況プローブデータを基に、部分基底演算装置25によって出力される部分基底から、合成係数用部分基底を算出し、この合成係数用部分基底に対する合成係数を現況プローブデータから重み付き射影によって算出する(図6のステップS605)。
ここで、合成係数用部分基底とは、部分基底の要素のうち、現況プローブデータにおいて欠損していないリンクに対応する要素のみで構成された基底である。
図7は、第3実施形態に係る交通情報提供装置の内部構成を示すブロック図であり、図8は、第3実施形態に係る交通情報提供装置の動作を示すフローチャートである。
第1実施形態と共通の要素に関しては、説明を省略する。
図7に示す本発明の第3実施形態において、図1に示す第1実施形態との差異は、合成係数演算装置36に、現況情報(現況プローブデータ)のみならず、図示省略した統計情報DBから取得される統計情報も入力していることにある。具体的には、現況情報の欠損値を統計情報によって補った値を合成係数演算装置36の入力としている。さらに、合成係数演算装置36は、補完用基底に重み付けを行った重み付け補完用基底を算出し、この重み付け補完用基底を基に、合成係数の算出を行う。他は、第1実施形態と同様である。
統計交通情報とは、例えば、ある条件下の交通情報に対して、平均化などの統計処理を行った交通情報である。
ここで、統計情報は、例えば、図示しない交通情報センタから交通情報提供装置の交通情報DBにダウンロードされ、統計交通情報DBに格納されているものとする。
このとき、誤差ノルムとは、リンク3、リンク5、…が観測されていたとすれば、リンク3の観測値の二乗誤差+リンク5の観測値の二乗誤差+…というかたちで、観測値が得られた各リンクの観測値について近似誤差の二乗の和を演算した値である。ここで、観測データが得られなかったリンク1、リンク2、およびリンク4について、欠損値の代わりに統計情報を用い、重み付けWを用いて重み付け射影を行うことで、リンク3の二乗誤差+リンク5の二乗誤差+…+W×(リンク1の二乗誤差+リンク2の二乗誤差+リンク3の二乗誤差+リンク4の二乗誤差+…)というかたちで誤差ノルムを定義しなおせば、統計情報を含めた近似誤差に基づいて、特徴空間座標を決定することが可能になり、観測値が少ない場合にも、わずかな観測値に左右されることなく、特徴空間を安定して決定することができる。
一方で、本実施形態は、リアルタイムに得られた観測値を反映して補完を行うことを目的としているため、前記した演算式の重み付けWを適宜小さくすることで、安定性を維持しながら、観測値を重視した補完が可能になる。
ここで、重み付けWは、実験的に得られる値である。
図中、黒塗りされたブロックは観測値、空白ブロックは欠損値、ハッチングされたブロックは統計情報とする。図10に示されるように、マージされた入力は、合成係数演算装置26によって、現況プローブデータの欠損値を統計情報に置換したものになっている。
なお、図8において、ステップS801〜ステップS804は、図4のステップS401〜ステップS404の処理と同様であるため、説明を省略する。
合成係数演算装置36は、現況プローブデータの欠損値を統計交通情報DBから取得した統計情報に置換し、この情報を基に補完用基底演算装置35によって出力される補完用基底に重み付けを行った重み付け補完用基底に対する重みである合成係数を算出する(ステップS805)。次に、交通情報推定装置37は、合成係数演算装置36から出力される合成係数に基づいて、補完用基底演算装置35によって出力される補完用基底を線形結合し、プローブデータが欠損しているリンクの推定補完に用いる推定値(推定補完情報)を算出する(ステップS806)。また、重み付け補完用基底とは、現況プローブデータが得られた要素と、統計交通情報が得られた要素とで、重み付けを変えた補完用基底である。
そして、交通情報推定装置37は、現況プローブデータが収集されなかったリンク(交通情報が欠損となったリンク)について、ステップS806で算出された推定補完情報を出力する(ステップS807)。
この場合、図8のステップS804は、図6のステップS604に置き換わり、図8のステップS805の処理は、「合成係数演算装置36(図7参照)は、現況プローブデータの欠損値を統計交通情報DBから取得した統計情報に置換し、置換した情報から、補完対象外リンクに相当する要素を除外し、この補完対象外リンクを除外した情報を基に部分基底演算装置25によって出力される部分基底に重み付けを行った重み付け部分基底に対する重みである合成係数を算出する」となる。そして、図8のステップS806およびステップS807の処理は、図6のステップS606およびステップS607に置き換わる。
ここで、部分基底に対する重み付けは、第3実施形態と同様の重み付けである。
以下、前記した第1実施形態〜第3実施形態の応用として、補完の可否に応じて効率的な現況プローブデータのアップロード制御を行う交通情報提供システムについて説明する。
図11は、交通情報提供システムの第1実施形態に係るシステム構成の一例を示す図である。
第1実施形態に係る交通情報提供システムは、交通情報提供装置としてのプローブセンタサーバ10と、複数のプローブ端末20とが、通信ネットワーク30を介して接続され、構成される。
過去プローブデータデータベース101には、前記したように、所定領域のリンクについて収集された過去のプローブデータ履歴が格納されている。また、フィルタ用基底演算装置102は、過去プローブデータデータベース101から複数のリンクの欠損を伴うプローブデータ履歴を取得して欠損値付きの主成分分析を行い、複数のリンクにおいて相関をもって変化する交通情報の成分をそのリンク群に関する特徴空間基底として射影ノルム演算装置103へ出力する。射影ノルム演算装置103は、フィルタ用基底演算装置102により出力される基底を軸ベクトルとして複数のリンクの相関関係を表す特徴空間を生成し、特徴空間上における射影ベクトルのノルム(射影ノルム)を算出して相関フィルタ14に出力する。
ここでは、プローブセンタサーバ10に対して、情報リクエストを発行したプローブカー(プローブ端末20)が現況プローブデータのアップロードの対象になるものとして説明する。
補完対象リンクリスト格納装置201には、プローブセンタサーバ10から送信される補完対象リンクリストが格納される。なお、ここでいう補完対象リンクリストとは、リンク番号と補完可否コード(0:不可、1:可)が列挙されたものになっている。また、現況プローブデータデータベース202(交通情報格納装置)には、近過去から現在までの、例えば、最新30分に収集した現況プローブデータがリンク毎に格納されているものとする。
図12は、第1実施形態に係る交通情報提供システムの動作を示すフローチャートである。
なお、アップロードフィルタ203は、プローブセンタサーバ10に対し現況プローブデータのアップロード通知を受信するタイミングで、プローブセンタサーバ10から補完対象リンクリストを受信し、補完対象リンクリスト格納装置201に格納するものとする。
全現況プローブデータがアップロード容量の上限値より多い場合(アップロード容量に収まらない:ステップS122“No”)、アップロードフィルタ203は、補完対象リンクリスト格納装置201の格納されている補完対象リンクリストから判定される補完対象外リンクの現況プローブデータ(データ)とアップロード容量上限値とを比較する(ステップS124)ことによって、送信される全補完対象外データがアップロード容量に収まるか否かを判定する(ステップS125)。アップロード容量に収まる場合は(ステップS125“Yes”)、アップロードフィルタ203は、現況プローブデータデータベース202に格納されている現況プローブデータのうち、補完対象外リンクの現況プローブデータを全てプローブセンタサーバ10にアップロードし(ステップS127)、その後、残りのアップロード容量で、現況プローブデータデータベース202に格納されている現況プローブデータのうち、補完対象リンクの現況プローブデータを新しい順にプローブセンタサーバ10にアップロードする(ステップS128)。アップロード容量に収まらなかった場合(ステップS125“No”)、アップロードフィルタ203は、現況プローブデータデータベース202に格納されている現況プローブデータのうち、補完対象外リンクの現況プローブデータを新しい順にプローブセンタサーバ10へアップロードする(ステップS126)。そして、アップロードする現況プローブデータが、アップロード容量に達したとき、アップロードフィルタ203は、アップロードを中止して、処理を終了させる。
また、ここでは、補完対象外リンクは、他リンクからの推定補完ができないため、プローブセンタサーバ10では交通情報を生成することができない。更に、アップロードフィルタ203は、補完対象/対象外という2値ではなく、射影ノルムの大きさの逆数を優先度として優先度の高い順にアップロードすることもできる。
図13は、交通情報提供システムの第2実施形態に係るシステム構成の一例を示す図である。
第1実施形態と共通の要素については、説明を省略する。
図11に示す第1実施形態との差異は、図11に示す第1実施形態は、静的な補完対象リストに基づきプローブ端末20が現況プローブデータのアップロード数を制御したのに対し、図13に示す第2実施形態は、動的な補完対象リストに基づきプローブセンタサーバ10aがアップロード数を制御することにある。
プローブセンタサーバ10aは、図11に示す実施形態が持つ構成に更に、現況プローブデータデータベース105と、アップロード要求装置106とが付加される。現況プローブデータデータベース105には、所定領域のリンクについて、例えば過去30分前から収集された現況プローブデータが格納されている。また、アップロード要求装置106は、補完対象リンクリストを用いてアップロード対象を動的に決定する機能を持ち、その手順は、図14にフローチャートで示されている。
図14において、アップロード要求装置106は、プローブ端末20aから発行される現況プローブデータのアップロード通知の受信を契機に(ステップS141)、プローブセンタサーバ10a内の現況プローブデータデータベース105に格納された現況プローブデータを参照し、補完対象リンクのエリアカバー率を算出する(ステップS142)。そして、アップロード要求装置106は、予め設定してある補完対象リンクのアップロード閾値(通信ネットワークの通信容量の上限)との比較を行い、エリアカバー率が、アップロード閾値以下か否かを判定する(ステップS143)。ここで、エリアカバー率とは、あるエリア内において存在するリンク群のうち、所定時間内に現況プローブデータが収集されたリンクの割合をいう。本実施形態におけるエリアカバー率は、補完対象リンクにおいて、所定時間内に現況プローブデータが収集されたリンクの割合とする。
アップロード要求装置106は、アップロード閾値との比較の結果、エリアカバー率がアップロード閾値以下と判定したときに(ステップS143“Yes”)、補完対象リンクの現況プローブデータのアップロードを優先して送信するようにプローブ端末20aに通知する(ステップS144、S145)。
ここでは、特徴空間に対するリンクの射影ノルムをリンクの優先度とし、相関が低ければ他のリンクをもとに推定補完ができないため、実測値が無い限り常に欠損ということになる。従って、相関が低いリンクの収集優先度を高くし、そのデータを積極的に収集する。そのうえで、相関の高いリンク、低いリンク群双方のエリアカバー率を監視しながら優先度を動的に制御している。例えば、相関の高いリンク群は、20%程度のデータがあれば補完できるため、20%超を目標とし、一方、相関の低いリンク群は推定補完ができないため、50%超を目標にデータを収集することが考えられる。この場合、優先度の設定は、リンク群固有の相関の高さとリンク群におけるエリアカバー率との関数ということになる。
例えば、過去15分から現在に至るまでのリンクデータを現況情報として考えた場合、100本のリンクのうち、20本のリンクについて過去15分の間に現況プローブデータが収集できれていれば、エリアカバー率が20%ということになる。
一方、前記した相関の高いリンク20%、相関の低いリンク50%という目標値をプローブ端末20にもあてはめれば、例えば、最新30分の現況プロープデータのうち、この比率を満足するように現況プローブデータをアップロードする方法をとることができる。その場合、相関の高低、すなわち、推定補完の可否判定が更新されない限り、優先度情報は固定的に使用することができる。
また、この場合、補完の可否を決定する補完可能閾値を別途送信することが必要となるが、補完可能閾値にはリンク番号に射影ノルムから算出される優先度情報が付加されたもの、優先度階級が付加されたもの等が考えられる。
11,21,31,101 過去プローブデータデータベース
12,22,32,102 フィルタ用基底演算装置
13,23,33,103 射影ノルム演算装置
14,24,34,104 相関フィルタ
15,35 補完用基底演算装置
16,26,36 合成係数演算装置
17,27,37 交通情報推定装置
20,20a プローブ端末
25 部分基底演算装置
30 通信ネットワーク
105,202 現況プローブデータデータベース
106 アップロード要求装置
201 補完対象リンクリスト格納装置
203 アップロードフィルタ
Claims (10)
- 交通情報の提供対象領域のリンクについて収集された前記交通情報の履歴である交通情報履歴を参照して、当該提供対象領域における複数のリンクに関する交通情報を提供する交通情報提供装置であって、
前記交通情報履歴は、前記提供対象領域のリンクについて、前記交通情報の欠損を伴っており、前記欠損を伴う交通情報履歴に含まれている、前記複数のリンクの前記交通情報に対し、欠損値付きの主成分分析を行うことによって、各リンクにおける交通情報を成分として有する基底である特徴空間基底を複数算出するフィルタ用基底演算装置と、
前記算出された特徴空間基底のそれぞれを軸ベクトルとする特徴空間を生成し、前記複数のリンクそれぞれにおける交通情報をベクトル表現し、そのベクトルを前記特徴空間へ射影することによって射影ベクトルを生成し、この射影ベクトルのノルムである射影ノルムを前記リンク毎に算出する射影ノルム演算装置と、
前記算出されたリンク毎の射影ノルムのそれぞれを、補完可能閾値と比較することによって、リンク毎に補完の可否を判定し、前記判定の結果、補完可能と判定されたリンクである補完対象リンクの情報を含む補完対象リンクリストを生成出力する相関フィルタと、
前記生成出力された補完対象リンクリストを分析対象として前記交通情報履歴に登録されている前記交通情報のうち、前記補完対象リンクに該当するリンクの交通情報に対し、欠損値付きの主成分分析を行うことによって、各補完対象リンクにおける交通情報を成分として有する基底である補完用基底を算出する補完用基底演算装置と、
プローブカーから取得される現況交通情報と、前記補完用基底とを基に、合成係数用基底を算出し、前記合成係数用基底に対する重みである合成係数を算出する合成係数演算装置と、
前記算出された合成係数に基づき、前記補完用基底演算装置によって算出された前記補完用基底を線形結合することにより、前記現況交通情報が欠損しているリンクにおける交通情報の推定値を算出する交通情報推定装置と、
を備えることを特徴とする交通情報提供装置。 - 前記合成係数演算装置は、
前記現況交通情報の欠損値を、所定の条件下の交通情報に対する統計処理によって算出されている統計情報で補った交通情報を取得し、前記欠損値を統計情報で補った交通情報を基に、補完用基底の成分に重み付けを行った重み付け補完用基底を算出し、前記欠損値を前記統計情報で補った交通情報と、前記算出した重み付け補完用基底を基に、前記合成係数を算出すること
を特徴とする請求項1に記載の交通情報提供装置。 - 交通情報の提供対象領域のリンクについて収集された前記交通情報の履歴である交通情報履歴を参照して、当該提供対象領域における複数のリンクに関する交通情報を提供する交通情報提供装置であって、
前記交通情報履歴は、前記提供対象領域のリンクについて、前記交通情報の欠損を伴っており、前記欠損を伴う交通情報履歴に含まれている、前記複数のリンクの前記交通情報に対し、欠損値付きの主成分分析を行うことによって、各リンクにおける交通情報を成分として有する基底である特徴空間基底を複数算出するフィルタ用基底演算装置と、
前記算出された特徴空間基底のそれぞれを軸ベクトルとする特徴空間を生成し、前記複数のリンクそれぞれにおける前記交通情報をベクトル表現し、そのベクトルを前記特徴空間へ射影することによって射影ベクトルを生成し、この射影ベクトルのノルムである射影ノルムを前記リンク毎に算出する射影ノルム演算装置と、
前記算出されたリンク毎の射影ノルムのそれぞれを、補完可能閾値と比較することによって、リンク毎に補完の可否を判定し、前記判定の結果、補完可能と判定されたリンクである補完対象リンクの情報を含む補完対象リンクリストを生成出力する相関フィルタと、
前記生成出力された補完対象リンクリストを基に、前記提供対象領域における、前記補完対象リンクリストに登録されていない補完対象外のリンクを選択し、前記補完対象外のリンクに相当する要素を前記特徴空間基底から除外することによって、補完用の部分基底を算出する部分基底演算装置と、
プローブカーから取得される現況交通情報と、前記部分基底とを基に、合成係数用部分基底を算出し、前記合成係数用部分基底に対する重みである合成係数を算出する合成係数演算装置と、
前記算出された合成係数に基づき、前記部分基底演算装置によって出力された前記部分基底を線形結合することにより、前記現況交通情報が欠損しているリンクにおける交通情報の推定値を算出する交通情報推定装置と、
を備えることを特徴とする交通情報提供装置。 - 前記合成係数演算装置は、
前記現況交通情報の欠損値を、所定の条件下の交通情報に対する統計処理によって算出されている統計情報で補った交通情報を取得し、前記欠損値を統計情報で補った交通情報を基に、前記部分基底演算装置によって出力される前記部分基底に対する重みである合成係数を算出すること
を特徴とする請求項3に記載の交通情報提供装置。 - 前記相関フィルタは、
前記フィルタ用基底演算装置により出力される特徴空間基底の数によって決まる補完可能閾値により補完の可否判定を行うこと
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の交通情報提供装置。 - 通信ネットワークを介して接続されるプローブ端末から発行されるアップロード通知の受信を契機に、前記現況交通情報を参照し、あるエリア内において存在するリンク群のうち、所定時間内に前記現況交通情報が収集された補完対象リンクの割合である、補完対象リンクのエリアカバー率を算出して、前記算出したエリアカバー率と、予め設定してある前記通信ネットワークの通信容量の上限である補完対象リンクのアップロード閾値との比較を行うことによって、前記エリアカバー率が、前記アップロード閾値より小さいか否かを判定し、前記エリアカバー率が前記アップロード閾値より小さいと判定された場合、前記補完対象リンクの現況交通情報のアップロードを優先すべく前記プローブ端末に通知し、前記エリアカバー率が前記アップロード閾値より大きいと判定された場合、あるエリア内において存在するリンク群のうち、所定時間内に前記現況交通情報が収集された、前記補完対象リンクリストに登録されていないリンクである補完対象外リンクの割合である、補完対象外リンクのエリアカバー率を算出し、全ての前記補完対象外リンクにおいて、前記補完対象外リンクのエリアカバー率が、前記アップロード閾値より小さいか否かを判定し、前記補完対象外リンクのエリアカバー率が、前記アップロード閾値より小さいときに、前記補完対象外リンクの現況交通情報の前記交通情報提供装置へのアップロードを優先すべく前記プローブ端末に対して通知し、前記補完対象外リンクのエリアカバー率が、前記アップロード閾値より大きいときに、前記補完対象リンクの現況交通情報の前記交通情報提供装置へのアップロードを優先すべく前記プローブ端末に対して通知するアップロード要求装置と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の交通情報提供装置。 - 交通情報の提供対象領域のリンクについて収集された前記交通情報の履歴である交通情報履歴を参照して、当該提供対象領域における複数のリンクに関する交通情報を提供する交通情報提供装置であって、
前記交通情報履歴は、前記提供対象領域のリンクについて、前記交通情報の欠損を伴っており、前記欠損を伴う交通情報履歴に含まれている、前記複数のリンクの前記交通情報に対し、欠損値付きの主成分分析を行うことによって、各リンクにおける交通情報を成分として有する基底である特徴空間基底を複数算出するフィルタ用基底演算装置と、
前記算出された特徴空間基底のそれぞれを軸ベクトルとする特徴空間を生成し、前記複数のリンクそれぞれにおける交通情報をベクトル表現し、そのベクトルを前記特徴空間へ射影することによって射影ベクトルを生成し、この射影ベクトルのノルムである射影ノルムを前記リンク毎に算出する射影ノルム演算装置と、
前記主成分分析のスペクトル分解を用いることによって、共分散行列の分解から得られる分散で重み付けした前記射影ノルムを基に決定した補完可能閾値と、前記リンク毎の射影ノルムのそれぞれとを比較することによって、前記リンク毎に補完の可否を判定し、前記判定の結果、補完可能と判定されたリンクである補完対象リンクの情報を含む補完対象リンクリストを生成出力する相関フィルタと、
前記生成出力された補完対象リンクリストを分析対象として前記交通情報履歴に登録されている前記交通情報のうち、前記補完対象リンクに該当するリンクの交通情報に対し、欠損値付きの主成分分析を行うことによって、各補完対象リンクにおける交通情報を成分として有する基底である補完用基底を算出する補完用基底演算装置と、
プローブカーから取得される現況交通情報と、前記補完用基底とを基に、合成係数用基底を算出し、前記合成係数用基底に対する重みである合成係数を算出する合成係数演算装置と、
前記算出された合成係数に基づき、前記補完用基底演算装置によって算出された前記補完用基底を線形結合することにより、前記現況交通情報が欠損しているリンクにおける交通情報の推定値を算出する交通情報推定装置と、
を備えることを特徴とする交通情報提供装置。 - 交通情報の提供対象領域のリンクについて収集された前記交通情報の履歴である交通情報履歴を参照して、当該提供対象領域における複数のリンクに関する交通情報を提供する交通情報提供システムであって、
前記交通情報履歴は、前記提供対象領域のリンクについて、前記交通情報の欠損を伴っており、前記欠損を伴う交通情報履歴に含まれている、前記複数のリンクの前記交通情報に対し、欠損値付きの主成分分析を行うことによって、各リンクにおける交通情報を成分として有する基底である特徴空間基底を複数算出するフィルタ用基底演算装置と、
前記算出された特徴空間基底のそれぞれを軸ベクトルとする特徴空間を生成し、前記複数のリンクそれぞれにおける交通情報をベクトル表現し、そのベクトルを前記特徴空間へ射影することによって射影ベクトルを生成し、この射影ベクトルのノルムである射影ノルムを前記リンク毎に算出する射影ノルム演算装置と、
前記算出されたリンク毎の射影ノルムのそれぞれに対し、補完可能閾値と比較することによって、リンク毎に補完の可否を判定し、前記判定の結果、補完可能と判定されたリンクである補完対象リンクの情報を含む補完対象リンクリストを生成出力する相関フィルタと、を有する交通情報提供装置と、
前記交通情報提供装置とは通信ネットワークを介して接続され、
前記交通情報提供装置から送信される補完対象リンクリストを受信して格納する補完対象リンクリスト格納装置と、
プローブ端末自身で収集した交通情報を格納する交通情報格納装置と、
前記交通情報提供装置に前記交通情報の送信要求を発行したことを契機に、前記交通情報格納装置に格納された前記交通情報を参照し、前記交通情報の容量と、前記通信ネットワークの通信容量を基に算出されるアップロード容量の上限との比較判定を行い、前記交通情報の容量が前記アップロード容量の上限より大きい場合に、前記補完対象リンクリストに登録されていないリンクの交通情報を優先して前記交通情報提供装置へ送信するアップロードフィルタ装置を有するプローブ端末と、
を備えることを特徴とする交通情報提供システム。 - 少なくとも演算装置と記憶装置と通信装置とから構成されるプローブ端末、および少なくとも演算装置と記憶装置とから構成され、交通情報の提供対象領域のリンクについて収集された前記交通情報の履歴である交通情報履歴を参照して、当該提供対象領域における複数のリンクに関する交通情報を提供する交通情報提供装置と、が通信ネットワークを介して接続されて成る交通情報提供システムにおける交通情報の送信方法であって、
前記交通情報提供装置の前記演算装置は、
前記交通情報履歴は、前記提供対象領域のリンクについて、前記交通情報の欠損を伴っており、前記欠損を伴う交通情報履歴に含まれている、前記複数のリンクの前記交通情報に対し、欠損値付きの主成分分析を行うことによって、各リンクにおける交通情報を成分として有する基底である特徴空間基底を複数算出し、
前記算出された特徴空間基底のそれぞれを軸ベクトルとする特徴空間を生成し、前記複数のリンクそれぞれにおける交通情報をベクトル表現し、そのベクトルを前記特徴空間へ射影することによって射影ベクトルを生成し、この射影ベクトルのノルムである射影ノルムを前記リンク毎に算出し、
前記算出されたリンク毎の射影ノルムのそれぞれを、補完可能閾値と比較することによって、リンク毎に補完の可否を判定し、前記判定の結果、補完可能と判定されたリンクである補完対象リンクの情報を含む補完対象リンクリストを生成し、
前記生成された補完対象リンクリストを分析対象とし、前記記憶装置に格納されてある前記交通情報履歴に登録されている交通情報のうち、前記補完対象リンクに該当するリンクの交通情報に対し、欠損値付きの主成分分析を行うことによって、各補完対象リンクにおける交通情報を成分として有する基底である補完用基底を算出し、
プローブ端末から取得される現況交通情報と、前記補完用基底とを基に、合成係数用基底を算出し、前記合成係数用基底に対する重みである合成係数を算出し、
前記算出された合成係数に基づき、前記算出された補完用基底を線形結合し、前記現況交通情報が欠損しているリンクにおける交通情報の推定値を算出し、
前記プローブ端末の前記演算装置は、
前記通信装置を介して前記交通情報提供装置に対し交通情報の送信要求を発行するタイミングで、前記通信装置を介して前記交通情報提供装置から前記補完対象リンクリストを受信し、前記記憶装置に格納し、
前記記憶装置に格納してあるプローブ端末自身で収集した交通情報を参照し、前記交通情報の容量と前記通信ネットワークの通信容量を基に算出されるアップロード容量の上限とを比較し、
前記比較の結果、前記交通情報の容量が前記アップロード容量の上限より大きいと判定したとき、前記記憶装置に格納された前記補完対象リンクリストに登録されていないリンクの交通情報を優先して前記交通情報提供装置へ送信すること、
を特徴とする交通情報の送信方法。 - 複数のプローブ端末と、前記プローブ端末とは通信ネットワークを介して接続され、少なくとも通信装置と演算装置と記憶装置とから成り、交通情報の提供対象領域のリンクについて収集された前記交通情報の履歴である交通情報履歴を参照して、当該提供対象領域における複数のリンクに関する交通情報を提供する交通情報提供装置とから成る交通情報提供システムにおける交通情報の要求方法であって、
前記交通情報提供装置の前記演算装置は、
前記交通情報履歴は、前記提供対象領域のリンクについて、前記交通情報の欠損を伴っており、前記欠損を伴う交通情報履歴に含まれている、前記複数のリンクの前記交通情報に対し、欠損値付きの主成分分析を行うことによって、各リンクにおける交通情報を成分として有する基底である特徴空間基底を複数算出し、
前記算出された特徴空間基底のそれぞれを軸ベクトルとする特徴空間を生成し、前記複数のリンクそれぞれにおける交通情報をベクトル表現し、そのベクトルを前記特徴空間へ射影することによって射影ベクトルを生成し、この射影ベクトルのノルムである射影ノルムを前記リンク毎に算出し、
前記算出されたリンク毎の射影ノルムのそれぞれに対し、補完可能閾値と比較することによって、リンク毎に補完の可否を判定し、前記判定の結果、補完可能と判定されたリンクである補完対象リンクの情報を含む補完対象リンクリストを生成し、
前記生成された補完対象リンクリストを分析対象とし、前記記憶装置に格納されてある前記交通情報履歴に登録されている交通情報のうち、前記補完対象リンクに該当するリンクの交通情報に対し、欠損値付きの主成分分析を行うことによって、各補完対象リンクにおける交通情報を成分として有する基底である補完用基底を算出し、
プローブ端末から取得される現況交通情報と、前記補完用基底とを基に、合成係数用基底を算出し、前記合成係数用基底に対する重みである合成係数を算出し、
前記通信装置を介して前記プローブ端末から発行される交通情報の送信要求の受信を契機に、前記現況交通情報を参照し、前記提供対象領域内において存在するリンク群のうち、所定時間内に交通情報が収集された前記補完対象リンクの割合である補完対象リンクのエリアカバー率を算出して、予め設定してある通信ネットワークの通信容量の上限である補完対象リンクのアップロード閾値との比較を行い、
前記比較の結果、前記エリアカバー率が前記アップロード閾値より小さいと判定した場合に、前記補完対象リンクの現況交通情報を優先して前記交通情報提供装置へ送信するように前記通信装置を介して前記プローブ端末に通知し、
前記エリアカバー率が前記アップロード閾値より大きいと判定した場合に、あるエリア内において存在するリンク群のうち、所定時間内に前記現況交通情報が収集された、前記補完対象リンクリストに登録されていないリストである補完対象外リンクの割合である、補完対象外リンクのエリアカバー率を算出し、全ての前記補完対象外リンクにおいて、前記補完対象外リンクの前記エリアカバー率が、前記アップロード閾値より小さいか否かを判定し、前記補完対象外リンクの前記エリアカバー率が、前記アップロード閾値より小さいとき前記補完対象外リンクの現況交通情報を優先して前記交通情報提供装置へ送信するように前記通信装置を介して前記プローブ端末に通知し、前記補完対象外リンクのエリアカバー率が、前記アップロード閾値より大きいとき前記補完対象リンクの現況交通情報を優先して前記交通情報提供装置へ送信するように前記通信装置を介して前記プローブ端末に通知すること、
を特徴とする交通情報の要求方法。
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