本発明は、液晶ディスプレイ、若しくは、プラズマディスプレイ等の平面型ディスプレイを、床面、あるいは、机や棚のような家具等の載置面に設置する平面型ディスプレイ用スタンドに内蔵するのに適し、特に、低音再生能力に優れる薄型のスピーカーシステムに関する。
従来に普及していたブラウン管型ディスプレイに比べて、奥行き寸法が小さく、薄い液晶ディスプレイ、若しくは、プラズマディスプレイ、といった平面型ディスプレイが増加してきている。このような平面型ディスプレイに取り付けられて音声を再生するスピーカーについても、小型化もしくは薄型化が要求されている。特に低音域の再生においては、十分な低音域再生が可能な音響容量を規定するキャビネットを設けることができない、もしくは、厚みが必要な大型磁気回路を備えるスピーカーを採用できない、といった理由から、平面型ディスプレイに適用可能な薄型のスピーカーシステムが要望されている。
低音を再生するスピーカーシステムにおいて、スピーカーと、スピーカーを同一形状の密閉箱に取り付けて直接自由空間へ放射する場合に比べて高い空気の圧縮および膨張を生じさせ、スピーカーから放射される音波を自由空間へと導出する音導部と、を備えるスピーカーシステムがある(特許文献1)。音導部は、スピーカーの周縁部に対応して規定された音源空間と、スピーカーから放射される音波を自由空間に導出する音道とを有し、音道が、中間部の幅が音源空間と音道との接続部の幅および音道の出口部の幅よりも狭く、かつ、音道の音波導出方向の軸に対して非対称であるような平面形状を有し、それによって、スピーカーシステムのf0が、スピーカーを同一形状の密閉箱に取り付けて直接自由空間へと放射する場合のf0と比較して20%以上低くなり、キャビネットの体積が小さくても十分な低音を再生する。
一方で、奥行き寸法が大きいブラウン管型ディスプレイに用いる低音を再生するスピーカーシステムでは、テレビ受像機キャビネットを支持する複数の脚部と、テレビ受像機を設置する設置面と、テレビ受像機キャビネットの底面に設けたスピーカーを備え、テレビ受像機キャビネットの底面に固着し、設置面とキャビネット底面との挟空間の一部を遮蔽する仕切り板を設けるスピーカーシステムがある。(特許文献2)。また、テレビジョン受像機の筐体の底板にスピーカーを取り付け、底板と筐体のスカート部と、載置する面との囲まれた空間で低音を再生しようとするものがある(特許文献3)。
特許第3656551号公報
実開平5−65196号公報
特開平9−219896号公報
良好な音声再生のためには、上記特許文献に匹敵する良好な低域再生特性を有するスピーカーシステムを確保することが好ましい。しかしながら、従来の低音を再生するスピーカーシステムは、液晶ディスプレイ、若しくは、プラズマディスプレイ等の平面型ディスプレイに組み入れるには、スピーカーもしくは音導部を含むキャビネットの寸法が大きすぎて、特に、奥行き方向の寸法と高さ方向の寸法とが大きく、薄いディスプレイと一体にしてスピーカーを含む全体として薄型のディスプレイにできないという問題がある。
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、低音再生能力に優れる薄型のスピーカーシステムに関し、特に、平面型ディスプレイを床面、もしくは、机や棚等の家具の載置面に設置する平面型ディスプレイ用スタンドに内蔵するのに適するスピーカーシステムを提供することにある。
本発明のスピーカーシステムは、振動板ならびに振動板を支持するフレームを有するスピーカーと、フレームが取り付けられて振動板を載置面側に向ける底面バフルと、底面バフルと連結してその上面側空間に音響容量を規定するキャビネット部材と、を備えるスピーカーシステムであって、底面バフルが、スピーカーを収容する収容孔を規定しフレームを取り付けるフレーム取付部と、フレーム取付部の外側で載置面側に突出するU字状凸部と、U字状凸部の内側に規定される内側平面部と、を有し、スピーカーシステムを載置面に載置して使用する場合に、底面バフルのU字状凸部および内側平面部が、載置面との間にスピーカーの振動板から放射される音波の音源空間及び音道を規定し、U字状凸部のU字開口部が、載置面との間に音波の放射孔を規定する。好ましくは、本発明のスピーカーシステムは、底面バフルが、U字状凸部の外側でキャビネット部材に連結する外側平面部をさらに有する。
好ましくは、本発明のスピーカーシステムは、底面バフルのフレーム取付部、U字状凸部、内側平面部および外側平面部が、プレス加工された金属板により一体に形成されており、U字状凸部が、底面バフルの上面側にU字状凹部を規定し、かつ、U字状凹部が、キャビネット部材とともに音響容量を規定する。
また、好ましくは、本発明のスピーカーシステムは、底面バフルのU字状凸部が、載置面と接触するU字状平面を有し、U字状平面の全面に、クッション部材が貼り付けられる。
さらに、好ましくは、本発明のスピーカーシステムは、底面バフルのU字状凸部のU字開口部を規定する端部が、U字状凸部と外側平面部とを連結する斜面を有する。
また、好ましくは、本発明のスピーカーシステムは、キャビネット部材が、スピーカーの磁気回路を収容する磁気回路孔を規定し、スピーカーを固定する磁気回路取付部を有する。
また、本発明の平面型ディスプレイ用スタンドは、平面型ディスプレイを支持するディスプレイ支持部と、ディスプレイ支持部が固定される台座部と、を備え、台座部が、請求項1から5のいずれかに記載のスピーカーシステムを含む。
以下、本発明の作用について説明する。
本発明のスピーカーシステムは、振動板ならびに振動板を支持するフレームを有するスピーカーと、フレームが取り付けられて振動板を載置面側に向ける底面バフルと、底面バフルの上面側空間に音響容量を規定するキャビネット部材と、を備える。底面バフルは、スピーカーを収容する収容孔を規定しフレームを取り付けるフレーム取付部と、フレーム取付部の外側で載置面側に突出するU字状凸部と、U字状凸部の内側に規定される内側平面部と、U字状凸部の外側でキャビネット部材に連結する外側平面部と、を有し、好ましくは、フレーム取付部、U字状凸部、内側平面部および外側平面部が、プレス加工された金属板により一体に形成されている。
ここで、底面バフルのU字状凸部とは、プレス加工される前の金属板の平面部分を利用して形成される(つまり、プレス加工で絞られたり延ばされたりしないで形成される)内側平面部および外側平面部に比較して、プレス加工で絞り延ばされて載置面側へ突出した凸部であり、載置面側の反対側には凸部に対応した凹部が形成される。そして、その凸部の全体形状は、アルファベット文字の「U」字に似て、一方向のみに凸部が形成されていない、いわば、「U字開口部を有する空間」を形成する。したがって、本発明のスピーカーシステムは、これを床面、もしくは、机や棚等の家具の載置面に載置して使用する場合に、底面バフルのU字状凸部および内側平面部が、載置面との間にスピーカーの振動板から放射される音波の音源空間及び音道を規定し、U字状凸部のU字開口部が、載置面との間に音波の放射孔を規定する。その結果、本発明のスピーカーシステムは、低音再生能力に優れる薄型のスピーカーシステムとなる。
なお、本発明における音源空間および音道とは、特許文献1に記載のものとほぼ同義であり、音源空間は、スピーカーの振動板のフレーム周縁部に対応して規定される空間であり、音道は、音源空間に連通してスピーカーから放射される音波を自由空間に導出する空間であり、その出口部が放射孔である。
特に、底面バフルのU字状凸部は、底面バフルの上面側にU字状凹部を形成し、キャビネット部材とともに、スピーカーの振動板の背面側により大きな音響容量を規定して、低音再生限界周波数をより引き下げることができる。底面バフルをプレス加工された金属板により一体に形成するので、音源空間及び音道を構成するための製造コストの面でも、キャビネット側の音響容量の確保の面でも、利点が大きい。また、U字状凸部は、載置面と接触するU字状平面を有し、U字状平面の全面にクッション部材が貼り付けられると、底面バフルのU字状凸部と載置面との間が密着して、風切音が生じない、さらに、載置面との間の振動で異音が生じない、優れた低音再生が可能になる。
さらに、このスピーカーシステムでは、底面バフルに取り付けるスピーカー自体を薄型化すると共に、キャビネット部材にスピーカーの磁気回路を収容する磁気回路孔を規定し、スピーカーを固定する磁気回路取付部を有するようにすることで、スピーカーシステムの全高を極めて低く抑えることができ、略平板状の薄型のキャビネットを実現できる。
このスピーカーシステムを斜め上方から使用者が見た場合に、底面バフルのU字状凸部のU字開口部を規定する端部を、U字状凸部と外側平面部とを連結する斜面を有するように形成することで、U字状凸部のU字開口部が載置面との間に規定する音波の放射孔が、斜め上方からは見えにくくなる。したがって、載置面に載置したスピーカーシステムは、スピーカーの振動板も露出しないので極めて外観がすっきりしたものになり、平面型ディスプレイ用スタンドに内蔵するのに適するものになる。
そして、このスピーカーシステムで台座部を形成することで、液晶ディスプレイ、若しくは、プラズマディスプレイ等の平面型ディスプレイに適した平面型ディスプレイ用スタンドが実現される。平面型ディスプレイ用スタンドは、平面型ディスプレイを支持するディスプレイ支持部と、ディスプレイ支持部が固定される台座部と、を備え、台座部が、本発明のスピーカーシステムを含む。したがって、低音再生能力に優れるスピーカーシステムを台座部に内蔵するスタンドにより平面型ディスプレイを支持して映像を映写し、この薄い平面型ディスプレイと一体になったスピーカーで良好な音声再生、特に不足しがちな低音の再生が可能になる。
本発明のスピーカーシステムは、低音再生能力に優れる薄型のスピーカーシステムを実現できる。このスピーカーシステムは、平面型ディスプレイを床面、もしくは、机や棚等の家具の載置面に設置する平面型ディスプレイ用スタンドに内蔵するのに適し、音波の放射孔が斜め上方からは見えにくく、スピーカーの振動板も露出しない極めて外観がすっきりした平面型ディスプレイ用スタンドが実現される。
本発明のスピーカーシステムは、低音再生能力に優れる薄型のスピーカーシステム、ならびに、これを内蔵する平面型ディスプレイ用スタンドを提供するという目的を、底面バフルが、スピーカーを収容する収容孔を規定しフレームを取り付けるフレーム取付部と、フレーム取付部の外側で載置面側に突出するU字状凸部と、U字状凸部の内側に規定される内側平面部と、U字状凸部の外側でキャビネット部材に連結する外側平面部と、を有し、スピーカーシステムを載置面に載置して使用する場合に、底面バフルのU字状凸部および内側平面部が、載置面との間にスピーカーの振動板から放射される音波の音源空間及び音道を規定し、U字状凸部のU字開口部が、載置面との間に音波の放射孔を規定するようにすることにより、実現した。
以下、本発明の好ましい実施形態によるスピーカーシステムおよびこれを含む平面型ディスプレイ用スタンドについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
図1および図2は、本発明の好ましい実施形態によるスピーカーシステム1を説明する図である。図1(a)は、スピーカーシステム1を前方斜め上面側から見た斜視図であり、図1(b)は、スピーカーシステム1を前方斜め底面側(後述する載置面8側)から見た斜視図である。また、図2(a)は、図1(a)におけるA−A’断面からみた内部構造を説明する断面図であり、図2(b)は、図1(a)におけるB−B’断面からみた内部構造を説明する断面図である。なお、説明に不要なスピーカーシステム1の一部の構造や、内部構造等は、省略している。また、図1(b)では、載置面8は、省略されている。
本実施例のスピーカーシステム1は、前方から見た幅寸法、ならびに、奥行寸法に比較して、その高さ寸法が抑えられた略平板状の薄型のキャビネットを備えるスピーカーシステムであり、後述するように、平面型ディスプレイ用スタンドを構成して平面型ディスプレイを支持するとともに、映像と共に再生される音声、特に、その音声の低音域の周波数帯域を再生するものである。このスピーカーシステム1は、液晶ディスプレイ、若しくは、プラズマディスプレイ等の平面型ディスプレイを設置する床面、あるいは、机や棚のような家具等の載置面8に載置されて使用される。本実施例では、スピーカーシステム1は、その前方端幅寸法が約370mm、後方端幅寸法が約260mm、奥行寸法が約300mm、に対して、その載置面8からの全高がわずか約40mmであり、内容積が約1.5リットルである。
スピーカーシステム1では、音声信号を音声に変換するスピーカー2が、その振動板21を載置面8側に向ける底面バフル3に取り付けられ、キャビネット部材4が、底面バフル3の上面側空間に密閉した音響容量を規定するように取り付けられている。底面バフル3の四隅には、円形脚5が取り付けられてスピーカーシステム1を安定に載置面8に載置可能とするとともに、底面バフル3と載置面8との間を離隔して、後述するスピーカー2の振動板21から放射される音波の音源空間50および音道51を形成する空間を確保する。また、キャビネット部材4に取り付けられる蓋部材6は、スピーカー2の磁気回路23を覆って、キャビネット部材4の磁気回路取付部42と磁気回路23との間を密閉する。
スピーカー2は、スピーカーシステム1を薄型化するように、口径寸法に対してその全高を低く抑えた動電型スピーカーであり、振動板21と、振動板21を支持するフレーム22と、フレーム22に固定されて振動板21を振動させる駆動力を発生させる磁気回路23と、磁気回路23の磁気空隙に配置されて振動板21に連結するボイスコイル24を有する。振動板21は、本実施例で図示されるコーン型振動板に限定されず、平面型振動板でもよく、円形、楕円形、トラック形もしくは矩形のいずれかの振動板形状でよい。本実施例のフレーム22は、アルミダイカスト成形によるフレームであり、あるいは、金属板をプレス成型した金属フレームや樹脂フレームでもよく、後述する底面バフル3のフレーム取付部32と(図示しない)ネジにより連結する連結孔を有する。磁気回路23は、本実施例で図示する外磁型に限られず、内磁型もしくは反発型でもよい。また、本実施例のボイスコイル24は、2本の被膜線を巻回してステレオ左右の音声信号電流を磁気空隙に流すダブルボイスコイルであるが、1本の被膜線を巻回して1音声チャンネルの音声信号電流を磁気空隙に流すボイスコイルでも、あるいは、3本以上の被膜線を巻回するボイスコイルであってもよい。なお、本実施例では、スピーカー2の口径は、呼び径が16cmである。
なお、障害物と衝突した場合に破壊されやすいスピーカー2の振動板21を保護するために、フレーム22の前面側にパンチングメタルを成形した(図示しない)保護ネット、もしくは、開口を有するように樹脂で成形した保護ネットを設けていてもよい。この保護ネットは、振動する振動板21が接触しない距離だけ離隔していればよいので、場合によっては、後述する背面バフル3のフレーム取付部32に取り付ける構造も採用することができる。
本実施例の底面バフル3は、厚みが約1.6mmの鉄板をプレス加工して形成されており、スピーカー2の振動板21を載置面8側に向けるとともに、振動板21から放射される音波の音源空間50及び音道51を、載置面8側に突出するU字状凸部31により形成する。底面バフル3は、スピーカー2を収容する収容孔を規定しフレーム22を取り付けるフレーム取付部32と、フレーム取付部32の外側で載置面8側に突出するU字状凸部31と、U字状凸部31の内側に規定される内側平面部33と、U字状凸部31の外側でキャビネット部材4の固定部41に連結して円形脚5が取り付けられる外側平面部34と、を有する。このうち、内側平面部33および外側平面部34は、プレス加工される前の鉄板の平面部分を利用してほぼ同一平面上に形成され、U字状凸部31およびフレーム取付部32は、プレス加工で絞り延ばされて、内側平面部33および外側平面部34に比較して、上面側もしくは載置面側へ突出するように形成される。したがって、本実施例の底面バフル3では、薄くても剛性を有する金属板のうち、鉄板をプレス加工しているので、一方の面側に突出して形成された凸部は、その反対側の面には凸部に対応する断面形状の凹部を形成している。
載置面8側から見たU字状凸部31の凸部の平面形状は、アルファベット文字の「U」字に似た形状であり、この「U」字の内側にスピーカー2が取り付けられている。また、U字状凸部31は、ほぼ一定の幅を有し、内側平面部33および外側平面部34から突出する高さも、底面バフル3の四隅に取り付けられる円形脚5の高さと同一高さ寸法でほぼ一定の段差(約10mm)となるように形成される。その結果、U字状凸部31を構成するU字状平面31aが形成される。U字状平面31aは、本実施例のスピーカーシステム1が載置面8に載置される場合には、載置面8と接触して、底面バフル3と載置面8との間に形成される空間を、U字状凸部31の内側空間と外側空間とに分離する。また、U字状凸部31は、一方向のみに凸部が形成されていないので、U字開口部を有する内側空間を、内側平面部32と載置面8とともに形成する。
本実施例のキャビネット部材4は、底面を有しない薄型の略平板状の箱体であり、樹脂による射出成形で全体が形成されている。キャビネット部材4は、その略平板状の箱体の底面の周囲の固定部41が、底面バフル3の外側平面部34と連結するように設計され、また、その外観形状が薄型を保ち、かつ、底面バフル3の上面側空間40に低音再生に必要な密閉した音響容量を規定するように設計される。また、キャビネット部材4は、スピーカーシステム1の全高を可能な限り薄くしたいので、スピーカー2の磁気回路23を固定する磁気回路取付部42を天板部分に備える。すなわち、磁気回路取付部42は、スピーカー2の磁気回路23を収容する磁気回路孔を有しており、磁気回路23とキャビネット部材4とが高さ方向で重複しないようにして、キャビネット部材4の天板部分の厚みがスピーカーシステム1の全高に影響しないようにする。
キャビネット部材4の磁気回路取付部42の磁気回路23を収容する磁気回路孔は、これに嵌合する樹脂で成形された蓋部材6で閉塞される。つまり、蓋部材6は、スピーカー2の磁気回路23を覆って、キャビネット部材4の磁気回路取付部42と磁気回路23との間を密閉する。その結果、底面バフル3、キャビネット部材4、および、蓋部材6は、スピーカー2の振動板21の背面側(つまり底面バフル3の上面側)に上面側空間40を有する密閉箱を形成する。蓋部材6は、磁気回路取付部42と磁気回路23との間を密閉すればよく、場合によっては、貫通孔を有してスピーカー2の磁気回路23の背面側を露出させてもよい。スピーカー2の磁気回路23は、印可された音声電流によって熱を発生するので、蓋部材6の貫通孔を通じて放熱させることができる。
本実施例の底面バフル3では、載置面8側に突出して形成されたU字状凸部31は、その反対側の底面バフル3の上面側に、凸部に対応する形状のU字状凹部30を形成している。このU字状凹部30は、上記の上面側空間40と連通しているので、スピーカー2の振動板21の背面側で、低音再生に必要な密閉した音響容量を増加させる。薄型のスピーカーシステム1では、キャビネット4の体積が小さくなり密閉箱の音響容量が確保しにくく、スピーカーシステム1の低域限界再生周波数に関する最低共振周波数f0が上昇しがちになるが、U字状凹部30は、いわば、密閉キャビネットの体積を増加させて、最低共振周波数f0をより低くすることができる。なお、このU字状凹部30の体積は、キャビネット4が有する上面側空間40の体積の10%以上程度あるのがより好ましいが、2〜10%の範囲であってもよい。また、本実施例の底面バフル3は、鉄板のプレス加工品としたが、銅やアルミニウム等の他の金属や合金による金属板でもよく、剛性を確保した上で厚みを薄くできるならば、樹脂で成形してもよい。
本実施例の円形脚5は、樹脂を略円筒状に成形した支持脚であり、上述の通り、底面バフル3の外側平面部34の四隅に(図示しない)ネジにより取り付けられ、その高さは、底面バフル3のU字状凸部31が内側平面部33および外側平面部34から突出する高さと同一高さ寸法になるように形成される。もちろん、円形脚5は、底面バフル3の載置面8側の一端に、スピーカーシステム1を安定して支えるように設けられるものであれば、外観形状や材料は問われない。場合によっては、底面バフル3をプレス成形する際に、外側平面部34の四隅に突起を延設して、円形脚5に代わる支持脚を設けてもよい。また、円形脚5を取り付ける方法は、ネジによる取り付けに限られず、接着でもよい。
U字状凸部31を形成するU字状平面31aは、載置面8と接触するので、好ましくは、底面バフルのU字状凸部31と載置面8との間が密着するように、その全面にクッション部材7を貼り付けるとよい。クッション部材7は、例えばウレタンを材料とし、連通する中空部分を有するスポンジ状材料を一定厚みに薄く形成したものや、押しつぶされたときにほぼ厚みが無視できる材料であればよい。底面バフル3のU字状凸部31のU字状平面31aと、載置面8との間を密着させることで、スピーカーシステム1は、風切音が生じない、さらに、載置面8との間の振動で異音が生じない、優れた低音再生が可能になる。クッション部材7をU字状平面31aに貼り付ける場合は、円形脚5にもクッション部材7を貼り付けてもよい。
本発明のスピーカーシステム1を載置面8に載置して使用する場合に、底面バフル3のU字状凸部31および内側平面部33が、載置面8との間に形成する内側空間は、スピーカー2の振動板21から放射される音波の音源空間50および音道51として機能する。一方、U字状凸部31のU字開口部は、載置面8との間に音道51を伝搬する音波の放射孔52を形成し、スピーカーシステム1から音声を再生する放射孔として機能する。スピーカー2の振動板21の前面側に設けられる音源空間50は、音響負荷として作用してスピーカーシステム1の最低共振周波数f0をさらに低くする。また、音道51を通じて音波の放射孔51に至る間に圧縮された音波は、音源空間50の音響容量によって高域周波数成分が吸収され、いわば、主に中低域周波数成分を含む音波にフィルタ処理されている。このように、本実施例のスピーカーシステム1は、キャビネットが薄型でその体積が小さくても、低音再生能力に優れるものになる。
また、スピーカー2が保護ネットを備えている場合には、スピーカーシステム1を載置面8に載置して使用する場合に、保護ネットが振動板21を保護して、振動板21の破壊による動作不良を起こすおそれもない。特に、この保護ネットが磁性体の金属を材料にするパンチングメタルである場合には、保護ネットがスピーカー2の磁気回路23から漏洩する磁束を減少させるので、スピーカーシステム1としての防磁性能を向上させることができる。
本実施例では、底面バフル3のU字状凸部31の凸部の全体形状は、アルファベット文字の「U」字に似た平面形状としているが、音源空間50と音道51とが同じ幅で繋がっている「U」字に似た形状に限定されるものではなく、一端側が閉じてその内側にスピーカー2を収容して、他端側が開いているものであればよい。例えば、音源空間50の幅が狭くなって音道51に連通するギリシャ文字の「Ω」字に似た形状でもよい。また、特許文献1に記載されているように、例えば、音道51が、中間部の幅が音源空間50と音道51との接続部の幅および音道51の出口部の幅よりも狭く、かつ、音道51の音波導出方向の軸に対して非対称であるような平面形状を有していてもよく、その場合には低音再生により効果的である。
底面バフル3のU字状凸部31が形成するU字開口部において、このU字開口部を規定するU字状凸部31の端部が、U字状凸部31と外側平面部34とを連結する斜面31bおよび31cを有する。図1(a)の斜視図に示されるように、このスピーカーシステム1を斜め上方から見た使用者には、U字状凸部31の端部の斜面31bおよび31cは、底面バフル3の前面側端部に隠れて直視されないので、U字状凸部31が形成するU字開口部が意識されない。つまり、薄型のスピーカーシステム1を載置面8に載置した、いわば、通常に使用する条件では、前方斜め上方から使用者が見た場合に、スピーカー2の振動板21も露出せず、音波の放射孔52も見えにくくなるので、極めて外観がすっきりし、音声を再生するスピーカーシステムを意識させないようにすることができる。
なお、本実施例では、図1(a)の斜視図に示されるように、底面バフル3と載置面8との間に設けた円形脚5を、前方斜め上方から見た使用者に直視できる位置に設置しているが、U字状凸部31の端部の斜面31bおよび31cと同様の斜面を円形脚5に設けてもよく、また、底面バフル3の前面側端部に隠れて前方斜め上方から見ても見えにくくなるように、外側平面部34のなかで前方から見てより奥方向に円形脚5を取り付けてよい。
図3は、平面型ディスプレイ9を支持する本発明の好ましい他の実施形態によるスタンド10を説明する図である。図3(a)は、平面型ディスプレイ9およびスタンド10を前方斜め上面側から見た斜視図であり、図3(b)は、平面型ディスプレイ9およびスタンド10を後方斜め底面側(載置面8側)から見た斜視図である。なお、説明に不要な一部の構造は、省略している。また、図3(b)では、載置面8は、図1(b)と同様に省略されている。
例えば、平面型ディスプレイ9は、筐体91の正面側中央に映像を映写する32V型の液晶ディスプレイ92が露出するように取り付けられたディスプレイであり、筐体91の左右側面枠部には、それぞれステレオ左右信号に対応する左スピーカー93と、右スピーカー94とが取り付けられている。左スピーカー93および右スピーカー94には、筐体91に内蔵された(図示しない)増幅器からそれぞれステレオ左右信号を電力増幅した音声信号電流が供給される。また、筐体91の背面側下部には、スタンド10を取り付けるスタンド取付部95が形成されている。もちろん、平面型ディスプレイ9の構成は、スタンド取付部95の形状を含めて、図3に示されたものに限定されるものではない。
スタンド10は、実施例1に記載のスピーカーシステム1をその台座部とし、そのキャビネット部材4の天板側に、平面型ディスプレイ9を支持するディスプレイ支持部11の一端側が取り付けられている平面型ディスプレイ用スタンドである。スタンド10のディスプレイ支持部11の他端側は、平面型ディスプレイ9のスタンド取付部95に取り付けられ、載置面8に載置した平面型ディスプレイ9を、使用者が視聴しやすいように支持設置する。このディスプレイ支持部11が角度調整機能を有する場合には、液晶ディスプレイ92を向けることができる仰角を、上下方向で(場合によっては左右方向でも)調節可能になる。なお、スタンド10のディスプレイ支持部11は、台座部を構成するスピーカーシステム1の底面バフル3に取り付けられていていてもよく、ディスプレイ支持部11の構成自体は問われない。
スタンド10は、実施例1に記載のスピーカーシステム1をその台座部にしているので、左スピーカー93および右スピーカー94に供給される電力増幅されたステレオ左右の音声信号電流を、内蔵するスピーカー2のダブルボイスコイル24にそれぞれ並列接続して(図示しない)接続線で供給すれば、ステレオ左右音声信号の低音域を再生することができる。電力増幅されたステレオ左右の音声信号電流を供給する接続線は、外観視されないようにディスプレイ支持部11を通してもよい。
平面型ディスプレイ9に内蔵されている左スピーカー93および右スピーカー94は、平面型ディスプレイ9の筐体92が奥行き方向に薄くされるのに合わせて(図示しない)音響容量を規定するキャビネットを大きくできずに、最低共振周波数f0が高くなり、十分な低音再生能力を有さない場合がある。したがって、本実施例のスタンド10は、内蔵スピーカーのみでは不足しがちな音声再生の低音域を補い、そして、増強することができる。ここで、本実施例のスタンド10は、その台座部を薄型のスピーカーシステム1で構成しているので、平面型ディスプレイ9を床面、あるいは、机や棚のような家具等の載置面8に設置するのに必要な通常のスタンドが要する体積に対して、スピーカー2を内蔵することで著しく体積が増加することもなく、音声再生の低音域を補い、増強することができる。
また、スタンド10の台座部を構成するスピーカーシステム1の底面バフル3は、そのU字状凸部31が形成するU字開口部を規定するU字状凸部31の端部が、U字状凸部31と外側平面部34とを連結する斜面31bおよび31cを有するので、平面型ディスプレイ9を正面視する使用者には、U字状凸部31の端部の斜面31bおよび31cは、底面バフル3の前面側端部に隠れて直視されない。したがって、平面型ディスプレイ9の使用者は、U字状凸部31が形成するU字開口部が意識されず、スピーカー2の振動板21も露出しないので、スタンド10がスピーカー2を内蔵することさえ認識させない。本実施例のスタンド10であれば、スピーカーを内蔵しない通常のスタンドに似て極めて外観がすっきりするので、これに取り替えて使用することができる。
上記実施例のスピーカーシステム1は、もちろん、複数のスピーカー2が底面バフル3に取り付けられていてもよく、また、それぞれのスピーカーに対応するU字状凸部31を含んでいてもよい。また、複数のスピーカーシステム1が個別に音声信号を電力増幅する増幅器を内蔵していてもよく、左右ステレオ信号をモノラル信号に変換する変換回路を有していてもよい。また、スピーカーシステム1は低音再生に優れるので、音声信号の中高域を除去するローパスフィルターを内蔵してもよい。
また、上記実施例のスピーカーシステム1は、スタンド10の台座部をそのまま構成するものに限られず、更に大画面のプラズマディスプレイ等に用いられるスタンドに内蔵される場合には、底面バフル3を大型化し、更に口径が大きいスピーカー2を含んでいてもよい。もちろん、スタンド10が、パーソナルコンピュータに使用するような小型の液晶ディスプレイ等に合わせて小型化される場合には、スピーカー2ならびに底面バフル3を小型化して、スピーカーシステム1を小さくしてもよい。
本発明のスピーカーシステム1は、平面型ディスプレイのスタンドに内蔵するスピーカーシステムのみならず、音声を再生するスピーカーを内蔵するキャビネットを有し、そのキャビネット底面に連結するスタンドを介して床面等にキャビネットを立てて使用するフロア型スピーカーにおいて、そのスタンド部分に内蔵するスピーカーとしても適用が可能である。また、スピーカーシステム1の底面バフル3のU字状凸部31が載置される面は、実施例で説明したような水平な載置面8に限られない。スピーカーシステム1を壁掛用スピーカーとして使用する場合には、スピーカー取付具で室内を構成する垂直な壁面にU字状凸部31が密着するようにすればよい。
本発明の好ましい実施形態によるスピーカーシステム1を説明する斜視図である。(実施例1)
本発明の好ましい実施形態によるスピーカーシステム1を説明する断面図である。(実施例1)
平面型ディスプレイ9を支持する本発明の好ましい実施形態によるスタンド10を説明する図である。(実施例2)
符号の説明
1 スピーカーシステム
2 スピーカー
3 底面バフル
30 U字状凹部
31 U字状凸部
32 フレーム取付部
33 内側平面部
34 外側平面部
4 キャビネット部材
40 上面側空間
41 固定部
42 磁気回路取付部
5 円形脚
50 音源空間
51 音道
52 放射孔
6 蓋部材
7 クッション部材
8 載置面
9 平面型ディスプレイ
10 スタンド
11 ディスプレイ支持部