JP4943986B2 - 蓄熱性を有する塗装鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、蓄熱性を有する塗装鋼板に関する。
電子・電気機器の高性能化、小型化に伴い、電子機器等における発熱量が増大しつつある。電子機器等の内部が高温になると、動作不良が生じるなどの問題がある。さらに、電子機器の筐体も高温になるため、作業者が火傷する等の問題がある。
また、モーター等の機械も運転に伴い発熱し、筐体は高熱となるため、作業者が火傷するなどの問題がある。さらに、機器が高温になると機器周辺の温度も向上するため、作業環境が悪化し作業効率が低下するなどの問題がある。
このような問題を解決するために、特許文献1には、放熱性添加剤として、カーボンブラックや酸化チタンを含む塗膜を有する塗装体が開示されている。当該文献に記載されている塗装体は、カーボンブラックや酸化チタンの熱伝導性を利用して熱を放散させるため、塗装体が加熱されても、塗装体の温度を下げられる。
一方、蓄熱材が壁材樹脂に内包されたマイクロカプセル(以下「蓄熱材マイクロカプセル」ともいう)を含む組成物を用いて基材を処理し、基材に蓄熱性を付与し、基材の温度を制御する方法が提案されている。
例えば、特許文献2には、パラフィン炭化水素を内包したマイクロカプセルを含む水分散液を用いて繊維を処理する方法が開示されている。当該方法により、蓄熱性を有する繊維が得られ、生活空間の温度をより快適な温度域にすることができるとされている。
また、特許文献3には、融点が10〜34℃の範囲にある蓄熱材を内包したマイクロカプセルを含む樹脂組成物を用いてシートを処理し、冷涼感のあるシートを得る方法が開示されている。
さらに、特許文献4には、蓄熱材マイクロカプセルを結着剤とともに固着せしめた固形物において、結着剤の引張強度がマイクロカプセルの皮膜樹脂の引張強度よりも小さいことを特徴とする固形物が開示されている。そして、同文献には、当該固形物をコンクリート等の建築材料に用いれば、室内温度の上がりにくい住環境を作ることが可能であることが記載されている。
しかしながら特許文献2〜4には、蓄熱材マイクロカプセルを含む組成物を用いて鋼板を処理し、蓄熱性を有する塗装鋼板を得ることに関しては一切記載がない。
特許第3563731号公報 特開2006−233342号公報 特開2003−286479号公報 特開2006−97002号公報
特許文献1に記載されている塗装体は、熱伝導性のよい物質を塗膜に含み、その熱伝導性を利用して熱を放散させる。従って、塗装体が熱伝導率の低い他の部材と接触させられていると、熱を十分に拡散できないため、塗装体の温度を下げることが困難となることがある。
一方、蓄熱性を有する鋼板は、加熱されて、かつ熱伝導率の低い他の部材と接触させられていても、鋼板自身の温度を雰囲気温度よりも低くできる可能性が高い。蓄熱材の潜熱により外部から加えられた熱を吸収できるからである。またこのような鋼板は、加熱と冷却を繰り返すような環境に暴露された場合、蓄熱材の融解による蓄熱作用と凝固による放熱作用により、鋼板の温度変化を、環境の温度変化よりも小さくできる可能性がある。このような蓄熱性を有する鋼板は、コンピューター等の電子機器や、間欠的に稼働されるモーター等の筐体として有用と考えられる。
しかしながら、このような塗装鋼板はこれまで提案されてこなかった。以上のことに鑑み、本発明は蓄熱性を有する塗装鋼板を得ることを目的とする。
発明者は鋭意検討した結果、鋼板表面に蓄熱材マイクロカプセルを含む塗膜を形成することにより、上記課題が解決できることを見出した。すなわち上記課題は以下の本発明により解決される。
[1]鋼板の上に、蓄熱材が壁材樹脂に内包されたマイクロカプセルおよびマトリックス樹脂を含む塗膜を有する塗装鋼板。
[2]前記壁材樹脂は、前記蓄熱材の融点における貯蔵弾性率が8000MPa以下であり、かつ前記マトリックス樹脂は、前記蓄熱材の融点における貯蔵弾性率が1000MPa以下である、[1]に記載の塗装鋼板。
[3]前記壁材樹脂の厚みは、0.05〜1μmである、[1]または[2]に記載の塗装鋼板。
[4]前記マイクロカプセルの添加量は、乾燥塗膜に対して2〜70質量%である、[1]〜[3]いずれかに記載の塗装鋼板。
[5]前記蓄熱材は、パラフィン炭化水素である、[1]〜[4]いずれかに記載の塗装鋼板。
[6]前記蓄熱材の融点は、−20〜70℃である、[1]〜[5]いずれかに記載の塗装鋼板。
本発明により蓄熱性を有する塗装鋼板を提供できる。蓄熱性を有する塗装鋼板は、加熱されても温度が上昇しにくいこと等から、優れた電子機器等の筐体を提供できる。
1.塗装鋼板
本発明の塗装鋼板は、蓄熱材が壁材樹脂に内包されたマイクロカプセルおよびマトリックス樹脂を含む塗膜を有することを特徴とする。塗装鋼板とは鋼板表面に塗膜を有する鋼板である。塗膜は、鋼板の何れか一方の面に設けられていればよいが、両面に設けられていてもよい。
(1)塗膜
塗膜とは、塗布された塗料の膜を乾燥させて得た膜をいう。本発明では塗料を鋼板に塗布して得られる乾燥前の膜を「塗布膜」、乾燥させた膜を「塗膜」と呼ぶ。
本発明の塗膜は、蓄熱材が壁材樹脂に内包されたマイクロカプセルおよびマトリックス樹脂を含む。
1)マイクロカプセル
マイクロカプセルとは、直径がナノメートルからミリメートルの間の微小な容器をいう。容器となる壁材は無機系材料、有機系材料がある。本発明において壁材は内包した蓄熱材が漏洩し難い有機系材料である、有機系樹脂であることが好ましい。カプセルに内包される物質は芯物質とも呼ばれる。以下、蓄熱材が壁材樹脂に内包されたマイクロカプセルを、単に「マイクロカプセル」ということがある。
[蓄熱材]
本発明において蓄熱材とは、物質が融解・凝固する際の相変化により、熱を蓄えたり、熱を放出したりする物質をいう。このような蓄熱材は、潜熱を利用することから潜熱性蓄熱材とも呼ばれる。蓄熱材の例には、水、有機化合物、無機化合物が含まれる。
蓄熱材として用いられる有機化合物の例には、以下のものが含まれる。
n−テトラデカン(融点5℃)、n−ペンタデカン(融点9.9℃)、n−ヘキサデカン(融点18℃)、n−オクタデカン(融点28℃)、n−イコサン(融点37℃)、日本精蝋製パラフィンワックス(融点55℃)等のパラフィン炭化水素;セチルアルコール(融点51℃)等の高級アルコール;ステアリン酸(融点70℃)等の有機酸。
蓄熱材として用いられる無機化合物の例には、塩化カルシウム水和物(融点29.7℃)、硫酸ナトリウム水和物(融点32.4℃)、チオ硫酸ナトリウム水和物(融点48℃)、酢酸ナトリウム水和物(融点58℃)が含まれる。
本発明の蓄熱材は、入手が容易であること、種類が豊富であることから有機化合物が好ましく、パラフィン炭化水素であることが特に好ましい。パラフィン炭化水素とは、アルカン系の炭化水素である。
本発明の蓄熱材は、融点が−20〜70℃であることが好ましく、30〜40℃であることがより好ましい。本発明において、記号「〜」はその両端の数値を含む。
[壁材樹脂]
壁材樹脂とは、カプセルの容器を構成する樹脂をいう。壁材樹脂の例には、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、エチルセルロース、ポリウレタン、ポリウレア、メラミン樹脂、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、またはアラビアゴムが含まれる。中でも本発明の壁材樹脂は、比較的強度が強く、気密性に優れたメラミン樹脂やウレタン樹脂が好ましい。
壁材樹脂としては、ポリウレタン、ポリウレア樹脂等の重付加反応により得られる樹脂、またはメラミン樹脂等の付加重縮合反応により得られる樹脂が好ましい。ポリウレタン、ポリウレア樹脂は、原料とするイソシアネート化合物、ポリオール化合物、アミン化合物の骨格を適宜選択することにより、後述する貯蔵弾性率を調整できるからである。例えば、分子内に芳香環を有する剛直な構造の化合物を原料とすると、得られる壁材樹脂の貯蔵弾性率は増加する。逆に、分子内に脂肪鎖を有する柔軟な構造の化合物を原料とすると、得られるマトリックス樹脂の貯蔵弾性率は減少する。
メラミン樹脂は、一般に、メラミンとホルムアルデヒドの反応で得られる樹脂である。しかし、原料としてメラミンと、メラミン以外のアミン化合物を併用したり、ホルムアルデヒドと、ホルムアルデヒド以外の別アルデヒド化合物を併用したりすることにより、架橋密度を調整できる。メラミンは三官能のアミノ化合物であるが、例えばメラミンと二官能のアミノ化合物と併用すれば、メラミン樹脂の架橋密度を低下させられるので、貯蔵弾性率を低くすることができる。
本発明の壁材樹脂は、内包する蓄熱材の融点における貯蔵弾性率が8000MPa以下であることが好ましく、100MPa以上8000MPa以下であることがより好ましい。蓄熱材は、熱を吸収すると固体から液体に相変化し、体積が膨張する。このとき壁材樹脂は蓄熱材の体積膨張により応力を受けるが、壁材樹脂が柔軟であればマイクロカプセルが変形(膨張)するなどして、その応力を吸収できる。逆に、壁材樹脂が柔軟でない場合は、マイクロカプセルは変形しにくいため、印可された応力により破壊されやすくなる。
さらに、一旦融解させられた蓄熱材は、冷却されると熱を放出して凝固する。この際に蓄熱材の体積は収縮するため、壁材樹脂は再び応力を受けることになる。しかし同様に、壁材樹脂が柔軟であればカプセルが変形するなどして、その応力を吸収できるため、カプセルが破壊されにくくなる。
貯蔵弾性率とは、材料が変形されるときの初期の変形に対する抵抗力を表す値であり、柔軟性の目安となる値である。すなわち、貯蔵弾性率が小さいほど柔軟な材料であり、貯蔵弾性率が大きいほど柔軟でない材料といえる。
本発明においては、壁材樹脂は内包する蓄熱材の相変化の前後で最も大きな応力を受ける。加熱と冷却が繰り返し行われるような場合には、壁材樹脂は上述の応力を繰り返し受けることになる。従って壁材樹脂の貯蔵弾性率は、蓄熱材の相変化温度、すなわち融点において特定の値であることが好ましい。
以上から、本発明の壁材樹脂の内包する蓄熱材の融点における貯蔵弾性率が前記範囲にあると、蓄熱材が体積変化を起こしてもマイクロカプセルが破損されにくくなる。
貯蔵弾性率は粘弾性分析により求められる。例えば、フィルム状に成形された壁材樹脂を、固体粘弾性アナライザー RSA III(ティ−・エイ・インスツルメント・ジャッパン社製)を用いて、引張モードで測定して求めることができる。この際、周波数は62.8rad/s(10Hz)、ひずみは0.2〜3%のオート設定とすることが好ましい。
本発明の壁材樹脂は、室温(本発明では25℃を意味する)における破断伸び率が20〜100%であることがさらに好ましい。破断伸び率とは、引張試験における「サンプルが破断するまでに伸びた量」の「元のサンプル長さ」に対する割合である。破断伸び率は、フィルム状に成形された壁材樹脂をJIS K7161:1994に準拠して引張試験することにより測定できる。破断伸び率は、材料の「ねばり強さ」を表す指標であり、破断伸び率が大きい材料は、ねばり強い材料である。従って、本発明の壁材樹脂は、室温における破断伸び率が前記範囲にあると、カプセルがねばり強くなるため、塗膜が変形を受けてもカプセルが破損されにくいという利点がある。
さらに、室温における破断伸び率が20〜100%の壁材樹脂は、本発明の蓄熱材のより好ましい融点である30〜40℃の領域においても、ほとんど同じの破断伸び率を有する。従って、30〜40℃の範囲で蓄熱材が体積変化しても、壁材樹脂のねばり強さにより、カプセルはより破損されにくくなる。
本発明の壁材樹脂の厚みは、0.05〜1μmであることが好ましい。0.05μmよりも壁剤が薄くなると、弱い衝撃でもマイクロカプセルが壊れ、蓄熱材が漏洩することがある。一方、壁材の厚みが1μmを超える場合、壁材の断熱効果が大きくなり、蓄熱材の蓄熱効果・放熱効果が損なわれることがある。
[マイクロカプセル]
マイクロカプセルの粒径は、特に限定されないが、3μm程度であることが好ましい。粒径が大き過ぎると塗膜の厚みによっては塗膜表面からマイクロカプセル露出しやすく、カプセルが破壊され易くなることがある。
マイクロカプセルの添加量は、乾燥塗膜に対して2〜70質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましい。乾燥塗膜とは、水や溶剤等の揮発分を含まない塗膜をいう。マイクロカプセルの前記添加量が2質量%未満では蓄熱効果が十分でないことがある。また、マイクロカプセルの前記添加量が70質量%を超えると、カプセルが膨張した際に、カプセル同士が干渉し合い、カプセルが破損されることがある。
マイクロカプセルは、公知の方法により得てよい。マイクロカプセルを得る方法の例には、以下の方法が含まれる。
蓄熱材、高分子材料と界面活性剤から形成されたエマルションを乾燥させて得る方法(特開昭62−1452号公報)、蓄熱材粒子の表面に熱可塑性樹脂を噴霧する方法(特開昭62−45680号公報)、蓄熱材粒子の表面に液中で熱可塑性樹脂を形成する方法(特開昭62−149334号公報)、蓄熱材粒子の表面でモノマーを重合させ被覆する方法(特開昭62−225241号公報)、または界面重縮合反応により芯物質をポリアミドで皮膜する方法(特開平2−258052号公報)。
中でも、本発明のマイクロカプセルは、水等にマイクロカプセルが分散した状態(スラリー)で得たものを、任意の方法で乾燥し、パウダー状にして得ることが好ましい。スラリーは、水系のマトリックス樹脂には均一に混合できるが、溶剤系のマトリックス樹脂には、水分散タイプのスラリー状ままでは均一に混合することが難しいからである。スラリーの乾燥は、公知の方法を用いて行ってよいが、マイクロカプセル粒子が凝集し難く、粒子径が大きくなり難いスプレードライ法を用いることが好ましい。スプレードライ法とは、有効物質を含む溶液、スラリー(懸濁液)などの液体を微粒化し、高温気流との接触により瞬時に固体化する方法であり、乾燥速度が速く、製品の形状を球形とできる造粒法である。
2)マトリックス樹脂
マトリックス樹脂は塗料の主成分となる樹脂であり、水系(水に可溶)または溶剤系(溶剤に可溶)のいずれでもよい。また、マトリックス樹脂は、水や溶媒に分散可能なものであってもよい。本発明のマトリックス樹脂の例には、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、またはオレフィン樹脂が含まれる。これらは単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
マトリックス樹脂としては、この中でもウレタン樹脂が好ましい。ウレタン樹脂は原料とするイソシアネート化合物とポリオール化合物の骨格を適宜選択することによって、貯蔵弾性率の値を容易に制御することができるからである。例えば、分子内に芳香環を有する剛直な構造の化合物を原料とすると、得られるマトリックス樹脂の貯蔵弾性率は増加する。逆に、分子内に脂肪鎖を有する柔軟な構造の化合物を原料とすると、得られるマトリックス樹脂の貯蔵弾性率は減少する。
本発明のマトリックス樹脂は、内包する蓄熱材の融点における貯蔵弾性率が1000MPa以下であることが好ましく、1MPa以上1000MPa以下であることがより好ましい。既に述べたとおり、蓄熱材の相変化に伴う体積変化に対応するため、本発明の壁材樹脂は、内包する蓄熱材の融点における貯蔵弾性率が特定の範囲に調整されることが好ましい。しかしマイクロカプセルの周りに存在するマトリックス樹脂の剛性が高すぎて、マイクロカプセルの変形を許容できなければ、結局、マイクロカプセルは破損されてしまうおそれがある。そこで、本発明のマトリックス樹脂についても、内包する蓄熱材の融点における貯蔵弾性率を前記の範囲とすれば、マイクロカプセルの破損を低減させることができる。
本発明のマトリックス樹脂は、室温における破断伸び率が30%以上であることがさらに好ましい。マトリックス樹脂の室温における破断伸び率が前記範囲にあると、塗膜がねばり強くなるため、塗膜が破損されにくいという利点がある。
さらに、室温における破断伸び率が30%以上のマトリックス樹脂は、本発明の蓄熱材のより好ましい融点である30〜40℃の領域においても、ほとんど同じの破断伸び率を有する。従って、30〜40℃の範囲で蓄熱材が体積変化しても、マトリックス樹脂のねばり強さにより、マイクロカプセルは、より破損されにくくなる。
3)その他の成分
本発明の塗膜は、上述の成分以外に、添加剤として潤滑剤、防錆顔料または着色顔料等を含んでいてもよい。塗膜が、潤滑剤を含んでいると、輸送・保管中に振動や圧力が加えられた場合等に塗膜が局部的に破壊されるアブレージョン現象を防止しやすくなる。
本発明の塗膜の膜厚は、マイクロカプセルを含有できる厚みであれば制限されないが、塗膜の均一性に優れること等から0.3μm以上が望ましい。塗膜が0.3μmより薄いと鋼板表面を均等に覆うことが困難となり、さらにはマイクロカプセルをバインディングすることが不十分となり、マイクロカプセルが脱落しやすくなる。
4)塗料の調整方法
本発明の塗料は、マトリックス樹脂を撹拌しながら、マイクロカプセルのパウダーを徐々に添加し、その後、任意の溶媒を添加して調整される。水系のマトリックス樹脂を使用する場合は、パウダー状のマイクロカプセルではなく、スラリー状のマイクロカプセルを用いてもよい。
(2)鋼板
鋼板とは板状の鋼である。鋼板の例には、普通鋼板、めっき鋼板、ステンレス鋼板が含まれる。めっき鋼板の例には、溶融めっき、電気めっき、蒸着めっきなどが施された鋼板が含まれる。溶融めっき鋼板の例には、溶融Zn浴、溶融Zn−Al合金浴、溶融Zn−Al−Mg合金浴、溶融Zn−Mg合金浴、溶融Al浴、溶融Al−Si合金浴などを用い、連続めっきまたは浸漬めっきにより得られるものが含まれる。あるいは鋼板として、溶融めっき後に合金化処理した合金化溶融めっき鋼板を用いてもよい。
電気めっき鋼板の例には、通常の電気Znめっき液、電気Zn合金めっき液、電気Cuめっき液、電気Snめっき液などを用いた連続めっき、または浸漬めっき(個別電気めっき法)により得られるものが含まれる。
ステンレス鋼板はオーステナイト系、フェライト系およびマルテンサイトなどいずれでもよく、電気めっきや溶融めっきなどの処理を施してもよい。
また本発明に用いられる鋼板は、耐食性や密着性を向上させる前処理として、アルカリ溶剤などを用いた脱脂処理やリン酸塩処理などの化成処理が施されていてもよい。
(3)塗装鋼板の蓄熱性
本発明の塗装鋼板は、既に述べたとおり優れた蓄熱性を有する。蓄熱性とは加熱された際に、熱を吸収して蓄えることである。このような材料は、続いて冷却されると、熱を放出する。つまり蓄熱性と放熱性は表裏一体であり、本発明において「蓄熱性」は、放熱性も含む。
本発明の塗装鋼板の蓄熱性は、次のように評価できる。
1)本発明の塗装鋼板を用いて、ヒーターと冷却ファンを内蔵された箱状の装置を準備する。
2)当該装置を常温(25℃)から特定の温度まで昇温し、続いて冷却する。そしてこのサイクルを繰り返し、本発明の塗装鋼板の温度変化を測定する。
3)内部の温度変化と、本発明の塗装鋼板の温度変化を比較する。
このときの「内部の温度変化」に比べて、「塗装鋼板の温度変化」が小さい場合は、本発明の塗装鋼板は優れた蓄熱性・放熱性を有するといえる。
あるいは、本発明の塗装鋼板の蓄熱性は次のようにして評価してもよい。
4)一般の鋼板(「標準鋼板」という)を用いてヒーターと冷却ファンを内蔵された前記1)と同形状の装置を準備する。
5)前記2)と同様にして、当該筐体を加熱・冷却して、標準鋼板の温度変化を測定する。
6)標準鋼板の温度変化と、前記2)で得た本発明の塗装鋼板の温度変化を比較する。
このときの「標準鋼板の温度変化」に比べて、「本発明の塗装鋼板の温度変化」が小さい場合は、本発明の塗装鋼板は優れた蓄熱性・放熱性を有するといえる。
このように、蓄熱性・放熱性を有する鋼板は、電気・電子機器の筐体として特に好適である。本発明の塗装鋼板を筐体に用いた電子機器は、内部の温度が上昇して筐体が加熱されたとしても、筐体はその熱を蓄えることができる。その結果、筐体の温度を内部温度よりも低下させることができる。
また、モーター等の機器は、稼働時に加熱され、稼働が中断されると冷却される。従ってモーター等の機器は、稼働状況により急加熱・急冷を繰り返すという熱衝撃が加えられることがある。このような熱衝撃は、部材を劣化させ、機器の耐久性を低下させることがある。しかし、本発明の塗装鋼板を筐体に用いたモーター等は、熱衝撃が与えられたとしても筐体の温度変化を小さくできるので、機器の耐久性を向上させられる。
2.塗装鋼板の製造方法
本発明の塗装鋼板は発明の効果を損なわない範囲で任意に製造してよい。例えば、本発明の塗装鋼板は、既に述べた方法で調製した塗料を、鋼板に塗布する工程(塗布工程)、当該塗膜を加熱して乾燥させる工程(焼付工程)を経て製造されることが好ましい。
塗料を鋼板に塗布する方法の例には、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、ナイフコート、ハケ塗り、静電分散法が含まれる。塗料の塗布量は所望の膜厚となるように調整される。
次に、塗料が塗布された鋼板を加熱して塗料を乾燥する。焼付処理は塗膜を乾燥できる温度であれば制限されないが、蓄熱材の煮沸・蒸発や、壁剤樹脂またはマトリックス樹脂の分解・変色を低減させるために、低い温度であることが好ましい。
(1)各種材料の調製
[蓄熱材]
蓄熱材として、融点9.9℃のn−ペンタデカン、融点36.8℃のn−イコサン、融点55℃の日本精蝋製パラフィンワックスを準備した。
[壁材樹脂]
壁材樹脂と同様の原料および手法で合成した樹脂フィルムについて破断伸びおよび貯蔵粘弾性を測定し、以下の壁材樹脂の物性値とした。
壁材樹脂1:室温での破断伸び率は20%、下記方法で測定した36.8℃における貯蔵弾性率は8000MPaであった。
壁材樹脂2:室温での破断伸び率は50%、下記方法で測定した9.9℃、36.8℃および55℃における貯蔵弾性率は、それぞれ1000MPa、900MPaおよび300MPaであった。
壁材樹脂3:室温での破断伸び率は100%、下記方法で測定した36.8℃における貯蔵弾性率は200MPaであった。
壁材樹脂4(比較用):室温での破断伸び率は3%、下記方法で測定した36.8℃における貯蔵弾性率は10000MPaであった。
各種壁材樹脂の物性値を表1にまとめた。
Figure 0004943986
貯蔵弾性率は、フィルム状に成形された壁材樹脂を、固体粘弾性アナライザー RSA III(ティ−・エイ・インスツルメント・ジャッパン社製)を用いて、引張モードで測定して求めた。測定条件は以下のとおりとした。
周波数:62.8rad/s(10Hz)
ひずみ:0.2〜3%のオート設定
昇温速度:3℃/Step,Soak Time:0.5min
フィルム:厚さ:0.4mm、幅:3mm、長さ:10mm
破断伸び率は、フィルム状に成形された壁材樹脂を用いて、JIS K7161:1994に準拠して測定した。
[マイクロカプセルの調製]
1)pH4.5に調整した5%のスチレン−無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩水溶液100g中に、相変化をともなう化合物(例えば、n−ペンタデカン、融点9.9℃)80gを激しく撹拌しながら添加し、粒子径が約2μmになるまで乳化を行った。
2)その乳化液に、メラミン粉末5g、37%ホルムアルデヒド水溶液6.5g、および水10gを加え、pHを8に調整したメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液を添加した。当該乳化液を70℃で2時間撹拌した後、pHを9に調整して、平均粒径:3μmで壁材の膜厚:0.5μmのマイクロカプセルスラリーを作成した。
3)次に、当該分散液をスプレーして水分を乾燥させることにより、パウダー状のマイクロカプセルを得た。
前記1)の処理時間を長くすることで、芯剤となる化合物の粒径はより細かくなり、前記2)の処理時間を長くすることで、壁材樹脂の膜厚はより厚くなる。よって、マイクロカプセルの平均粒径と壁材樹脂の厚みは前記1)および2)の処理時間により調整された。
マイクロカプセルの平均粒径は、マイクロカプセルのパウダーを水に分散させレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製 SALD−1100)を用いて測定された。
マイクロカプセルの壁材の膜厚は、次のように測定した。マイクロカプセルのパウダーをエポキシ樹脂エマルジョンに分散し、アルミ箔の上に塗布し、60℃乾燥炉中で約3時間放置して硬化させた。次に、当該硬化物をミクロトーム(LEICA社製 ULTRACUT S)を用いて切断し、薄切片を作成した。続いて、当該薄切片を透過型電子顕微鏡(日本電子製 JEM−200CX型)で撮影し、その画像より測定した。
得られたマイクロカプセルの物性を表2に示す。
Figure 0004943986
[マトリックス樹脂]
以下の水系ウレタン樹脂エマルジョンを用いた。
マトリックス樹脂R1:第一工業製薬製、スーパーフレックス600とスーパーフレックス840を重量比97:3で混合したものを用いた。室温での破断伸び率は30%、前述の方法に準じて測定した36.8℃における貯蔵弾性率は1000MPaであった。
マトリックス樹脂R2:ADEKA製アデカボンタイターHUX−232を用いた。室温での破断伸び率は150%、36.8℃における貯蔵弾性率は90MPaであった。
マトリックス樹脂R3:第一工業製薬製スーパーフレックスE−4800。室温での破断伸び率は700%、9.9℃、36.8℃および55℃における貯蔵弾性率は、それぞれ9MPa、8MPaおよび8MPaであった。
マトリックス樹脂R4(比較用):第一工業製薬製、スーパーフレックス110。室温での破断伸び率は5%、36.8℃における貯蔵弾性率は10000MPaであった。
マトリックス樹脂の物性値を表3にまとめた。
Figure 0004943986
[実施例1]
板厚が0.6mmで、片面当たりのめっき付着量が20g/mの電気Znめっき鋼板(以下「EG」という)を準備した。
マトリクス樹脂エマルジョンR1に、マイクロカプセルA1の添加量が、固形分(マトリックス樹脂+マイクロカプセルの合計量)に対して30質量%となるように加えた。さらに、当該溶液に潤滑剤としてポリエチレンワックスを、固形分(マトリックス樹脂+マイクロカプセル+ポリエチレンワックスの合計量)に対して2質量%となるように添加し、撹拌して塗料を調製した。
バーコーターを用いて当該塗料をEGの両面に塗布した。当該EGをオーブンに入れ、到達板温が120℃になるよう乾燥して、EGの表裏の両面に片面の膜厚が5.1μm、他方の面の膜厚が5.0μmである塗膜を形成した。塗膜の厚みは、バーコーターの種類を適宜選択することで調整した。
このようにして得た塗装鋼板を次のとおり評価した。
(試験1:蓄熱性試験)
1)図1に示すとおり、ヒーター2と冷却ファン3を内蔵した装置1を準備した。当該装置の天面部分には、上記の塗装鋼板4を用いた。当該塗装鋼板4には、温度測定用の熱電対5を配置した。さらに、装置内に熱電対6を配置して、装置内の温度を測定できるようにした。装置1は、25℃、RH60%の恒温恒湿槽に静置された。
装置1は幅120mm、奥行き170mm、高さ35mmの直方体とし、内容積は約200cmとした。ヒーター2と塗装鋼板4の距離は約30mmであった。
2)ヒーター2と冷却ファン3を用いて、25℃→50℃/30minで加熱後、50℃→25℃/30minで冷却して塗装鋼板4および装置1内部の温度を、熱電対5および6で測定した。この加熱・冷却工程を1サイクルとした。
3)続けて上記装置1に、上記の加熱・冷却工程サイクルを49サイクル施し、合計で50サイクルの加熱・冷却を行った。そのときの塗装鋼板4および装置1内部の温度を、熱電対5および6で測定した。
4)一方、前記装置の天面に、塗装鋼板の代わりにEGを用いた装置を準備した。この装置を用いて、前記2)、3)と同様の試験を行い、EGおよび装置内部の温度を、熱電対で測定した。
5)前記2)の加熱・冷却工程における塗装鋼板4の温度曲線と、EGの温度曲線を比較し、加熱工程の同一時間における「EGの温度と塗装鋼板4の温度の差」、および冷却工程の同一時間における「塗装鋼板4とEGの温度の差」を求めた。前者の値を「加熱工程における温度差」、後者を「冷却工程における温度差」という。これらの値から以下の基準により、本発明の塗装鋼板の蓄熱性を評価した(評価1)。
◎;加熱工程における温度差の最大値、および冷却工程における温度差の最大値が、それぞれ5℃以上
○;加熱工程における温度差の最大値、および冷却工程における温度差の最大値が、それぞれ1℃以上5℃未満
△;加熱工程における温度差の最大値、および冷却工程における温度差の最大値が、それぞれ1℃未満
×;加熱工程、冷却工程における両者の温度差なし
6)前記3)の試験における塗装鋼板4の温度変化曲線と、EGの温度曲線を比較し、以下の基準により、本発明の塗装鋼板の蓄熱性を評価した(評価2)。
○;50サイクルにおいても蓄熱・放熱効果が観測された
△;50サイクルにおいては蓄熱・放熱効果は観測されなかったが、10サイクル以上、50サイクル未満において、蓄熱・放熱効果が観測された
×;10サイクル未満で蓄・放熱効果が得られなくなった
ただし、加熱工程における温度差、および冷却工程における温度差が、1℃以上観測された場合を「蓄熱・放熱効果が観測された」とした。
7)評価2において、「最後に観測された加熱工程における温度差の最大値」の「1サイクル目に観測された加熱工程における温度差の最大値」に対する割合(A値)を求めた。同様に、「最後に観測された冷却工程における温度差の最大値」の「1サイクル目に観測された冷却工程における温度差の最大値」の割合(B値)を求めた。これらの値を用いて、以下の基準により、本発明の塗装鋼板の蓄熱性を評価した(評価3)。
○;A値およびB値がそれぞれ、70〜100%
△;A値およびB値がそれぞれ、30%以上、70%未満
×;A値およびB値がそれぞれ、30%未満
(試験2:表面外観試験)
得られた塗装鋼板外観を目視で観察し、以下の基準に基づき評価した。
○;平滑でシミ・ムラもなく良好
△;わずかに凹凸があるが、シミ・ムラがなく良好
×;凹凸やムラが多い
[実施例2]
マトリックス樹脂R1の代わりにマトリックス樹脂R3を用いる以外は、実施例1と同様にして塗料を調整し、EGの両面に膜厚が5.0μmの塗膜を形成し、塗装鋼板を得た。当該塗装鋼板を用い、実施例1と同様にして試験1、2を行った。
[実施例3〜6]
実施例1に準じて、マイクロカプセルとしてB1を用い、マトリックス樹脂としてR3を用いて塗料を調整した。当該塗料を用いて、塗膜厚みが表4の実施例3〜6に示されるような塗装鋼板を調整した。当該塗装鋼板を用い、実施例1と同様にして試験1、2を行った。
[実施例7]
実施例1に準じて、マイクロカプセルとしてC1を用い、マトリックス樹脂としてR3を用いて塗料を調整した。当該塗料を用いて、塗膜厚みが表4の実施例7に示されるような塗装鋼板を調整した。当該塗装鋼板を用い、実施例1と同様にして試験1、2を行った。
[実施例8〜11]
実施例1に準じて、マトリックス樹脂としてR2を用い、マイクロカプセルとしてA2を用いて、マイクロカプセルA2の添加量が、1、2、30、70質量%である塗料をそれぞれ調整した。当該塗料を用いて、塗膜厚みが表4の実施例8〜11に示されるような塗装鋼板を調整した。当該塗装鋼板を用い、実施例1と同様にして試験1、2を行った。
[実施例12、13]
実施例1に準じて、マトリックス樹脂としてR3を用い、マイクロカプセルとしてB2を用いて、マイクロカプセルB2の添加量が、1、2質量%である塗料をそれぞれ調整した。当該塗料を用いて、塗膜厚みが表4の実施例12、13に示されるような塗装鋼板を調整した。当該塗装鋼板を用い、実施例1と同様にして試験1、2を行った。
[実施例14〜17]
実施例1に準じて、マトリックス樹脂としてR3を用い、マイクロカプセルとしてD2を用いて、マイクロカプセルD2の添加量が30質量%である塗料を調整した。当該塗料を用いて、塗膜厚みが表4の実施例14〜17に示されるような塗装鋼板をそれぞれ調整した。当該塗装鋼板を用い、実施例1と同様にして試験1、2を行った。ただし、本例において試験1は、5℃、RH60%の恒温恒湿槽内において、加熱・冷却サイクルを、5℃→30℃/30minで加熱後、30℃→5℃/30minとすることにより行った。
[実施例18〜21]
実施例1に準じて、マトリックス樹脂としてR3を用い、マイクロカプセルとしてB2を用いて、マイクロカプセルB2の添加量が30質量%である塗料を調整した。当該塗料を用いて、塗膜厚みが表4の実施例18〜21に示されるような塗装鋼板をそれぞれ調整した。当該塗装鋼板を用い、実施例1と同様にして試験1、2を行った。
[実施例22〜25]
実施例1に準じて、マトリックス樹脂としてR3を用い、マイクロカプセルとしてE2を用いて、マイクロカプセルE2の添加量が30質量%である塗料を調整した。当該塗料を用いて、塗膜厚みが表4の実施例22〜25に示されるような塗装鋼板をそれぞれ調整した。当該塗装鋼板を用い、実施例1と同様にして試験1、2を行った。ただし、試験1における加熱・冷却サイクルを、25℃→70℃/30minで加熱後、70℃→25℃/30minとすることにより行った。
図2は、実施例25の試験により得られた温度曲線である。図から「加熱工程における温度差」の最大値が9℃(図中の矢印7)であり、「冷却工程における温度差」の最大値が6℃(図中の矢印8)であることがわかる。
[実施例26]
実施例1に準じて、マトリックス樹脂としてR3を用い、マイクロカプセルとしてB2を用いて、マイクロカプセルB2の添加量が70質量%である塗料を調整した。当該塗料を用いて、塗膜厚みが表4の実施例26に示されるような塗装鋼板を調整した。当該塗装鋼板を用い、実施例1と同様にして試験1、2を行った。
[実施例27]
実施例1に準じて、マトリックス樹脂としてR3を用い、マイクロカプセルとしてA3を用いて、マイクロカプセルA3の添加量が30質量%である塗料を調整した。当該塗料を用いて、塗膜厚みが表4の実施例27に示されるような塗装鋼板を調整した。当該塗装鋼板を用い、実施例1と同様にして試験1、2を行った。
[実施例28]
実施例1に準じて、マトリックス樹脂としてR3を用い、マイクロカプセルとしてB3を用いて、マイクロカプセルB3の添加量が30質量%である塗料を調整した。当該塗料を用いて、塗膜厚みが表4の実施例28に示されるような塗装鋼板を調整した。当該塗装鋼板を用い、実施例1と同様にして試験1、2を行った。
[実施例29]
実施例1に準じて、マトリックス樹脂としてR3を用い、マイクロカプセルとしてC3を用いて、マイクロカプセルC3の添加量が30質量%である塗料を調整した。当該塗料を用いて、塗膜厚みが表4の実施例29に示されるような塗装鋼板を調整した。当該塗装鋼板を用い、実施例1と同様にして試験1、2を行った。
[比較例1]
実施例1に準じて、マトリックス樹脂としてR3を用い、マイクロカプセルとしてX1を用いて、マイクロカプセルX1の添加量が30質量%である塗料を調整した。当該塗料を用いて、塗膜厚みが表5の比較例1に示されるような塗装鋼板を調整した。当該塗装鋼板を用い、実施例1と同様にして試験1、2を行った。
[比較例2]
実施例1に準じて、マトリックス樹脂としてR3を用い、マイクロカプセルとしてX2を用いて、マイクロカプセルX2の添加量が30質量%である塗料を調整した。当該塗料を用いて、塗膜厚みが表5の比較例2に示されるような塗装鋼板を調整した。当該塗装鋼板を用い、実施例1と同様にして試験1、2を行った。
[比較例3]
実施例1に準じて、マトリックス樹脂としてR3を用い、マイクロカプセルとしてX3を用いて、マイクロカプセルX3の添加量が30質量%である塗料を調整した。当該塗料を用いて、塗膜厚みが表5の比較例3に示されるような塗装鋼板を調整した。当該塗装鋼板を用い、実施例1と同様にして試験1、2を行った。
[比較例4]
実施例1に準じて、マトリックス樹脂としてR4を用い、マイクロカプセルとしてX4を用いて、マイクロカプセルX4の添加量が30質量%である塗料を調整した。当該塗料を用いて、塗膜厚みが表5の比較例4に示されるような塗装鋼板を調整した。当該塗装鋼板を用い、実施例1と同様にして試験1、2を行った。
[比較例5]
実施例1に準じて、マトリックス樹脂としてR3を用い、マイクロカプセルとしてB2を用いて、マイクロカプセルB2の添加量が80質量%である塗料を調整した。当該塗料を用いて、塗膜厚みが表5の比較例5に示されるような塗装鋼板を調整した。当該塗装鋼板を用い、実施例1と同様にして試験1、2を行った。
本発明の塗装鋼板に用いたマイクロカプセルおよびマトリックスの種類・物性と、塗装鋼板の評価結果を表4に示す。また、比較用の塗装鋼板に用いたマイクロカプセルおよびマトリックスの種類・物性と、塗装鋼板の評価結果を表5に示す。表4と表5の比較から、本発明の塗装鋼板は、蓄熱性・放熱性に優れることが明らかである。
Figure 0004943986
Figure 0004943986
比較例1と実施例7の比較から、マイクロカプセルの壁材樹脂の厚みが薄すぎると、外観性におよび蓄熱性に優れないことが明らかである。壁材樹脂の厚みが薄すぎると蓄熱材がカプセルから漏洩しやすいからと推察された。
比較例2と実施例7、29の比較から、マイクロカプセルの壁材樹脂の厚みが厚すぎると、蓄熱性を有さないことが明らかである。壁材樹脂が厚すぎると相対的に蓄熱材の含有量が減少することと、壁材樹脂の断熱効果が高まるためと推察された。
比較例3と実施例9、19の比較から、マイクロカプセルの壁材樹脂の、蓄熱材の融点(36.8℃)における貯蔵弾性率が8000MPaを超えていると、塗装鋼板は蓄熱性を有さず、かつ外観性に優れないことが明らかとなった。マイクロカプセルの壁材樹脂の、蓄熱材の融点(36.8℃)における貯蔵弾性率が8000MPaを超えていると、壁材樹脂の柔軟性に乏しいため、塗装工程における乾燥時に蓄熱材が膨張して壁剤が破断され、蓄熱材が漏洩したことが原因と推察された。
比較例4と実施例1、7の比較から、マトリックス樹脂の、蓄熱材の融点(36.8℃)における貯蔵弾性率が1000MPaを超えていると、塗装鋼板の蓄熱性および外観性が優れないことが明らかとなった。マトリックス樹脂の、蓄熱材の融点(36.8℃)における貯蔵弾性率が1000MPaを超えていると、塗膜の柔軟性が乏しくなるため、塗装工程の乾燥時に塗膜が割れ、マイクロカプセルが塗膜に保持されなかったことが原因と推察された。
比較例5と実施例19、26の比較から、マイクロカプセルの添加量が多すぎると、塗装鋼板の蓄熱性および外観性が優れないことが明らかとなった。マイクロカプセルの添加量が多すぎると、カプセル同士が干渉し合い、カプセルが破壊され、カプセルから蓄熱材が漏洩したことが原因と推察された。
実施例3と4〜6の比較から、塗膜の膜厚が0.2μmと薄い場合には、膜厚が5μm以上の場合と比べて、塗装鋼板の蓄熱性・放熱性がやや劣ることが明らかとなった。膜厚が薄いと、塗膜に含まれるマイクロカプセルの絶対量が少なくなるためと推察された。
また、塗膜が薄いと、外観性にもやや劣ることが明らかである。マイクロカプセルの粒径が膜厚より大きく塗膜表面から露出され、表面にわずかな凹凸が生じるためと考えられる。
これらのことは、実施例14と15〜17の比較、実施例18と19〜21の比較、または実施例22と23〜25の比較からも明らかである。
実施例8および9と、実施例10および11の比較から、マイクロカプセル添加量が少ないと、塗装鋼板の蓄熱性はやや劣ることが明らかである。同様のことは、実施例12および13と、実施例19の比較からも明らかである。
本発明の塗装鋼板は、蓄熱性に優れるため、電子機器等の筐体として有用である。
本発明の塗装鋼板の蓄熱性試験方法を示す図 実施例25の蓄熱性試験により得られた温度曲線
符号の説明
1 装置
2 ヒーター
3 冷却ファン
4 塗装鋼板
5 熱電対
6 熱電対

Claims (3)

  1. 鋼板と、前記鋼板の上に形成された、蓄熱材が壁材樹脂に内包されたマイクロカプセルおよびマトリックス樹脂を含む塗膜と、を有し、
    前記壁材樹脂は、前記蓄熱材の融点における貯蔵弾性率が8000MPa以下であり、かつ前記マトリックス樹脂は、前記蓄熱材の融点における貯蔵弾性率が1000MPa以下であり、
    前記壁材樹脂の厚みは、0.05〜1μmであり、
    前記マイクロカプセルの添加量は、乾燥塗膜に対して2〜70質量%である、
    塗装鋼板。
  2. 前記蓄熱材は、パラフィン炭化水素である、請求項1記載の塗装鋼板。
  3. 前記蓄熱材の融点は、−20〜70℃である、請求項1に記載の塗装鋼板。
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