商用交流電源を供給するためのコンセントを筐体部に有し、該コンセントに接続された電気丸鋸、ジグソー等の電動工具が被加工材を加工するときに生じる被切削粉塵や被研削粉塵を、ダクトホースを介して上記筐体内に設けられるダストバッグやダストタンク内に集塵させる電動工具用集塵機が周知である。この集塵機においては、無駄な消費電力を軽減させ、かつ作業能率を向上させるために電動工具の運転の開始または停止に同期もしくは応答して集塵機の運転を開始または停止させるための連動制御装置を有するものが一般に使用されている。連動制御装置は、例えば、アナログ系の回路構成として比較的安価に構成することが要求される。
図4は、従来の連動制御装置付集塵機のコンセントに電動工具の一例である丸鋸を接続し、該丸鋸が被加工材を加工するときに生じる被切削粉塵や被研削粉塵を、併設した集塵機のホースから集塵する作業時の接続構成を示したものである。また、図5は、図4に示した従来の連動装置付集塵機および電動工具の回路図を示す。以下に、図4および図5を参照して従来の連動制御装置付集塵機の構成について説明する。
図4に示されるように、集塵機1は、商用交流電源を給電するためのコンセント12と、吸込口5に接続されたダクトホース3とを具備し、電気丸鋸(電動工具)2の電源ケーブル6には集塵機1に設けられたコンセント12より商用電源を供給し、電気丸鋸2の鋸歯保護カバー4の一部に形成された排出口4aには、集塵機1の吸込口5に設けられたホース3の先端を接続する。
図5の回路図に示すように、近時、電動工具2は、丸鋸を駆動する電動モータ(交流モータ)2bから成る電動工具本体2aの他に、交流電源25を直流電源に変換する直流電源部2eおよび直流電源部2eによって駆動される手元灯、墨出しレーザ光源等の付帯機能部2fから成る付帯機能装置2dを有するものが使用されつつある。
集塵機1は、操作パネル10に設けた連動/単動切替スイッチ11をOFFに設定することによって連動可能状態とし、この状態で操作パネル10の電源スイッチ13をONにすれば、集塵機1は電動工具2の運転に応答する連動モードとなる。この連動モードでは、商用交流電源25が、コンセント26およびコンセント12から電源スイッチ2c1および2c2を介して電動工具2に供給され、電動工具2の第1の電源スイッチ(工具全体の電源スイッチ)2c1を最初にONしてから、第2の電源スイッチ(工具本体の電源スイッチ)2c2をONすれば、電動工具本体2aが運転状態となるので、連動制御装置8が動作するため、電動工具本体2aを運転操作(ON操作)に応答して集塵機1の集塵モータ9が駆動され、集塵機1が運転される。
図5を参照して従来の連動制御装置8の回路構成についてさらに詳細に説明する。図5において、全波整流回路14は、コンデンサ入力型整流回路から構成され、変流器CTの出力を全波整流するブリッジダイオードBD1と、全波整流するブリッジダイオードBD1の出力を平滑するための平滑コンデンサC1および負荷抵抗器R1を含む平滑回路とから成る。
充放電回路15は、オープンコレクタのコンパレータ(オペアンプIC)U2Aと、入力抵抗器R11と、比較電圧(基準電圧)を設定するポテンショメータ用抵抗器R12およびR13、オープンコレクタのオペアンプU2Aの負荷抵抗および充電抵抗として機能する抵抗器R14と、充電検波ダイオードD1と、充放電コンデンサC2と、放電用抵抗器R15とから成り、上記全波整流回路14の出力が抵抗器R12およびR13によって設定された比較電圧より高電圧になると入力抵抗器R11に印加された入力電圧に応答して充放電コンデンサC2を充電する。
比較回路16は、オープンコレクタコンパレータ(オペアンプIC)U2Bと、比較電圧を設定するポテンショメータ用抵抗器R16およびR17と、電流制限用抵抗器R21と、コンパレータU2Bの負荷抵抗器R22と、フォトトライアックPH1内のフォトダイオード(発光ダイオード)部とから成り、充放電コンデンサC2の充電電圧が、比較電圧を設定する抵抗器R16およびR17によって設定される予定電圧より高電圧のとき、フォトトライアックPH1の発光ダイオード部に電流を流すように機能する。
集塵モータ駆動回路17は、トライアックTR1と、ゲート入力用抵抗器R24と、ゲート入力用コンデンサC3と、フォトトライアックPH1内のトライアック部とから成り、前記比較回路16のフォトトライアックPH1内の発光ダイオード部に電流が流れると、トライアックTR1がON状態になり、集塵モータ9をON状態にし、集塵機1を運転状態にする。
直流電源回路18は、ブリッジ接続されたダイオードBD2と、電流制限用抵抗器R25と、ツェナーダイオードZD3と、平滑用コンデンサC4とから構成され、オペアンプU2AおよびU2B等の直流駆動電源として使用されている。
上記集塵機1の連動制御装置8の回路動作は次のとおりである。電動工具2の電源スイッチ2c2がOFF状態で電動工具2の運転が停止状態ある場合、電源スイッチ13をONしてもコンセント12の電流は実質的にゼロ状態にあり、コンセント12に流れるコンセント電流を検出する変流器CTの2次出力電圧はゼロになるので、全波整流回路14の出力はゼロで、充放電回路15の充放電コンデンサC2は充電されず、電圧はゼロボルトとなる。その結果、該充放電コンデンサC2の電圧がゼロなので、比較回路16のフォトトライアックPH1のフォトダイオードには電流が流れず、集塵モータ駆動回路17のトライアックTR1はOFF状態、集塵モータ9はOFF状態となり、集塵機1は停止状態にある。
一方、電源スイッチ13をONした上で、作業者が電動工具2の電源スイッチ2c1および2c2をON状態として電動工具2を運転状態にすると、コンセント12(電源ケーブル6)には電動工具2の運転電流が流れる。運転電流は、通常、最初は電動モータ2bに起動電流が数百ミリ秒流れ、その後無負荷電流になる。そして、被切削材7を切削し始めると、電動モータ2aに負荷状態に応じた負荷電流が流れる。
コンセント12に電動工具2の電動モータ2bに運転電流が流れると、コンセント電流を検出する変流器CTの2次出力電圧は電動工具2の運転電流に応じた電圧が発生する。このため、変流器CTの2次巻線から、ブリッジダイオードBD1および変流器CTの負荷抵抗器R1を経由して変流器CTの2次巻線へ戻るルートに電流が流れて変流器CTの負荷抵抗器R1に電圧が発生し、並列に接続されている平滑コンデンサC1の作用によって抵抗器R1の両端電圧は平滑されて全波整流回路14の出力は直流電圧となる。
該全波整流回路14の平滑コンデンサC1の出力電圧が、充放電回路15の抵抗器R12およびR13で設定された比較電圧より高電圧になると、充放電コンデンサC2が充電される。引続き、充放電コンデンサC2の充電電圧が、比較回路16の抵抗器R16およびR17によって設定された電圧より高電圧になると、フォトトライアックPH1のフォトダイオード部に電流が流れる。フォトトライアックPH1のフォトダイオード部に電流が流れると、集塵モータ駆動回路17のトライアックTR1はゲートにトリガ電流を受けてON状態になる。その結果、集塵モータ9はON状態になって集塵機1は運転状態となる。
ここで、充放電回路15の充電時定数は、電動工具2を運転した後、切削を始めて塵埃が発生する前に集塵機1の集塵能力を十分発揮できる状態にしておかなければならないので、電動工具2を運転した後、0.1秒程経過したときに集塵機1が運転状態になるよう設定されている。
他方、作業者が電動工具2の電源スイッチ2cをOFF状態として電動工具2を停止状態にすると、変流器CTの2次出力電圧がゼロになり、全波整流器14の平滑コンデンサC1に充電されていた電荷は変流器CTの負荷抵抗器R1介して放電する。これにより、平滑コンデンサC1の電圧が充放電回路15の比較電圧を設定する抵抗器R12およびR13で設定された電圧より低い電圧になると、充放電コンデンサC2の電荷は放電抵抗器R15とコンパレータU2Aを介して放電し、充放電コンデンサC2の電圧は徐々に低下する。充放電コンデンサC2の電圧が比較回路16の抵抗器R16およびR17によって設定された予定電圧より低くなると、コンパレータU2Bの出力は、OFFレベルになって電源電圧と実質的に等しくなる。その結果、フォトトライアックPH1のフォトダイオード部には電流が流れなくなるので、フォトトライアックPH1のトライアック部はOFF状態になり、トライアックTR1はOFF状態になり、集塵モータ9はOFFされる。結果的に集塵機1は停止状態になる。
ここで、充放電コンデンサC2の放電時定数は、充放電コンデンサC2の電圧が比較回路16の抵抗器R16およびR17によって設定された電圧より低くなるまでの時間が数秒になるように設定されているため、集塵機1の運転状態は作業者が電動工具2を停止しても数秒間は運転状態を持続してから停止する。これは、電動工具2を停止した直後は、電動工具2の刃物付近及び集塵機1に接続している塵埃を搬送するホース3(図4参照)の内部に、塵埃が滞在しているので、これらの塵埃を全て集塵機1の筐体内まで搬送した後に、集塵機を停止させるためである。
また、図5に示した連動/単動切替スイッチ11をON状態にして単動モードに切替えると、集塵機1は、コンセント12のコンセント電流に関係なく運転状態になる。このように使用する場合は、上述したような連動モードと区別されるので、単動モードと呼ばれる。
近年、電気ドリルや電気丸鋸等の電動工具において、電動工具本体に付属して、ドリルビット等の先端工具の先端照明用LED(発光ダイオード)を搭載したもの、電気丸鋸の鋸歯の前面照明用LEDを搭載したもの、被切削材の表面に記された墨線に鋸歯を合わせ易くするための照明用LEDを搭載したもの、電気丸鋸の鋸歯の進行方向をレーザ光で線状に被切削材上に照射する墨出しレーザ光源を搭載したものなど付帯機能装置を有する電動工具が要求されつつある。これら付帯機能装置を搭載する電動工具においても上述したような連動制御機構を備える集塵機を利用するのが一般的である。この場合、付帯機能装置の消費電力は、数ワット程度(実行電流は数十ミリアンペア)である。
図5の回路図に示したように、直流電源部2eおよびLEDや墨出しレーザの光源等の付帯機能部2fを含む付帯機能装置2dを装着する電動工具2は、電動工具本体2aの電動モータ2bが停止状態にあっても、付帯機能装置2dが運転状態にあるため、付帯機能装置2dには数十ミリアンペアの歪んだ電流が流れる。この原因は、一般的に、電動工具の付帯機能装置2dの直流電源部2eとして、整流ダイオードおよび大容量の平滑用コンデンサを具備するコンデンサ入力型整流回路が用いられるためである。すなわち、コンデンサ入力型整流回路によって電動工具本体に必要な商用交流電源の電源電圧を整流した後、DC−DCコンバータで必要な直流電圧を得る方式を採用しているため、図6の電流ipとして例示するように、平滑用コンデンサへの供給電流の波形は電源周波数の位相が90度または270度付近で短時間(例えば、1ミリ秒)だけ電流が流れる歪電流(パルス状の歪んだ電流波形)ipとなる。この歪電流ipは、実効電流値は数十ミリアンペアながら、過渡的に流れる電流の波高値が数アンペアを超す場合が多い。
一方、上述した従来の集塵機1の連動制御装置8(図5参照)では、抵抗器R12およびR13で設定される充放電回路15の比較電圧は、変流器CTにコンセント電流が0.5アンペアから0.8アンペア程度流れた時に生ずる負荷抵抗器R1の電圧を基準に設定される。これは、一般に電動工具の無負荷電流の下限値が1アンペア程度なので、電動工具のモータが動作した時点で確実に集塵機が連動するように考慮されているためである。この電動工具の無負荷電流は実効値であり、電流波形は、図6の電流isで示すように、歪が小さい正弦波電流isとなるので、その波高値は実効値の1.4倍程度である。
また、コンセント電流を検出する変流器CTは、1次巻線数が1巻回数、2次巻線数が1000巻回数程度の小型の変流器が一般的に採用されるが、上述した従来の集塵機における連動制御装置8の全波整流回路14のように、ブリッジダイオードBD1で変流器CTの出力を全波整流する場合は、ブリッジダイオードの順方向電圧降下(例えば、0.8V〜1.2Vの閾値電圧)が悪い影響を及ぼす。すなわち、変流器CTの1次側電流が歪んでいる程実効値に対する波高値が大きいため、歪の小さいパルス電流は小さ目に、歪の大きいパルス電流は大き目に抵抗R1の両端電圧として変換され、波形の歪具合により集塵機1の連動制御電流値が変化し、歪の大きなコンセント電流に対して感度が良く、歪の小さなコンセント電流に対しては感度が見かけ上悪くなるという不都合を生ずる。
従って、上記した従来の集塵機1の連動制御装置8では、コンセント電流の波高値に近い電流値に応答して連動動作をしているので、上記した実効電流値は数十ミリアンペアながら、波高値が1アンペアを超すような歪んだパルス電流が流れる直流電源装置2eを駆動源とする手元灯から成る付帯機能装置や、墨出しレーザ光源を搭載した電気丸鋸などの付帯機能装置を有する電動工具を集塵機のコンセントに接続して使用する場合、電動工具本体が停止状態にもかかわらず、付帯機能装置の電源電流に応答して、運転状態になってしまうという誤動作を生ずる。このため、集塵機能が不要である時にも集塵機が運転状態となるので、無駄な電力を消費することになる。さらに、電動工具の作業者は、不要な集塵機の運転音が騒音となり、また電動工具の操作手順を誤る場合がある。
従って、本発明の目的は、上記従来の欠点を解消し、電動工具の付帯機能の動作に基づく歪電流の発生に影響されることなく、電動工具の運転状態に応答した集塵機の停止状態または運転状態を保持し得る連動制御装置を具備する電動工具用集塵機を提供することにある。
上記本発明の目的を達成するために、本願において開示される発明のうち、代表的なものの特徴を説明すれば、次のとおりである。
本発明の一つの特徴によれば、電動工具の運転中に発生する粉塵を集塵するための集塵モータと、該集塵モータを駆動させるための駆動回路と、前記電動工具の運転の開始または停止に応答して前記駆動回路の動作をONまたはOFFさせるための連動制御装置と、を具備する集塵機において、前記連動制御装置は、前記電動工具に電源を供給するコンセントと、該コンセントの電流を検出する変流器と、該変流器から出力される正または負の電圧に応答する絶対電圧を整流する全波整流回路と、該全波整流回路の実効値出力に応答する出力レベルを検出する出力検出回路と、該出力検出回路の出力電圧が予め定められた閾値を超えたとき充電を開始する充放電回路と、該充放電回路の前記充電電圧が所定の第1の比較電圧を超えたとき前記駆動回路をONする制御信号を出力する比較回路とを有する。
本発明の他の特徴によれば、前記比較回路は、前記充放電回路の前記充電電圧が所定の第1の比較電圧より低い第2の比較電圧に低下したとき、前記駆動回路をONからOFFする制御信号を出力するヒステリシス特性を有する。
本発明のさらに他の特徴によれば、前記出力検出回路は、前記全波整流回路の出力を平滑する積分回路によって構成される。
本発明のさらに他の特徴によれば、前記出力検出回路は、前記全波整流回路の出力の実効値を検波する実効値検波回路によって構成される。
本発明のさらに他の特徴によれば、前記全波整流回路は、前記変流器の出力信号を半波整流する前段オペアンプと、前記変流器の出力信号および前記前段オペアンプの半波整流出力信号を加算する後段オペアンプとから成る。
本発明のさらに他の特徴によれば、工具用モータ、該工具用モータの駆動を開始または停止するスイッチ、および発光ダイオード等を含む付帯機能装置を具備する電動工具と、前記電動工具の運転中に発生する粉塵を集塵するための集塵モータ、該集塵モータを駆動させるための駆動回路、および前記電動工具の運転の開始または停止に応答して前記駆動回路の動作をオンまたはオフさせるための連動制御装置を具備する集塵機と、から成る電動工具と集塵機の組合せ構造において、前記連動制御装置は、前記電動工具に電源を供給するコンセントと、該コンセントの電流を検出する変流器と、該変流器からの出力信号に基づいて前記駆動回路を制御する制御回路とを有し、前記制御回路は、前記工具用モータが停止中の場合であって前記付帯機能装置が駆動しているときに、前記変流器の出力信号に基づく前記集塵機の駆動を禁止するための禁止手段を有する。
本発明の上記特徴によれば、電動工具の付帯機能の動作に基づく歪電流の発生に影響されることなく、電動工具の運転状態に応答した集塵機の停止状態または運転状態を保持し得る連動制御装置を有する電動工具用集塵機を提供できる。
従って、集塵機による無駄な消費電力を排除し、作業者は、不要な集塵機の運転音に曝されることがなく、より快適な環境で、電動工具の作業効率を向上させることができる。
本発明の上記および他の目的、ならびに本発明の上記および他の新規な特徴は、本明細書の以下の記述および添付図面から更に明らかにされるであろう。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施形態を説明するための図面において、上述した従来技術と同様な機能を有する部材については同一の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する場合がある。
図1は、本発明の一実施形態に係る連動制御装置20を有する集塵機1および電動工具2の回路図を示す。図1において、以下、連動制御装置20の構成について説明する。
変流器CTの出力を全波整流する全波整流回路21は、オペアンプ(汎用オペアンプ)U1AおよびU1Bと、抵抗器R2〜R8と、ダイオードD2およびD3とで構成されている。オペアンプU1AおよびU1Bは、直流電源19の+Vcc(例えば、+12V)と−Vdd(例えば、−5V)の正負の電源で駆動され、コンセント電流を検出する変流器CTの負荷抵抗器R1の電圧を全波整流して出力する。
全波整流回路21は、抵抗器R1に生ずる入力電圧の絶対値をオペアンプU1Bの出力電圧とするため、一般に絶対値回路とも呼ばれるもので、オペアンプU1A、ダイオードD2およびD3、および抵抗器R2、R4およびR5によって構成された半波整流回路(理想ダイオード回路)と、オペアンプU1B、および抵抗器R3、R6〜R8によって構成された加算回路とを含んでいる。全波整流回路21の入出力特性は、入力電圧の瞬時値の絶対値が出力されるので、入力がゼロ付近から直線状に上昇する出力が得られ、増幅率は1である。
このため、変流器CTに接続される負荷抵抗器R1の電圧レベルの制約がないため、変流器CTの負荷抵抗器R1の抵抗値は、変流器CTの2次巻線の抵抗値とほぼ同じ100〜200Ωに設定する。このため、コンセント電流が数アンペア程度までは、コンセント電流の波形の瞬時値にほぼ対応した全波整流波形の出力が得られる。
出力検出回路22は、全波整流回路21の出力を平滑または検出するために設けられている。本実施態様では、出力検出回路22は、積分回路によって構成され、オペアンプU1Cと、抵抗器R9およびR10と、コンデンサC1とを含んでいる。全波整流回路21の出力が50Hzまたは60Hz等の商用電源周波数の電圧を全波整流した波形の電圧の場合は、ほぼその実効値に比例した直流レベルが得られるように、抵抗器R9およびR10の値と、コンデンサC1の値とが設定される。この場合は、上述したようにコンセント電流が数十ミリアンペアの実効値電流であって、波高値電流が実効値に対して数十倍となるような1アンペアを超すような電流であっても、積分回路の出力(波高値/実効値)を数分の1まで抑制することができる。
積分回路22の出力が入力される充放電回路23は、定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)ZD1と、バイアス抵抗器を内蔵するn型デジタルトランジスタTr1と、バイアス抵抗器を内蔵するp型デジタルトランジスタTr2と、充電用抵抗器R14と、充放電用コンデンサC2と、放電用抵抗器R15とから構成される。
充放電回路23は、上述した図5に示した従来技術における連動制御装置8の充放電回路15とほぼ同様の動作をするが、従来の充放電回路15では、抵抗器R12およびR13で設定する比較電圧より高レベルの入力があったときに充放電コンデンサC2に充電していたが、本発明における充放電回路23では、その入力電圧レベルが、定電圧ダイオードZD1の電圧降下(Vz)とn型デジタルトランジスタTr1のベース・エミッタ間電圧降下(Vbe)とで定まる閾値電圧(Vz+Vbe)より高レベルのとき、充放電コンデンサC2が充電される。このため、前段の積分回路22の増幅度は、コンセント電流が、例えば、0.65アンペア程度の時に生ずる負荷抵抗器R1の電圧のとき、充放電コンデンサC2の充電が開始されるようなレベルに設定される。
充放電回路23の出力を受信し、後述するモータ駆動回路17に制御信号を出力するための比較回路24は、オペアンプU1Dおよび抵抗器R16〜R20によって、充放電回路23の出力レベルを設定値と比較するためのヒステリシス特性を持つ比較部を構成し、
定電圧ダイオードZD2、抵抗器内蔵型p型デジタルトランジスタTr3、電流制限用抵抗器R21、およびフォトトライアックPH1の発光ダイオード部によって、モータ駆動回路17の制御信号を出力する信号出力部を構成する。比較回路24は、充放電回路23の充電電圧が所定の第1の比較電圧を超えたとき、モータ駆動回路17をONする制御信号を出力し、逆に、充放電回路23の充電電圧が前記第1の比較電圧より低い第2の比較電圧に低下したとき、モータ駆動回路17をONからOFFする制御信号を出力するヒステリシス特性を有する。
比較回路24は、上記した従来の連動制御装置8の充放電回路16とほぼ同様の動作をするが、本実施態様の連動制御装置20では、正負両電源で動作するオペアンプU1Dによる比較回路を採用し、電流制限抵抗器R21とフォトトライアックPH1の発光ダイオード部とを駆動するために、レベル変換が必要になるので、定電圧ダイオードZD2とp型デジタルトランジスタTr3を付加した構成になっている。
連動制御装置20の集塵モータ駆動回路17は、上述した従来の連動制御装置8(図5参照)の集塵モータ駆動回路17と同様な回路構成を持ち、トライアックTR1、電流制限用抵抗器R23、ゲート抵抗器R24、ゲートコンデンサC3、およびフォトトライアックPH1から構成されている。集塵モータ駆動回路17では、上記比較回路24のフォトトライアックPH1の発光ダイオード部に電流が流れた時、フォトトライアックPH1のトライアックがON状態になり、電流制限抵抗器R21、フォトトライアックPH1のトライアック部を経由してトライアックTR1のゲートにゲート電流が流れて、トライアックTR1はON状態になり、集塵モータ9はON状態になって集塵機1は運転状態となる。前記比較回路24のフォトトライアックPH1の発光ダイオード部に電流が流れない時は、トライアックTR1はOFF状態となり、集塵機1は停止状態となる。
かかる連動制御装置20を有する集塵機1の動作について、以下に説明する。電動工具2が停止状態の時(スイッチ2c1および2c2がOFFの時)は、電源スイッチ13をONしても集塵機1のコンセント12に電源ケーブル6を通して流れるコンセント電流はゼロとなり、コンセント電流を検出する変流器CTの2次出力電圧はゼロとなる。このため、変流器CTの負荷抵抗R1の両端電圧もゼロとなり、該負荷抵抗R1の電圧を入力する全波整流回路21の出力もゼロとなる。従って、積分回路22の出力は、全波整流回路21の出力に応答してゼロとなり、次段の充放電回路23の充放電コンデンサC2には電荷が全く充電されない。その結果、充放電コンデンサC2の電圧を入力する比較回路24のオペアンプU1Dの出力は高レベルとなってp型トランジスタTr3は遮断状態にあるので、フォトトライアックPH1の発光ダイオード部には電流が流入しない。これにより、集塵モータ駆動回路17のトライアックTR1はOFF状態になり、集塵モータ9はOFF状態を維持して集塵機1は停止状態にある。
次に、電動工具2の電源スイッチ2c1をONして、その付帯機能装置2dの直流電源部2eがONすると、コンセント12に電動工具2の付帯機装置2dの電流が流れ、変流器CTの負荷抵抗器R1に電動工具2の運転電流に応じた電圧が生じ、全波整流回路21の出力には負荷抵抗器R1に生じた電圧の全波整流波形が出力される。
この付帯機能装置2dの電流は、上述したように、付帯機能装置2dの直流電源部2eが一般にコンデンサ入力型整流回路が使用されることから、図6のパルス電流ipとして示したように、電源周波数(例えば、50Hz)の最大値Ipが1ミリ秒程度だけ電流が流れる歪電流である。しかし、その実効電流値は数十ミリアンペアながら、その波高値は1アンペアを超す比較的大きな電流である。このため、全波整流回路21の出力は、商用電源周波数の2倍の周期を持つパルス状の電圧となる。
このパルス状の電圧が、積分回路22に入力されると、積分されて、出力は直流成分を含んだなだらかなパルス波形になり、出力波形の実効値に対する波高値の割合(波高値/実効値)は、数分の1まで抑制される。すなわち、積分回路22の入力パルス状電圧は、積分回路の出力側において、積分回路の時定数により尖頭部が鈍った波形を持つ出力電圧となる。このため、積分回路22の出力が次段の充放電回路23に入力されても、充放電回路23の充電開始レベルより高電位になることはなく、充放電コンデンサC2は充電されない。ここで、充放電回路23の入力側には、定電圧ダイオードZD1とn型デジタルトランジスタTr1のベース・エミッタ通路が直列接続されているので、積分回路22の出力電圧が、定電圧ダイオードZD1の電圧降下(Vz)とn型デジタルトランジスタTr1のベース・エミッタ間電圧降下(Vbe)とで定まる閾値電圧(Vz+Vbe)より高いレベルのとき、充放電コンデンサC2に充電されることになる。
従って、充放電コンデンサC2の充電電圧を入力とする比較回路24は、充放電コンデンサC2の充電電圧が抵抗器R16およびR17によって設定された比較電圧より低いので、p型デジタルトランジスタTr3を導通状態とすることなく、フォトトライアックPH1の発光ダイオード部に電流を流さない。その結果、集塵モータ駆動回路17のトライアックTR1はOFF状態になり、集塵モータ9はOFF状態を維持し、集塵機1は停止状態のままとなる。つまり、絶対値全波整流回路21、積分回路22および充放電回路23は、工具用モータ2bが停止中の場合であって、付帯機能装置2dが駆動しているときに、変流器CTの比較的小さい出力信号に対する集塵機1の駆動を禁止するための禁止手段として機能する。
作業者が、電動工具本体2aのスイッチ2c2をONすることにより、電動工具本体2aを運転状態にすると、集塵機1のコンセント12に電動工具本体2aの正弦波に近い運転電流(モータ電流)が流れ、変流器CTの負荷抵抗器R1に運転電流に応じた電圧が生じる。これにより、全波整流回路21の出力には負荷抵抗器R1に生じた電圧の全波整流波形が出力され、積分回路22で積分される。この積分回路22の出力は、コンセント電流の実効値に比例した直流レベルとなる。積分回路22の出力が、充放電回路23の上記閾値電圧(Vz+Vbe)に近い充電開始レベルより高電位になると、抵抗器内蔵p型デジタルトランジスタTr2、充電抵抗器R14、および充放電コンデンサC2を通して充電電流が流れ、充放電コンデンサC2に電圧が充電される。
充放電コンデンサC2の充電電圧が、次段の比較回路24におけるヒステリシスのある比較回路部(オペアンプ部)U1Dの予め設定されたON電圧より高電圧になると、抵抗器内蔵p型デジタルトランジスタTr3がON状態になり、フォトトライアックPH1の発光ダイオード部に電流が流れる。フォトトライアックPH1の発光ダイオード部に電流が流れると、集塵モータ駆動回路17のトライアックTR1はON状態になり、集塵モータ9はONし、集塵機1は運転を開始する。これにより、集塵機1は、電動工具2の運転により発生する粉塵を捕集することができる。
作業者が、電動工具本体2aのスイッチ2c2をOFFして電動工具本体2aの運転を停止すると、コンセント12に流れるコンセント電流は実質的にゼロになり、コンセント電流を検出する変流器CTの2次巻線の出力電圧はゼロになる。これにより、負荷抵抗R1に発生する電圧もゼロになるため、全波整流回路21の出力電圧もゼロとなる。全波整流回路21の出力を入力する積分回路22の出力は、全波整流回路21の出力がゼロになったので、徐々に低下して、数十ミリ秒後にゼロになる。積分回路22の出力が、次段充放電回路23の充電開始レベルより低い電位になると、抵抗器内蔵p型デジタルトランジスタTr2はOFF状態となり充放電コンデンサC2への充電は停止される。
その結果、充放電コンデンサC2の電荷は放電用抵抗器R15を介して放電され、充放電コンデンサC2の電圧は緩やかに低下する。充放電コンデンサC2の電圧が、次段の比較回路24のヒステリシスのある比較回路部U1Dに予め設定されたOFF電圧(比較電圧)より低い電圧になると、抵抗器内蔵p型デジタルトランジスタTr3がOFF状態になり、フォトトライアックPH1の発光ダイオード部に電流が流れなくなる。フォトトライアックPH1の発光ダイオードに電流が流れなくなると、集塵モータ駆動回路17のトライアックTR1はOFF状態になり、集塵モータ9はOFFになり、集塵機1は停止する。充放電コンデンサC2の放電時定数は、充放電コンデンサC2の電圧が抵抗器R16およびR17によって設定された比較回路24の比較電圧より低下するまで、数秒の時間を要するように設定される。この設定により集塵機1の運転は、作業者が電動工具本体2aを停止させてから数秒間経過した後に停止させる。つまり、電動工具本体2aの運転を完全に終了させた後に、短時間経過させてから集塵機1による集塵動作を完了させる。
以上の実施態様の説明から明らかにされるように、本発明の構成によれば、集塵機1の連動制御装置20は、電動工具本体2aが運転されていない状態で発生する好ましくない波高値の高いパルス電流(大きな歪電流)の影響を防止して、電動工具本体2aが真に運転されたときに、電動工具2の運転開始に同期もしくは応答して集塵機1の集塵モータ9を運転開始させることができる。また、電動工具本体2aの運転が停止された場合は、その運転の停止に応答もしくは遅延して集塵機1の運転を停止させることができる。従って、集塵機による無駄な消費電力を排除し、作業者は、不要な集塵機の運転音に曝されることがなく、より快適な環境で、電動工具の作業効率を向上させることができる。
本発明による連動制御装置20を有する集塵機1の特性図を図2および図3に示す。図2は、正弦波のコンセント電流(電動モータの運転電流)の実効値に対する充放電回路の充電コンデンサC2の入力電圧Vo1、Vo2(観測点電圧/閾値電圧)の関係を示す特性図であり、図3は、大きな歪電流であるパルス状コンセント電流(付帯機能装置のノイズ電流)の波高値に対する充放電回路の入力電圧Vo1、Vo2(観測点電圧/閾値電圧)の関係を示す特性図である。
図2および図3において、特性曲線Vo1は、本発明における充放電回路23の入力電圧Vo1(図1参照)を示し、特性曲線Vo2は、従来技術における充放電回路15の入力電圧Vo2(図5参照)を示す。図2は、特に、コンセント電流が周波数50Hzで正弦波状の電流時の応答で、電流値は実効値で示している。また、図3は、コンセント電流が、「波高値/実効値」の値が20程度で、繰返し周期が100Hzのパルス状電流時の応答で、電流値は波高値で示している。なお、充放電回路の入力電圧の大きさVo1およびVo2は、充放電回路の充電開始電圧である閾値電圧で除して正規化してあるので、図2に示したようなコンセント電流が正弦波状の特性では、本発明Vo1および従来技術Vo2とも、観測点電圧/閾値電圧=1以上のとき、充放電回路の充放電コンデンサC2に充電が開始され、集塵機1が運転状態になることを示している。
図2に示すように、電動工具本体2aが運転状態でコンセント電流が正弦波状の場合は、本発明の特性Vo1および従来技術の特性Vo2は、(観測点電圧/閾値電圧)=1の時点で充放電回路の充放電コンデンサC2に充電が開始され、集塵機1が運転状態となることを示している。この時のコンセント電流は、0.65アンペアで、コンセント電流の閾値電流を1.0アンペア以下に設定できる。
一方、図3に示すように、電動工具本体2aが運転されていない、付帯機能装置2dより発生するパルス状電流の時の応答では、従来技術の特性Vo2は、コンセント電流の波高値が0.92アンペア程度で、(観測点電圧/閾値電圧)=1になり、集塵機1が運転状態になる。これに対し、本発明に従う特性Vo1は、コンセント電流の波高値が1.5アンペアでも、(観測点電圧/閾値電圧)=0.75程度で、充放電回路の充放電コンデンサC2に充電が開始されることはない。すなわち、本発明によれば、パルス状のコンセント電流に対して誤動作を防止できることが明らかである。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、上述した出力検出回路(積分回路)22は、増幅器と増幅度が1の積分回路とを組合せて構成してもよい。また、上記出力検出回路として用いた積分回路の代わりに、実効値検波回路を使用してもよい。充放電回路23に用いた定電圧ダイオードZD1と、二つのn型およびp型トランジスタTr1およびTr2の代わりに、コンパレータICで構成してもよい。さらに、比較回路24の比較回路部をオペアンプで構成したが、コンパレータICを用いて構成してもよい。
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。