JP4935134B2 - 改良されたプロモーターアッセイ方法 - Google Patents
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通常のバイオアッセイ法では、化学物質の存在は、微生物の化学物質に対する細胞応答、例えば細胞の生死、増殖能、呼吸量、特定の遺伝子の発現の変化を指標として評価される。プロモーターアッセイ方法では細胞応答としてプロモーター活性の変化、すなわちプロモーターに連結されたマーカータンパク質を指標として評価される。
(1)生細胞のみが染色される染色法を行う、
(2)細胞の呼吸量をモニタリングする、あるいは
(3)細胞の増殖能をモニタリングすることにより、
微生物の生育が重度に阻害される状態であるか、あるいは微生物が死滅する状態であるかを、同じ検体試料に対してプロモーターアッセイ法と同時に行うことで判定する。
しかし、このような2種類以上のアッセイ方法を同時に行うよりも、1種類のアッセイ方法によって限界濃度の存否のみならず、化学物質の存在を検定できるアッセイ方法が簡便性、経済性の点から望ましい。
[1] 被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するための、1種以上の組換え微生物を用いるプロモーターアッセイ方法であって、1種以上の組換え微生物のうち少なくとも1つが、化学物質の不存在下においてもプロモーター活性を一定レベルで発現する微生物である方法;
[2] 化学物質の不存在下においてプロモーター活性を一定レベルで発現する組換え微生物のプロモーター活性が低下または消失した場合、被検試料中に化学物質があると判断し、被検試料の希釈系列を作成し、該プロモーター活性が消失しない希釈度の試料を新たな被検試料としてレポーター・ジーン・アッセイ方法を行う、上記[1]記載の方法;
[3] 新たな被検試料に対して行うレポーター・ジーン・アッセイ方法がプロモーターアッセイ方法である、上記[2]記載の方法;
[4] 化学物質の不存在下においてプロモーター活性を一定レベルで発現する組換え微生物のプロモーター活性が一定濃度の化学物質の存在下に上昇する微生物を用いる、上記[1]から[3]までのいずれか記載の方法;
[5] 組換え微生物が酵母由来である、上記[1]から[4]までのいずれか記載の方法;
[6] 化学物質の不存在下においてプロモーター活性を一定レベルで発現する組換え微生物のプロモーターが、YNL015W、YDR135C、YLR303W、YER091C、YPL061W、YEL065W、YFL031W、YIL062C、YDL248W、YER112W、YMR260C、YDR487C、YDR315C、YLR058C、YBR147W、YJR073C、YBL078C、YDR158W、YOL151W、YOR153W、YDL020C、YMR140W、YLL055W、YFL014W、YBR056W、YBR072W、YPL171C、YKR076W、YLR327C、YNL160W、YOR383C、YOR248W、YKL142W、YAL044C、YMR096W、YPR028W、YDR019C、YER067W、YLR160C、YMR173W、YBL038W、YOR247W、YPL272C、YLR359W、YLR390W、YBR054W、YPR124W、YHR055C、YHR124W、YOR382W、YOR285W、YAL005C、YJL153C、YFL056C、YDL204W、YHL047C、YCR021C、YNR034W、YDL173W、YNL333W、YOL165C、YBR093C、およびYLR214Wからなる群から選択される酵母遺伝子のプロモーターである、上記[5]記載の方法;
[7] 組換え微生物が、化学物質の不存在下においてプロモーター活性を一定レベルで発現するよう遺伝子操作されている、上記[1]から[4]までのいずれか記載の方法;
[8] (1)エタノール、ホルムアルデヒド、ビスフェノールA、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、2,5-ジクロロフェノール、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、4-ノニルフェノール、メタ亜ひ酸ナトリウム、チウラム、塩化トリブチルすず(IV)、2,4,5-トリクロロフェノール、トリップ-P-2, 酢酸塩、マラソン、マンネブ、二クロム酸カリウム、塩化トリフェニルすず(IV)、フェノール、塩化水銀、シアン化カリウム、ふっ化カリウム、m-ニトロフェノール、塩化カルシウム、1,4-ジオキサン、テトラエチレンペンタミンおよびメソミルからなる群から選択される化学物質の不存在下において一定レベルの活性を有するYNL015W、YDR135C、YLR303W、YER091C、YPL061W、YEL065W、YFL031W、YIL062C、YDL248W、YER112W、YMR260C、YDR487C、YDR315C、YLR058C、YBR147W、YJR073C、YBL078C、YDR158W、YOL151W、YOR153W、YDL020C、YMR140W、YLL055W、YFL014W、YBR056W、YBR072W、YPL171C、YKR076W、YLR327C、YNL160W、YOR383C、YOR248W、YKL142W、YAL044C、YMR096W、YPR028W、YDR019C、YER067W、YLR160C、YMR173W、YBL038W、YOR247W、YPL272C、YLR359W、YLR390W、YBR054W、YPR124W、YHR055C、YHR124W、YOR382W、YOR285W、YAL005C、YJL153C、YFL056C、YDL204W、YHL047C、YCR021C、YNR034W、YDL173W、YNL333W、YOL165C、YBR093C、およびYLR214Wからなる群から選択される遺伝子のプロモーターであって、当該プロモーターを含むベクターで形質転換した微生物の生育が重度に阻害されない濃度または該微生物が死滅しない濃度の該化学物質の存在下においては上記一定レベルを超える活性を有するプロモーター、および
(2)該プロモーターに作動可能に連結したマーカー遺伝子を含むプラスミドベクター;および
[9] 上記[8]記載のプラスミドベクターで形質転換した微生物
に関する。
また、本願の特許請求の範囲および明細書中において「プロモーター活性が一定濃度の化学物質の存在下に上昇する」とは、当該微生物の生育が重度に阻害される状態でも、死滅する状態のいずれでもない濃度の化学物質が存在する下で、プロモーター活性が上昇することをいう。
また、本発明のプラスミドベクターおよび該プラスミドベクターで形質転換した微生物は、上記のプロモーターアッセイ方法に直接使用することができ、これらを使用することによりプロモーターアッセイ方法を簡便かつ迅速に行うことができる。
本発明の方法および微生物の被検対象となり得る化学物質としては、例えば(1)ベンゾ(a)ピレン、(2)ビスフェノールA、(3)フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、(4)2,5-ジクロロフェノール、(5)2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、(6)ホルムアルデヒド、(7)塩化メチル水銀、(8)4-ニトロキノリン-N-オキサイド、(9)4-ノニルフェノール、(10)ペンタクロロフェノール、(11)メタ亜ひ酸ナトリウム、(12)チウラム、(13)塩化トリブチルすず(IV)、(14)2,4,5-トリクロロフェノール、(15)トリップ-P-2, 酢酸塩、(16)パラコート、(17)塩化カドミウム、(18)γ-ヘキサクロロシクロへキサン、(19)マラソン、(20)マンネブ、(21)塩化ニッケル(II)、(22)二クロム酸カリウム、(23)塩化トリフェニルすず(IV)、(24)フェノール、(25)ベンチオカーブ、(26)ヘキサクロロフェン、(27)トリクロサン、(28)塩化水銀、(29)硫酸銅(II)、(30)シアン化カリウム、(31)ジメチルスルホキシドが挙げられる。
すなわち、まず、1種の組換え微生物のみを利用するプロモーターアッセイ方法において用いるプロモーターは、化学物質に応答する遺伝子のプロモーターであることに加えて、そのプロモーター自体が化学物質の不存在下においてもプロモーター活性を一定レベルで発現するプロモーターである。このように1種の組換え微生物のみを利用するプロモーターアッセイ方法において、例えばプロモーターとしてYDL020Cを含む組換え微生物のみを用いた場合、検出上限の限界濃度を超える化学物質が被検試料中に存在するとプロモーター活性のレベルは低下または消失する。しかし、その被検試料をある一定濃度の化学物質を含む試料まで希釈し、化学物質不存在下のプロモーター活性を超えるレベルで発現する場合には、後記する実施例3の表2の結果から、その被検試料はマラソンを含有することが予想される。
また、2種以上の組換え微生物を利用するプロモーターアッセイ方法においては、そのうちの少なくとも1種の組換え微生物は化学物質の不存在下においてもプロモーター活性を一定レベルで発現するプロモーターで形質転換したものである。また、組換え微生物の組み合わせは、被検試料中に存在することが疑われる化学物質に特異的に応答する遺伝子のプロモーターを有する微生物の組が好ましい。この態様のプロモーターアッセイ方法においては、例えば、組換え微生物の組み合わせとしてYBR147W、YDL020CまたはYDR135Cをそれぞれ含む微生物を用い、被検試料をある一定濃度の化学物質を含む試料まで希釈した場合、YBR147WおよびYDR019Cを含む微生物が化学物質不存在下のプロモーター活性を超えるレベルを発現するが、YDR135Cを含む微生物の活性は化学物質不存在と同じレベルの場合には、同表2の結果から、その被験試料は2,5-ジクロロフェノールを含有することが予想される。一方、YBR147WおよびYDR019Cを含む微生物が化学物質不存在下と同じレベルを発現するが、YDR135Cを含む微生物の活性は化学物質不存在を超えるレベルを発現する場合には、その被験試料はエタノール、ホルムアルデヒドおよび塩化水銀の少なくとも1の化学物質を含有することが予想される。
以上のような考え方にもとづき、化学物質に対して応答を示す1種または2種以上の微生物を用いてその応答データベースを作成することで、さらに多種類の化学物質の推定を行うことが可能である。データベース作成の具体的な手法は、特開2004−248634(DNAマイクロアレイ法を用いる毒性物質の同定方法)に詳細に記載されている。
化学物質とそれに応答する遺伝子のプロモーターの好ましい組み合わせは以下の実施例に示す。
YNL015W、YDR135C、YLR303W、YER091C、YPL061W、YEL065W、YFL031W、YIL062C、YDL248W、YER112W、YMR260C、YDR487C、YDR315C、YLR058C、YBR147W、YJR073C、YBL078C、YDR158W、YOL151W、YOR153W、YDL020C、YMR140W、YLL055W、YFL014W、YBR056W、YBR072W、YPL171C、YKR076W、YLR327C、YNL160W、YOR383C、YOR248W、YKL142W、YAL044C、YMR096W、YPR028W、YDR019C、YER067W、YLR160C、YMR173W、YBL038W、YOR247W、YPL272C、YLR359W、YLR390W、YBR054W、YPR124W、YHR055C、YHR124W、YOR382W、YOR285W、YAL005C、YJL153C、YFL056C、YDL204W、YHL047C、YCR021C、YNR034W、YDL173W、YNL333W、YOL165C、YBR093C、およびYLR214W。このなかで、YNL015W、YDR135C、YLR303W、YER091C、YPL061W、およびYEL065Wからなる群から選択される酵母遺伝子をプロモーターアッセイ用に組換えた組換え酵母が好ましい。
上記酵母遺伝子は、公的データベース:MIPS(Munich Information center for Protein Sequences:http://mips.gsf.de/genre/proj/yeast/searchCatalogFirstAction.do?style=catalog.xslt&table=FUNCTIONAL_CATEGORIES)による分類に基づく酵母遺伝子の特定手法に従う。
この態様において、「化学物質の不存在下においてプロモーター活性を一定レベルで発現する組換え微生物」のプロモーター活性が低下または消失した場合、用いた被検試料にはある化学物質が、微生物を(a)その生育が重度に阻害される状態、あるいは(b)微生物が死滅する状態、に至らしめるレベルで試料中に存在していると考えられる。そこで、その場合は、新たに被検試料の希釈系列を作成し、該プロモーター活性が消失しない一定濃度の化学物質を含む希釈度の試料を特定し、それを新たな被検試料としてレポーター・ジーン・アッセイ方法を行う。新たな被検試料を用いて行うレポーター・ジーン・アッセイ方法には、被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するための通常の方法を用いることができる。例えば、遺伝子発現の変化、例えばRNA量またはmRNA量の変化を指標に用いる方法であり、これにはプロモーターアッセイ法が含まれる。
また、別の態様において、本発明は上記した方法に直接的に用いることができるプラスミドおよび当該プラスミドで形質転換した微生物も含まれる。
実施例1
化学物質の不存在下においてプロモーター活性を一定レベルで発現する微生物の選択
a)方法
化学物質を負荷しない状態でGFPを発現させている遺伝子を酵母細胞から選択した。詳細には、以下の通りである。
使用するベクターは大腸菌と酵母の両方で複製されるYEp型シャトルベクターであるpYES2(pYES2, Cat no.:V825-20, Invitrogen Corporation, USA)(R.W.オールド、S.B.プリムローズ 遺伝子操作の原理 原書第5版, 培風館, pp.234-263, 2000))を用いた。また、マーカータンパク質GFPをコードするポリヌクレオチドはベクターpQBI 63(Cat no.54-0082, 和光純薬工業(株))のGFPをコードする部分を用いた。まず、pYES2の多重クローニング部位(multiple cloning site)の中にGFPをコードするポリヌクレオチドを挿入したベクターを作成した。次いで、pYES2のGAL1プロモーターの部分を酵母遺伝子のプロモーター配列を含むポリヌクレオチドと置換し、目的とするプラスミドベクターを得た。GFPおよびプロモーター配列を含むポリヌクレオチドの挿入操作は、適当な制限酵素を選択して行った。酵母遺伝子のプロモーター配列を含むポリヌクレオチド(SCPD:The Promoter Database of Saccharomyces cerevisiaeにて開示)は、酵母遺伝子の約1000bp上流から直前までとした。
次に、このプラスミドベクターで酵母Saccharomyces cerevisiae W303 ATCC201239 (MATa/MATα leu2-3/leu2-3 leu2-112/leu2-112 trp1-1/trp1-1 ura3-1/ura3-1 his3-11/his3-11 his3-15/his3-15 ade2-1/ade2-1 can1-100/can1-100)を形質転換した。形質転換の手順を以下に示す。
1)酵母細胞Saccharomyces cerevisiae W303をYPD培地200mlにてOD660が0.5になるまで振盪培養する。
2)集菌して5mlのTE-bufferに懸濁する。
3)2.5Mのリチウムアセテイト250μlを添加する。
4)300μlずつ分注し10μlの上記プラスミドベクターを添加し、30℃30分培養する。
5)700μlの50%PEG4000を添加し、30℃60分振盪培養する。
6)ヒートショック(42℃、5分)後、急冷する。
7)1Mソルビトールで2回洗浄する。
8)最小栄養培地(SD培地に必要なアミノ酸(ロイシン、トリプトファン、ヒスチジン、アデニン)を加えたもの)で作成した寒天プレートに播種する。
この様にして得た形質転換体をSD培地(Yeast nitrogen base without amino acids (Difco 0919-15)+グルコース+アミノ酸(ロイシン、トリプトファン、ヒスチジン、アデニン)で25℃において振盪培養することにより定常状態になるように増殖させた。SD培地で500倍希釈して25℃、15時間振盪培養を行い対数増殖期として600nmの吸光度が0.2から0.5であることを確認した後に細胞の蛍光強度を、フローサイトメーター(FITCフィルター, EPICS XL-MCL, Beckmancoulter)で計測した。フローサイトメーターはアルゴンレーザーで励起波長488nmで励起し、530±30nmのバンドパスフィルターを用いて1測定で1万個の細胞の蛍光強度を測定し、すべての細胞の蛍光強度の平均値を求め測定値とした。組換えしていない細胞を計測した場合の蛍光強度は測定下限を下回ったので、測定下限の0.05の10倍である、0.5以上の蛍光強度を示す組換え体を選択した。
これにより、化学物質不存在下で一定レベルのプロモーター活性を発現する遺伝子として以下の表1に示す遺伝子が特定された。
1)組換え酵母の作成
酵母細胞 W303 ATCC201239のコンピテントセルを作成した。このコンピテントセルを、作成したプロモーターアッセイ用の、ベクターpYES2(YNL015W, YER091CまたはYLR303Wのプロモーターの下流にGFPを連結)を用いて形質転換した。YNL015W、YER091C、YLR303Wは何れも、プロモーターアッセイを行うと複数種類の化学物質に対して応答を示すものである。
2)化学物質感受性試験
得られた組換え酵母をSD培地(ロイシン、トリプトファン、ヒスチジン、アデニン)にて25℃において振盪培養することにより定常状態になるように増殖させた。定常状態の形質転換体をSD培地で500倍希釈して25℃、15時間振盪培養を行い対数増殖期として600nmの吸光度が0.2から0.5であることを確認した後、異なる濃度の塩化水銀を負荷した。塩化水銀負荷後、一定時間(15分、4時間)培養した細胞の蛍光をフローサイトメーター(FITCフィルター, EPICS XL-MCL, Beckmancoulter)を用いて計測し、マーカー遺伝子であるGFP(green fluorescence protein)の発現量とした。フローサイトメーターにより1測定で1万個の細胞の蛍光強度を測定し、すべての細胞の蛍光強度の平均値を求め測定値とした。同様に計測した塩化水銀を負荷しない細胞の蛍光強度を求めて、蛍光強度の差異を求めた。
3)生菌数の測定
フローサイトメーターによる計測後、生菌数の測定を行った。適当な濃度に希釈して寒天培地に播種し3日後にコロニー数をカウントした。コロニー数に希釈倍率をかけ、1mlあたりの colony forming unit (CFU/ml)を算出した。
得られた結果を図1−1および図1−2に示す。塩化水銀濃度0.27ppmまでは4時間の処理によって生菌数は変化無い。YER091C、YLR303Wは0.27ppmで遺伝子誘導がみられ蛍光強度が上昇しているが、YNL015Wでは変化していない。0.81ppmから生菌数の減少が見られ、同時に蛍光強度が低下している。
上記の様に、細胞が損傷を受けその生育が重度に阻害される状態、あるいは死滅する状態では蛍光強度が低下するため、この蛍光強度の低下を検出することによって、化学物質の測定上限を超えたと判定することが出来る。
化学物質の不存在下においてプロモーター活性を一定レベルで発現する微生物とその化学物質との好ましい組み合わせの検討
実施例1の手法に従い、数種類の組換え体について種々の化学物質に対して応答して、さらに化学物質の測定上限を超えた場合に酵母遺伝子の発現量が低下することを確認した。確認出来た遺伝子と化学物質の組み合わせを表2および3に示す。
表2および3の結果から、化学物質の不存在下においてプロモーター活性を一定レベルで発現する酵母遺伝子とその化学物質との好ましい組み合わせが分かる。
例えばエタノールに対してはYDR135C、YEL065W、YER091C、YLR303W、YPL061Wが応答する。もし、測定上限を超えた濃度のエタノールを含む試料をこれらのプロモーターのいずれか1つで形質転換した細胞に負荷すると、化学物質を負荷しない細胞と比較するとこれらの細胞の蛍光強度は低い。この様な状態の時、試料を希釈して再度実験すると、測定上限以下の濃度のエタノールの負荷となり、化学物質を負荷しない細胞と比較するとこれらの細胞の蛍光強度は高い。この2つの実験から、試料にはエタノールが入っている可能性が示される。この様な使い方により、測定上限を超えた試料と化学物質が含まれていない試料との区別をすることが可能となる。
GFPに対するホルムアルデヒドの直接影響
GFP蛋白標準品にホルムアルデヒドを加え、GFPに対するホルムアルデヒドの直接影響を検討し、本発明におけるプロモーター活性の低下が、化学物質によるマーカータンパク質の分解に由来しないことを確かめた。
GFPにホルムアルデヒドを加え測定したところ、蛍光強度を上昇させる可能性が示唆されたが、時間によって低下させるということは無かった。
このことから、GFPとホルムアルデヒドが直接反応するというようなことは無いと思われる。
従って、本発明において、プロモーター活性が低下すれば、用いた微生物が(a)その生育が重度に阻害される状態、あるいは(b)微生物が死滅する状態、に至らしめるレベルの化学物質に暴露されていることを意味すると考えることができる。
Claims (6)
- 被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するための、YNL015W、YDR135C、YER091C、YPL061W、YEL065W、YFL031W、YIL062C、YDL248W、YER112WおよびYMR260Cからなる群から選択される酵母遺伝子のプロモーターで形質転換した1種以上の組換え酵母を用いるプロモーターアッセイ方法であって、組換え酵母のプロモーター活性が低下または消失した場合、被検試料中に化学物質があると判断し、被検試料の希釈系列を作成し、該プロモーター活性が消失しない希釈度の試料を新たな被検試料としてレポーター・ジーン・アッセイ方法を行うことを特徴とする該方法。
- 新たな被検試料に対して行うレポーター・ジーン・アッセイ方法がプロモーターアッセイ方法である、請求項1記載の方法。
- 化学物質の不存在下においてプロモーター活性を一定レベルで発現する組換え酵母のプロモーター活性が一定濃度の化学物質の存在下に上昇する酵母を用いる、請求項1または2記載の方法。
- 組換え酵母が、化学物質の不存在下においてプロモーター活性を一定レベルで発現するよう遺伝子操作されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法を行うための、(1)エタノール、ホルムアルデヒド、ビスフェノールA、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、2,5-ジクロロフェノール、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、4-ノニルフェノール、メタ亜ひ酸ナトリウム、チウラム、塩化トリブチルすず(IV)、2,4,5-トリクロロフェノール、トリップ-P-2, 酢酸塩、マラソン、マンネブ、二クロム酸カリウム、塩化トリフェニルすず(IV)、フェノール、塩化水銀、シアン化カリウム、ふっ化カリウム、m-ニトロフェノール、塩化カルシウム、1,4-ジオキサン、テトラエチレンペンタミンおよびメソミルからなる群から選択される化学物質の不存在下において一定レベルの活性を有するYNL015W、YDR135C、YER091C、YPL061W、YEL065W、YFL031W、YIL062C、YDL248W、YER112WおよびYMR260Cからなる群から選択される遺伝子のプロモーターであって、当該プロモーターを含むベクターで形質転換した酵母の生育が重度に阻害されない濃度または該酵母が死滅しない濃度の該化学物質の存在下においては上記一定レベルを超える活性を有するプロモーター、および
(2)該プロモーターに作動可能に連結したマーカー遺伝子
を含むプラスミドベクターの使用。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法を行うための、請求項5記載のプラスミドベクターで形質転換した酵母の使用。
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